かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

大学図書館に行列は必要か?


新年度あけましておめでとうございます。
年度末もエイプリルフールも全力でスルーした当ブログですが、2009年度もはじまり、人によってはすでに入学式・入社式等も終えられた新生活シーズン、皆様いかがお過ごしでしょうか!
・・・自分は新年度初日の朝から学会のリジェクト(不受理)通知メールで目が覚めました(爆)
まあ3/31の午後とか微妙な時間に通知くるよりはネタ的に美味しいけど、それにしても時差のこと考えて通知せんと日本はエイプリルフールだぞ全く。


閑話休題
新学期、ということで今年も多くの学生がはじめての大学生活をスタートすることになり、各大学図書館関係者の皆様も新入生オリエンテーションやガイダンスなど、学生に図書館をアピールするチャンスと言うことで準備に取り組まれている時期なのではないかと思います(いや、自分実務経験皆無なんで実際はどうなのかわかりませんが)。
そんな時期にぴったり・・・と言うとなんかはかったかのようですが、ちょうど一カ月前に行われた平成20年度茨城県図書館協会大学図書館部会研修会、「行列のできる図書館の作り方 〜学生の図書館利用促進、学習支援を考える〜」の資料と記録が公開されました。

研修会実施要項

  • 1 テーマ:「行列のできる図書館の作り方 〜学生の図書館利用促進、学習支援を考える〜」
  • 2 趣旨

 大学図書館は大学の学術情報基盤整備の中心機関であり、研究、教育、学習支援という役割を担うといわれている。しかし、学生にとっては図書館に行っても単位がもらえるわけでもなく、卒業まで一度も図書館に行ったことがないという学生も存在する。情報リテラシー教育の重要性が謳われて久しいが、授業のためだけではなく、図書館をキャンパス生活の中でもっと有効に活用してもらうためにはどうすればよいのか。学習をサポートするために図書館ができることとは何か。
 学生が押し寄せる、行列ができる図書館となるにはどうすればいいのかを、文部科学省の平成17年度「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」、平成 19年度「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」に採択された取り組みをもとに考えてみたい。


こっそりパネルディスカッションに学生代表と言うことで自分も参加しています。
あまりに偏りが強い人間なので代表と言えるのか怪しいところですが・・・
「学生の視点からなにか話してほしい」とのことだったので、思いきりミクロに自分とその周辺の友人のことを思い浮かべつつ「図書館を利用する/利用しない理由」として少しだけ話させていただきました。


webページ上では「利用する/利用しない理由」となっていますが、実際の発表の順序は「利用しない/利用する理由」となっています。
後から打ち上げで「大勢の図書館員を前に『利用しない理由』から語るなんて度胸ありますね」と言われてはじめて順序の問題に気付きました(笑)
別に煽ったわけではなく、思いついたままに書いたらこの順序に。
普段、来館利用しないからなあ・・・電子ジャーナルとかデータベースとか、図書館の電子コンテンツは毎日利用しているけど・・・


話の趣旨としては、

  • 図書館を利用するのには2つの理由がある
    • 1.必要だから利用する
      • 資料がそこにしかない
      • 他に作業をする環境がない
    • この理由での利用が多い図書館は「いい図書館」とは限らない
      • 電子的にコンテンツが提供できればもっと学生の時間は節約できるのかも知れない
      • 学内に他に学習できる環境がちゃんと整ってないのでは
    • 2.行きたくなるような図書館だから利用する
      • 居心地がいい、「なんとなく」行く気になる
      • 選択肢の中から選ばれる図書館
    • こちらは利用が多い図書館=いい図書館、と言えるかも
    • 今後の方向性としてはこっちを狙って行った方がよさそう
  • ただし現実にはまだ両者の切り分けは難しい
    • 必要な資料が全部電子化されていたりするわけではない(特に人社系)
    • 研究室等の環境が整っているところばかりではない(これも特に人社系)
    • 居心地の良さを追求しすぎて、必要に迫られて行ったときに欲しいものがなかなか手に入らないのでは困る
      • 「本の壁」みたいな書架は格好いいけど資料取りづらい、とか
  • こんな図書館はダメ
    • 必要にも応じていないしなにもない時は行きたくならない図書館
  • (資料は作っていたけど未発表)図書館のここがダメ
    • 上記の2つの理由の存在をあまり意識していない?
      • 利用がないのは悪いこととは限らない(むしろmin2-flyに限れば来館利用の60%以上は図書館にとって成果指標としてではなく失敗の指標としてカウントしていただきたい)
  • 「行きたい図書館」を目指しつつ「必要に迫られた」人にも対応するには・・・??

こんな感じ。
最後思いっきり丸投げですね(苦笑)


「卒業まで一度も図書館に行ったことがない」かどうかは知りませんが、日常生活において図書館を全く利用しない友人は(それこそ図書館情報専門学群や図書館情報メディア研究科においても!)自分のまわりにも普通にいます。
理由は人それぞれでしょうが、理工系なら「研究室がある」(作業環境)、「必要な図書・雑誌は研究室単位で購読している」(資料)とかが2大図書館に行かなくていい理由でしょうか。
そういう人をどう図書館に呼び込むか(そもそも呼び込む必要があるのか)・・・って話と、人社系みたいに膨大な紙媒体の資料を必要とすると同時に研究室等の作業環境は必ずしも十分でないところの学生を一緒くたにみても仕方ない、ってのが「必要に迫られた利用」の話であり。
一方で居心地が良くて快適な空間の条件は、人社だろうが理工だろうが図書館情報だろうがそんなに大差はないんじゃないか・・・とも考えられて、そっちは「行きたいから行く」話ですね。
でも「行きたいから行く」派の需要に合わせて、例えば筑波の中央図書館が思いっきりデザインされた快適空間をスペースをぜいたくに使って提供、その分開架資料は100万冊くらい減らして書庫に引っこめますとか言ったら人社系から今度こそ暴動起こること間違いなしなわけで。


そもそも実際のところ「行きたい図書館」を(特に大学図書館が)目指す必要があるのか、ってあたりがかなり重要なポイントかとも思いますが・・・それでもまだ、別に図書館必要じゃない人に、無理に図書館使わせようとするとかよりはいいのかな、とか。
"Journal of the American Society for Information Science and Technology"誌の電子版の購読をやめるとそれだけで俺の来館頻度は爆発的に上昇するはずですが、誰もそんなことして図書館利用増やそうとは思わないでしょうし。
あるいは本を読まなくていい分野の人にまで一生懸命読ませるような取り組みをして、コード書いたり実験したりする時間を削ることになるとしたらそれは大学的にアリなのか、とか。


考えると新学期早々袋小路に入りそうですが・・・
どうなんでしょう、大学図書館って行列できているのがいいんでしょうかね?*1

*1:もちろん行列ができている=利用者を待たせちゃってるから駄目じゃん、ってあたりは比喩ってことでスルーする方向で