【再掲】第1回 SPARC Japan セミナー2013「SPARCとSPARC Japanのこれから」(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その3)
どうやら昨日書いたエントリが、1日にアップできる量を超えていたようで途中で切れてしまっていました(汗)
ご指摘くださった方、ありがとうございましたm(_ _)m
あらためて、6/7のSPARC Japanセミナー記録をアップしたいと思います。
(以下、途中までは前回エントリと全く同じ内容です)
前々エントリ*1、前エントリ*2に引き続き、OAサミット2013参加記録その3です。
2日目・午後の時間は第4期に入ったSPARC Japanセミナーですよ!
今回は第4期SPARC Japanの活動をスタートさせるにふさわしくSPARCのExecutive DirectorであるHeather Joseph氏をお招きし、米国におけるSPARCの活動状況についてお話をいただきます。また第4期のSPARC Japan活動方針をご説明させていただき、日本版SPARCの方向性について模索してみたいと思います。SPARC活動の拠点である米国での最新動向を担当者から直接伺える貴重な機会ですので、是非ご参加いただけますようお願いいたします。
SPARC Japanセミナーはこのブログコンテンツのいったい何割を収めているんだという、ほぼメインコンテンツですが(苦笑)
さすがに関西に就職してもうそう頻繁には行けないかなー、と思っていたところ、今回はOAサミットの一環として開催されたおかげで参加することができました!!
それも米国・本家SPARCのHeather Josephさんがいらしている回ということで、記録もいつも以上のボリュームになってしまったような・・・
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyが聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモですので、ご利用の際はその点ご理解いただければ幸いです。誤字脱字・事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等でご指摘ください。
では、さっそく米SPARCのJosephさんのお話から!
「Open Access: Delivering on the Promise」(Heather Josephさん、Executive Director, SPARC)
- 通訳を通して話すのは久しぶりなのでなるべくゆっくり話すが、問題があったらうでを大きく回して欲しい
- そうしたらゆっくり話すようにする
はじめに:どのようなプレッシャーが学術情報流通にあって、そこからどんな新しいソリューションが求められるようになったか
- 学術情報流通システムには何が起こっているのか?
- 1. 新しい技術
- インターネット
- 学術成果を共有するためのさまざまな方法
- 2. デジタル情報の氾濫
- デジタル情報がいかに急速に増大しているか
- ヒトゲノムプロジェクトの場合・・・ 指数的なのびを見せる/これはどの学術領域でも起こる
- 情報がどんどん出てくるようになると、人や機械のネットワークを活用して理解できる形で情報を活用する必要がある
- 3. 研究論文へのアクセスに関する、図書館における財政負担
- 今のままのシステムで理にかなった方法で研究をするのは難しくなっている・・・それが意味することとは?
- あるトピックについて検索してみて、読みたい論文がならんだリストを得たとする
- 研究者はこれにどう対応する??
- 学術情報を共有するもっといい方法があると思う
- 立ち止まって、学術情報の共有の方法、最善の方法を考え、作りなおす必要がある
- そこで出てきたアイディアが・・・オープンアクセス
オープンアクセスとは、それを今までどう実現してきたか
- オープンアクセスとは? Budapest Open Access Initiative*3から・・・
- シンプル/パワフルなこの定義に基づいて色々活動してきた
- オープンアクセスの現状は?
- 1. オープンアクセス雑誌
- 9,000以上のOA雑誌が既に存在。いろいろな分野/世界中で存在
- OA雑誌に論文を載せる著者も増えている
- 当初はゆっくりだった伸びが、次第にハイペースになってきている
- 今後、OA雑誌掲載論文の数が、購読雑誌に掲載されるものを追い越すタイミングも予想されるように
- 遅くとも2021年にはそうなりそう/早ければ2017年にはそうなるとも言われている
-
- OA雑誌は当初、懐疑的な意見が多かった・・・持続可能なモデルなのか??
- しかし2013年までにOA雑誌は持続可能なばかりか、収益もあがるものと証明された
- 出版業界の中で現在もっともハイペースで成長しているのがOA雑誌。2011⇒2012の年間34%の成長率
- 金額はまだまだかもだが、これだけ成長がはやいことには注目しておかなければいけない
- OA雑誌は当初、懐疑的な意見が多かった・・・持続可能なモデルなのか??
- 2. オープンアクセスリポジトリ
- 3. アクセスインフラの充実
- アクセスそのもののインフラ+再利用のためのインフラ
-
- 再利用を促す上で重要なのが・・・オープンライセンスの利用
- その中でもOAにおいてもっとも重要でよく使われるのがCreative Commons
- CCBYは中でも最も使われている。デジタル情報を最初に作った人にクレジットしていれば、あとは何をしてもいい、というライセンス
- CCBYはOAにおけるgold standard。CCBYを使う著者の数も増えている。OA雑誌に投稿する著者の伸びと同じような傾向
- 再利用を促す上で重要なのが・・・オープンライセンスの利用
- 4. オープンアクセスポリシー
- オープンアクセスに関する重要な要素の最後はポリシー
- 2つの種類:大学のポリシーと国・助成団体のポリシー
- オープンアクセスに関する重要な要素の最後はポリシー
-
- 大学のポリシー
- 最も有名なのはハーバード大学のポリシー
- 大学のポリシー
- これらのことは研究者や学者にとってどんな意味を持つのか??
- メリットが目に見える形で見え始めた・・・自分の成果をより幅広く届け/より多くの読者に届けられる
- 研究成果へのアクセスが増えるのびならず、それを使って何かをすることも今までよりもできるように
オープンアクセスのコンセプトを実現するためのシステムの中にある課題と機会
- いろいろなことが実現したが、まだまだ課題はあるし、機会もある
- 再利用可能性について:
- その実現のために、SPARCはさまざまなコミュニティと協同している
- そのOAがどの程度、再利用可能としているかの枠組みを定めたり(HowOpenIsIt)
- 研究者・学術コミュニティの文化の変容を起こせるか:
- 「なぜ自分の研究成果をOAにする必要があるのか?」という質問を投げかける研究者に対してよりよい答えを提供する必要がある
- 最大の障害は研究者の不安感・恐れ。購読出版と同じようにOA雑誌にのっても見返りは得られるか
- それに応えるには今までと違う方法で出版活動の質を評価することが必要
-
- 従来の研究者にとっての指標・・・インパクトファクター(引用の数に基づく)
- しかし他にもいろいろな方法を使うことが、デジタルな環境ではできる。引用だけではなくても良いはず
- 従来の研究者にとっての指標・・・インパクトファクター(引用の数に基づく)
- Article Level MetricsやAltmetrics
- 何人が論文を読んでいるか/どこから引用したか
- 引用の数を見るだけではなく、誰がどこで引用しているかがわかる
- ソーシャルメディアからどんなことを呟いたり言及されているかを調べることも。Twitter、FacebookやConnotea、Mendeleyのような専門的なものも。廊下の立ち聞きを覗き見するように論文の評判をオンライン上で見られる
- Article Level MetricsはOA雑誌の世界で広く使われるように・・・これを見れば論文1本ずつの情報や数字的な/統計的な情報を簡単に得られる
- 例えば出たばかりの論文なら被引用数は少なくなるが、FacebookやMendeleyではどんなコメントがついているか、ディスカッションが行なわれているかを見たりできる
- 誰がどのように研究成果を使っているかが見られる、というのは単なる論文の引用数とは違う切り口で使われ方を見ることができるもの
- これを成功に導いていくには・・・Article Level Metricsがいろいろな雑誌で使われる必要がある
- 数カ月前にサンフランシスコで行なわれた会議に基づき「サンフランシスコ研究評価宣言」が出された*5
- 学術分野における雑誌出版関係者/研究者によるイニシアティブ
- 従来のようなインパクトファクターだけに頼るのではない、インパクトファクターを越えた新たなツールを使うような方法を探る
- Article Level Metricsには従来とは違うカルチャーへと変革していく刺激となる、大きなポテンシャルを持っている
まとめ
- これまでに指標・数字で見たように、過去10年のOAの取り組みが大きな進歩を遂げているのは明らか
- これから対策をとっていくべき課題も明らか
- SPARCではいつも最後はtodoリストを掲げて終わりにしている・・・今回はこんな感じ
質疑応答
- Q. NIIの技術者兼天文学者。研究者としてArticle Level Metricsは重要だと思う。研究者に広めていく必要があると思うがどうプロモートしていく?
- Q. 同僚にもすすめて行きたい。
- Q. Article Level Metricsは素晴らしいと思うが、研究活動の評価に反映されないと広がらないのではないか? アメリカでもどこでもいいが、研究機関や研究費の採択で、ALMsを考慮に入れているところはあるのか? あるいは検討している例はあるのか?
- A. 確かに普及のためには研究機関や助成団体でこういう手法が受け入れられる必要があると思う。実際、新しい手法としての検討がまさにはじめられた段階。研究助成団体等でそういう動きが始まっている段階。どの程度、関心が高まっているかというと、北米SPARCに昨年来た問い合わせのうちかなりの部分はALMs関係。OAに関する質問と同じくらいの数が来た。ALMsの活用の検討例の一つとして、研究評価手法として、Wellcome Trustでも検討が始まっていたり、さまざまなところで使われるようになってきている。ぜひ参照して欲しい。
- Q. SPARCの取り組みは非常に大事と思うが、OAの成功には研究者の意識が一番大事と思う。研究者はNature等の著名な雑誌に自分の論文が載ることに熱心だが、OA等の別のルートに論文が載ることへの意識の改革を実現するために図書館員は何ができる?
- A. 確かに研究者の意識改革は重要。それは図書館職員ができることの一つでもあると思う。OA雑誌の中にはScienceやNatureに匹敵するようなものがあることを知ってもらうことが必要。そこまで質の高いものは多くはないが増えてはいる、例えばeLifeとか。研究者に対してこういうOA雑誌もあること、そこで論文を発表することもできることを知ってもらうことが必要。インパクトファクターへの依存を進めるわけではないが、中にはインパクトファクターの高いものもある。まずは知ってもらうことが最初のステップと思う。また、大学当局にもそういう点を話して、理解を広めることが重要。大学内での研究成果をより幅威ひろいオーディエンスに届けること、そこから視認性を高めていくことの重要性を訴える事が必要。OAにすることは視認性向上にもつながる。
- 要するに、図書館スタッフは研究者に話しをするときはOAの側面の中でも個人的なメリットを伝えられれば、その人個人も興味を示してくれるはず。大学当局に話をするときは、大学の研究活動のビジビリティを上げ、ブランドの価値を高めることにつながる、と話をしていくと説得力もあるし、理解も進むのではないか。
休憩タイム
「SPARC Japan 〜来し方行く末〜」(尾城孝一さん、国立情報学研究所)
- 今日の話:
- 国際学術情報流通基盤事業:通称 SPARC Japanは10年前、2003年から活動開始
- 最初の経緯
- これまでの成果・課題
- 今後の展開
- 国際学術情報流通基盤事業:通称 SPARC Japanは10年前、2003年から活動開始
- SPARC Japan開始の経緯:
- 2000年当時の日本の英語学術論文出版状況・・・日本の論文の割合は世界全体の12%に達する/日本の英文雑誌の占める割合は4%未満
- 日本人研究者の英語論文の79%以上は海外の英文誌に掲載・・・海外流出?
- 当時の日本の学術情報流通の問題点:
- 研究成果は海外に流出
- 国内学会誌の電子ジャーナル化が遅れている
- 数少ない電子ジャーナルも海外商業出版社に流れてしまっている
- 日本発のものもほとんどは無料発信。オープンに利用できるのはいいことだが、ビジネスモデルは存在しないので安定性には不安
- 文科省の審議会の中でも問題点は認識される・・・NIIが国際発信の方策をとる、という提言が出される
- そこで日本発の学術論文誌を電子的に発信する事業へ・・・SPARC Japanの開始
- 2000年当時の日本の英語学術論文出版状況・・・日本の論文の割合は世界全体の12%に達する/日本の英文雑誌の占める割合は4%未満
-
- 商業出版社による市場独占・雑誌の価格高騰に対する危機意識は日米で共通
- 日本には国内のジャーナルの国際競争力を高めないといけないという固有の問題も存在
- 日本はとりあえず固有の問題の解決に力を注ぐ必要があった・・・SPARC Japan
- 商業出版社による市場独占・雑誌の価格高騰に対する危機意識は日米で共通
- SPARC Japan 3期10年の成果と課題
-
- ジャーナルについて
- 45誌はすべて電子ジャーナルか完了
- 電子オンリーの雑誌も新創刊
- UniBio Press・・・生物系プラットフォーム
- 数学系・・・Project Euclidに参加
- 新たに5誌がIFを獲得
- ジャーナルについて
- 第4期の活動・・・
- 基本方針:大学図書館と研究者の連携を促進しつつ、OAに関する問題に取り組みながらOAを推進する
- 国際的なOAイニシアティブの支援/課題への対応/基礎的な情報・データの把握
-
- 具体的なプロジェクト:いくつかあるが、中でも力を入れたいもの・・・オープンアクセス支援のパイロットプロジェクトの検討
「SPARCへの期待」(戸瀬信之先生、日本数学会)
- 最初にNII、特にSPARC Japanに深い感謝を:
- 今日の講演は数学会を中心に、日本の数学者がどのように研究発表を進めているかを考え、どのようなことが今後必要とされるか、何をお願いしたいかを考えてみた話
- 日本数学会の雑誌の電子化事業:
- 数学者の研究成果発表:
- これらの多様な形態に対応するために、日本数学会は・・・
- 大会の講演アブストラクト(論文要旨)について過去30年分のデータベース化と過去分のアーカイブ化を進める
- 講演ビデオ・・・国際的な数学者を招いたレクチャー(年2回)と、夏休みに2週間、世界から人を集めてやっている企画のビデオは公開している。無償公開
- http://mathsoc.jp/videos/
- 大会の企画特別講演もビデオ公開
- 東京大学数理科学研究科では外国人を招いたシンポジウムを多数実施・・・その講演ビデオもある。共通データベースが必要?
- 英語の講演は大韓数学会とも話し合い、アジアで講演ビデオの情報を交換するという動きも
- 大会分科会の総合シンポジウムなど・・・講演記録(1人10ページ程度)も毎年、頒布
- 分科会によって温度差はあるが、徐々に電子化しはじめている
- 過去の重要な国際シンポジウム・・・たとえば50年前、日本初の国際シンポジウムの記録などにも重要な論文がある・・・Proceedingsの公開
- 今後さらに進めるとするとデータベースがいる: Digital Mathematical Library
- SPARCへの期待
- 現金なようだが・・・DML-JP拡張版の構築を援助して欲しい
- こういう試みは数学に限らずいろんな分野で日本国内の研究成果を作って、また統合していくことにもなるかも。なっていくと思う
- 不定期刊行物について、最初の20巻は出版権が他にあり、なかなか交渉もできていない・・・今後、日本で行なわれた出版物を電子化・公開するとライセンスの調整が必須になる。その交渉チャンネルをどこかが持っておくのがいい。各学会がそれぞれ欧米の出版社とチャンネルを持つのはまず不可能で、SPARCがやってくれるとありがたい
- 特に不定期刊行物について、電子化したとして図書館のデータベースにも統合して欲しいのだが、そういうことを推進する仕組みを作っていったらどうか?
- OPACに統合するような動きがあってもいい
- 最後に・・・モノグラフの電子化の推進
- 現金なようだが・・・DML-JP拡張版の構築を援助して欲しい
パネルディスカッション
安達先生
モデレータの特権として少しお話したい。
Josephさんのお話は大変印象的な講演だった。いいタイミングでいい人に話を聞けた。私もオバマ大統領がオープンアクセス出版へのレターを出したとか、サンフランシスコの会議の件とかのニュースはしっているが、それを大きな流れの中で見る、というのは大事なこと。非常にインスパイアしてくれた。
一つは、OA= access + reuse、といってくれた。reuse、ということで、さまざまな課題が出てきた。
もう一つはmetricsのこと。日本では同じ問題を大学の評価や研究者の評価でストレートに捉えて議論してしまうが、もっと別の観点、研究者の立場から使い方の話をされたのは私どもの議論で抜けていたこと。
尾城さんのお話にあったように、私ども日本は少しリポジトリに注力しすぎた。おかげさまで成果は出ているが、おおもとのOAについてもう一度考えてみるいいチャンスと思う。
Josephさんのお話のポイントは、別の言い方をすれば、"game change"の話だろう。従来からの出版/インパクトファクターに対し新しいものを持ち込んで、学術コミュニケーションを全く変える可能性を示してくれた。
午前中の博士論文の話も、日本におけるgame change。OAの問題と思ってお聞きかもしれないが、「大学が学位を与える」という制度を変えてしまうところにインパクトが有る。午前中はそういうところを避けて話をしていたが、Josephさんの話も、博士論文の話もゲームを変える話。その中で何を目指すのかが、今日一日、私が学んだこと。
前振りはこれくらいにして。まずプレゼンテーションをしなかったお二人に意見をいただきたい。
まずは関川さん、スライドを用意いただいているのでそこから。
関川さん
私は基本的にはOAはとてもいいことだと思っている。その大前提を踏まえて、スライドを作ってきた。
一つは、リポジトリに関して。もし雑誌が完全にOA化されたら機関リポジトリはいったいどうなるのか?
機関リポジトリに今、論文を登録している場合、著者最終版とか色々バージョンが有る。もし完全にOAなら版を分けなくていいのではないか、出版社版を登録すればいいしエンバーゴもない。出版社版を登録できる。
でも、そうなると、機関リポジトリの役割はなんなんだろう?
二つ目は、APCについて。一般に著者が投稿するときに払うモデルが普通だが、今後、図書館でAPCをとりまとめて出版社に払うようなことも起こるだろう。
私の図書館現場からの関心は、APCの総額は、今、購読料として負担している金額と、同じになるのか? それ以上取るつもりはないだろうか? もっとお金をとるとか、まさか言い出さないよね?
とはいえ過渡的には、購読料を変えないままAPCを上乗せして回収している、そういうのが続くのかな、と思う。
三点目は、これがどんどん進展したとき、図書館はAPCにどのようなスタンスでどのような対応をとればいいのか。
図書館現場の人間としてはこれは大きな問題なのではないかなと考えている。
安達先生
ゴールド、グリーン、APCの話が重要な論点ということで承った。
続いて林さん、お願いします。
林さん
前職の日本化学会の頃からお話したい。
2003年のSPARC準備室の頃からかかわってきて、SPARC Japanが紆余曲折なことも肌身で知っている。
オープンアクセスについても、日本の出版社としては初めてOAに関する支援を明示的に示して、ハイブリッドオプションを導入したり、OA dayで日本でもイベントをやったり、Science分野のCreative Commonsの翻訳プロジェクトの立ち上げもやったりしている。
OAに関してはそれなりに貢献し、SPARCでもセミナー等通じてどうエンハンスできるかやってきた。
感慨深いのは10年くらいやってやっと、研究者が向き合ってくれるようになってきた。ここに来て急に変わってきているので、ここで何か起こすことで次の飛躍につながると思う。
日本の特殊な事情として、今年度から始まる科研費の成果公開促進費でのOA特別枠の支援があることと、他のパターンの中でもOA実現を推奨している。そうなると、学会の先生方がOAを考えだして、認識も上がっている。
その上で、昨日、安達先生もおっしゃっていた、研究者が研究者のイニシアティブで、どうやってOA化すべきという、mandateを決めればいいのか。OAをなんのためにするかといえば、研究者が研究者の成果のビジビリティを上げ、貢献し、その世界をボトムアップすること。そのことを研究者自身に考えてもらう仕掛けを考えて行かないといけない。
安達先生
今日のご講演とお二人の問題提起をまとめて3つにしてみた。
- 1. Gold、Green、APC、Diversity
- 2. 研究者との緊張関係をどう考えていくか・・・日本では政府も義務化で動き出し、アメリカではオバマ大統領がレターも出した。その中で図書館はどう機能していくのか
- 3. 従来型の論文からそれ以外のコンテンツに広がっていく。オープンデータ等も言われる。カバーしなければいけない領域が広がることについて
この3つについてまず議論をして行きたい。
APC、Gold、Green、リポジトリの役割
- 安達先生:Josephさん、アメリカの状況等についてコメントがあれば。
- Josephさん:
アメリカでは大学・図書館がAPCに資金を拠出することは受け入れられている。全ての大学で行なわれているわけではないが、従来より多くの機関がOAのためのfundを用意している。
資金源はいろいろ。一つは図書館が購読料の一部をOAのために、さまざまな費用のために割り当てている。
二つ目は大学当局が新しい資金を用意する。今までそういうことに使っていなかったお金をfundのために用意している。
SPARCの役割としては、このような問題についての情報・データを提供すること。過去5年間のOA fundの情報を伝えるプロジェクトを実施している。金額や資金源、APCのリクエスト数やその領域、対象は院生/ポスドク/新任研究者なのかといった情報をまとめている。SPARCのwebサイトに情報は載せているので、そちらを参照いただければ。
- 安達先生:アメリカの大学では色々という話だが、日本は?>関川さん
- 関川さん:
昨年12月のセミナーでも触れたが、日本ではAPCに関して学内合意・・・研究者や執行部がAPCをどこが扱うかについて、まったく固めていない状態とお話したと思う。
学術情報流通、その流通という面では、APCを図書館が扱うのはごく自然と思う。
でも、科研費や外部資金という見方をすると、それに図書館が直接関与する習慣・文化はあまりない。科研費をどうとるかとかは研究推進や助成部署がやっている。APCが学術情報流通の視点ではなく、研究推進の視点からは、図書館の出る幕ではないという考え方もある。
結論から言えば図書館が関与するのが一番リーズナブルと思うが、そのことを先生方や執行部、学内関係者に説明して、了解を求めることをしていかなければいけないと思う。
- 戸瀬先生:
数学の場合はAPCへの理解は進んでいない。ただし、アメリカ数学会がAPCジャーナルを創刊するということがあり、注目は集まっている。
いずれにしても数学者は世の中の流れに・・・っ・・・こだわらないので、なかなか乗ってこないと思う。学内調整をするにあたって、分野間の温度差がかなり激しいのではと思う。
- 安達先生:
日本の数学者はギスギスした感じがなくていい分野と思うが、Josephさん、アメリカの大学では図書館がAPCを扱うとみなされている? それ以外のところ?
- Josephさん:
全く同じ状況。やはり図書館はこれまで購読料の対応をしていたので自然とAPCも自分たちと認識する。
一方で、研究者は自分たちの研究成果を流通させるコストと考え、研究の枠組みの中にあるものと考えがち。そこから両者の間に緊張感のようなものが生まれている。
- Q. フロア・大学図書館の方:
すべてOA雑誌になったらAPCは購読費のトータルと同じなのか、という話があったが、APCは雑誌を賄うコストなんだし読者が増えても儲けようとしないのではと思う・・・が、出版社はどう考えるだろう?
パネリストの中だと林さんの立場が近い?
- 林さん:
APCでも稼げちゃうので、怪しい雑誌がいっぱいある。まずあれには気をつけて、と先生方にadvocacyする必要がある。
とはいえ、すべての雑誌がOAにはならないだろう。NatureやACSのトップジャーナルは購読モデルのままだと思う。
トップジャーナルはほとんどの研究機関で買えているので、実質的に研究者にとってOAと変わらない。
それに価値のある情報は有料、という認識も広がっている。
ハイブランドの雑誌は購読モデルのままだと思うし、それはそれでいいんじゃないか。図書館の役割もそこで残る。
難しいのはミドルクラス。トップレベルじゃないから、購読費はトップジャーナルにとられる。
どう対応するか困っているところがあるので、そこは出版社と図書館が手を組むチャンスかも知れない。
直接の答えにはならないかもだが・・・
- Q. 同じ方:
多様性の問題にもつながると思う。いろいろなモデルのものがあって良くて、だからこそ図書館がその辺の事情をわかる努力をした上で、大学内でそういう機能を担う必要はあると思う。
- 林さん:
APCも、「いくらが適当か」と「その雑誌にそのAPCを払うべきか」の目利きもいる。先生の論文をどのジャーナルに載せるかを限られた予算の中で判断する必要があるわけで、それもAPCの課題になってくると思う。
- 安達先生:
そうすると図書館は確実に仕事が増える。マネジメントする人には頭がいたいかも。
奇しくも研究者との距離の話にもなってきた。研究者との距離を近くしてその行動に関与することになりそう。
従来、図書館はとにかくきちっと資料を集めることに専念すれば良かった。今の林さんの話は、どこに投稿するかという、従来は研究者が決める、図書館が口を出してはいけなかったところにも関与することになるかも。
日本は従来、OAやリポジトリはがんばってきたが、まだ研究者自身や助成機関によるmandateが弱い。アメリカは日本から見ると急にオバマ大統領のレターを契機にそっちに行こうとしているように見える。
NSFの成果をOAにすることなどは近々、制度化される?
- Josephさん:
オバマ大統領のレターの件は、それを出してもらうには4年間という長い期間、図書館コミュニティから政府に対し日々、働きかけてきた、努力を払ってきてようやく実現したもの。
外から見ると突然の実現のようにも見えるだろうが、図書館コミュニティの働きかけの結果、ようやく実現したもの。
図書館が果たした役割は非常に大きい。政府に働きかけただけではなく、各大学でも図書館員がきっかけになって教員を動き出した。
ハーバード大学などでも、アイディアは図書館員が出し、それに教員が納得して、政府を動かすまでに至ったのは、図書館員が大きく人々を動かした、ということ。
その結果としてこのように実を結んだ。
- 安達先生:
冒頭で機関リポジトリの役割に関するご心配を関川さんが表明されていましたが、今朝のセッションはこの会場が全部うまる稀なセッションで、機関リポジトリに博士論文を、今年から入れなければいけないということで、それだけで図書館の人もずいぶん、集中的に作業したり学内調整をしたりが目の前に控えている。
関川さんは大学でそれをマネジメントする立場だが、どう考えている?
まだどんどん、なくてはならないものになっていくのでは?
- 関川さん:
最初のスライドの中で「どうなるの?」としていたが、心の中では「でも必要だよね、少なくとも会場にいる人が生きている期間くらいのスパンでは」と考えていた。
全ての学術情報、講演や会議録などが商業誌等には載り切らない。確実に学術情報を世界にオープンにする流れの中で、機関リポジトリの働きはずっとあるだろう。
少なくとも日本ではかなり時間がかかるはず。学位論文の電子化ですら、図書館の会議などで説明すると、「そんなこと言ったってね・・・」と言い出して、当分は学位論文の100%搭載はまだ先。
機関リポジトリに携わる人は、当分飯の種に困らない。
もう1つは、前の大学のときにすごく感じたのは、大学という単位に対する評価の目が非常に厳しい。
完全OA誌があったとして、そこを見れば成果が見られるとしても、「A大学がどういう成果を出しているか」というものは、それを外部に公表する機能として機関リポジトリの役割はあるだろうと思う。
そういった意味で、OAという面と同時に大学の活動評価ツールとして見た時に機関リポジトリはそれなりの意味を持つだろうと思う。
- 安達先生:
補足すると、従来の日本政府のやり方なら、博士論文を電子化しようというなら集中的に、単一リポジトリを作ってやろうということが多かった。
それが各大学の機関リポジトリで、となったのは、日本の機関リポジトリが普通のものになってきた、図書館員の努力の成果に加えて、個々の大学の活動評価を意識しているから。
政府はとにかくお金を減らそうとしているので、厳しくなっていくことも予想されるが、主として国立大学には当てはまることの余波として私立大学にも博士論文のmandateが来た。
しかしそれをネガティブにではなく、ポジティブに、外にアピールするためのアプローチとして発展させることが必要。
そういう形で大学図書館から学内にうまくアピールしてくれればありがたい。
私も機関リポジトリのプロジェクトに携わって、研究者へのアクセスがなかなか難しいと思っている。
今回の博士論文のmandateは大きな意義を持つ。このチャンスを捉えて、研究者とより近くなって、今までのOAに関する活動を強化して欲しい。
このようなことについて、図書館の方はそうはいっても苦労していると思うが、もしご質問・ご意見等あれば・・・
- フロア:別の方:
機関リポジトリは今後も必要だろうと思う。
一つは紀要のようなもの、従来distributeされていないものを載せる機能。
もう一つはジャーナルに入れる際に削っていたバックデータ等も含んだドキュメントもリポジトリで公開することになるのではないか。
そういう点で、出版に近いような形でリポジトリは、OA雑誌が増えても重要性はあるのではないか。
- 安達先生:
リポジトリにはますます要求も増えて仕事をきっちりしないといけない状況に思う。
Josephさんに質問したいのだが、評価・大学評価が日本のパネリストの議論の中で焦点になっている。日本の国立大学はかなり税金を投入されてもいるので。
アメリカの大学は私立大学も多くて、大学の評価という観点は日本ほどではない、主として研究資金獲得という視点が強いのではと思うが、アメリカの状況についてコメントいただきたい。
- Josephさん:
確かにアメリカの状況は若干違う。私立大学と州立・公立大学の場合で、評価の仕方がかなり違うから。
ただ、この2者は同じようなことについて競争しているのも事実。質の高い学生の確保、研究資金の確保などで公私立問わず競争している。
そこで重要になってくるのが大学のブランドを高めることで、そこで研究出版活動や使われるデータセットの存在は大きく、機関リポジトリはそこに生きてくる。
機関リポジトリを使って大学のブランドを高めること、研究成果を幅広く発信する上で機関リポジトリはますます重要になってくるのではないかと思う。
- 安達先生:
コンテンツの多様化について。出版形態の多様化とも関係するが、機関リポジトリも変わっていく必要があると思うし、出版社の活動も変わってきている。
大学だとオープンデータに今後どう対応するかというのもひとつの論点になってくると思う。
例えば東京大学では図書館がそういうことにコミットメントする、オープンデータに対応しようとか言う動きはある? それは研究者サイドの活動?
- 関川さん:
東京大学に移って日は浅いのでよくはわからないが・・・図書館とオープンデータの関わりの話はあまり聞いていない。
先生方、研究者レベルでそういう動きはあって、いずれそれが図書館なり学内のセンターにコンタクトがあるかも知れないが、現時点では図書館へのコンタクトはない。
前の大学(=筑波大学)では従来の図書館の守備範囲からずれたものについての働きかけはあった。オープンデータではないが。
- Josephさん:
興味深い点として、オバマ政権はオープンアクセスに積極的でレターを出したが、刊行物だけでなくデータもオープンにせよと強く言ってきている。
政府から大学図書館のコミュニティに対して、データアーカイブの解決策がないので、大学図書館と一緒に考えたい、と話があった。
現在、アメリカの図書館コミュニティは大きなチャンスを迎えていて、これから図書館が果たす役割は広がると思う。
アメリカでは明示的に図書館への働きかけがある。
- 安達先生:
日本ではそこまでの動きがない。
オープンデータと聞くと例えばメタデータをどうつけてコミュニケーションできるようにするかは大きなチャレンジと思う。
そういう点で、化学は従来から化合物のレジストリと論文を結びつけるとかいう動きは有り、他方でアメリカの化学会はOAについて極めて独自のスタンスをとっているが、林さん、その点について。
- 林さん:
化学はごく早い時期から化合物データを貯め始めたり結晶データを集めていたりする。
今、結晶学の研究者は、投稿時点でケンブリッジにあるデータセンターに自分のデータを登録して、IDをもらってから投稿して、出版するとケンブリッジのセンターにリンクもしている。
1990年代に構想が出て、2000年代前半には実現している。大変、美しい解決。
一方、Chemical Abstractsは集めた化合物データをSciFinderとして商売している。ケンブリッジのセンターは、企業等にはまとめて売って商売しているが、研究者の利用は無料。
どちらの場合もメタデータの目利きが要る。図書館員がその役割をやろうとすると、サブジェクト・ライブラリアンの話にもつながってくる。
そこがうまく機能すれば、専門のデータセットにメタデータを付け広く流通させるライブラリアンのミッションにもつながってくる。
- 安達先生:
遺伝分野の活動を横から見ていても、共有・登録して別々のものをつなげて新しい価値を出そうとしても、専門家がいなくて苦労している。
オープンデータとなると本当に生きていく価値のあるデータをオープンにするには相当の努力とお金がかかると思う。
図書館がどう関与するかは大きな問題。人材がいないのでどの分野も大変と思う。
人材がいないので・・・アメリカでは図書館にそういうコーディネイトの依頼が来ているというのは、今までの活動を見てもうなずける気がする。
今後、日本の図書館はどうするか? ぜひ考えていただきたい。
戸瀬先生はずいぶん、いろいろなデータを公開したいとのことだったが、図書館に期待している?
それとも数学者に、学会としてやることを期待している?
- 戸瀬先生:
文章/文献は数学会独自でできると思う。
ただし、数学会のサイトにおいておいてもビジビリティが低いので・・・実は英文のものはProject Euclid等に置くことも考えている。
たとえば歴史的なproceedingsの公開はEuclidだし、モノグラフの公開もそちらを利用しようと思う。
ところが、何が問題かと言えば、ビデオ。
ビデオは数学会のビデオ、200本くらいあるが、すべて東大の数理科学研究科にホストしてもらっている。
無償でやってもらっているが、どこの学会もそれを独自でやるほどの力は・・・物理学会や化学会ならあるかもだが、会員数5,000人の数学会では辛い。
公的な、集中的なサービスがあればいいと思っている。
- 安達先生:
勝手に課題を設定して自分の聞きたい質問ばかりしてきたが、フロアからこういうことを聞きたい、などあれば。
- フロア3:
APCモデルに関連して。今はまだ考えなくていいのかも知れないが、利益相反は問題になる?
製薬会社の話題が最近、ニュースにもなっているが、論文には「〜から資金を受けた」は書かれる。
例えば今後、製薬会社がAPCを払うから載せてね、ということもあると思う。
そうなるとAPCの支払いを誰がしたかを書く必要があるのではと思うが・・・
- 安達先生:
ご指摘の点は重要な問題のような気がする。
林さんでしたっけ? OA雑誌で詐欺のようなことをするところも出てきているが、逆にいうと、投稿者の自己責任・・・ということにもなるのかもだが、関連して何かあれば。
- 林さん:
図書館の役割なんだと思う。出す側だけじゃなくて入りの目利きがいる。
例えば製薬会社の資金を受けたときに何処に出すかをマネージしたり、あるいはそもそももらわないというようなことを判断することを図書館が担う、というのはあるかも。
- 安達先生:
従来は個々の研究者に責任を局在化させていたが、図書館が絡むと自体は複雑化するかも知れない。
具体的にどう対処するかは今後、OAを進めるコミュニティがきちっと発言して行かないといけないと思うし、研究者の啓蒙も重要と思う。
最後に:パネリストから一言ずつ
林さん
出版に関する質問に関連して、機関リポジトリ担当の方に提案したいのは、人社系の紀要を中心に機関リポジトリから出版されている。
それはぜひ進めて欲しいが、「出版していこう」と思うのならば、もう少しattractiveなインタフェースや、CrossRefのようなリンク、長期的にはさらにALMsのようなものも実現して欲しい。
特に日本の人社系の研究成果は被引用数では測れない。それ以外の方法でどうやるのかを考える、一番近い存在が機関リポジトリ+図書館になりつつある。
そこをぜひ進めて欲しい。
関川さん
OAとか図書館の役割とか高邁な部分ではないのだが。
OAは、あるいはOAの動きは、お金がかかる。ただではできない。だから、なんらかの金が絶対必要、ということを感じている。
それと派生して、金儲けは悪いことではない。金儲けを悪いような雰囲気があったが、日本では金儲けは悪いことではない。
ただ、適切でない利潤を出す金儲けは、もしするようなところがあるなら、目を光らせなければいけない。
コンソーシアムなんかの活動では出版社側の人間のようにも言われるが、お金は大切です。
戸瀬先生
出版側の人間でもあるんですが、数学会も出版しているので。
関川さんの指摘は重要。日本のジャーナルが脆弱なのは、日本に海外商業出版にあたるような出版社がないから。
数学会は不定期刊行物については、海外の出版社を使っているが、メインの雑誌は取次会社2つくらいあって、そのプロモーション能力は・・・あまり意味が無い、なきに等しいもの。
そういうところがかなり難しいのだな、と常に思っている。
数学会自身が国際的にプロモーションせざるを得ないと思いつめている。
Josephさん
他のパネリストの方々のコメントにさらに付け加えたい。
OA出版市場は新興市場で、その最もよくわかっている専門家は図書館員と研究者。
今こそこの市場を健全なものにすべく、協働していくべきと思う。
そうすれば、より学協会にとっても、研究者にも利益になる市場を形作っていくべき。
協力しあって市場について、何が起こっているか啓蒙し、健全な市場を形作っていくべき。
安達先生
予定時刻も過ぎているのでパネルを終えたい。
OAサミット全体の閉会の言葉:安達先生
壇上でも申したとおり、OAの動きの潮目が変わってきた、変わったと思っている。
そういうタイミングにSPARCからJosephさんをお呼びし、刺激的なお話を聞けたことは良かった。
お話が始まる前に、まずタイトルがずいぶん意義深いものだなあ、と思った。
「Delivering on the Promise」・・・「どのように期待に応えるか」。
今までの活動を具体的に社会に位置づけて機能していく時期になった、ということだと思う。
彼女はアメリカ・世界のOA Advocateの1人として、大変元気な方。
僕などはペシミスティックに考えがちだが、彼女は常に前向きなことを見てエンカレッジする、稀有な方。
快くお話いただいたことに感謝しています。ありがとうございました。
私どもの活動はさらに強力に進めていく。
博士論文について、いろいろな課題を的確かつエレガントに解決出来れば、このコミュニティの実力を社会に知らしめられる。
私どもNIIとしてもぜひ協力していければと考えている。
今後とも、このSPARC Japanのセミナーはコミュニティにいる人はもちろん、いない人も巻き込んでいきたいと思っている。
待っていますのでぜひ、よろしくお願いします。
この2日間の会議にご参加いただき、ありがとうございました。
以上で2日間にわたったOAサミットの記録、自分の手元にある分は全てです。
その後、慌ただしく京都に帰還⇒翌日・翌々日とあわあわ過ごしていたのでまだ十分に内容を咀嚼できた気はしないのですが。
全体を通じて(あるいはOAサミット以外の場でも)感じるのは、現在の「図書館」って枠組みはそろそろ見なおす必要があるんだろうなあ、というあたり。
・・・という書きだして続けて何か書こうと思ったんですが十分には咀嚼できていないので案の定、うまくまとまりませんでした(苦笑)
今期はSPARC Japanセミナーも最後にご紹介があったとおり、研究者、図書館、学術出版のそれぞれから人が参加し協働していく体制だそうで、まさにそういうことが重要であるとかあるいはその垣根が消えていくかもとかいうことをいずれ整理して書けたらいいなあ、とかなんとか。
さあて、次の更新はいつになることか・・・*6。
*1:機関リポジトリの今とこれから…350機関/100万超コンテンツの現在とその先(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その1) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*2:博士論文は「やむを得ない事由」がない限り機関リポジトリで公開される時代(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その2) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*3:Budapest Open Access Initiative | Read the Budapest Open Access Initiative
*6:このときはまさか、翌日再アップすることになろうなんて思ってもいなかったのでした・・・
第1回 SPARC Japan セミナー2013「SPARCとSPARC Japanのこれから」(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その3)
前々エントリ*1、前エントリ*2に引き続き、OAサミット2013参加記録その3です。
2日目・午後の時間は第4期に入ったSPARC Japanセミナーですよ!
今回は第4期SPARC Japanの活動をスタートさせるにふさわしくSPARCのExecutive DirectorであるHeather Joseph氏をお招きし、米国におけるSPARCの活動状況についてお話をいただきます。また第4期のSPARC Japan活動方針をご説明させていただき、日本版SPARCの方向性について模索してみたいと思います。SPARC活動の拠点である米国での最新動向を担当者から直接伺える貴重な機会ですので、是非ご参加いただけますようお願いいたします。
SPARC Japanセミナーはこのブログコンテンツのいったい何割を収めているんだという、ほぼメインコンテンツですが(苦笑)
さすがに関西に就職してもうそう頻繁には行けないかなー、と思っていたところ、今回はOAサミットの一環として開催されたおかげで参加することができました!!
それも米国・本家SPARCのHeather Josephさんがいらしている回ということで、記録もいつも以上のボリュームになってしまったような・・・
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyが聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモですので、ご利用の際はその点ご理解いただければ幸いです。誤字脱字・事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等でご指摘ください。
では、さっそく米SPARCのJosephさんのお話から!
「Open Access: Delivering on the Promise」(Heather Josephさん、Executive Director, SPARC)
- 通訳を通して話すのは久しぶりなのでなるべくゆっくり話すが、問題があったらうでを大きく回して欲しい
- そうしたらゆっくり話すようにする
はじめに:どのようなプレッシャーが学術情報流通にあって、そこからどんな新しいソリューションが求められるようになったか
- 学術情報流通システムには何が起こっているのか?
- 1. 新しい技術
- インターネット
- 学術成果を共有するためのさまざまな方法
- 2. デジタル情報の氾濫
- デジタル情報がいかに急速に増大しているか
- ヒトゲノムプロジェクトの場合・・・ 指数的なのびを見せる/これはどの学術領域でも起こる
- 情報がどんどん出てくるようになると、人や機械のネットワークを活用して理解できる形で情報を活用する必要がある
- 3. 研究論文へのアクセスに関する、図書館における財政負担
- 今のままのシステムで理にかなった方法で研究をするのは難しくなっている・・・それが意味することとは?
- あるトピックについて検索してみて、読みたい論文がならんだリストを得たとする
- 研究者はこれにどう対応する??
- 学術情報を共有するもっといい方法があると思う
- 立ち止まって、学術情報の共有の方法、最善の方法を考え、作りなおす必要がある
- そこで出てきたアイディアが・・・オープンアクセス
オープンアクセスとは、それを今までどう実現してきたか
- オープンアクセスとは? Budapest Open Access Initiative*3から・・・
- シンプル/パワフルなこの定義に基づいて色々活動してきた
- オープンアクセスの現状は?
- 1. オープンアクセス雑誌
- 9,000以上のOA雑誌が既に存在。いろいろな分野/世界中で存在
- OA雑誌に論文を載せる著者も増えている
- 当初はゆっくりだった伸びが、次第にハイペースになってきている
- 今後、OA雑誌掲載論文の数が、購読雑誌に掲載されるものを追い越すタイミングも予想されるように
- 遅くとも2021年にはそうなりそう/早ければ2017年にはそうなるとも言われている
-
- OA雑誌は当初、懐疑的な意見が多かった・・・持続可能なモデルなのか??
- しかし2013年までにOA雑誌は持続可能なばかりか、収益もあがるものと証明された
- 出版業界の中で現在もっともハイペースで成長しているのがOA雑誌。2011⇒2012の年間34%の成長率
- 金額はまだまだかもだが、これだけ成長がはやいことには注目しておかなければいけない
- OA雑誌は当初、懐疑的な意見が多かった・・・持続可能なモデルなのか??
- 2. オープンアクセスリポジトリ
- 3. アクセスインフラの充実
- アクセスそのもののインフラ+再利用のためのインフラ
-
- 再利用を促す上で重要なのが・・・オープンライセンスの利用
- その中でもOAにおいてもっとも重要でよく使われるのがCreative Commons
- CCBYは中でも最も使われている。デジタル情報を最初に作った人にクレジットしていれば、あとは何をしてもいい、というライセンス
- CCBYはOAにおけるgold standard。CCBYを使う著者の数も増えている。OA雑誌に投稿する著者の伸びと同じような傾向
- 再利用を促す上で重要なのが・・・オープンライセンスの利用
- 4. オープンアクセスポリシー
- オープンアクセスに関する重要な要素の最後はポリシー
- 2つの種類:大学のポリシーと国・助成団体のポリシー
- オープンアクセスに関する重要な要素の最後はポリシー
-
- 大学のポリシー
- 最も有名なのはハーバード大学のポリシー
- 大学のポリシー
- これらのことは研究者や学者にとってどんな意味を持つのか??
- メリットが目に見える形で見え始めた・・・自分の成果をより幅広く届け/より多くの読者に届けられる
- 研究成果へのアクセスが増えるのびならず、それを使って何かをすることも今までよりもできるように
オープンアクセスのコンセプトを実現するためのシステムの中にある課題と機会
- いろいろなことが実現したが、まだまだ課題はあるし、機会もある
- 再利用可能性について:
- その実現のために、SPARCはさまざまなコミュニティと協同している
- そのOAがどの程度、再利用可能としているかの枠組みを定めたり(HowOpenIsIt)
- 研究者・学術コミュニティの文化の変容を起こせるか:
- 「なぜ自分の研究成果をOAにする必要があるのか?」という質問を投げかける研究者に対してよりよい答えを提供する必要がある
- 最大の障害は研究者の不安感・恐れ。購読出版と同じようにOA雑誌にのっても見返りは得られるか
- それに応えるには今までと違う方法で出版活動の質を評価することが必要
-
- 従来の研究者にとっての指標・・・インパクトファクター(引用の数に基づく)
- しかし他にもいろいろな方法を使うことが、デジタルな環境ではできる。引用だけではなくても良いはず
- 従来の研究者にとっての指標・・・インパクトファクター(引用の数に基づく)
*2013-06-10 追記 どうやら1日にあげられる容量の制限を越えてしまっていたようです(汗) 続きは翌日の記事として再掲します、気づくのが遅れ申し訳ありませんでしたm(_ _)m
*1:機関リポジトリの今とこれから…350機関/100万超コンテンツの現在とその先(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その1) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*2:博士論文は「やむを得ない事由」がない限り機関リポジトリで公開される時代(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その2) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*3:Budapest Open Access Initiative | Read the Budapest Open Access Initiative
博士論文は「やむを得ない事由」がない限り機関リポジトリで公開される時代(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その2)
前エントリ*1に引き続き、OAサミット2013参加記録その2です。
2日目・午前の時間はまるまる博士論文のリポジトリ登録・公開の話ですよ!
平成25年3月をもってCSI委託事業とSPARC Japanは共に第3期の事業を完了しました。ここで事業の到達点を確認するとともに、博士論文のインターネット公開やJAIRO Cloudの展開も踏まえつつ、未来を展望し、オープンアクセスの新たなスタートを切ります。
第2部: 9:30〜12:00
「博士論文のオープンアクセスを実現する」
前日、都内で飲んでて翌朝寝坊し(汗)
慌てて神保町は一橋講堂についたmin2-flyが目にしたものは・・・な、一橋講堂が埋まっているだと?!
今まで機関リポジトリ関連のイベントで一橋講堂に来たことは何度となくありますが、会場が埋まっているなんて状態を見たのは初めてでした。
しかも明らかに知らない顔ばかり・・・おそらくは大学の教務関係の方がかなり多くいらしていたんではないかと思いますが、博士論文のインターネット公開を定める学位規程に対する注目度の高さを目の当たりにしました。
なお、学位規則改正と学位論文のインターネット公開義務化についての詳細は以下のページ等によくまとまっているのでそちらもぜひ参照のこと。
自分はちょうど本人が学位論文に追われていたのであまりしっかりこの話題をフォローできていなかったのですが・・・
今回、参加してなるほどこういうことかと得心しました。DRFのメーリングリストで議論になっていたこととか。
以下、当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲でのメモであり、寝不足でやや朦朧としている部分が間に混ざっている点にも目をつぶっていただければ幸いです・・・スライド等は後日公開されるはずなので!
引用したり業務の参考にする際にはぜひ、公式サイトでの公開物をご利用ください!
最初に司会:岡山大学附属図書館事務部長 富田健市さんから学位規則改正にいたる経緯などの説明がありました(スライドの切り替えが早くて記録しきれず)
基調講演:「博士論文のオープンアクセス化と研究・教育」(京都大学図書館機構長 引原隆士先生)
- 学位規程・・・文科省の規程にどこの大学も従う
- 論文の数・授与手続きの問題はあるが、基本的には同じ
- 学位授与から1年以内に印刷・公開するのが今までの規程・・・ここを変えなければいけない
- そもそも博士の学位論文とは??
- 公表の有無/雑誌掲載論文数とは(本来)無関係
- 大学独自の委員会が新規学術分野の創成を評価するもの
- 研究者の学識・研究成果の革新性を判断
- 第三者(世の中)にその評価をしてもらうのが印刷・公表の役割=審査の透明化(それがうまくできていないので査読本数規程に)
- 学位論文に関する予てからの課題
- 京都大で保存しているものは準貴重書扱い
- 公開原則なのに大学内のものは見にくい
- 審査書類なのに、頻繁に廃棄されていたり処理されていたりする・・・審査の透明化をしないといけないのに・・・
- 所掌部局の問題
- 学位の審査規定は大学の核。どの部署でもサポートしないといけない。学位審査ができない大学=研究大学ではない大学。所掌を投げ合っている場合ではない
- 京都大で保存しているものは準貴重書扱い
- 要旨データの収集について:
- 学位審査を認めた調査報告書がプロセスの中で変えられてしまうことがある・・・校正や誤植、そのミス・・・2004年当時までそれが世に出ていた
- 2006年の改訂で電子版公開を原則に/2010からリポジトリ公開も
- 学位審査を認めた調査報告書がプロセスの中で変えられてしまうことがある・・・校正や誤植、そのミス・・・2004年当時までそれが世に出ていた
- リポジトリの運用:
- 指導者・学位申請者の立場から
- 学位論文データ:
- 学位申請の話:京大の場合
- 公開対象は調査報告書+本文の、教授会で承認を受けたバージョン
- 申請の流れの中にうまく電子公開許諾の手続きも入れる
- 当時にも今にも変わらない質問:
- 著作権の問題
- 利用許諾
- この流れのなかで何をしたらいい?・・・学位申請者の権利を守る+審査過程の透明化+学位プロセスの正当性の担保
- 公開後・・・
- 公開直後に5,000件ダウンロードされた論文も
- 今は先にルールを定めた工学研究科が多い/規定改定で数はいっきに増えるはず
- 義務化したところでも公開されない場合の理由
- 本にしたい/特許申請/電子化しない方がよいという周囲の進め/センシティブデータの扱い/雑誌論文の別刷なので登録できないなど・・・多くは誤解に基づく
- 学位論文公開ルール化のポイント:
- 以上を踏まえて・・・5.28に京大の学位規則改訂
- 「やむを得ない事由」によって電子公開を回避しようという人も多い/クリアできるはずのことをやっていない場合が多い
- その場合には、要約を見て本編に辿り着ける手立てを用意しておくように、とガイドラインに
- 「やむを得ない事由」によって電子公開を回避しようという人も多い/クリアできるはずのことをやっていない場合が多い
- 研究指導の考え方の変革:
- 学位論文と論文誌の評価は別
- 研究の継続性と博士論文が単独で完結していないといけないことの関係
- 研究主体の変化・・・博士課程の学生が研究/指導者は研究しているわけではないことの確認
- 論文博士の扱いの厳格化・・・今これに意味があるのか?
- 社会人博士の研究推進厳格化
- 著者間の相互関係整理=二重申請の回避
- 図書館が対応すべきこと:
- 出版者からの著作権に関する許諾手続き支援など
- 学位論文の著書出版はオープンアクセスの障害ではない、との出版者の回答
- 博士論文をそのまま出版することはない、編集する。博士論文の側をオープンにすることの障害にはならない・・・との話
「学位規則の改正について」(文部科学省高等教育局大学振興課大学院係長 立松慎也さん)
- 博士論文の公表に係る規定:
- 博士論文は作成者による印刷・公表が昭和28年からずっと位置づけられていた
- 博士論文の公表をめぐる動き・・・
- インターネット公表の要請:
- 改正概要:
- 内容の要旨/審査の要旨をインターネット利用により公開・・・学位授与機関でやる
- 本文・・・学位授与機関の協力を得て、取得者がインターネットで公表
- 「学位授与機関の協力を得てインターネットの利用により公表」=高等教育長通知で規定。「機関リポジトリによる公表を原則とされたい」
- 機関リポジトリがない大学はその整備をあわせてお願いしている
- やむを得ない事由がある場合には・・・内容の要約をインターネットで公表するのでも可
- やむを得ない事由=立体形状による表現を含むなどしてインターネットで公開できない、著作権・個人情報保護等によりインターネットで公開できない(ただし、要求されれば各大学は紙ベースで見せなければいけない。「それはいいけどネットはいやだ」というときだけが対象)、出版刊行・多重公表を禁止するジャーナルなど(これも求められれば紙は見せないといけない、それはいいけどネットはいや、という場合だけ)
- 実際のフローの説明
- 改正後の運用について・・・
- 改正に伴ってこれまで文科省に紙を提出するようお願いしていたものも、電子版でOKとしました。公印ついた紙で送ったりしなくてOKです
「国立国会図書館による国内博士論文の収集について」(国立国会図書館関西館電子図書館課長 木目沢司さん)
- 博士論文収集についての国立国会図書館(NDL)の役割
- NDLは出版物の網羅的収集が使命=博士論文の収集も使命
- S. 10に文科省から移管⇒S. 50から直接受け付けるように
- 電子的な形態に移っても網羅的に収集し続ける
- 博士論文の電子版送付方法:
-
- 「やむを得ない自由」でインターネットで全文を公開しない場合・・・それでもNDLには入れて公開する必要あり
- 電子データはある場合・・・電子データを2番めの方法で送る
- 印刷物である/立体物等である・・・改正前と同じ方法でNDLに送付を
- 「やむを得ない自由」でインターネットで全文を公開しない場合・・・それでもNDLには入れて公開する必要あり
- 以上をまとめたフロー図を説明
- 電子データの形式について:
- PDF、できればPDF/Aが望ましい
- 外部情報源(フォント等)を参照しないこと
- 長期保存のために・・・暗号化やパスワードを設定したり印刷制限設定をしないこと。長期的保存+アクセシビリティのため
- 学位授与報告書の写しの送付
- 博士論文とは別にメールで送付を(詳細は省略)
- 収集したもののNDLでの利用:
- NDLで収集するのは原則、全文
- 参考資料も送りたければ送信用システムで送付できるようにする
- 学位論文規則改定前の論文は従来通りの方法での送付を!
「国立情報学研究所の学位規則改正対応」(国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課IR担当 前田朗さん)
- 学位論文の規則改正に対してしないといけないことは2つ:
- 博士論文をインターネットで公開すること・・・機関リポジトリでの公開が原則
- NDLに博士論文のPDFを提出すること
- NIIはこの2つのことをどう支援するか??
- 機関リポジトリについて:
- JAIRO Cloudの特徴:ここは前日の記録にもあるのでそちらを参照:http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20130610/1370853762
- NDLへの博士論文本文PDF提供も支援
- NDLへのデータ提供の詳細説明
- junii2 ver3.0の説明・・・学位関係データが追加されている
- ハーベスティングの開始はスライドよりちょっと遅れるかも?
大学図書館の取り組み:
慶應義塾大学・入江さん
- 図書館は学部学科からデータを貰ってサービスする
- 各管理元がPDFを出すのが基本
- 現状:
- 継続性を重視してコストをかけずに仕事をしてきた
- 40学部、100タイトル、4万論文を掲載している。三田の主要な紀要は全部入りつつある
- 博士論文について:どうしようか考えた
- 学生部が基本になって、そこから出てきたPDFを公開する
- 今までは紙でラインが完全にできていた・・・これをリポジトリにどう載せるかも明確
- 学生部が博論をPDF/Aにして持ってくる⇒それを図書館が載せる
- 何が問題か??
- 図書館的な大きな課題:
- 現状では紙と電子がばらばらに提出される可能性がある
- これまでの紙とこれからの電子をどう一緒に探せるように扱うか??
- そんな簡単には全部電子にはならない?
- 並行期にどう運用するか?
- XooNIpsのjunii2 ver3.0対応:
- 6月には現行バージョンでの対応を公開できる?
- 9月には研究会を開催し、詳細な解説と実習を予定している
岡山大学・山田さん
-
- 主に学内の体制の話
- 岡山大では既に平成23年から学位論文登録を義務化
- H23.12
- 学内プロジェクトと博士学位論文の登録を原則義務化
- 学位授与予定者に登録許諾確認+論文データを提出してもらう
- ただし、許諾しないという選択肢も残した・・・大きな反発はなし
- まあまあ公開も進みだしている
- 学内プロジェクトと博士学位論文の登録を原則義務化
- 許諾しない理由:
- 学会誌への投稿予定/企業活動に影響/共同研究者の同意がない/未公開データを含む etc…
- 今回の学位規定改正への対応:
- 具体的な経緯のお話
- 学位規則改正後の手続き/手順の説明
- 「やむを得ない」自由の扱いなど・・・本人希望の場合は研究科長決済/出版者ポリシーの場合は図書館で調査・・・その後、学長決済
- 今後の課題:
- やむを得ない事由の判断・・・大学に委ねられていると考えて差し支えないのか?
- やむを得ない事由が解消したときのインターネット公開を実現できるか・・・修了後の学位授与者を追えるか?
- 要旨公開について・・・授与後3ヶ月後の公開を実現できるか?
- 抜き刷りに基づく学位論文など・・・NDLへの対応をどうするか?
- 全文を公開しない場合の大学での本文閲覧はどうするか??
麻布大学・増田さん
- 麻布大学・・・これから博士論文について取り組みはじめる
- その疑問点を整理して、少しでも他のこれからやる大学に役立ててれば
- 疑問点への回答はこの後の質疑応答で明らかになる??
- 改正内容・・・一言で言えば紙⇒インターネットに公開手段が変わるだけ
- 「なんか不安」というところもあると思うけど、気持ちの問題。今までほそぼそ公開していたのがインターネット公開になって誰でもアクセスできることへの不安
- その解消のために疑問点を整理したい
- 著作権処理の疑問点:
- 「既に公表」に該当する条件とは? 印刷公表していればいいの?
- 「やむを得ない事由」があるときに公開するという「内容を要約したもの」とは? 「内容の要旨」でもいい?
- 「内容の要旨」・・・許諾が得られない場合はどうなる? 論文本文と同じ扱いでいいの?
- リポジトリ登録の疑問点:
- NDLから電子データの形式についてPDF/Aに、暗号化も印刷制限もするな、とのことだが、設定してしまうと提出方法が変わる? 自動収集どうなるの?
- 論文全文、内容の要旨、審査結果の3つのコンテンツは全部同じテーブルがいいとか、推奨方法はあるの?
- 大学等での全文閲覧供与について:
- やむを得ない事由があって全文閲覧を大学が保証する場合、大学は応じなければならない? 特に特許関係
質疑応答
まずは各大学からの疑問・質問について、各関係者から回答を
文科省・立松さん:
- 1. 雑誌掲載等、既に公開されている+インターネット公表できないものは?
- 状況によるが、博士論文と全く同一のものが電子ジャーナルで公表されているなら「やむを得ない事由」にしてもいいと思う。
- 2. 「やむを得ない事由」は各大学で判断していいのか?
- アウトラインは示したとおり。それを参考に各大学で判断を
- 3. 「既に公表」は何を以ってか?
- 各学位授与機関の協力を得てインターネットで公表した、場合。印刷公表は該当しないので、印刷公表していてもインターネットで公開は義務
- 5. 「学位論文の要旨」が公表できない可能性は?
- 論文の要旨の作成は著作権法上の翻案にあたらないし問題ない。法令規定上、論文の要旨は公開するもの。研究・論文作成指導においてその充分な理解を広めて欲しい。
- 6. 大学における全文閲覧の保証について、応じないといけない?
- ここは改訂では一切いじっていない。大学は求められれば応じることが義務。特許などの心配事はあるかも知れないが、求めに応じて公表することは法令上決められている。論文指導、研究指導においてその点は注意して欲しい。
国立国会図書館・木目沢さん
- 1. 「やむを得ない事由」があるとき、抜き刷りを送っていいか、あるいは掲載料を払ってOAに、というのはどうか
- 2. 紙のものは?
- 紙のまま、印刷物をNDLに送って下さい
- 3. データ提出後に出版することになったら取り下げられるか?
- 取り下げについてはいろいろなケースがあると思う。個別に検討する。原則として、NDLで受け入れてシステムで館内公開されたものはとりさげられないが、個別相談に応じる
- 4. PDF/A推奨とのことだが、普通のPDFでは? 紙からのスキャンは?
- PDF/Aは推奨。Macからだと作りにくいし、PDFに準拠していればOK。紙からのスキャンは、できればテキストデータ付が望ましいが、紙のスキャンでも受け入れる。
- 5. 収集論文の場合、「やむを得ない事由」があってネット公開しないものを来館者に見せる?
- 見せます。インターネット公開できなくても館内閲覧はできる。どうしても、閲覧自体を拒否したい場合は個別相談を。
- 6. 暗号化等の設定をしたらリポジトリからのハーベストに影響するか?
- 収集したファイルを利用したり長期保存に、暗号化されると支障が出る。できるだけそういう措置をしないで欲しい。どうしてもリポジトリではそういう措置をする場合は、処理をおこなっていないファイルを、送信システムで送ってほしい(min2-fly:つまり暗号化すると自動収集はされない)
- 7. 3つのコンテンツの扱い
- NDLとしての推奨方法はない。NDLは全文だけが欲しいが、他のデータも持って行って欲しいならまとめて登録しておいて
続いてフロアも含めた質問
- Q. インターネット公開の場合、著者版は認められるのか? また、学協会によってはオープンアクセスになっているのでリポジトリに入れなくても・・・という場合もあると思うが、それをインターネット公開にかえていいのか?
- Q. 「やむを得ない自由」で要旨しか出せないけど著者版なら全文出せる、とかいうときはどうするのか? あるいは、リポジトリの推進についても、CiNiiに載っているものを他にも公表するのか? 建前ではない話が色々出てくる。特に医学部は著者版がダメとなると6割くらいは雑誌論文そのままなので公開できなくなるし・・・
- A. 文科省・立松さん:著者版で学位を授与している?
- Q. 出版者版は版組もしているもの。著者版は、本文や図表があって、というように、ページ数が増えていて版組もないが内容は一緒、というようなもの。
- A. 文部科学省としては、博士の学位をどの論文で審査し授与したかの規定。そのため当該論文の公開を求めたい。著者版に対して学位を授与しているわけではないですよね? 学位を授与した対象論文を公開して下さい。
- Q. その場合、審査の場合は著者版かもしれないし出版者版かもしれない。著者版で審査したらそちらを出さないとおかしい、ということ?
- A. 状況によるが、学位審査をする場合、何でもって学位を与えたかが対外的にわかる形で公開してほしい。
- A. 京大・引原先生:医学系に難しい問題があるのはわかるが、著者版で学位を承認されたらそれでいい。学位を何で認めたかが重要な点。出版後に内容が変わっていようが著者版で学位を出したならそれを登録すればいい。「要約」というのは内容がわかるものであって要旨とは別。学位審査を終えた段階で出されたもの+要約+要旨が同時性を持っていないといけない。書き換えがあれば、それは改竄。
- 司会・富田さん:各大学が審査したもの、それを以って学位が与えられる。実際は色々あるだろうが、原則はそうなる。次に、OAにすでになっているものともう1度、というのは? リポジトリという点では意義があるが、先生方がわざわざお金を払ってOAにしたりしたものなら、もう一度リポジトリは厳しいと思うが・・・そこを形式的に縛ると先生方の協力が得られなくなるのでは? 運用がはじまってケースが増えてきたらまた検討を。
- Q. この制度を積極的に活用・実効性のあるものにしたいので7月に教員向けに説明会を行なう。その際に、この制度で博士論文をインターネットで公表することが、大学・著者にとって不利益をもたらさないこと、利益をもたらすことを示す必要がある。そこで、特許の関係で不安とよく言われるのだが、もう少しそこを詳しく。
- A. 引原先生:学位審査の課程で公表の審査会を行なうはず。その時点で、特許の30条規定にあたって「公開した」ことになる。なので、特許申請した段階で却下される。大学としては、学位審査の前に特許をとる必要がある。また、学位審査と特許は別なので、特許が心配ならそこは学位論文から外さないといけない。どうしても特許と学位審査を同時にやるなら、公開後6ヶ月以内に特許申請できるように知財担当部署に事前の連絡を。
- Q. メリットについて。インターネット公表すればアクセシビリティがあがるが、NDLには全ての情報が集まることになる。それをポータルのような形で公開しない?
- A. NII・前田さん:ポータルの要求はあったんだけど予算がつかなかった・・・
- Q. そもそもNIIには全部の情報いかないですよね? なら、なんらかの形で、NDLがどうせ集まってくる情報をなにか見せたりしないの?
- A. NDL・木目沢さん:そういうニーズは存じているので検討したい。
- Q. 知財に関して。自分の大学には複数大学連合の研究科があるのだが、学位申請した方の大学で博士論文を登録してリポジトリに公開すると思う。一方で、A大学とB大学の両方が関わっている研究に基づいて、両方の大学でリポジトリ登録することは可能? その場合、NDLはどうなる?
- Q. 京都大学の引原先生のお話の中でデータのタイムスタンプのことを考えていなかったのではっとしたのだが、junii2の改修で学位授与日が入るが、タイムスタンプというのは学位申請の時点かのように聞いた。授与日とイコールにならないはずで、申請日のメタデータも持ったほうがいい?
- A. 引原先生:微妙なことにお気づきになられた。本申請の段階でデータはいったん上がって中身は確定するはず。確定していないのは調査報告。申請後に調査報告が終わって評価が定まる。論文は申請時のまま。そこがグレーなのはわかっている。そうするとタイムスタンプはずれる。つまり誰かがeditingしていて、そこと学位審査は別。教務のプロセスとしては申請時に中身は確定し、学位を教授会で承認した時点ですべて確定する。以後の改竄はないはずなのだが、今までは曖昧だったことは知っている。
以下、やり取りがあまりかみあっていなかったようですが、質問の意図としては従来の規程(雑誌や図書の形で等で既に公表されているものは、学位取得後に再度、印刷・公表する必要はない)と、新規程(雑誌・図書の形で公表されていても(たとえ電子ジャーナルがあろうとも)、インターネットで学位授与機関の協力を得て公開されていないものは、学位取得後に学位授与機関の協力を得てインターネット公開するか、やむを得ない事由があるとして要約公表にするか)で制度の根本がだいぶ変わっていることの確認である、とのことでした(と、あとで聞きました)。
最後まで質問が尽きないまま、博論OA化に関する第2部は終了。
一番最後に書いた部分ひとつとってもこの先しばらくは解釈とか「こういう場合は?」とか議論・事例が尽きなさそうです。
それにしても、今回の参加者数や顔ぶれを見ても、この博論のリポジトリ公開義務化の話は、機関リポジトリが図書館業界の枠を超えて、日本の大学全体における認知度・その重要性への認識を高める好機だよなあと思ったり。
きっととんでもなく大変で今後ご苦労も多いことかと思いますが、ぜひ日本の大学図書館/リポジトリ担当の皆様にはここを好機とがんばっていただきたい・・・とか他人ごとのように言ってていいものでもなさそうですが。
本件でお手伝いできることってなんかあるのかな。
あ、博士論文をリポジトリに登録するとすごくアクセス数伸びますし、一般のかたのブログで引用されてたりもするので、コンテンツとしてすごく魅力的なのは間違いないです。
査読論文そのままでないにしても、多くの博論は論文を下敷きにしているわけなので、結果的にグリーンOAに近い状況も実現できるわけですし、それが今後ずっと登録され続けるとすると日本の機関リポジトリ、マジ半端ない。
あとは検索の手立てを何か用意出来れば・・・できれば既存の文献探索ツールの中に、それも日本でトップクラスで使われているやつの中に取り込んでくれるといいと思うんですけどね・・・(チラッ
さて、これにてOAサミット・主に機関リポジトリよりの部は終了。
午後は第4期に突入してスタイルも新たになったSPARC Japanセミナーですよ!
以下、次エントリへ。
機関リポジトリの今とこれから…350機関/100万超コンテンツの現在とその先(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その1)
下手なこと*1は言うもんでなし。
すっかりご無沙汰の更新ですが、別に閉鎖あるいはブログ休止していたわけではないのです。
ただ、日常業務に追われてなかなかイベントに参加しなかったり、参加しても書かなかったりの結果、ずいぶん更新をせずに今に至っただけで…いやいやいや。
大学教員、思った以上に忙しい(汗)
そんなわけで、久方ぶりのイベント参加記録も参加からずいぶん日数が経ってしまいましたが。
2013/6/6〜6/7にかけてNIIで開催された「オープンアクセス・サミット2013」に参加&発表して来ました!
平成25年3月をもってCSI委託事業とSPARC Japanは共に第3期の事業を完了しました。ここで事業の到達点を確認するとともに、博士論文のインターネット公開やJAIRO Cloudの展開も踏まえつつ、未来を展望し、オープンアクセスの新たなスタートを切ります。
SPARC Japanは第4期に入っていますが、機関リポジトリに関する活動を推進してきたCSI委託事業は平成25年3月で終了です。
自分が研究者的に物心ついたころ(2007年くらい)にはもう既に存在し、ご縁もあって自分も関連分野に関わって2009年には報告交流会で発表の機会もいただき、ついには博士論文にまで至ったという活動が終了というのはなかなか感慨深くもあります。
それにしても、最初の安達先生の基調報告にもあるとおり、現在、機関リポジトリを設置している、あるいは準備中の機関の数は350を超えているそうです。
機関リポジトリが日本で認知されだした当初、10年後にそんな数になっていると予想した人がどれだけいたのか。
午後最後のセッションでネタにもされましたが、自分は2009年の時点で、日本の機関リポジトリは150機関(国立大学+公私立のいわゆる研究大学的なところ+主要な国立研究所くらい)くらいでいったん頭打ちになるだろうと思っていました。
まさか4年後、その予想の2倍以上になっているとは・・・。
そんな感じで大きな成果を生んだCSI委託事業やJAIRO Cloudの話を中心に、機関リポジトリの現在の到達点と、この先どうするかを考える、というのがOAサミット初日の内容でした。
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲でのメモであり、数カ月ぶりのイベント記録で腕がなまっていることまで含めてご理解の上、ご利用いただければ幸いです。
誤字脱字・事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等でご指摘ください。
なお、一番最後のセッション、NIIの山地先生がサンデル教授ばりに大活躍する 「これからの「リポジトリ」の話をしよう」については、自分が講演者の一人であったこともあって記録をとれていません(汗)
これについては、後日映像がNIIのサイトで公開されるそうなので、それを待っていただければー。
では以下、まずはNII・安達先生の基調報告から!
基調報告「 「OAの潮流と機関リポジトリ」」(国立情報学研究所学術基盤推進部長 安達淳先生)
- NIIで仕事をする立場から、機関リポジトリについての考えをお話したい
- NIIではCSI事業の中で機関リポジトリを重要な課題と位置づけ、200以上の機関で運用している
- さまざまな情報を他のサービスと組み合わせることで研究者・学生に提供しようとやってきた
- 我が国の研究者・学生の置かれた状況・・・
- 研究成果については強く言われるが、大学の研究者にとっての成果は論文
- 社会的には製品とかも成果として求められるが、論文として流通することが今の学術の基本的なあり方
- 日本の研究者、特に理工・生命医学は国際的に活躍していて、例えばWeb of Scienceに載った論文の8%を占めている
- 日本の学会による電子ジャーナルも一定の大きさはあるが、国際学術出版社の雑誌が大部分を占めている
- 欧米レベルで活動している側面
- 研究成果については強く言われるが、大学の研究者にとっての成果は論文
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- 日本語/国際レベルの流通の両方を見なければいけない、というのが現在の状況
- 機関リポジトリの側面をあえて2つに限定してみると・・・
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- オープンアクセス(OA)が大前提・・・OAでない機関リポジトリは存在しない
- お金をとってデータを公開、とかは考えない
- オープンアクセス(OA)が大前提・・・OAでない機関リポジトリは存在しない
- 現在のOAの論点
- 現在の日本の機関リポジトリの状況
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- コンテンツ数は順調に伸びている=機関リポジトリが増えるとコンテンツの数も増える
- 蓄積は順調に進んでいる?
- コンテンツ数は順調に伸びている=機関リポジトリが増えるとコンテンツの数も増える
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- 捕捉率の試算(概算)
- 紀要は存在するものの半分は機関リポジトリに入っている?
- 学位論文は6%程度だが、今後は制度化されるので100%に近くなると期待
- 学術雑誌論文は、Web of Scienceベースで計算すると3〜5%の捕捉率
- 努力している大学では13%の捕捉率、という場合もある
- どういうコンテンツをどう搭載するか、各大学の考え方があらわれる
- 捕捉率の試算(概算)
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- JAIRO/IRDB対象機関数の推移
- データをハーベスティングして検索・統計作成等できるようにしている・・・ぜひ申し込んで!
- JAIRO/IRDB対象機関数の推移
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- 現状・・・私立大学からの申請が多く、71の機関リポジトリが現時点でCloudで公開されている
- 先週、ハードウェアトラブルでCloudが止まってしまい、ごめんなさい。今後はこれをベースにより信頼性の高いサービスをやっていきたい
- cloudは発展途上の技術でもあり、十分な経験がなかった。安定運用にはノウハウが必要と痛感した
- そこは努力していくので、ぜひサービス構築のためのプラットフォームとしてJAIRO Cloudを考えてほしい
- 現状・・・私立大学からの申請が多く、71の機関リポジトリが現時点でCloudで公開されている
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- 2012⇒2013の変化:
- CSI委託事業を終了した最大の理由:量的展開についての目的は達成した!
- JAIRO Cloudは今後拡大していく・・・既に機関リポジトリを運用している大学も使えるように/移行できるようにしたいと検討中
- 既にある機関リポジトリを移行する方が色々大変。そう簡単にできるものではない。Trialしながらスムーズにできないかを、技術・手順・作業それぞれ検討しながら進めたい
- OAの推進・・・機関リポジトリのプロジェクトではあまり前面に出さなかった
- セルフ・アーカイブはかなり大変な仕事。機関リポジトリをセルフ・アーカイブの場と言ってしまうと、その推進を旗印としては運用上の困難が生じると考えた
- 欧米に比べると日本はOAの動きが遅い。極めて上のほうで掲げるだけで、具体的な施策が出てこない。例えば科研費の成果論文をセルフ・アーカイブせよ、ということなどは、議論はされるが先送り
- 唯一定まったのが博士論文の機関リポジトリ搭載。欧米では助成研究の公開は制度化されているが、それほどはセルフ・アーカイブは進んでいない
- OAをどう推進するかを考えなければいけない。例えば学部・全学レベルでのOA推進を宣言する大学等もあるが、日本ではそれは皆無
- 研究者へのアプローチが全くできなかった。そもそも図書館が研究者とちゃんとやれているか、ということもあるが、少なくとも機関リポジトリではできていない
- コミュニティの発展がどうなるかはまだよくわからない。少なくともNIIのプロジェクトに参加して機関リポジトリの数は増えたが、次の新しい手を打たなければいけない
- 質的な向上・・・機関リポジトリコミュニティではあまり言われていないが・・・
- つねに重視していただきたいこと:
- Gold OAが主流にのってきた・・・PLoS ONEのようなOAメガジャーナルの普及
- 個人的には・・・OAの期限は価格が高騰する雑誌に歯止めをかけるためのものと認識している
- それに加えて納税者への説明責任等の考えも出てきた
- 登録義務化をやるという段階に我が国も達している
- 明日、アメリカのSPARCのdirectorが講演するが・・・
- 研究者はImpact factor等がつけばすぐ行動を変える
- 学術コミュニケーションの変革をSPARCはずっとやろうとしてきた。現時点ではそれをOA推進として位置づけてきたが、研究者の認識とはずれている
- 研究者はOAでも購読モデルでもどっちでもよくて、自分の成果が評価されればいい
- インパクトファクターの撲滅宣言(DORA)というのも出ていて、IF算出元のトムソン・ロイターすら理解を示しているが・・・
- 研究者はIFとかでふらふら動く存在。そういう人々にどうアプローチするかも含めて機関リポジトリやOAを考えてほしい
- 機関リポジトリだけでもOAモデルだけでも学術情報流通は回らない:
- 購読モデルも含めたいろいろな道具立てを使って、リーズナブルが学術コミュニケーションを実現して行かないといけない
「JAIRO Cloudの概要と平成25年度データ移行実験について」(国立情報学研究所 学術基盤推進部 学術コンテンツ課長 相原雪乃さん)
- 最初に・・・先日のトラブルではご迷惑をおかえし、本当にごめんなさい
- 今後はこういうトラブルが起こらないようにする
サービス概要
-
- NIIはネットワーク・ハードウェア・ソフトウェアを用意・・・システム環境を提供
- 各大学はコンテンツを登録したりユーザインタフェースを管理するだけでOK
- NIIはネットワーク・ハードウェア・ソフトウェアを用意・・・システム環境を提供
-
- 詳細:
- 当面、利用料は無償
- 24h / 365d
- 使えるソフトウェアはWekoのみ
- 詳細:
-
- データ保管について・・・コンテンツの最終責任は各機関にお願いしたい
- バックアップを忘れずに持っておいてね!
- データ保管について・・・コンテンツの最終責任は各機関にお願いしたい
-
- 使用ソフトウェアWeko・・・NIIの山地先生(午後に登壇)が開発
-
- コンテンツ登録は簡単にできる! 画面変更もメニューから簡単に!
- 申請すればCiNiiやJAIROでの検索も可能に!
- コミュニティサイトでニュース・マニュアルが共有可能。「フォーラム」機能で参加機関同士で質問しあったり助け合うことも
- テストサイトも完備/システム講習会も実施!
- min2-flyコメント:なんかHDDとかちょっとした機器の箱に書いてある謳い文句みたいになってきたな・・・
- コンテンツ登録は簡単にできる! 画面変更もメニューから簡単に!
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- JAIRO Cloud利用状況:
- 公開済み/公開予定あわせて118機関
- Wekoは今後も機能を拡充・追加予定
- JAIRO Cloud利用状況:
移行実証実験
-
- 既にある機関が乗り換えるための実証実験中
-
- 筑波大/千葉大が参加中・・・他もスケジュールを見て調整中
- 利用機関の多いソフトウェアを優先に移行ツール開発中
- 実験参加=移行決定、ではない。各機関のやりたいことが実現できないかも。それらも洗いだしながらチャレンジしてもらっている
- 筑波大/千葉大が参加中・・・他もスケジュールを見て調整中
min2-flyコメント:移行はいいと思うけど、移行時にリンクを従来のものから変えるとかわけのわからないことは絶対にしないでいただきたい
JAIRO Cloudの活用事例報告
京都ノートルダム女子大学:森雅子さん
- 登録数もそれほどないし特徴もないのだが、いろんな規模の報告・事例でいいとのことなので
- 予算等がなくても公開できたのはCSI事業のおかげでもある。感謝の気持ちも込めて報告したい
- 京都ノートルダム女子大学の説明/図書館の説明
- 予算も人手もなかったが、CSI事業の領域1, 3 + JAIRO Cloudによって公開に至る
- 京都ノートルダム女子大学のリポジトリは職員からのボトムアップで構築
- 現在・・・学内刊行物の電子化・登録を進める
- 紀要+図書
- 今後・・・
- 登録件数増加
- 学術雑誌論文登録
- 公開環境整備
- ユニークなコンテンツ
- リポジトリを活用して出版新事業を
- 予算をかけなかったことは忘れられやすいので継続した広報活動を
神戸市外国語大学:谷本千栄さん
- 神戸市外大の説明
- リポジトリ構築の経緯:5年以上前から検討⇒予算確保に難航して具体的に進まない
- JAIRO Cloud構想を聞いて一気に構築の機運が高まる!
- 2012.8に試験運用⇒2013.4に正式運用
- 費用がかからない+タイミングがJAIRO Cloudの採用に踏み切った理由
- JAIRO Cloud・・・工夫次第で独自性のある画面も構築できたり
- CSI事業として・・・2012年度に受託して紀要を電子化
- 紀要電子化の費用を学内研究会から寄付してもらう機会も
- 構築後は色々いっきに動き出す
- 紀要発行部署からは図書館が戸惑うほどの協力
- PDF仕様の希望を伝えると「図書館が思うように」ということに。印刷業者とも直接対話
- 博士論文・・・大学院事務の担当部署で許諾書を同時に渡してもらえるように
- 許諾書は100%回収/本文登録は芳しくない(図書としての出版希望のため)
- 教員連携・・・部会メンバーが積極的に協力・コンテンツへのアドバイスへも
- 学会発表資料についての登録を依頼したら分野によって公開ニーズの有無があることを聞いたり
- 登録による効果・・・
- 国際学会紀要を登録したら多くのアクセス
- ILLの受付件数増加
- 紀要発行部署からは図書館が戸惑うほどの協力
- 今後:
- 紀要の投稿規定でリポジトリ公開を明文化する
- 紀要以外のコンテンツを充実する
- 学内の認知度向上
- JAIRO Cloudのちからとして感じること:
- リポジトリ運用は大変だけど、学内他部署との連携やOAへの貢献など、苦労以上に楽しいことが多い
質疑応答
- Q. 神戸外大さんに。情報処理センターと図書館の連携はどうやっている?
- A. 所属が学術情報センターなのは、自身の所属は図書館部門で、情報センター・・・ではない。センター内に情報メディア班と学術情報班、図書館の班があって、私はそちらにいる。他部署との・・・情報メディア班との連携はあまりない。ただ、報告中にあったとおり、紀要発行部署等との協力はある。
- Q. 信州共同リポジトリに。共同リポジトリは鹿児島でもやっているし広島など先行事例もあって、中心大学がサーバを構築して地域が参加するものが多い。信州ではサーバ等の自力構築は検討した? JAIRO Cloud選択のメリット/デメリットは?
- Q. 鹿児島でも地域共同リポジトリはあるが、それに載っているところとJAIRO Cloud利用が混在していて、いろいろ考えたい。またお尋ねしたい。
- Q. システム移行の件について。例えば大学によっては「ここは移行できるがここはカスタマイズしすぎて移行できない」ということもあると思う。部分的移行という選択肢はある?
- A. いろいろなケースを試していないのではっきりしたお答えはできないが、コンテンツの部分的な移行・・・?
- Q. 例えば紀要はすぐ移行できるけど業績報告書はすんなりとはいかない、など。やりやすい/にくい部分があると思うが・・・特にカスタマイズしているところではあると思うが・・・全部移行しないとだめなら独自でやることになると思う。先行大学ではそういう問題があるのでは?
- A. これからいろいろなケースを検証しながら考えて行きたい。「こう動きます」とは現段階では言えない。
- Q. (安達先生):ノートルダム女子大と神戸市外大について。大学の規模に対してうまくやられているようで興味深かった。質問は、今年度からこういう作業を継続してやっていくときに、小さい部署だとおそらく人にどう仕事をしてもらうかが一番、頭がいたいのではと思う。単純に今までの仕事の他にリポジトリの仕事が増えたわけだが、それをどうこなしている? サポートはある?
-
- A(神戸市外大):他の業務も担当しながら時間をやりくりしていたので時期によって作業のむらがあった。毎日1〜2件でも登録して行きたい。今年度は別業務の担当になったのだが、1年かけて引き継ぎをしながら、図書館内に私以外にもリポジトリがわかりコンテンツ登録できる人を増やしていこうと考えている。ルーチン化・業務内への取り込みは今後の課題と考えている。
昼休み
セッション2: 「CSIの現状の到達点」
先導的プロジェクト(領域2)の実績報告
金沢大学「国内の機関リポジトリへの著者識別子登録機能の実装の推進とその課題」(橋洋平さん)
- 事業の目的:
- 名寄せ:改姓や表記ぶれしている場合でもまとめて集められる(違う名前の同じ人をまとめる)
- 識別:同姓同名の複数人を区別する(同じ名前の違う人を区別)
- JAIROで集めてきた著者について、機関を超えてリストを作るのがまずは目的
- 金沢大学での実証実験
- 複数大学での実証実験
- JAIROの著者検索機能の強化・・・デモ
- 違う大学で登録された同一人物の業績が一括で出てくるように
- 完璧には付与できないという課題も
- JAIROの著者検索機能の強化・・・デモ
- なかなか普及しない・・・課題と展望を探る必要⇒アンケート実施
- 機関への質問・・・カスタマイズが必要なことが普及を妨げる/情報不足への指摘も
- システムについて・・・Weko利用期間が最近増えている/それを抜きには今後は考えられない
- DSpaceのバージョンでは・・・識別機能が使えるものを使っているところが多いけど、普及せず
- 研究者向けの質問の結果・・・同姓同名で困るという話が寄せられる
- 必要性・・・あればよい、という微妙な回答が多い
- この微妙さが問題??
- まとめ:課題と展望
- 受け入れの素地はあるが、研究者リゾルバ/著者IDの広報や国際動向の啓蒙が要る
- 各館単位でのサポートは困難なのでそれはなんとかしないと
- Wekoへの期待高し
千葉大学「機関リポジトリアウトプット評価の標準化と高度化(ROAT)」(武内八重子さん)
- 2010〜2012年度の活動:
- アウトプット評価システム=ROATの運用
- ROATの統計処理方法の検討
- アウトプット評価に関する情報交換・情報共有の実施
- 再検討の結果・・・ROATシステムの提供終了へ
- ROATの運用:
- ここでいうアウトプット評価とは・・・登録コンテンツ数=インプットに加えて、それがどれだけ利用されたか=アウトプット評価、と定義
- 例えば・・・大学ランキングでもダウンロード件数が扱われている。それがアウトプット
- ただし比較の常として、同じ基準・方法で算出されたものである必要がある・・・今のところはあまりはっきりしない基準設定
- よくあるのはアクセスログ分析に基づくものだが、それをどう処理するかの問題など
- ROATでがその処理方法等を考えるのが主旨で、その実装がROATシステム
- ここでいうアウトプット評価とは・・・登録コンテンツ数=インプットに加えて、それがどれだけ利用されたか=アウトプット評価、と定義
- 運用しながら・・・内容処理方法の正しさも検討
- 例えば・・・重複カウントの制御方法について、COUNTER等で定められている基準は正しいか?
- あまり意味がない基準になっている? 見直す必要はあるかも
- 利用者数・利用時間など、利用者単位の集計方法も検討したが・・・説明は省く
- 国際会議の開催/海外のセミナーに参加
- 報告書の作成・公開・・・現在は日本語版本編のみ公開/付録・英語版も調整中
- 例えば・・・重複カウントの制御方法について、COUNTER等で定められている基準は正しいか?
- さまざまな検証を終え・・・一定の貢献は果たした、と考えシステム提供終了
- 利用機関でロボットリストが欲しいところなどは声をかけて
- 今後・・・真っ白
- 利用に関する指標が比較できる形で入手できることをきちんと考える必要はある
- 今後も継続的に議論が必要と思うが・・・プロジェクトとして? 日本のリポジトリとして??
九州大学 「文献自動収集・登録ワークフローシステムの開発」(馬場謙介先生)
- プロジェクトの目標:リポジトリ登録論文数を増やしたい
- アプローチ:
- A. 著者に直接お願いする
- 外部のDBで探す⇒メールで提供をお願いする
- B. リポジトリ管理者の作業効率を上げる・・・先生方がOKしても作業時間がかかると増えない
- 論文登録作業を定式化/自動化できる部分は自動化/SCPJ等とも連動
- A. 著者に直接お願いする
- 開発したシステムの検証・評価結果
- 実際の画面の紹介等
- 教員への登録依頼への回答率は27.1%。もうちょっと頑張ればよくなりそう?
東京大学 「博士論文発信支援パッケージ開発プロジェクト」(小松陽一さん)
- 博論を増やすには??
- 登録しやすいこと(本人/図書館員)
- 利用促進
- コンテンツの充実=遡及登録で実績を積んで利用を伸ばす
- 結論:決定的な解決策はない!
- 博士論文は学位規則の変更で登録は基本的にされる。プロジェクトの意味が薄れた
- 今は・・・これからどう対応するか? 登録処理をどう効率化するか?
- プロジェクト自体ははじめての機関の検討材料になれば
- 「解決策はない」詳細
- 年1200-1300の博論のうち、登録できたのは1割程度
- プロジェクトで増えはしたが、網羅するには程遠い
- その原因・・・登録が任意である状況/いくら説明しても事務的な協力が得られにくい
- 学位申請が論文を出す直前にあるが、その手続きに入れてくれるかがポイント。学務・教務に説明しても「任意でしょ」となると協力を得にくい。「手がいっぱいでやりたくない」、「様子を見たい」という反応
- リポジトリの意義に賛同する著者もいるが、諸々の理由で公開したくない/載せたくない人が多い
- 特に人文系が出したがらなかった
- 現状、4,700件の登録があるが、大半は遡及登録
- 書式も一式作って部局にお願いしたりもしたが・・・その中で収集についても2つ考えた
- 事務的な協力がなくても受け口を用意する:利用者向けの登録インタフェース
- もう1つは・・・部局の事務手続きの中に入れてもらうフロー
- 利用促進について・・・検索インタフェースを作って特有の項目を探せるようにしたり
- 許諾確保・・・何年もたってからやると回収率が悪くなるので2〜3年で!
コミュニティ(領域3)の実績報告
名古屋大学「名古屋・東海地区における機関リポジトリコミュニティ形成の支援」(端場純子さん)
- H22-23に近畿地区でやっていたものを東海地区で引き継いで行なったもの
- 目的:学術情報のOA化推進
- そのために・・・担当者同士で気軽に情報交換のできる、顔の見える有意義なコミュニティを形成する
- 実施内容:
- 連続研修会の実施
- 機関訪問
- 平成24年度・・・名古屋・東海地区での実施(3回)
- 連続研修会・・・毎回基調講演+事例報告+質問大会で実施
- 成果:
- 参加者は毎回いる
- 構築状況・・・構築済みだったり準備中だったり
- 参加者アンケート感想・・・思った以上に好評
- 今後の課題:
- この機会にできたコミュニティを今後どう維持・発展させるか
- MLの要望が多かったので現在実施中
- この機会にできたコミュニティを今後どう維持・発展させるか
広島大学「機関リポジトリ担当者の人材育成」(松本侑子さん)
- min2-flyコメント:松本さんはこの4月に就職された新人の方だよ!
- ShaRe2 + 人材育成プロジェクトを整理・統合・・・平成23年度から広く人材育成を担うプロジェクトに
- 事業の成果:
- 短期間で技術・知識を習得したり情報共有ができた+人的ネットワークが形成できた
- 機関リポジトリ数/公開機関数ともに急激に増加中
- 今後も運営担当者の知識・技能の維持・向上のために研修事業を継続
- JAIRO Cloudシステムの講習会との区別や連携/他業務との兼任や異動のある制度の中で専門性・横断性を維持するのか
北海道大学「機関リポジトリコミュニティ活性化のための情報共有」(三隅健一さん)
- メインの活動:
- MLの運営
- 海外文献の翻訳
- 月刊DRFの刊行
- OA Weekで日本のOAを盛り上げたり
- 活動詳細
- ML・・・アーカイブも公開
- ウェブサイト・・・国内の役に立つものになるのを目指して色々情報を発信/英語版ページで海外に向けも情報発信
- 翻訳隊・・・有志によって月刊DRF英語版を作ったり、海外文献の邦訳をしたり。BOAI10の日本語版作成に貢献したり(with 愛知大学 時実先生)
- オープンアクセスウィーク・・・活動の呼びかけやグッズ作成・記録写真公開(写真とOAWについて紹介)
- ワークショップ・・・図書館総合展で全国ワークショップを開催やテーマ別ワークショップなど
- 国際連携活動・・・オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)への参加や国際会議への参加・発表、英文パンフレット作成、海外のリポジトリコミュニティとの接近など
筑波大学「オープンアクセスとセルフ・アーカイビングに関する著作権マネジメント・プロジェクト(SCPJ)」(真中孝行さん)
- SCPJについて:http://scpj.tulips.tsukuba.ac.jp/
- 平成24年度の活動
- はじめてワークショップを開催・・・30名ほどが参加
- 担当者との情報交換/意見共有
- 講師派遣/DB機能拡張など
- ほかにもいろいろやっている
- 継続調査の結果・・・リポジトリ登録可能な方針を持つ学協会の割合は増えている
- 学協会関係者との意見交換
- インタラクティブに電話口等で会話したりも
- DB機能拡充も色々
- 今後の課題:
- 「僕と契約してSCPJスタッフになってよ!」
質疑応答
- Q. 九州大学へ。このシステムは最終的に先生方に依頼するためのもの?
- A. そう。
- Q. その仕事はシステムで省力化されたり件数は増えた?
- A. 件数は増えた。省力化は・・・一度に6,000件とか送っているので、手作業ではできない。
- Q. 筑波大・真中さんへ。学位規則改正で図書館への質問が増えている。学内事務からリポジトリ関連の質問が増えていて、特に多いのは著作権処理の話。博士論文が投稿雑誌論文だったら、という問い合わせが増えている。SCPJについて事務方に話す機会も毎日ある。そこで聞きたいのだが、全国的に図書館現場でそういうケースが増えていると思うが、SCPJとして博士論文の取り扱いに関して調査等することは考えていない?
- Q. 執筆者が自力でやるにしても図書館に相談に来ると思うし断れない。みんなでがんばりましょう。
- Q. 機関リポジトリを今後も発展させ使いやすくするために、という観点で興味深く聞かせていただいた。その中でROATとか自動登録のメールシステムとか東京大学・小松さんの学位論文を部局で登録してもらうためのワークフロー資料を作ったとかいう話があった。これから自分の大学でもやろうと思っていることばかり。これは、見たい場合、手に入れたい場合はどうしたらいい?
- Q. 著者ID等の付与状況の詳細確認
- A. 学外にいる共著者や、退官した教員の分が抜けている関係で37%くらい。
- Q. 今、所属している学内の先生にはIDがついているのだと思う。しかし学位論文を入れるようになると、膨大な人数になると思うが、どうする?
- A. その部分は今後の課題。科研費番号を付与する基準とかが変わることはあるのだろうか・・・なんとも言えない。
初日の記録はここまで。
あとは冒頭のとおり、最後のセッションは自分も参加してたので記録はとれませんでした。
後日スライド等もNIIのサイトで公開されるはずなので、公開後にリンクを追記しようかと。
初日もずいぶん盛り上がり、後の交流会でも楽しいひとときを過ごしたのですが。
このときは想像もしなかったのです。
まさか2日目、あんな光景を目にすることになろうとは・・・(以下、次エントリ!)
学位取得・筑波大学修了のお知らせ
前回エントリ*1をアップしてからはや、一ヶ月半が経ち、新年度に入ってしまいました。
春は出会い・別れ・旅立ちの季節と言いますが、図書館界でも様々な方が4月からの転身を発表されていますね。
1つずつにリンクを貼って貼り忘れがあると怖いので貼りませんが・・・一番の話題は[twitter:@hayashiyutaka]氏のカレントアウェアネス・ポータル卒業でしょうか?
2年間、本当にお世話になりましたm(_ _)m
カレントアウェアネス-Eの記事執筆について、的確なネタを選んで投げてきてくれるhayashiさんがいなかったら、自分の博論の文献レビュー部分は時局に全然ついていけていないものになったのではないかと思います。
もちろん、日々のカレントアウェアネス-Rや本誌で提供いただいている情報が大いに役立ったことも言うまでもありません。
いきなり他人の転身の話から入りましたが(苦笑)
博論と言えば、実は自分も4月から大きく環境が変わることになりました。
まず、Twitter等では報告していましたが、提出していた学位論文について無事、審査を通過することができ、去る3/25に博士(図書館情報学)の学位を筑波大学からいただきました。
博論本文はさっそくつくばリポジトリにアップされていますので、興味がおありの方はぜひ、御覧ください。
ちなみに内容の要約は以下の様な感じです(筑波大学図書館情報メディア研究科パンフレット掲載予定原稿をブログ向けに改編)
機関リポジトリとは、大学・研究機関が構成員の生産したコンテンツを、インターネットで収集・管理・発信する試みである。
日本において機関リポジトリとその登録コンテンツは数を増しており、公開コンテンツ数は100万件を超える。
本研究の目的は、これらの機関リポジトリがコンテンツ入手元として果たしている役割を、コンテンツの利用と利用者に及ぼす影響の観点から明らかにすることである。
本研究では機関リポジトリの役割を
- コンテンツが機関リポジトリ登録以前から電子的に公開済みのものか登録に際し独自に電子化されたものか、
- 想定利用者は研究者・学生か/それ以外の市民か
という二つの軸に基づき整理した。
さらに整理した各役割の実現状況について、
という五つの手法に基づいて分析・検証した。
分析結果から、機関リポジトリはこれまで電子化されてこなかった人文社会系・紀要論文の電子提供に大きな役割を担うと同時に、市民に対する学術文献へのアクセス提供の場ともなっていることがわかった。
一方で、研究者による論文利用においては、専門のデータベースからのリンクが少ないこと等の問題があることもわかった。
冒頭でも博論に関する謝辞を述べましたし、リンク先の博士論文本文の最後の方にも記載していますが、この研究・論文は本当に多くの方の支えによって成り立っています。
そもそもデータが様々な方のご協力の下で得られたものですし、自分自身、周囲の人との関係の中で研究テーマを見つけたり、やる気が湧いてくる人間でもあり、一人ではとても博士論文を完成させることはできなかったでしょう。
本文中では直接的に各研究テーマや論文執筆・修正に関わっていただいた方のみを挙げさせていただいていますが、実際にはこのブログを閲覧してくださっている皆さんも含め*2、お世話になったすべての方あってのものと思っています。
ありがとうございました。
そんなわけで学位を取得し、ついに学部から数えて9年、在籍していた筑波大学を、この3月限りで離れることになりました。
幸いにして学位取得後1年目から、大学で教員職を得ることができ*3、既につくばの土地も離れております。
色々あって思い入れも大きい大学ではありますが、どのみちこの業界に身をおく限りは何度も足を運ぶことになるものと思いますし、関係各位は引き続きよろしくお願いします!m(_ _)m
*1:自らも財政が厳しい中で図書館によるオープンアクセス財政支援を考える:「図書館によるオープンアクセス財政支援」(第7回 SPARC Japanセミナー2012 参加記録) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*2:実際、ブログ更新の原動力は読んで反応してくださる方がいるからですし、じゃあ書こう・・・と思って毎回イベント記録をとったりしていたからこそ、多くの内容を聞くだけでなく吸収したりすることができたと思っています。より直接的には、このブログでの記録以外に記録の残っていないイベントについて、しょうがないので引用したりもしています・・・なんかマッチポンプ感がありますが(汗)
*3:まだどことは明かせないのですが
「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」は永遠に不滅です!
新たな身分を得たことに伴って、このブログも今までのようには続けられなくなるものと思います。
2007年2月に始めたので、既にはじめて6年・・・最初の頃はただの日記みたいな内容も多かったものが、いつの間にか図書館系の時事ネタについてデータを分析したり自説を述べたりするブログになり、さらに後には図書館系のイベント記録をひたすらアップするブログになってみたりと紆余曲折を経てきましたが、なんだかんだで続けてこれたのは上にも書いたとおり、読んでくださる皆さんのおかげです。
図書館界隈/学術情報界隈で多少なりとも名前を知っていただけたのもこのブログあってのことで、自分自身の愛着も深いものがあります。
いろいろと後に学生さんに見られると恥ずかしい記事も満載ですが(大汗)、まあ「と、当時は学部生(あるいは修士1年)だったんだし、もう時効だろ!?」と開き直り、すべて残したままにしておきたいと思います。
仮にここで消した所で、InternetArchive等には残っているわけですし。
そんなわけで、「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」は、(IAとはてなが続く限りは)永遠に不滅です!
時々過去のエントリを見て懐かしんでいただけたりしたならば幸い。
ではまた、皆さんお元気で。<以下、2013-04-01 追記>
・・・と、上記まで書いて、日付変わったら「嘘ですブログは続けます。あ、学位取得と就職は本当です」とか書こうと思ったんですが。
"「不滅だ」って言ったし、「今までのようには更新できなくなる」と言っただけで、「やめる」と言った覚えはない!"とか言おうと思いましたが、どう見てもセンスが無いのでやめることにしました。
なれないことはするものじゃない・・・やっぱエイプリルフールは鬼門です。
許可されてつく嘘なんて(5年ぶり2回め)。
えー、ほんの一瞬でしたが、もし心配してくださった方がいたらごめんなさい。上記のとおり特に終わったりしません。
もちろん更新頻度は(授業準備とか業務のため)これまで以上に落ちることと思いますが、変わらずイベントに行ったら記録アップしたりする予定ですので、ご安心をー。
・・・自分のチキンっぷりに嫌気がさして終わる可能性は存分にありますが・・・
自らも財政が厳しい中で図書館によるオープンアクセス財政支援を考える:「図書館によるオープンアクセス財政支援」(第7回 SPARC Japanセミナー2012 参加記録)
皆さんはarXiv.org e-Print archive、使ってますか?
このブログは図書館系の方か、「PLoS ONE」でググってきたバイオ系の方が多そうなのでそれほど日常的に使っている方はいないかもしれませんが、コンピュータサイエンスよりの方はしばしば見られているかも知れません。
図書館情報学でも、計量書誌学よりだったり電子図書館よりの人は一度は使ったことがあるでしょう。
元は当時ロス・アラモス国立研究所にいた物理学者・Paul Ginsperg氏が創始した、最初期から成功し続けている主題リポジトリにして、オープンアクセス運動(その中でもセルフ・アーカイブ)自体arXivの存在に大きな影響を受けていることは間違いありません。
「arXiv(初期は主に高エネルギー物理学=HEP中心)ができているんだから他の分野/機関だって」。
そのarXivが、現在はCornell大学をはじめとする図書館等の協力を受けて運営されていることは、ご存知だったでしょうか?
自らも過去数年で15%人件費をカットされているというCornell大学がこの物理学や数学に既になくてはならないインフラを如何に持続可能なものとして支えていこうとしているか。
あるいは同じく物理学で起こった動きである研究コミュニティの力を結集した新たなGold OAモデルSCOAP3の現状はどうなっているのか、ここでも協力を求められた各図書館の動きはどうなっているのか。
今日のSPARC Japanセミナーはそんな図書館によるOA財政支援の話です!
高エネルギー物理学・数学等の分野で,図書館がオープンアクセスを財政支援する取組みが始まっています。今回はarXiv.orgやSCOAP3の現在の活動状況を概観し,図書館と研究者が協働して取組むオープンアクセス支援のありかたを考えたいと思います。
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモであり、今回も記録漏らしが多発していてお恥ずかしい限りなのですが、その点ご容赦いただければ幸いです。
お気づきの点等あれば、コメント等へご指摘いただければ助かります!
オープンアクセス講座(柴田育子さん、一橋大学附属図書館)
- 本日のセミナーの位置づけの確認など
オープンアクセスとは?
- オープンアクセスのイメージ
- オープンアクセスの定義:
- 査読済み論文が無料で制約なくアクセスできること・・・BOAI*1
- 質の担保された論文を誰でも読めるのは素晴らしい?
- オープンアクセスの歴史
オープンアクセスの種類
- 2つの実現方法を細分化してOAの種類を説明する
- 説明の前に・・・OA=誰もが無料で読める
- しかし全部ボランティアで行われているわけではない。出版コストは誰かが必ず負担している
- OAの種類は様々で区別方法は色々ある。その中で今日はお金を切り口にする。なんの財政基盤で支えているのか?
- オープンアクセスの種類:費用負担の仕組み等で類型化できる
- Gold OA
- 従来の出版コストは購読料で賄われていたが、GoldではAPC=出版加工料で賄われることが多い
- 掲載論文全てがOAになる雑誌/雑誌自体は非OAだが追加料金を払うとOAにできる雑誌/リダイレクトモデル=図書館が購読費を出版者に振り返る。例:SCOAP3
- 他に財団等が出版費用を負担する場合も。例:eLife
- 従来の出版コストは購読料で賄われていたが、GoldではAPC=出版加工料で賄われることが多い
- Green OA
- Gold OA
arXiv.org:オープンアクセスにおける組織的なビジネス展望(Oya Y. Riegerさん、Cornell University Library)
はじめに
- この20年でOAのデジタルリポジトリが学術コミュニケーションインフラとして不可欠になった
- OAの動きは科学・知識を公共財として共有できることを目指している
- 自由に/無料で論文の出版・利用ができるようになることを目指している
- 「無料出版」ではない。コストがかかる。スタッフ、技術、施設・・・
- 健全なビジネスモデル・原則に基いて維持・管理・発展しないと、継続的に運用できない
- 今日はarXivを運営した経験に基いて話したい
- 組織的な面/ビジネスの面からお話したい
arXivの概要
- 皆様の中にはarXivを使っている人もいるんじゃないかと思う
- いくつかの分野の科学的な知見・成果を迅速に世界中に知らしめることを目指すもの
- 物理学、数学、コンピュータサイエンス・・・
- 科学・サイエンスをより民主的なものにする。投稿にも文献のダウンロードにも財政的な壁を作らない
- 簡単な概要:
- 1991年にギンスパーグが設置、2001年からCornellが管理
- 現在814,000の電子論文
- 2012年の利用状況:
- 84,603の投稿。2011年より10%以上投稿数が増加
- 5,000万回以上のダウンロード
- arXivの成長:分野別
- 分野別の総投稿数・・・各分野とも伸びている
- 全投稿数中に占める各分野の割合・・・当初はほとんど高エネルギー物理だったが、徐々に比率が減り、数学等が増えている
- 具体的な投稿率・・・数学約27%、物性物理・天文物理が14%くらいずつ・・・
- min2flyコメント:最新の状況だとhepの投稿をcomputer scienceの投稿が抜いてるじゃないか! すげえCS伸びてるな
- 運営にかかるコスト:2013-2017の予想:
持続可能なモデル
- 世界の研究者はarXivの継続的発展と安定した運営を望んでいるし、依存している
- Cornellへの全面依存からより幅広いコミュニティによる支援を受けるべく取り組んでいる
- 2010年から活動開始。NIIの安達淳先生にも色々な企画に参加いただいている
- 3年の計画の成果として整った持続可能モデルについて説明する
- メンバーシッププログラム
- ビジネスモデル 2013-2017
- arXivのガバナンスモデル・・・世界200のarXivをよく使う学術・研究機関に焦点をあてて成り立っている
- 大学・研究機関と協力
- arXiv利用は世界中でなされていて、2012年の利用割合で見ると、最大は北米のEDU(23%)。うちCornellは全体の0.5%、世界第25位でしかない
- 他のヘビーユーザはドイツ11%、イギリス7%、日本7%
- 日本のヘビーユーザ機関の内訳
- 日本1位は東大。世界全体でみても第3位
- 日本2位は京大。世界全体でみても第7位
- メンバーシップ支払いの状況等・・・ここでPCがトラブって詳しくメモ取れず(汗)
- CornellがarXiv全体の財政的・運営的責任を負う
- 戦略を負うBoardや管理的・学術的側面を監視するBoard等も世知
- Member Advisory Board・・・図書館・研究機関等のメンバー機関から構成
- 新しいBoardは最近、選挙で選んだばかり
システムを持続可能なものにするために必要な原則
- 過去3年間で学んできたことをお話する
- Cornell大学のarXivの将来を計画する経験から見えた、持続可能性の5つの基本原則
- 1. 学術コミュニティや学術プロセスの中に強く根付き、組み込まれること
- 特定の分野の性質や学者の実際の仕事のやり方が研究者が情報システムをどう使うかには重要
- 物理学、数学、CS、生物学、それぞれの学者は研究パターンもコミュニケーションの仕方も違っている
- arXivは学者のコミュニティから生まれたもの。技術の専門家や図書館員が作ったものではない
- 従来の学術情報流通システムを補完する形をとっている
- すぐに情報を広く、OAで行き渡らせる。学術文献を閲読可能にする
- 技術は重要だが、社会的・文化的問題に対応するよう使わなければいけない。技術革新だけが重要なわけではない。適切な技術で学者のニーズをサポートする
- arXivが世界中で受け入れられてきたことはユーザベースの戦略の重要性を示している。ITの修正もこれに基いて行うことが受け入れられていることの証
- 2. 明確に定義された任務とガバナンスの体制
- 主題リポジトリには明確に定義された任務とそれに伴うガバナンスが要る
- 長期的サービス運営へのコミットメントを達成できる
- ガバナンスの一般目的・・・組織が将来を描けるようにすること
- 計画を実現し、維持することも必要
- 良いガバナンスに重要なもの:参加型、コンセンサス思考、説明責任、透明性、対応力、効率的、公平、非排他的 + 敏捷性、フレキシビリティ
- 主題リポジトリには明確に定義された任務とそれに伴うガバナンスが要る
- 4. 体系だったコンテンツポリシーの作成
- 5. ビジネスプラン戦略への依拠
- ビジネスプランニング・・・民間/営利組織のみに必要なわけではない。OAでサービスにも戦略が必要
- そのプロセスの主な目的は投資を正当化するための価値の訴求。潜在ユーザに価値を訴えること
- 特定のサービス/製品の価値を伝える。「なぜそのサービスを買うべきなのか?」に応えるもの。顧客に対し、ステークホルダーごとの見方からメリットを説くものでなければならない
- ビジネスモデルは財務計画も伝えるもの
- arXivのようなサービスを発展・維持するには様々な経費がかかる
- コラボレーションを中心に置いたメンバーシップモデルでは、価格モデルを正当化する明確な定義がいるし、予算の理解と収益源、その支出先を明確化することが必要
- OAシステムの管理・発展に関わる経費についての理解をさらに深めることが必要
- ビジネスプランはゴールや達成事項、課題、戦略を様々なグループに伝えるためのツールでもある
- 様々なグループ=ステークホルダー
- ビジネスプランニング・・・民間/営利組織のみに必要なわけではない。OAでサービスにも戦略が必要
質疑
- Q. IOPの方(物理学系出版者):arXivの日本の利用が7%というが、これはダウンロード数で? 投稿数で?
- A. 7%というのはダウンロード数。投稿数の比率で同じ円グラフを書けないかと聞かれるが、難しい。その背景を説明したい。
- 投稿時に必要とする情報は最低限にして、障壁を下げようとしている。障壁を下げて、多くのことは聞かない。文献によっては複数の著者がいるが、登録者、誰が主たる著者かだけ聞いている。著者名の名寄せもしていない。ということで、投稿ベースの利用比率を追跡することは難しい。
- 投稿ベースの統計についてはサンプリングベースで集めてはいる。人ががんばってデータクリーニングしないといけない。その結果を見てみると、投稿の比率とダウンロード数のそれはかなり近い。
- A. 7%というのはダウンロード数。投稿数の比率で同じ円グラフを書けないかと聞かれるが、難しい。その背景を説明したい。
- Q. 質問の趣旨は一般的な投稿のレートと近いので興味深かった、ということ。納得した。
- Q. 静岡大学図書館の館長の方(これほとんど個人特定できるな・・・(汗)):スライドp.22。コンテンツのバージョンについて、種類別の比率はわかる? Published versionはGold OAも含むのかもしれないが。
- Q. 加藤さん:他の分野から、自分たちも入れて、というリクエストがあると思うが、どう対応している?
- Q. 加藤さん:OA雑誌が増えてくると、分野が違うから棲み分けができるんだろうとは思うが、どうお考え?
- A. arXivではあまり野心的にやらずにおこう、と考えている。いま、うまくやっていけていることに当面、焦点をあてる。もちろんオープンではいるが、野心的になって手を広げすぎないように。
- Q. 日本動物学会の方:一般の人のアクセスはarXivではどれくらい? それをどう考えている?
- A. ユーザの詳細情報は収集・分析していない。IPアドレスはあるが、それで研究者か一般化は判別できない。
- Q. 東京大学附属図書館の方:ビジネス的な見方のメリットと図書業務との兼務の大変さについて・・・?(聞き逃したのでかなり不正確かも??)
- Q. 横浜国立大学図書館の方:お金の話について。サイモンズ財団というところがけっこうな金額をくれているとのことだが、ここは今後も継続的にお金をくれる? 見通しがあれば。
- Q. 早稲田大学の方:スライド22。バージョン管理は誰がやっている? 人? ソフトウェア? 管理はしてなくてポリシーだけがある?
- A. 現在のところポリシーはない。ただ、このようなポリシーをきちんと持ち、対応することが重要と認識している。特に出版者や学術界、学会から寄せられる質問でもあり、重要性は認識している。去年、7つの学会・出版者、コンテンツの大半を占めるところとミーティングを持った。彼らとしてもポリシー・バージョンのコントロールに関心を寄せている。ユーザのためにもなるし出版者のためにもなる、ということで、相互に恩恵があると思う。ただ、まだ何も作業は始まっていない。プランニングの段階。
- Q. 常磐大学・栗山先生:創立者のギンスパーグ氏はもう関与していない?
- A. ギンスパーグさんは関与はしているが、数年前に「そろそろ足を洗いたい。物理に専念したい」と希望を述べられていて、それに応じて彼を解放できるよう人材を整えつつあるところ。
- Q. 東京女子大学・坂井先生:クオリティ・コントロールというのが意外。プレプリントとは違うので科学的価値は判断しないと思うのだが。全く同じ内容の二重投稿とか盗作がないように警戒する、というようなレベルのこと?
- A. 査読とクオリティ・コントロールは関連はしているが全く違うこと。arXivは査読はしていない。ただし、ギンスパーグが設立した時から、arXivは他のリポジトリと違う点があって、arXivには130人以上のモデレータがいる。モデレータがいることが見えづらいと思うが、ヘルプに書いてある。機関が推奨しないといけない=学術機関に属している人であるということ等をとっているし、モデレータが論文をざざっとチェックして、少なくともアブストラクトは見て、分野的に関連するものであることや、学術的なものであることは確認している。繰り返しになるが査読ではないが、特定のクオリティを維持するためのチェックをしているということ。詳しくはドキュメントを参照して欲しい。
- 実際のポリシーは次のとおり「投稿される資料は特定の学術領域に関連が有り、興味を持たれるもので、なんらかの価値を持つものであることが期待されている」
- A. 査読とクオリティ・コントロールは関連はしているが全く違うこと。arXivは査読はしていない。ただし、ギンスパーグが設立した時から、arXivは他のリポジトリと違う点があって、arXivには130人以上のモデレータがいる。モデレータがいることが見えづらいと思うが、ヘルプに書いてある。機関が推奨しないといけない=学術機関に属している人であるということ等をとっているし、モデレータが論文をざざっとチェックして、少なくともアブストラクトは見て、分野的に関連するものであることや、学術的なものであることは確認している。繰り返しになるが査読ではないが、特定のクオリティを維持するためのチェックをしているということ。詳しくはドキュメントを参照して欲しい。
休憩タイム
e-print arXivと京都大学基礎物理学研究所の20年にわたる関わり(奥平千秋さん、京都大学基礎物理学研究所図書室)
- 1990・・・SPIRES Hepのミラーを基礎研が運営しだしたことが契機
- その後・・・e-print archiveのdaily abstract mail配布の日本のサーバに
- 日本のミラーサーバ jp.arXiv.orgを始動
- もともと物理は進取の精神がある・・・webもCERN由来
- e-print archiveも後にweb以降/そのミラーサーバを基礎研に置く依頼が来て、1997年に始動
- 管理負担も下がる(リモートでロス・アラモスからできるので)/承諾、始動
- 利用料に応じたサポート金負担について・・・2010.2にNIIから打診
- arXivはもはや物理学になくてはならないツール。京大を代表して基礎研が負担するのが当然と考え、支援
- 常に京大の部局の立場を超え、全国を支援するのが使命。20年に渡る長い関わりもある
- 今後も支援の用意はある!
SCOAP3への日本の大学図書館の対応(砂押久雄さん、東京工業大学附属図書館)
SCOAP3の枠組み
- SCOAP3とは?
- SCOAP3のビジネスモデル:
- 図解・・・(講演ではスライドがありました)
- 従来モデル:著者が雑誌に投稿料を支払い、大学は個々の雑誌を費用を払って購読する。しかしある雑誌を購読していない大学はその雑誌にはアクセスできない。大学に所属しない研究者はどれも読めない
- SCOAP3モデル:各大学が雑誌を購読する替わりに、SCOAP3が個々の出版者と契約。出版費用を払う。OAになって誰でも読めるようになる。各大学は今まで払っていた購読料をSCOAP3へ(リダイレクション)。投稿時にも投稿料は発生しない。大学に所属していようがいまいが誰でも読める。
SCOAP3タスクフォースはどのような活動をしてきたか?
- 日本におけるSCOAP3への対応
- これまでの動き/今後の動き
- 最終目標は2014年のSCOAP3のOA提供
- それに向かって参加機関・パートナーとの覚書を締結しないといけない
- 日本におけるSCOAP3をめぐる関係
- SCOAP3・・・運営にはNIIの安達副所長も参加
- タスクフォースはNII+国公私立協力委員会の設置する連携・協力推進会議が設置
- NIIが事務局担当・メンバーは国公私立から・JUSTICE事務局も協力
- SCOAP3タスクフォースの任務:
- 日本としての期待金額をいかに拠出するか? その額の確定が最大の仕事
- SCOAP3各国メンバーが作るTechnical Working Groupへの参画も任務
- SCOAP3タスクフォースの取り組み
- 広報サイト・FAQサイトは立ち上げ済み
- 拠出額確定に関わる一連の作業をこれまで行なっている
- 額算出の基礎となるツールの作成
- 大学図書館には依頼もいっているが、対象雑誌の購読状況/参加の意向調査など
- 計算ツールを使って各参加館の拠出額を計算してもらうツール
- その後、リコンシリエーション(拠出額確定)
- さらにもう一度、最終的な意向の確認・・・参加館の確定
- リコンシリエーション?
- 図書館、コンソーシアムと出版者の間で、拠出額と削減額の調整を行う
- 日本ではNIIが事務局としてとりまとめる
- 手順:
- 1. 参加機関が、SCOAP3タスクフォースが用意するツールで拠出額を計算
- 2. NIIがそのデータを計算。リコンシリエーションファシリティにデータをアップロード
- 3. 出版者は出版者が見積もった削減額をアップロード
- 4. 両者が一致すれば問題ない。一致しなければ調停に入る
- 5. 額が合意されれば覚書を結ぶフェーズに進む
- 試算ツールの作成
- 試算例等の詳しい説明・・・記述は省略
- 購読状況調査・・・リコンシリエーション作業の一つとして、SCOAP3対象誌の購読状況も把握する
- 11月時点では91。現在はもっと増えている
- 2012.12・・・参加意向調査
- 今後のロードマップ
- 2-3月・・・リコンシリエーションを経て、確定
- 4月・・・参加館とCERNの覚書へ
- 課題:
- 参加館数を増やすには
- 期待額>購読額
- 支払い方法:請求はユーロ建て
- 2017年以降はどうするの?
研究者から見たオープンアクセス(坂井典佑先生、東京女子大学現代教養学部)
- 砂押さんの講演に出てきた、SCOAP3の日本選定雑誌、PTEPの編集長でもある
- オーピンアクセスについて:柴田さんは「査読済み論文を」とのことだったが・・・
- 広く定義すれば、学術情報を、とも言える
- 広い意味でのOAはarXivによって実現できているとも言える/狭義のOAが今日的課題
- SCOAP3・・・それを財政的に可能にする国際的運動
- インターネットと研究情報:
- 1970年頃・・・郵送でのプレプリント流通が最先端の研究情報を得る手段
- 誰もが自分の考える学術情報を発信できる/査読はされていないので信頼性は自分で判断
- 郵送なのでゆっくりした時間の流れ
- 1980年頃・・・電子メールと電話で研究情報が交換される時代
- 共同研究を電話を常時つないでするような時代
- 1990年:preprint archiveの出現
- インターネットで全世界が対等に研究情報にアクセスできるようになった/色々なハンディを乗り越えて世界中に研究情報を提供できる可能性
- 1970年頃・・・郵送でのプレプリント流通が最先端の研究情報を得る手段
- arXivの特徴:
- 開始・・・1990年頃
- プレプリント=出版前の論文の投稿が原則/査読はまだ受けていない
- 誰もがアクセスできるが、内容は見る人が各自で判断するしかない
- 情報提供ははやい。出版を待つと半年〜1年かかるものがいち早く読める
- 実際にはこちらの方が、進歩の早い学問の世界では内容の確定した1年先の論文よりも今日・昨日出た論文が重要に
- 論文のバージョン=修正履歴が残っている。最初の投稿⇒2番めの修正⇒3番目にどうなったか。時には結論まで変わるものがすべて残っている
- ある意味では公平性が保たれている/最後には出版が待っているが、これが載るかどうか? 多くのarXiv論文は出版直前の形態で、一語一句おなじものが載っている可能性は高い
- 1990年頃以降の主要な論文はほぼ網羅しているが、それ以前の有益な論文はない
- 今は数物を中心に多くの領域をカバー
- 電子化時代の学術誌と図書館
- 1990年以前の学術誌はarXivにはないので、それを閲覧するのは困難。所蔵している図書館・図書室の存在は貴重
- 古い学術誌が倉庫に行くようでは困る。1990年以前の学術誌は利用可能な状態で保存して欲しい
- 電子化は進んだが、色々問題もある。コピーや再利用の制限、契約打ち切り後に今まで読めていたものが読めない、など
- 1990年以前の学術誌はarXivにはないので、それを閲覧するのは困難。所蔵している図書館・図書室の存在は貴重
- arXivと学術誌
- OAによる学術誌の変化
- 従来・・・購読料が要る/投稿料も要るものもある
- 購読料が非常に高い・・・研究者主導・電子版のみの学術誌も出てくるが出版は無料ではなくて誰かが払う課題はある
- 従来・・・購読料が要る/投稿料も要るものもある
- OA学術誌の今日的な課題
- 高額の購読料は自由な学術情報流通を妨げている
- 査読付き学術誌でも自由な流通を実現したいが、ビジネスモデルが未確立・・・
- Green OA:プレプリントでは実現
- Gold OA:ここを査読付き雑誌でできないかが今日的課題。経費の負担はどこで誰が行うのか?
- OA誌の課題
- 購読料を無料にしないと誰もがダウンローできるようにならない
- APCを著者に負担させたら耐えられるのは少数で研究情報発信源を限定してしまう
- 特に理論分野は零細が多いので支払えないところが多い
- そこでひとつの試み・・・主要な学術機関をメンバーとして、そこから投稿される論文は投稿料も機関負担
- SCOAP3を中心とするOA運動・・・
- OAを研究成果の社会還元と捉え、社会全体で支える仕組みづくりをしたい
- 分野によって要求が異なる。一番、SCOAP3を主導しているHEP・実験分野は、巨額の公的投資があるが企業出資は困難。そういう公的出資を受けたものが社会還元するシステムを求めるのは当然
- 審査を通った学術誌に、OAを条件に出版経費を補助、原資は各国で割り当てる
- PTEPを例として:SCOAP3の影響
パネルディスカッション
- モデレータ:
- 木下聡さん(東京大学附属図書館)
- パネリスト:
- Oya Y. Riegerさん
- 砂押久雄さん
- 坂井典佑先生
- 木下さん:
私は東大附属図書館の情報管理課長で、東大のarXiv.orgのとりまとめ役で、かつSCOAP3タスクフォースもやっている。両方に関わっているということで今日はモデレータに。
まず、休憩後のご発表についてフロアからご質問あれば。
SCOAP3は図書館購読費の振替だけではカバーできないのでは?
- Q. IOPの方:砂押さんに。坂井先生とも関係。
費用回収について、既にゴールドのOAについては図書館からの購読費ベースでのお金の取りまとめではカバーできない。SCOAP3の場合、既にゴールドの分はどこから捻出しようとしている?
- 砂押さん:
現状で購読額を集めても期待額にならないのは明らか。いくら集めればいいかも未定なのでなんとも言えないが、少なくともOA分については購読分からは集めない。今はまず図書館分を集めているところ。
- Q.
現在OA分は図書館によるものではない。それもあわせないと全部捻出はできないのでは? 多くを占めているのはAPSやElsevierなのでゴールドOAは微々たるものなんだろうが、購読分を回収できても理論的には回収しきれないのでは。
- 砂押さん:
足りない分についてもCERNがなんらかの支援、どこから・・・財政的支援団体も入っているので、CERNが補填するのではと推測している。
- 坂井先生:
PTEPの場合、PTPの段階では購読料があった。ちょうど切り替えの時期に、SCOAP3が遅れてしまったので、ゴールド後にSCOAP3、ということになる。ただ、SCOAP3との交渉ではPTP実績に従って、と言われているのだが、購読料リダイレクトについてはいよいよはっきりしなくなる。
分野の特性とAPC金額の設定
- Q. 静岡大・図書館長の方(だからこれ匿名性が・・・):
その他の分野の人間からすると、ある限られた、背景と歴史がある分野で進んできた話という印象がある。OA化される雑誌が選ばれたとき、個々の雑誌が著者負担でやっていく意思はどれくらいある? 安達先生にも聞いてみたい。
- 安達先生:
物理学者は賢い集団で、基本的に全て自分たちでやろうとする。加速器を作る時には電磁石の設計からやろうとする。出版もそうしようという。
私は最初の挨拶でも言ったが、これは実験だと思っている。砂押さんは真摯なのできわどいことは言わなかったが、過去20年の電子ジャーナルの問題が出てきている。アメリカの図書館がどうやってきたか、これからどうしようかという情報も得つつやっている。HEPという狭い分野の話だが、そこから出てくる情報は他の分野でも共有できる。成功するかどうかはよくわからないが、arXivでも日本は米独に次いで3番目に位置する国なので、それだけの貢献を研究者コミュニティとしてもするべきと思う。その時に、著者支払いのゴールドモデルが妥当かどうかも検証されるだろう。
SCOAP3は第一に、マクロに見てAPCの平均値を下げた。これは1つの成果。
ミクロに見るともっと別の問題がある。ミクロを積み重ねてマクロになるかが学問的にも難しい問題で、砂押さんの参加しているタスクフォースはその矛盾をどう現実的に解決するか、極めてプラクティカルな問題をしている、その普遍性も検証しているという認識。
ストレートには全く答えていないが、大変興味深いと思う。他の分野ではずるずるといくんだろうと思うが、だんだんきつくなってくるだろう。例えば、ユーロが高くなってくるだけで日本にとっては危うい。半年前までは強気だったんだけど・・・(苦笑) 大変困惑中。大学図書館で次に契約する際には円安は極めて厳しい。笑い事ではない。このあたり、国際的な場で電子ジャーナルの問題を解剖していく、そのプロセスとして大学図書館の方々にぜひ参加して欲しい。
34の大学が参加、44の大学が未確定、といったが、名前をCERNに送った。名前を出すと出版者からの請求書の根拠がわかる、出さないとわからない。とにかく手を挙げることは重要だし、日本の今までの学術活動を国際的に見てもコミットして行かないといけない。図書館も、少なくとも大学図書館はそういう状態に置かれている。情報交換・戦略会議でもある。ぜひ大学図書館のご支援もいただきたい。
- Q.
こういうことは図書館長の仕事、それに学会というコミュニティの仕事と思う。こちらにも渡して欲しい。
もう1つ、走り出しているところご苦労も多いと思うが、1論文のAPC単価がまだ高い。私自身はOA雑誌をJSTを使って早くからやっているが、1,000ドルでできている。Trialであればなおさら、コストダウンをがんばっていただくと末広がりになるんじゃないか?
- 木下さん:
今日のテーマはOAの財政支援、図書館によるということだが、実は図書館の財政の方がヤバイ。OAをネタにEJやAPCのことが今日のディスカッションになってもいいかと思う。
- 安達先生:Oyaさんに。
arXivのメンバーシップは基本的に各大学等が参加しているんだと思うが、イギリスのJISCやドイツ、フランス等は、国の財政支援が背景にあるように思う。日本ではこの手のことを国が支援する雰囲気が全くなくなっているが、ヨーロッパの英独仏は国がもっと関与して見える。arXivのガバナンス確立に国が出てきて、支援することはあった? 例えばJISCの意思決定の場合。あるいはイギリスも名前はJISCだが各大学が個別に意思決定?
- Oyaさん
非常に多様な戦略を使っている。arXivのメンバーシップを見てみるとわかるが、arXivの利用の多様性にも似ている。スタンダードがあるわけではないが、大学レベルで見た資金源は図書館、学部、provostなどもある。
実際に色々見ると、組織文化の違いは確かにある。ドイツの場合、arXivへの協力を募ったら最初にドイツ技術情報図書館が関心を示し、国内の連携。コーディネーションを一手にやると言ってきた。ドイツはドイツ技術情報図書館ともう1機関が、ドイツを代表してドイツ分を払っている。コンソーシアムもたちあげて、ドイツの様々な機関から資金を得るだけではなく、ドイツの学者・研究者を巻き込んでarXivの将来に関わっていこうとしている。
イギリスの場合、JSICが最初に拠出金の集金を申し出てきた。実際にイギリス国内で利用頻度の多い機関に代わって集めてくれている。最初の3年はJISCが支払っていたが、2013年以降はイギリス国内での集金をJISCが行うようになる。ということで、2013年以降のJISCの関わり方は日本・NII・安達先生の役割と似ていると思う。
私たちとしては資金提供あるいは運営への関与、その他のサポートとして国ベースのコンソーシアムを通して関わってもらうことを奨励している。また、そのような関心を広める方法として、Member Advisory Boardに席を設けたり、そこでの役割を果たしてもらうべく、その一員になってもらている。
Member Advisory Boardは4つの席が今、ある。JISC、ドイツ、カリフォルニア大、アメリカCIC。将来的には是非、NIIにもその中に連なって欲しい。
- 木下さん
安達先生の質問意図としては国別にやり方があり、EJも日本とは国によってやり方が違う。どうやってどこが主体にどう出すかが国によってバラバラとわかったのだが、arXivも似ている、と。国際事業をやる際には避けて通れない問題といえるかも。
- 木下さん:
主題は「図書館によるOA財政支援」ということですが、それぞれの図書館が財政的困難を抱えている時にどう支援できるのか?
まず研究者から見て、図書館にどう貢献して欲しいか、坂井先生、一言。
- 坂井先生
難しい。東京女子大学に来る前は東京工業大学に長くいたのだが、その前にはKEKにもいたが、比べてみると大学によって大きく違うのではないかと思う。東京女子大学の図書館にもPhys. Rev.もJHEPもあるが、それがOA化して購読料がなくなるとき、リダイレクトして欲しいとは要望はするが、図書館全体の中でどう実現できるかは見えない。一方、東工大なら当然、Scienceのセンター館でもあるし、正面から取り組んで道筋をつけられると思う。大学によって対応が違うのでは?
- 砂押さん
一担当者の立場からすると、参加を未確定としている図書館さんの事情もわかる。タスクフォースとしては支払うんだったら貢献、という形がいいと思うが、参加意向の調査で「未確定」のところでご意見ももらっている。様々あるが、意思決定にそれなりの委員会を通さなければいけないところもあるだろうし、中には雑誌費用自体を見なおさないといけないので回答できない、というところも。あるいは図書館ではなく研究室で研究費として購入しているので決められない、という話もある。担当者としてはやりにくいところもあるんだろうと思うが、研究費の場合にはむしろ研究コミュニティから働きかけがあれば図書館としてもスムーズにできるのでは?
- 木下さん
東大の事情も。SCOAP3は「雑誌が安くなったから払え」という根拠だが、図書館は色々な学部等から預かったお金で雑誌を買っていて、安くなったからと右から左にはできない。やはり図書館だけでは片付かない。館長を通して、大学執行部から、図書館ではなく大学が学術情報を支えるんだという視点から、図書館は広報するにしても関わるのはもっと上のレベルからではないか、と考えている。
- Oyaさん
Cornell大学の図書館は、この3年で、人件費が15%削減されている。予算に苦しんでいるのは日本だけでなくアメリカも一緒。厳しい財政の中でやっていかないといけない。現在は混乱期というか、非常に複雑な時期。
出版モデルのインフラが何百年も前に確立して、ずっと踏襲してきたが、OA等も出てきて変わろうとしている。どう変えるかは苦戦もするし耐えないといけないこともある。Cornellも苦心しているところ、1ヶ月に1回は新たなOAの取り組みが協力を求めてくる、それにどう応えるかの基準を考えている。痛みを伴いながら取り組んでいるのは共通の問題ではないだろうか。
- 木下さん:Oyaさんに。
5つの持続可能性のための原則があったが、どれが一番大事で、どういう手順で進めるのが良いとお考え?
- Oyaさん
5つの原則はあくまで統合的に見るべきものと思うが、1つだけ選べというなら、実際の科学者のワークフロー、ニーズにきちんと応えられるシステムを作り、サポートすべき、というところだと思う。色々な技術を実験してみるのももちろん大事だが、それ以上に学者や研究者にとっての価値、実務にあっているのかどうかの観点から何が重要なのかを考えることに重きを置きたい。
- 木下さん
日常業務に紛れているとついつい金のことに目がいくが、一番大事なのは研究活動の支援ということを思い出した。忘れないで取り組んでいきたい。
- Q. 横浜国立大学図書館の方:皆さんに。
SCOAP3について、今まで著者が投稿料を払って雑誌に投稿していたのが投稿料もいらなくなる。図書館は出資金を・・・とのことだが・・・
- 木下さん
投稿料については誰も全貌を把握していないんじゃないか? その把握の必要は感じてタスクフォースでも議論している。投稿料相当をSCOAP3が払うわけではないが、払わなくていいようにしよう、コミュニティ全体で支えようというのが意図だと思う。
- 安達先生
より正確に言うと、CERNが出版者に払うのは、その雑誌で出版する論文×入札で決まった投稿料。Phys. Rev. Eなら1,900ドル×論文数。それが普通のモデルだと各著者が払っているのに相当するわけだが、出版経費をまとめて払う見積もり根拠としてAPCを使っている。逆に言えば、未来にその雑誌に論文が何本採録されるかわからない、そうなるとお金が足りなくなるはずで、何%論文が増えるかも入札範囲に入っていて、多少は増えても払うことになっている。マクロに見るとトータルの出版経費、ミクロに見ると投稿料、ということになる。
その結果、PTEPには高エネルギー分野の論文が載ればCERNからお金が入る、ということで動く。
- 坂井先生
たぶん今のご質問の趣旨は投稿料と購読料がはっきりしない面があることだと思う。かつてはHEPでも投稿料をとる雑誌があった。現状では投稿料はもう・・・昔は有料雑誌があったのだが、みんな無料に流れてしまって、少なくともHEPでは購読料として経費を集めるモデルになっている。たぶんSCOAP3はその部分がはっきりしないのを改めて、すべて出版経費である、とした。実際にはHEPではそれは購読料として図書館に請求されている。物理でも物性の分野だと購読料を取り、かつ著者からも投稿料を取る方が多い。日本物理学会でもそう。そのあたりは複雑。
- 木下さん
前回セミナーでは問題提起がなされたが、今日のセミナーは演習だと思う。
分野は限られるが高度な難問。これを我々は長い時間かけて解いていかないといけない。すぐに回答が出る問題ではないが、日々の業務で実績を積み重ねてできることからやるしかないと思う。
さえない結論ではあるが、これでディスカッションを終えたい。
Oyaさんの「Cornell大学でも人件費は15%減っている・・・」というコメントがあったのは良いタイミングであったように思います。
「お金がない」で色々片付けたくなるわけですが、お金がないからこそどう持続可能性を担保するのか頭を働かせないといけない・・・と、今まさに実践されている方から述べられると、色々逃げが打てなくなり。
図書館だけで予算の振替が困難であれば研究者の側にも働きかけつつ・・・ただまあ、研究者は基本やたら忙しいので、その忙しさを軽減するものですよー、的な形で提案し巻き込んでいければ、とは思うんですがさて具体策は。
"CERNからの「君のところは入らないの?」メール対応時間が減りますよ"とか?(そんなメールがあるのかは知らない)
それにしても、Oyaさんのお話で初めて気づきましたが、いやもともともうHEPがarXivの第一勢力ではないのは知っていましたが、今やコンピュータサイエンスの方が投稿多いくらいなんですねー・・・
それでもCS研究者にとってarXivをまず朝見る、という行動が定着しないのは圧倒的な母数と論文数の多さによるものですかね。
数学研究者がもう第一勢力でもあるそうですが、このあたり、「物理学の」と紹介されることの多い主題リポジトリ・arXivの変化と、それがどういう影響を持ってくるのか、というのはちょっと気になってきています。
もっとも研究者の母数とうちarXivを常用する割合、という視点で見ると昔とそう大きく変わっているのかは不明ですが。
今回のセミナーを受けてarXivのDigital librariesカテゴリ論文を見てみたら最近も面白そうな/よく知っている著者の投稿があったりもするし、自分ももうちょっと常用してみますかね。
英語でDigital libraries枠に入れられそうなの書いたら登録してみるとか・・・?