「国会図書館のサービスを使おう」「学術情報サービスCiNiiとその周辺」(Wikimedia Conference Japan 2013参加記録その2)
ひき続いてWCJ2013参加記録ですよ!
Wikimedia Conference Japan 2013 (WCJ2013) では、各種催しを企画しています。基調講演にはウィキメディア財団のJay Walsh(ジェイ・ウォルシュ/Head of Communications, Wikimedia Foundation)、知の構造化センターの吉見俊哉(知の構造化センター副センター長/東京大学大学院情報学環 教授)両氏をお迎えします。
このほかの講演などについては講演概要とタイムテーブルを参照ください。ウィキペディア執筆への様々な取り組み、ウィキペディア研究、執筆ワークショップ、写真教室などを検討中です。
はやいときははやいが遅いときはとても遅い、それがかたつむり〜クオリティ。
とかそんな言い訳(にもなっていない)はさておき。
午後の最初の休憩まではB会場、Wikipedian向けにNDLやCiNii等の便利なツールの使い方を紹介するセッションに潜り込んでいます。
発表者が原田隆史先生と大向一輝先生なので、個人的にはなんという身内感・・・ですが、そのお二人がWikipedian向けにどんなお話をされるのか、という点で興味があってB会場に来てみました。
以下、当日の記録です。
例によって例のごとくあくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での内容であり、ご利用の際はその点、ご理解いただければ幸いです。原田先生はスピードもはやいですし取りこぼしも多いかと思いますが、請う御容赦(汗)
誤字脱字・事実誤認等お気づきの点があれば、コメント等でご指摘いただければ助かりますm(_ _)m
「国会図書館のサービスを使おう」(原田隆史先生、同志社大学/国立国会図書館)
- タイトルがプログラムと変わっているけど中身は一緒!
- 自己紹介と趣旨:
- 同志社大学教員 兼 国会図書館非常勤調査員
- このテーマで話して、という依頼が来たのは国会図書館サーチを作るお手伝いをしていたため
- その最初に、国会図書館の検索サービスを使っている、あるいは使う予定の人々、あるいは対象となる職種の方に集まっていただき、どう思っているかを聞いた
- その際に、15回、毎回10数人、人を集めてやった。大学生、高校
性生、マニアっぽい人々・・・ - その結果を活かす形で国会図書館サーチを作った
- そこでお話を聞いた際に、「呼ばれて仕方ないので国会図書館のページを見てみたが、予想もしない機能があったり、知らないサービスがのっていることに気づいた。それを広報しないといけない、と言われた
- 国会図書館の予想以上に、サービスが知られていない。結果として使われない
- 何をしているかだけでも構わないので20分紹介して、と言われたので今日、話す
- 目新しい話ではない。国会図書館のサービスに詳しい方なら知っている話ばかりかも? 御容赦ください
- 来館者向けサービス:
- 基本的に本は書庫に入っている。コンピュータで検索してカウンターで出してもらう+コピーしたいときは複写カウンターへ
- 納本した本の書誌を作成・提供・・・デジタル化/外国機関との提供も
オンラインサービス:今日の中心テーマ
- 立法情報:国会会議録・法令検索サービス
- 様々な調査資料・外国立法情報等を公開
- 国会の会議検索システム
- 帝国議会会議録(明治〜昭和22)を探せるhttp://teikokugikai-i.ndl.go.jp/
- 国会会議録検索システム(昭和22〜)http://kokkai.ndl.go.jp/
- 日本法令索引http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/
- 調べ方案内:
- リサーチ・ナビhttp://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/
- どうやって探すか、探し方を教えてくれる
- 資料の種類/テーマ別/画像・・・探し方の情報を公開
- webで公開されているデータベースのナビ(Dnavi)も!
- リサーチ・ナビhttp://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/
-
- レファレンス協同データベースhttp://crd.ndl.go.jp/jp/public/
- 図書館のレファレンスサービスの記録を国会図書館が収集・探せるように公開
- 登録数10万件。億単位のQ&Aサイトには劣るが、資料の裏付けがある結果が示されている点で面白いはず
- レファレンス協同データベースhttp://crd.ndl.go.jp/jp/public/
- 電子図書館:資料のデジタル化とweb上での提供
- 古典籍・明治期の本などをデジタル化してwebで公開している
- 明治以前のものと明治以降(近代デジタルライブラリー)http://kindai.ndl.go.jp/
-
- インターネット資料の保存・収集
- webページ等のうち、公共機関のものを集めて、更新前のものとあわせて保存
- Internet Archiveは世界を集めている/日本の一部をNDLが集めている
- IAのブリュースター・ケールさんとも連絡を取っていて、日本の分のwebページは貰っても要るのだが、今は公開できない
- インターネット資料の保存・収集
- 電子展示会:資料をまとめて提供http://www.ndl.go.jp/jp/gallery/
- 最新は昨年12月公開の「江戸の数学」
- 東日本大震災アーカイブ(開発版):震災に関する資料を集めて、日本中の震災アーカイブのメタデータも集めて、統合検索を実現
- 3月公開予定。タイムラインや写真集合等を見られるようにしているので公開されたら見てみて!
- 国立国会図書館サーチ(NDLサーチ):国会図書館、都道府県図書館、日本中のデジタル資源提供機関等の統合検索サービス
- ぜひ、使ってください!
「学術情報サービスCiNiiとその周辺」(大向一輝先生、国立情報学研究所)
- 国立情報学研究所(NII):
- NIIの学術情報サービス:
- 研究に使う資料を集めたり、取りまとめて検索できるようにしたり、本物のデータを提供したりしている
- おおむね提供物は4種類:
- 論文情報
- 大学図書館が何を持っているかの目録情報
- 研究者が研究費を取ってきた、その報告書のデータベース・・・日本でどんな研究が盛んかを俯瞰できる
- 大学が個々で持っている、自分の成果・・・それを色々情報を集めて提供している
- 今日のメインは論文の話:
- 論文をネット上で検索・入手できるサービス。2005年くらいから開始
- それ以前は、インターネットではないだけで、端末からの検索はできた
- それをwebにあげて、検索だけなら誰でもできるようにしたのが最近。今はGoogleなどからも探せるように
- 連携しながら情報入手を良くしようと頑張ってきた
- 現在は月間2,000万アクセスくらい
- 今や大学生はCiNiiを見ないで卒論を書くことはない。「卒論請負サービス」とも呼んでいるが、研究資料のダイレクトな提供に役だっている
- CiNii Articles(論文検索/本の検索はBooks)に入っているもの・・・
- 400万件あるうち、本当に誰でも読めるのは45%、200万弱くらい
- そうでない、定額アクセスのもの・・・同じくらい
- 誰でも有料のもの・・・10%くらい
- つまり誰でも200万くらい、大学にいれば380万くらいは誰でも無料で読める
- CiNii Books:
- 全国の大学図書館が持っている本の情報を検索できる
- NDLとの違い・・・日本の本だけではなく海外の本がかなりを占める一方、漫画等の大学にないものはない
実際のデモ
- 検索機能は奥が深い・・・研究でちゃんと使う際にはなんらかの基準で探せる事が重要
- CiNiiの特徴・・・ほぼ全ての分野を網羅している
- 色んなプラットフォームがあるが、まんべんなく持っているのは少ない。代替サービスはない
- 多様性を知るために、なんでもかんでもCiNiiに入れてみるのも手だが・・・
- おすすめ:論文ったー:Twitterのバズワードを検索・提示
- http://twitter.com/ronbuntter
- 今だと節分関連の論文/ちょっと前だとアイドル関連で丸刈り論文が多かった
- こういうのもウォッチしているとけっこう面白い
- おすすめ:論文ったー:Twitterのバズワードを検索・提示
- 他にも・・・高校生向けのCiNiiを使ったサービスなどの例も:
- APIによって機会可読な情報を提供しているからでもある
- CiNiiの限界:がんばってはいるが究極的に素晴らしいものとも言えない
- 収集したものしか表示できない・・・「この分野でうちが扱っていない学会がどこか」はリストしていないので、抜けているものがありうる
- ない学会についてはまず学会の方に「CiNiiに載せろ!」といって欲しい
- そもそも電子化を嫌っているところもけっこう、まだまだある
- 査読有/無の区別がシステムではできていない・・・専門分野の人には常識でも、そうでない人には正しい情報か否かはわからない
- 被引用の数字等も見つつ?
- 究極的に論文の正しさはわからないので、注意を
- 国内論文限定・・・分野によってはそもそも日本語文献がないところも
- Bio等。文献そのものが英語でしかないといくら探してもひっかからない
- 英語論文についても興味を持ったらチャレンジを!
- 人文科学系なら日本語しかないことも多いので、こちらに
- Google Scholarがあるから、という人もいるが・・・
- 論文をそこだけで探せるサービス、というのはな。Google Scholarも、CiNiiのデータが欲しい、と言ってくる。それがないとPDFファイルが論文かどうかすら判定できない。出版社・学会が作っている論文リストがあるからGoogle ScholarやMicrosoft Academic Searchが動いている。あれがあれば論文が探せる、わけではない
- 収集したものしか表示できない・・・「この分野でうちが扱っていない学会がどこか」はリストしていないので、抜けているものがありうる
- 最後に:
- まだまだやらないといけないことはいっぱい・・・400万でもまだまだ足りない
- 逆に・・・デジタルしかない論文/誰でも簡単に作って自分でアップできるようになって、ひとところに論文が集まらない。どうする?
- 会議録・・・分野によっては、特に情報系では雑誌より国際会議の方がいいが、そこの収集・管理もがんばらないと
- リコメンデーション・・・読み切れないので、日本語論文を読んだ人に「この英語論文も」とか
- 電子ジャーナル・電子ブックへのナビゲーション
- 定額アクセスできる人を増やしたい・・・普通の人でもいくらか払えばCiNii論文読み放題、にすることが、知識世界に貢献する方法かと思う
- まだまだやらないといけないことはいっぱい・・・400万でもまだまだ足りない
質疑
- Q. いつも使っているんだが、ダウンロードできないものが多い。読みたいと思っても、けっこう欲しい論文がない。有名なものは手に入るが、手に入れたいものが手に入らない。すぐ欲しいときに、今後、NIIで学会に提供を求めていくことはされる?
- Q. CiNiiの検索履歴からリコメンデーションを行なう、というようなことができるとおもしろいと思うが、そういうのは考えている?
- A. パーソナライズドサービスはやるかやらないか。やるならお金がかかるので、どれくらいならやっていいか悩んでいる。また、CiNiiの論文だけが論文ではないので・・・最近注力しているのは、文献管理サービスになるべく1クリックで登録できるようにしつつ、そっちの方でリコメンデーションしてもらって・・・どう考えてもCiNiiのデータでないとできないことがあれば、そこは僕らがやる。分担したい
Wikipedia・・・に限らず何をする際にも便利なサービス(群)×2の紹介セッション。
にしても、あらためて列挙するとNDLのサービス群の多いこと・・・
CiNiiについてはこれですね:"ない学会についてはまず学会の方に「CiNiiに載せろ!」といって欲しい"。
探してみるとけっこうCiNiiに載ってない雑誌も多いわけですが、CiNiiに直接言うよりは学会に言って、学会側がCiNiiに載せないと・・・と思ってくれるように働きかけるほうが良い、と。
この次と、さらにその次の時間は、自分の発表前後だったこともあって取れていなかったり(汗)
次はけっこう飛んだ時間のA会場のセッション、ですが、さて、すぐアップできるかどうか・・・。
「Wikipediaの現在の課題と、どのようにして一緒に日本のWikipediaコミュニティをサポートするか」&「エンサイクロペディアとアーカイブの結婚:ウィキペディアから新しい大学は生成するか」(Wikimedia Conference Japan 2013参加記録その1)
今日は東大で開催されたWikimedia Conference Japan 2013(WCJ2013)に参加して来ました!
Wikimedia Conference Japan 2013 (WCJ2013) では、各種催しを企画しています。基調講演にはウィキメディア財団のJay Walsh(ジェイ・ウォルシュ/Head of Communications, Wikimedia Foundation)、知の構造化センターの吉見俊哉(知の構造化センター副センター長/東京大学大学院情報学環 教授)両氏をお迎えします。
このほかの講演などについては講演概要とタイムテーブルを参照ください。ウィキペディア執筆への様々な取り組み、ウィキペディア研究、執筆ワークショップ、写真教室などを検討中です。
WCJ2013についてはときどき、Wikipediaの画面上部に案内等も表示されていたそうなので、それで見た方も多いかも知れません。
午前中にはWikimedia財団のWalsh氏と東大・吉見俊哉先生による基調講演、午後はこれからWikipediaを編集しようという人(A会場)、現在Wikipediaを編集している人(B会場)それぞれ向けの講演集、という形式で開催されました。
今回は一参加者であると同時に、自分もA会場で、午後の部でWikipediaと学術情報流通について、自分&筑波の後輩たちの研究ラッシュみたいな発表もしてきました!
以下、まずは午前の部:Wikimedia FoundationのWalshさんと、東大の吉見俊哉先生による基調講演のメモです。
例によって例のごとくあくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での内容であり、ご利用の際はその点、ご理解いただければ幸いです。
誤字脱字・事実誤認等お気づきの点があれば、コメント等でご指摘いただければ助かりますm(_ _)m
「Wikiの現状:The State of the Wiki」(Jay Walshさん、Head of Communications, Wikimedia Foundation)
ビデオ上映・・・世界のWikipedia編集経験者がインタビューに応えるもの
-
- 世界で活躍するWikipedianの映像
- Wikipediaの裏で動いている人たちについてわかったと思う。この部屋にもいるでしょう
-
- これらWikipediaのすべての仕事は世界中の、無報酬で働くWikipedianによるということ
- Freeの知識/協働を愛する気持ちから
- アクティブなユーザ8万人。ただ、これが年々減っていることが現在の課題でもある
- これらWikipediaのすべての仕事は世界中の、無報酬で働くWikipedianによるということ
Wikipedia日本語版について:
- 日本語版は285の言語版の中で、記事数で第9位のWikipedia
- ドイツ語版と比較しつつ論じる
- 2001年、英語版立ち上げ直後に立ち上がったプロジェクト・・・記事数約90万
- アクティブな編集者(月に5回以上編集する人):約4,000人
- ドイツ語版も同じ時期にはじまった・・・記事数約180万
- アクティブな編集者:約6,500人以上
- 2001年、英語版立ち上げ直後に立ち上がったプロジェクト・・・記事数約90万
- アクティブな編集者の動き:英語版との比較
- 日本語版は2007年にいっきに編集者数が増えている/これは英語版も同じ
- 日本語版はその後、数は安定推移/英語版は数が少しずつ減少している
- 訪問数の多いWikipedia日本語版のページ:
- Wikipedia日本語版に関する仮説:
Wikimedia財団について
- 160人くらいのスタッフで運営
- ソフトウェア開発者、デザイナー、管理者、法務部・・・
- 拠点はカリフォルニア州サンフランシスコ。世界中からスタッフ
- 主な仕事はWikipediaと関連プロジェクトの財源確保
- やりたいのはサイト運営<<<Wikipedianの活動の活性化と支援
- 財団のミッション:
- 世界中で自由な知識が広がることを支援する
- Wikimedia財団の課題:
- ボランティアコミュニティが活動する中で抱える複雑な課題が色々あるが、その支援が自分たちの課題
-
- 2. 参加者数の横ばい・・・現在最大の課題
-
- 4. 旧式の複雑な編集ツール
- もう10年以上使っていて、全然変わっていない
- このインタフェースの使いづらさは新たな編集者から必ず苦情が出る
- 4. 旧式の複雑な編集ツール
-
- 5. 多様性の欠如
- 人類の知識を反映したいと思っているが、人口を反映できたものにはなっていない
- これまで活躍してきたのは学術的な背景を持つ若い男性。もっと色々な人達を巻き込まねば
- Wikipediaのアクティブ編集者中、女性は10-15%くらいでしかない。どうしたものか・・・
- 5. 多様性の欠如
Wikipediaと未来
- 課題にどう取り組むか?
- エキサイティングなプロジェクト・・・WIKIPEDIA ZERO
-
- Article feedback tool
- 記事の評価ツール。Wikipediaのページの下に星がついていて、評価できる
- 2つの目的・・・記事の品質向上/新しい編集者の支援
- ツールを通じて投稿された内容は管理者ページで閲覧できて、記事内容について議論したり反応を得たりできる
- 星の数を入力すると、トピックについて知っている人かどうか、編集してくれないか尋ねるようにもなっている
- Article feedback tool
- 編集者とのエンゲージメント:コミュニケーション/やり取りを増やす
- 編集者エンゲージメントチームが財団の中にある。シンプル・スピーディな仮説検証を繰り返し、改善をはかっている
- スピードを出せるようにテスト。編集者からフィードバックも得て、ダメなものはダメ、良い物はどんどん開発に取り込む
- 当たり前と思うかもしれないが、例えば今のWikipediaにはない、記事編集後に「保存されました」と出るポップアップなどを検討中。そうすると編集者は楽しくなって次々やらないかと考えている
- グローバルな助成制度:リソースの分散・共有
- 個人等が助成申請するのが簡単になってきている
- 助成金申請プロセスはオープンかつ参加型
どのようにして一緒に日本のWikipediaコミュニティをサポートできるか?
- まずはMediaWikiのボランティア開発チームを大きくしようと思っている。参加をお待ちしています
- 日本からも個人/団体に助成金申請を申し込んで欲しい
- 無料のプロジェクトでも活動にはお金がかかる
- 日本でもたくさん活動が行われているが、文化・学術団体とのパートナーシップの拡大にも期待している
- メジャーな文化団体とタイアップして、その知識を世の中に出していこう
- 日本の皆さんがどんな技術を必要としているかも知りたい
- リソースがほとんど英語であることについて等
- 一番大事なのは・・・「編集する」こと!
- 日本にあるパワフルなWikipediaコミュニティにどんどん参加してほしい
質疑
- Q. 文化・学術団体とのパートナーシップについて、参考になる事例があれば教えてほしい。
- A. ギャラリー、図書館、アーカイブ、博物館(GLAM)との協働についてお話したい。アメリカでは主要な文化団体はWikipediaに興味を示している。アメリカに限らず世界中でWikimedia団体が文化団体と話し合いを持っている。一番おもしろいのは、実際に文化団体にWikipedianが在中している例。最近だとスミソニアン協会にWikipedianがいるし、アメリカの大統領図書館や大英図書館にもWikipedianがいる。Wikipedianがレジデンスとしてこれらの団体で何をしているかと言えば、彼らの持つコンテンツをクリエイティブ・コモンズで公開して、Wikipediaに掲載できるようにすること。もう1つは、他のスタッフに専門性のあるトピックへの編集を呼びかけてもらっている。
- Q. Wikipedia編集者に対して質的な調査は行なっている? きっかけとか好き嫌いとか? プレゼンでは統計データが多かったがインタビュー等は行なっているか?
- A. 参加に関する調査は行なっている。一番多いのは、実際にPCの前で編集してもらってその様子を録画し、意見を拾うことなど。参加者の実際の声や録画はすぐイメージが伝わるので面白いデータ。量的データと質的データのバランスは非常に大事。両方できていると思っている、声を聞くことをとても大切にしている。
「エンサイクロペディアとアーカイブの結婚:ウィキペディアから新しい大学は生成するか」(吉見俊哉先生、東京大学大学院情報学環教授/知の構造化センター 副センター長)
- なぜか似ている16世紀と21世紀
-
- 21世紀にも同様の状況・・・グローバル化+インターネット・デジタル技術による情報爆発
- その中で新しい知識・新しい大学・新しい価値創造はどのように可能になるか?
- 21世紀にも同様の状況・・・グローバル化+インターネット・デジタル技術による情報爆発
- 知識とは何か? その基本様相は?:確認
- コピペレポートやネットの引き写しによる誤報等の問題
- 「ネット情報は禁止すべきだ!」「本との引用に大差はない、使ってもいい!」・・・意見は様々
- ネット情報は知識の基盤足りえるか?
- コピペレポートやネットの引き写しによる誤報等の問題
-
- ネットと図書館の本は何処が違うのか?
- 作者性:誰かの知識? 皆の知識?
- 書物・・・定評があると思われている作者が社会的評価をかけて出版
- ネット・・・特定の個人の観念を弱め、みんなで作ることがいい、という発想。集団全体に責任が広がる
- 構造性:要素と要素をどう結びつけるか=知識/バラバラな情報・データではなく様々な記述が相互に結びついて体系をなす
- ネット・・・この構造性をどれだけつくり上げることができるか?
- 事典づくり・・・個々の項目の説明以上に、項目の比重や項目の関連付けが重要
- 歴史性:過去との対話としての知識
- 作者性:誰かの知識? 皆の知識?
- ネットと図書館の本は何処が違うのか?
- 過去との対話としての知識に詳しく:
- 現在は世界中のアマチュアが専門家顔負けの情報を得る時代
- その情報をいかに体系化するかが「知識」には重要
- 新しい知と過去の知をどう葛藤するか? 新しい知識は過去の知の体系との対決/過去の介入・組み換えから生まれる
- 知識の体系性=歴史性には過去との対話が決定的に重要
- 構造性、歴史性、作者性を以下、念頭においておいてほしい
1. 知の構造化の方法としてのエンサイクロペディアとは何か
- エンサイクロペディア:ギリシャ語の「ククロス」(円環)と「パイドス」(学び)の合体
- ある種のネットワーキングする学び、という意味をそもそも含む
- ピーター・バークによれば・・・そもそもは高等教育のカリキュラムを指し、後にその補助教材を指すようになった
- 最初から百科事典のようなものではなかった
- 知識の体系化・・・中世:「知恵の樹」⇒近代:エンサイクロペディア、カリキュラム、ライブラリー
- 近代の出発点において、エンサイクロペディア、カリキュラム、ライブラリーは同根の存在
- フーコー:17世紀までは知識の体系は言葉と物が切り離されていない・・・この話は飛ばす
- エンサイクロペディアが可能になる認識の地平は17世紀までは未完成だが、18世紀にできてくる
- 日本では・・・西周:百学連環(1872)
- その中ではエンサイクロペディアを書物・出版物とは呼ばない、「学びのプロセスである」としている
- もちろんその一部として出版物は生まれる・・・明治以降、多くの百科事典が生まれる
- 歴史に残る大きな百科事典を作った出版社は、「必ずその後、倒産している」w
- 「こんなことやってたら会社の経営が保たない」とわかっているのにやってしまう
- なぜ倒産する?・・・編集者/執筆者が多くなりすぎる。平凡社の場合、最大7,000人の執筆者・・・お弁当代だけでも倒産する。やってられない、のがわかっているのにやっちゃう、やっちゃって、お金がつきて倒産する
- 百科事典の編纂は通常の出版と異なる。どれくらい売れるかを考えて通常は出版するが、百科事典になるとなんか社運を賭けて、かけ過ぎちゃう、そういうパワーがある
- その中ではエンサイクロペディアを書物・出版物とは呼ばない、「学びのプロセスである」としている
- 知のネットワーキングに日本で近いもの・・・「研究会」
- 「研究会」は日本語独特のもの。明治時代からある
- 「会」の中にはネットワーキングに関しての日本語的語感がちょっとある
- これはエンサイクロペディアにも通じるものがある
2. アーカイブと記録知
- エンサイクロペディア・・・ある種の集合知の構造化
- 百科事典を一人で書く人はいないし、一人で書いたものはエンサイクロペディアと呼ばない
- 色んな分野の色んな人が協働するのがエンサイクロペディア
- 対してアーカイブ・・・記録知。記録された知識をどのように保存し、活性化するか
- 吉見先生はなぜアーカイブに関わりはじめたか?
- やってみるとデジタルアーカイブプロセスについて色々見えてくる
- 同じコンテンツについても色んな形態が多層的に見えてくる
- その中でもののマテリアリティの重要性にもあらためて気付く
- 第一次大戦時期には印刷技術が発達し、1枚のポスターの中にも混ざり合っている
- ものの特性を特定するにはそれを判別するのが重要になってくる
- ルーペでポスターを拡大してじっくり見る・・・あまりおもしろいのでルーペ買って駅のポスター見たり・・・
- 2000年代・・・記録映画のアーカイブ化
- 日本社会には膨大な記録映画フィルムがあるが、失われる危機に瀕している
- 映画フィルムは腐るので、紙よりかなりフラジャイル。失われやすい。腐ると酢酸臭がするし、それが他にも伝染する。ひどくなると昆布のようにねじれだす
- ちょっとした湿温管理で変わってくる
- 現像所には5-10万とも言われるフィルムが残っている。全国に、あると気付かれない過去の記録フィルムが膨大に残っている
- 小津や黒澤ならマーケットがあるので皆抑えるが、どこの誰が撮ったともわからない風景や工場の映像などはお客さんも集まらないし、打ち捨てられる
- しかし過去の日本や近代を考える上で膨大な映像資料は重要
- 20世紀は言葉と同じくらい映像や写真が重要。しかし重要な映像が失われつつある・・・アーカイブへ
- 日本社会には膨大な記録映画フィルムがあるが、失われる危機に瀕している
3. 知識循環型社会の価値創造基盤
- なんで古い資料をアーカイブ化することが重要な意味を持つと考えるのか?
- 知識循環型社会の価値創造基盤であるから
- 知識循環型とは?
- 今の社会・・・社会全体が大量生産/大量消費が広がる一方で、リサイクル型の社会も形を見せ始めている
- 資源だけでなく文化・コンテンツ全体がリサイクル型に変化しつつある
- そのときの元となるリソースは全てある。今あるものを保存・蓄積し、再編集することで価値を生み出すサイクルをどう作るのか?
- 再び、16世紀との対比:
-
- 21世紀・・・ネット社会によってマスメディア社会は終わりつつある
- それで賢くなっているかは「?」
- 21世紀・・・ネット社会によってマスメディア社会は終わりつつある
- 「豊かさ」の転換・大衆消費から知識循環へ
- 大衆消費社会からネットとアーカイブの融合・知識循環に持って行くにはどうすればいいか?
- 研究/価値創造のトライアングル化
- 論文を書いたり研究発表をするには2つの場所をいったりきたりするプロセスが繰り返しなされているし、それを密にすることが生産性に関係する
- 2つの場所とは?
- 授業、研究指導、研究会などのディスカッション
- 図書館、アーカイブ、フィールド・・・自分のデータ/観察を集める場所
- 行ったり来たりのプロセスの中で論文/価値が生まれる
- それと論文発表を足して「研究のトライアングル」
-
- 授業・研究会など・・・対話的なネットワーキングの場に近い
- エンサイクロペディア的なプロセス
- 授業・研究会など・・・対話的なネットワーキングの場に近い
-
- それだけではダメ・・・歴史的に蓄積されたデータ・書籍を通じた、そこに分け入るプロセスがいる
- そこがアーカイブ
- それだけではダメ・・・歴史的に蓄積されたデータ・書籍を通じた、そこに分け入るプロセスがいる
-
- エンサイクロペディアとアーカイブの行き来の仕方で、学問的な創造力が培われる
- さらに広げると・・・
- あらためて・・・知識は単体ではなく、構造性/歴史性/主体の問題抜きでは考えられない
- 集合知の中に構造性/歴史性/主体性をどう生み出すかが重要な課題と認識している
- 日本の場合に難しいのは?
- 提言:日本版「デジタル・スミソニアン」の設置
- ある種の、国が支える、デジタル社会の中で文化財を維持・活用できるデジタル・スミソニアンのようなものが必要だ
- WalshさんはCultural Instituteとの連携と盛んにおっしゃるが、日本ではそれにあたるものがぱっと浮かびにくい社会状況がある
- 日本だと「文化」と訳すが、Cultureを「文化」と訳したときから間違いが始まった。「文」に「化す」なので教育的だし、狭い。英語のCultureはもっと広い、agricultureと同じで「耕す」という意味があり、「知を耕す」ということ。それが日本だと「文化」と訳したがために狭く捉えられ、博物館・美術館・図書館の役割が不当に軽視されている
- しかしインターネット時代に博物館・美術館・図書館は大きな役割を果たすもの
- それとWikipediaのようなエンサイクロペディアの結合が非常に重要
質疑
- Q. 知識の蓄積について。例えば図書館等なら、基本的に書き込み等はできないが、ボールペンで書き込むのは論外として、鉛筆や付箋で書き込むと、その書き込みの中には著者よりレベルの高いものもあるかも知れない。とある図書館で目の当たりにしたが、司書の方が鉛筆の書き込みを消したりするのも、知識の蓄積という意味では無駄にしているとも言える。図書館に限ってのことになるが、インフラやシステムを整備してもいいのではないか。そのへんはどうなのか? 更に延長として、電子書籍が話題になるが、まだ現実では書き込みのシェア等が普及していない。そのあたりに先生のご意見があれば。
- A. 後半でおっしゃったとおり、だからデジタル化が重要。図書館の書籍をデジタル化し、共有する。そのときに現物資料の保存とコンテンツの活用が切り離せるようになった。電子書籍にはどんどん書き込んでもらって、他の人の書き込みが見たい人はそれをオンにすればいい。書き込みを見たい人はそれ込みで見られる。まっさらで読みたい人はオフにして読めばいい。デジタル上では可能になる。元の資料の保存の問題があるので、保存する、長期保存しなければいけないものは、資料そのものの保存の義務があるので、書き込みも含めて原型を留める義務はある。でも利用と保存は分けられる。保存するものはして、利用するものは利用できるように。
- Q. 博物館とかで資料を見ていて思うが、往復書簡等の人同士のコミュニケーションが今までは紙で残っていて、それが大事な資料になっているが、最近はメールになっていてどんどん資料が失われている。政府のものはメールもアーカイブされるのだと思うが、そういうことに気を使ってcreationをしているとか、アーカイブ化の動きがある?
- A. 会場の時実先生の方が詳しいが・・・TwitterやFacebook、コンピュータ上でのWebinar等はInternet Archiveや、国立国会図書館も保存の方向で動いている。個人情報に関わる部分でできないこともあるが、デジタルも保存して後世に伝えることが重要、という認識は広がりつつある。ただ、保存する際にその主体、図書館やアーカイブ等の身になって考えてほしい。2つ、大きな障害がある。一つは人手不足。図書館員等は薄給で、非常勤職員も多い。フィルムセンターなんて18人しかいない職員全員非常勤。「やって」と言っても、当事者はもう目一杯。日本は圧倒的に、人件費にお金をかけない。高度専門職的なところに人件費が行かない。人がいないからできない。もう1つは法的な問題で、個人情報、肖像権、著作権・・・いろんな権利処理が過去と変わっていないので、怖くてできない。組織的に継続的にやるときは、ボトムアップも大切だけど、公的な組織が継続的にやるには法律と人的基盤がいる。おっしゃることは正しいんだけど、できない。
・・・Walshさんのお話で現状確認をした後で、吉見先生のご発表でいっきに興奮度がマックスに!
吉見先生、そうとうのハイスピードでお話だったので全然記録は取れていませんが・・・(汗)
時間がないので感想等は後日、ブログ・・・というよりもこの内容を引用して自分のテーマとも絡めて何かを書ければいいな、とか思ったり。
イベントはまだまだ続きます!
盛り上がったところで、午後の部も期待が高まりますな!
*1:2013-02-07修正。ご指摘ありがとうございます!
『日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望』(国立国会図書館関西館 平成24年度図書館調査研究事業 中間報告会)
滑り込みセーフで2013年1月唯一のエントリ。
皆様、大変遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。
本年も変わらずご愛顧のほどよろしくお願いします。
Twitter等ではちょくちょく近況報告しておりますが、現在なんとか博士論文の執筆も終わり、最終審査会も終わり、あとは結果を待つだけ・・・のはずのまな板の上の鯉状態にいます。
「やっと安心だね!」と声をかけていただく機会もあるのですが、審査会の3日後から海外出張(最高でした!)、その後も発表予定やら非常勤やらで、何か達成感とかそういったものとは無縁な毎日を・・・や、お仕事いただけるのは大変ありがたいことです。
閑話休題。
そんなこんなでブログ更新する間もなかったのですが、イベントに参加したからには更新せざるを得まい、それも面白かったならなおさらだ、ということで、本日は国立国会図書館(NDL)で開催された「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望」中間報告会に参加して来ました!
国立国会図書館関西館図書館協力課では、平成24年度の図書館及び図書館情報学に関する調査研究として、「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望」を株式会社シィー・ディー・アイに委託して実施しております。 この調査研究につきまして、標記の中間報告会を、平成25年1月31日(木)に、国立国会図書館東京本館で開催します。
この調査研究プロジェクトの詳細については報告会冒頭でお話がありましたが、その中でも今回は特に昨年秋頃から実施されていた全国の図書館を対象とする調査「「日本の図書館におけるレファレンスサービスの課題と展望」アンケート」の集計結果を中心に報告がありました。
全国の図書館(学校図書館は今回対象になっていないので、公共/大学/専門図書館)でレファレンスサービスをどのようなものと捉え、何をどう実施しているのか、質問紙調査から現在の実態が明らかにされていきます!
以下、例によって当日のメモです。
例のごとくあくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での内容であり、ご利用の際はその点、ご理解いただければ幸いです。
誤字脱字・事実誤認等お気づきの点があれば、コメント等でご指摘いただければ助かりますm(_ _)m
ではまずかNDL関西館・依田さんによる研究テーマ設定の経緯説明から!!
(ごめんなさい、開会のご挨拶はメモを取りそびれてしまいました(汗))
研究テーマ設定の経緯:依田紀久さん(国立国会図書館関西館図書館協力課調査情報係長)
- 調査をお願いした立場から、経緯を簡単に説明したい
- 図書館調査研究事業とは?
- 今回のテーマ設定の経緯:
- 毎年1月に次年度のテーマを検討
- レファレンスサービスの設定は、実は平成22年度に、23年度事業として決定していた・・・が、3.11があり、1年延期していた
- 昨年度は「東日本大震災と図書館」をまとめた
- 調査過程で様々な問題意識を共有・・・「図書館が情報サービス提供期間としてできることを考え続けなければいけない」
- 昨年度は「東日本大震災と図書館」をまとめた
- 今回は情報サービスの領域において、もっとやれることがあったのではないか、という問題意識に基いて調査を行った
- レファレンスサービスというと平時に意識をおきがちだが・・・
- 一元的に質問を受け付ける、ということで誰でも/どこでも質問を受け付けるサービスを被災地でやっていた事例とその反省
- 被災地にレファレンス・ライブラリアンが出向くべきではなかったか?
- 非常時におけるレファレンスサービスのあり方とは?
- 以上の前提のもと・・・
- 委託チームの枠組み:
- NDLから株式会社シー・ディー・アイに委託(昨年度の受注先でもあるので継続して活動しやすかった)
- 調査チームと研究チームを設置。研究チームは図書館情報学の専門家で構成
調査研究の全体像ならびに進捗状況:小田光宏先生(青山学院大学教育人間科学部教授/調査研究チーム主幹)
- 配布スライドから若干、逸脱するかも? 質疑応答でご意見いただくためにもチャレンジャブルな報告をしたい
調査研究の問題意識
- 依田さんからお話のあった趣旨に沿い組み立てたが・・・
- 研究的観点からの問題意識も強く盛り込む
- レファレンスサービス実践の再定義
- 「レファレンスサービス」という言葉は多くの人の間では共有されていない
- 図書館関係者でも「質問を受けて答えることでしょ?」と限定的に定義して実践が行われている
- 文献を探っても同様のことが言われている
- 英米の資料を見るとレファレンスサービスはそのような文脈に限定されない、広い文脈で取り上げられてきた
- その上で現在・将来の図書館サービスを組み立てようとしている
-
- 質問回答サービスは利用者が質問しないとスタートできない、受動的なもの
- もっと能動的なものに転化させる必要が日本でもあるのではないか?
- 英米では能動的な活動もある。そのことが日本と海外のギャップになっているのではないか
- 図書館員機能に差を生み出す要因でもあるのではないか
- 質問回答サービスは利用者が質問しないとスタートできない、受動的なもの
-
- 「レファレンスサービス」が妥当かは不明・・・「情報サービス」とかがいいかも?
- いずれにしても図書館員の技能の中核の一つがレファレンスサービス関連技能なのは確か
- 「レファレンスサービス」が妥当かは不明・・・「情報サービス」とかがいいかも?
- レファレンスサービス研究への貢献
-
- さらに・・・質的な調査の必要
- 数量的な調査は時間と労力をかければできる/過去の調査を元に繰り返せばやれる
- 依田さんからお話のあったような、広く国民にサービスを行なうことを考えると、国民のニーズとそれに何ができるか、量では推し量れない面が生じる
- 質的な調査をどう行なうか・・・試行錯誤しつつ取り組んでみた
- さらに・・・質的な調査の必要
- 図書館のイメージ変容の促進
- ちょっとしたいたずら的な意味合い
- 本を借りる、だけじゃないでしょ、ということを言えないか?
- 一部の人が使って満足するものからの脱却に踏み込みたい
- 国民(利用者)生活との関係の明確化
- 経済活動との接続
- 研究・・・ガチガチの研究というよりは、素人による研究者顔負けの活動はインターネット等を見ても明らか。そういう人たちが図書館をどう捉えているか? それと図書館の情報サービスの関係を突き詰めたい
調査研究の構想
- 研究の全体像:3つの調査の組み合わせ
- 基礎調査(実態調査):現在の日本の図書館でレファレンスサービスはどうなっているか? 質問紙調査による取り組み
- 発展調査(認識調査):国民がレファレンスサービスにどのような認識を持っているのか? インタビューによる取り組み
- 関連調査(文献調査):文献渉猟+レビュー
- 調査研究チームの編成:色々な角度から分析できるよう、得意技を持っている人を選んだ
-
- 小田先生は?・・・レファレンスサービス研究をライフワークとしている立場からのまとめ役・全体を見ての貢献
- 実態調査・・・中央館だけでなく分館・地域館・分室レベルまで対象にした
- 2003年の全国公共図書館協議会の調査は中央館のみ対象だが、今回は分館レベルまで全て
- レファレンスサービスの施設・設備面の質問がある。それに答えるには分館レベルまでやらないと、きちんとしたデータが出てこない
- 実際の質問紙を見ると・・・特徴:
- 災害時の話なども含まれている・・・「レファレンスサービスと関係ない?」と思われる?
- しかしそれこそが問題意識にもつながる。災害時の情報提供はレファレンスサービスそのものではないか?
- 能動的なサービス/質問が寄せられるのを待たないサービス、ということが質問紙の背景にはある
- 課題解決支援、とりわけリスク時の情報活動支援
- 災害時の話なども含まれている・・・「レファレンスサービスと関係ない?」と思われる?
- 認識調査・・・ある程度は対象を絞らないといけない
- 3つのグループを設定、さらにそれぞれ3分した9のグループについて、3名ずつのインタビュー対象を選定
- グループA:ボランティア活動を行なう人たち・・・特に東日本大震災のボランティアを意識
- 現地ボランティア
- 情報支援をするボランティア
- 後方支援するボランティア等
-
- グループC:在野の研究者
- 特定の組織に属さない研究者。情報ニーズはあるが、組織に属して情報を得ることが難しい方
- グループC:在野の研究者
アンケート調査の送付対象及び回収状況:岡本一世さん(株式会社シィー・ディー・アイ/発送・集計担当)
- 調査対象:トータル5,257館室に発送(ISIL・・・図書館等の国際標準識別子/国内の主要な図書館は登録、の登録館すべてに)
- 分館も対象とする
- 意図的に除外したグループ・・・
- 被災・復旧中の館・・・回答が困難と考えられる
- 公民館図書室・・・ISILに網羅的に登録されていない
- 館名以外の情報を非公開としている専門図書館・・・回答の公開が前提なので協力が困難と判断
-
- ISIL非登録で、発送を希望した図書館にも発送(5,257に含まれる)
- 調査経緯:
- 回収結果:
-
- 通常はこの手の調査は発送1週間後と、締切日の2回山があるが、今回はほぼ締切日に集中
-
- 回答手段・・・FAXが6割、メールは25%(郵送も1割)
- 中間集計:
- 先生方の分析の元になるデータ・・・辻先生以外は中間集計データを元に分析(辻先生は最終データ)
- 中間集計データ:3,726館分(95%)で行った速報値
- 最終集計は1/25に出てきたので、はやめ(2012.12末)に中間集計を渡して分析を依頼
- 速報値ではあるが全体の95%、大学・専門図書館は99%なので問題ないと考えられる
単純集計に見る傾向:辻 慶太先生(筑波大学 図書館情報メディア系 准教授)
- 63問あるので40分ですべては紹介できない
- 面白い結果が得られなかったものも多い
- 今回は2点に焦点を絞る:
- レファレンスサービスとはどのようなものと図書館に認識されているか?
- 個々のサービス・活動を「レファレンスサービス」とみなす図書館はどれくらいいるか?
- どのようなサービス・活動の集合を「レファレンスサービス」と捉えているか?
- どのようなサービス・活動を実施するとレファレンス受付件数が伸びるか?
- 因果関係の証明は難しいので語弊があるが、平たく言えばそういうことを調べた
- レファレンスサービスとはどのようなものと図書館に認識されているか?
基本情報:
- 蔵書・・・10〜50万冊の割合が公共/大学で高い
- 職員数・・・公共・大学は5-10人、専門は5人未満が多い/うち専任はいずれも5人未満が多い
- レファレンス件数・・・公共は1,000件以上、大学は500未満、専門は100-500が多い
- それぞれの関連:
- 蔵書、職員、専任数と質問受付数、職員一人当たり受付数の相関関係を調べる
- 職員数でわらない受付と蔵書数の相関・・・正の相関が高い
- 職員一人あたりの受付数を見ると・・・蔵書数と相関がない
- 受付数と職員数も同様で一人あたりの受付数に正規化すると相関がない/専任数も同様
レファレンスサービスはどのようなものと思われている?
- 国会・大学・専門図書館・・・資料の所蔵の有無に関する質問への回答を「レファレンスサービスとして実施している」割合が高い
- しかし公共ではそれはレファレンスサービスとはみなされない傾向がある
- 公共図書館で一番「レファレンスサービスとして実施している」のは、「幾種類かの資料を調べる必要があるような質問への回答」をレファレンスサービスとして実施している。公共では情報の提供=レファレンスサービス、と考えている?
- レファレンスサービスとしてではないが実施されている業務・・・
- ではこれらのサービスの組み合わせパターンは?
- 公共・・・一番多いのは「特別コレクションへの質問回答」や「自館のデジタルアーカイブへの質問回答」はそもそもやっていない
- 次に多いのは上記2つはやっていない+質問に回答し情報提供するもの以外はレファレンスサービスではない、と考えるもの
- 公共・・・一番多いのは「特別コレクションへの質問回答」や「自館のデジタルアーカイブへの質問回答」はそもそもやっていない
-
- 大学・・・一番多いのは公共と同じ、ついで特別コレクションへや自館のデジタルアーカイブへの質問回答もレファレンスサービスと思ってやっている、というパターンが多い
-
- 「レファレンスとしてやっている」と回答するサービスの多い図書館では職員一人あたりの受付件数が多い傾向
- 国会・公共・専門はレファレンスサービスの記録作成もレファレンスサービスと考える傾向
- 大学はそれよりはレファレンスサービスの統計作成をレファレンスサービスと考える傾向
どんなサービスをやっているとレファレンス受付件数が伸びるか?
- レファレンスサービスを重視しているところではレファレンスの受付実績がわずかに多い
- レファレンスサービスの独自のスタッフマニュアル(7割の図書館にはない)がるところではレファレンス受付件数の増加が見られた
- レファレンスサービス事例の記録と受付件数の間には相関は「ない」・・・してもしなくても件数は変わらない? なんとなく悲しい結果・・・
- レファレンス独立のカウンター/デスクがあると受付件数は伸びるのか?
- 受付数ではある/一人あたりに正規化するとない
- 独自ツールの作成・・・あまり受付件数と関係ない
- 商用DBの契約・・・受付数と相関/特に専門図書館で伸び
- webフォームを設置すると?・・・受付数は減っている(!)
- どういうこと? 最終報告までに細かく見る
- メール/ブログレファレンスは受付数と関係ない
- webページにレファレンスサービスを紹介するページがあると?
- まずそもそも3割の館はレファレンスサービスを紹介していない・・・存在自体を売っていない?
- 昔はあった? Internet Archiveとかで遡って見て、いつ消えたかをいつか調べたい
- webページで紹介しているところでは、受付件数との間に正の相関
- まずそもそも3割の館はレファレンスサービスを紹介していない・・・存在自体を売っていない?
- Twitter、Facebook、ブログを使っていてもレファレンス受付は伸びないが・・・
- イベント・講座等の案内を(web上で、メディアは問わず)している図書館は、正規化後の受付数とも相関がある。web上で積極的に案内をすると受付も伸びる・・・かも?
- (大学図書館のみ)ラーニングコモンズとレファレンス受付の関係?
- ラーニングコモンズでのサービスとして、学部生・院生によるピアサポートをしていると、レファレンス受付件数は伸びている
- 学部生は雇ってもそれほど高くもないので、常駐させておくと良いのでは?
- 過去10年以内に利用者満足度調査を行ったかどうかと、受付数の間には相関はないが・・・
休憩
館種別クロス集計に見る傾向(公共図書館編):間部豊先生(北陸学院大学短期大学部コミュニティ文化学科准教授)
- 公共図書館は本館以外も込みで2,322の回答
- レファレンス受付実績
- 1,000件未満で約7割だが、1,000-5,000件という回答が最頻値
- レファレンスサービスとして行なっているもの/行なっていないもの(直接支援関連)
- レファレンスサービスとして行なっているもの/行なっていないもの(間接支援関連)
- 行なっている・・・レファレンスコレクション収集等
- 行なっていない・・・デジタルコンテンツの活用等
- レファレンスサービスとして行なっているもの/行なっていないもの(その他)
- 行なっている・・・レファレンス事例の記録
- 行なっていない・・・レファレンス事例の公開
- 統計時に「レファレンス質問」と回答するもの・・・
- 資料を使って答える系のサービスが多い
- 現在重視しているサービスは?
- 児童サービス、貸出、資料の収集選択整理、の次に来るのがレファレンス
- 特別重要視はされていないが、ふつうの扱い。図書館サービスには位置づけられている
- レファレンスサービスのスタッフマニュアルはある?
- 事例記録媒体は?
- レファレンスサービスの広報方法
- どうしたらレファレンスサービスの受付が伸びる?
- 1位:職員の力量を上げる、2位:広報
- レファレンスサービスの施設について:
- インターネット上の情報にアクセスできる環境の提供について:
- 端末用意/アクセス環境用意/一部のコンテンツのみ提供、をあわせると60%以上くらい
- 都道府県立は提供率が高い⇒町村立では下がる
- 担当職員の配置:
- レファレンスサービスの情報源:
- 作っている所・・・3割強。規模と関係
- 8割以上の図書館がインターネット情報源も用いている
- ほとんどの図書館はインターネット情報源をレファレンスサービスに用いることに特にマニュアルは作っていない
- 7割の図書館は同じ情報が載っている場合にはwebサイトの優先付けも行なっている
- 利用する商用DB・・・新聞記事検索/法情報関係が多く、JDreamIIや医中誌Webは少なく、外国語はほとんどない
- レファレンスの受付方法:
- 従来型の口頭・電話も多いが、メールなどもインターネット関連の中では使われている。ブログ・SNS等は少ない
- 使わない理由としてIT環境の不整備等もあるが、「あまり利用があるとは思えない」という回答も10%程度
- 従来型の口頭・電話も多いが、メールなどもインターネット関連の中では使われている。ブログ・SNS等は少ない
- Webサイトとレファレンスサービス
- Webサイトを持っている図書館は多い
- レファレンス専用のページがあるか、レファレンスを紹介しているページがあるのは7割超程度。これも規模と関係あり
- Webサイトでもっぱら行なっているのはイベント案内と休館情報等。レファレンス質問の受付・回答等は10%程度
- 機関外の利用者からの質問受付・・・
- そもそも電子メール等の場合には自治体内か確認しているのは25%程度
- レファレンスサービスの課題
- 研修時間の不足/職員間の経験共有のなさが問題視される
- 災害時の支援:
- 資料展示や利用受付範囲の拡大等が多いが、特別支援をしなかったのも15%程度
- 被災時マニュアル・・・あるところが多いがないところも28.3%
- 自館が無事だった場合・・・館として支援するより職員の自発的な活動を支援する傾向?
- 被災地への支援については計画を持たず、時々の判断で行なう、とするところが74.2%
館種別クロス集計に見る傾向(大学・専門図書館編):渡邊由紀子さん(九州大学附属図書館 eリソースサービス室長)
- 大学・専門図書館回答数・・・
- 大学:1,252館
- 専門:152館
- レファレンス質問受付実績:
- 最頻値・・・100-500件(専門/大学共通)
レファレンスサービスの運営
- 重視している業務:資料の選択収集整理が大学・専門とも一番重視される
- レファレンスは大学では2位、専門では3位
- レファレンスサービス事例の記録
- 専門では約70%、大学では60%がなんらかの形で記録
- 大学のほうが記録しない率が高い
- 記録媒体は処理票が最多。大学ではレファ協への自館登録は8%しかない
- 記録しているのは複数日、かかるものや複数資料を見る必要があるもの
- 記録の目的は大学では統計作成、専門では上司への回覧・報告
- 大学では利用者への公開は少ない
- レファレンスサービスの広報方法
- 多いのはパンフレットとウェブサイト
- 大学では広報を行なっていない:約19%、専門:約37%
- レファレンスサービスの利用を伸ばすには?
- 広報/職員の能力を高めるが多い+大学ではフロアワークとウェブを介したレファレンスの充実もよく選ばれる
- カウンター/デスクの設置状況・・・
- 専門では約5%、大学では約25%のみ。貸出カウンターと一体のところが多い
- インターネット上の情報へのアクセス環境提供:
- 大学では8割以上、専門では5割弱がネット接続端末提供
- 大学では持ち込みPCのネット環境も6割弱が提供
- 1999年の調査に比べて大学図書館のネット接続環境は向上している
- レファレンスサービス担当職員の配置:
- 専門59.2%、大学37.9%、いずれも公共(27.2%)より高い
- 大学は正規職員+司書資格が多く、専門は正規職員(資格問わず)が多い。専門は非正規の割合が他館種より低い
- 独立部署はないが事務分掌でとりまとめ役がいるところは4割強
- レファレンス情報源:
- インターネット上の情報利用・・・大学図書館では9割。有料のものをよく使っている
- レファレンス質問受付の手段:
- 大学・専門ともに口頭・電話受付が多いが、電子メールも主流になってきている
- 手紙でのレファレンスは(電子メールよりも)受け付けていないところが多い
- インターネットでの受付を使っていない理由としては人手とIT環境不足が多い
- 「あまり利用があるとは思えない」とする回答も多い
- 大学・専門ともに口頭・電話受付が多いが、電子メールも主流になってきている
- 図書館ウェブサイト・・・
- ラーニングコモンズ
- 設置・計画中が25%。本館に置こうというところが多い
- 人的サービスは実施していないところが一番多いが、あるとすればITサポートとレファレンスサービスが同数
- レファレンスサービスの課題
- 事例のデータ化・蓄積不足が一番多い
- ついで人手と研修
- 利用者から質問が来ない、簡単な質問が多い、といった回答も大学では多い
- 災害時支援
- 大学は自分が被災したら対応、専門は被災しても特別な対応はしないが多い
- 東日本大震災では特別な対応をしなかったところが多い
- 被災マニュアルはないところが多い
- 自分が無事だった場合の被災地への支援・・・専門はするとするのは半数未満、大学はなんらかの対応をするところも
- 大学ではレファレンスの受付範囲を広げる、も、12.7%の大学が選択
- 被災地に対する支援については計画は持たず、その時の判断で行なう、とするところが多い
- 現段階で計画があるのは東北の私立大学1館のみ
質疑応答・意見交換(進行:小田先生)
- Q. 専門博物館図書館の方:他館のレファレンス事例を見ていると立派な事実調査が多いが、図書館員は研究員ではないんだし、調べもののお手伝いができれば十分と考えていて、文献紹介が主。答えを出しても良いのかと思うのだが・・・館種によって事情も違うかも知れないし、博物館の場合は学芸員も多いので研究はそちらに任せて、とも思っているが・・・
- 小田先生:基本的な図書館の運営方針との兼ね合いと思うが、どちらが望ましいかは終わってからにでも。今のお話を、質問紙のデータの中から、どう考える図書館が多い/少ないなどと考えることはできる。専門だと、どうでしょう?
- 渡邊さん:事実調査なのか文献紹介なのかは、今回のアンケートの項目ではわかりにくいが・・・
- 小田先生:例えばQ.2の(7)、(8)が、質問への回答として事実そのものを提示するか「これを見て」と文献を紹介する場合がありうるが、仮に事実を提供しているとみなすと?
- 渡邊さん:専門図書館の回答館の大半はそれをレファレンスサービスとして扱っている。大学も、非常に多くの割合でそれをレファレンスと思っている。
- 間部先生:公共だと比較的高いのが、資料を使って情報そのものを回答するタイプ。公共図書館の場合は事実調査が高い傾向はあると思う。
- 辻先生:先ほど発表したように、受付件数との相関を調べると、辞書など1〜2冊の資料で回答できる質問を専門図書館が重視した場合は相関係数0.22、幾種類か調べるちょっとむずかしいもので0.25、複数日かかる難しいものだと0.10に下がる。難しい質問に答えようとすると、受付件数は下がる傾向はあるかもしれない。ただ、「どうすればいい?」というのは、何に対して「いい」と答えればいいの?
- Q. いい・悪いというよりは、事実調査までしてしまって良いものか、調べ物のお手伝いで十分なのか、ということ。
- 小田先生:それは我々の反省材料に加わるかも知れないが、そこまでの調査項目は設定していない。ここから先は分析範囲になるが、Q.6でレファレンスサービスについて、どのように利用者に説明しているかの自由記入項目がある。そこでどう説明しているかということを分析すれば現状は拾える。今のところ、中間報告の段階では踏み込んでいないので、最終報告に向けてのご意見として。
- Q. 某児童図書館の方:決着がついたことを蒸し返すようだが、図書館のサービスを説明するためにレファ協を調べていたところ、ユニークなというか、専門図書館ではこちらにわからないような目に付く回答が多かった。「そこでしか答えられない」というようなものに答えているものが多くて・・・レファ協で専門図書館を調べれば色々なところがある、というヒントになるのでは?
- 小田先生:逆に「ここを特に知りたい」というところがあれば、「このあたりがポイントになりそう」という感触はある?
- Q. 国会図書館でもレファレンスサービスのあり方を検討しているところで、ぜひ我々の検討にも活かしたい。そこで、自治体種別ごとと申したのは、都道府県〜町村立まで規模も違うし、本館/分館もある。それぞれ1館ずつカウントした総計だけで、データを云々しても、ちょっと全体の状況をつかむには・・・欠けているところがあるのではないか。単純集計を見ても、多いところは紹介があったが、かなりばらつきがある。「何をレファレンスサービスとみなしているか」についても、結果をよく見るとかなり・・・数値ばらついているので、都道府県立図書館の結果と、小規模な図書館、分館の回答とで傾向が違うのではないか。自館で解決できなかった場合の解決等も、市町村立や分館と都道府県立では違うだろう。その辺を知りたい。NDLの今後を考える際にも、当然、全国の図書館との相互協力であるとか役割分担も考える必要があると思うので・・・全国レベル、2,000何百館のデータがあるので、特に公共図書館については、自治体種別の生データがあるわけで、ぜひ提供いただきたい。
- 間部先生:ご指摘ごもっともと思います。今回は時間も限られていて、自治体種別の分析がない項目もあったし、浅い分析も多かった。ご指摘を反映したいと思う。データそのものは全部、webに・・・出るので、報告書に含まれるかはわからないが、web上に掲載されるデータを活用できる形でまとめていきたい。
- 小田先生:最終報告では辻先生がそこをまとめられるので、今のお話も踏まえて。一つ付け加えると、今回の分析は項目によって繊細に、やり方を考えないといけない。自治体種別もそうだが、サービスの位置づけの話は中央・分館で違うことはそうそうありえない、となれば、自治体としての視点で見ないと全体の数値が変わってしまう可能性がある。それに対して図書館施設については館単位でないと正確にならない。そこは最終報告書で留意したい。
- 自分:レファレンス受付数の伸びは、何をレファレンスと思うか(何を集計するか)で変わってしまうのでは?
- 辻先生:何をレファレンス質問として集計しているか、も聞いているし、それで正規化できるんじゃないかと思う。
- 自分:ああ、なるほど、それはよさそうですね。
- NDL館長・大滝先生:質的調査に関して、代表的な部分でもいいのでご紹介いただければ。
- 小田先生:大きなイメージとしては、質問紙調査よりもグループインタビューを念頭に置いている。今日の内容には盛り込んでいないが、それが質的調査のメイン。それとは別に、質問紙の中にも質的な項目、自由記入項目がある。それを丸めて「○館が〜」といってしまえば量的な調査にあたるが、そうではない分析をすれば質的なものともみなせる。ただ、質問紙の中では質的なものはそれほど組み込んでいない。
- CDI・岡本さん:公共の中央館の回答率は、都道府県立100%、特別区95.7%、政令指定都市94%、その他の市立は82.3%、町村立は66%、私立60%。この中央館数が自治体数と一致するかは、登録館数の問題もあるのでわからないが、このような割合。
- NDL・利用者サービス部の方:レファレンスサービスを行なう際に他館との協力は常に念頭に置いているが、他の図書館は私達に何を求めているのか、どういうことをして欲しいと思っているのか考えながらサービスするのが大事と思っている。今回の調査で、具体的に求められていることは出てきそう? それとも、類型的なものを傾向として読み取れる、というようにまとめる方向?
- 小田先生:質問紙に関して言えば、今のような質問はない。NDL自身も対象なので、NDLに何を期待しているかの項目はない。そうではなく、各図書館の課題の部分、レファレンスサービスに関する課題の部分をいかに解釈するか、という問題になってくる。報告書では冒頭で述べた方針のように、提言そのものは行わない。記さない。ただ、提言に結びつく指摘をする。それを報告書の中、特に第3章に書きたい。それに基づいてどう解釈するかは次のステップと思う。「このデータからこんなことができるじゃないか」ということを、図書館関係者あるいは関係ない人とも知恵を出し合う場を作る、その第一歩にしたい、という捉え方。報告書にいきなり「こういうことをすれば良い」ということが入るわけではない。ただ、そのためのエビデンスはお出ししたい。むしろ解釈の部分では「こんなことできるんじゃないの?」ということを出していただければ有難い。
最終報告会のご案内等: 兼松芳之さん(国立国会図書館関西館図書館協力課課長補佐)
- 今回は中間報告会
- 50名ほどの方にお越しいただいた
- 最終報告会を3/21(木)の13:30から予定している
- 最終報告会は関西館で。連休の谷間なので、ぜひタイミングを狙ってお越しいただければ
- 他にもイベントの重なる時期なので、ぜひお越しいただければ!
- 詳しくは後日、カレントアウェアネス・ポータル等で広報するので探していただければ
- 最終報告会にたどりつけるようにみんなでがんばらないと!
今回の中間報告会は質問紙調査の結果中心ということで、皆さん表を使ってお話されており、いつもの自分の文字で書く方式だと全然内容が伝わりませんね(汗)
詳細については3/21開催の最終報告会、さらに刊行される予定の報告書をご覧いただければ、と思います。
文字だけで伝えきれない、表形式で表現されたデータにこの調査前半の面白さが色々あると思うのでー。
大学図書館と公共図書館の傾向の差とか如実ですしね。
こんなにも何をレファレンスサービスと思って実施しているか、って点から認識が違っていたとは・・・普段のレファレンスに関する何気ない会話レベルから、お互い本当に意思疎通できていたのか考えなおしてもいいやも知らんレベルですな・・・(汗)
あとは、中間報告会では触れられなかった質的な部分がやはり気になりますね!
すでにインタビューは終わっているとのことで、最終報告会ではそのあたりも詳しく触れられるはず!
「ボランティア」「在野の研究者」「農林水産業従事者」とそれぞれ特徴的なグループに対するインタビュー調査とのことで、どんな風に結果をまとめられるのか・・・結果自体はもちろんのこと手法にも興味が尽きない感じです。
さらに将来的にはデータも公開予定とのことですし、図書館員はもちろんのこと、研究テーマを考えている学生さん等もこの先の動きに注目です!
・・・3/21は用事のため日本におらず、自分は最終報告会参加できないんですけどね・・・orz
どなたか参加される方、記録プリーズ。ぜひに。
図書館系勉強会KLC 「お前は今まで述べた"今後の課題"の数をおぼえているのか?」
id:humotty-21さんのブログに掲載されていた図書館系勉強会の今年度からの記録です。
図書館系勉強会@つくば、3学期の部が始まりました。
3学期は毎週水曜日、3時限に筑波大学図書館情報学図書館の春日ラーニング・コモンズで開催です!
興味がある方はぜひぜひご参加をー。
ちょっとアプロードが遅くなりましたが、2012年12月5日は[twitter:@min2fly]あるいはid:min2-flyこと私、佐藤翔が「お前は今まで述べた"今後の課題"の数をおぼえているのか?」と題して発表してきました!
研究生活が長くなるほど積み重なる論文や学会発表。
その多くは最後に「今後の課題」を書いて〆ているのではないでしょうか?
あなたはこれまでに自分が書いた「今後の課題」の数、覚えていますか?
その課題、いったい幾つちゃんと後に解決しました?
皆さんはどうです? 覚えてます?
ちなみに僕は29個でした!!(詳細は以下で)
今回のスライド
当日の読み原稿
はじめに
今日は何か新しいことを勉強した、というよりは、過去の自分について復習した、というような感じの話なんですが。
「お前は今まで述べた「今後の課題」の数をおぼえているのか?」というテーマで、前から気になっていたことをやってみた、という話をしたいと思います。
あ、ちなみにタイトルはちょうどアニメもやっているジョジョの奇妙な冒険に出てくる、有名なセリフのパロディですね。
今日お話するのは「今後の課題」についてですが、これは良く論文や学会発表の予稿の最後の方に、このスライドでハイライトした部分のように書いてあるパートについての話です。
きっと卒論/修論でも最後に「今後の課題」を書くんじゃないかなー、と思いますが、院生生活をやっている中で他にも色々「今後の課題」を書く機会はあるわけで。
その書いた「今後の課題」、書きっぱなしで放置していない、というのが今日のメインテーマです。
背景・動機
なんでそんなテーマに興味を持ったか、ですが。
- 背景・動機1:研究棚卸
この勉強会ではちゃんと報告していなかったと思いますが、先々月に無事、博論の予備審査も終わりまして、現在着々と修了の準備を自分も進めています。
就職できなくても、なんらかのかたちで環境は変えると思います。
そんなわけで、B4から数えて6年、本格的に研究をはじめてからでも5年分の色々を最近、整理しています。
というのも、どんなかたちであれ新天地にいってもまずは研究業績が求められるので、すぐにできそうなネタがあったら取り掛かれるように準備をしておきたいのですが、その時に一番使えそうなのは過去に述べた「今後の課題」なんじゃないかと思ったわけです。
しかし案外書きっぱなしで何いったか全然覚えていないので、そのあたりきちんと整理してみようか、というのが第一の動機です。
- 背景・動機2:「今後の課題」研究
で、取り掛かる前にCiNiiや他のデータベースを調べてみて気づいたのですが、「今後の課題」のその後の研究、研究者は論文で述べた今後の課題をちゃんとその後も取り組んでいるのか、言うだけ言ってあとは放置しているのかというのは、意外にこれまでちゃんとは調べられていないらしいんですね。
分野としては科学社会学あたりの研究になるのかな、と思うのですが、これは研究者行動に関するテーマとしてはけっこう面白いんじゃないかという気もしています。
まず自分をサンプルにやってみて、方法論が確立できたらこれ自体を今後の研究ネタにしてみようか・・・というのも、今回の動機の一つです。
方法・対象
じゃあ実際にどういう風に調べるかですが、基本的には過去の業績リストと業績の現物を用意して、論文の最後で何を言ったか、別の論文の中でそれを実際に達成しているか、ということを調べていきます。
- 対象とする業績等
ただ、対象とする論文等の中には一定の範囲を設けていて、雑誌等に発表した論文か、学会発表、あるいはシンポジウム発表のみを今回は対象にしています。
自分の研究成果を紹介するわけではない解説記事とか、この勉強会のような内向きの発表は今回は除いています。
それと、自分が第一著者か、そうでないにしても相当程度、論文の中身にまで貢献しているもののみを今回は対象にしています。
メインが他にはっきりといて、お手伝いをしたタイプの研究であれば、今後の課題もメインの人が主にやってください、というわけです。
- 対象とする「今後の課題」
もう1つ、対象とする「今後の課題」はあくまで「研究上の課題」に限定しています。
制度とかサービスをこんな風に改善してはどうでしょう、みたいなことも「今後の課題」として書いていることがあるのですが、それを達成するのは自分の仕事ではなく、制度やサービス側の話になるので。
それはそれで研究で述べたことが社会にどれだけ受け入れられるか、という点では面白いんですが、今回は「自分が、今後こういう研究が必要だと思います」と言ったことについて、どの程度ちゃんと責任を果たしているのか、に限ってまずは見ていくことにしました。
結果
以上の方法で実際にやってみたところ。
- 「今後の課題」の数
- 過去5年の対外発表等数:29件
- その中で述べた「今後の課題」:29件
まず、これまでに述べた「今後の課題」についてですが、過去5年間の自分の対外発表件数は29件、その中で述べた「今後の課題」の合計もちょうど29件で、平均して1回の発表で1つ「今後の課題」を生み出している計算になりました。
あくまで平均で実際には0〜3件の間で幅はあるんですが、だいたい業績を作るのと同じペースで新たな今後の課題も作っているようです。
で、もし毎回、前回の発表で述べた「今後の課題」を解決してから次に挑んでいれば、未解決の課題はほとんどない計算になるのですが、
- 「今後の課題」のその後
- 後の研究で解決していた件数:12件
- 未解決のままの件数:17件
- 半分以上は未解決のまま!
実際には過去に述べた「今後の課題」の中で、その後の研究で実際にやっていたものは12件、やらないままになっているものは17件で、半分以上の課題はクリアしていませんでした。
これはけっこう自分でもびっくりで、書くだけ書いた「今後の課題」をいっぱい残したまま研究科を去るんだなあ、というのはちょっと申し訳ない気もしています。
詳しく見ていくと、自分の過去の研究というのはだいたいここに挙げた4つに整理できるんですが。
一番ちゃんとやっているのは修論でも博論でも取り組んでおる機関リポジトリ関連の研究で、このテーマについては「今後の課題」の60%は後にちゃんとクリアしていて、残る40%も最近の論文等で述べた課題がほとんど、という状況です。
一方でその他のテーマはずたぼろで、比較的まっとうにやっているオープンアクセス関連の研究でもクリアしているのは33%、「その他」の研究にいたっては自分で述べた「今後の課題」を1個もやっていませんでした。
- メインテーマと他のテーマ
当然ながら自分のメインのテーマは、前後の継続性を持ってちゃんと研究するので、「今後の課題」の積み残しはおきにくい、と。
一方で卒検でやって、学会発表・論文発表まではしたものの、その後別テーマに鞍替えしてしまった大学図書館のアウトソーシングについては、述べた課題のほとんどは放置していました。
その他のテーマについては、「香川の学会でうどん食べたい」とか「台湾の学会で小籠包食べたい」とか不順な動機で、単発で作った発表が多くて、案の定その後は放置しっぱなしになっています。これは我ながらちょっと反省しています。
- 未解決課題の中身
実際に未解決のままになっている課題の中身まで見ていくと、機関リポジトリ関連のものは、これも当然ですがメインでやっているテーマなので中身忘れるわけ無いですし、未解決のものでもほとんどはすぐに取り組めるネタで、来年度以降はここを重点にやっていこうかな、という感じです。
一方で昔のテーマや「その他のテーマ」で述べた課題ははっきりって忘れていたものが大部分で、かつ思い出してみても色々条件が折り合わずすぐに取り組めないようなのが多めでした。思い出してもネタにできないので、忘れたままでも良かったかも・・・という気もします。
結論
以上をまとめると、案の定というか過去に述べた「今後の課題」の半分以上は放置していました。
特にテーマ替えする前のものや、メインではないテーマに関する「今後の課題」は、言いっぱなしで全然やってないです。
ひどいもんです。言ったことすら忘れている課題も多いです。
しかし、これは整理してみてわかりましたが、思い出してもすぐに対処できるような課題はほとんどありませんでした。
もしかするともっと時間が経てばまた変わるかも知れませんが、当面は使えなさそうなネタが多く・・・
中高生の頃に考えていた創作設定ノートとかそんな感じの位置づけです。
「今後の課題」
さあ、「今後の課題」ですが。
今回使った手法は、業績リストと業績現物さえ揃えられれば他の研究者にも拡大可能です。
試しに図書館情報学分野あたりを対象に、「忘れられた”今後の課題”」の研究とか、研究者をちゃんと「今後の課題」をクリアする人とそうでない人でタイプ分けするとかいう研究をやってみるのは、これは案外おもしろいかもしれないな・・・というようなことを現在考えています。
・・・が、ここまでの例で行くと、これがメインの研究にならない場合、十中八九この「今後の課題」も積み残しそうな予感がしています・・・。
さいごに
皆さんは書きっぱなしにならない「今後の課題」を書いてね!>卒研生・修士2年の皆様へ
最後は盛大な「今日のお前が言うなエントリはここですか」なオチで〆。
今回は論文・学会発表に限定したから良かったようなもので、この数に当ブログで書き散らしてきた「今後は〜が必要そうですね」の数を加えたらさらに恐ろしいことに・・・。
「今後の課題」は用法・用量を守って計画的に使いましょう。
オープンアクセスが支配的な世の中になったら図書館業務はどう変わる?!「オープンアクセスによって図書館業務はどう変わるのか〜図書館のためのオープンアクセス講座〜」(第6回 SPARC Japanセミナー2012 参加記録)
突然ですが、当ブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」、一応「図書館系ブログ」なるくくりの中に含まれております。
はてなダイアリー部門別ランキングでは「図書館」にずっと居座っておりまして*1、書いているのも図書館系の大学院生ですしブログタイトルも「電子図書館」です。
しかしアクセスログからここがどんな検索語で見つけられているかを見てみると、だいぶ違う傾向がありまして、一番多い検索語は「PLoS ONE」です。
次は「PLoS ONE impact factor」。
ほかに「近年」とかわけのわからないのも含みつつ*2、上位は「PLoS ONE」関係の検索ワードで〆られています。
利用統計的に見たらもうPLoS ONE宣伝ブログと言ってもいいかも知れない。
必ずしも宣伝だけしているわけではないけれど。
この傾向は明らかに近年、というか昨年〜今年くらいから顕著になってきたもので、以前はもっと図書館っぽい検索語の方が多かった覚えがあります。
ここからもGold OAが・・・というかその現状第一の牽引車であるところのPLoS ONEへの注目度が高まっていることが印象付けられるというか、特に「PLoS ONE impact factor」で探す人はきっと「インパクトファクター高いなら投稿しようかな・・・」と思っているか「何、○○の論文がPLoS ONEに? インパクトファクターは・・・ち、けっこうあるじゃないか」みたいなことを探している人でしょうから(偏見)、投稿の意思があるか周囲に投稿者がいたのでしょう。
「plos one 掲載料」も検索語ランキング10位にいるので、金額によっては投稿を考えようか、みたいな人もここを見ることがあるのかも知れません。
1,350ドル、1,350ドルですよ(2012-12-04の場合。低所得国の著者だと無料〜500ドルに減額されることも)。
そんな風にすっかりオープンアクセスネタ主流になりつつある当ブログですが、元来の読者層である図書館の方にしてみれば、「えー、でもオープンアクセスとか言ってもなんか難しそう・・・」「カタカナとアルファベットばかりでよくわかんない」「英語文献が多くてちょっと」等など、あまり馴染みがなかったり、図書館とどう絡むのさ、と思われる方もいたかも知れません。
そんな皆さんに朗報!
今回のSPARC Japanセミナーは図書館の方向けにオープンアクセスの基礎から業務への影響まで論じる「オープンアクセスによって図書館業務はどう変わるのか〜図書館のためのオープンアクセス講座〜」です!!*3
世界規模でのオープンアクセスの推進と発展により,図書館の業務は大きく変化しなければならない状況におかれています。オープンアクセスに関するこれまでの流れを振り返り,また今後の方向性を考えながら,図書館が将来とりうる道を模索したいと思います。図書館の学術雑誌契約業務はどうなるのか,機関リポジトリ支援業務はどうなるのか,目録業務やILL業務にどのような影響を与えるのかなど,さまざまな角度から図書館とオープンアクセスの関わりを取り上げます。今回はオープンアクセスの基本から理解していただけるようなプログラム内容となっておりますので,ふるってご参加ください。
「オープンアクセスってなんか図書館にすごく関係ありそうだし気になる、でもいきなりSPARCセミナーに言っても専門用語が説明なしに飛び交ってわからない・・・」といった不安をお持ちの方にまさに最適(?)な今回。
会場も今回は図書館の方がいっぱいいらしていて大盛況で、さらに司会がid:kitoneさんこと国立国会図書館関西館の林豊さん(皆さん確実にお世話になっているだろう、カレントアウェアネス・ポータルの中の人のお一人ですよ!)といつもと趣向を変えての会でした。
2時間とたっぷり時間をとってのディスカッションも大盛り上がりでしたよ!
すでに当日のTweetのまとめと、司会の林さん自らのエントリもアップされていますが・・・
このあたりは後で id:min2-fly くんの記録を見直してしっかり復習したいです.
ともおっしゃっていただいているので、自分がとっていたメモについても例によってアップしたいと思います。
ただ、これも例のごとく、あくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモであり、至らない点多々あるかと思います。
お気づきの点等あれば、ぜひコメント等でご指摘いただければ幸いです。
あと、会の中で自分が質疑に参加している部分は、自分の記録は適当なのでぜひTogetter等をご参照下さい。
では、さっそく林さんご本人のスピーチから!
でもこれもご本人のブログにも上がっているので正確なのはそちらも見てくださいね!
開会/概要説明(林豊さん、国立国会図書館関西館)
- 自己紹介
- 国立国会図書館・関西館勤務
- 京大から出稿してカレントアウェアネス・ポータルを担当
- 「OAによって大学図書館がどう変わるか」という記事(E1341 - オープンアクセスの未来に大学図書館の役割として残るものは | カレントアウェアネス・ポータル)を書いたことをきっかけに声をかけられた
- 今日のテーマの説明
- オープンアクセス・・・「なんだか難しい?」
- 「エンバーゴ」「マンデート」などのカタカナ、海外動向の話・・・
- 資料がwebで見られてみんなハッピー、という話なら単純なのだが、残念ながらそうではないよう
- 図書館の仕事の基本は資料を収集して皆が使えるようにすること
- 京大時代にはILLを担当:
- 直接利用者に対応できるのは楽しかったが、面倒な仕事。OAでなくなればいいと思っていた
- しかし実際に仕事がなくなるとどうなるのか?
- 仕事がなくならなければいい、というものでもない。ジリ貧状態では毎日、楽しくない
- この先も前向きに仕事をするには受け身でいるのではなく、OAを自分のこととして受け入れないといけない
- OAが本当に利用者にとっていいものなら・・・
- 図書館員の仕事はどう変わる? 研究者はどう変わる?
- 何も変わらない、ということはない
- フロアの図書館員の皆様へ:
- 自分の経験してきた/今の仕事が、OAによってどう変わるかを思い浮かべながら聞いていただきたい
- そして心にうかんだ素朴な疑問を是非、質疑応答で
- あるいはブログやTwitterや職場で話してみて欲しい
「The Future of Open Access」(Martin Richardsonさん、元Managing Director, Oxford University Press)
- 自己紹介
- Oxford University Pressに20年、勤めていた。スライドに出した写真はOUPのビルの前。雨がふっている。Oxfordはいつも雨
- 冊子体⇒オンラインへの過渡期に、20年出版の仕事ができたことを嬉しく思っている
- 現在は?
- OUPを離れてスペインへ。全然違う生活。スライドの写真も晴れている
- ハンモックによりかかりつつ、wifi環境はあるので仕事もできる。今回のプレゼン準備もハンモックの上でやった
- 本日の概要
- OAの様々な種類について
- 過去10年のOAの発展
- OAのメリット/デメリットは討論のときにでも。時間も限られているので
- 本日のメイン・・・今後10年、OAの方が主流になるだろう中で出版社/図書館員の生活がどう変わるかを中心に話したい
- OAの話に入る前に・・・図書館における予算・経費の執行状況について
- 米国・ARLのデータに基づくと(討論の時に日本の図書館との相違についても話したい)・・・
- 雑誌購読料の値上がり率は、過去10年一貫して年率7-10%
- これが新たな価格モデル/ビッグディール等の導入の理由になった
- ビッグディールは2000-2007年にかけて成功している。購読できるタイトル数は増えている
- 2007年以降・・・図書館経費の伸びが価格上昇においつかない⇒解約が迫られる状況に
The OA Rainbow:いろいろな種類のOAについて
- Gold OA:出版後即、無料で論文にアクセス可能(min2-fly注:いわゆるOA雑誌)
- Green OA:セルフアーカイビング。著者・機関がリポジトリやサブジェクトリポジトリに論文をアーカイブ
- 例としてはPubMed Central (PMC)など
- 最初に提唱したのは1994のStevan Harnad
- 現在はほとんどの出版社がGreen OAも認めている。ただし出版直後からではなく、通常は12ヶ月程度の時間差を求めている
- GreenとGoldの境がわかりにくくなっている
- Gold・・・出版後即、Greenでもアーカイブできる
- Green & Gold OA(これはRichardsonさん定義の用語)
- 購読ベースの雑誌だが、著者が追加料金を払ってGold OAにするか、セルフ・アーカイブしてGreenにするか選べる
- Hybrid / Option / Partial OAなどとも。一部の論文はOAで、残りには購読の縛りがつく
- 過去10年間、従来型の出版社が優先的に選択してきたのはこのモデル
Growth of OA
- この10年、各OAモデルはどのように発展してきた?
- OA雑誌の数
- Directory of Open Access Journals (DOAJ) 中のOA雑誌の数・・・着実に増えている
- 先週チェックしたところだと8,000以上の雑誌、約93万の論文がOA雑誌で公開
- 成長が急速であるため、DB処理に反映しきれていないものもある。上記の数字はむしろ控えめなもの?
- Directory of Open Access Journals (DOAJ) 中のOA雑誌の数・・・着実に増えている
- Laakso and BjrokのBMC論文から*4:2000年以降のOA雑誌の伸びについて
- 時差公開(一定期間後無料公開)のOAの数
- HighWire Pressでの時差公開論文数・・・過去10年分を見ると、2005⇒2009で非常に伸びているが、以降は年間200万論文で横ばい
- データを提供してくれたHighWire PressのJohn Sackさんによると、出版社の方で購読状況のレポートに神経質になっているのが一因?
Gold at the end of the OA Rainbow?
- 今後数年でGold OAが飛躍的に伸びるのではないか、ということを示すデータを紹介していく
- Gold OAのtipping point・・・PLoS ONEの発刊?
- 発行当初から成功していた。掲載論文数は一貫して伸びている
- PLoS ONEをPLoSの他のジャーナルや他社の雑誌と差別化しているのは、いわゆる「メガジャーナル」化
- カバーする主題の範囲を広範囲に設定/かなり"軽い"査読方針。査読はあるが、基準は「方法論的に健全なら内容は面白くなくても通る」
- 一番、飛躍に貢献したのはAPCが当時としては安い1,350ドルだったこと?
- 2011には12,000を超える論文が掲載された。世界最大の雑誌。世界のSTM分野の出版の3%はPLoS ONEに載っている*5
- PLoS ONEの成功はPLoSの財務改善に貢献
- 2010年にははじめてPLoS全体で黒字化
- PLoS ONEの成功を見て、他社もこぞってOAメガジャーナルを発刊
Life under a Gold OA Rainbow
- いろいろな条件はつけたが、前提をおいた上で、今後10-15年の間にGold OAが支配的モデルになったら、我々の人生はどう変わる?
- Lewisの予測を裏支えするいくつかの変化の要因が存在する:
- 研究助成機関からのプレッシャー。研究成果物を出版直後から自由・無償で提供することを助成要件として強要する傾向が出ている
- 助成機関の圧力増大の結果として、著者/読者から購読ベースの雑誌への需要が減りつつある
- 並行して、Gold OA Journalに対する需要(著者/読者の)は伸びている
- これらの変化が研究者に与える影響とは?
- すでに研究者自身、助成機関、特にすぐにOAにせよという制度を強制している機関からの圧力を感じていると思う
- 今後はより多くの成果をGold OA Journal / monographで出版するようになる?
- 購読モデル・・・図書館が研究者の替りに雑誌を購入。そのことの価値を研究者自身は感じていなかった?
- 将来、APCを研究者が払う上で、助成=研究費を使うことが重要になる。その価値をより重く/深く感じるようになる?
- インパクトファクターのような質に関する尺度は今後も研究者が優れた論文を公開する場所としての要因にはなりつづけるだろうが・・・
- ダウンロードあたりのコスト、ということも考えるようになってくる?
- すでに研究者自身、助成機関、特にすぐにOAにせよという制度を強制している機関からの圧力を感じていると思う
- 出版社に与える影響とは?
- すでに多くの出版社があらゆる領域でメガジャーナルを出版する傾向
- 質の高い雑誌で拒絶された論文を、cascade(より査読の厳しい雑誌で落ちた論文を、一段落ちる雑誌に査読結果をそのまま引き継いで回すこと。A誌では却下しますがB誌で採録しますよ、など)するための専門誌発行も一部で行われている
- cascade journalは今後急激に数を増やす?
- 人社系ではモノグラフ主流だが・・・今後は雑誌と同じことがモノグラフでも起こる?
- 多くのモノグラフはすでにオンラインで出版/公開⇒そのOA化も自然な流れ
- 購読への魅力が減っている以上・・・出版社はこれ以上、購読料を上げることはできなくなる?
- 今後数年間で業界再編が起こり、一握り大手数社に整理・統合が進むのでは?
- 生き残る非常に力のある数社のOA大手が、今現在購読で見ている大手と同じところになるのかは、今はまだわからない
Conclusions & Further Reading
- 最後にまとめと忌憚ないご意見を。異論を聞きたい
- まとめ:
- 色々な証拠から・・・Gold OAが今後数年でかなり伸びるのは間違いないだろう。2020年には支配的なモデルになる?
- 移行期間中はビッグディール/パッケージ契約が意味を持つだろうが、今後は大半はOAになるに従い、ビッグディールの重要性は減じられるのでは
- だからと言って図書館員に仕事がなくなるわけではないだろう
- 購読⇒OAへの移行期間中には研究機関の替りに、OAの色々な交渉をまとめあげる役割を担うのではないか
- Green OAは移行期間中は重要性を持ち続けるが・・・Goldが支配的になると、機関リポジトリのローカル・コピー保存の必要性はなくなるのでは?
- 色々な証拠から・・・Gold OAが今後数年でかなり伸びるのは間違いないだろう。2020年には支配的なモデルになる?
- この1時間でかなりのデータを出したが・・・
- Laaksoら/Lewisの論文を読んでみて欲しい
- それからもうすぐRichardsonさんおOUPの同僚だったJackson氏も寄稿している本が出るよ
質疑
- Q. 医学図書館員。患者図書室にいるので、ユーザは患者/市民。一般市民にOAはどのようなインパクトを与える? 社会にどのような影響を与える?
- A. OAを推進する一つの要因は研究に関する情報をよりあまねく伝えること。すでにOAで発表された研究の方がより広く読まれていることを示す調査も多々ある。これが研究助成機関が研究成果のOA化を求めることの根拠にもなっている。従って、OAのメリットの一つが誰でも研究成果に触れられることにある、と考えている。
- Q. 図書館員。将来のGold OAの世界で機関リポジトリはどうやって自らをOA出版と区別すればいい?
- Q. 移行期間中は?
- A. 移行期間中はできるだけ包括的に、Gold OAの資料に対しても包括的にアクセスを提供し、Greenで利用できるもののセルフ・アーカイビングも必要と思う。ただ、移行期間中は重要でも、完全にGoldに移行したら役割はなくなると思う。ただ、今のはあまりに出版者よりかも
「日本の電子ジャーナルとオープンアクセスをめぐる現在と将来予測」(関川雅彦さん、筑波大学附属図書館)
- 会場の大学図書館の方は途方にくれているのでは?
- 出版社の方は関係ないと思っているかも知れないが・・・少し気を取り直して考えたい
- 我が国の電子ジャーナル導入の経緯の概観と、電子ジャーナルが図書館にどんな影響を与えたか、今後リポジトリやOA雑誌が図書館にどんな影響を与える/与えないか、現場の視点から考えたい
- 発表内容は一部、既発表のものもあるが、御容赦願いたい
- 30分で質疑まで終わるかわからないと思っていたが少しくらいオーバーしてもいいと言われたので、少し伸びるかも
学術情報のアクセス環境の推移
- 日本における印刷雑誌と電子ジャーナル導入状況・・・シリアルズ・クライシスが起こったが、電子ジャーナルでアクセス環境悪化は回避できた、ように見えるグラフ
- 国立大学に限定すると・・・電子ジャーナル導入で情報アクセス環境の格差は縮小している
- 印刷雑誌の時代は最大8-9倍、国立大学間で購入タイトル数に格差があった
- 電子ジャーナルを加えてみると、最大手と最小規模でも差は縮んだし、少ないところ間の格差はほぼなくなっている
- コンソーシアム契約が軌道に乗り始めてから格差がなくなり出している
- 大学間のアクセス格差をなくしていこう、というのが目標だったが、結果的にこれはかなり達成できていると個人的には思っている
資料購入費と大学総経費
- 過去20年、基本的には総額は減っていないように「見える」
- 大学の数が増えている。大学あたりの平均を見ると、資料購入費は減ってきている
- 大学総経費に占める割合は、右肩下がりに下がっている
- 資料購入費という基盤的な経費が、大学あたりの金額でも割合でも減ってきている
- 大学総経費は合計でも、大学あたりでも基本的には増えてきている(2010年には少し落ちている。ターニングポイント?)
- 大学執行部は「図書館の資料購入費よりも他のものに使うべきと考えている」ように見える
- 総経費の中でも一つの大きな部分は運営費交付金
- 競争的資金の一例:科研費の過去20年の状況
- 1,500億円くらい総額で増えている
- 基盤経費は減っているが、個々の研究者に配分されるお金は増えている。基盤部分⇒外部資金に回っている、とも見える
- 資料購入費は基盤的経費から出ていて、APCのようなものは競争的資金・研究資金から出ている。これは頭にとどめて欲しい
契約面からみた電子ジャーナル
- パッケージ契約(ビッグディール)の構造の説明
- 紙の時代は一物一価だったが、同じタイトル数が使えても支払う金額がビッグディールでは違う
- 契約時点で支払っていた金額がベースになる。小さいところだと小額、いっぱい買っていたところは多額に
- これが格差縮小につながっている?
- 筑波大の購読/非購読誌のダウンロード比率・・・全体の半分は紙の時代に買っていなかった雑誌からダウンロードしている
- Springerは7割が非購読。OUPも購読<非購読。パッケージ契約は現在まではコストパフォーマンスが高い契約モデルだった
- 電子ジャーナル化に伴う図書館の役割
- 冊子の時代・・・先生方が欲しいタイトルと資金を図書館へ⇒図書館がとりまとめ⇒発注・支払い⇒現物が来る⇒図書館・研究室へ
- 電子ジャーナルの時代・・・共通経費化が進んでいるが、買うための資料費を集めて、直接版元と交渉、IPアドレス管理等をしてアクセス環境を整える
- 実は流れはあまり変わっていないとも言える? お金を集める⇒払う、という長い時間あった仕組みが、紙⇒電子になっても見た目かわっていない
- 学内調整を図書館が買って出て、共通経費の確保をしたり、初な図書館員が手練手管を持った出版社とやりあうようになったとか変化はあるが、流れは不変
- 電子ジャーナル化進展のカギ
- 電子ジャーナルの特性
- ビッグディールを採用した契約
- 今までの大学内の業務の流れにそのまま乗せられたこと
オープンアクセスと図書館
- 冊子/電子ジャーナルと同様にリポジトリと冊子を比べると?
- オープンアクセスジャーナルと図書館
- (購読型)電子ジャーナルの時代は図書館が支払いに関与
- オープンアクセスジャーナルの場合・・・図書館を中抜しても成り立つモデル
- APCの扱いを大学の制度として、システムとしてきちっと図書館が扱えている例は、日本はもちろん英国でもあまりないらしい(1つはある?)
- ここを図書館がやるのか? やる覚悟はあるのか? した方がいいのか? それによって図書館の今後の仕事がずいぶん変わる
- APCの扱いを大学の制度として、システムとしてきちっと図書館が扱えている例は、日本はもちろん英国でもあまりないらしい(1つはある?)
学術情報を介した学内のハブへ
- 今まで図書館は学生・研究者にコンテンツやサービスを提供する、その部分だけをターゲットにしていれば済んでいた
- 機関リポジトリに手を出したがゆえに・・・
- こういったステークホルダーと関係していかないと「図書館はいらないよ」となるのでは、と最近感じている
質疑
- Q. NPGの方:業績評価/研究者総覧と図書館の関わり、とあったが、一方でResearch Administrationの部門も大学で作るながれ。筑波の例でもいいが、RAにビブリオメトリクスが入っていくのがいい? 図書館がやるのがいい?
- A. RAは図書館の流れと別に筑波ではやっている。業績評価も、元となるデータ収集・整理等の基盤の部分を図書館で、ということになっている。筑波の人も会場にいるので言いたくないが・・・(ここ一応、オフレコ)・・・図書館とRAについて、大学はトータルで考えていて、切り分けてはいない。図書館はノウハウがあるのでデータの部分を任された、という形。
- Q. 高エネ・KEKの方:研究者の立場から。Gold OAになると図書館はもういらないのでは、という話があった。私はSCOAP3でOAにも関わっているが、ぜひとも図書館にはAPCをとりまとめる機能を持って欲しい。おそらく大手の数少ない出版社が牛耳るようになるとRichardsonさんの話にもあった。例えばAPCの交渉を、値引き交渉等を、これまで購読料の交渉をされていたかわりにやる窓口になってくれることを図書館には期待している。ぜひ、いらないなんて言わないで積極的に絡んで欲しい。
- A. 「いらない」と言ったのは筑波の研究者の方。先生方から「やってよ」と言っていただけると、研究者からのご要望があればより図書館はやりやすい。ただ、嫌がる先生もいる。研究費に図書館が手を突っ込むことを嫌がる、という方も。
- Q. 現在はOAが多数ではないので研究者も気づいていない。OAになると、読者としての格差は完全になくなるが、投稿者にすれば研究費がなくて投稿できない、良い雑誌に出すにはAPCが高くて・・・という、そこでの貧富の格差が生じる。それがあってはいけない。そこを是非、大学/図書館が格差を縮める方向に動いて欲しい。今の段階では個別支払いなので気づいていないが、主流になったらきっと変わる。
- A. 先生のおっしゃるとおりとも思うが、あえてぼかしたのは、電子ジャーナルと違ってOA雑誌になると・・・電子は紙の仕組みにのればよかったのが、APCはこれから仕組みを作らないといけない。それは非常にエネルギーがかかることだ、というのをよくみなさん覚悟して、でも職を失わないためがんばろう、持たないと図書館員いらないと言われるよ、と。プレゼンでは謙虚なのでぼかしましたが(笑)
休憩タイム
パネルディスカッション
- モデレータ:
- 市古みどりさん(慶應義塾大学日吉メディアセンター)
「雑誌契約業務:OAは「雑誌契約業務」をどう変えるか?」守屋文葉さん
- JUSTCIE=大学図書館コンソーシアム連合
- ただ、JUSTICEの立場、というよりは雑誌契約担当者の立場から
- OAは「雑誌契約業務」をどう変える?
- これまで8年、外国雑誌の契約業務をやっていた。紙⇒電子への切り替わりの時期に仕事
- 紙⇒電子への移行時に契約業務はすでに中身と質が大きく変わっている?(関川さんの話とはずれるけど・・・)
- お金と業務の流れは一緒でも、サイトライセンス契約に伴う学内調整や、出版社との交渉といった、図書館でやってこなかったことに手を染めだしたのはこの流れの中でのこと
- ここは大きな変化ではないか?
- 電子⇒OA移行は紙⇒電子移行ほどのインパクトはないのでは、と個人的に考えている
- その上で、OAはどのような影響を与える?
- OAが、というよりは、図書館がどう関わるか、に結局はなる。今後取りうる道は?
- 1. Gold OAに関わらない
- 業務量はゆるやかに減少していく。それに連れて予算(資料費)も減る。人も減るかも
- これまで培ってきた学術情報流通への経験値が薄れていってしまう?
- 2. Gold OAに関わる
- 購読モデルがなくなることはない、と個人的には考えている
- その仕事は残った上で、プラスしてAPCに関わる仕事もやると、業務量は増える
- でもそれに乗り出してきちんと仕組みを作っていけるかどうか。図書館はぜひ積極的に関わっていったらいい
「機関リポジトリ業務」鈴木雅子さん
- Gold OA優勢になった時に
- では従来の機関リポジトリのしごとは減る? 図書館のILL等の仕事は減るか?・・・「本当に減るの?」
- NatureやCELLはなくなるの? 購読料は貰っておいてさらにAPCも、って出版社は思ってるんじゃないの?
- それはそれとして、図書館の仕事がGold OAで減ったらどうする?
- IR cures ILL プロジェクト
- IRとILL/DDは、所蔵館か著者所属機関かの差があるが、やっていることは一緒(資料を遠隔利用者に)。一緒になれないか?
- その中で複数大学のILL担当者とネットワークを作った
- 研究室訪問
- 他にも・・・グッズ作成/国際会議/大学を超えた横のつながり/ボトムアップで(図書館員から)上層部にやりたい、と業務をはたらきかけるということ自体も
- 今後は?
- 大学の構成員に対して自分がどんなことをできるのか考えるのが図書館の仕事に?
「OA誌が増えたら? 変わることと変わらないこと」小野亘さん
- 小野さんの立ち位置:
- Gold OAが増えても変わらないこと・・・OA誌の限界を補完するため
- 「完全に」とか言っても、購読型の雑誌は何かしら残るだろう
- エンバーゴがあれば「読みたい」という要望もあるだろう
- 過去分のOA化も・・・そういう意味ではこのあたりの対応は残る
- どれくらい残るかの議論はあるが、何がしかは残る
- 「完全に」とか言っても、購読型の雑誌は何かしら残るだろう
- Gold OAで変わること・・・図書館予算の「リダイレクト」
- 研究大学の支出は(きっと)増える
- OA誌=契約がない
- 契約というトリガーがないので、大学で何が見られているか、図書館がよくわからなくなる
- 世の中にどういう雑誌があって何号が読めるかよくわからない、そのときに図書館はなにができる?
- 目録はとらない?
- 買っているものがないので目録をとるトリガーがない
- しかし何かしらの目録はいる・・・ナレッジベースとディスカバリが進展する?
- その整備は個々の図書館が従来のように地道にやるのではうまくいかない。中央集約的な作業がいる
- しかし人任せでも進まない。大学図書館間の連携が従来以上に重要に?
- NIIのERDBには期待している
- ILLはなくなる?
- 全てがOAになれば、だが、ILLはなくなる・・・完全になくならないにしても、激減して最後の手段になる?
- 激減の結果、互恵主義によるILLではなくdocument supply center化するかも?
- 過渡期中はOAでも探せないのでILLが来てしまうこともあると思う。そういう状況はもうしばらく続く?
- OA誌が経営破綻したら?
- そのタイトルは購読モデルに戻るのか?
- 過去OA分はどうするのか・・・何かしらの保存措置は要る
- バックアップ/保存に図書館界も取り組む必要。CLOCKSSなどに期待?
ディスカッション
- 市古さん:
私も国立大の人が多いところに来るのは珍しい。最後の方では私立大学にいることで話せることがあれば、お話するかも。
私自身は慶應・日吉にいる。日吉というのは、慶應の6つあるキャンパスの中で、ほとんど学部学生向けサービスをするところ。
私のキャリアとしてはSTMが長いので、どちらかと言えばそちらに強い図書館員。信濃町にあった図書館にいたときに、紙⇒電子化にかなり危機感を覚えたものの、生き残る可能性を最近感じつつある。できるかぎり楽しく明るく元気に人のためになる仕事をしたい。
まず、皆さんそれぞれのパネリストに質問がある方がいるのではと思う。その後、ディスカッションの最中に質問を受けていきたい。
フロア質疑
- Q. エルゼビアの方:出版社の立場からOAになるといくつかのキー・プレイヤーにまとまるという話があったが、その根拠があればお聞かせいただきたい。
-
- A. Richardsonさん:新しい産業なので、急速に展開する、その過程でスタートアップ、新規参入者もどんどん参入してくると当然考えられる。OAはまさにそういう時期で急成長していて、参入者も多いが、一定の時期になったら整理・統合の方向に行って、数社が残ると思う。もちろん、どのような新しい「破壊的な」技術でもこれは典型的な反応だが、既存の大手業者は生存のために闘う。しかし多くの場合は生き延びられない。
- Q. NII・安達先生:2020年にGold OAが主体になるという話だが、今日の話は極めて包括的だったが、雑誌出版は分野ごとにずいぶん性格が違う。化学はOAにきわめて具合が悪いとも聞くが、そういうときに、徐々に変わっていくのか、雪崩効果というか、あるときばたっと変わってしまうのか。その点についてRichardsonさん、それから関川さんも、どういう感触?
-
- A. 関川さん:個別の経験からの感じでいうと、こういう会議や他のミーティングでは急速にOAが進むような景気のいい話が多いが、「本当かいな」という印象。少なくとも筑波大学ではとてもOA化が進んで、10年ですいぶん進展するようには、全体としては見えない。SAGEのレポートでも、10年後には一番多い人でも5割がOAという意見で、本当にそんなに進むのか、と。希望的な観測もあるかも知れないが、現場としてはそういう印象。
-
- Richardsonさん:もう一点。先ほど申し上げなかったことだが、現在の状況ではすべての研究文献の12%がOA、という状況。この5年間の延長のまま、まっすぐ伸びるとすると5年で20-25%、ということになる。
- Q. 高エネ研の方:高エネルギー物理という限られた分野では、研究所が成果をOAにすること、という制約をつけている。最近はイギリスでも自分の資金を使ったらGold OAにせよ、という動きがある。分野単位でそういう動きがあると意外に早く動きそうなのだが、他分野のことはわからない。どなたか全体像をご存知でしたら教えていただきたい。
- 市古さん:どなたかお答え・・・あるいは日本の動きをご存知の方がいたらそれを教えていただきたいのですが・・・
- Q. NII・安達先生:
文部科学省の作業部会でオープンアクセスについて議論している。学会出版がOAにするときには科研費で出版助成をすることを具体的なポリシーとして定めている。その延長として、科研費の成果を機関リポジトリにいれるようなmandateを作るかについては継続検討中。それが日本の状況。
ご質問の点については、Finch Report*10が出て、大学・機関が投稿できる雑誌を定めることは学問の自由に対する越権行為である、ということが議論になるのでは、ということがある。コミュニティを越えて議論するにはそこが問題になる。APCを大学でサポートするときにもそれが問題になる。いい雑誌/そうじゃない雑誌を機関として定めるわけだが、そこが気になる。
一方、日本のOAについてはmandate等、機関のポリシーとして定めず、草の根の地道な努力でやってきた。諸外国の動きと随分違う。そういう形を続けるのか。草の根というのはお上が決めてくれた方が嬉しいということの裏返しなのか、そのへんもよくわからない。文科省に従順にいくのか、大学ごとに方針を定めるのか、それに図書館はどうコミットするのか。
- Richardsonさん:2つだけ。
Finch Reportについて。OA化の勢いが加速すると思う。同じような動きが日本にあることは嬉しい。
理論物理学についてのコメントについて、理論物理学はこれまでしっかりしたリポジトリ(arXiv)を持ってきたところで、OA化の中で雑誌が生き残るかどうかについて、雑誌がリポジトリ化したというような逆の例。今後、post publication reviewとなると品質の高いリポジトリがいるわけで、そこでは理論物理学が他を引っ張っていくのではないか。
- 関川さん:
直接的な答えではないが。OAへの疑問は日本の大学図書館だからかな、という気はしている。研究者コミュニティで国の境がない形で研究が進んでいる分野と、日本語で研究して日本語で発表する分野がある。それをトータルで見ると進んで見えないわけだが、これは日本の大学図書館に特有なのかも。本当は進んでいて日本あるいは私が取り残されているのかも知れないが、ただ、現場ではそこまで進んでいる印象はない。
Gold OAは本当に進んでいるのか?
- 市古さん:
いったん整理したい。OAがどんな分野/スピード、という話になっていると思うが。OAについて、Goldの道が進んでいることの確認しがしたいと思っていた。そうしたところ、Richardsonさんと関川さんからお話いただいた。その他の方の印象は? OAが進んでいる実感はある?
- 守屋さん:
雑誌契約担当としては、今まで購読モデルだった雑誌がGold OAに移る例が出ている。Hybrid ではなく完全オープン。じわじわ、オープンアクセスは浸透しているのではないか。
- 鈴木さん:
ちょうどAPCの支払いや抜き刷りの支払いを、会計と図書館に持ってくる先生がばらばらなので、一元化して図書館でやろうという改善を提案している。いったい、どれくらい支払いがあるのか、去年のファイルを繰って調べている。もっとあるかと思ったが、あまりないという印象。それでも、一昨年より去年は増えている。先生方に聞いてみると、投稿している先生はそんなにいない。OAだから投稿するという意見は確か、研究室訪問のインタビューで鹿児島大学の先生がおっしゃっていたのを「こういうかたもいるのか」と思ったくらい。むしろ、投稿しなさい、という義務付けの方がびっくりして、先程のKEKのお話はもっと聞きたい。
- 小野さん:
一橋的には投稿料を払うのではなく原稿料を貰うものである、という印象。だから遠い印象だが、いわゆる大学紀要が機関リポジトリで電子化された状況で、それをOAといっていいかは別として、そこのところで進んだ印象。
話は変わるが、先ほどOAが5割、という話があったが、5割OAになったらだいぶ図書館業務は変わるのでは?
- 市古さん:
私自身は、Finch Reportや影響力のある雑誌が出てくればかなりのトリガーになりそうな気はしているが、実際、Richardsonさんの感覚として、Goldに舵が切られるまでに何年かかると思っていらっしゃる?
- Richardsonさん:
私の短い答えは、「もうその舵が切られるTipping pointは来たんだぞ」というのを説得するのが私のプレゼン(笑)
もう少しバランスのとれた答えとしては、それが本当にきたかわかるにはもう数年かかると思う。
Gold OAは図書館に影響するのか? しないのか?
- 市古さん:
すでにTipping point、ということで話を次に。関川さんのお話で、図書館がなくてもいい時代にきているのかも、というスライドがあったが、守屋さんの方では、OAは実はあまりインパクトがないとある。その違いをクリアに。守屋さんの「あまりインパクトがない」というのは、どういうこと?
- 守屋さん:
図書館職員は色々なところにすでに足を踏み込んでいる。電子になった時点で過去とはもう大きく変わっている。雑誌契約がAPC支払いになってもそれほどの大きな違いではない、あまり重く考えなくていいと思っている。
- 関川さん:
守屋さんと一緒に仕事をしていた者として、この違いは立場の違いと思う。現場の日々の作業をしている方からは紙⇒電子は業務の質の違いなど、本当に大きく変わったんだと思う。でも違う立場から俯瞰してみると、ある流れに載っている、という点で紙⇒電子は変わっていない。既存のシステムを使ってやれたと思うのだが、APCの場合は日本の大学に既存のシステムがない、一から作るしんどさがあると思う。作業量ではなく、「一から作る」ことの大変さ。それに踏み込まないと、図書館は縮小再生産していく、という評価を大学の中でされるのではないか。
- Richardsonさん:
お二方の意見の相違を埋めるつもりではないが、出版社の観点から一言いいたい。
他の出版社の方は違う意見かも知れないが、私は紙⇒オンラインのシフトは大革命だったと思っているし、ビッグディールやOAというのは、その非常に大きなシフトの一部、と捉えられるのかも知れない。実際上、APCのメンバー支払いを出版社が導入しようとしたことがあるが、これはうまくいかなかった。大学側がなんらかの形で購読/APCをより良くコーディネートすることが重要になると思う。それによってのみ、より効率が上がる。誰がやるかは別として、コーディネーションさえ改善・強化できれば、機関にも出版社にもよく働くのではないか。APCの支払いをより効率良くできると思う。
- 関川さん:
しつこいようだが。学術情報流通の媒体としての電子化のインパクトの大きさはわかる。私が言いたいのは、広い意味での変革ではなくて、日々業務する図書館の立場からすると、紙⇒電子については、少なくとも、色々あるけれども、中抜されなくても済むという意味でOAよりはインパクトが小さいんじゃないか、と言いたい。学術情報流通そのものの意味としては紙⇒電子が、電子⇒OAよりもはるかに大きかった、電子化されたからこそOAが可能なわけで、そこはくどいようだが確認したい。
OAの時代におけるJUSTICEの存在とは?
- 市古さん:
APCの話が出たのでそっちの方に話を持って行きたいが。関川さんと守屋さんがいるので。OAの道において、JUSTICEの存在についでどうお考えか? その後、APCの話に行きたい。
- 関川さん:
一番困る質問。Gold OAやその範疇のお話がJUSTICEにないわけではない、今も。今のところは、直接的には取り扱っていない。まだ及び腰。どうしたらいいのかわからない部分がある。なぜかと言えば、図書館が、電子ジャーナルの場合は参加館が購入に関わっている大前提があった。はっきりしたミッションがあったが、APC、Gold OAにおける図書館の関与の仕方に共通認識があるかないかもわからないときに、JUSTICEがどれだけ踏み込むのがいいか、立ち位置が掴みきれていない。関与している人間の一人としての見解。守屋さんは?
- 守屋さん:
委員長が答えにくいんだから事務局も答えにくい(笑)。基本、大学図書館のコンソーシアムなので、図書館の皆様にどういうニーズがあってどうして欲しいと思っているかが機動力になる。そういう声があがってこない限り、コンソーシアムとして出版社と交渉する材料がない状態。人任せな発言かも知れないが、図書館の方からそういうニーズがもっと出てくれば出版社と交渉するし、図書館がこういう仕事を担わないとなれば出版社は大学協会の方と話をするかも。図書館として話をするのかが定まらないとコンソーシアムは動けない。
- 市古さん:
私もJUSTICEメンバーなので、大変無責任な質問でごめんなさい(笑)
APCについて
- 市古さん:
APCの仕組みづくりのイメージが皆さん無いと思う。関川さんがおっしゃる難しさ、とは?
- 関川さん:
紙⇒電子のときは100年にわたる、個々の研究者ではなく図書館という組織で集約して発注・支払う業務が確立していた。APCの場合、どういう形でお金を集めるのかもそうだが、そもそも学内で研究者の成果を発信する部分を図書館がやるというと、研究推進部にあたるところが「余計なことを」というかも知れない。じゃあ、研究推進部にそういうノウハウがあるかといえば、ない。結果的にできるのは図書館だろうと思うのだが・・・機関リポジトリのときも、私見だが、図書館がやる必然性はない。けれども、既存の大学の中でそれができるノウハウがあって効率的なのは図書館だし、そういうことをしないと図書館が干上がる、ということで機関リポジトリに関与すべきと思った。APCも似たようなところがある。
どうやってやるかのイメージはないが・・・SCOAP3のように購読費を単純にリダイレクトする形で成立してくれれば楽。でも、必ずしもそうでは・・・ある出版社ではメンバーシップ料金を払うと、先生方が普段一般的に払うAPCが2割安になります、という提案もあるが、図書館がメンバーシップ料金を払うまではいいが、その先のお金をどう確保するか、その金額は基盤だけじゃおさらまないので競争資金がいるがそこまで関与するのか。それともメンバーシップ分だけ図書館で残りは先生、とするのか。色々ありえて、どうするのか把握しきれていない。
- 鈴木さん:
私のところは、図書館でどういう風に予算のフローを、ということではなく、今は支払業務が2つに分かれているので一元化しよう、という話。先生方の科研の支払いを図書館から、という。どのくらい分量があってどこに投稿してていくら払っているのかは調査が必要。
- 市古さん:
皆さんの大学の中でもAPCについて経験があるところがあるのでは? 経験がある方はいない?
- 原子力機構の方:
うちでは全組織の論文投稿料の財布を図書館が握っていて、そこから払っている。
- 関川さん:
筑波ではなく前の大学で。さるイギリスの大学出版局、OUPが提案してきたのだが(笑)、メンバーシップ料金を払うと、投稿料が割引になるという。関連する研究室の投稿件数で割ってみると、メンバーシップ料金を払う方が安くなるということがあって、部局に話しを持って行き、先生方に話しを持って行って合意した、という例もある。
ところが、困っているのは、例えば筑波大学がある分野の雑誌を投稿している量と、購読している量の、均衡がとれていないことがある。購読はしているが投稿は少ない雑誌について、投稿料が安くなるからメンバーシップ料金を・・・とすると、payしない。購読とAPCの違いというか。アンバランスがあって、厄介。
- Richardsonさん:
今、関川さんのお話にあった例、APCのディスカウントというのは、私のアイディアではじめたものなので(笑)コメントしたい。
たぶん、先ほどの大学は比較的きちんと管理・運営されていたのでこの制度を活用できた。でもほとんどの大学はそうなっていない。実際にAPCをどれくらい払っているか、使っているか把握していなくて、メンバーシップ料金をAPC料金と別に出すところが多かったので、結局このモデルは失敗に終わってしまった。
私の提案モデルは複雑過ぎた。APCを非常に大量に払うときにはうまくいくかもしれないモデル。あるいは他の費目から割引分を払えばうまくいくかもしれない。
機関リポジトリについて・・・OAでどう変わる?
- 市古さん:
機関リポジトリは将来的に、Richardsonさんのお話だと厳しいような表現もあったが、機関リポジトリというものは、(Gold)OAによってどう変化するか? それをどう捉えるか?
- 鈴木さん:
Richardsonさんのお話で機関リポジトリの数は増えているけど登録率は減っている、というのは、機関リポジトリ担当者のモチベーションが下がっているとかいうこともあるかも知れないが、その後にも話があったように、OAの論文が増えているから載せてない可能性もあるし、減っているというだけで機関リポジトリに意味が無い、というのは違うと思う。
本当に全面的にGoldになるなら、機関リポジトリの意味は無い・・・まあ、やらなくてもいいとなる。ただ、本当にそうなのか。ここにいる機関リポジトリ担当者は皆そこを疑問に思っていると思う。どうでしょう?
- Richardsonさん:
私も機関リポジトリの将来はないと言おうとしたわけではなく、Gold OA主流になるなら違った役割になる、と言おうとしたつもり。ただ、これから数年間はなんらかの移行期になる。色々なモデルが共存する形になる、というのは同意いただけるかと思う。
提案として、機関リポジトリ、OA雑誌、購読雑誌、色々なモデルの効率性を測るような尺度を開発してみてはどうか。そうすれば、よく比較ができるはず。例えばダウンロード1件あたりのコストがビッグディールの評価に使われている。同じ尺度を機関リポジトリでの場合や、オープンアクセス雑誌のAPCでは、というのも見られるのではないか。このような尺度が移行期には大切と思う。何が変わり、何が変わらないかの判断に役立つのではないか。
APCを払えないと発表できない???
- 鈴木さん:
メトリクスについてはダウンロード数をお知らせするくらいしか図書館ではやっていないが・・・
ちょっと別の質問を。思いつきなので今いうのも、とも思うが、機関リポジトリをやっていたのは、図書館で雑誌が買えなくなって、先生方が書いた論文を読めない大学が増えて、それはその先生にとって読まれる機会が減っているので、手助けしたい、というところから始めた。
先ほどフロアから、このままGold OAに移行して、投稿料が高くなって出せなくなって・・・というときには、そういう方面で研究者の支援を考えないといけなくなる。出版社としては、投稿料が上がって貧乏な大学からの投稿はいらん、とは考えないですよね?
- OUP・的場さん:
そういったことは絶対にない。支払う金額によって著者の仕事が発表されるか否かということにはならない。出したい雑誌に出したらああいう金額に、ということになるのではないか。
- 安達さん:
今のロジックに諸悪の根源がある。研究者は自分の論文がNatureに載るならいくら払ってもいいと思っている。ミクロに自由主義的に考えると、研究費を持っていて、いくら金がかかっても論文を出したいという研究者にどう仕事をさせるかが重要。Goldが進んで間抜けなことは、2,000億円の科研費の半分がAPCになったりしたらこんなバカなことはない。今、図書館が払う購読料の総額は200億円代。それが2,000億円になったらこんなバカなことはない。今、大手出版社が儲けている部分が、Goldになって安くなるかというのは、OAの是非と別に考えないといけない。税金が合理的に研究費として使われて、研究成果が他の活動に役立つ正しい循環を作らないといけない。APCが高くなった時点でOAはダメ。鈴木さんのやっているAPCを数えるところは正しい。「我が大学からこんな金額がAPCに」という事実を明らかにしないとダメ。
そういうことがわかっているのは図書館だけ。大学の中で図書館がこれをやるしかない。研究担当部局がそういうことをわかっていてやるかといえばそんなことはない、とにかく自分の大学の成果をあげたい、となる。図書館は研究費とってくる先生だけでなく、お金のない人も発表できる環境を整えることを考えている。大学の中では図書館しか考えていない。少なくとも研究者は考えていない。それを改善する、というのがOAの正しい道。
リポジトリについては、とにかく出版社がボロ儲けしている、と。証券会社等が投資する価値があるか否か調べていて、それを見れば出版社がいかに儲けているかはわかる。それをちゃんと把握して、まともにお金を使う、というのがOA。そのことは覚えておいて欲しい。研究者だけではできない。それは電子ジャーナル購読のときにすでにわかっている。図書館がやらないと、日本の研究界はますます間抜けな状況になってしまう。
- 市古さん:
おしりを叩かれた感じだが・・・APCはどうやって計算している?
- Richardsonさん:
やっきになってやっている、できれば大手の出版社にお答えいただきたい。
特に会場からはっきりした回答はなし
- Richardsonさん:
では元出版社の人間として、理論上の計算方法を。
APCの計算方法は、購読料の計算方法と理論的には似ている。原価+色々な要素で上乗せ、というよりも、市場価格との関連性、つながりの方が高い。
現在、すべての出版社をあわせたAPCの平均は900ドル。ただ、このrateは全ての出版コストを賄うには不十分。なので、今後は上がるだろう、と申し上げた。
今のお答えはOUPではなくあくまで個人的な見解。ご含みおきを。
- 市古さん:
間抜けなことをしないようにできるのは図書館員だけ、と安達先生からお話あったが、その方向でお仕事していきたいし、していきます。
ビッグディールは「いつ」終わるのか
- 市古さん:
話を戻して。ビッグディールがそのうちキャンセルが出るという話があったが、「そのうち」とはどのくらいのイメージ?
- Richardsonさん:
発言の主旨は、主流的な雑誌出版の方法がOA化する、というコンテキストによる。OAが主流になれば、その時点で購読ベースの雑誌の需要が下がる。
そこで、提案したいのは、その差額分の穴埋めに、図書館はAPCのビッグディール的なものを、ということ。APCのビッグディールというのは、ある出版社の日本の研究者分を全部とりまとめて払う、とか。移行期の段階ではビッグディールといっても一部購読ベースとAPCが混在するのではないか。そういうものが始められればいい。これによっていわゆるダブル・ディッピング、ある資料についての二重請求の悪しき慣行を防げるのではないかと思う。
- 市古さん:
個人的には移行中は資料費が減っているのにAPC、ビッグディール・・・となって、余計にお金がかかる不安がある。皆さんの中には移行の際、図書館はうまく乗りきれるか、不安はない? 費用面で。
- 小野さん:
今の質問にかなっているかはわかりませんが。ビッグディールをやってわかったのは、やっぱり読まない雑誌を買っていた、ということ。読まない雑誌にお金を払っている。大学によって程度の差はあるでしょうが、必要なものを買いましょう、となったとする。
OAになったとき、個々のAPCなら投稿したものに払うわけだが、ビッグディール的なAPCでは書かないものにも払うことになる。そのあたりのお考えは?
- Richardsonさん:
私の提案はAPCのビッグディールということだったが、機関あるいはコンソーシアムが全ての研究者に代わってある出版社での出版の権利を買う、という提案。その出版社からは全ての研究者が出せるようになる、という。
また、移行期に余分なコストが・・・という点については、Finch Reportに分析がある。余分なコストを定量化してみた話がある。日本の図書館関係者でも定量化をやってみて、追加コストがどのくらいあり、インパクトはどのくらいあるか、移行期についてやってみてはどうか。同じような経験は冊子⇒オンラインのときにも起こっていたはず。一時コストが二重にかかった、追加の経費が図書館も出版社も必要になったが、現在は冊子の購読が減っているので、システム全体の効率は上がった。移行期にはこのような追加コストがかかることは避け得ないのではないか。
まとめ
- 市古さん:
何かまとまったものが出たわけではないが・・・変化していくことは間違いない、図書館員が考えないといけない時代なのは間違いない。
関川さんの最後のスライドにもあったが、図書館員の仕事は従来から変わったところに切り込んで行かなければいけないと思っている。
将来は予測できないと言われているし予測して悲観するより作る覚悟で図書館員は進みたいと思っている。意味のあることをやって貢献して行き続けたい。色々考えなければいけないが、学術情報流通が変化していく際には、当事者である研究者に、当事者であることを話し続けて、他部署との関係も作り続けて、研究者を教育・・・というと烏滸がましいですが、ある程度そういうことをしていかなければいけないのかと思う。
しばらくは試行錯誤が続くと思うが、究極的に作り上げたいのは持続可能な、潰れない学術情報流通の世界と思う。それに向けて図書館員ができることを今後も考えていければ。
閉会挨拶(安達淳先生、国立情報学研究所)
- 今回は図書館の方々に来て欲しく企画した。今後もこういう形のイベントというか、セミナーを企画していきたい
- パネリストの皆さんありがとうございました
- ちょっとだけ話しを。僕自身はOAはgame changeと思っている
- ここでうまくやらないと大変なことになる、という認識を持って行っていきたい
- 今日のセミナー中、NIIからSCOAP3参加調整のメールを大学に出した
- 今日の議論すべてに関係する演習問題と思って欲しい。SCOAP3によって出版社との契約がいくら安くなるか、把握するには参加に○を
- 全世界の高エネルギー物理に関係する機関は似たことをやっている。ぜひお願いを
パネルディスカッション中の小見出しはmin2-flyが勝手につけたものですのであしからず。
Richardsonさんから「Gold OAもまた一握りの出版社が担うようになるだろう」「今のAPCの相場ではカバーできないので値上がりするだろう」という見解が出たのは個人的に面白かったです。
他方ではPeerJのような価格破壊モデル*11も出たり、以前のSPARC Japanセミナーに出てきたeLife*12みたいに「当面APC無料!」なんてのも(もっともこれはビジネス・・・?)ありえたり、OAメガジャーナルが乱立すると一時的に価格も競走対象になり得るのでは(まだprestigeがPLoS ONEとせいぜいScientific Reports以外ないので)、とか、値下がりの可能性を示唆する要因もあって、このへんどうなるのかは見ものかと。
自分自身はGold OAが破壊的イノベーションであるかは懐疑的なのですが(Lewisの論文は「S字曲線を描いて成長する、なぜなら破壊的イノベーションだから」とはいってもどうして破壊的イノベーションと言えるのかの論証は不十分・・・というのは解説記事を参照)、仮に破壊的イノベーションであってゆえに急成長を遂げるんだとすると、まあ十中八九既存のプレイヤーはそれに乗れない。
既存の枠を壊す連中が台頭する・・・って考えれば、そもそも「今かかっているコスト」を同じようにかけるのかどうかもまたわからないわけで。
実際すでにPLoS ONEが雑誌といえるのかは首ひねる感じですし、PeeJみたいなのが流行ったり、Mendeleyのような無料モデルから初めてプラスαを求める人は課金でね、という文化が浸透してくると、また違った未来もあり得るやも知れないのでは、とも思ったり。
情勢は流動的なので、どっちに転ぶか、どっちにも転ばないのか、さしあたって2020年までの8年間は注視したいところ・・・と他人ごとのように言うよりは、自分が実現したい未来を実現するために介入するのがより確実でしょうか。
とりあえず、安達先生もおっしゃっていましたがAPCが高騰してるのに研究者はほいほい払って(や、そりゃ僕だってNatureかScienceに載せるよ、価格は100万円、って言われて手元に100万円研究費あったら出しちゃいそうですもん)、図書館の購読負担よりずっと金かかったじゃねーか、みたいな未来は避けたい。
日本全体で200億円代(電子ジャーナル購読費用相当)、は上限でしょうね・・・それ超えちゃうようなら図書館がOAに協力してきた意味の一部が完全になくなってしまうわけなので。
そういった全体像を把握してマネージメントするのが、「図書館」なのかはわかりませんが、それができる人間が今専ら「図書館」にいることは確実というのも今日皆さんが話されていたとおりで、ここはやっぱり図書館の方に担っていただきたいなー・・・と研究者の端くれとしても思います。
お手伝いできることは手伝いますゆえ。
あとはちょっと気になったのは、「読んでいる雑誌」以上に「投稿する雑誌」は研究者ごとの差異がありえそうで、ある程度ジャーナル数が限られてどの研究者もそこに出す、って雑誌が決まっている分野(高エネ物理・・・はもうSCOAP3で解決しちゃうかもですが、あとどこでしょう? 化学=JACSとか? でも他にも出すか??)はいいとして、そうじゃないところだと「APCビッグディール」を本気でやるなら単に自分のところの研究者が今どこに出しているか、のみならず、「誰が出てって新しく誰が来たか」も常時見ていく必要があるかな、と。
あとは、学生ですね。
これも時間があったら問題提起したかったのですが、Gold OAでAPC支払いが義務付けられるようになったとき、大学院生の発表機会は維持できるのか。
今でも日本では大学院生の4人に1人がアルバイトのせいで研究時間が確保できない*13なんて報じられているわけですが、現状でも分野によっては、研究室の資金状況によって院生の発表機会(学会参加可否等)が左右される状況もあり、これが論文発表にも出てくると格差が一層拡大するということにも・・・*14。
そのあたりも、研究者だけに任せていてもなかなか改善しづらいことが予想され、大学としてのサポートの枠組が欲しい、そこを作るのに図書館が関与する、というのは心強いかな、と思ったり。
あるいは、APC払えなくて非OA誌に出した人向けのサポートを手厚くするとか。
思いつくままに書き散らしてしまいましたが・・・やあ、きっと他の参加者の方も語りたい/考えたことがいっぱいある会だったのでは、と思います。
明日は慶應でより参加者とのディスカッションを重視する会もあるとのことですので、連続参加可能な方はそちらもぜひご検討を!
オックスフォード大学出版局(OUP)で20年間学術出版に携わってきたRichardson氏が,これまでの オープンアクセスの発展の経緯をたどり,Gold OAつまりオープンアクセスジャーナルこそが将来の学術出版のモデルとなるだろうという主張を展開する。
発表は英語で通訳はつきませんが,日本語の資料を配付します
※参加登録は不要です
*1:[TopHatenar] 部門別ランキング - 図書館
*2:原因:近年、「近年、」ではじまる卒業研究が増えている - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*3:最近たまにコメントで「なんだその入りは・・・」とか言われることがありますが、ブログの書き出しについてちょっと定型文ばかりでつまらんな、ってことで模索しなおしているのです。以上余談
*4:引用元:Anatomy of open access publishing: a study of longitudinal development and internal structure | BMC Medicine | Full Text
*5:2012-12-05追記・・・これだと世界の論文数がかなり少ない計算になってしまいそうですが、出典は・・・?
*6:引用元:Past Issues また、日本語での解説記事は自分も書いていたり:E1277 - 2020年,学術論文の90%はOA誌に掲載される?<文献紹介> | カレントアウェアネス・ポータル
*7:http://www.uk.sagepub.com/repository/binaries/pdf/Library-OAReport.pdf
*8:ラテン語で「どこへ行くのですか」の意味。使徒ペトロがイエスに問いかけた言葉、だそうです(出典:世界文学大事典の『クオ・ヴァディス』の項目。ただし同項目は同名の長編小説の解説
*9:http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?%E6%9C%88%E5%88%8ADRF
*10:http://www.researchinfonet.org/wp-content/uploads/2012/06/Finch-Group-report-FINAL-VERSION.pdf
*11:https://peerj.com/ 99ドル払うと一生涯、年に一定数の論文を発表できる権利を得られる、というモデル
*12:http://www.elifesciences.org/
*13:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121122-00000025-rbb-sci
*14:例として、筑波大学図書館情報メディア研究科は院生に外部発表時の旅費の補助をしているのですが、今年はその予算使いきっちゃったそうで今後、どこかで発表するには先生が研究費を持っていればそれが使えますが、なければ自腹、ということになっていたり
「Symplectic Elements:新世代研究情報管理ソリューション:リサーチアドミニストレーション、研究戦略立案の切り札」(第14回図書館総合展参加記録その5/図書館総合展連続更新その6)
「Symplectic Elements:新世代研究情報管理ソリューション:リサーチアドミニストレーション、研究戦略立案の切り札」(第14回図書館総合展参加記録その5/図書館総合展連続更新その6)
図書館総合展連続更新シリーズ、ついに最終日・3日目。
最初の時間は研究情報管理システム・Symplectic Elementsを紹介するフォーラムに行って来ました!
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- 会場 : 第7会場(E205)
- 日時 : 2012年11月22日(木)
- 時間 : 10:30-12:00
- 主催 : NPG ネイチャーアジア・パシフィック シンプレクティクリミテッド
- 講師:
- ダニエル・フック Ph.D.(CEO シンプレクティクリミテッド)
製品概要
Elementsは世界中で多くのライブラリアン、リポジトリ担当者、研究者および研究アドミニストレーターの方々に利用されている研究情報管理システムです。ElementsはCiNiiなどの各種学術データベースからパブリケーション、引用および共著者情報などを収集し研究プロファイルを自動的に作成いたします。Elementsは研究活動の現状を評価、可視化しそれを将来計画立案に役立てるようなツール群を機関のリーダーに提供いたします。
Symplectic Elementsについては今回のフォーラムにお誘いいただくまで知らずにいたのですが、フックさんが語られたその背景・理念はそうとう面白かったです。
これは確かに研究者は進んでやってしまうかもしれない!
以下、当日の記録です。
例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書取れた範囲のものですので、ご利用の際はその点御理解願います。
事実誤認・誤字脱字等についてはコメント欄等でご指摘下さい。
また、Sympectic Elementsについて、詳細は下記webサイト等もぜひご参照を!
「Perspectives on Research Information Managements」(ダニエル・フックさん、シンプレクティックリミテッド CEO)
自己紹介・イントロダクション
- 理論物理学の研究者でもある
- SYMPLECTICで仕事をしつつ兼業
- 今日紹介するツールは図書館、マネージャの側面だけでなく研究者の視点も含んだもの
- 今日は研究情報管理の複数の側面について話したい
- 最初にリサーチ・アドミニストレータの仕事について・・・各国の状況の共有
- 研究評価について・・・SYMPLECTICが仕事をしている各国における、政府による研究の評価
- 「ランキング・ゲーム」・・・多くの大学にとって意味を持ち出している大学ランキングについて。どうされているか、あるいは外からどう見られているか。産業界や学生の意識は?
- オープンアクセス・・・リサーチ・アドミニストレーションにおいてここ5年間、重要性を増している考え方。図書館員あるいはリサーチ情報マネージャーとしてどう協業するのが重要なのか?
- 戦略的な意思決定・・・何をサポートしようとしているのか?
- SYMPLECTICのツールによってどうそれを実現できるのか?
リサーチ・アドミニストレーション
- 非常に新しい領域
- 英国では1990年代はじめからリサーチ・アセスメントが行われていたが、プロとしてのリサーチ・アドミニストレーターの登場はごく最近のこと
- 世界のどの国かによってリサーチ・アドミニストレーターのタイプや必要なスキルセットは異なっている
- リサーチ・アドミニストレーションは複数の側面を持つパズルのピース
- 一枚岩ではない、スキルもいろいろある
- ぴったりはまりあうことで必要なニーズに答えられる
- リサーチ・アドミニストレーションとは?
- 情報という側面から考える
- スーパーマーケット(文化堂)の写真をスライドに表示・・・スーパーマーケットは非常に情報の扱いに長けている
- スーパーマーケットでは売れ筋の商品/頻度/どれくらい売れるか/独自ブランドとナショナルブランドどちらが売れるか/記事にとりあげられたものなどを全て理解して店頭商品を決めている
- 大学は? 自身の成果をあまり理解はしていない
- そこでリサーチ・アドミニストレーション・・・大学として使える情報/どれくらい評価されるかを理解した上でプロセスを導いたり意思決定する領域
- そこで図書館員が最適な立場にある。大学の意思決定に大きく寄与できる
- 英国におけるリサーチ・アドミニストレーション/リサーチ情報管理
- どのような大学も教員・研究者を評価するとなるとなかなかデリケート/政治的な問題
- 研究者は評価・管理を好まない。慎重な扱いが必要
- 教員・研究者を取り込み、うまく対応しながらやることで、納得してもらえるようになる
- 教員・研究者の信頼を、リサーチ・アドミニストレーターは勝ち取らなければいけない。そのために必要なのはこの領域の知識
- 長年に渡り学者と付き合いのある図書館員は信頼がすでにあり、最も適した立場と言える。チームの信頼に足るパートナー
- この領域は非常に複雑でエコシステムも成り立っている。それを把握している人は学者にとっても信頼に足る相手
- SYMPLECTICがツールを提供する市場においては国や大学が協力することでリサーチ・アドミニストレーターのサポート機関を創設している。協会だったり業界団体であったり
- ARMA、ARMS、EARMA、INORMS and others…
- 他に標準化のための団体も重要。データを外部の団体・機関も読めるための標準化が重要。カナダにはCASRAIという団体もすでに
- 日本でも最近、同様の協会が設立されたという。今こそ図書館員・情報プロが加盟することで、どんな貢献ができるかをその場に投じることができるのでは?
- 研究者とどのように協働していく?
- 重要なのは対立せず、研究者の生活・活動を楽にすること
- アクセスのシングル・ポイントに/日常のワークフローに統合されていること
- 好ましい行動をどう惹起する?
「非常に多いフィードバック」「行動・行為に対して不釣り合いな報奨」(disproportionate feedback)の考え方・・・例えば、なぜ男性はコンピュータゲームをするのか? *1- 画面右上にスコアが出る、その数字をできるだけ多くしたいから。そのために何時間もゲームをする
- 研究者を引き込むにはシステムがゲームのように取り組めるものであることが重要。統計・スコアリング等の情報を与え、世界で自らがどれくらいのランキングかわかるようにすることで、ゲームの中でランキングを上げようとさせること
- 提供しているツールの中に外部要因・世界の文脈上での自分の立場がわかるようなものを
- 現在の研究領域内での機関の位置付けなどを可視化できるようにする必要
- 重要なのは対立せず、研究者の生活・活動を楽にすること
研究評価
「非常に多いフィードバック」disproportionate feedbackの究極形・・・政府がある大学の成果物をどう評価するかにあらわれる- 英国では1992年から、大学の成果の評価の取り組みが始まっている(RAE)
- ただしこれを「disproportionate」というのには異論もあるかも?*2
- 2-3年ごとに、英国の多くの大学はシンプルなスコアを得るためにとてつもない労力を強いられている
- そのスコアがその後の5-6年にわたり、大学・機関への世間、助成機関、学生からの認識を決定してしまう
- RAEはREF(Research Excellence Framework)に。直近はREF2014
- REFでははじめてビブリオメトリクスの考え方を導入する。引用・引用分析が評価の大きな項目となる
- 英国のリサーチ・アドミニストレーションで大きな関心を呼ぶ。「ビブリオメトリクスの専門家にならなければ」と多くの人が思うように
- 政府がREF2014でビブリオメトリクスを必須にしたことで、英国でビブリオメトリクスへの理解は一番高くなっていると思う
- 新しい領域ゆえに疑念・恐れを抱く人もいるが・・・ビブリオメトリクスとは文脈理解にほかならない。ある領域の研究を別領域とは比較できないし、同一領域内でも比較は不適切なこともある
- どのようにデータを正しく用いることができるか、研究者の理解を得られるのは図書館員コミュニティだろうし、そのコミュニティこそビブリオメトリクスへの信頼度も高めるものと思う
- 英国では1992年から、大学の成果の評価の取り組みが始まっている(RAE)
- 英国以外の研究評価機関の紹介
- 研究評価のこれまで・・・過去20年間、一貫して増えてきている
- 研究評価の指標になりうるものは?
-
- ある意味では悪循環の傾向も?
-
-
- 論文数・特許数等の機関から出てくるデータ量
- ほかにもベンチャー企業の数など・・・目に見える成果にまず注目が集まる
- 英国・REFでは出版量の占める割合は下がる
- オーストラリアでも助成金等は評価されるが、一番の対象はやはり論文
- どの評価でも、どう成果をランキングするかは異なっていて、デリケートな領域でもある
- 英国RAEでは評価対象機関の研究者は、対象期間の成果物を4つ選択し、justification statement = そこに出す正当性を示す書類をつけて出す。それが各領域の審査員に評価される
- 評価のたびに何十万件もの成果物をプロが査読する。それを以ってランキングが行われる
- 引用件数を使えば評価の作業が楽になる? 引用を見れば済むというなら作業はずっとシンプルに!
- ところが・・・この方法を精査すると、思った以上に複雑なこともわかる。引用の意図(肯定・否定)、領域間の比較ができるような正規化
- オーストラリアでは引用件数の分析には雑誌が特定され、その中での引用がものを言う
- 英国では虚栄心をくすぐるというか、レベルの高い成果物とは何かについて学者の間でのランキングがある。ジャーナルに掲載される方が特許よりも学者間では評価される、など
- プレプリントやデータは評価の対象に英国ではならない。学術領域内では膨大なデータの維持が大変な作業だったり学術研究の血液とも言える存在であるにも関わらず、研究評価にはカウントされない
- どの段階でカウントするか? オープンアクセスにしたものの発表直後からカウントしだすか、雑誌掲載日からか?
- 引用・インパクトファクターについても考えだすとさらに複雑に・・・
- 英国では以前は論文掲載誌のインパクトファクターでランキングを実施
- 極めつけ、オーストラリアのERA2012ではジャーナルの重み付けが政府から発表された
- 主要な方法でこれだけ複雑。全体像はどれだけ複雑か・・・
- 図書館員こそがこのあたりの情報を研究者に伝え、評価の複雑さを理解してもらう上で最適なのでは?
- 論文数・特許数等の機関から出てくるデータ量
-
- 競争的資金の件数?
- 評価全体の中での割合は大きくはない。大きくしてしまうと競争的資金の申請がうまいところに偏りすぎる
- 競争的資金の件数?
- 同定問題
- ある研究者の論文・助成金リストを作るのは簡単にそうに思えるかも知れないが、個人識別はしにくいし、難しい
- ID管理については様々なIDがすでにある・・・この話だけで終わってしまうようなテーマなので深掘りはしないが一言触れてはおきたい
ランキング・ゲーム
- 今年、ベルギーでこのテーマに特化した会議も・・・EUはこのアプローチをいかに取り込めるか?
- 最終的には政府の評価にもつながる?
- ランキングは様々あるが、それぞれアプローチは異なる
- もっともしっかりしたランキング・・・Times Higher Education (THE) ランキング
- 公開型/オープンな手法。大学に膨大なデータを要求するが、それをどう扱いランキングするかの手法についてwebサイトで公開
- 方法が公開されているので上げるための努力もできるし、毎回フィードバックを受けて方法論は変わっても要る
- ただし、様々な手法が用いられていることで、異なる評価を比較することはできなくもなっている・・・一方で時代背景を反映した評価ではある
オープンアクセス
- いかに出版された論文が入手可能になるか?
- 英国においてRCUKがどんなアプローチを取っているか?
- 基本的に、研究成果は資金提供者としっかりリンクをはる、APIを使ってその成果を結びつけることも求められている
- PeerJ・・・新型のオープンアクセス雑誌
- 研究者は生涯利用料をPeerJに払うと、毎年決められた本数の論文をPeerJで公開できる
- figshare・・・研究データの共有システム
- 肯定/否定的なデータすべてを共有する
- 否定的な実験成果は論文として公開されないが、実験自体には価値がある。情報共有で否定的な結果になる実験が繰り返される無駄を省ける
- オープンアクセス・・・思っている以上に広がっている
- 今後はオープンアクセスでの、情報の利活用がさらに進むと考えられる
戦略的な意思決定を行う
- 膨大な量のデータが存在する・・・大学・研究機関が意思決定を行う際にはそこから意味のある情報を含んだレポートを抜き出す必要
- いくつかの例をスライドに表示
- サザンプトン大学と共同研究機関の例。共同研究には誤解が多い。本来、一番関心があるのは学際的な取り組みのはずだが、そのような使い方はされていない
- ある機関でどういったジャーナルに論文を出版していて、その論文の引用数や掲載誌のインパクトファクターは?
- いくつかの例をスライドに表示
- SYMPLECTIC Elements・・・SYMPLECTICの製品がこの分野でどのような役割を果たしうるか?
- 基本的には、複数の情報源から取ってきたデータを集めて、IDによって紐付けた上で、インタラクティブに・研究者がそのリンクを見られるようにする
- 情報管理がElementsだけで事足りる、ということを実現したい。ワンストップショップを目指す
- 複数のデータソースから文献情報を収集可能・・・容易に文献リストを作成できる
- 基本的には、複数の情報源から取ってきたデータを集めて、IDによって紐付けた上で、インタラクティブに・研究者がそのリンクを見られるようにする
- Elementsのワークフロー
- プロセスをシンプルにすることで無理なくワークフローを日々の作業に取り込める
- 研究者は自らの検索用プロファイルを作成。それが複数のDBに送られる
- データソースには他システムのIDも使える。ORCID IDを使うなど
- 検索が終わると研究者に文献リスト搭載候補をメールで送る・・・自身の文献か否か本人がチェックできる
- 研究者にやることを押し付けるのではなく「これでいかがでしょうか?」をシステムが提示。かなり楽?
- 各研究者のレポートを提示できる標準レポートや、どういう領域かといった詳細情報表示機能など
- どのくらい引用されているか/引用されやすいのか、ということも一瞥できる
- スコアが出てくるので、ゲームの話しをしたときのまさに「disproportionate」なフィードバックになる
- 実際、多くの研究者がどれくらい自身の論文が引用されているか知りたい、ということでElementsを使っている
- 最後に:これまでは「引用」、過去の評価/履歴的な評価が行われてきた・・・
- 本日のテーマ・スライドに出したことは、すべて図書館の皆様が価値ある働きができるところと思う
- 図書館員がこれからの方向性を定められる分野なのでは
- 「情報を管理する」背景を皆さんは持っている。特定領域のデータ利用や文脈付けには長けているはず。だからこそ、データを最良の形で使うには、という領域で果たせる役割は大きいのでは?
質疑応答(ファシリテーション:宮入暢子さん、NPG ネイチャーアジア・パシフィック)
- 宮入さん:(まずフックさんのお話の概括・・・ここは省略)
- Q. ご紹介いただいたツールで研究者評価にいろいろなやり方が出る可能性があると思う。出版・引用数だけではない、特にaltmetricsで社会科学系の評価もできるようになる。リサーチ・アドミニストレーターの立場としては、大学の研究者にもいろいろなタイプがいる、分野が違うだけではなく同分野でもスタイルが違って、引用や出版数ではなくテレビの知名度で学生を集める研究者もいる。ここで聞きたいのは、SYMPLECTICは研究者のスタイルをパターン化・分類できる? それに応じたパフォーマンスの最適な評価法を提供したりは? さらに言えば地域性もあると思うが、それに即した評価は?
- A. 微妙かつ難しい質問。Elementsでは複数ソースのデータを集約することができる。今のご質問はデータの解釈について。例えばテレビ番組や伝統的メディアの登場頻度をどう評価するかということだろうが、まずはデータを集約した上でメタデータを作る必要があるのではないか。
- 宮入さん:Elementsは非常にカスタマイズ可能なソリューション。TV出演も研究者が入力さえすれば数えられるようカスタマイズできる。カスタマイズの数にも制限はない。
- Q. 拡張性の前に、今ある指標の中で研究者のパターン化は行われている?
- A. 一定レベルまでは可能と思うが、今このシステムで欠如しているのはベンチマークデータ。ベンチマークにはかなり多量のデータが母数として必要。機関で登録している研究者数が十分であればある程度のカテゴリ・パターン化はできるかと思う。私自身にも重要なことで、私自身は理論物理学者なので実験物理よりも引用が少ないとか、理論物理の中でもさらに引用が少ない分野だったりとかする。どのタイプとフィットするか、というのは重要で、母数があればある程度は可能かと思う。
- 宮入さん:Elementsは機関単位のソリューションなので、国・分野のベンチマークデータがないことを問題視していた。国で導入すれば一国としてはできるが・・・。
- 佐藤:導入期間全体の中での自分の機関や自分自身の位置を見たりは?
- A. できます。
「なぜ人はPCゲームをずっとやってしまうのか」や「虚栄心をくすぐる」あたりをフックさんが突かれているのはさすがというか、「これはキタな!」とか思ったり。
ゲーミフィケーションとは最近いろんなところで耳にしますが、論文を書いて業績リストが伸びるとなんか嬉しいとか、定期的に引用状況をチェックして他の人とつい比べちゃったりとか、よくやりますよね?(自分だけだったら恥ずかしい・・・
まさにスコアが伸びると嬉しいというか、だんだんそれ自体も楽しくなってきてResearchmap.jpの更新時にニマニマしたり・・・いや、業績に限らず、はてなブックマークされた数とか、TweetがRTされた回数とか、fav数とか、ついつい気になって、数字が出て「あと何回で○位です」とか言われちゃうと目指しちゃったり・・・
そういう心理を突いて研究者に行動してもらおう、というのはいいアプローチではないかと思います。
そりゃ、やっちゃいますよ。
さらに最後にベンチマークの話も出てきましたが、これも他の方のご質問にあるとおり、いくつかの類型を作ってその中での位置がわかったりすると楽しいですね。
分野とかはもちろんですが、例えば「あなたは卓越研究型です」とか「あなたは業績量産型です」とか「教育重視型です」とか「メディア露出型です」とか・・・。
数年前に当ブログでとりあげた「研究者人生ゲーム」ではまさに、自分がどんな研究者を目指したいかをまず選んでそれに向けて業績を積んだり学生を育成する、というスタイルでしたが*4、実世界で同様に自分がどんなタイプなのかを客観指標で見ながら、それをさらに極めるか別の路線に行くのか・・・とかを選べるとすごく楽しそうだな、と。
ゲーム的に言えばクラスチェンジとかジョブチェンジ! (*注:ゲームと現実の垣根が相当曖昧に思えてきています)
その他にはaltmetricsについてもさらっと言及されていましたが、「社会科学系に光をあてる」という観点は素晴らしいと思います。
引用指標だとどうしても生産数の違う自然科学系に水をあけられる社会科学系ですが、比較的研究者以外の方も理解しやすい内容で日常生活との関わりも深い分、ソーシャルメディアでの言及などは当然多くなりうるわけで。
そういう側面にも光をあてられる指標としてのaltmetricsというのは、これは実に面白い考え方で、ほかにも日本語論文(多くは現在の引用文献索引に入っておらず引用データ自体ない)についても、そういう観点から分析してみると面白そうだな、なんて思ったりも。
当然あまりそれを重視しすぎると不正操作しやすい等の問題はあるのですが・・・いやいや、面白いタネはいろいろなところにありますね!
さて、これにて当ブログでの図書館総合展参加記録シリーズは一段落です。
もう一件、参加して来たフォーラムはあるのですが、それについてはまた後ほど、公式記録がアップされ次第の言及ということで・・・近日中には。
総合展も3日目が終わりましたが、明日からは今日までの内容を咀嚼したり、整理したり、それを自分の活動に生かしたりのターンですね。
日本図書館情報学会⇒総合展のコンボで今年は大変でしたが面白くもありました・・・さあ、明日からは!・・・明日くらいは家で寝てようかな・・・・・・
*1:2012-12-04 表現修正。主催者の方から、用語についてご指摘いただきました。"ゲームの世界で、「なんでもないいくつかのこと」を達成すると、突然パワーアップしたり、現実にはあり得ないような能力が生まれ"るように、例えば"マリオがコインをいくつかゲットすると、高くジャンプできるとかモンスターを飛び越せるとか"いうように、"Symplectic Elementsのようなツールに大学の研究成果を入力するという「単純作業」によって、巨額の研究資金配分が行われる、という事情を指して、この用語が使われていた"とのことです。ご指摘ありがとうございましたm(_ _)m
*2:2012-12-04 追記。これも主催者の方から、"(実際にはすごい労力を強いられる)RAEの仕組みとそれに対する報奨をdisproportionateというには異論があるかも"という意味で「異論があるかも」とおっしゃっていた、と教えていただきました
*3:2012-12-04 追記。メモをとっていて自分でも「SHERPA/RoMEOに"出す"」ってどういうことだ・・・と思っていたのですが、これも主催の方から詳しくご説明いただきました。"Elementsの中に取り込まれた研究業績のうち、雑誌論文でSHERPA/RoMEOでOAライセンスのチェックし、なおかつ自大学の機関リポジトリにそのフルテキストがすでにデポジットされているかどうかをチェック"した上で、リポジトリに登録できるものが何件あり、うち何件を実際に登録しているか(あるいはSHERPA/RoMEO上でどういう扱いになっているものを登録しているか)を図示してくれる機能があるそうです。これは便利! ぜひSCPJの取り込み機能もつくと良いですね!
「第9回デジタルリポジトリ連合ワークショップ(DRF-9)第3セッション『頼れるリポジトリ運営のかたちとは:日英の共同・共用リポジトリ』」(第14回図書館総合展参加記録その4/図書館総合展連続更新その5)
図書館総合展連続更新シリーズ、2日目最後のフォーラムの時間は再びDRF9の会場に戻って来ました。
この時間はついに今年度から運用が始まったJAIRO Cloudに代表される共用リポジトリと、それ以前から各地で盛んに活動してきた地域共同リポジトリについて。
そのそれぞれが活発に活動している国内状況の紹介と、ゲストのドミニク・テイトさんからは英国の状況の紹介が。
そして最後には討議の時間も!
- 参考:JAIRO Cloudについて
以下、例によって当日の記録ー・・・ですが、日本図書館情報学会(前日入り)からはじめてこの日で出張続きが5日目に入っており。
さすがにそろそろへばっているので相当、記録が雑な部分もあります(大汗)
途中、ついに力尽きた部分等もありますし、不備が多い内容と思います・・・ご利用の際はその点、どうかご理解いただければ幸いです。
機関リポジトリコミュニティのイベントですから、スライド等はきっと後日公開されるはず!!
誤字脱字、お気づきの点等あれば、コメント欄でご指摘いただければ助かります。
では、まずは文教大学・鈴木さんによる趣旨説明からー。
はじめに(文教大学・鈴木正紀さん)
- ゲストのTateさんにイギリスの状況も伺いたい。
- また、DRFアドバイザ/NIIの尾城さんからは今後の支援体制についてお話いただく
- その後、フロアとのディスカッション、という流れで行きたい
「地域共同リポジトリの発展:敬経緯と現況 その後のShaReプロジェクト報告」(尾崎文代さん、広島大学)
- 地域プロジェクトの現状についてお話したい
- 2009年に終わったShaReプロジェクトのその後の報告
- 2010.3公開の報告書から・・・
- 未構築の理由は人的余裕やノウハウ、予算のなさ
- 共同リポジトリの確固とした定義はないが・・・
- ShaReの活動:
- 2010.3にShaReが終わったときには8地域・52機関が共同リポジトリに参加
- その後も増え続け・・・2012.11には14地域・92機関が共同リポジトリに参加!
- 都市部じゃないところで割りと多い?
- IRDBコンテンツ分析システムからとってきたのでNIIの数字とは少し違うかも?
- 設置種別で見ると・・・
- 経年変化を見ても増え続けている
- Dspaceを使ったシステム共有型モデルが一番多い
- 独立システム型もいくつか
- ホスト大学サーバとの関係もいろいろ
- 運営主体で多いのは県大学図書館協議会。他に大学のコンソーシアムの例も
- 参加機関・・・大学のみ/県内なら、等
- 運用経費・・・徴収していない方が多いが広島/鹿児島は案分徴収
- 地域共同リポジトリ構築への意識
- よかったのはコスト/導入の簡単さ/連携、ホスト機関・・・コミュニティ形成/地域貢献/課題の共有
- よくなかった点・・・多いのは「なし」だが、システムの制約や、ホストは負担・資金調達など
- 期待すること・・・参加機関はホストのサポート継続と連携強化
- ホスト機関の課題・・・人的・経済的環境の維持
- 地域共同リポジトリにはサーバ1つで有る以外にも付加価値:
- コミュニティであり、地域の情報をまとめること
- 課題・・・ホスト機関の負担
- コミュニティの枠? 県をまたぐ機関のサテライトはどうする? 独立するときは?
- 安定したインフラ と 頼れるかたち?
- 他力ではない安心できる/安定したインフラとは?
共同リポジトリ事例報告
「香川共同リポジトリプロジェクトについて」(大薗岳雄、香川大学)
- 最初に英語で挨拶!
- 香川共同リポジトリ・・・現在構築中!
- 運営主体・・・香川には大学図書館間の公式コンソーシアムはなし
- プロジェクトの主旨を伝える説明会を何度も開催・説明
- 活動を通し見えてきたこと:
- 今後の課題:
- まずは構築
- 参加帰還間の情報共有環境構築
- 高等教育機関以外の機関でも地域に関する研究成果はある。そこへも
- たよれるリポジトリ運営のかたちとは?
- あらゆる機関に開かれた形をホスト機関としては持って行かなければ
「共同リポジトリ事例報告:鹿児島:鹿児島県学術共同リポジトリ」(西薗由依さん、鹿児島大学)
- 鹿児島県学術共同リポジトリ・・・2012.3.22正式公開
- 経緯
- 2009.5 鹿児島県大学図書館協議会の協議題に
- 2010.5 県大図協総会で大学地域コンソーシアム鹿児島に提案することに・・・2010.12に承認
- いろいろを経て2012.3に公開
- JAIRO Cloudの詳細がよくわからなかったので地域でやるということで走り出した
- 運用
- 大学地域コンソーシアム鹿児島の事業
- 組織についての説明
- システム面・・・1つのシステムを共有する形
- 各機関ごとにページを作れる
- 7機関中に
- 特徴の紹介
ごめんなさい、連日の睡眠不足がたたってここ寝落ちしました(><) min2-fly
- 今後に向けて・・・参加機関拡大/コンテンツ充実
「共用リポジトリサービスを活用した事例」(徳永澄子さん、信州大学)
- 事業体制:
- 特徴:JAIRO Cloudを使用している地域共同リポジトリ
- 従来型・・・程度の差はあれホスト機関には大きな負担
- 信州大はDSpace、他はWEKOを使いJAIRO Cloud
- 上にポータルサイトをかぶせて横断検索を実現することが目標
- JAIRO Cloudで実現できたこと・・・機関の独自性をアピールできた
- 事業参加に有利に働いた?
- 機関ごとに環境が持て、それぞれの「顔」が持てる
- 規模や設置種別の違いから熱意に温度差もあったが克服
- 永続性のための負荷分散・・・JAIRO Cloudならメンバーが運営ノウハウを蓄積しつつ、ホスト機関の負担も少ない
- JAIRO Cloud後に地域共同リポジトリを組織するメリットとは?
- 現況のまとめ:
- 当初の目標・・・発信/視認性向上=プラットフォーム整備ができた、コミュニティ=既存のコミュニティをより強固にし、支援にあたれている
- 今後の課題・・・継続的にコンテンツを増やすための支援をどれくらいできるか
「JAIRO Cloud(共用リポジトリサービス)の現況報告」(汐崎さん、国立情報学研究所)
- 有料化とかそういう話はこの後の尾城さんに!
- 現在の国内の機関リポジトリ数は約200で、機関単位だと297機関に
- JAIRO Cloudサービス概要:
- 当面の対象は新規構築機関
- ハードウェア、OS、ソフトウェア(WEKO)の面倒はすべてNIIで見る
- ユーザインタフェース変更・コンテンツ登録作業に利用機関は集中できる
- 現在の利用状況:
- 79機関が参加。私大60機関
- うち38機関はすでに公開
- 未構築大学向けアンケートでは約90大学がリポジトリ構築予定とのことで、まだまだ需要はありそう
- 実際の機能説明/構築機関例の説明
- WEKOはNetCommonsを使っているので、お知らせ機能を使って新着図書表示とかもできたり
- システム環境引渡しから公開にかかる期間は?
- 最短で7日・平均69日
- 今後の予定
- WEKOは年数回機能拡張
- 業績データベースとの連携機能も今後考えたい
- 対象期間の範囲は今後、検討を進めていく必要もある
- 持続的な運営体制についてや、DRF・地域共同コミュニティとの関係も協議しながらいきたい
- WEKOは年数回機能拡張
- 具体的な申請方法等はこのあとで捕まえていただいてもいいし、来週から全国四カ所で説明会をするのでそちらでも
- マニュアルなども公開しているのでそちらを見ていただいてもいいし、フォーラムもあるのでやり取り・雰囲気も感じ取れるのでは?
- 担当は頼りないかも知れないけど、サービスは頼れます。迷われている方はぜひ申請を!
全体討議
- パネリスト:
- ドミニク・テイトさん(説明)
- 尾城孝一さん(国立情報学研究所)
- 尾崎文代さん
- 司会:鈴木正紀さん(文教大学):まずはテイトさんにイギリスの状況を聞き、そのあと尾城さんからコメントいただいた後に、全体の質疑へ。
- テイトさん:イギリスの共同リポジトリについて。イギリスでも大きな関心をよんでいる。図書館においても、高等教育機関においても、共有の大きな文化がある。しかし、実際に共同リポジトリとして機能したのは3つで、現在も稼働しているのは1つだけ。
- 最初の共同リポジトリはSDLC、スコットランドのデジタルライブラリコンソーシアム。今でも存在しているが、基本的には電子化された図書館サービスの提供で、サービスプロバイダの位置づけ。リポジトリを含めた電子図書館サービス。DSpaceのリポジトリを使うべく、スコットランドの複数機関が使える共同プラットフォームを提供している。それぞれのリポジトリは個別管理されていて、技術的なベースを共有している形。各機関、その部分はSDLCに料金を払っている。
- 2つめはSHERPA/LEAP。LEAPはLondon E-prints Access Project。これはあくまでプロジェクトで、はじまりがあり、終わりもあった。そもそもの目的は2004年当時、多くの大学がリポジトリを持っていなかった中で、E-printsをLondon大学の各校でインストールできることを目的としたもの。当初はE-printsはUniversity College Londonがホスティングしていた。プロジェクト終了後、各大学はそのままホスティングサービスを続けることだったが、多くの大学は自前の機関リポジトリを持つことにした。SHERPA/LEAPはすでに終了していて、関わった多くのリポジトリマネージャはよく一緒に仕事をしているが、各機関ごとに見ると、それぞれ独自に持つことに決めている。引き続きホスティングを選んでいるのはごく少ない。
- イギリスで非常に成功しているリポジトリの例は、ヨークシャーにあるWhite rose。リーズ大学、シェフィールド大学、ヨーク大学の共同リポジトリ。ヨークシャー州の3つの大都市でもある。このリポジトリはリーズ大学の職員が管理・運営。リーズ大学でホスティングされていて、管理・運営もリーズ大学が3大学のためにやっている。この3大学はサービス共有の非常に強い文化をもともと持っていて、共同サービスが以前からあった。イギリスで真に成功した共同リポジトリの例はこれ。今まで続いているし、今後も続く成功例だろう。
- ただ、一般的に大学図書館は予算削減・費用削減に迫られているところが多いので、共同/共有への関心は高まっている。将来的にはリポジトリもその一貫に含めることはありうる。
- 過去、イギリスでより多くの共同リポジトリがなかったのは、カスタマイズを求めがちなのと、現場で管理しておきたいということがあるので、それほど多くは共同リポジトリがなかったんだと思う。
- 尾城さん:「NIIの機関リポジトリ支援」
-
- JAIRO Cloudの推進について
- 未設置機関への支援・・・継続
- 学位規則改定・・・来年4月には改定されるので、未設置への普及は重要
- 対象機関の拡大・・・すでに持っているところからのシステム移行も検討する
- そんなに簡単な話ではない、それなりに大変。全く裏付けはないが、できれば来年度にどこかのリポジトリと協力して移行の実証実験をしてみたい
- JAIRO Cloudのユーザコミュニティを作る
- JAIRO Cloudの推進について
質疑
- Q. 信州共同リポジトリについて。ホスト機関としてご自分のシステムをお持ちで、さらに参加機関、他のシステムを使っているサポートはさらにどのようにやっている? 違うシステムでも、地域のホスト機関の方が顔が近いので頼られる? 質問やサポートは?
- Q. 当館も共同リポジトリを検討中。県内の大学等、ではなく、病院を対象とした共同リポジトリを検討中。共同リポジトリ構築機関すべてに聞きたいのだが、大学以外に仲間を増やすことは考えている? まずは尾崎さんに。
- A. 尾崎さん:広島県の話はしなかったが、広島県の共同リポジトリでは、県の図書館協議会あてのサービスなので、加盟していないところには提供していなかった。拡大するには、お金を取っていることもあるので今後もないかと思うが・・・。
- A. 大園さん:香川の事例報告をしたが、大学以外の機関もお話を持って行って、参加したいところがあれば積極的に参加いただきたいと考えている。もしそういった機関がJAIRO Cloudを知って相談があったとき、NIIではどういった対応をする予定? 拡大するという話は既存の機関を対象に、ということだったが、例えば大学以外の機関や病院では?
- A. 汐崎さん:今現在の規程でも、大学と、その他の所長が認めるもの、なので、制度上は大学以外も認められる。実際に大学以外の機関さんも数機関、JAIRO Cloudを利用してもらっている。特にご心配の必要はありません。
- 鈴木さん:時間に厳しい会場で、そろそろ時間。みんなの前では聞けないような質問はこのあとの夜の部、懇親会で情報交換を。
JAIRO Cloudの話が出始めた当初は地域共同リポジトリとの関係を懸念する声もありましたが、いやいやいや。
JAIRO Cloudの中で地域共同リポジトリが動くとか・・・そんな面白いことになっていたとは。
公開機関数も順調に増えていて、いやいや、日本のリポジトリについてはまだまだこれからの展開が楽しみですな!