突然ですが、当ブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」、一応「図書館系ブログ」なるくくりの中に含まれております。
はてなダイアリー部門別ランキングでは「図書館」にずっと居座っておりまして*1、書いているのも図書館系の大学院生ですしブログタイトルも「電子図書館」です。
しかしアクセスログからここがどんな検索語で見つけられているかを見てみると、だいぶ違う傾向がありまして、一番多い検索語は「PLoS ONE」です。
次は「PLoS ONE impact factor」。
ほかに「近年」とかわけのわからないのも含みつつ*2、上位は「PLoS ONE」関係の検索ワードで〆られています。
利用統計的に見たらもうPLoS ONE宣伝ブログと言ってもいいかも知れない。
必ずしも宣伝だけしているわけではないけれど。
この傾向は明らかに近年、というか昨年〜今年くらいから顕著になってきたもので、以前はもっと図書館っぽい検索語の方が多かった覚えがあります。
ここからもGold OAが・・・というかその現状第一の牽引車であるところのPLoS ONEへの注目度が高まっていることが印象付けられるというか、特に「PLoS ONE impact factor」で探す人はきっと「インパクトファクター高いなら投稿しようかな・・・」と思っているか「何、○○の論文がPLoS ONEに? インパクトファクターは・・・ち、けっこうあるじゃないか」みたいなことを探している人でしょうから(偏見)、投稿の意思があるか周囲に投稿者がいたのでしょう。
「plos one 掲載料」も検索語ランキング10位にいるので、金額によっては投稿を考えようか、みたいな人もここを見ることがあるのかも知れません。
1,350ドル、1,350ドルですよ(2012-12-04の場合。低所得国の著者だと無料〜500ドルに減額されることも)。
そんな風にすっかりオープンアクセスネタ主流になりつつある当ブログですが、元来の読者層である図書館の方にしてみれば、「えー、でもオープンアクセスとか言ってもなんか難しそう・・・」「カタカナとアルファベットばかりでよくわかんない」「英語文献が多くてちょっと」等など、あまり馴染みがなかったり、図書館とどう絡むのさ、と思われる方もいたかも知れません。
そんな皆さんに朗報!
今回のSPARC Japanセミナーは図書館の方向けにオープンアクセスの基礎から業務への影響まで論じる「オープンアクセスによって図書館業務はどう変わるのか〜図書館のためのオープンアクセス講座〜」です!!*3
世界規模でのオープンアクセスの推進と発展により,図書館の業務は大きく変化しなければならない状況におかれています。オープンアクセスに関するこれまでの流れを振り返り,また今後の方向性を考えながら,図書館が将来とりうる道を模索したいと思います。図書館の学術雑誌契約業務はどうなるのか,機関リポジトリ支援業務はどうなるのか,目録業務やILL業務にどのような影響を与えるのかなど,さまざまな角度から図書館とオープンアクセスの関わりを取り上げます。今回はオープンアクセスの基本から理解していただけるようなプログラム内容となっておりますので,ふるってご参加ください。
「オープンアクセスってなんか図書館にすごく関係ありそうだし気になる、でもいきなりSPARCセミナーに言っても専門用語が説明なしに飛び交ってわからない・・・」といった不安をお持ちの方にまさに最適(?)な今回。
会場も今回は図書館の方がいっぱいいらしていて大盛況で、さらに司会がid:kitoneさんこと国立国会図書館関西館の林豊さん(皆さん確実にお世話になっているだろう、カレントアウェアネス・ポータルの中の人のお一人ですよ!)といつもと趣向を変えての会でした。
2時間とたっぷり時間をとってのディスカッションも大盛り上がりでしたよ!
すでに当日のTweetのまとめと、司会の林さん自らのエントリもアップされていますが・・・
このあたりは後で id:min2-fly くんの記録を見直してしっかり復習したいです.
ともおっしゃっていただいているので、自分がとっていたメモについても例によってアップしたいと思います。
ただ、これも例のごとく、あくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモであり、至らない点多々あるかと思います。
お気づきの点等あれば、ぜひコメント等でご指摘いただければ幸いです。
あと、会の中で自分が質疑に参加している部分は、自分の記録は適当なのでぜひTogetter等をご参照下さい。
では、さっそく林さんご本人のスピーチから!
でもこれもご本人のブログにも上がっているので正確なのはそちらも見てくださいね!
開会/概要説明(林豊さん、国立国会図書館関西館)
- 自己紹介
- 国立国会図書館・関西館勤務
- 京大から出稿してカレントアウェアネス・ポータルを担当
- 「OAによって大学図書館がどう変わるか」という記事(E1341 - オープンアクセスの未来に大学図書館の役割として残るものは | カレントアウェアネス・ポータル)を書いたことをきっかけに声をかけられた
- 今日のテーマの説明
- オープンアクセス・・・「なんだか難しい?」
- 「エンバーゴ」「マンデート」などのカタカナ、海外動向の話・・・
- 資料がwebで見られてみんなハッピー、という話なら単純なのだが、残念ながらそうではないよう
- 図書館の仕事の基本は資料を収集して皆が使えるようにすること
- 京大時代にはILLを担当:
- 直接利用者に対応できるのは楽しかったが、面倒な仕事。OAでなくなればいいと思っていた
- しかし実際に仕事がなくなるとどうなるのか?
- 仕事がなくならなければいい、というものでもない。ジリ貧状態では毎日、楽しくない
- この先も前向きに仕事をするには受け身でいるのではなく、OAを自分のこととして受け入れないといけない
- OAが本当に利用者にとっていいものなら・・・
- 図書館員の仕事はどう変わる? 研究者はどう変わる?
- 何も変わらない、ということはない
- フロアの図書館員の皆様へ:
- 自分の経験してきた/今の仕事が、OAによってどう変わるかを思い浮かべながら聞いていただきたい
- そして心にうかんだ素朴な疑問を是非、質疑応答で
- あるいはブログやTwitterや職場で話してみて欲しい
「The Future of Open Access」(Martin Richardsonさん、元Managing Director, Oxford University Press)
- 自己紹介
- Oxford University Pressに20年、勤めていた。スライドに出した写真はOUPのビルの前。雨がふっている。Oxfordはいつも雨
- 冊子体⇒オンラインへの過渡期に、20年出版の仕事ができたことを嬉しく思っている
- 現在は?
- OUPを離れてスペインへ。全然違う生活。スライドの写真も晴れている
- ハンモックによりかかりつつ、wifi環境はあるので仕事もできる。今回のプレゼン準備もハンモックの上でやった
- 本日の概要
- OAの様々な種類について
- 過去10年のOAの発展
- OAのメリット/デメリットは討論のときにでも。時間も限られているので
- 本日のメイン・・・今後10年、OAの方が主流になるだろう中で出版社/図書館員の生活がどう変わるかを中心に話したい
- OAの話に入る前に・・・図書館における予算・経費の執行状況について
- 米国・ARLのデータに基づくと(討論の時に日本の図書館との相違についても話したい)・・・
- 雑誌購読料の値上がり率は、過去10年一貫して年率7-10%
- これが新たな価格モデル/ビッグディール等の導入の理由になった
- ビッグディールは2000-2007年にかけて成功している。購読できるタイトル数は増えている
- 2007年以降・・・図書館経費の伸びが価格上昇においつかない⇒解約が迫られる状況に
The OA Rainbow:いろいろな種類のOAについて
- Gold OA:出版後即、無料で論文にアクセス可能(min2-fly注:いわゆるOA雑誌)
- Green OA:セルフアーカイビング。著者・機関がリポジトリやサブジェクトリポジトリに論文をアーカイブ
- 例としてはPubMed Central (PMC)など
- 最初に提唱したのは1994のStevan Harnad
- 現在はほとんどの出版社がGreen OAも認めている。ただし出版直後からではなく、通常は12ヶ月程度の時間差を求めている
- GreenとGoldの境がわかりにくくなっている
- Gold・・・出版後即、Greenでもアーカイブできる
- Green & Gold OA(これはRichardsonさん定義の用語)
- 購読ベースの雑誌だが、著者が追加料金を払ってGold OAにするか、セルフ・アーカイブしてGreenにするか選べる
- Hybrid / Option / Partial OAなどとも。一部の論文はOAで、残りには購読の縛りがつく
- 過去10年間、従来型の出版社が優先的に選択してきたのはこのモデル
Growth of OA
- この10年、各OAモデルはどのように発展してきた?
- OA雑誌の数
- Directory of Open Access Journals (DOAJ) 中のOA雑誌の数・・・着実に増えている
- 先週チェックしたところだと8,000以上の雑誌、約93万の論文がOA雑誌で公開
- 成長が急速であるため、DB処理に反映しきれていないものもある。上記の数字はむしろ控えめなもの?
- Directory of Open Access Journals (DOAJ) 中のOA雑誌の数・・・着実に増えている
- Laakso and BjrokのBMC論文から*4:2000年以降のOA雑誌の伸びについて
- 時差公開(一定期間後無料公開)のOAの数
- HighWire Pressでの時差公開論文数・・・過去10年分を見ると、2005⇒2009で非常に伸びているが、以降は年間200万論文で横ばい
- データを提供してくれたHighWire PressのJohn Sackさんによると、出版社の方で購読状況のレポートに神経質になっているのが一因?
Gold at the end of the OA Rainbow?
- 今後数年でGold OAが飛躍的に伸びるのではないか、ということを示すデータを紹介していく
- Gold OAのtipping point・・・PLoS ONEの発刊?
- 発行当初から成功していた。掲載論文数は一貫して伸びている
- PLoS ONEをPLoSの他のジャーナルや他社の雑誌と差別化しているのは、いわゆる「メガジャーナル」化
- カバーする主題の範囲を広範囲に設定/かなり"軽い"査読方針。査読はあるが、基準は「方法論的に健全なら内容は面白くなくても通る」
- 一番、飛躍に貢献したのはAPCが当時としては安い1,350ドルだったこと?
- 2011には12,000を超える論文が掲載された。世界最大の雑誌。世界のSTM分野の出版の3%はPLoS ONEに載っている*5
- PLoS ONEの成功はPLoSの財務改善に貢献
- 2010年にははじめてPLoS全体で黒字化
- PLoS ONEの成功を見て、他社もこぞってOAメガジャーナルを発刊
Life under a Gold OA Rainbow
- いろいろな条件はつけたが、前提をおいた上で、今後10-15年の間にGold OAが支配的モデルになったら、我々の人生はどう変わる?
- Lewisの予測を裏支えするいくつかの変化の要因が存在する:
- 研究助成機関からのプレッシャー。研究成果物を出版直後から自由・無償で提供することを助成要件として強要する傾向が出ている
- 助成機関の圧力増大の結果として、著者/読者から購読ベースの雑誌への需要が減りつつある
- 並行して、Gold OA Journalに対する需要(著者/読者の)は伸びている
- これらの変化が研究者に与える影響とは?
- すでに研究者自身、助成機関、特にすぐにOAにせよという制度を強制している機関からの圧力を感じていると思う
- 今後はより多くの成果をGold OA Journal / monographで出版するようになる?
- 購読モデル・・・図書館が研究者の替りに雑誌を購入。そのことの価値を研究者自身は感じていなかった?
- 将来、APCを研究者が払う上で、助成=研究費を使うことが重要になる。その価値をより重く/深く感じるようになる?
- インパクトファクターのような質に関する尺度は今後も研究者が優れた論文を公開する場所としての要因にはなりつづけるだろうが・・・
- ダウンロードあたりのコスト、ということも考えるようになってくる?
- すでに研究者自身、助成機関、特にすぐにOAにせよという制度を強制している機関からの圧力を感じていると思う
- 出版社に与える影響とは?
- すでに多くの出版社があらゆる領域でメガジャーナルを出版する傾向
- 質の高い雑誌で拒絶された論文を、cascade(より査読の厳しい雑誌で落ちた論文を、一段落ちる雑誌に査読結果をそのまま引き継いで回すこと。A誌では却下しますがB誌で採録しますよ、など)するための専門誌発行も一部で行われている
- cascade journalは今後急激に数を増やす?
- 人社系ではモノグラフ主流だが・・・今後は雑誌と同じことがモノグラフでも起こる?
- 多くのモノグラフはすでにオンラインで出版/公開⇒そのOA化も自然な流れ
- 購読への魅力が減っている以上・・・出版社はこれ以上、購読料を上げることはできなくなる?
- 今後数年間で業界再編が起こり、一握り大手数社に整理・統合が進むのでは?
- 生き残る非常に力のある数社のOA大手が、今現在購読で見ている大手と同じところになるのかは、今はまだわからない
Conclusions & Further Reading
- 最後にまとめと忌憚ないご意見を。異論を聞きたい
- まとめ:
- 色々な証拠から・・・Gold OAが今後数年でかなり伸びるのは間違いないだろう。2020年には支配的なモデルになる?
- 移行期間中はビッグディール/パッケージ契約が意味を持つだろうが、今後は大半はOAになるに従い、ビッグディールの重要性は減じられるのでは
- だからと言って図書館員に仕事がなくなるわけではないだろう
- 購読⇒OAへの移行期間中には研究機関の替りに、OAの色々な交渉をまとめあげる役割を担うのではないか
- Green OAは移行期間中は重要性を持ち続けるが・・・Goldが支配的になると、機関リポジトリのローカル・コピー保存の必要性はなくなるのでは?
- 色々な証拠から・・・Gold OAが今後数年でかなり伸びるのは間違いないだろう。2020年には支配的なモデルになる?
- この1時間でかなりのデータを出したが・・・
- Laaksoら/Lewisの論文を読んでみて欲しい
- それからもうすぐRichardsonさんおOUPの同僚だったJackson氏も寄稿している本が出るよ
質疑
- Q. 医学図書館員。患者図書室にいるので、ユーザは患者/市民。一般市民にOAはどのようなインパクトを与える? 社会にどのような影響を与える?
- A. OAを推進する一つの要因は研究に関する情報をよりあまねく伝えること。すでにOAで発表された研究の方がより広く読まれていることを示す調査も多々ある。これが研究助成機関が研究成果のOA化を求めることの根拠にもなっている。従って、OAのメリットの一つが誰でも研究成果に触れられることにある、と考えている。
- Q. 図書館員。将来のGold OAの世界で機関リポジトリはどうやって自らをOA出版と区別すればいい?
- Q. 移行期間中は?
- A. 移行期間中はできるだけ包括的に、Gold OAの資料に対しても包括的にアクセスを提供し、Greenで利用できるもののセルフ・アーカイビングも必要と思う。ただ、移行期間中は重要でも、完全にGoldに移行したら役割はなくなると思う。ただ、今のはあまりに出版者よりかも
「日本の電子ジャーナルとオープンアクセスをめぐる現在と将来予測」(関川雅彦さん、筑波大学附属図書館)
- 会場の大学図書館の方は途方にくれているのでは?
- 出版社の方は関係ないと思っているかも知れないが・・・少し気を取り直して考えたい
- 我が国の電子ジャーナル導入の経緯の概観と、電子ジャーナルが図書館にどんな影響を与えたか、今後リポジトリやOA雑誌が図書館にどんな影響を与える/与えないか、現場の視点から考えたい
- 発表内容は一部、既発表のものもあるが、御容赦願いたい
- 30分で質疑まで終わるかわからないと思っていたが少しくらいオーバーしてもいいと言われたので、少し伸びるかも
学術情報のアクセス環境の推移
- 日本における印刷雑誌と電子ジャーナル導入状況・・・シリアルズ・クライシスが起こったが、電子ジャーナルでアクセス環境悪化は回避できた、ように見えるグラフ
- 国立大学に限定すると・・・電子ジャーナル導入で情報アクセス環境の格差は縮小している
- 印刷雑誌の時代は最大8-9倍、国立大学間で購入タイトル数に格差があった
- 電子ジャーナルを加えてみると、最大手と最小規模でも差は縮んだし、少ないところ間の格差はほぼなくなっている
- コンソーシアム契約が軌道に乗り始めてから格差がなくなり出している
- 大学間のアクセス格差をなくしていこう、というのが目標だったが、結果的にこれはかなり達成できていると個人的には思っている
資料購入費と大学総経費
- 過去20年、基本的には総額は減っていないように「見える」
- 大学の数が増えている。大学あたりの平均を見ると、資料購入費は減ってきている
- 大学総経費に占める割合は、右肩下がりに下がっている
- 資料購入費という基盤的な経費が、大学あたりの金額でも割合でも減ってきている
- 大学総経費は合計でも、大学あたりでも基本的には増えてきている(2010年には少し落ちている。ターニングポイント?)
- 大学執行部は「図書館の資料購入費よりも他のものに使うべきと考えている」ように見える
- 総経費の中でも一つの大きな部分は運営費交付金
- 競争的資金の一例:科研費の過去20年の状況
- 1,500億円くらい総額で増えている
- 基盤経費は減っているが、個々の研究者に配分されるお金は増えている。基盤部分⇒外部資金に回っている、とも見える
- 資料購入費は基盤的経費から出ていて、APCのようなものは競争的資金・研究資金から出ている。これは頭にとどめて欲しい
契約面からみた電子ジャーナル
- パッケージ契約(ビッグディール)の構造の説明
- 紙の時代は一物一価だったが、同じタイトル数が使えても支払う金額がビッグディールでは違う
- 契約時点で支払っていた金額がベースになる。小さいところだと小額、いっぱい買っていたところは多額に
- これが格差縮小につながっている?
- 筑波大の購読/非購読誌のダウンロード比率・・・全体の半分は紙の時代に買っていなかった雑誌からダウンロードしている
- Springerは7割が非購読。OUPも購読<非購読。パッケージ契約は現在まではコストパフォーマンスが高い契約モデルだった
- 電子ジャーナル化に伴う図書館の役割
- 冊子の時代・・・先生方が欲しいタイトルと資金を図書館へ⇒図書館がとりまとめ⇒発注・支払い⇒現物が来る⇒図書館・研究室へ
- 電子ジャーナルの時代・・・共通経費化が進んでいるが、買うための資料費を集めて、直接版元と交渉、IPアドレス管理等をしてアクセス環境を整える
- 実は流れはあまり変わっていないとも言える? お金を集める⇒払う、という長い時間あった仕組みが、紙⇒電子になっても見た目かわっていない
- 学内調整を図書館が買って出て、共通経費の確保をしたり、初な図書館員が手練手管を持った出版社とやりあうようになったとか変化はあるが、流れは不変
- 電子ジャーナル化進展のカギ
- 電子ジャーナルの特性
- ビッグディールを採用した契約
- 今までの大学内の業務の流れにそのまま乗せられたこと
オープンアクセスと図書館
- 冊子/電子ジャーナルと同様にリポジトリと冊子を比べると?
- オープンアクセスジャーナルと図書館
- (購読型)電子ジャーナルの時代は図書館が支払いに関与
- オープンアクセスジャーナルの場合・・・図書館を中抜しても成り立つモデル
- APCの扱いを大学の制度として、システムとしてきちっと図書館が扱えている例は、日本はもちろん英国でもあまりないらしい(1つはある?)
- ここを図書館がやるのか? やる覚悟はあるのか? した方がいいのか? それによって図書館の今後の仕事がずいぶん変わる
- APCの扱いを大学の制度として、システムとしてきちっと図書館が扱えている例は、日本はもちろん英国でもあまりないらしい(1つはある?)
学術情報を介した学内のハブへ
- 今まで図書館は学生・研究者にコンテンツやサービスを提供する、その部分だけをターゲットにしていれば済んでいた
- 機関リポジトリに手を出したがゆえに・・・
- こういったステークホルダーと関係していかないと「図書館はいらないよ」となるのでは、と最近感じている
質疑
- Q. NPGの方:業績評価/研究者総覧と図書館の関わり、とあったが、一方でResearch Administrationの部門も大学で作るながれ。筑波の例でもいいが、RAにビブリオメトリクスが入っていくのがいい? 図書館がやるのがいい?
- A. RAは図書館の流れと別に筑波ではやっている。業績評価も、元となるデータ収集・整理等の基盤の部分を図書館で、ということになっている。筑波の人も会場にいるので言いたくないが・・・(ここ一応、オフレコ)・・・図書館とRAについて、大学はトータルで考えていて、切り分けてはいない。図書館はノウハウがあるのでデータの部分を任された、という形。
- Q. 高エネ・KEKの方:研究者の立場から。Gold OAになると図書館はもういらないのでは、という話があった。私はSCOAP3でOAにも関わっているが、ぜひとも図書館にはAPCをとりまとめる機能を持って欲しい。おそらく大手の数少ない出版社が牛耳るようになるとRichardsonさんの話にもあった。例えばAPCの交渉を、値引き交渉等を、これまで購読料の交渉をされていたかわりにやる窓口になってくれることを図書館には期待している。ぜひ、いらないなんて言わないで積極的に絡んで欲しい。
- A. 「いらない」と言ったのは筑波の研究者の方。先生方から「やってよ」と言っていただけると、研究者からのご要望があればより図書館はやりやすい。ただ、嫌がる先生もいる。研究費に図書館が手を突っ込むことを嫌がる、という方も。
- Q. 現在はOAが多数ではないので研究者も気づいていない。OAになると、読者としての格差は完全になくなるが、投稿者にすれば研究費がなくて投稿できない、良い雑誌に出すにはAPCが高くて・・・という、そこでの貧富の格差が生じる。それがあってはいけない。そこを是非、大学/図書館が格差を縮める方向に動いて欲しい。今の段階では個別支払いなので気づいていないが、主流になったらきっと変わる。
- A. 先生のおっしゃるとおりとも思うが、あえてぼかしたのは、電子ジャーナルと違ってOA雑誌になると・・・電子は紙の仕組みにのればよかったのが、APCはこれから仕組みを作らないといけない。それは非常にエネルギーがかかることだ、というのをよくみなさん覚悟して、でも職を失わないためがんばろう、持たないと図書館員いらないと言われるよ、と。プレゼンでは謙虚なのでぼかしましたが(笑)
休憩タイム
パネルディスカッション
- モデレータ:
- 市古みどりさん(慶應義塾大学日吉メディアセンター)
「雑誌契約業務:OAは「雑誌契約業務」をどう変えるか?」守屋文葉さん
- JUSTCIE=大学図書館コンソーシアム連合
- ただ、JUSTICEの立場、というよりは雑誌契約担当者の立場から
- OAは「雑誌契約業務」をどう変える?
- これまで8年、外国雑誌の契約業務をやっていた。紙⇒電子への切り替わりの時期に仕事
- 紙⇒電子への移行時に契約業務はすでに中身と質が大きく変わっている?(関川さんの話とはずれるけど・・・)
- お金と業務の流れは一緒でも、サイトライセンス契約に伴う学内調整や、出版社との交渉といった、図書館でやってこなかったことに手を染めだしたのはこの流れの中でのこと
- ここは大きな変化ではないか?
- 電子⇒OA移行は紙⇒電子移行ほどのインパクトはないのでは、と個人的に考えている
- その上で、OAはどのような影響を与える?
- OAが、というよりは、図書館がどう関わるか、に結局はなる。今後取りうる道は?
- 1. Gold OAに関わらない
- 業務量はゆるやかに減少していく。それに連れて予算(資料費)も減る。人も減るかも
- これまで培ってきた学術情報流通への経験値が薄れていってしまう?
- 2. Gold OAに関わる
- 購読モデルがなくなることはない、と個人的には考えている
- その仕事は残った上で、プラスしてAPCに関わる仕事もやると、業務量は増える
- でもそれに乗り出してきちんと仕組みを作っていけるかどうか。図書館はぜひ積極的に関わっていったらいい
「機関リポジトリ業務」鈴木雅子さん
- Gold OA優勢になった時に
- では従来の機関リポジトリのしごとは減る? 図書館のILL等の仕事は減るか?・・・「本当に減るの?」
- NatureやCELLはなくなるの? 購読料は貰っておいてさらにAPCも、って出版社は思ってるんじゃないの?
- それはそれとして、図書館の仕事がGold OAで減ったらどうする?
- IR cures ILL プロジェクト
- IRとILL/DDは、所蔵館か著者所属機関かの差があるが、やっていることは一緒(資料を遠隔利用者に)。一緒になれないか?
- その中で複数大学のILL担当者とネットワークを作った
- 研究室訪問
- 他にも・・・グッズ作成/国際会議/大学を超えた横のつながり/ボトムアップで(図書館員から)上層部にやりたい、と業務をはたらきかけるということ自体も
- 今後は?
- 大学の構成員に対して自分がどんなことをできるのか考えるのが図書館の仕事に?
「OA誌が増えたら? 変わることと変わらないこと」小野亘さん
- 小野さんの立ち位置:
- Gold OAが増えても変わらないこと・・・OA誌の限界を補完するため
- 「完全に」とか言っても、購読型の雑誌は何かしら残るだろう
- エンバーゴがあれば「読みたい」という要望もあるだろう
- 過去分のOA化も・・・そういう意味ではこのあたりの対応は残る
- どれくらい残るかの議論はあるが、何がしかは残る
- 「完全に」とか言っても、購読型の雑誌は何かしら残るだろう
- Gold OAで変わること・・・図書館予算の「リダイレクト」
- 研究大学の支出は(きっと)増える
- OA誌=契約がない
- 契約というトリガーがないので、大学で何が見られているか、図書館がよくわからなくなる
- 世の中にどういう雑誌があって何号が読めるかよくわからない、そのときに図書館はなにができる?
- 目録はとらない?
- 買っているものがないので目録をとるトリガーがない
- しかし何かしらの目録はいる・・・ナレッジベースとディスカバリが進展する?
- その整備は個々の図書館が従来のように地道にやるのではうまくいかない。中央集約的な作業がいる
- しかし人任せでも進まない。大学図書館間の連携が従来以上に重要に?
- NIIのERDBには期待している
- ILLはなくなる?
- 全てがOAになれば、だが、ILLはなくなる・・・完全になくならないにしても、激減して最後の手段になる?
- 激減の結果、互恵主義によるILLではなくdocument supply center化するかも?
- 過渡期中はOAでも探せないのでILLが来てしまうこともあると思う。そういう状況はもうしばらく続く?
- OA誌が経営破綻したら?
- そのタイトルは購読モデルに戻るのか?
- 過去OA分はどうするのか・・・何かしらの保存措置は要る
- バックアップ/保存に図書館界も取り組む必要。CLOCKSSなどに期待?
ディスカッション
- 市古さん:
私も国立大の人が多いところに来るのは珍しい。最後の方では私立大学にいることで話せることがあれば、お話するかも。
私自身は慶應・日吉にいる。日吉というのは、慶應の6つあるキャンパスの中で、ほとんど学部学生向けサービスをするところ。
私のキャリアとしてはSTMが長いので、どちらかと言えばそちらに強い図書館員。信濃町にあった図書館にいたときに、紙⇒電子化にかなり危機感を覚えたものの、生き残る可能性を最近感じつつある。できるかぎり楽しく明るく元気に人のためになる仕事をしたい。
まず、皆さんそれぞれのパネリストに質問がある方がいるのではと思う。その後、ディスカッションの最中に質問を受けていきたい。
フロア質疑
- Q. エルゼビアの方:出版社の立場からOAになるといくつかのキー・プレイヤーにまとまるという話があったが、その根拠があればお聞かせいただきたい。
-
- A. Richardsonさん:新しい産業なので、急速に展開する、その過程でスタートアップ、新規参入者もどんどん参入してくると当然考えられる。OAはまさにそういう時期で急成長していて、参入者も多いが、一定の時期になったら整理・統合の方向に行って、数社が残ると思う。もちろん、どのような新しい「破壊的な」技術でもこれは典型的な反応だが、既存の大手業者は生存のために闘う。しかし多くの場合は生き延びられない。
- Q. NII・安達先生:2020年にGold OAが主体になるという話だが、今日の話は極めて包括的だったが、雑誌出版は分野ごとにずいぶん性格が違う。化学はOAにきわめて具合が悪いとも聞くが、そういうときに、徐々に変わっていくのか、雪崩効果というか、あるときばたっと変わってしまうのか。その点についてRichardsonさん、それから関川さんも、どういう感触?
-
- A. 関川さん:個別の経験からの感じでいうと、こういう会議や他のミーティングでは急速にOAが進むような景気のいい話が多いが、「本当かいな」という印象。少なくとも筑波大学ではとてもOA化が進んで、10年ですいぶん進展するようには、全体としては見えない。SAGEのレポートでも、10年後には一番多い人でも5割がOAという意見で、本当にそんなに進むのか、と。希望的な観測もあるかも知れないが、現場としてはそういう印象。
-
- Richardsonさん:もう一点。先ほど申し上げなかったことだが、現在の状況ではすべての研究文献の12%がOA、という状況。この5年間の延長のまま、まっすぐ伸びるとすると5年で20-25%、ということになる。
- Q. 高エネ研の方:高エネルギー物理という限られた分野では、研究所が成果をOAにすること、という制約をつけている。最近はイギリスでも自分の資金を使ったらGold OAにせよ、という動きがある。分野単位でそういう動きがあると意外に早く動きそうなのだが、他分野のことはわからない。どなたか全体像をご存知でしたら教えていただきたい。
- 市古さん:どなたかお答え・・・あるいは日本の動きをご存知の方がいたらそれを教えていただきたいのですが・・・
- Q. NII・安達先生:
文部科学省の作業部会でオープンアクセスについて議論している。学会出版がOAにするときには科研費で出版助成をすることを具体的なポリシーとして定めている。その延長として、科研費の成果を機関リポジトリにいれるようなmandateを作るかについては継続検討中。それが日本の状況。
ご質問の点については、Finch Report*10が出て、大学・機関が投稿できる雑誌を定めることは学問の自由に対する越権行為である、ということが議論になるのでは、ということがある。コミュニティを越えて議論するにはそこが問題になる。APCを大学でサポートするときにもそれが問題になる。いい雑誌/そうじゃない雑誌を機関として定めるわけだが、そこが気になる。
一方、日本のOAについてはmandate等、機関のポリシーとして定めず、草の根の地道な努力でやってきた。諸外国の動きと随分違う。そういう形を続けるのか。草の根というのはお上が決めてくれた方が嬉しいということの裏返しなのか、そのへんもよくわからない。文科省に従順にいくのか、大学ごとに方針を定めるのか、それに図書館はどうコミットするのか。
- Richardsonさん:2つだけ。
Finch Reportについて。OA化の勢いが加速すると思う。同じような動きが日本にあることは嬉しい。
理論物理学についてのコメントについて、理論物理学はこれまでしっかりしたリポジトリ(arXiv)を持ってきたところで、OA化の中で雑誌が生き残るかどうかについて、雑誌がリポジトリ化したというような逆の例。今後、post publication reviewとなると品質の高いリポジトリがいるわけで、そこでは理論物理学が他を引っ張っていくのではないか。
- 関川さん:
直接的な答えではないが。OAへの疑問は日本の大学図書館だからかな、という気はしている。研究者コミュニティで国の境がない形で研究が進んでいる分野と、日本語で研究して日本語で発表する分野がある。それをトータルで見ると進んで見えないわけだが、これは日本の大学図書館に特有なのかも。本当は進んでいて日本あるいは私が取り残されているのかも知れないが、ただ、現場ではそこまで進んでいる印象はない。
Gold OAは本当に進んでいるのか?
- 市古さん:
いったん整理したい。OAがどんな分野/スピード、という話になっていると思うが。OAについて、Goldの道が進んでいることの確認しがしたいと思っていた。そうしたところ、Richardsonさんと関川さんからお話いただいた。その他の方の印象は? OAが進んでいる実感はある?
- 守屋さん:
雑誌契約担当としては、今まで購読モデルだった雑誌がGold OAに移る例が出ている。Hybrid ではなく完全オープン。じわじわ、オープンアクセスは浸透しているのではないか。
- 鈴木さん:
ちょうどAPCの支払いや抜き刷りの支払いを、会計と図書館に持ってくる先生がばらばらなので、一元化して図書館でやろうという改善を提案している。いったい、どれくらい支払いがあるのか、去年のファイルを繰って調べている。もっとあるかと思ったが、あまりないという印象。それでも、一昨年より去年は増えている。先生方に聞いてみると、投稿している先生はそんなにいない。OAだから投稿するという意見は確か、研究室訪問のインタビューで鹿児島大学の先生がおっしゃっていたのを「こういうかたもいるのか」と思ったくらい。むしろ、投稿しなさい、という義務付けの方がびっくりして、先程のKEKのお話はもっと聞きたい。
- 小野さん:
一橋的には投稿料を払うのではなく原稿料を貰うものである、という印象。だから遠い印象だが、いわゆる大学紀要が機関リポジトリで電子化された状況で、それをOAといっていいかは別として、そこのところで進んだ印象。
話は変わるが、先ほどOAが5割、という話があったが、5割OAになったらだいぶ図書館業務は変わるのでは?
- 市古さん:
私自身は、Finch Reportや影響力のある雑誌が出てくればかなりのトリガーになりそうな気はしているが、実際、Richardsonさんの感覚として、Goldに舵が切られるまでに何年かかると思っていらっしゃる?
- Richardsonさん:
私の短い答えは、「もうその舵が切られるTipping pointは来たんだぞ」というのを説得するのが私のプレゼン(笑)
もう少しバランスのとれた答えとしては、それが本当にきたかわかるにはもう数年かかると思う。
Gold OAは図書館に影響するのか? しないのか?
- 市古さん:
すでにTipping point、ということで話を次に。関川さんのお話で、図書館がなくてもいい時代にきているのかも、というスライドがあったが、守屋さんの方では、OAは実はあまりインパクトがないとある。その違いをクリアに。守屋さんの「あまりインパクトがない」というのは、どういうこと?
- 守屋さん:
図書館職員は色々なところにすでに足を踏み込んでいる。電子になった時点で過去とはもう大きく変わっている。雑誌契約がAPC支払いになってもそれほどの大きな違いではない、あまり重く考えなくていいと思っている。
- 関川さん:
守屋さんと一緒に仕事をしていた者として、この違いは立場の違いと思う。現場の日々の作業をしている方からは紙⇒電子は業務の質の違いなど、本当に大きく変わったんだと思う。でも違う立場から俯瞰してみると、ある流れに載っている、という点で紙⇒電子は変わっていない。既存のシステムを使ってやれたと思うのだが、APCの場合は日本の大学に既存のシステムがない、一から作るしんどさがあると思う。作業量ではなく、「一から作る」ことの大変さ。それに踏み込まないと、図書館は縮小再生産していく、という評価を大学の中でされるのではないか。
- Richardsonさん:
お二方の意見の相違を埋めるつもりではないが、出版社の観点から一言いいたい。
他の出版社の方は違う意見かも知れないが、私は紙⇒オンラインのシフトは大革命だったと思っているし、ビッグディールやOAというのは、その非常に大きなシフトの一部、と捉えられるのかも知れない。実際上、APCのメンバー支払いを出版社が導入しようとしたことがあるが、これはうまくいかなかった。大学側がなんらかの形で購読/APCをより良くコーディネートすることが重要になると思う。それによってのみ、より効率が上がる。誰がやるかは別として、コーディネーションさえ改善・強化できれば、機関にも出版社にもよく働くのではないか。APCの支払いをより効率良くできると思う。
- 関川さん:
しつこいようだが。学術情報流通の媒体としての電子化のインパクトの大きさはわかる。私が言いたいのは、広い意味での変革ではなくて、日々業務する図書館の立場からすると、紙⇒電子については、少なくとも、色々あるけれども、中抜されなくても済むという意味でOAよりはインパクトが小さいんじゃないか、と言いたい。学術情報流通そのものの意味としては紙⇒電子が、電子⇒OAよりもはるかに大きかった、電子化されたからこそOAが可能なわけで、そこはくどいようだが確認したい。
OAの時代におけるJUSTICEの存在とは?
- 市古さん:
APCの話が出たのでそっちの方に話を持って行きたいが。関川さんと守屋さんがいるので。OAの道において、JUSTICEの存在についでどうお考えか? その後、APCの話に行きたい。
- 関川さん:
一番困る質問。Gold OAやその範疇のお話がJUSTICEにないわけではない、今も。今のところは、直接的には取り扱っていない。まだ及び腰。どうしたらいいのかわからない部分がある。なぜかと言えば、図書館が、電子ジャーナルの場合は参加館が購入に関わっている大前提があった。はっきりしたミッションがあったが、APC、Gold OAにおける図書館の関与の仕方に共通認識があるかないかもわからないときに、JUSTICEがどれだけ踏み込むのがいいか、立ち位置が掴みきれていない。関与している人間の一人としての見解。守屋さんは?
- 守屋さん:
委員長が答えにくいんだから事務局も答えにくい(笑)。基本、大学図書館のコンソーシアムなので、図書館の皆様にどういうニーズがあってどうして欲しいと思っているかが機動力になる。そういう声があがってこない限り、コンソーシアムとして出版社と交渉する材料がない状態。人任せな発言かも知れないが、図書館の方からそういうニーズがもっと出てくれば出版社と交渉するし、図書館がこういう仕事を担わないとなれば出版社は大学協会の方と話をするかも。図書館として話をするのかが定まらないとコンソーシアムは動けない。
- 市古さん:
私もJUSTICEメンバーなので、大変無責任な質問でごめんなさい(笑)
APCについて
- 市古さん:
APCの仕組みづくりのイメージが皆さん無いと思う。関川さんがおっしゃる難しさ、とは?
- 関川さん:
紙⇒電子のときは100年にわたる、個々の研究者ではなく図書館という組織で集約して発注・支払う業務が確立していた。APCの場合、どういう形でお金を集めるのかもそうだが、そもそも学内で研究者の成果を発信する部分を図書館がやるというと、研究推進部にあたるところが「余計なことを」というかも知れない。じゃあ、研究推進部にそういうノウハウがあるかといえば、ない。結果的にできるのは図書館だろうと思うのだが・・・機関リポジトリのときも、私見だが、図書館がやる必然性はない。けれども、既存の大学の中でそれができるノウハウがあって効率的なのは図書館だし、そういうことをしないと図書館が干上がる、ということで機関リポジトリに関与すべきと思った。APCも似たようなところがある。
どうやってやるかのイメージはないが・・・SCOAP3のように購読費を単純にリダイレクトする形で成立してくれれば楽。でも、必ずしもそうでは・・・ある出版社ではメンバーシップ料金を払うと、先生方が普段一般的に払うAPCが2割安になります、という提案もあるが、図書館がメンバーシップ料金を払うまではいいが、その先のお金をどう確保するか、その金額は基盤だけじゃおさらまないので競争資金がいるがそこまで関与するのか。それともメンバーシップ分だけ図書館で残りは先生、とするのか。色々ありえて、どうするのか把握しきれていない。
- 鈴木さん:
私のところは、図書館でどういう風に予算のフローを、ということではなく、今は支払業務が2つに分かれているので一元化しよう、という話。先生方の科研の支払いを図書館から、という。どのくらい分量があってどこに投稿してていくら払っているのかは調査が必要。
- 市古さん:
皆さんの大学の中でもAPCについて経験があるところがあるのでは? 経験がある方はいない?
- 原子力機構の方:
うちでは全組織の論文投稿料の財布を図書館が握っていて、そこから払っている。
- 関川さん:
筑波ではなく前の大学で。さるイギリスの大学出版局、OUPが提案してきたのだが(笑)、メンバーシップ料金を払うと、投稿料が割引になるという。関連する研究室の投稿件数で割ってみると、メンバーシップ料金を払う方が安くなるということがあって、部局に話しを持って行き、先生方に話しを持って行って合意した、という例もある。
ところが、困っているのは、例えば筑波大学がある分野の雑誌を投稿している量と、購読している量の、均衡がとれていないことがある。購読はしているが投稿は少ない雑誌について、投稿料が安くなるからメンバーシップ料金を・・・とすると、payしない。購読とAPCの違いというか。アンバランスがあって、厄介。
- Richardsonさん:
今、関川さんのお話にあった例、APCのディスカウントというのは、私のアイディアではじめたものなので(笑)コメントしたい。
たぶん、先ほどの大学は比較的きちんと管理・運営されていたのでこの制度を活用できた。でもほとんどの大学はそうなっていない。実際にAPCをどれくらい払っているか、使っているか把握していなくて、メンバーシップ料金をAPC料金と別に出すところが多かったので、結局このモデルは失敗に終わってしまった。
私の提案モデルは複雑過ぎた。APCを非常に大量に払うときにはうまくいくかもしれないモデル。あるいは他の費目から割引分を払えばうまくいくかもしれない。
機関リポジトリについて・・・OAでどう変わる?
- 市古さん:
機関リポジトリは将来的に、Richardsonさんのお話だと厳しいような表現もあったが、機関リポジトリというものは、(Gold)OAによってどう変化するか? それをどう捉えるか?
- 鈴木さん:
Richardsonさんのお話で機関リポジトリの数は増えているけど登録率は減っている、というのは、機関リポジトリ担当者のモチベーションが下がっているとかいうこともあるかも知れないが、その後にも話があったように、OAの論文が増えているから載せてない可能性もあるし、減っているというだけで機関リポジトリに意味が無い、というのは違うと思う。
本当に全面的にGoldになるなら、機関リポジトリの意味は無い・・・まあ、やらなくてもいいとなる。ただ、本当にそうなのか。ここにいる機関リポジトリ担当者は皆そこを疑問に思っていると思う。どうでしょう?
- Richardsonさん:
私も機関リポジトリの将来はないと言おうとしたわけではなく、Gold OA主流になるなら違った役割になる、と言おうとしたつもり。ただ、これから数年間はなんらかの移行期になる。色々なモデルが共存する形になる、というのは同意いただけるかと思う。
提案として、機関リポジトリ、OA雑誌、購読雑誌、色々なモデルの効率性を測るような尺度を開発してみてはどうか。そうすれば、よく比較ができるはず。例えばダウンロード1件あたりのコストがビッグディールの評価に使われている。同じ尺度を機関リポジトリでの場合や、オープンアクセス雑誌のAPCでは、というのも見られるのではないか。このような尺度が移行期には大切と思う。何が変わり、何が変わらないかの判断に役立つのではないか。
APCを払えないと発表できない???
- 鈴木さん:
メトリクスについてはダウンロード数をお知らせするくらいしか図書館ではやっていないが・・・
ちょっと別の質問を。思いつきなので今いうのも、とも思うが、機関リポジトリをやっていたのは、図書館で雑誌が買えなくなって、先生方が書いた論文を読めない大学が増えて、それはその先生にとって読まれる機会が減っているので、手助けしたい、というところから始めた。
先ほどフロアから、このままGold OAに移行して、投稿料が高くなって出せなくなって・・・というときには、そういう方面で研究者の支援を考えないといけなくなる。出版社としては、投稿料が上がって貧乏な大学からの投稿はいらん、とは考えないですよね?
- OUP・的場さん:
そういったことは絶対にない。支払う金額によって著者の仕事が発表されるか否かということにはならない。出したい雑誌に出したらああいう金額に、ということになるのではないか。
- 安達さん:
今のロジックに諸悪の根源がある。研究者は自分の論文がNatureに載るならいくら払ってもいいと思っている。ミクロに自由主義的に考えると、研究費を持っていて、いくら金がかかっても論文を出したいという研究者にどう仕事をさせるかが重要。Goldが進んで間抜けなことは、2,000億円の科研費の半分がAPCになったりしたらこんなバカなことはない。今、図書館が払う購読料の総額は200億円代。それが2,000億円になったらこんなバカなことはない。今、大手出版社が儲けている部分が、Goldになって安くなるかというのは、OAの是非と別に考えないといけない。税金が合理的に研究費として使われて、研究成果が他の活動に役立つ正しい循環を作らないといけない。APCが高くなった時点でOAはダメ。鈴木さんのやっているAPCを数えるところは正しい。「我が大学からこんな金額がAPCに」という事実を明らかにしないとダメ。
そういうことがわかっているのは図書館だけ。大学の中で図書館がこれをやるしかない。研究担当部局がそういうことをわかっていてやるかといえばそんなことはない、とにかく自分の大学の成果をあげたい、となる。図書館は研究費とってくる先生だけでなく、お金のない人も発表できる環境を整えることを考えている。大学の中では図書館しか考えていない。少なくとも研究者は考えていない。それを改善する、というのがOAの正しい道。
リポジトリについては、とにかく出版社がボロ儲けしている、と。証券会社等が投資する価値があるか否か調べていて、それを見れば出版社がいかに儲けているかはわかる。それをちゃんと把握して、まともにお金を使う、というのがOA。そのことは覚えておいて欲しい。研究者だけではできない。それは電子ジャーナル購読のときにすでにわかっている。図書館がやらないと、日本の研究界はますます間抜けな状況になってしまう。
- 市古さん:
おしりを叩かれた感じだが・・・APCはどうやって計算している?
- Richardsonさん:
やっきになってやっている、できれば大手の出版社にお答えいただきたい。
特に会場からはっきりした回答はなし
- Richardsonさん:
では元出版社の人間として、理論上の計算方法を。
APCの計算方法は、購読料の計算方法と理論的には似ている。原価+色々な要素で上乗せ、というよりも、市場価格との関連性、つながりの方が高い。
現在、すべての出版社をあわせたAPCの平均は900ドル。ただ、このrateは全ての出版コストを賄うには不十分。なので、今後は上がるだろう、と申し上げた。
今のお答えはOUPではなくあくまで個人的な見解。ご含みおきを。
- 市古さん:
間抜けなことをしないようにできるのは図書館員だけ、と安達先生からお話あったが、その方向でお仕事していきたいし、していきます。
ビッグディールは「いつ」終わるのか
- 市古さん:
話を戻して。ビッグディールがそのうちキャンセルが出るという話があったが、「そのうち」とはどのくらいのイメージ?
- Richardsonさん:
発言の主旨は、主流的な雑誌出版の方法がOA化する、というコンテキストによる。OAが主流になれば、その時点で購読ベースの雑誌の需要が下がる。
そこで、提案したいのは、その差額分の穴埋めに、図書館はAPCのビッグディール的なものを、ということ。APCのビッグディールというのは、ある出版社の日本の研究者分を全部とりまとめて払う、とか。移行期の段階ではビッグディールといっても一部購読ベースとAPCが混在するのではないか。そういうものが始められればいい。これによっていわゆるダブル・ディッピング、ある資料についての二重請求の悪しき慣行を防げるのではないかと思う。
- 市古さん:
個人的には移行中は資料費が減っているのにAPC、ビッグディール・・・となって、余計にお金がかかる不安がある。皆さんの中には移行の際、図書館はうまく乗りきれるか、不安はない? 費用面で。
- 小野さん:
今の質問にかなっているかはわかりませんが。ビッグディールをやってわかったのは、やっぱり読まない雑誌を買っていた、ということ。読まない雑誌にお金を払っている。大学によって程度の差はあるでしょうが、必要なものを買いましょう、となったとする。
OAになったとき、個々のAPCなら投稿したものに払うわけだが、ビッグディール的なAPCでは書かないものにも払うことになる。そのあたりのお考えは?
- Richardsonさん:
私の提案はAPCのビッグディールということだったが、機関あるいはコンソーシアムが全ての研究者に代わってある出版社での出版の権利を買う、という提案。その出版社からは全ての研究者が出せるようになる、という。
また、移行期に余分なコストが・・・という点については、Finch Reportに分析がある。余分なコストを定量化してみた話がある。日本の図書館関係者でも定量化をやってみて、追加コストがどのくらいあり、インパクトはどのくらいあるか、移行期についてやってみてはどうか。同じような経験は冊子⇒オンラインのときにも起こっていたはず。一時コストが二重にかかった、追加の経費が図書館も出版社も必要になったが、現在は冊子の購読が減っているので、システム全体の効率は上がった。移行期にはこのような追加コストがかかることは避け得ないのではないか。
まとめ
- 市古さん:
何かまとまったものが出たわけではないが・・・変化していくことは間違いない、図書館員が考えないといけない時代なのは間違いない。
関川さんの最後のスライドにもあったが、図書館員の仕事は従来から変わったところに切り込んで行かなければいけないと思っている。
将来は予測できないと言われているし予測して悲観するより作る覚悟で図書館員は進みたいと思っている。意味のあることをやって貢献して行き続けたい。色々考えなければいけないが、学術情報流通が変化していく際には、当事者である研究者に、当事者であることを話し続けて、他部署との関係も作り続けて、研究者を教育・・・というと烏滸がましいですが、ある程度そういうことをしていかなければいけないのかと思う。
しばらくは試行錯誤が続くと思うが、究極的に作り上げたいのは持続可能な、潰れない学術情報流通の世界と思う。それに向けて図書館員ができることを今後も考えていければ。
閉会挨拶(安達淳先生、国立情報学研究所)
- 今回は図書館の方々に来て欲しく企画した。今後もこういう形のイベントというか、セミナーを企画していきたい
- パネリストの皆さんありがとうございました
- ちょっとだけ話しを。僕自身はOAはgame changeと思っている
- ここでうまくやらないと大変なことになる、という認識を持って行っていきたい
- 今日のセミナー中、NIIからSCOAP3参加調整のメールを大学に出した
- 今日の議論すべてに関係する演習問題と思って欲しい。SCOAP3によって出版社との契約がいくら安くなるか、把握するには参加に○を
- 全世界の高エネルギー物理に関係する機関は似たことをやっている。ぜひお願いを
パネルディスカッション中の小見出しはmin2-flyが勝手につけたものですのであしからず。
Richardsonさんから「Gold OAもまた一握りの出版社が担うようになるだろう」「今のAPCの相場ではカバーできないので値上がりするだろう」という見解が出たのは個人的に面白かったです。
他方ではPeerJのような価格破壊モデル*11も出たり、以前のSPARC Japanセミナーに出てきたeLife*12みたいに「当面APC無料!」なんてのも(もっともこれはビジネス・・・?)ありえたり、OAメガジャーナルが乱立すると一時的に価格も競走対象になり得るのでは(まだprestigeがPLoS ONEとせいぜいScientific Reports以外ないので)、とか、値下がりの可能性を示唆する要因もあって、このへんどうなるのかは見ものかと。
自分自身はGold OAが破壊的イノベーションであるかは懐疑的なのですが(Lewisの論文は「S字曲線を描いて成長する、なぜなら破壊的イノベーションだから」とはいってもどうして破壊的イノベーションと言えるのかの論証は不十分・・・というのは解説記事を参照)、仮に破壊的イノベーションであってゆえに急成長を遂げるんだとすると、まあ十中八九既存のプレイヤーはそれに乗れない。
既存の枠を壊す連中が台頭する・・・って考えれば、そもそも「今かかっているコスト」を同じようにかけるのかどうかもまたわからないわけで。
実際すでにPLoS ONEが雑誌といえるのかは首ひねる感じですし、PeeJみたいなのが流行ったり、Mendeleyのような無料モデルから初めてプラスαを求める人は課金でね、という文化が浸透してくると、また違った未来もあり得るやも知れないのでは、とも思ったり。
情勢は流動的なので、どっちに転ぶか、どっちにも転ばないのか、さしあたって2020年までの8年間は注視したいところ・・・と他人ごとのように言うよりは、自分が実現したい未来を実現するために介入するのがより確実でしょうか。
とりあえず、安達先生もおっしゃっていましたがAPCが高騰してるのに研究者はほいほい払って(や、そりゃ僕だってNatureかScienceに載せるよ、価格は100万円、って言われて手元に100万円研究費あったら出しちゃいそうですもん)、図書館の購読負担よりずっと金かかったじゃねーか、みたいな未来は避けたい。
日本全体で200億円代(電子ジャーナル購読費用相当)、は上限でしょうね・・・それ超えちゃうようなら図書館がOAに協力してきた意味の一部が完全になくなってしまうわけなので。
そういった全体像を把握してマネージメントするのが、「図書館」なのかはわかりませんが、それができる人間が今専ら「図書館」にいることは確実というのも今日皆さんが話されていたとおりで、ここはやっぱり図書館の方に担っていただきたいなー・・・と研究者の端くれとしても思います。
お手伝いできることは手伝いますゆえ。
あとはちょっと気になったのは、「読んでいる雑誌」以上に「投稿する雑誌」は研究者ごとの差異がありえそうで、ある程度ジャーナル数が限られてどの研究者もそこに出す、って雑誌が決まっている分野(高エネ物理・・・はもうSCOAP3で解決しちゃうかもですが、あとどこでしょう? 化学=JACSとか? でも他にも出すか??)はいいとして、そうじゃないところだと「APCビッグディール」を本気でやるなら単に自分のところの研究者が今どこに出しているか、のみならず、「誰が出てって新しく誰が来たか」も常時見ていく必要があるかな、と。
あとは、学生ですね。
これも時間があったら問題提起したかったのですが、Gold OAでAPC支払いが義務付けられるようになったとき、大学院生の発表機会は維持できるのか。
今でも日本では大学院生の4人に1人がアルバイトのせいで研究時間が確保できない*13なんて報じられているわけですが、現状でも分野によっては、研究室の資金状況によって院生の発表機会(学会参加可否等)が左右される状況もあり、これが論文発表にも出てくると格差が一層拡大するということにも・・・*14。
そのあたりも、研究者だけに任せていてもなかなか改善しづらいことが予想され、大学としてのサポートの枠組が欲しい、そこを作るのに図書館が関与する、というのは心強いかな、と思ったり。
あるいは、APC払えなくて非OA誌に出した人向けのサポートを手厚くするとか。
思いつくままに書き散らしてしまいましたが・・・やあ、きっと他の参加者の方も語りたい/考えたことがいっぱいある会だったのでは、と思います。
明日は慶應でより参加者とのディスカッションを重視する会もあるとのことですので、連続参加可能な方はそちらもぜひご検討を!
オックスフォード大学出版局(OUP)で20年間学術出版に携わってきたRichardson氏が,これまでの オープンアクセスの発展の経緯をたどり,Gold OAつまりオープンアクセスジャーナルこそが将来の学術出版のモデルとなるだろうという主張を展開する。
発表は英語で通訳はつきませんが,日本語の資料を配付します
※参加登録は不要です
*1:[TopHatenar] 部門別ランキング - 図書館
*2:原因:近年、「近年、」ではじまる卒業研究が増えている - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*3:最近たまにコメントで「なんだその入りは・・・」とか言われることがありますが、ブログの書き出しについてちょっと定型文ばかりでつまらんな、ってことで模索しなおしているのです。以上余談
*4:引用元:Anatomy of open access publishing: a study of longitudinal development and internal structure | BMC Medicine | Full Text
*5:2012-12-05追記・・・これだと世界の論文数がかなり少ない計算になってしまいそうですが、出典は・・・?
*6:引用元:Past Issues また、日本語での解説記事は自分も書いていたり:E1277 - 2020年,学術論文の90%はOA誌に掲載される?<文献紹介> | カレントアウェアネス・ポータル
*7:http://www.uk.sagepub.com/repository/binaries/pdf/Library-OAReport.pdf
*8:ラテン語で「どこへ行くのですか」の意味。使徒ペトロがイエスに問いかけた言葉、だそうです(出典:世界文学大事典の『クオ・ヴァディス』の項目。ただし同項目は同名の長編小説の解説
*9:http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?%E6%9C%88%E5%88%8ADRF
*10:http://www.researchinfonet.org/wp-content/uploads/2012/06/Finch-Group-report-FINAL-VERSION.pdf
*11:https://peerj.com/ 99ドル払うと一生涯、年に一定数の論文を発表できる権利を得られる、というモデル
*12:http://www.elifesciences.org/
*13:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121122-00000025-rbb-sci
*14:例として、筑波大学図書館情報メディア研究科は院生に外部発表時の旅費の補助をしているのですが、今年はその予算使いきっちゃったそうで今後、どこかで発表するには先生が研究費を持っていればそれが使えますが、なければ自腹、ということになっていたり