『日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望』(国立国会図書館関西館 平成24年度図書館調査研究事業 中間報告会)
滑り込みセーフで2013年1月唯一のエントリ。
皆様、大変遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。
本年も変わらずご愛顧のほどよろしくお願いします。
Twitter等ではちょくちょく近況報告しておりますが、現在なんとか博士論文の執筆も終わり、最終審査会も終わり、あとは結果を待つだけ・・・のはずのまな板の上の鯉状態にいます。
「やっと安心だね!」と声をかけていただく機会もあるのですが、審査会の3日後から海外出張(最高でした!)、その後も発表予定やら非常勤やらで、何か達成感とかそういったものとは無縁な毎日を・・・や、お仕事いただけるのは大変ありがたいことです。
閑話休題。
そんなこんなでブログ更新する間もなかったのですが、イベントに参加したからには更新せざるを得まい、それも面白かったならなおさらだ、ということで、本日は国立国会図書館(NDL)で開催された「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望」中間報告会に参加して来ました!
国立国会図書館関西館図書館協力課では、平成24年度の図書館及び図書館情報学に関する調査研究として、「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望」を株式会社シィー・ディー・アイに委託して実施しております。 この調査研究につきまして、標記の中間報告会を、平成25年1月31日(木)に、国立国会図書館東京本館で開催します。
この調査研究プロジェクトの詳細については報告会冒頭でお話がありましたが、その中でも今回は特に昨年秋頃から実施されていた全国の図書館を対象とする調査「「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望」アンケート」の集計結果を中心に報告がありました。
全国の図書館(学校図書館は今回対象になっていないので、公共/大学/専門図書館)でレファレンスサービスをどのようなものと捉え、何をどう実施しているのか、質問紙調査から現在の実態が明らかにされていきます!
以下、例によって当日のメモです。
例のごとくあくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での内容であり、ご利用の際はその点、ご理解いただければ幸いです。
誤字脱字・事実誤認等お気づきの点があれば、コメント等でご指摘いただければ助かりますm(_ _)m
ではまずかNDL関西館・依田さんによる研究テーマ設定の経緯説明から!!
(ごめんなさい、開会のご挨拶はメモを取りそびれてしまいました(汗))
研究テーマ設定の経緯:依田紀久さん(国立国会図書館関西館図書館協力課調査情報係長)
- 調査をお願いした立場から、経緯を簡単に説明したい
- 図書館調査研究事業とは?
- 今回のテーマ設定の経緯:
- 毎年1月に次年度のテーマを検討
- レファレンスサービスの設定は、実は平成22年度に、23年度事業として決定していた・・・が、3.11があり、1年延期していた
- 昨年度は「東日本大震災と図書館」をまとめた
- 調査過程で様々な問題意識を共有・・・「図書館が情報サービス提供期間としてできることを考え続けなければいけない」
- 昨年度は「東日本大震災と図書館」をまとめた
- 今回は情報サービスの領域において、もっとやれることがあったのではないか、という問題意識に基いて調査を行った
- レファレンスサービスというと平時に意識をおきがちだが・・・
- 一元的に質問を受け付ける、ということで誰でも/どこでも質問を受け付けるサービスを被災地でやっていた事例とその反省
- 被災地にレファレンス・ライブラリアンが出向くべきではなかったか?
- 非常時におけるレファレンスサービスのあり方とは?
- 以上の前提のもと・・・
- 委託チームの枠組み:
- NDLから株式会社シー・ディー・アイに委託(昨年度の受注先でもあるので継続して活動しやすかった)
- 調査チームと研究チームを設置。研究チームは図書館情報学の専門家で構成
調査研究の全体像ならびに進捗状況:小田光宏先生(青山学院大学教育人間科学部教授/調査研究チーム主幹)
- 配布スライドから若干、逸脱するかも? 質疑応答でご意見いただくためにもチャレンジャブルな報告をしたい
調査研究の問題意識
- 依田さんからお話のあった趣旨に沿い組み立てたが・・・
- 研究的観点からの問題意識も強く盛り込む
- レファレンスサービス実践の再定義
- 「レファレンスサービス」という言葉は多くの人の間では共有されていない
- 図書館関係者でも「質問を受けて答えることでしょ?」と限定的に定義して実践が行われている
- 文献を探っても同様のことが言われている
- 英米の資料を見るとレファレンスサービスはそのような文脈に限定されない、広い文脈で取り上げられてきた
- その上で現在・将来の図書館サービスを組み立てようとしている
-
- 質問回答サービスは利用者が質問しないとスタートできない、受動的なもの
- もっと能動的なものに転化させる必要が日本でもあるのではないか?
- 英米では能動的な活動もある。そのことが日本と海外のギャップになっているのではないか
- 図書館員機能に差を生み出す要因でもあるのではないか
- 質問回答サービスは利用者が質問しないとスタートできない、受動的なもの
-
- 「レファレンスサービス」が妥当かは不明・・・「情報サービス」とかがいいかも?
- いずれにしても図書館員の技能の中核の一つがレファレンスサービス関連技能なのは確か
- 「レファレンスサービス」が妥当かは不明・・・「情報サービス」とかがいいかも?
- レファレンスサービス研究への貢献
-
- さらに・・・質的な調査の必要
- 数量的な調査は時間と労力をかければできる/過去の調査を元に繰り返せばやれる
- 依田さんからお話のあったような、広く国民にサービスを行なうことを考えると、国民のニーズとそれに何ができるか、量では推し量れない面が生じる
- 質的な調査をどう行なうか・・・試行錯誤しつつ取り組んでみた
- さらに・・・質的な調査の必要
- 図書館のイメージ変容の促進
- ちょっとしたいたずら的な意味合い
- 本を借りる、だけじゃないでしょ、ということを言えないか?
- 一部の人が使って満足するものからの脱却に踏み込みたい
- 国民(利用者)生活との関係の明確化
- 経済活動との接続
- 研究・・・ガチガチの研究というよりは、素人による研究者顔負けの活動はインターネット等を見ても明らか。そういう人たちが図書館をどう捉えているか? それと図書館の情報サービスの関係を突き詰めたい
調査研究の構想
- 研究の全体像:3つの調査の組み合わせ
- 基礎調査(実態調査):現在の日本の図書館でレファレンスサービスはどうなっているか? 質問紙調査による取り組み
- 発展調査(認識調査):国民がレファレンスサービスにどのような認識を持っているのか? インタビューによる取り組み
- 関連調査(文献調査):文献渉猟+レビュー
- 調査研究チームの編成:色々な角度から分析できるよう、得意技を持っている人を選んだ
-
- 小田先生は?・・・レファレンスサービス研究をライフワークとしている立場からのまとめ役・全体を見ての貢献
- 実態調査・・・中央館だけでなく分館・地域館・分室レベルまで対象にした
- 2003年の全国公共図書館協議会の調査は中央館のみ対象だが、今回は分館レベルまで全て
- レファレンスサービスの施設・設備面の質問がある。それに答えるには分館レベルまでやらないと、きちんとしたデータが出てこない
- 実際の質問紙を見ると・・・特徴:
- 災害時の話なども含まれている・・・「レファレンスサービスと関係ない?」と思われる?
- しかしそれこそが問題意識にもつながる。災害時の情報提供はレファレンスサービスそのものではないか?
- 能動的なサービス/質問が寄せられるのを待たないサービス、ということが質問紙の背景にはある
- 課題解決支援、とりわけリスク時の情報活動支援
- 災害時の話なども含まれている・・・「レファレンスサービスと関係ない?」と思われる?
- 認識調査・・・ある程度は対象を絞らないといけない
- 3つのグループを設定、さらにそれぞれ3分した9のグループについて、3名ずつのインタビュー対象を選定
- グループA:ボランティア活動を行なう人たち・・・特に東日本大震災のボランティアを意識
- 現地ボランティア
- 情報支援をするボランティア
- 後方支援するボランティア等
-
- グループC:在野の研究者
- 特定の組織に属さない研究者。情報ニーズはあるが、組織に属して情報を得ることが難しい方
- グループC:在野の研究者
アンケート調査の送付対象及び回収状況:岡本一世さん(株式会社シィー・ディー・アイ/発送・集計担当)
- 調査対象:トータル5,257館室に発送(ISIL・・・図書館等の国際標準識別子/国内の主要な図書館は登録、の登録館すべてに)
- 分館も対象とする
- 意図的に除外したグループ・・・
- 被災・復旧中の館・・・回答が困難と考えられる
- 公民館図書室・・・ISILに網羅的に登録されていない
- 館名以外の情報を非公開としている専門図書館・・・回答の公開が前提なので協力が困難と判断
-
- ISIL非登録で、発送を希望した図書館にも発送(5,257に含まれる)
- 調査経緯:
- 回収結果:
-
- 通常はこの手の調査は発送1週間後と、締切日の2回山があるが、今回はほぼ締切日に集中
-
- 回答手段・・・FAXが6割、メールは25%(郵送も1割)
- 中間集計:
- 先生方の分析の元になるデータ・・・辻先生以外は中間集計データを元に分析(辻先生は最終データ)
- 中間集計データ:3,726館分(95%)で行った速報値
- 最終集計は1/25に出てきたので、はやめ(2012.12末)に中間集計を渡して分析を依頼
- 速報値ではあるが全体の95%、大学・専門図書館は99%なので問題ないと考えられる
単純集計に見る傾向:辻 慶太先生(筑波大学 図書館情報メディア系 准教授)
- 63問あるので40分ですべては紹介できない
- 面白い結果が得られなかったものも多い
- 今回は2点に焦点を絞る:
- レファレンスサービスとはどのようなものと図書館に認識されているか?
- 個々のサービス・活動を「レファレンスサービス」とみなす図書館はどれくらいいるか?
- どのようなサービス・活動の集合を「レファレンスサービス」と捉えているか?
- どのようなサービス・活動を実施するとレファレンス受付件数が伸びるか?
- 因果関係の証明は難しいので語弊があるが、平たく言えばそういうことを調べた
- レファレンスサービスとはどのようなものと図書館に認識されているか?
基本情報:
- 蔵書・・・10〜50万冊の割合が公共/大学で高い
- 職員数・・・公共・大学は5-10人、専門は5人未満が多い/うち専任はいずれも5人未満が多い
- レファレンス件数・・・公共は1,000件以上、大学は500未満、専門は100-500が多い
- それぞれの関連:
- 蔵書、職員、専任数と質問受付数、職員一人当たり受付数の相関関係を調べる
- 職員数でわらない受付と蔵書数の相関・・・正の相関が高い
- 職員一人あたりの受付数を見ると・・・蔵書数と相関がない
- 受付数と職員数も同様で一人あたりの受付数に正規化すると相関がない/専任数も同様
レファレンスサービスはどのようなものと思われている?
- 国会・大学・専門図書館・・・資料の所蔵の有無に関する質問への回答を「レファレンスサービスとして実施している」割合が高い
- しかし公共ではそれはレファレンスサービスとはみなされない傾向がある
- 公共図書館で一番「レファレンスサービスとして実施している」のは、「幾種類かの資料を調べる必要があるような質問への回答」をレファレンスサービスとして実施している。公共では情報の提供=レファレンスサービス、と考えている?
- レファレンスサービスとしてではないが実施されている業務・・・
- ではこれらのサービスの組み合わせパターンは?
- 公共・・・一番多いのは「特別コレクションへの質問回答」や「自館のデジタルアーカイブへの質問回答」はそもそもやっていない
- 次に多いのは上記2つはやっていない+質問に回答し情報提供するもの以外はレファレンスサービスではない、と考えるもの
- 公共・・・一番多いのは「特別コレクションへの質問回答」や「自館のデジタルアーカイブへの質問回答」はそもそもやっていない
-
- 大学・・・一番多いのは公共と同じ、ついで特別コレクションへや自館のデジタルアーカイブへの質問回答もレファレンスサービスと思ってやっている、というパターンが多い
-
- 「レファレンスとしてやっている」と回答するサービスの多い図書館では職員一人あたりの受付件数が多い傾向
- 国会・公共・専門はレファレンスサービスの記録作成もレファレンスサービスと考える傾向
- 大学はそれよりはレファレンスサービスの統計作成をレファレンスサービスと考える傾向
どんなサービスをやっているとレファレンス受付件数が伸びるか?
- レファレンスサービスを重視しているところではレファレンスの受付実績がわずかに多い
- レファレンスサービスの独自のスタッフマニュアル(7割の図書館にはない)がるところではレファレンス受付件数の増加が見られた
- レファレンスサービス事例の記録と受付件数の間には相関は「ない」・・・してもしなくても件数は変わらない? なんとなく悲しい結果・・・
- レファレンス独立のカウンター/デスクがあると受付件数は伸びるのか?
- 受付数ではある/一人あたりに正規化するとない
- 独自ツールの作成・・・あまり受付件数と関係ない
- 商用DBの契約・・・受付数と相関/特に専門図書館で伸び
- webフォームを設置すると?・・・受付数は減っている(!)
- どういうこと? 最終報告までに細かく見る
- メール/ブログレファレンスは受付数と関係ない
- webページにレファレンスサービスを紹介するページがあると?
- まずそもそも3割の館はレファレンスサービスを紹介していない・・・存在自体を売っていない?
- 昔はあった? Internet Archiveとかで遡って見て、いつ消えたかをいつか調べたい
- webページで紹介しているところでは、受付件数との間に正の相関
- まずそもそも3割の館はレファレンスサービスを紹介していない・・・存在自体を売っていない?
- Twitter、Facebook、ブログを使っていてもレファレンス受付は伸びないが・・・
- イベント・講座等の案内を(web上で、メディアは問わず)している図書館は、正規化後の受付数とも相関がある。web上で積極的に案内をすると受付も伸びる・・・かも?
- (大学図書館のみ)ラーニングコモンズとレファレンス受付の関係?
- ラーニングコモンズでのサービスとして、学部生・院生によるピアサポートをしていると、レファレンス受付件数は伸びている
- 学部生は雇ってもそれほど高くもないので、常駐させておくと良いのでは?
- 過去10年以内に利用者満足度調査を行ったかどうかと、受付数の間には相関はないが・・・
休憩
館種別クロス集計に見る傾向(公共図書館編):間部豊先生(北陸学院大学短期大学部コミュニティ文化学科准教授)
- 公共図書館は本館以外も込みで2,322の回答
- レファレンス受付実績
- 1,000件未満で約7割だが、1,000-5,000件という回答が最頻値
- レファレンスサービスとして行なっているもの/行なっていないもの(直接支援関連)
- レファレンスサービスとして行なっているもの/行なっていないもの(間接支援関連)
- 行なっている・・・レファレンスコレクション収集等
- 行なっていない・・・デジタルコンテンツの活用等
- レファレンスサービスとして行なっているもの/行なっていないもの(その他)
- 行なっている・・・レファレンス事例の記録
- 行なっていない・・・レファレンス事例の公開
- 統計時に「レファレンス質問」と回答するもの・・・
- 資料を使って答える系のサービスが多い
- 現在重視しているサービスは?
- 児童サービス、貸出、資料の収集選択整理、の次に来るのがレファレンス
- 特別重要視はされていないが、ふつうの扱い。図書館サービスには位置づけられている
- レファレンスサービスのスタッフマニュアルはある?
- 事例記録媒体は?
- レファレンスサービスの広報方法
- どうしたらレファレンスサービスの受付が伸びる?
- 1位:職員の力量を上げる、2位:広報
- レファレンスサービスの施設について:
- インターネット上の情報にアクセスできる環境の提供について:
- 端末用意/アクセス環境用意/一部のコンテンツのみ提供、をあわせると60%以上くらい
- 都道府県立は提供率が高い⇒町村立では下がる
- 担当職員の配置:
- レファレンスサービスの情報源:
- 作っている所・・・3割強。規模と関係
- 8割以上の図書館がインターネット情報源も用いている
- ほとんどの図書館はインターネット情報源をレファレンスサービスに用いることに特にマニュアルは作っていない
- 7割の図書館は同じ情報が載っている場合にはwebサイトの優先付けも行なっている
- 利用する商用DB・・・新聞記事検索/法情報関係が多く、JDreamIIや医中誌Webは少なく、外国語はほとんどない
- レファレンスの受付方法:
- 従来型の口頭・電話も多いが、メールなどもインターネット関連の中では使われている。ブログ・SNS等は少ない
- 使わない理由としてIT環境の不整備等もあるが、「あまり利用があるとは思えない」という回答も10%程度
- 従来型の口頭・電話も多いが、メールなどもインターネット関連の中では使われている。ブログ・SNS等は少ない
- Webサイトとレファレンスサービス
- Webサイトを持っている図書館は多い
- レファレンス専用のページがあるか、レファレンスを紹介しているページがあるのは7割超程度。これも規模と関係あり
- Webサイトでもっぱら行なっているのはイベント案内と休館情報等。レファレンス質問の受付・回答等は10%程度
- 機関外の利用者からの質問受付・・・
- そもそも電子メール等の場合には自治体内か確認しているのは25%程度
- レファレンスサービスの課題
- 研修時間の不足/職員間の経験共有のなさが問題視される
- 災害時の支援:
- 資料展示や利用受付範囲の拡大等が多いが、特別支援をしなかったのも15%程度
- 被災時マニュアル・・・あるところが多いがないところも28.3%
- 自館が無事だった場合・・・館として支援するより職員の自発的な活動を支援する傾向?
- 被災地への支援については計画を持たず、時々の判断で行なう、とするところが74.2%
館種別クロス集計に見る傾向(大学・専門図書館編):渡邊由紀子さん(九州大学附属図書館 eリソースサービス室長)
- 大学・専門図書館回答数・・・
- 大学:1,252館
- 専門:152館
- レファレンス質問受付実績:
- 最頻値・・・100-500件(専門/大学共通)
レファレンスサービスの運営
- 重視している業務:資料の選択収集整理が大学・専門とも一番重視される
- レファレンスは大学では2位、専門では3位
- レファレンスサービス事例の記録
- 専門では約70%、大学では60%がなんらかの形で記録
- 大学のほうが記録しない率が高い
- 記録媒体は処理票が最多。大学ではレファ協への自館登録は8%しかない
- 記録しているのは複数日、かかるものや複数資料を見る必要があるもの
- 記録の目的は大学では統計作成、専門では上司への回覧・報告
- 大学では利用者への公開は少ない
- レファレンスサービスの広報方法
- 多いのはパンフレットとウェブサイト
- 大学では広報を行なっていない:約19%、専門:約37%
- レファレンスサービスの利用を伸ばすには?
- 広報/職員の能力を高めるが多い+大学ではフロアワークとウェブを介したレファレンスの充実もよく選ばれる
- カウンター/デスクの設置状況・・・
- 専門では約5%、大学では約25%のみ。貸出カウンターと一体のところが多い
- インターネット上の情報へのアクセス環境提供:
- 大学では8割以上、専門では5割弱がネット接続端末提供
- 大学では持ち込みPCのネット環境も6割弱が提供
- 1999年の調査に比べて大学図書館のネット接続環境は向上している
- レファレンスサービス担当職員の配置:
- 専門59.2%、大学37.9%、いずれも公共(27.2%)より高い
- 大学は正規職員+司書資格が多く、専門は正規職員(資格問わず)が多い。専門は非正規の割合が他館種より低い
- 独立部署はないが事務分掌でとりまとめ役がいるところは4割強
- レファレンス情報源:
- インターネット上の情報利用・・・大学図書館では9割。有料のものをよく使っている
- レファレンス質問受付の手段:
- 大学・専門ともに口頭・電話受付が多いが、電子メールも主流になってきている
- 手紙でのレファレンスは(電子メールよりも)受け付けていないところが多い
- インターネットでの受付を使っていない理由としては人手とIT環境不足が多い
- 「あまり利用があるとは思えない」とする回答も多い
- 大学・専門ともに口頭・電話受付が多いが、電子メールも主流になってきている
- 図書館ウェブサイト・・・
- ラーニングコモンズ
- 設置・計画中が25%。本館に置こうというところが多い
- 人的サービスは実施していないところが一番多いが、あるとすればITサポートとレファレンスサービスが同数
- レファレンスサービスの課題
- 事例のデータ化・蓄積不足が一番多い
- ついで人手と研修
- 利用者から質問が来ない、簡単な質問が多い、といった回答も大学では多い
- 災害時支援
- 大学は自分が被災したら対応、専門は被災しても特別な対応はしないが多い
- 東日本大震災では特別な対応をしなかったところが多い
- 被災マニュアルはないところが多い
- 自分が無事だった場合の被災地への支援・・・専門はするとするのは半数未満、大学はなんらかの対応をするところも
- 大学ではレファレンスの受付範囲を広げる、も、12.7%の大学が選択
- 被災地に対する支援については計画は持たず、その時の判断で行なう、とするところが多い
- 現段階で計画があるのは東北の私立大学1館のみ
質疑応答・意見交換(進行:小田先生)
- Q. 専門博物館図書館の方:他館のレファレンス事例を見ていると立派な事実調査が多いが、図書館員は研究員ではないんだし、調べもののお手伝いができれば十分と考えていて、文献紹介が主。答えを出しても良いのかと思うのだが・・・館種によって事情も違うかも知れないし、博物館の場合は学芸員も多いので研究はそちらに任せて、とも思っているが・・・
- 小田先生:基本的な図書館の運営方針との兼ね合いと思うが、どちらが望ましいかは終わってからにでも。今のお話を、質問紙のデータの中から、どう考える図書館が多い/少ないなどと考えることはできる。専門だと、どうでしょう?
- 渡邊さん:事実調査なのか文献紹介なのかは、今回のアンケートの項目ではわかりにくいが・・・
- 小田先生:例えばQ.2の(7)、(8)が、質問への回答として事実そのものを提示するか「これを見て」と文献を紹介する場合がありうるが、仮に事実を提供しているとみなすと?
- 渡邊さん:専門図書館の回答館の大半はそれをレファレンスサービスとして扱っている。大学も、非常に多くの割合でそれをレファレンスと思っている。
- 間部先生:公共だと比較的高いのが、資料を使って情報そのものを回答するタイプ。公共図書館の場合は事実調査が高い傾向はあると思う。
- 辻先生:先ほど発表したように、受付件数との相関を調べると、辞書など1〜2冊の資料で回答できる質問を専門図書館が重視した場合は相関係数0.22、幾種類か調べるちょっとむずかしいもので0.25、複数日かかる難しいものだと0.10に下がる。難しい質問に答えようとすると、受付件数は下がる傾向はあるかもしれない。ただ、「どうすればいい?」というのは、何に対して「いい」と答えればいいの?
- Q. いい・悪いというよりは、事実調査までしてしまって良いものか、調べ物のお手伝いで十分なのか、ということ。
- 小田先生:それは我々の反省材料に加わるかも知れないが、そこまでの調査項目は設定していない。ここから先は分析範囲になるが、Q.6でレファレンスサービスについて、どのように利用者に説明しているかの自由記入項目がある。そこでどう説明しているかということを分析すれば現状は拾える。今のところ、中間報告の段階では踏み込んでいないので、最終報告に向けてのご意見として。
- Q. 某児童図書館の方:決着がついたことを蒸し返すようだが、図書館のサービスを説明するためにレファ協を調べていたところ、ユニークなというか、専門図書館ではこちらにわからないような目に付く回答が多かった。「そこでしか答えられない」というようなものに答えているものが多くて・・・レファ協で専門図書館を調べれば色々なところがある、というヒントになるのでは?
- 小田先生:逆に「ここを特に知りたい」というところがあれば、「このあたりがポイントになりそう」という感触はある?
- Q. 国会図書館でもレファレンスサービスのあり方を検討しているところで、ぜひ我々の検討にも活かしたい。そこで、自治体種別ごとと申したのは、都道府県〜町村立まで規模も違うし、本館/分館もある。それぞれ1館ずつカウントした総計だけで、データを云々しても、ちょっと全体の状況をつかむには・・・欠けているところがあるのではないか。単純集計を見ても、多いところは紹介があったが、かなりばらつきがある。「何をレファレンスサービスとみなしているか」についても、結果をよく見るとかなり・・・数値ばらついているので、都道府県立図書館の結果と、小規模な図書館、分館の回答とで傾向が違うのではないか。自館で解決できなかった場合の解決等も、市町村立や分館と都道府県立では違うだろう。その辺を知りたい。NDLの今後を考える際にも、当然、全国の図書館との相互協力であるとか役割分担も考える必要があると思うので・・・全国レベル、2,000何百館のデータがあるので、特に公共図書館については、自治体種別の生データがあるわけで、ぜひ提供いただきたい。
- 間部先生:ご指摘ごもっともと思います。今回は時間も限られていて、自治体種別の分析がない項目もあったし、浅い分析も多かった。ご指摘を反映したいと思う。データそのものは全部、webに・・・出るので、報告書に含まれるかはわからないが、web上に掲載されるデータを活用できる形でまとめていきたい。
- 小田先生:最終報告では辻先生がそこをまとめられるので、今のお話も踏まえて。一つ付け加えると、今回の分析は項目によって繊細に、やり方を考えないといけない。自治体種別もそうだが、サービスの位置づけの話は中央・分館で違うことはそうそうありえない、となれば、自治体としての視点で見ないと全体の数値が変わってしまう可能性がある。それに対して図書館施設については館単位でないと正確にならない。そこは最終報告書で留意したい。
- 自分:レファレンス受付数の伸びは、何をレファレンスと思うか(何を集計するか)で変わってしまうのでは?
- 辻先生:何をレファレンス質問として集計しているか、も聞いているし、それで正規化できるんじゃないかと思う。
- 自分:ああ、なるほど、それはよさそうですね。
- NDL館長・大滝先生:質的調査に関して、代表的な部分でもいいのでご紹介いただければ。
- 小田先生:大きなイメージとしては、質問紙調査よりもグループインタビューを念頭に置いている。今日の内容には盛り込んでいないが、それが質的調査のメイン。それとは別に、質問紙の中にも質的な項目、自由記入項目がある。それを丸めて「○館が〜」といってしまえば量的な調査にあたるが、そうではない分析をすれば質的なものともみなせる。ただ、質問紙の中では質的なものはそれほど組み込んでいない。
- CDI・岡本さん:公共の中央館の回答率は、都道府県立100%、特別区95.7%、政令指定都市94%、その他の市立は82.3%、町村立は66%、私立60%。この中央館数が自治体数と一致するかは、登録館数の問題もあるのでわからないが、このような割合。
- NDL・利用者サービス部の方:レファレンスサービスを行なう際に他館との協力は常に念頭に置いているが、他の図書館は私達に何を求めているのか、どういうことをして欲しいと思っているのか考えながらサービスするのが大事と思っている。今回の調査で、具体的に求められていることは出てきそう? それとも、類型的なものを傾向として読み取れる、というようにまとめる方向?
- 小田先生:質問紙に関して言えば、今のような質問はない。NDL自身も対象なので、NDLに何を期待しているかの項目はない。そうではなく、各図書館の課題の部分、レファレンスサービスに関する課題の部分をいかに解釈するか、という問題になってくる。報告書では冒頭で述べた方針のように、提言そのものは行わない。記さない。ただ、提言に結びつく指摘をする。それを報告書の中、特に第3章に書きたい。それに基づいてどう解釈するかは次のステップと思う。「このデータからこんなことができるじゃないか」ということを、図書館関係者あるいは関係ない人とも知恵を出し合う場を作る、その第一歩にしたい、という捉え方。報告書にいきなり「こういうことをすれば良い」ということが入るわけではない。ただ、そのためのエビデンスはお出ししたい。むしろ解釈の部分では「こんなことできるんじゃないの?」ということを出していただければ有難い。
最終報告会のご案内等: 兼松芳之さん(国立国会図書館関西館図書館協力課課長補佐)
- 今回は中間報告会
- 50名ほどの方にお越しいただいた
- 最終報告会を3/21(木)の13:30から予定している
- 最終報告会は関西館で。連休の谷間なので、ぜひタイミングを狙ってお越しいただければ
- 他にもイベントの重なる時期なので、ぜひお越しいただければ!
- 詳しくは後日、カレントアウェアネス・ポータル等で広報するので探していただければ
- 最終報告会にたどりつけるようにみんなでがんばらないと!
今回の中間報告会は質問紙調査の結果中心ということで、皆さん表を使ってお話されており、いつもの自分の文字で書く方式だと全然内容が伝わりませんね(汗)
詳細については3/21開催の最終報告会、さらに刊行される予定の報告書をご覧いただければ、と思います。
文字だけで伝えきれない、表形式で表現されたデータにこの調査前半の面白さが色々あると思うのでー。
大学図書館と公共図書館の傾向の差とか如実ですしね。
こんなにも何をレファレンスサービスと思って実施しているか、って点から認識が違っていたとは・・・普段のレファレンスに関する何気ない会話レベルから、お互い本当に意思疎通できていたのか考えなおしてもいいやも知らんレベルですな・・・(汗)
あとは、中間報告会では触れられなかった質的な部分がやはり気になりますね!
すでにインタビューは終わっているとのことで、最終報告会ではそのあたりも詳しく触れられるはず!
「ボランティア」「在野の研究者」「農林水産業従事者」とそれぞれ特徴的なグループに対するインタビュー調査とのことで、どんな風に結果をまとめられるのか・・・結果自体はもちろんのこと手法にも興味が尽きない感じです。
さらに将来的にはデータも公開予定とのことですし、図書館員はもちろんのこと、研究テーマを考えている学生さん等もこの先の動きに注目です!
・・・3/21は用事のため日本におらず、自分は最終報告会参加できないんですけどね・・・orz
どなたか参加される方、記録プリーズ。ぜひに。