かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

機関リポジトリの今とこれから…350機関/100万超コンテンツの現在とその先(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その1)


下手なこと*1は言うもんでなし。
すっかりご無沙汰の更新ですが、別に閉鎖あるいはブログ休止していたわけではないのです。
ただ、日常業務に追われてなかなかイベントに参加しなかったり、参加しても書かなかったりの結果、ずいぶん更新をせずに今に至っただけで…いやいやいや。
大学教員、思った以上に忙しい(汗)


そんなわけで、久方ぶりのイベント参加記録も参加からずいぶん日数が経ってしまいましたが。
2013/6/6〜6/7にかけてNIIで開催された「オープンアクセス・サミット2013」に参加&発表して来ました!

平成25年3月をもってCSI委託事業とSPARC Japanは共に第3期の事業を完了しました。ここで事業の到達点を確認するとともに、博士論文のインターネット公開やJAIRO Cloudの展開も踏まえつつ、未来を展望し、オープンアクセスの新たなスタートを切ります。


SPARC Japanは第4期に入っていますが、機関リポジトリに関する活動を推進してきたCSI委託事業は平成25年3月で終了です。
自分が研究者的に物心ついたころ(2007年くらい)にはもう既に存在し、ご縁もあって自分も関連分野に関わって2009年には報告交流会で発表の機会もいただき、ついには博士論文にまで至ったという活動が終了というのはなかなか感慨深くもあります。


それにしても、最初の安達先生の基調報告にもあるとおり、現在、機関リポジトリを設置している、あるいは準備中の機関の数は350を超えているそうです。
機関リポジトリが日本で認知されだした当初、10年後にそんな数になっていると予想した人がどれだけいたのか。
午後最後のセッションでネタにもされましたが、自分は2009年の時点で、日本の機関リポジトリは150機関(国立大学+公私立のいわゆる研究大学的なところ+主要な国立研究所くらい)くらいでいったん頭打ちになるだろうと思っていました。
まさか4年後、その予想の2倍以上になっているとは・・・。


そんな感じで大きな成果を生んだCSI委託事業やJAIRO Cloudの話を中心に、機関リポジトリの現在の到達点と、この先どうするかを考える、というのがOAサミット初日の内容でした。


以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲でのメモであり、数カ月ぶりのイベント記録で腕がなまっていることまで含めてご理解の上、ご利用いただければ幸いです。
誤字脱字・事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等でご指摘ください。


なお、一番最後のセッション、NIIの山地先生がサンデル教授ばりに大活躍する 「これからの「リポジトリ」の話をしよう」については、自分が講演者の一人であったこともあって記録をとれていません(汗)
これについては、後日映像がNIIのサイトで公開されるそうなので、それを待っていただければー。


では以下、まずはNII・安達先生の基調報告から!


基調報告「 「OAの潮流と機関リポジトリ」」(国立情報学研究所学術基盤推進部長 安達淳先生)

  • NIIで仕事をする立場から、機関リポジトリについての考えをお話したい
  • NIIではCSI事業の中で機関リポジトリを重要な課題と位置づけ、200以上の機関で運用している
    • さまざまな情報を他のサービスと組み合わせることで研究者・学生に提供しようとやってきた
  • 我が国の研究者・学生の置かれた状況・・・
    • 研究成果については強く言われるが、大学の研究者にとっての成果は論文
      • 社会的には製品とかも成果として求められるが、論文として流通することが今の学術の基本的なあり方
      • 日本の研究者、特に理工・生命医学は国際的に活躍していて、例えばWeb of Scienceに載った論文の8%を占めている
      • 日本の学会による電子ジャーナルも一定の大きさはあるが、国際学術出版社の雑誌が大部分を占めている
      • 欧米レベルで活動している側面
    • 一方、日本語で論文を書き、日本人同士でコミュニケーションする分野もある
      • CiNii/学位論文・紀要など
      • 学位論文については機関リポジトリへの登録が制度化され、社会への成果発信が機関リポジトリと結び付けられて行なわれるように
      • 博士論文を大学で扱うことがホットな話題になり、明日のセッションでこのことをより深く議論することに
    • 日本語/国際レベルの流通の両方を見なければいけない、というのが現在の状況
  • 機関リポジトリの側面をあえて2つに限定してみると・・・
    • セルフ・アーカイブ=研究者コミュニティへの貢献、オープンアクセスの推進
      • 世界の8%程度の貢献が求められる。理工・生物医学研究者が英語で書く論文を想定
    • 大学の生産する成果の社会への発信=アカウンタビリティ機能
      • 学位論文も制度として位置づけられるに至った
    • オープンアクセス(OA)が大前提・・・OAでない機関リポジトリは存在しない
      • お金をとってデータを公開、とかは考えない
  • 現在のOAの論点
    • Gold OA=OA雑誌が学術情報流通のメインストリームの中に
      • 大学・研究機関はどう向き合う?
      • OAメガジャーナルの大成功
      • Finch report=セルフ・アーカイブ<<<OA雑誌とするレポートの登場
    • 登録義務化=海外では税金による成果は公開義務化の流れ
      • 日本でも博論は・・・
  • CSI委託事業の流れ:
    • 三期に渡り機関リポジトリのたねをまく/この4月に満期終了
    • 多くの大学が応募・参加
  • 現在の日本の機関リポジトリの状況
    • 世界2位の機関リポジトリ数を誇るまでに。構築機関数は現在、353、240以上のリポジトリ(数が一致しないのは共用リポジトリもあるので)
      • 現在は私立大学の数が伸びている
      • H.23 ⇒ H.24でジャンプアップ。JAIRO Cloudによるものと考えられる
    • 本文のあるコンテンツ・・・全体の半数以上は紀要論文
      • セルフ・アーカイブされたコンテンツは18万件、16%程度
      • 学位論文は48,000件、4%
      • 現在の機関リポジトリは大学の生産する学術資料の発信=アカウンタビリティ面で機能している??
      • セルフ・アーカイブ=OAの推進=従来の学術出版社の高騰する購読モデルへの抵抗・抑制は、なかなか苦戦??
      • データ等の登録はそれほどない。学術成果の大部分が論文として流通するのは変わらない、そこは一番の基本
    • コンテンツ数は順調に伸びている=機関リポジトリが増えるとコンテンツの数も増える
      • 蓄積は順調に進んでいる?
    • 捕捉率の試算(概算)
      • 紀要は存在するものの半分は機関リポジトリに入っている?
      • 学位論文は6%程度だが、今後は制度化されるので100%に近くなると期待
      • 学術雑誌論文は、Web of Scienceベースで計算すると3〜5%の捕捉率
        • 努力している大学では13%の捕捉率、という場合もある
        • どういうコンテンツをどう搭載するか、各大学の考え方があらわれる
    • JAIRO/IRDB対象機関数の推移
      • データをハーベスティングして検索・統計作成等できるようにしている・・・ぜひ申し込んで!
    • JAIRO Cloud=共用リポジトリの利用
      • 2012.4からサービス開始・・・NIIのcloudの上に機関リポジトリアプリケーションを搭載、容易に機関リポジトリが開始できる
      • 博士論文の機関リポジトリ搭載制度化を想定して作成。現在博士号を出している400機関全てが機関リポジトリを持てる規模を想定して開始した
      • 既存機関は200程度なので、新規に200機関にJAIRO Cloudでリポジトリを構築してもらおうと考える
      • 2012は新規開始機関向けとしてスタート
      • 現状・・・私立大学からの申請が多く、71の機関リポジトリが現時点でCloudで公開されている
        • 先週、ハードウェアトラブルでCloudが止まってしまい、ごめんなさい。今後はこれをベースにより信頼性の高いサービスをやっていきたい
        • cloudは発展途上の技術でもあり、十分な経験がなかった。安定運用にはノウハウが必要と痛感した
        • そこは努力していくので、ぜひサービス構築のためのプラットフォームとしてJAIRO Cloudを考えてほしい
  • 2012⇒2013の変化:
    • CSI委託事業を終了した最大の理由:量的展開についての目的は達成した!
    • JAIRO Cloudは今後拡大していく・・・既に機関リポジトリを運用している大学も使えるように/移行できるようにしたいと検討中
      • 既にある機関リポジトリを移行する方が色々大変。そう簡単にできるものではない。Trialしながらスムーズにできないかを、技術・手順・作業それぞれ検討しながら進めたい
    • OAの推進・・・機関リポジトリのプロジェクトではあまり前面に出さなかった
      • セルフ・アーカイブはかなり大変な仕事。機関リポジトリをセルフ・アーカイブの場と言ってしまうと、その推進を旗印としては運用上の困難が生じると考えた
      • 欧米に比べると日本はOAの動きが遅い。極めて上のほうで掲げるだけで、具体的な施策が出てこない。例えば科研費の成果論文をセルフ・アーカイブせよ、ということなどは、議論はされるが先送り
      • 唯一定まったのが博士論文の機関リポジトリ搭載。欧米では助成研究の公開は制度化されているが、それほどはセルフ・アーカイブは進んでいない
      • OAをどう推進するかを考えなければいけない。例えば学部・全学レベルでのOA推進を宣言する大学等もあるが、日本ではそれは皆無
      • 研究者へのアプローチが全くできなかった。そもそも図書館が研究者とちゃんとやれているか、ということもあるが、少なくとも機関リポジトリではできていない
    • コミュニティの発展がどうなるかはまだよくわからない。少なくともNIIのプロジェクトに参加して機関リポジトリの数は増えたが、次の新しい手を打たなければいけない
    • 質的な向上・・・機関リポジトリコミュニティではあまり言われていないが・・・
      • 紀要だけでいいのか/他のコンテンツも入れるのか、セルフ・アーカイブを考えたりデータを入れるなどいろいろな路線がありうるが、議論は進んでいない
      • 研究者はお金をもらって活動すると必ず厳しい評価があり、自己評価をする癖がある。機関リポジトリも同じで、やってきたことの自己評価ができないとまずい。今後どうしていったらいいのか? 
      • 私には正直わからない・・・図書館の評価をあまり知らないので。図書館の評価よりも、図書館を使った教育・研究活動の評価はある。機関リポジトリも同様で、大学の教育・研究の評価の一貫として機関リポジトリを検討し、それが機能していたならGood practiceとなるのではないか
  • つねに重視していただきたいこと:
    • Gold OAが主流にのってきた・・・PLoS ONEのようなOAメガジャーナルの普及
      • 当初は助成金をもらってやっていく弱い出版活動だったが、この2年で「儲かる」「ビジネス」と認識されるように
      • PLoS ONEが脚光を浴びたのはImpact Factorがけっこういい値だったから。IFがある水準より高い雑誌に投稿しやすければそれは雪崩を打って投稿する
      • Finch reportはそれをサポートするような報告を出し、イギリスは助成金を現実に出している。Article Processing Charge(APC)=投稿料を助成する
        • これはむしろ払うお金の総額は増えるのではないか、という懸念
    • 個人的には・・・OAの期限は価格が高騰する雑誌に歯止めをかけるためのものと認識している
      • それに加えて納税者への説明責任等の考えも出てきた
      • 登録義務化をやるという段階に我が国も達している
  • 明日、アメリカのSPARCのdirectorが講演するが・・・
    • 研究者はImpact factor等がつけばすぐ行動を変える
    • 学術コミュニケーションの変革をSPARCはずっとやろうとしてきた。現時点ではそれをOA推進として位置づけてきたが、研究者の認識とはずれている
    • 研究者はOAでも購読モデルでもどっちでもよくて、自分の成果が評価されればいい
    • インパクトファクターの撲滅宣言(DORA)というのも出ていて、IF算出元のトムソン・ロイターすら理解を示しているが・・・
      • 研究者はIFとかでふらふら動く存在。そういう人々にどうアプローチするかも含めて機関リポジトリやOAを考えてほしい
  • 機関リポジトリだけでもOAモデルだけでも学術情報流通は回らない:
    • 購読モデルも含めたいろいろな道具立てを使って、リーズナブルが学術コミュニケーションを実現して行かないといけない




第1部 「オープンアクセスの"羅針盤"〜平成24年CSI委託事業報告会〜」

セッション1: 「JAIRO Cloudの力」

「JAIRO Cloudの概要と平成25年度データ移行実験について」(国立情報学研究所 学術基盤推進部 学術コンテンツ課長 相原雪乃さん)

  • 最初に・・・先日のトラブルではご迷惑をおかえし、本当にごめんなさい
    • 今後はこういうトラブルが起こらないようにする
JAIRO Cloudの背景
    • 国内の大学の機関リポジトリ設置率:国立はほぼ100%だが、公私立大学は30-40%
    • 科学技術・学術審議会〜作業部会の審議のまとめから:
    • 同じく作業部会の答申から・・・一層、共用リポジトリを推進すべしとの提言
    • 博士論文のリポジトリ登録義務化・・・学位授与機関は機関リポジトリを構築・維持しなければいけない状況
    • 以上の背景のもと・・・NIIでは機関リポジトリの推進、特にJAIRO Cloudに重点を置いて推進している
サービス概要
    • 現在利用できるのは:
    • NIIはネットワーク・ハードウェア・ソフトウェアを用意・・・システム環境を提供
    • 詳細:
      • 当面、利用料は無償
      • 24h / 365d
      • 使えるソフトウェアはWekoのみ
    • データ保管について・・・コンテンツの最終責任は各機関にお願いしたい
      • バックアップを忘れずに持っておいてね!
    • 使用ソフトウェアWeko・・・NIIの山地先生(午後に登壇)が開発
    • コンテンツ登録は簡単にできる! 画面変更もメニューから簡単に!
      • 申請すればCiNiiやJAIROでの検索も可能に!
      • コミュニティサイトでニュース・マニュアルが共有可能。「フォーラム」機能で参加機関同士で質問しあったり助け合うことも
      • テストサイトも完備/システム講習会も実施!
        • min2-flyコメント:なんかHDDとかちょっとした機器の箱に書いてある謳い文句みたいになってきたな・・・
    • JAIRO Cloud利用状況:
      • 公開済み/公開予定あわせて118機関
      • Wekoは今後も機能を拡充・追加予定
移行実証実験
    • 既にある機関が乗り換えるための実証実験中
    • 筑波大/千葉大が参加中・・・他もスケジュールを見て調整中
      • 利用機関の多いソフトウェアを優先に移行ツール開発中
      • 実験参加=移行決定、ではない。各機関のやりたいことが実現できないかも。それらも洗いだしながらチャレンジしてもらっている
min2-flyコメント:移行はいいと思うけど、移行時にリンクを従来のものから変えるとかわけのわからないことは絶対にしないでいただきたい
  • hdl.handle.netがあればいいってわけじゃない、Google等での可視性がまるで変化してしまう。大半の利用者は現在のメタデータかフルテキストURLに直リンクしている
  • リダイレクトさせたりJAIRO上で旧URLでやったり・・・というのならいいけど、そうでないととてつもなくもったいないことになるので
    • さらに追記コメント:と、いう話はJAIRO Cloud実験をされている皆さんは当然考えられているとのことでした。ですよねー
      • ただ、他の場合でもリポジトリのシステム移行を検討される際にはくれぐれも注意をしていただければ・・・

JAIRO Cloudの活用事例報告

信州大学:石坂憲司さん・・・信州共同リポジトリについて

  • 参加機関/目的/ここまでの歩み等のお話
  • 信州共同リポジトリの説明・・・
    • JAIRO Cloudで運用する初の地域共同リポジトリ
    • 全国の地域共同リポジトリの中では、後発ではあるが機関数・コンテンツ数ともなかなかの上位に
      • JAIRO Cloudの中でも上位
  • JAIRO Cloudがあったことで短期間で構築実現

京都ノートルダム女子大学森雅子さん

  • 登録数もそれほどないし特徴もないのだが、いろんな規模の報告・事例でいいとのことなので
  • 予算等がなくても公開できたのはCSI事業のおかげでもある。感謝の気持ちも込めて報告したい
  • 現在・・・学内刊行物の電子化・登録を進める
    • 紀要+図書
  • 今後・・・
    • 登録件数増加
    • 学術雑誌論文登録
    • 公開環境整備
    • ユニークなコンテンツ
    • リポジトリを活用して出版新事業を
    • 予算をかけなかったことは忘れられやすいので継続した広報活動を

神戸市外国語大学:谷本千栄さん

  • 神戸市外大の説明
  • リポジトリ構築の経緯:5年以上前から検討⇒予算確保に難航して具体的に進まない
    • JAIRO Cloud構想を聞いて一気に構築の機運が高まる!
    • 2012.8に試験運用⇒2013.4に正式運用
    • 費用がかからない+タイミングがJAIRO Cloudの採用に踏み切った理由
  • JAIRO Cloud・・・工夫次第で独自性のある画面も構築できたり
  • CSI事業として・・・2012年度に受託して紀要を電子化
    • 紀要電子化の費用を学内研究会から寄付してもらう機会も
  • 構築後は色々いっきに動き出す
    • 紀要発行部署からは図書館が戸惑うほどの協力
      • PDF仕様の希望を伝えると「図書館が思うように」ということに。印刷業者とも直接対話
    • 博士論文・・・大学院事務の担当部署で許諾書を同時に渡してもらえるように
      • 許諾書は100%回収/本文登録は芳しくない(図書としての出版希望のため)
    • 教員連携・・・部会メンバーが積極的に協力・コンテンツへのアドバイスへも
      • 学会発表資料についての登録を依頼したら分野によって公開ニーズの有無があることを聞いたり
    • 登録による効果・・・
      • 国際学会紀要を登録したら多くのアクセス
      • ILLの受付件数増加
  • 今後:
    • 紀要の投稿規定でリポジトリ公開を明文化する
    • 紀要以外のコンテンツを充実する
    • 学内の認知度向上
  • JAIRO Cloudのちからとして感じること:
    • リポジトリ運用は大変だけど、学内他部署との連携やOAへの貢献など、苦労以上に楽しいことが多い

質疑応答

  • Q. 神戸外大さんに。情報処理センターと図書館の連携はどうやっている?
    • A. 所属が学術情報センターなのは、自身の所属は図書館部門で、情報センター・・・ではない。センター内に情報メディア班と学術情報班、図書館の班があって、私はそちらにいる。他部署との・・・情報メディア班との連携はあまりない。ただ、報告中にあったとおり、紀要発行部署等との協力はある。
  • Q. 信州共同リポジトリに。共同リポジトリは鹿児島でもやっているし広島など先行事例もあって、中心大学がサーバを構築して地域が参加するものが多い。信州ではサーバ等の自力構築は検討した? JAIRO Cloud選択のメリット/デメリットは?
    • A. H22はじめの段階で、まだ名前はなかったが共用リポジトリに参画して地域共同リポジトリを構築する話をしていた。最初から参加が前提で、信州大でホストを作ることは考えていなかった。メリット・デメリットについては、実際にいくつかのシステムを運用しているが、特にJAIRO Cloudが使いにくいとかいうイメージは持っていない。
  • Q. 鹿児島でも地域共同リポジトリはあるが、それに載っているところとJAIRO Cloud利用が混在していて、いろいろ考えたい。またお尋ねしたい。
  • Q. システム移行の件について。例えば大学によっては「ここは移行できるがここはカスタマイズしすぎて移行できない」ということもあると思う。部分的移行という選択肢はある?
    • A. いろいろなケースを試していないのではっきりしたお答えはできないが、コンテンツの部分的な移行・・・?
  • Q. 例えば紀要はすぐ移行できるけど業績報告書はすんなりとはいかない、など。やりやすい/にくい部分があると思うが・・・特にカスタマイズしているところではあると思うが・・・全部移行しないとだめなら独自でやることになると思う。先行大学ではそういう問題があるのでは?
    • A. これからいろいろなケースを検証しながら考えて行きたい。「こう動きます」とは現段階では言えない。
  • Q. (安達先生):ノートルダム女子大と神戸市外大について。大学の規模に対してうまくやられているようで興味深かった。質問は、今年度からこういう作業を継続してやっていくときに、小さい部署だとおそらく人にどう仕事をしてもらうかが一番、頭がいたいのではと思う。単純に今までの仕事の他にリポジトリの仕事が増えたわけだが、それをどうこなしている? サポートはある?
    • A(ノートルダム女子大):少ない人数なのでリポジトリの分はなかなか経常的に仕事ができない。年度初めはオリエンテーションで忙しいので手がつけられない、とか。そのあたりが落ち着けば、職場の了解を得て、担当者が毎週木曜日はリポジトリの仕事をできるようにする、といった仕組みを作りたいと考えている。あとは、学生アルバイト、司書課程で司書を目指す学生で関心のある人はいるので、そういう方に手伝ってもらうことも考えている。また、異動した職員が研究関係部署にいるので、研究情報はそちらからもらって、スムーズな公開許諾・コンテンツ入手の仕組みも作って行きたい。
    • A(神戸市外大):他の業務も担当しながら時間をやりくりしていたので時期によって作業のむらがあった。毎日1〜2件でも登録して行きたい。今年度は別業務の担当になったのだが、1年かけて引き継ぎをしながら、図書館内に私以外にもリポジトリがわかりコンテンツ登録できる人を増やしていこうと考えている。ルーチン化・業務内への取り込みは今後の課題と考えている。




昼休み


セッション2: 「CSIの現状の到達点」
先導的プロジェクト(領域2)の実績報告

金沢大学「国内の機関リポジトリへの著者識別子登録機能の実装の推進とその課題」(橋洋平さん)

  • 事業の目的:
    • 国内の機関リポジトリに著者識別子登録機能を実装・推進すること
    • 著者識別子=著者に付与する一意のID。科研費の研究者番号のような生涯変わらない番号を指す
    • 論文同定のためにIDをつける。名寄せと識別を実現
  • 名寄せ:改姓や表記ぶれしている場合でもまとめて集められる(違う名前の同じ人をまとめる)
  • 識別:同姓同名の複数人を区別する(同じ名前の違う人を区別)
    • JAIROで集めてきた著者について、機関を超えてリストを作るのがまずは目的
  • 金沢大学での実証実験
    • 金沢大学のリポジトリに著者識別IDを付与
    • ハーベスティングしてJAIROでも名寄せ/識別が可能なようにする
    • 著者IDで検索・取得できるように改修
    • NIIの研究者リゾルバを活用
    • リポジトリの画面で、著者名に研究者リゾルバへのリンクや学内業績DBへのリンクが貼られるように
      • さらに研究者リゾルバ⇒JAIRO等のリンクも付与
  • 複数大学での実証実験
    • JAIROの著者検索機能の強化・・・デモ
      • 違う大学で登録された同一人物の業績が一括で出てくるように
    • 完璧には付与できないという課題も
  • なかなか普及しない・・・課題と展望を探る必要⇒アンケート実施
    • 機関への質問・・・カスタマイズが必要なことが普及を妨げる/情報不足への指摘も
    • システムについて・・・Weko利用期間が最近増えている/それを抜きには今後は考えられない
    • DSpaceのバージョンでは・・・識別機能が使えるものを使っているところが多いけど、普及せず
    • 研究者向けの質問の結果・・・同姓同名で困るという話が寄せられる
    • 必要性・・・あればよい、という微妙な回答が多い
      • この微妙さが問題??
  • まとめ:課題と展望
    • 受け入れの素地はあるが、研究者リゾルバ/著者IDの広報や国際動向の啓蒙が要る
    • 各館単位でのサポートは困難なのでそれはなんとかしないと
    • Wekoへの期待高し

千葉大学「機関リポジトリアウトプット評価の標準化と高度化(ROAT)」(武内八重子さん)

  • 2010〜2012年度の活動:
    • アウトプット評価システム=ROATの運用
    • ROATの統計処理方法の検討
    • アウトプット評価に関する情報交換・情報共有の実施
    • 再検討の結果・・・ROATシステムの提供終了へ
  • ROATの運用:
    • ここでいうアウトプット評価とは・・・登録コンテンツ数=インプットに加えて、それがどれだけ利用されたか=アウトプット評価、と定義
      • 例えば・・・大学ランキングでもダウンロード件数が扱われている。それがアウトプット
      • ただし比較の常として、同じ基準・方法で算出されたものである必要がある・・・今のところはあまりはっきりしない基準設定
      • よくあるのはアクセスログ分析に基づくものだが、それをどう処理するかの問題など
      • ROATでがその処理方法等を考えるのが主旨で、その実装がROATシステム
  • 運用しながら・・・内容処理方法の正しさも検討
    • 例えば・・・重複カウントの制御方法について、COUNTER等で定められている基準は正しいか?
      • あまり意味がない基準になっている? 見直す必要はあるかも
    • 利用者数・利用時間など、利用者単位の集計方法も検討したが・・・説明は省く
    • 国際会議の開催/海外のセミナーに参加
    • 報告書の作成・公開・・・現在は日本語版本編のみ公開/付録・英語版も調整中
  • さまざまな検証を終え・・・一定の貢献は果たした、と考えシステム提供終了
    • 利用機関でロボットリストが欲しいところなどは声をかけて
  • 今後・・・真っ白
    • 利用に関する指標が比較できる形で入手できることをきちんと考える必要はある
    • 今後も継続的に議論が必要と思うが・・・プロジェクトとして? 日本のリポジトリとして??

九州大学 「文献自動収集・登録ワークフローシステムの開発」(馬場謙介先生)

  • プロジェクトの目標:リポジトリ登録論文数を増やしたい
    • 現状・・・九州大学リポジトリに登録される論文数は、実際の教員の論文数の、多く見積もっても3割程度
      • ログ分析をしても文献数が少ないのであまりいい結果が出ない/まずは論文数を増やす!
  • アプローチ:
    • A. 著者に直接お願いする
      • 外部のDBで探す⇒メールで提供をお願いする
    • B. リポジトリ管理者の作業効率を上げる・・・先生方がOKしても作業時間がかかると増えない
      • 論文登録作業を定式化/自動化できる部分は自動化/SCPJ等とも連動
  • 開発したシステムの検証・評価結果
    • 実際の画面の紹介等
    • 教員への登録依頼への回答率は27.1%。もうちょっと頑張ればよくなりそう?

東京大学 「博士論文発信支援パッケージ開発プロジェクト」(小松陽一さん)

  • 博論を増やすには??
    • 登録しやすいこと(本人/図書館員)
    • 利用促進
    • コンテンツの充実=遡及登録で実績を積んで利用を伸ばす
  • 結論:決定的な解決策はない!
    • 博士論文は学位規則の変更で登録は基本的にされる。プロジェクトの意味が薄れた
    • 今は・・・これからどう対応するか? 登録処理をどう効率化するか?
    • プロジェクト自体ははじめての機関の検討材料になれば
  • 「解決策はない」詳細
    • 年1200-1300の博論のうち、登録できたのは1割程度
    • プロジェクトで増えはしたが、網羅するには程遠い
      • その原因・・・登録が任意である状況/いくら説明しても事務的な協力が得られにくい
      • 学位申請が論文を出す直前にあるが、その手続きに入れてくれるかがポイント。学務・教務に説明しても「任意でしょ」となると協力を得にくい。「手がいっぱいでやりたくない」、「様子を見たい」という反応
    • リポジトリの意義に賛同する著者もいるが、諸々の理由で公開したくない/載せたくない人が多い
      • 特に人文系が出したがらなかった
    • 現状、4,700件の登録があるが、大半は遡及登録
  • 書式も一式作って部局にお願いしたりもしたが・・・その中で収集についても2つ考えた
    • 事務的な協力がなくても受け口を用意する:利用者向けの登録インタフェース
    • もう1つは・・・部局の事務手続きの中に入れてもらうフロー
  • 利用促進について・・・検索インタフェースを作って特有の項目を探せるようにしたり
  • 許諾確保・・・何年もたってからやると回収率が悪くなるので2〜3年で!
コミュニティ(領域3)の実績報告

名古屋大学「名古屋・東海地区における機関リポジトリコミュニティ形成の支援」(端場純子さん)

  • H22-23に近畿地区でやっていたものを東海地区で引き継いで行なったもの
  • 目的:学術情報のOA化推進
    • そのために・・・担当者同士で気軽に情報交換のできる、顔の見える有意義なコミュニティを形成する
  • 実施内容:
    • 連続研修会の実施
    • 機関訪問
  • 成果:
    • リポジトリの設置機関数が増加
    • 「顔が見える」機関リポジトリ担当者コミュニティの形成・・・2年目までで近畿は自立して活動できる見込みも立ったので、3年めは名古屋・東海地区に
  • 平成24年度・・・名古屋・東海地区での実施(3回)
    • 連続研修会・・・毎回基調講演+事例報告+質問大会で実施
  • 成果:
    • 参加者は毎回いる
    • 構築状況・・・構築済みだったり準備中だったり
    • 参加者アンケート感想・・・思った以上に好評
  • 今後の課題:
    • この機会にできたコミュニティを今後どう維持・発展させるか
      • MLの要望が多かったので現在実施中

広島大学「機関リポジトリ担当者の人材育成」(松本侑子さん)

  • min2-flyコメント:松本さんはこの4月に就職された新人の方だよ!
  • ShaRe2 + 人材育成プロジェクトを整理・統合・・・平成23年度から広く人材育成を担うプロジェクトに
  • 事業の成果:
    • 合計で8種類のイベントを実施
    • 新任担当者研修・・・OA、機関リポジトリの講義等を実施・・・基礎的知識・技術の修得とつながり構成
    • 中堅担当者研修・・・実務レベル以上の知識獲得+次の人材を指導できる人材育成を目指して実施
    • DRF全国ワークショップへの参加
    • 地域ワークショップ・・・近畿/東北/中国・四国で実施
    • 主題ワークショップ・・・医学・看護学/芸術・音楽・体育で実施
    • 技術ワークショップ・・・初任者向けWS/上級者向けの招待制合宿
    • 講師派遣活動
    • 機関リポジトリ研修検討会議への参加
  • 短期間で技術・知識を習得したり情報共有ができた+人的ネットワークが形成できた
    • 機関リポジトリ数/公開機関数ともに急激に増加中
    • 今後も運営担当者の知識・技能の維持・向上のために研修事業を継続
    • JAIRO Cloudシステムの講習会との区別や連携/他業務との兼任や異動のある制度の中で専門性・横断性を維持するのか

北海道大学「機関リポジトリコミュニティ活性化のための情報共有」(三隅健一さん)

  • Digital Repository Federation(DRF)=ディジタルリポジトリ連合の活動について
  • メインの活動:
    • MLの運営
    • 海外文献の翻訳
    • 月刊DRFの刊行
    • OA Weekで日本のOAを盛り上げたり
  • 活動詳細
    • ML・・・アーカイブも公開
    • ウェブサイト・・・国内の役に立つものになるのを目指して色々情報を発信/英語版ページで海外に向けも情報発信
    • 翻訳隊・・・有志によって月刊DRF英語版を作ったり、海外文献の邦訳をしたり。BOAI10の日本語版作成に貢献したり(with 愛知大学 時実先生)
    • オープンアクセスウィーク・・・活動の呼びかけやグッズ作成・記録写真公開(写真とOAWについて紹介)
    • ワークショップ・・・図書館総合展で全国ワークショップを開催やテーマ別ワークショップなど
    • 国際連携活動・・・オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)への参加や国際会議への参加・発表、英文パンフレット作成、海外のリポジトリコミュニティとの接近など
  • CSIとしてのDRFは終わるけど、リポジトリコミュニティとしては今後も続くよ!

筑波大学「オープンアクセスとセルフ・アーカイビングに関する著作権マネジメント・プロジェクト(SCPJ)」(真中孝行さん)

  • SCPJプロジェクト:
    • 雑誌掲載論文のリポジトリ登録促進を目的に
    • リポジトリに登録できるか否かの調査を学協会に働きかけてやっている
  • SCPJの歩み:
    • 契機は国大図書館協議会の委員会
    • CSI事業で実施
    • 現在は2,607の学協会、3,146誌を登録
      • まだ半数以上の学協会はポリシーが不明あるいは模索中
  • 平成24年度の活動
    • はじめてワークショップを開催・・・30名ほどが参加
    • 担当者との情報交換/意見共有
    • 講師派遣/DB機能拡張など
      • ほかにもいろいろやっている
  • 継続調査の結果・・・リポジトリ登録可能な方針を持つ学協会の割合は増えている
  • DB機能拡充も色々
  • 今後の課題:
    • 筑波大学だけでどうするか決めていい類のものではないと思う
    • 継続するつもりでいるが、学協会のOA認知度向上や、調べた内容がリポジトリ登録に生かされないのでは意味が無い・・・搭載率向上のためにルーチンでできるような作業体制の確立や、他機関で調べたポリシーの収集等もやっていきたい
    • 広報活動/情報収集など、いろいろ考えている
  • 「僕と契約してSCPJスタッフになってよ!」
質疑応答
  • Q. 九州大学へ。このシステムは最終的に先生方に依頼するためのもの?
    • A. そう。
  • Q. その仕事はシステムで省力化されたり件数は増えた?
    • A. 件数は増えた。省力化は・・・一度に6,000件とか送っているので、手作業ではできない。
  • Q. 筑波大・真中さんへ。学位規則改正で図書館への質問が増えている。学内事務からリポジトリ関連の質問が増えていて、特に多いのは著作権処理の話。博士論文が投稿雑誌論文だったら、という問い合わせが増えている。SCPJについて事務方に話す機会も毎日ある。そこで聞きたいのだが、全国的に図書館現場でそういうケースが増えていると思うが、SCPJとして博士論文の取り扱いに関して調査等することは考えていない?
    • A. 現在、やる予定ははっきり言ってない。しかし確かに、私にも他の大学からSCPJへ学位規則改正の質問が来る。学部によっては雑誌掲載論文を学位論文にしているところもある関係上気になるのだろう。ここでお話する内容ではないかもしれないが、博論として学術雑誌掲載論文をあげている場合にリポジトリにあげていいかは、基本的に学位取得者自身が著作権処理を行なっておくべきもの。SCPJとしてやったほうが個別大学でやるよりよい、となればやるかもだが、やるとお答えはできない。
  • Q. 執筆者が自力でやるにしても図書館に相談に来ると思うし断れない。みんなでがんばりましょう。
  • Q. 機関リポジトリを今後も発展させ使いやすくするために、という観点で興味深く聞かせていただいた。その中でROATとか自動登録のメールシステムとか東京大学・小松さんの学位論文を部局で登録してもらうためのワークフロー資料を作ったとかいう話があった。これから自分の大学でもやろうと思っていることばかり。これは、見たい場合、手に入れたい場合はどうしたらいい?
    • A. 九州大学のものはオープンソースソフトウェアとして公開している。言いそびれていてごめんなさい。詳しい内容はポスターのところで。はっきりうと怒られるかもだが、まだ洗練が足りないので今、導入すると人柱に・・・。
    • A. 東京大学も同じ。リポジトリ構築支援事業のページから発表内容に行けるはずで、そこからまずは見てほしい。その後に、ぜひ個別にお問い合わせを。
    • A. 千葉大学のROATは、ログを放り込んだら結果が返るシステムは閉鎖中。どういう方法で処理をするとどういうものができるかの流れはガイドラインとして公開していく。今までもしているしこれから改訂版もあげるのでご参照を。
  • Q. 著者ID等の付与状況の詳細確認
    • A. 学外にいる共著者や、退官した教員の分が抜けている関係で37%くらい。
  • Q. 今、所属している学内の先生にはIDがついているのだと思う。しかし学位論文を入れるようになると、膨大な人数になると思うが、どうする?
    • A. その部分は今後の課題。科研費番号を付与する基準とかが変わることはあるのだろうか・・・なんとも言えない。



初日の記録はここまで。
あとは冒頭のとおり、最後のセッションは自分も参加してたので記録はとれませんでした。
後日スライド等もNIIのサイトで公開されるはずなので、公開後にリンクを追記しようかと。


初日もずいぶん盛り上がり、後の交流会でも楽しいひとときを過ごしたのですが。
このときは想像もしなかったのです。
まさか2日目、あんな光景を目にすることになろうとは・・・(以下、次エントリ!)