かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「Open Access Week:日本におけるオープンアクセス この10年これからの10年:セッション1 オープンアクセスにまつわる海外動向を俯瞰する」(第5回 SPARC Japanセミナー2012 参加記録1)


毎年10月はオープンアクセスウィークの季節ですよ!

オープンアクセスウィーク2012は,10月22日〜28日です

オープンアクセスウィーク(Open Access Week: OAW)は,オープンアクセスを広め,考えるためのイベント週間です。アメリカのSPARC主催のもと,毎年,10月の最終週に設定されて,いまや世界規模のイベントとなりました。

日本でもオープンアクセスについてより多くの人が知り,共有できるよう,盛り上げていきましょう!


このブログ読者の方には今更と思いますが、オープンアクセスとは学術的な文献を、インターネットを通じて誰もが自由にアクセスできるようにしよう、というコンセプトです*1
オープンアクセスウィークではこのオープンアクセスにまつわる広報活動やイベントが世界中で開催され、自分も10/23には筑波大の附属図書館でお話させていただいたりしたのですが*2
日本国内のイベントで一番注目と言えば、毎年OAWで特別セミナーを開催してきた、SPARC Japanセミナーですね。

オープンアクセスを推進するイベントが世界で毎年開催されます。無料で論文にアクセスできるようにする制度や基盤作りに加えて,研究や教育を推進することを目的とした論文情報の自在な活用を支援する活動に発展し,現在では情報流通や評価という側面も併せ持つ,より大きな活動に拡がりました。これら活動の趣旨を広め,賛同する科学者,図書館,出版社が共に研究環境支援について考えるのがオープンアクセス週間です。
今年は10月22日(月)から10月28日(日)となっており,NIIでは26日(金)にセミナーを開催いたします。今回は全日の講演日として,海外事例の紹介,国内のさまざまな立場の方々の活動報告,オープンアクセス運動が研究や教育にもたらす影響について情報を共有し,日本におけるオープンアクセスの全体像を俯瞰する会として企画いたしました。さらに今後のオープンアクセス運動についても,政策的な側面からの講演も織り交ぜ,皆様と一緒に将来を展望したいと考えています。


もちろん自分も行ってきましたよー。
今回はオープンアクセスウィーク特別セミナーということで講演者数もいつもより多く、時間も増大6時間。
当然記録量も大増大・・・! ・・・過ぎるので、今回は午前の部と午後の部の2エントリに分けてアップしたいと。


午前の部では物理系の出版者で活躍されるHaynes氏と、大学図書館で機関リポジトリについて活動されているお2人による、主には海外の動向紹介でした。
以下、当日の記録・・・ですが、例によって例のごとく、min2-flyの聞き取れた/理解できた/書取れた範囲の内容であり、かつ今回は長丁場に備えていささかペースを押さえ気味にしていたので記録漏れも多いです(汗)
ご利用の際にはその点、ご留意いただければ幸いです。
誤字脱字、事実誤認等はコメント欄にてご指摘いただければー。


では、まずは会の趣旨説明から!




開会挨拶(安達淳先生、国立情報学研究所

  • 今週はOpen Access Week、世界的に色々なイベントがある
    • SPARC Japanセミナーもいつもより長く、1日がけのWS
    • もちろんテーマはオープンアクセス。この1年も色々な動きがあった。色々なスピーカからそのことについて講演いただき、最後にパネル
      • 今後の学術コミュニケーションの動きについて意見交換したい
  • SPARC Japanはもう10年近く活動
    • 国際学術流通基盤整備事業、が本当の名前
    • 性格はときどきに応じ変わっている。当初は学会出版強化に注力
      • 昨年度-今年度には科研費の大幅改革もあり、抜本的な新たな方向が見出された
      • 文部科学省もOA出版には助成する。単に「進めましょう」というだけでなく具体的な政策に
  • 米国のSPARCはOAのロビイングに注力しているが、日本は大学図書館と連携した推進、研究者も巻き込んだ推進、その中で出版社・学会出版も一体的に議論したい
  • それではコーディネータの谷藤さん、よろしくお願いします

概要説明(谷藤幹子さん、物質・材料研究機構学情報室)

  • OA Weekは今年6年目。その今週最後のイベントとして、できるだけ良い会になるようにしたい
  • 今日の会は長いが、バックグラウンドを10分でお話したい
    • なぜ谷藤さんがモデレータ?・・・物材機構は図書館がOA誌を出す、それも購読型からOA誌に移しインパクトファクターも上がっている
    • 機関リポジトリも努力し、研究者の役に立つようなアーカイブを目指している
    • OA Week 6年目に色々な方がお話することで、これからの10年の夢をともに抱けるといいと思う
  • オープンアクセスという言葉はあちこちで効かれるようになった
    • OA・・・インターネット上で流通=デジタル、フリー/オープン/パブリック、クリエイティブ・コモンズ・・・CC-BY
      • それを支える出版/投稿料についても議論
    • OAアーカイブリポジトリ・・・arXiv、Open DOAR/Open Repository、Data Repository
    • OAジャーナル・・・査読・受理された論文を無料で閲読できる/Article Processing Charge(掲載料)・・・その金額は?
      • コスト、持続性から考える金額の適正さ
      • 物材機構の研究者・・・APCの使途、その内訳がわからないので納得いかないという人もいる/どこにいるかで金額が変わる(円/ドル)のが納得がいかない、など
  • PeerJ・・・ピーター・ビンフィールドさん(OAメガジャーナルの回で来日)のビデオレターが紹介!
    • (min2flyコメント:ここの記録は無理です(汗) 英語で話聞きながら日本語でメモは取れないんだって! 同時通訳を同時に文字化できるスキルがあったらそれでご飯食べるわ!)
    • 登録すれば生涯99セントで投稿できるモデルの登場
  • OAメガジャーナル・・・安く、手軽に出して論文が集まることでジャーナルのボリュームができる/全体観のあるビジネスモデル
  • 過去のSPARC Japanセミナーのテーマで振り返る、その他のトピック・・・フィンチ・レポート(基調講演で)/eLife(助成機関によるOA誌創刊)/OAプラットフォーム/地方講演会
  • 欧米での状況・・・
    • OAジャーナルそのものの出版詐欺の話も見逃せない
      • 図書館という信頼性あるところを通じる限り、お金も情報流通もある程度統制できる
      • 研究者が出版者と直に、ということだと、その出版者・雑誌の実在や質に関しての問題も
  • 以上のような背景のもと、今日は・・・
    • 図書館界(重鎮・現場)、研究界からそれぞれ人を招いてお話いただく
第1セッション:オープンアクセスにまつわる海外動向を俯瞰する

基調講演「学術出版とオープンアクセスに関わる学術の発展」(John Haynesさん、American Institute of Physics, Publishing)

  • 他己紹介:出版界で長く化学、物理出版、それも英米双方で関与。世界でもこの分野に厚い方
  • OA Weekなので少し遊び。フランスのあるテレビ番組でインタビュアーがする10の質問、というのがある。うち2つを今日は全員に尋ねる
    • Q. 今の職業以外でやってみたい仕事は?
      • A. レストラン・・・(聞き取れず)
    • Q. 絶対にやりたくないのは?
      • A. 図書館員(min2flyコメント:同感)
はじめに
  • OA Weekに話ができることを嬉しく思う。SPARC Japanに感謝したい
  • American Institute of Physics(AIP)・・・物理分野では中規模の出版者。様々なアウトリーチ活動をしている
    • どういう分野をカバーしているかはまた後ほど
  • 話に入る前に・・・質問があればいつでも挙手を
    • 会場に図書館員は? 出版者の人は?・・・それぞれそこそこ?
  • 今日の話は3部構成:
    • イントロダクション・バックグラウンド・・・OAの背景から一歩踏み込み、その機動力とは何か、阻止しているのは何かまで話したい
      • 最近の調査の結果も話したい。過去10年のOAのトレンドを示す結果
    • AIPとしてのOA、特に物理分野での経験について
    • アメリカ、イギリス、ヨーロッパの政策状況について・・・日本との比較もしつつ
イントロダクション・バックグラウンド
  • OAの定義
    • デジタル/オンライン/無料/ライセンスの制約がほとんどない=CC-BY
    • 「真の」OAは価格だけではなく権利面でのアクセスの障壁を除いたものを指す。無料かつ制約のない利用が可能
  • OAの種類・・・Green or Gold
    • Green・・・通常、著者が論文の著者版を機関リポジトリ等に投稿すること
      • 物理分野のarXivや医学のPubMed Centralのような特定領域のリポジトリもある
      • フォーマルな出版活動、雑誌出版等とは独立したもの。Green OAにしたものでも雑誌への投稿はできる
      • ビジネスモデルはない、コストを回収できるような収益源はない
      • リポジトリでのアーカイブは許可されているが、それほど急速に進んでいるわけではない
    • Gold・・・ビジネスモデルとしての収益源=APC(掲載料)を著者もしくはその他から徴収するモデル
      • 一度掲載されれば世界中、無料でのアクセスが可能
      • 査読も通常の購読誌と同様である場合が多い
      • 著作権は著者が持ち、出版者は出版ライセンスを持つのみで、通常はCCでアレンジが行われる
  • OAモデルのバリエーション
    • 真の/完全なもの・・・出版と同時にOA
    • Delayed OA・・・出版後、一定期間を過ぎてからOAに
    • Hybrid OA・・・多くの雑誌で採用。著者がAPCを追加で払うとOA、そうでないものは購読モデル、という組み合わせ
      • 購読⇒OAにあまりリスクなく移行できるので日本でも検討できるかも?
      • ただしあまりHybrid OAへの関心は高くない
    • どのOAモデルも著者から直接、掲載料を徴収するのは困難。機関メンバーとして、大学や図書館にメンバーになってもらい料金を払ってもらう、その機関の著者のものは無料で掲載、という形態が多い
    • 図書館がライセンス料の一部を負担することでAPCに関わることも。図書館の予算をAPCに回すモデルの一つ?
    • ほとんどのOA誌は低所得国の著者はAPC支払い免除としていることが多い
  • Article Processing Charge:APC
    • 平均すると900ドル/論文?
    • 幅がある・・・OA雑誌では20ドル〜3,800ドル/論文
    • そもそも実際には多くのOA雑誌はAPCを取っていない
  • 主なOA出版者
    • PLoS(非営利団体
    • BioMed Central
    • Hindawi Publishing Corporation(エジプト)
    • Oxford University Press(10年以上前に開始。先駆者)
    • Copernicus
    • Springerはかなり早くからOAに着目。後にBMCを買収
    • 2000-2010の各出版者の論文数推移・・・伸びている
  • OAの市場を牽引しているものは?
    • インターネットを通じて学術文献を広く流通させる、という理想の追求。その動きは加速的に広がっている
    • 資金を提供するファンドや学会等も、論文をできるだけ広く周知することがミッション。OAのモデルと目指すところは合致する
    • シリアルズ・クライシス・・・論文・雑誌も増えしかも値上がりし図書館の予算はそれほど増えず危機を迎える
  • OAの阻害要因
    • 研究者の従来のジャーナルに対する見方が新しいものを受け入れない。特にインパクトファクターの高い雑誌に投稿・発表したいという従来の姿勢からなかなか変わらない
    • 経済要因。著者/研究者がAPCを負担できるか?・・・なかなか負担できない者も多い
      • Publisherもfunderも大学の管理部門も、今までの拠出方法からOA出版支援にどうお金を出すのか、うまく移行できていない
  • OAマーケットのサイズ
    • DOAJには7,372のOA雑誌がリストに
      • 主要なデータベースには入っていないものも多い。小さく、インパクトファクターも低いあるいは持たない
      • 年に200以上の論文を載せるのは100誌程度
      • いわゆるロングテールをなしている。極小のものも含め数が多い
    • Laaksoほか*3より・・・OA論文数/OA雑誌数はどちらも非常に伸びている
      • 2001年はOA論文は2万程度。2011年のOA論文は34万以上。しかし世界の論文数はScopusによれば2011年で約170万。
      • 34万のうち、完全即座のOAは全論文の11%。Hybridは0.7%。あまり人気がない。Delayedは5.2%。
      • 一番論文数が伸びているのはAPCをとって出しているOA雑誌掲載論文
      • 出版者のタイプごとに見ると・・・初期は学協会/大学出版会が多かった⇔現在は商業出版によるもののほうがそれぞれよりも多い
      • 分野別では・・・一番多いのは生物・医学。物理や化学・数学は数の面ではあまり多くはない
  • PLoS ONEの話はもうSPARC Japanセミナーで過去に扱ったそうなのでいいよね? 大成功している
  • ここまでで質疑:
  • Q. 商業出版によるOAが増えている、というのは、そもそも商業出版者の数が増えている?
    • A. それもありうるが、おそらくはSpringerとHindawiの伸びがかなりの部分ではないだろうか
  • Q. 引用文献について。最後の方の数字は全部Laaksoほかから?
    • A. そう。全部Laaksoたちの論文から
  • Q. 商業出版におけるOA出版の伸びについて。これは商業出版にとってOAがビジネスとして魅力的ということ?
    • A. おそらくそうだと思う。学会・商業出版も含め、出版者にとってOAがビジネスモデルとして立ち行く、という認識は高まっていると思う。もちろん分野によっては全体に占める割合は少ない。2011年でもまだOA論文はScopusの中の17%だし、即座のOAは12%でしかない。まだまだ先行きは長い。この数字がいつ50%になるのか。伸びは加速するかも知れないし減速するかも知れない、それは誰にもまだわからない。どう推移するのかは、資金提供者、政府がどの程度助成するかにもかかっている。
AIPとしてのOA、特に物理分野での経験について
  • AIP・・・12の雑誌を出版、年16,000論文
  • arXiv・・・物理分野のサブジェクト・リポジトリ(実際は物理だけではない)
    • 月あたりの投稿数は右肩上がり
    • 領域別に見ると・・・初期から高いのは高エネ。現在は高エネ物理の論文はすべてarXivにある
      • 天文、数理物理学も伸びている。最近では数理物理はかなり多い
  • Phys. Lev. Lettersの全てがarXivに入っている/セルフ・アーカイビングは物理学に何も影響しない、等の言説がある
    • 本当にそうか?
  • APSの雑誌でarXivに入っているものの割合
    • Phys. Rev. Lettersは55%のみ。Phys. Rev. Bでは40%。Rev. Dは100%に近い、これは高エネ物理論文が多いから
    • 物理学全体では必ずしもarXivへの投稿が多いわけではない
  • AIPの雑誌だと?
    • 応用物理学ではarXivへの投稿はかなり少ない。物理学がみんな同じ行動をしているわけではない
    • 雑誌の方針を定める際には実際の行動を理解することが重要
  • AIP Author Select(ハイブリッド型)
    • 10の雑誌で実施している。1,500〜1,800ドル追加で払うとOAにできるが、浸透度合いは非常に低い
    • 2006-2011の推移を見ると、一番数の多かった2011年でも、16,000論文のうちAuthor Selectで出版されたのはわずか80本
  • AIP Advances(ゴールドOA雑誌)
    • ハイブリッド型は関心を集めない様子。ではゴールドだと?
    • arXivでもう自由に見られるわけだが、さらにお金を払って雑誌掲載版もゴールドにすることに関心はあるのか?
      • AIP Advancesを立ち上げ挑戦
  • 結果:
    • 関心は非常に高い。2011.3に立ち上げて現在までに、1,300以上の投稿があり、出版論文数も500近くに
    • ハイブリッド型には関心が薄いが、ゴールドOA誌への関心は高いらしい
    • (講演で言及はなかったけど表から:でもコメント機能やratingはそんなに使われていない)
    • 商業出版者もOA雑誌に乗り出している
  • ここまでの話(AIP/物理学分野の経験)から得られる教訓とは? 購読モデル⇒OAモデルに移行することによる帰結・影響とは?
    • 現在、AIPではかなりの購読費を非常に大きな機関、東大のようなところから貰っている一方、小規模であまり論文を出していないところからも受けている
      • 購読料の世界では幅のある/多くの機関から収入を得ている
    • OAモデルに移ると・・・研究重点型で出版論文数の多い大学の方が負担が大きく、小さな/教育中心の大学では負担が少なくなる
    • AIPは法人顧客からも利益を得ているが、そこからの購読料はなくなるし、法人顧客はあまり論文は出さないので、APCでの代替も期待できない
      • 自分が出版側なら、著者の属性をよく考えておく必要がある。購読⇒OAへの移行の金銭的影響を考える
    • もしバックファイルで儲けているなら・・・そこへの影響も考える必要がある
      • AIPの雑誌の場合、2011年の論文ダウンロードの50%は2007年以前に出版された論文に対するもの
      • 引用半減期・・・やはり古いコンテンツの価値を示している(10年より長い雑誌がけっこうある)
    • OAへの移行を考える場合、収益源がどの程度多岐に渡っているか、うちOAに移行することで失われるものをどうreplaceするか考える必要がある
アメリカ、イギリス、ヨーロッパの政策状況について
  • アメリカにおけるOAをめぐる政策動向・・・2000年代は関係者がみんな感情的だった?
    • 特にアメリカでは図書館員、provost、大学管理者、出版者等の当事者が一同に介して話し合う必要が感じられるようになってきた
    • その結果、米国議会はScholarly Publishing Roundtableを組織。その提案が2010年にAmerica COMPETES Actとして議会を通過
  • 2011-2012年のPublic Accessに関する動向
    • 緩慢ではあるが秩序だった形で進んでいる?
    • 米国では出版者と政府機関が密接に連携。学術情報流通に関しての進歩も見られる
    • OAを法制化する試みは今のところ法案は通過していない。今は大統領選中なので、終わるまでは何も動きはないだろう
  • 出版者と政府の連携に関する紹介:
    • 学術文献へのアクセス改善に関連するもの
    • FundRef・・・研究助成団体が、自身の助成の結果を把握するのが難しい、という状況を改善するためのもの
      • 著者/出版者が協力し、助成機関名の書き方/助成番号の書き方の標準を定める・・・追跡可能に
      • 現在パイロットプロジェクト中
    • Linking agency reports to publications・・・助成機関に出す研究レポートと実際の論文をきちんとリンクする
    • Linking data to publications・・・研究データと論文をリンクする
    • ORCID(Open Researcher & Contributor ID)・・・研究者同定のために出版者・図書館・他機関が共同して一意のIDを振る試み
      • いかに色々な利害関係者が協同しているか、という点でポジティブな動向と思う
  • フィンチ・レポート(Finch Report)について
    • http://www.researchinfonet.org/wp-content/uploads/2012/06/Finch-Group-report-FINAL-VERSION.pdf
    • イギリスで出されたもの。アメリカのRoundtableの結論と似ている内容だが、利害関係者それぞれの関与の重要性を指摘している
    • その主な提言内容・・・
      • イギリスとしてはOA/Hybrid OAを推進・サポートすべき
      • 学術出版活動の価値も認める
      • 査読を続ける手段としてはAPCが望ましい、とする
      • どのようにOAに移行すべきか議論されたが、あまり大きな支障がないよう、徐々に進化させよう・・・という書き方。革命ではなく
    • 英政府のレポートへの反応
      • Research Councilsの新たなポリシー・・・政府による資金提供を受けたものは、リポジトリに登録するか、"より望ましいのは"、Goldモデルに移行する・・・来年の4月1日以降
      • そのために1,000万ポンドの予算を確保することに。現在の図書館の購読料は2億ポンドなので微々たるものではあるが、予算がついたことは契機としてはいい動き
      • イギリスは先陣を切った。今後、どう動くかが見もの
      • どのような形で/どう予算を出すかの全容は不明・・・作業中
  • 欧州委員会(EC)・・・科学文献のOAに関する勧告は同じように出ているが、具体的な動きはない
  • AIPとしての対応・・・色々と対応している
    • 関連当事者を一同に集めた後に動く、ということは高く評価している
    • なんらかの形で費用分担が計上される、ということでないと、スキームとしては動かない
      • 一挙に変えるのではなく段階的な発展/色々やってみてどう動くか見るのが望ましい
まとめ
  • OA出版は急速に成長しているが均一な成長ではない。領域やモデルによるばらつきがある
  • OAの現状を見ると、現在のスピードのまま伸びるのか/OAが主流となるのか、どちらもまだ疑問
  • 疑問/問題の先を考えるには政府・助成機関の動きが重要。OAの経済性、どう成り立つかが動向を決める鍵となる
  • 何が起ころうとも、科学者/研究者としては査読を受けて雑誌に載ることに価値を感じる。その中核さえ守られればビジネスモデルはどうあっても
  • 質問は午後、パネルディスカッションで!

「eScienceへの広がり:Open Repository」(大園隼彦さん、DRF, 岡山大学附属図書館)

最初の質問:
  • Q. 今の職じゃなければどんな職につきたかった?
    • A. 農業
  • Q. 付きたくない職業は?
    • A. 高いところが苦手なので、パイロットは嫌だ
  • Open Repositories 2012参加報告
    • Open Repositoriesとは?・・・リポジトリ開発・運用関係者が集まり情報共有・交換を行う国際会議
      • 今年は30カ国以上、400人以上の参加者
    • 共同リポジトリ・共同インフラのセッション
      • うち1つがUK Repository Net+・・・イギリスの助成研究成果の共同インフラ
      • Open AIRE・・・EUの助成研究成果公開等
      • 参加機関・コンテンツ数だけでなくコンテンツアクセス改善の話が中心に
    • 研究データ管理
      • なぜ管理する必要があるのか・・・永続アクセス/再利用/引用
      • 研究データの保存・統合検索インフラ整備の発表など
      • 例:Australian National Data Service・・・より多くのオーストラリアの研究者がデータを利用するようになることを目的に
      • 研究データについては色々な動きが他にもある
  • 日本でも研究データ管理を始めるべきではないか?
    • OR2012参加の率直な感想
    • その管理に図書館のノウハウも生かせるのではないか?
      • 長期保存、再利用、アクセスに機関リポジトリのノウハウが生かせるのでは?
    • まず図書館でできること・・・
      • 保存、引用環境構築?
    • 考えること・・・何を保存する? どこに? どのように?
  • Monash大学の研究データ管理ガイドラインの例:
    • 研究コミュニティが既にプラットフォームを持っているならそれを利用
      • ないなら、最終手段としてはプラットフォームを開発する・・・特定の分野のニーズにマッチし、さらに他機関でも使えるもの
    • メタデータの充実/識別子の付与/データ連携
  • 何を保存するのか?
    • 研究データ=研究で利用するすべての情報
      • 構造化データ/非構造化データ
      • ビッグデータにいきなりいくのではなく、できる範囲で?
  • どこに保存するのか?
    • 図書館でサポートするならば機関リポジトリを活用する
    • その他の可能性・・・研究者はコミュニティのシステムをより利用する
  • 日本の機関リポジトリでのデータ管理の例
    • JAIROによれb研究データは52,000件以上既に入っている
    • うちほとんどは千葉大学のデータ。ほぼ千葉大学だけ
      • 中に入っているのは成果としてのデータやデータベースそのもののリンク、図書館の貴重書等
  • どのように保存する?
    • メタデータの充実・・・全文検索は期待できないので
      • junii2でいける?
    • 識別子の付与・・・DOI/研究者ID・・・科研番号やORCID活用?
      • ResearchHubでは実際にDOIが付与されている
  • サービスの展開は?
    • まず保存、次に利用の環境を提供
    • より多くのデータを保存し、再利用されるためにはポリシーの作成が必要
    • 他システムとの相互運用性/データ再利用の仕組み
  • まとめ
    • データ管理に既存のシステムを活かす?・・・機関リポジトリを利用できる??
    • 新しくデータ管理システムを構築する?・・・機関リポジトリ構築のノウハウを生かして貢献できるのではないか?
    • データの収集から論文の収集へとアプローチ?

リポジトリで世界とつながる:COAR第3回年次集会(スウェーデン)参加報告」(城恭子さん、DRF北海道大学附属図書館)

はじめの質問
  • Q. 今の職業以外でなるとしたら?
    • A. 形あるものを作り出す、ということで建築家
  • Q. これだけはなりたくないのは?
    • A. 植物アレルギーなので農業は無理
  • 5月に行われたCOARの年次集会の参加報告
  • COARとは?
  • 日本とCOARとの関わり
    • 立ち上げ当時から、NIIとDRFが参加
    • Executive Boardメンバー等に参加、各WGにもメンバーを排出し、運用に積極的に参加してきた
  • 第3回年次集会概要
    • スウェーデン・Uppsala Universityが会場
    • 19カ国、50名の参加。日本からは3名参加
    • 当日のスライド等は以下から
    • 各国の報告等の紹介(以下はmin2flyによる抜粋)
      • 中国でもOAが非常に急激に盛んになっている??・・・中国科学院の強力なリーダーシップ
        • 中国でもOAW中にOAセミナー開催中とのこと・・・*4
      • 日本はNIIの武田先生が研究者/システム/リポジトリ管理者のネットワークについて発表、質疑ではSCPJに対し多くの質問
    • ワーキンググループ会議・・・WGごとに別室にわかれての活動報告と議論
      • コンテンツ増進のための取り組みに関しては日本の事例も紹介されている
    • ポスターセッション・・・日本からはDRFが参加
    • 総会・・・Executive Boardメンバーの交代など
  • COARのこれから
    • 重点キーワード・・・コミュニティ、リーダーシップ、サポート、インターナショナル
    • 具体的な活動・・・国際的なコミュニティ・ネットワーク拡大・・・中国、インド、アフリカ
  • 日本とCOAR
    • 日本の事例に対する関心は高い
    • 世界中のリポジトリ関係者に、COARを通じて日本の取組を発信することが求められる



初っ端から次々と重要なキーワードが出てくる、SPARC Japanセミナーの集大成的なところもある前半部でしたが・・・
いや、Finch Reportについてはもしや今回がセミナー初出かな??
ググるといっぱいネタが出てきて、オープンアクセスが必ずしも一枚岩ではないことを思い出せます・・・OAWに思い出す必要がるかはさておきw


しかし内容は盛りだくさんありつつ、午前の部はまだまだ穏健なお話!
午後は研究者の皆さんが講演&ディスカッション、ということで、会はどんどんヒートアップしていきます。
特に大園さんが触れられた研究データ管理は大スパークですよ!
引き続きアップする予定ですので、後半も乞うご期待!

*1:より細かい分類が絶賛、進行中でもありますが、それに触れるのはまた今度

*2:その内容は、思い切り博士論文の内容なので・・・学位ゲット次第公開したいと!

*3:http://www.biomedcentral.com/1741-7015/10/124

*4:min2flyコメントBOAIの成り立ちとか考えると中国で盛り上がりって面白いな・・・参照:岡部論文