日本政府のオープンアクセスに関する方針・動向がわかる(?!)・・・日本学術会議主催学術フォーラム「世界のオープンアクセス政策と日本:研究と学術コミュニケーションへの影響」参加記録
- 2014年3月13日(木) 13:00〜17:30
- 開催場所:日本学術会議講堂
一時はイベント終了後当日にその記録をブログに上げることが売りだったこのブログですが、今回はもう3週間前のイベントの記録です(汗)
一応の言い訳としては、このイベントの記録はカレントアウェアネス-Eに書くことになっていたので、そちらの公開まで待っていた・・・というのがあります。
まあそっちの公開からももう2週間経っているんですけどね!
年度末〜4月頭の大学教員にスピードを求めてはいけない・・・。
ってことで、min2-fly個人の感想としてはカレントアウェアネス-Eの記事のとおりです。
科学技術振興機構(JST)が「いずれ助成研究のOAは義務化する!」と強く明言されていたことを筆頭に、機関リポジトリは普及しつつも政府主導のOAそれ自体はなかなか進んでいない印象の強い日本ですが、少なくとも方針としてはOAでやっていくってことが、だいたいの関係機関(NDLは除く)の間で共有されていることがわかる、素晴らしいフォーラムであったかと思います。
あとは具体策としてどうやるかを話していこうと。
・・・と、まあ総論はそんな感じでいいとして、字数の関係で各論についてはほとんどさらっと流すだけになっている上記記事。
パネリストの皆さんの発表もいずれも面白かったのに全然その内容を盛り込めず・・・それじゃまずかろうということで、今回ここにいつもの感じのイベント記録もアップしておこうと思います。
もっとも、今回はカレントアウェアネス-E向けと思ってメモそのものは公開するか決めていなかったので、いつも以上に荒いところが多々あります(大汗)
そこはある程度はお見逃しいただきつつ、誤字脱字・事実誤認等お気づきの点があれば、コメント欄等にてご指摘いただければ幸いです。
また、例によってあくまでmin2-flyの聞き取れた・書き取れた・理解できた範囲でのメモであることもあらかじめご了承ください。
すっかりイベント記録とる頻度が落ちているので鈍っています・・・
では、まずは冒頭の挨拶ラッシュから!
挨拶といいつつここも結構面白い話がいっぱいですぜ!!
浅島誠先生(日本学術会議・学術問題検討分科会委員長):趣旨説明
- 日本の学術の根幹にかかわる問題が今、起きている
- オープンアクセス…ジャーナルを読めるかどうか、という問題
- 経緯
- 日本でこの問題を取り上げようとしたのは10年前…2004年に国立大学法人化
- そのとき、地方の大学や小さい研究所が、読みたいジャーナルが突然読めなくなりだした。価格高騰が原因という
- 学術会議でそれを受けて雑誌をどうするかが問題に取り上げられた
- 2010年…検討の結果、「包括的学術誌コンソーシアムの創設」の提言
- 日本の学術/学術情報関連団体が集まって会議した結果に基づく提言
- 日本…学術・研究は高いレベルにあるが、その投稿・出版は海外誌に依存している
- その出版者が購読料をとるので、だんだん読めなくなる
- 海外では電子出版が非常なスピードで進行
- 多くの大学・研究所で購読雑誌の消滅、学術活動の基盤がガタガタに
- 日本でこの問題を取り上げようとしたのは10年前…2004年に国立大学法人化
- そこで出てきた喫緊の課題…オープンアクセス
- この方向の中で、実際我々は?
- 雑誌…読めない/調査によれば、研究者が読みたい雑誌の85%は各大学で読めていない
- 「こういう問題を日本として取り上げて欲しい」という声/雑誌を大学で買うのをやめて各個人で買ったり、構成員の8割が読みたいジャーナルが読めず、世界の動きが見えないという意見も
- 雑誌…読めない/調査によれば、研究者が読みたい雑誌の85%は各大学で読めていない
- 分野や国による違いもある…日本モデルの構築が必要
- 黒船来襲と恐れるのではなく、社会に必要な研究成果の公開とは何かを考える機会
- いろいろなOA化の手段
- Gold OA…著者支払い型のモデル/払えるところと払えないところがある
- Green OA…著者が自己責任で公開
- Hybrid…購読誌にプラスアルファで払ってその論文だけOAに
- SCOAP3
- 我が国の学術の活性化/発展のためにはどうするのが良いか、率直な討論を
- 我々は…日本としてはどういう風に持っていくのがいいか? 助成機関としては?
- ぜひ活発な議論を
挨拶
大西隆先生(日本学術会議会長)
- 最近の学術会では「オープン」がキーワードの一つ
- オープンアクセス、オープンデータ、オープンイノベーション…
- OA:学術論文を制約なく、課金なく読める/公開する
- OD:データそのものを公開/課金なし
- OI:企業が自社だけでなく他社の技術も活用して新たなイノベーションへ
- この3例だけでも「オープン」の意味が違う…前2者は誰もが対価なく利用できるという意味だが、OIでは他社の特許に利益を配分することが織り込まれている/企業の枠を超えた技術探索ではあるが、無料での利用ではない
- OA/OD…「無料で」を含むにしても…
- OA:研究成果を広くしらしめることで自身の研究を多くの人に知ってもらう
- OD:データを使ってこれから研究することもある段階でデータを無料で公開する、というプロセスにはためらいの多い研究者も多い
- 査読・出版費用は誰が負担? データの負担は?…これはオープンにすることの利益が最終的に誰に帰属するかによって決まる、簡単には解けない
- オープンアクセス、オープンデータ、オープンイノベーション…
- 今日の主題はその中でもOA…そこで私からの考えを述べたい
- 2013.6、Royal Societyで世界の科学技術関係機関を集めた会議で取り上げられたテーマの中に、OAが入っている
- OAの目的の中で、発展途上国/先進国の格差問題を取り上げた人物あり。科学研究基盤の一つの公平を確保しようという趣旨
- しかし論文アクセスの問題は先進国/日本国内でも起きている。論文にアクセス出来ない研究者の増加
- しかし問題はアクセス公平を確保する方法
- 中途半端にやると単なる利権の移転/争奪にとどまる。思わぬ副産物を産まぬよう、着実にOAを進めることが重要
- 2013.6、Royal Societyで世界の科学技術関係機関を集めた会議で取り上げられたテーマの中に、OAが入っている
- 国際的にはGold/Greenの2つの方法が提示されているが…
- Gold:誰が費用負担? 査読は維持される?/Green:査読の質はどうなの?
- いずれも課題はあるし、誰がどの程度の負担をしそれが適当であるのかも議論の余地がある
- Gold:誰が費用負担? 査読は維持される?/Green:査読の質はどうなの?
- 日本の問題…科学に国境はないが政治にはあるし経済にも
- 当面は科学研究の成果が国内で使われることを睨む、応用によって産業発展に結びつける上でもOAが重要
- しかし我が国の学術出版システムはすべてにおいて欧米諸国に劣っている
- 伝統的に、日本の学者はレビュー/出版雑事は傍ら仕事と思っている、積極的に取り組んでこなかった
- しかし研究力の中には成果発信・世界に知らしめる力も含まれている
- OAへの取り組みが日本の学術につきつけられている
- もちろん投稿先選択は研究者の自由であり、日本の出版が選ばれないのも仕方ない?
- しかしOAが模索段階にあるのなら…国内でもOAを模索し、ノウハウを蓄積し、国際的な議論にも対処すべき、という意見に私は共感を持っている
- 今日、大いに議論されることを期待したい
- OAの別の問題…科学研究成果の実用化重視/この傾向は世界共通
- そうなると、科学研究成果の発表は実用化に向けた中間成果物、ということになり、論文を出すより製品/産業化が重視される
- 教科書に載るくらい広く知られることの価値と、製品化・利益を生むことの価値。どちらを重視するかは難しい問題…ここにも議論が展開されることに注目したい
- そうなると、科学研究成果の発表は実用化に向けた中間成果物、ということになり、論文を出すより製品/産業化が重視される
- 日本学術会議では浅島先生のリーダーシップの元、2010年8月に既に提言を出している
- 学術出版の寡占化への危機感と、我が国がどうするかの議論…その議論をより発展させ、我が国の科学者コミュニティがどのようなリーダーシップをとるべきか、活発な議論に期待したい
小松親次郎さん(文部科学省研究振興局長)…今日は国会での所要により欠席/下間康行参事官が代読
- 文部科学省…今回のシンポジウムに共催の立場で参加
- 局長は国会対応で来れないので下妻さんが代読
- 資源の少ない日本の発展を支えてきたのは科学技術・学術
- 政府としての科学技術・イノベーション政策に不可欠な学術振興のために…科学技術・学術審議会に学術の基本問題に関し取り組む場も設ける
- その他、MEXTがやっている政策について色々な紹介
- 博士号取得者の減少/学生の主体性を確保するための教育の質的転換
- 研究者が優れた研究を実施し、成果を出す…その成果を活用して更に優れた研究を、という循環
- OA
- Gold OA/Green OA
- 日本…機関リポジトリの構築によりOAを推進しようとしている/G8の会議でもこの話題は取り上げられていて、公的資金による研究は世界的にOAの方向
- 科研費の中にも、OA雑誌刊行の支援や、電子ジャーナル流通プラットフォームとしてのJ-STAGE高度化も図っている
- 機関リポジトリについては…博士論文の公開を義務化、機関リポジトリでの公開を原則としつつ、NIIで共用プラットフォームを作って支援
- OA雑誌…まだIFが高いような雑誌は少ない+掲載料負担が必要
- 機関リポジトリ…著作権処理のような事務負担は生まれるが費用負担は生まれない
- この状況を踏まえて、MEXTでは機関リポジトリ構築を推奨
- OAかとは別に…日本に有力な雑誌がいるのでは?
- 日本の論文の8割は海外に投稿され流通
- 日本に海外から論文を取り込むような雑誌の取り組みがいる
- 研究者評価…IF以外の適切な方法についても議論していただきたい
- MEXTでも雑誌については検討会を設けて議論する予定
- 今日のシンポジウムが、研究者コミュニティ全体、科学者コミュニティの皆さんが考え、良い方向を示していただきたい
「オープンアクセス影響下にある新たな学術誌刊行支援」(安西祐一郎先生・日本学術振興会理事長)
- OAはもう世界的な流れ/特に公的資金の成果は誰もがアクセスできるように、という理念は世界的に共通している
- 日本はキャッチアップするポジション
- JSPS、JSTもメンバーになって、Global Research Council、世界の学術振興機関による会合が毎年ある
- OAはずっと喫緊の課題。先進国/途上国の問題も含めてホットな議論がされている
- 学術振興/学術研究の発展はそれぞれの国にとっても極めて重要な基盤をなす…その中でOAの問題を検討して、良い形で実現することが重要
- 特に学術誌支援について、日本学術振興会の立場からお話する
- JSPSの紹介
- 研究者の活動を安定的/継続的に支援する。短期的でない、安定していて継続的な資金支援を行いたい
- 研究成果の公開発表について…これも科研費により支援している
- 優れた日本の成果の海外への情報発信、国際化の方向に強く触れている…その中で学協会が刊行するものについて、紙⇒電子化・OAにスイッチすることを支援
- 日本の研究者の状況
- 国際的な論文シェアは減っているが、海外誌への投稿割合は減っていない
- 日本の学術情報発信機能を強化するために
- EJ移行とOA…自然科学系はEJに移行しているし、国際的な発信強化のためにOAを取り入れたい
- 国際的な発信機能の強化/OAについての支援をすることを、JSPSとしては強調していきたい
- 科研費による取り組みについて
- 国際情報発信強化の取り組みに関する説明つらつら
- 私見:
- OA誌は掲載料が高いことが多い…大規模プロジェクトに入っているような研究者なら掲載料を出せても、一人でやっているお金のない研究者をどうやったらサポートできる?
- OA誌…採択可否が短期であることが多い。時限があるところはそれがありがたいわけだが、大規模プロジェクトに入っている研究者ほどOA誌に出しやすいのでは?
- 査読…購読誌と違う形で取られていることが多い。その文化の違いを、JSPSのような幅広い研究者を支える機関がどう対応していくのか?
- いずれにしても…OAは世界の大きな流れ。止めることはできないしやるべきではない。OAを日本として、日本の研究者が積極的に進めるには、課題を洗い出して克服する合理的な方法を考えなければならない
- こういったフォーラムで議論が進んでいろいろな手が取れるようになると嬉しい
- いずれにしても…OAは世界の大きな流れ。止めることはできないしやるべきではない。OAを日本として、日本の研究者が積極的に進めるには、課題を洗い出して克服する合理的な方法を考えなければならない
「日本の学術政策とオープンアクセス政策を活かした将来観」(中村道治先生・科学技術振興機構理事長)
- これまでの話からも…いろんな問題があって一つの解ではいかない
- 研究者、研究コミュニティとしては自分の成果はできるだけ多くの人に読んでいただきたい、当然
- data-drivenや共著など、知識を共有しながら研究することを考えても、OAに反対する研究者はいまい
- 一方でお金の問題…大学も研究機関も苦しい中でどうやってお金を捻出するか?
- その議論は整理してやっていくのがいいのではないか?
- JSTの立場から、最近やっていることを紹介したい
- JSTの助成による研究は年間5,000件、日本の年間70,000論文の7-8%。かなり質のいいものが多く、海外の雑誌に投稿されることが多い。まずこれを前提に
- OAの背景
- 公的助成の成果は広く国民に知らされ、利活用されるべきである
- 手段もある…インターネット/紙に印刷しなくても世界に自身の研究成果を素早く届けられる
- 予算が厳しい中で、国際出版者による論文独占への危機感もある
- OAにより知識を生み出す側と使う側が垣根なく、自由に利用できる状況を早く作ることが我々のテーマである
- OA…H.24、科学技術・学術審議会の学術部会の報告により、OAを積極的に進めるべきとの提言がなされた
- それを受けてJSTとして何をやるべきか考え…2013.4にJSTのOA方針を出した。JSTの助成による成果を発表する際は原則、OA化すること。OA化を強く推奨する(recommendation)
- 助成の公募や新領域を立てるたびに周知している
- 2014.4には、これを「義務化」に一歩進めたいと、この一年、内部では検討していたのだが…まだ時期がはやい、もう少し時間をかけてスムーズに移れるように、やることがまだあるんじゃないかということになった。この点についてご意見いただければありがたい
- GRCでもこの問題を議論していて、方向はあっている。今年、北京で開催される年次総会では各国の状況のレビューがなされる
- それを受けてJSTとして何をやるべきか考え…2013.4にJSTのOA方針を出した。JSTの助成による成果を発表する際は原則、OA化すること。OA化を強く推奨する(recommendation)
- 海外…NIHが積極的に取り組んでいる。2008年に既に義務化、2014.2時点で80%の論文がOAに
- JSTの助成論文のOA状況を…今日は出せないのが残念
- 6〜7割はOAにしているという先生もいるし、じわじわ進んでいるんじゃないか?
- 最終的にはJSTは義務化する方向だし、それが研究者の皆さんのお役にも立つのではないか?
- 最後に…研究データのオープンアクセス化をどうするか? 時間があればこれもぜひ議論を
- GRCでもここはまだ立ち入った議論はできていない
- G8の会合ではここに入り込むことがもう決められているし、今年もまた議論が進むものと思う
- 研究者の皆様方にとっては非常にインパクトがあることと思う
- その中で、欧米ではResearch Data Allianceを立ち上げて、世界的にどうやっていくか議論を始めているし、助成機関はそのコロキアムというのを別に作ってやっている
- ぜひ日本からも積極的に参加いただいて、世界のデータ共有の議論に入っていただく必要があるのではないか?
「ドイツ・欧州の学術政策とオープンアクセス化による影響」(Ralf Schimmerさん・Max Planck Digital Libraryディレクター)
- マックス・プランク協会とOA
- Max Planck…Berlin宣言について。世界470以上の研究機関が参加(日本は未参加)。中身はBOAIと似たようなもの
- 2013.11…Berlin宣言10周年を祝い、Max Planckで会議開催、新たなステートメントも出す
- この理念はMPのルールにも反映されている…ただし義務化はしていない
- Max Planck…Berlin宣言について。世界470以上の研究機関が参加(日本は未参加)。中身はBOAIと似たようなもの
-
- Green or Gold?
- 機関リポジトリもあるが、MPとしては非常に強くGold OAを支持している
- 購読システムは機能不全、時代遅れのもの。このシステムを革新的に変えたい。購読費用をOAにシフトすることでOA予算にあてたい
- MPの中には十分な資金があると考えている。また、国レベルでも現在、購読モデルに払う以上の額にはなるまいと試算している
- Green or Gold?
- 各国のOA/研究振興機関について
- ドイツ
- Berlin宣言の翌年、ドイツの研究機関はOAの連合を組む…2007年にはデジタル情報イニシアティブになり、5年間実施される
- 2013年に制度改革、ドイツの学長や研究機関がこのイニシアティブを支持している
- WGがOAについて活動/ナショナルライセンス、ナショナルホスティング、研究データ、法的な問題…著作権や紙と電子の税率の違いの問題に取り組んでいる
- ドイツ研究振興協会…ここもOA出版の資金に関わっている/いくつかのプログラムがあり、大学に対してAPCのための助成をするのに使われている
- 予算の3分の1を大学は自前で用意、3分の2を研究振興協会から得る
- 新たにGold OAのWGも立ち上がっている。OAのグループ+ライセンシングのグループが協力。出版者との交渉等を行っている
- ドイツ
-
- Science Europe…ヨーロッパの助成機関と研究機関の統合体/強くOAを支持
- グローバルな競争時代のビジョン、ヨーロッパの研究におけるOAを進める
- Berlin宣言に次ぐくらいの野心的な政策を実施している…2010年にWG設置、以降ずっと活動、率いるのはMP
- WGが2013.4と2013.10に、OAと、より広い政策についてポジションステートメントを発表
- Science Europe…ヨーロッパの助成機関と研究機関の統合体/強くOAを支持
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- GRC
- 2012年に設置された際に、OAを鍵となる分野として位置づけ
- 今年の北京での会議の後、2015年には日本が主催すると聞いている。日本でOAを進める推進力になれば
- Berlin宣言への署名がこの時期に行われるとさらに良いのだが…
- GRC
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- 米国
- 現在の米国での議論はOA義務化。NIHで既に義務化されている、2008年にそれまで任意だったものが義務付けになった
- 米国の議会ではこの義務化をなくそうという動きも出たし、逆に幅広くしようという動きもあったが、どちらも失敗している
- 欧州では議会でこのような議論は起こっていない。科学技術に関する省が関心を示すことはあるが
- 2013.2…米ホワイトハウスがOA指令(OSTP指令)を出す。6ヶ月の間に提言をせよとしたところ、3つ出てきた
- NIH:PMCをPub Fed Centralにする、大きくするという提言/大学側…SHAREの提言/出版側…CHORUSの提言
- まだ意思決定はいずれに対しても行われていない。大統領府がいずれかを支持するのか、まったく違う考えを示すのかはわからない
- NIH:PMCをPub Fed Centralにする、大きくするという提言/大学側…SHAREの提言/出版側…CHORUSの提言
- 現在の米国での議論はOA義務化。NIHで既に義務化されている、2008年にそれまで任意だったものが義務付けになった
- 米国
- OAの成長
- Web of Scienceに載っている論文を対象にOA状況の調査を実施
- 過去の10〜11年で、Gold OA誌に載っている論文はずいぶん増えている
- 2001年にはGold OAは3%⇒現在では12%に
- 日本がけっこう進んでいる/ドイツはそれに比べると遅れている
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- OAはどの程度重要な論文で実現されているのか? 質は劣っているのか?…引用文献中での状況を見てみる
- OA論文が研究論文中でどれだけ引用されているか見たところ…国によって差はない、どの国でもOA論文が引用文献中に占める割合は上昇している
- OAはどの程度重要な論文で実現されているのか? 質は劣っているのか?…引用文献中での状況を見てみる
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- MPのGold OA…2012年には約1,000の発表論文がOA
- BMC、New Journal of Physics、Copernicus(Geo系)、そしてPLOSが多い
- 機関外の共著者がいる場合もあるので、全APCをMPが出しているわけではない。将来的にも60%分くらいがMPの支払いになるのではないかと予想
- MPのGold OA…2012年には約1,000の発表論文がOA
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- OA出版者の状況
- 上位20社が発表論文の80%を占める。そのうち4社がOA専門の出版社
- 購読モデルの出版社と同じくらい、OA出版社は重要
- OA出版者の状況
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- OAは力強い/現実のものとして見ている
- 購読モデルへのプレッシャー…正当性への疑義、システムとしての崩壊
- システム全体として、OAにするという意向が必要であり、それもGoldの方がダイナミックなモデルと考えている
- お金の流れの再設計が必要
- Finch曰く(Berlin会議にて):「変化は不可避である。これを認識し、受け入れ、manageしなければいけない」
- manageしなければ、というところがいい。持続可能なものにするにはmanageが重要。その上でもSCOAP3は重要な具体例と思う
- OAは力強い/現実のものとして見ている
- 今後のOAへの移行…SCOAP3について
- まとめ:
- OAはダイナミックに進んでいる
- 研究者にとっても重要、実際に引用されている
- 多くの国で研究振興機関はOAに積極的
- MPとしては購読⇒OAへの移行を希求。SCOAP3にも期待
質疑
- 科学社会学会・たけうちさん:論文のOA化が進むほど、論文の流用/盗用も進むのではないか。その対策がいるのではないか。今、日本ではSTAPの件で論文が盗用されたことが話題になっているが、こういう論文の不正使用への対策が必要なのではないか?
-
- A:中村さん。大きな問題ではあるが、現時点では、これは教育の問題。公募要領にも書いているし、採択されたすべての人に講義をして、宣誓書を出してもらっている。ゆくゆくは大学で倫理教育を受けた方以外には応募資格はない、ということにしたいと考えている。技術的には、すべての応募論文の図面を世界中の図面と対照する検索がすぐにできるようになる。楽観している
-
- min2-flyコメント:逆じゃね? OAならだれでもチェックできるけど、購読誌から盗用されると査読者がそれ購読してないとチェックできないわけで。まあバレるのに盗用する人も…げふんげふん
- 安西さんに。個人ベースの研究者に対して、制度的に対象になっているものはある?
- 中村さんに。学際分野への対応はどう考えている?
- 分野融合型の研究において今日の議論はどうなるかということだろうが、分野融合だから考え方が変わるということはないと思う。ただ、新たに雑誌を立ち上げようという場合は、ぜひ最初からOA誌にして欲しい。
- シマーさんに。ロシアとの関係を教えて欲しい
- ロシアとドイツの関係への質問と思うが、こちらからはきちんとはお答えできない。省庁レベルのやりとりはあるだろうが私がアクセスできるわけではない。国際コンソーシアムにはもちろん、ロシアの参加者もいるが、通常どおりオープンに議論している。ロシアはSCOAP3に参加しておらず、それは政府レベルで決めることで図書館で決めることではない。MPには中国などアジアからの研究者も、ロシアからの研究者も来ている。図書館側としては他のユーザと同じように扱っている。
休憩
パネルディスカッション
パネリストプレゼンテーション
「新しい局面を迎えたオープンアクセス政策:なぜ今議論が必要か」(林和弘さん、文部科学省科学技術・学術政策研究所、科学技術動向研究センター・上席研究官)
- OAは単なる理念の提唱や局所的な取り組みを超えた新たな局面に
- OAの議論は待ったなし、ガラパゴス化を避けなければ
- 他国を参考にしつつ能動的に日本にあわせた議論を行う必要があるが、研究者参加がいいのか、政治主導でいいのか?
- 出版エコシステムとしてのOA
- OAは既にエコサイクルの中に浸透
- アジアからの論文数は伸びているが購読予算は伸びない⇒増えた分はOAモデルでカバーしないとお金の出処がない
- 少なくとも論文についてはOAのビジネスモデルは成立。APC+カスケードによって成立し、保守筆頭の大手商業出版すらOAジャーナルに動いている
- カスケードモデルの説明…いったん査読のラインに乗ったものは最低限の科学論文としての要件を満たせば、どこかでは出版される。そしてお金が入る
- 研究評価としてのOA
- イノベーション政策としてのOA
- OAの義務化政策
- 49カ国、490以上の義務化プログラムがあり、85の助成機関も義務化
- 科学技術外交としてのOA
- 最近の米国の活動事例
- Scholarly Publishing Roundtable…2009-2010年の、関係者を集めた会議が下院で実施
- 2013年…OSTP指令
- 政治・議会の積極的な議論+関係者を集めたroundtableの実施は参考にできる
- OSTP指令を受けて…SHARE:機関リポジトリの活用案 VS CHORUS:出版社のサイトからフリーで見せる案
- ポイント:出版社・図書館だけでなく大学も積極的に議論に参加している
- ごくごく最近…AAASの年会で出版・大学・学会・図書館の関係者が学術情報流通の将来を語る議論を実施
- 日本の最近の事例:NII
- NII…長くOAについて、機関リポジトリの推進やSPARC Japanを通じて取り組む
- その他にも諸々あるが…それらをさらに発展させるには、イノベーション/産業化のためのOA、学術を発展させるための統合・連携のためのroundtableが必要では?
- そうでないと…OAは政治的には必然/研究者がroundtable等を通じて無理のないOAにできるのではないか?
「研究振興の将来を築く学術政策」(下間康行さん、文部科学省研究振興局参事官・情報担当)
- 概括的な話なので繰り返さなくていいかもだが…
- MEXTあるいは国としてのOAへの姿勢が明確ではないと言われることもあるが、政府としては、機関リポジトリの構築を推進し、OAを推進することは閣議決定されている
- 科学技術・学術審議会の中でも審議のまとめの中でOA雑誌の育成、機関リポジトリの活用について言及している
- 日本の概況…もう紹介済みなので繰り返さないが…
- 日本はGreen or Goldについては、それぞれ支えている。Gold OAは科研費の研究成果促進費とJ-STAGE、Green OAはNIIの機関リポジトリの構築支援・共用リポジトリの構築
- J-STAGEの補足説明…搭載論文の87%がOA、宣伝しておきたい
- 機関リポジトリ…100万件以上の成果が蓄積・発信されているし、個別に機関リポジトリを立ちあげられないところむけにはJAIRO Cloudがある
- 博士論文のOA化…Greenにもつながる。これまでも博論の公表義務はあったが、紙⇒電子、原則として機関リポジトリ公開とした
- 研究活動の不正行為へのガイドラインについて…研究者・研究活動を守るためにも、証拠が残っていないと不正行為とみなされてしまうことがある。客観的/検証可能であることを担保するためにも、データの公開もまた有益?
- 雑誌価格高騰について…大学全体で220億円支出し、大学によっては次年度には1億円増になるところも。大学間での格差も生じ、懸念されている
- JUSTICEにより価格交渉を実施しているが…企業等でも費用削減が進んでいる。研究者がどこにいようと自由に論文にアクセスできる環境構築は重要になっている
- 浅島先生が主査になって文科省に検討会も立ち上げている。その中でOAについても議論していきたい
- OAは目的ではなく手段
- 林さんの問題指摘も含めて議論していきたいが…国の方針としてはOAの強化の方向であるが、学術情報流通の健全化とイノベーションのためである
- 政策主導 or 研究者コミュニティ主導については、MEXTとしては立ち位置は明確。研究者側のイニシアティブが重要。ACADEMIAが、このシンポジウムを機に真剣に議論していって欲しい
- 林さんの問題指摘も含めて議論していきたいが…国の方針としてはOAの強化の方向であるが、学術情報流通の健全化とイノベーションのためである
「研究者から見るオープンアクセスとパブリックアクセスの現状」(植田憲一先生、電気通信大学レーザー新世代研究センター)
- OAの理念は研究活動の理念と重なっている。昔からOAをやっているつもりである
- 研究者からすれば…新たな研究成果を出すことも重要
- 「無料購読」だけでなく「無料投稿」も重要。循環系の構築が重要
- 持続可能性の重要さ…学術論文は正しい知識だけを伝えるための手段ではない、どうやって「沈殿」の仕組みを作るか
- トップジャーナルのブランドはIFだけで決まるものではない/どれだけアクティビティを産み、歴史に残したか
- トップジャーナルを作るとはどういうことか考えないといけないのでは
「大学図書館における学術誌受信の課題と、オープンアクセス潮流による影響」(江夏由樹先生、一橋大学附属図書館長)
- 結論から言えば図書館はお金がなくてアップアップ
- 自分の立ち位置…3年4ヶ月、一橋大学図書館長
- 大学図書館の課題:価格上昇し続ける外国雑誌
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- 例えば一橋大学の場合…アクセス数上位はほとんど経済系英文電子ジャーナル
- 今日の話を文系の人にするなら、まず経済系、英語・数学をやっている人を引き込まないと
- 例えば一橋大学の場合…アクセス数上位はほとんど経済系英文電子ジャーナル
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- 雑誌論文が成果発信媒体のすべてではない
- 紀要、図書等
- 雑誌論文が成果発信媒体のすべてではない
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- 日本語での研究発信が求められる分野はどうする?
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- OAと人文社会系…OAの波は来るのか?
- 来ると思うが、いつどうくるか、理系と同じ形で来るかはわからない?
- OAと人文社会系…OAの波は来るのか?
- こういう話をもっと宣伝する、あらかじめ話をすることが今の私のミッションと思う
「人文系に関するOA化」(永井裕子さん、日本動物学会事務局長・UniBio Press代表)
- 人社系の学会・研究者個人が何を考えているか紹介したい
- 国際的には…OAPENによるオープンアクセスに対する人社系研究者意識調査
- 53%の回答者はOAを知っているし、38%はよく知っている
- 日本の状況…NIIの調査結果が4月上旬にwebで公開される
- 人文系研究者・学会やある個人の意見
- OAへの関心は高かったり低かったり、理解もあったりなかったり、調べると意外に無料でアクセスできる論文が増えていることに気付いたり
- 日本の学会として何を外に公開すべきか?…日本独文学会の取り組み
- ドイツ語圏と対等ないしそれ以上に研究成果を主張しうる領域や、学問的に優位性を持ったテーマに力を入れて発信していくことを決めているという
- 自分たちがなにを世界に強く出せるのかを人社系の学会が強く考えている
- 国際化の動きは見えにくいが、日本の人社系の研究者も海外と同じ地平でやっている。欧文による成果から順次、しかるべき方法でOA化を推進できるのでは
- 人社系の方が研究者がイニシアティブをとるようなOAをやりうるのではないか? 人社系の研究者はよく考えている
- ドイツ語圏と対等ないしそれ以上に研究成果を主張しうる領域や、学問的に優位性を持ったテーマに力を入れて発信していくことを決めているという
-
- 最後に…共催の資金の出処は科研の研究成果公開促進費、というところを紹介w
「学会からみる国際学術誌発信の実情と、今こそ必要な学術政策への提案」(玉尾皓平先生、日本化学会会長・理化学研究所研究顧問)
- 結論から言う…リーディングジャーナルの育成とOAジャーナルのサポートは同時にやるのが重要
- リーディングジャーナル育成を前提に置いた上でのOAジャーナルの議論
- 日本化学会の雑誌2誌も科研をとれている…5年後を目指して世界のリーディングジャーナルに仲間入りしたい
- ゴールドジャーナル出版=一次情報としての論文OA、グリーン=二次的な論文OA?
- Gold OA、ジャーナル自身のOA、APC
- まずやるべきはリーディングジャーナル化
- そのためには…高レベルを維持したOA・リーディングジャーナル化の条件は以下
- 継続的出版費サポートを前提に、理想的には投稿料無料、大手出版に委託せず高質の変種体制を維持し、OA対応電子ジャーナルとして確立する
- 継続的出版費サポートを前提におけば、国費によるリーディングジャーナル実現はできる
- そのためには…高レベルを維持したOA・リーディングジャーナル化の条件は以下
- どれくらい金はかかる?
- OAリーディングジャーナルを最大で20とする。1件あたり年1.5億円とすれば、年30億円。科研費全体、2400億円の1.2%程度
- しばらくは継続的サポートが必須
- まとめ
- 我が国の研究論文を出版する学協会のリーディングジャーナルと両立しえるOAは、まずリーディングジャーナル化を達成した上で、OAジャーナル化も国費で継続的に支援すればできる
- それでOAになるのは我が国の論文の10%程度ではないか。Gold 10%、Green 90%くらいでやっていけるのでは
- 将来的には国際相場の投稿料でも成立する実力をつけ、国費負担を軽減し、自立を目指す
- 我が国の研究論文を出版する学協会のリーディングジャーナルと両立しえるOAは、まずリーディングジャーナル化を達成した上で、OAジャーナル化も国費で継続的に支援すればできる
「日本の学術情報流通への3つの提言」(谷藤幹子さん、物質・材料研究機構科学情報室室長)
- 図書館+OA出版の立場として、また学術誌問題委員会の委員としてOAのことを考えられる身として、私の視点でまとめたい
- 図書館…雑誌価格高騰が問題なのは研究機関も同じ
- OA運動が始まって10年あまり
- 全体を平均すると、世界の論文の半分がなんらかの方法でフリーになっている
- 日本の取り組みの紹介
- これからの10年がどうなるのかが、この先の議論?
- 3つの提言
-
- 提案1. 受発信問題におけるOA
- Goldにするにしてもいろいろなオプションがあるよ、という話
- アメリカでは800以上の学会が750誌を超えるOA査読付きジャーナルを出している
- 提案1. 受発信問題におけるOA
-
- 提案3. 研究とOA
- 学会員として、日本発学術誌の魅力とは?
- 日本でも公平かつ質の高い査読ができることを示す
- 研究者として、なぜOA推進が世界で進んでいるか?
- 当然出てくる、なんで自分がという疑問に、記録/普及、世代を超えた利用しやすさなど、広い目で見て、この研究の次の世代に必要なんだという啓発普及が必要なのではないか
- 学会員として、日本発学術誌の魅力とは?
- 提案3. 研究とOA
- 推進する、制度を作る、前向きな志向で研究者も参加する
ディスカッション
- 大西先生:
- 挨拶でも述べたが、浅島先生がリーダーになって、学術誌問題として議論してきた。今はその範疇を超えて、科学的研究成果の適切な流通の形態に議論のフィールドが変わっている
- ODとOAは違う。OAは完成物、できあがった成果を世に問うもので、公開にためらいはない。どれだけ多くの人の目に触れるのかが著者の関心だし、その過程で受ける査読、権威あるところで査読を受けたことでそれ自体が評価になることにも関心がある。ある意味で、IFという格好で評価されているが、雑誌のレベルが大きなポイントになる。リーディングジャーナルという話もあったが、投稿側としては大きな関心事だろう
- リーディングジャーナルを育てることとOAが日本の中で、まずリーディングジャーナル⇒OAという、日本発でリーディングジャーナルを作るということは、どの程度、目的になりうるのか? 海外もサポートしているという谷藤さんのお話もあったが、日本の論文数は5%程度。日本人の書いたものだけを相手にしていてはシェアはその程度。そうではなく国際ジャーナルにする必要があるのだが、現実問題どの分野でどの程度可能なのか? それが難しければ、日本はどこかと組んで共同でジャーナルを育てるという手もある。
- あまり話が出なかったが、OA雑誌のコストがいくらかかるのか、どう負担するかの議論。あまり鮮明には出なかった。私自身は、ややマイナーな、5千人規模の学会で育ってきた。査読は会員がただでやるが、事務局の経費は一定かかる。紙の頃は印刷費が経費の大部分だったのでやめれば相当コストダウンできるが、紙媒体の雑誌を出すことで成り立っているというところもあった。ただこれは査読論文と雑誌、特集雑誌を分けてしまえば話が変わる。純粋な査読論文出版の費用をどう負担するのか。コストがどのくらいでどうやって負担するのが現実的なのか。
- いずれにしても、日本の得意な分野でOAを伸ばすために、もう少しやれることができると考える。こういった形でのシンポジウムは有意義で、学術会議は旗振り役として、できることをいろんな格好でやっていきたい
- 玉尾先生:
- コストは、私は1誌1.5億くらいと考えた。日本化学会も2誌でほぼそれくらい。今は5千万円が科研費、残りは購読収入と学会費。今は印刷体も出しているが、全て電子ジャーナル化しOA化すると、印刷費は不要だが購読費は入らなくなる。それをやりつつ査読も高いレベルで、となると、事務費等含んで、1億くらいになるのではないか?
- 安西先生:
- JSPSとしてこういうことができる、したいことを端的に述べる
- 第一に、日本からのリーディングジャーナルに貢献したい。学振は学術の振興機関。これからの時代、国際的な学術の世界に日本からオリジナルの情報を発信することに貢献すべき。他の国と一緒にやる方法もあるかも知れないが、学術の発展に、我が国の学術の発展をベースに、世界中と協力して、リーディングジャーナルを出すことがしたい。それとOA化を同時にしていかないと世界のストリームに乗り遅れる。玉尾先生もおっしゃるように、OA化とリーディングジャーナルは同時にしていかないといけないし、そのために科研費の国際発信強化が大事と考える
- 第二に、例えば化学のような大きな領域だけではない。例えば独仏英文の分野なら、個別にリーディングジャーナルを支援しようとすれば莫大になる。マイナーな分野もゆるがせにしないのがJSPSの立場。ここは大きな課題。国際情報発信強化のプログラムでマイナー分野の支援をしたいというのが私見も含む気持ち。私自身は文理両方で仕事をしていて、例えば言語学ではOA誌が、海外では小さいができつつある。編集委員の取り合いのような状況である。文系においても世界的にはそういう動きがある。日本としてどうするか
- 付け加えて。じゃあ日本の一般の、大学教員それぞれがこの流れを知っているかという点は危惧している。こういったフォーラムのことも含めて、広報を十分にしなければいけない。大学改革と同様で、大学の大きな流れは世界的に変わりつつあるが、大学内にいる一般の方はそことインタラクションがない。日本の大学は世界の潮流とかけ離れた場になっている。そのことには非常に気がかりを持っている。その中でのこの問題とも捉えている。広報が大事
- あと一点。持続性は非常に大事。国際情報発信強化も、5億弱であるが、30億円という玉尾先生の話とはかけ離れている。それでもそれを持続的に絶やさずつづけることが大事と考えている。ぜひ応援を
- 浅島先生:
- 学術会議が持っている分野は30。MEXTの方も、少なくとも学術会議に30分野があって…一方で学協会は1700から1800に増えている。どんどん細分化している。そうった日本の学術のあり方も考えないといけないが、下間参事官、ご意見ありますか?
- 下間さん:
- 中村さん:
- 日本でリーディングジャーナルを育てようとすると、今の学会単位は無理。1700も1800も学会があって個別に議論しているのは変。大きく変わろうというときに、学会のあり方、雑誌出版のあり方を考えるいい時期に来ているのではないか
- Scimmerさんのデータ・エビデンスを見ると日本もけっこういいなと思うのだが、そういうデータを日本から出せないのが問題。その中でNIIはよく分析をやっていて、これからも皆でNIIを中心にやるといいのではないか
- JSTの助成については、義務化の方向で考えている。研究費が大きいので、そこから10-20万円のAPCを出すのは難しくない。そういう意味でも、JSTからやるのがいいのかなと思う
- データの話に今日、行き着かなかったのは惜しい。ジャーナルのOA、データのオープンが研究活動の中でどういう位置づけにあって、それに日本が入らないというのはどういうことなのか。サイエンスの新たな枠組みの中に日本もはやく入っていくべきではないか。
- 林さん:
- データの議論は別途検討がいると思うが、そもそも日本の研究者のOAへの認識がまだ低いので、データに一足飛びで議論をもっていけるか。中村理事長と同じ想いはあるが。地球科学等、国際戦略としてデータをオープンにしてグローバルに議論しようという領域もある。そういった意味で、領域別のOAを進めることはあってもいい
- あえてチャレンジしていきたい。日本は学協会が多く、小さい出版社も多いので、それぞれがんばってもしょうがないという議論もあるが、J-STAGE自身が学協会の700-1000の雑誌のプラットフォームにとどまらず、publisherとして振る舞っていくやり方を検討してもいいのではないか。そこで大事なのは、2008年の調査では、J-STAGEの雑誌のほとんどが再利用に関する規定がない。今も変わっていないと思う。単にオープンにする、フリーにするだけではなく、再利用まで認めたものが真のOA。そっちに持っていくことでイノベーションを促すという手もあるのではないか。
- 中村さん:
- 浅島先生:
- 浅島先生:
- Scimmerさんに。今日、お感じになったことを率直に
- Scimmerさん
- リーディングジャーナルについて。雑誌の新創刊は簡単だがリーディングジャーナルにするのは大変。成功した例を2つ知っている。1つはお金のかからない方法で、90年台のある雑誌が、何年かかけてリーディングジャーナルになった。複数のジャーナルによって踏襲されたモデルで、5つの雑誌のファミリーが2人の職員しか使っていないので安い。また、研究者が編集をかなりやっている。また、コンピュータも私達の研究機関内のルーチンサービスとして提供されている。全般に効率的に安くできているが、何年かはかかった
- はやく実現したいならコストは余計にかかる。具体例としてはeLife。創刊から1年位だが、MP、ウェルカム財団、ハワード・ヒューズ財団の共同創刊。<以下、説明>かかった金額は未開示だが、巨額のお金が毎年、オペレーションにかかるとも聞く。急速に成功したいなら莫大なお金がかかる。これは商業出版社から学んだことでもある。Elsevier等も新規チャンネルを立ち上げたりするが、ある程度の成功をすぐに成し遂げたいならコストがかかる。
- 浅島先生:
- 大きな助成機関があって、大きなお金があって動くことが大事なのか、MPには多くのリソースがあるのでうまく行っているのか?
- Scimmerさん:
- この場合は、計画を立てた人の意図が大きい。もともとウェルカムがeLifeをやろうと考えて、MPを誘った。私は当初、批判的だった。巨額のお金を使うのは、全体像の解決にはつながらないと思う。難しいのは、新しいソリューションを広い分野にまたがって見つけること。ほんのわずかな努力ですべてが変わることがある。例えば、数年前、ドイツのドイツ語の法学ジャーナルが立ち上がって、購読料があまり集まらなかったので補助金が入っていた。それでOA誌にして、その分購読料がなくなるので、何かの資金を求めなければいけなかった。財源を探さなければいけなかった。また、GDFというものがあって、OA誌をつくろうということで多くの研究機関が関わったが、大学のある学部が学部で雑誌を作ったりする。それでも当初は学部で出していて、一部の研究機関がもともとのジャーナルのブランドを変えることでより目立つようにしてより多くの人にアウトプットを届けられる、持続可能性につなげるということもあった。
会場討論
- 科学社会学会・タケウチさん:大西先生に。日本の学会数が多すぎてリーディングジャーナルは育ちにくいという話があった。どうしたらいいかというときに、領域別に集約するとか。人文、社会とか、諸学会を再編成して共同してOA化を推進させるというのはどうなのか?
- 大西先生:学術会議に登録されている団体数は2000弱。規模はピンからキリまで。数万人から数百人まである。十把一絡げにはいえない。目標を決めればそれに応じて何をしなければいけないかが出てくる。大きなところが単独でやることもあれば中小で大同団結するところも出てくるだろう。最初に学会が多すぎるから一緒にならないと、と提案するのではなくて、目標をはっきりさせて、それに応じてどのくらいの協力体制を作らなければいけないかは自ずから出てくるのではないか。諸外国とどう組むかという国際連携が重要になると思う。
- 一方でリーディングを目指さなくてもOAは必要になってくる。さっき言いそびれたが、結局学会はみんなで会費払ってサークルを作っている側面もある。その資源である論文誌に誰もがアクセスできるようになると会費の意味が問われるようになる。会員でなくても無料で読めるものにどのくらいコストを負担するのか。整理して進めないと理解が進まない。やり方によっては安いコストでもOA誌を作れるのであれば、問題が軽くなりやりやすくなる。多くの学会がそういう現実的なところを理解する必要があるのでは。
- 大西先生:学術会議に登録されている団体数は2000弱。規模はピンからキリまで。数万人から数百人まである。十把一絡げにはいえない。目標を決めればそれに応じて何をしなければいけないかが出てくる。大きなところが単独でやることもあれば中小で大同団結するところも出てくるだろう。最初に学会が多すぎるから一緒にならないと、と提案するのではなくて、目標をはっきりさせて、それに応じてどのくらいの協力体制を作らなければいけないかは自ずから出てくるのではないか。諸外国とどう組むかという国際連携が重要になると思う。
- タケウチさん:安西先生へ。ヒトとカネがないと、という話があったが、お金がかからない話もScimmer先生からあった。逆に巨額のカネを投入するかという話もあったが。どちらがいいと思うか? カネをかけないべきか、巨額の費用を出して集約する方法がいいか?
- 端的に答えるが。できれば学協会が多くてどうなの、というところがある。私も中村さんも言われていたが、極めて妙なこともある。袂を分かって別の学会を作るとかいうことがある。そういう人たちがもう1回まとまって、これからの時代のジャーナルを作っていこう、と。それから他の国の機関や国同士での連携もある。研究者・教員がフレキシブルなマインドを持って取り組んでいかないと日本が立ち遅れるし、そういったマインドを持ったジャーナルに国が支援していくことが大事と思う。国際情報発信強化もそういう理念を持っている。
- 日本地球惑星科学連合・木村先生:科研費の支援でOAをはじめるところ。2つ質問がある
- この科研はこのコミュニティをいかにグローバルに位置づけていくか、ということと思う。そのために50の関連団体が集まった。そして国際化を成し遂げようというときに、少子高齢化でヒトも少なくなっている中で、国際的に情報を発信できる人間の育成に真剣に取り組んでいるつもり。そのときに、OA支援の研究費ではあるが、柔軟な資金運用も必要と思う。当然ながら日本以外にも国際的に書き手を集めて1級の雑誌にしなければいけない。そのためにエディターに対する給与を払うとか、執筆者への、invited talkをするための対応とか。あるいは海外の同じような連合体に出かけて行ってノウハウを学んでいたりもする。そういうことに、資金を柔軟に使うことに、どの程度対応していただけるか。
- 日本のコミュニティをどう国際化するか? それにJSPSやJSTはどういう戦略を持ってやろうとしているか?
- 中村さん:
- NIMS・アリガさん:中村先生に。研究者の立場からすると重要なのはコスト。私は年に15本くらい論文を出す、それに20万もとられていてはやっていけない。いかに低コストでのOAを実現するか。そのキーはJ-STAGEと思う。リーダーシップをとって低コストで実現すればみんな投稿したいと思う。期待している。
- MPD・イワタさん:アカデミックなデータや情報は正解共通の財産。Elsevier等もステークホルダー。Berlin宣言も彼らも参加していた。日本で議論する際にも本当の意味でのステークホルダーが集まって議論する場を作っていくべきでは。
- 浅島先生:2010年の時には国内のステークホルダーが常に一緒に議論してきたが、なかなか予算配分や国のタイミングのこともあり、またもうひとつは、OAの世界がものすごい勢いで変わっていったので、NDLはちょっと意味が変わってきて外れた。でもほかは今も共通・共同作業をしている。一見、別々に見えるかもしれないが、MEXTを中心に学術成果の発信はまとめていっている。その実現化についてはいろいろな方法を考え、皆さんにも協力していただきたい。
- ホンマさん:分野によってはOA誌をリーディングジャーナルに育てるという発想でないといかないところもあると思う。国際的な評価は、人文科学の評価は比較的低いが、英語以外の3〜4言語+数学ということでないと多くの読者を得ないとできないのではないか? そのためにはOAから出発して、良いテーマを選んで日本発信で育てていくことが必要では?
- 植田先生:前の提言でも話があったのだが、包括的なコンソーシアムの提言にはOAとリーディングジャーナルを重ねて実現しようというのはある。分野によって進んでいたりそうでいないところがあるが、進んだところを他につなげようというのが包括的である意味。OAであることの意義のひとつは購読料がないので、雑誌を横断してもう一つ作るとかしてもいいわけで。また、リーディングジャーナルのブランド力のために、日本のオープンなものをがさっと集めてしまう、日本の窓口となるプラットフォームを作って、そこには人文系も含めて新しいものを集めて、ということをやってもいい。バーチャルジャーナル・オン・OAというスキームを作ればどうかと議論していた
- 江夏先生:人文系は事情が違う。ひとつは英語。経済学はずっと英語でやるので英語が近い。私の仕事のひとつは、日本語で書かれたもののエッセンスを英語で発信すること。具体的に話も進めているが、一番苦労するのは英文校閲。人文系では日本語のものをそのまま英語にして英語読者に受け入れられるわけではない。英語向けにロジックを変えなければいけないのだが、その校閲者、あるいは翻訳者の不在が問題。でもこれは日本の強みでもある。日本の発信という意味では楽しみな世界でもある。
- トムソン・ロイター・ハタノさん:リーディングジャーナルの議論が出ている。WOSで日本と世界のIFを比べていると、世界のジャーナルはどんどん上がっているのに日本はあまり上がっていなかったり、IFのある雑誌の増加数も日本は少ない。日本人として残念な気がしている。リーディングジャーナルを作ることを考えたとき、どうやって、どうすればという具体的な方法を、海外はもっと戦略的にやっている。こういう風にやれば、という戦略があると思うが、そういう戦略を日本でも、例えばJ-STAGEで構築して、いろんな学協会に出版社的な仕切りを、JSTがやる予定はないのか?
- 中村さん:今のところその予定はない。大事なことは、日本の研究者が世界の価値創造の輪の中に入ること。私自身は海外のジャーナルでもいいと思っているのだが、今あまりにバランスが悪い。平行して日本でもいくつかの雑誌が作れればいいのではないか。
- 静岡大学・加藤先生:日本は論文を出すところまでは強いが、査読をしたり編集したり評価する部分を、教育もしていないし人事選考で評価もしていない。そういうことをしていかないと日本のジャーナルは強くなっていかない。私としては、困っているポスドクをたくさん雇用して育てて、5〜10年後にしっかり編集できるジャーナルを作ればいいと思う。
- 永井さん:まったく賛成。JSPSにぜひお考えいただきたい。リーディングジャーナルを作るというお考えはよくわかるが、国際情報発信強化がどういう形になって、本当にアウトプットされるかが試されている。長く雑誌出版に出されていた科研費が変わった。「あのとき変えてよかった」となるといい。大事なのは、編集をするヒト。同時に、出版倫理の問題が日本ではきちんと議論されていない。大事なことは日々の論文の受付と査読、そこをどうするか。日本はそこが欠けている。2010年の提言でもポスドクのキャリアパスとするという提言をしてきた。そこを強化していきたいしそれが大事なんだということをお心にとめてほしい。
- 浅島先生:国際情報発信強化はそういうこともできる、かなりフレキシブル。各学協会が人材の育成もできるようになっている。かなり自由な中で、国際情報発信力を高める方法を各学協会で考えてほしい、と。
- 加藤先生:もう一言だけ、プロフェッショナルな査読者を作ることが必要。
- 筑波大学・逸村先生:林さんもおっしゃってたが、電子ジャーナルのトップジャーナルの育成には、技術面でもサポートする必要がある。常にNPGやElsevierの後追いではトップジャーナルは難しいのでは?
- 横国大の方:パブリック・アクセスという話があったが、これを強化したらいいのではないか? 研究組織によって条件が違いすぎるし、組織を失うヒトもいる。パブリック・アクセスが大事ではないか。もう一つは、研究者マインドを育てる上でもOAが必要なのではないか。若い世代はカジュアルに情報を使っているわけだが、倫理に関する文句を言うだけではなく経験の場としてもOA誌を使えるのではないか。
- がん研究センター・加藤さん:PLOS ONEのエディターもしている。リーディングジャーナルを作るには、海外から何回も引用されるようなクオリティ・ペーパーもいる。ニンジン作戦ということで、日本人の被引用数の多い論文100本くらいを選んできて、自由に使える資金として500万円ずつくらい渡せば、リーディングジャーナルから高質の論文を出せるのでは?
・・・最大アップロード可能字数を超えていないことを願うばかり・・・
感想とかは冒頭に書いたとおり、カレントアウェアネス-Eの方を御覧ください。
とりあえずJSTがいつOA義務化に突っ切るかに注目だ!
2014年度 近畿地区MALUI名刺交換会のお知らせ
すっかりブログ更新を停止している間に、教員生活をはじめてから1年が過ぎていました・・・どころか新学期が始まってしまっていました(汗)
まあそのあたりの積もる話とかアップロードしそこねているイベント記録とかの話は後日またアップするとして、今回はイベントの告知です。
自分も昨年、参加させていただき、多くの近畿地区のMALUI(博物館・美術館、文書館・アーカイブズ、図書館、大学、企業)関係の皆さんと仲良くするきっかけとなった近畿地区MALUI名刺交換会、今年も開催致します!
時期は少し先になりますが5/9(金)、場所は昨年度と同じく京都市役所近くのアイリシュパブ、ダブリンさんです。
詳しくは以下のGoogleフォームをご参照ください。
皆様ふるってご参加のご検討を!
***2014-05-12 追記
2014年度 近畿地区MALUI名刺交換会は多くの方にご参加いただき、盛会のうちに終了いたしました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございましたm(_ _)m
「アジアを吹き抜けるオープンアクセスの風−過去、現在、未来」(第5回SPARC Japanセミナー2013参加記録 #sparcjp201305)
自分のブログを見て、最後の更新が昨年9月であったことに気付いた時の驚愕。
いよいよ更新が滞っていましたが・・・約半年ぶりの更新はまたもSPARC Japanセミナーですよ!
なんかほとんどSPARC Japanセミナー記録公開ブログのごとくになっていますね!!
アジア地域のオープンアクセスの進捗状況に関して, オープンアクセスジャーナル(出版),機関リポジトリ (セルフアーカイブ) の2つの道に焦点を置いて情報を共有し,併せて,今後の連携の可能性を探ることを目的とします。また各国の研究者の意識,図書館等のコミュニティによるオープンアクセス (支援)活動,オープンアクセス出版の現状,行政の政策等を取り上げ,検討してみます。図書館員,研究者,学協会の皆様の参加をお待ちしております。
アジアのOA事情、というとヨーロッパ以上にわからないところが多く、また文書で読むのとお話を伺うのでは全然イメージが違ったりすることもあるので。
今回はぜひ参加したい、と思い、大雪になるかも知れないという予報の中を新幹線でかけつけました。
・・・帰りの新幹線が止まると洒落にならない事態になるので、なんとか天候もってほしい・・・
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のものであり、ご利用の際はその点、ご理解・ご容赦いただければ幸いです。
誤字脱字、事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等へお知らせ下さい。
- 総合司会:北村由美先生(京都大学附属図書館研究開発室)
開会/概要説明(杉田茂樹さん、千葉大学附属図書館/DRF)
- OAという言葉を意識して聞いたのはちょうど10年前、図書館総合展でStevan Harnad氏が来日したとき
- 今も活躍している彼
- 聴衆は図書館/出版関係者
- その場でのHarnadの発言・・・出版者としても研究者が自身の論文を自らweb公開するのは許しているところが多い
- こういうことをもっと進めていくべき
- 研究者に、自分の論文をwebに公開するいくつかの「キーストローク」をさせるだけでいいように、「場」を用意しよう
- そこから・・・国内でも機関リポジトリがぽつぽつ増えてくる
- キーストロークだけではない気付き:研究者は「電子ジャーナルってお金かかってるの??」程度の認識
- OAの主旨をわかっていただくためには、現状についてもっともっと先生方と認識を共有する必要がある
- キーストロークだけではない気付き:研究者は「電子ジャーナルってお金かかってるの??」程度の認識
- そこで・・・この10年は先生方の理解を高める/どんな背景があって、ということをよりわかってもらえるよう活動
- いろんなチャンネルを作って大学図書館・研究者の対話を増やす/self-archiveを促進する
- そして現状・・・日本では400大学が機関リポジトリを持ち、126万の文献を公開している
- 126万と言っても過去のものも多い/先生方の論文の全てが機関リポジトリに収載されているわけでもない
- 今日のセミナーでも・・・アジア各国、他国の状況を聞けるということで、私達も学べるところを学んで自分たちに役立てたい
- 仕事柄Green OAの話ばかりになってしまったが、ぜひGold OAについても多くの情報を受け取って帰りたい
OA Activities in Korea(Choi Honamさん、Korea Institute of Science and Technology Information)
Gold Road in Korea
- 韓国におけるOA雑誌の読者は医療・医学業界
- 質の高い、XMLベースの雑誌にコストがかかることは、医学関係者は承知しているし、NIHやPMCの要件であることも承知している
- 韓国の医学雑誌編集者の協会が立ち上げられている:KAMS(Korean Academy of Medical Science)
- KoreaMedの立ち上げ:http://www.koreamed.org
- 210ジャーナルが対象・・・ほとんどはFree あるいはOA
- 引用文献リンク等のサービスとしてSynopse というものも作られている
- 対象誌は全てOA/CCライセンス付与
- KISTI(Korea Institute of Science and Technology Information)の活動について
- 科学技術学協会のためのS&T Society Villageというものを、JSTAGEを参考に作った
- OAについて・・・OAKプロジェクトを実施
- 25のOA雑誌の立ち上げ:KOFSTというところと協働でやっている
- K-Pubsの立ち上げ・・・統合プラットフォーム/出版の全サイクルの迅速化・科学技術ジャーナルの国際発信を目的とする
- そこで提供されるデータは全て一般の方にもオープンになっている
- 人文社会系コミュニティについて
- 韓国には2つの助成団体・・・NRFとKOFST。NRFが人社系、KOFSTがSTMを担当
- NRFはOAに対する理解・興味を高めている・・・2012年からOA雑誌刊行を企図、新しい評価基準を使い始めている
- KOFSTも公的資金研究はOA化する方向
- 人社系におけるOAへの理解・関心度合いは他の分野に比べると低いことが問題点
- 政府助成研究に基づく学術論文の問題
- 政府の資金による研究に基づく論文に購読料を払うことに否定的意見を持つ人が韓国には多い
- SCI搭載ジャーナル掲載論文の63%は韓国政府資金の助成による・・・政府の資金による研究成果を読むのになんで海外出版者に金を払わないといけないのか?
- min2-flyコメント:このあたりの事情は日本の状況と一緒だね
- と、いうことで・・・公的資金による研究成果は自由にアクセスできるように、という立法の動きが高まるも・・・
- 直接関係する省が否定的態度をとり、立法に至らず
- 韓国のKNIHの資金援助を受けた論文については、mandateが成立!(min2-flyコメント:それ知らんかった。あとで調べたい)
Green Road in Korea
- 韓国における機関リポジトリの状況:
- 機関リポジトリのほとんどはNational Information Center、国レベルの助成機関の援助を受けている
- 以下のような3つの独自に設置されているリポジトリも:
- KAIST KOASAS:http://koasas.kaist.ac.kr/
- SNU S-Space:http://s-space.snu.ac.kr/
- Inha Dspace:http://dspace.inha.ac.kr/
- KISTIが支援する機関リポジトリ:23(2010-2013の4年間で立ち上げ)
- 韓国における機関リポジトリのモデル:
- Dspaceが基盤
- 韓国全体の共通モジュール、グローバルベースのモジュール、各大学のモジュールなどを付与
- 韓国独自モジュール・・・クエリの自動補完、統計機能etc
- KERISがサポートしているdCollectionについて:
- 大学の機関リポジトリ
- self-archiving、学術論文の共有のために使われる
- 225のシステムが設置され、steering committeeが運営
- 問題点:ほとんどはOAI-PMHに準拠していない
- 図書館システムにくっついて提供されているdCollectionが、OAI-PMH未準拠
- KERIS' KOCW(Korea Open CourseWare)
- 学ぶ機会の拡充/開かれた講義による講義の質向上
- ターゲットは一般ユーザ/2007年開始
Open Access Korea (OAK) Project
-
- 文化・スポーツ・観光省が5年前に開始。240人月、43億ウォンが投じられる。今月が最終月
- 韓国でOAの動きを促進し、先進的な情報環境を作ること等が目的
- OAK Central:http://central.oak.go.kr/
- PMC的なもの。OA雑誌論文全文を公開
- PDFからXMLにコンバージョンする機能も開発
- 全論文にDOI付与。CCライセンスで公開
- OAK Forum
- 学者、弁護士、ベンダ、助成機関、図書館員、出版者、著作権関係団体、学協会などが参加
- OA方針について等、さまざまなトピックを議論
OA Collaborations (Global)
- SCOAP3 with CERN
- 2010年にコンソーシアム参加、2014.1にMOUを締結
- 当初は紙ベース雑誌の購読者をターゲットにしたものの参加率が低かったので、対象を拡大・・・トータルの韓国配分参加費の60%をカバー、残りはKISTIkら
- 参加費の聴衆モデル・・・今年から新しいモデルに移行
- 紙の購読料+論文投稿件数データをCERNから貰って実現
- WPRIM with WPRO
- WHOの西太平洋地域オフィスと共同で立ち上げたオンラインインデクス
- 韓国の医学雑誌の80%以上が参加
OA Collaborations (Domestic)
- Ministry of Culture, Sports, Tourism(文化スポーツ観光省)との協力:
- 新たなライセンスの構築・・・CCをベンチマークとして開発
- 安全・医療関係の省庁との共同・・・
- Open Government Dataリポジトリを作る
- ここで先の新ライセンスが使われている
- 科学・情報通信規格に関する省庁(MSIP)との協力・・・
- MSIPが800のDBを調査/535が実際に使われていることを確かめる
- KISTIはそのファシリテータの役割を担う
- PSIサービスと利用促進に関する法律が2013.7に成立、2013.10から施行されたことで可能に
- National Research Funders(助成機関)
- OAポリシー実現に向け活動
- Web DBベンダー等、民間セクターが強く反対
Conclusion:まとめ
- Gold Roadの現状と課題
- 韓国の4,690の学術誌中、1,100タイトルはOAもしくはフリーアクセス
- 国全体としてのOAへの理解度はまだ低い
- 図書館のほとんどはOA雑誌について十分理解しているものの、具体的な行動は金銭的なサポートや大学トップの理解の低さによって至っていない
- 構造的にOA促進が困難
- ステークホルダーの間で立場がかなり違う/対立が激しい
- 民間企業で学術雑誌のサービスをビジネスとしてやっているところはOAに強く反対
- 公的セクターや図書館はOAを強力にサポート
- 学協会の態度は割れている
- Green Roadの現状と課題
OA & IR in The University of Hong Kong & Greater China(David Palmerさん、The University of Hong Kong Libraries)
- 中国は非常に大きい・・・人口が非常に多い
- はじめに・・・香港大学の話から
- Knowledge Exchange以前に・・・Knowledge Transfer構想
- 産学官の連携、その中における大学
- 大学のミッションの一つとして・・・教育+研究+"Knowledge Transfer" or "Knowledge Exchange"
- 世界中の大学・機関でこのような構想は進んでいる
- Canadian Institute of Health Research(CHIR)・・・Knowledge Translation:その中でOA方針も持っている
- OA方針の下、研究論文のdepositが義務付けられている
- Canadian Institute of Health Research(CHIR)・・・Knowledge Translation:その中でOA方針も持っている
- 再び香港の話:香港には8つの大学があり、政府助成金を受けている
- 香港大学におけるKE
- 担当部門・・・Office of KE
- 色々な提案を受け、その支援をする
- 例えば・・・工学部がハイテク犯罪に関する取り組みの資金提供を受け、コミュニティと協同で活動したり
- その中で図書館にも予算がつき・・・機関リポジトリやOAに関する動きを実施
- 担当部門・・・Office of KE
- 香港大学図書館の活動・・・
- CRISのバックグラウンド
- CRISのデモ・・・時間がないのでかなり飛ばされつつ
- HKU Scholars HUBのコンセプトモデル:
- 色々なデータソースがある・・・外部データ、ScopusやWOSがあり、学内のソースもある
- 内外からデータを集めて、HUBにアップロードした後に、図書館員が内容を編集・追加したり、研究者や学部が修正したり削除したりもできる
- 全てがマッシュアップされる/デジタルなエコシステム、"Collective Intelligence"が生まれる。単なる部分の集合にとどまらない大きなものが生まれる
- Office of KEは他にもOAが関連するプロジェクトに助成
- OA出版とORCID
- 今年は・・・8つの大学すべてがSCOAP3にジョインしてほしいと考えている
- ORCIDについて:図書館は教授一人ひとりにORCIDアカウントを発行
- 名寄の問題解決へ
- 文献著者だけでなく全ての専門職にとって問題・・・発明者、主任研究者、コンサルタント等
- 個人にとって自身の評判(reputation)の問題になり、機械逸失につながる
- さらに機関レベルにもつながる。引用回数が少ないのはエラーがあるせい、などということもある。その結果、ランキングが下がり政府予算がとれなくなったりする
- 機関レベルの問題になるのだから、機関が取り組むべきである
- 香港大学では・・・教授陣一人ずつにORCID recordを作成
- 教授にはopt-outの権利や自身でアカウント作成する権利もある
- どちらもしない教員の分は図書館で進める
- (その具体的手順の説明)
- 香港大学のOAに関する活動
- 台湾=中華民国
- 中国本土=中華人民共和国
- China Academy of Science(CAS):中国科学院
休憩
Open Access in Southeast Asia: Unresolved Issues and New Opportunities(Paul Kratoskaさん、NUS Press, National University of Singapore)
- 現状としては・・・「unresolved issues」、未解決の問題が答案なジアのOAには多い
- 講演のお話をいただいたときに・・・東南アジアではOAは十分確立していないのではないか、という前提からスタート。そこから派生する質問は:
- なぜ、OAに対する興味・関心がないのか?
- もし東南アジアでOAがうまくいくとしたら、どういう帰結に至るのか?
Baseline Information
- 東南アジアにおける大学
- 東南アジアにおける機関リポジトリ
- OpenDOARによれば・・・64/ROARによれば・・・107
- コンテンツ:学位論文、プレ・ポストプリント、会議論文、未刊行論文、教材etc・・・
- 大学等により維持され、コストも賄われている
- 3〜4年前の調査によると・・・どんなものを登録するかとか、登録・保存ポリシーはきちんと決まっていないところが多い
- 基本的に、明確に定義されたポリシーがないのが現状
- 東南アジアにおけるOA出版
- DOAJによれば・・・合計225で、インドネシアが最多、次いでマレーシアの雑誌が多い
- 東南アジアの研究者はなんで研究・論文の出版をするのか?
- 第一には知識創造・共有のためであるべきなんだが、実際は・・・彼らの雇用主=大学側の期待に応えるため
- 東南アジアの多くの大学は被雇用者に出版することを求める:
- 国際ランキング向上のため
- 留学生をひきつけるため
- 昇進・テニュア付与のための基準にするため
- 東南アジアの研究はほとんどが政府の資金援助を受けている
- その価値は成果物、あるいはパフォーマンス指標ではかることが重視される
- 助成金を申請するなら成果を明示しないといけない
- OAになったら東南アジアに価値をもたらすのか?
- その答えは欧米の場合と少し違う・・・東南アジアでは雑誌に掲載される成果を読むような人は少数派/雑誌の価値が高ければ、"そこに論文が載っていること"が評価される
- 大学としても価値の高い雑誌で出版されることを強く望むようになる
- 東南アジアにおける"英語での"人文社会系出版事情
- 科学技術に関する出版に比べると遅れを取っている
- 多くの大学で、科学系の出版はうまくいっているが、人文社会系はどうもうまくいっていない
- 一つには言葉の問題もあるが・・・多くは、STMの教員は人社系が大学の国際ランキングの足を引っ張っていると文句を抱いているし、大学も国際ランキングやIFを強く重視している
- 東南アジアの大学はトムソン・ロイターのランキングやISIのcitation indexをより好む。Scopusの方がアジアにおける刊行物の収録は進んでいるんだが、Scopusのリストに載ることもある程度は評価されるものの、ISIに比べれば・・・だし、シンガポールはISIに収録されている雑誌に載っても、IFが低ければあまり評価しないと言い出している
- 東南アジアのSCOPUS収載状況
- 現在、SCOPUSに載っている雑誌は20,544。そのうちアジアの雑誌は約2,300で全体の11%超。しかし東南アジアの雑誌は202で、全体の0.5%程度
- マレーシアの事例:東南アジアの中ではOA推進に積極的なので取り上げる
- OA雑誌・・・216の査読付きOA誌があり、78がDOAJ収録
- 機関リポジトリ・・・研究者はあまり登録しない
Unresolved Issues(未解決の問題)
- Article Processing Charge(APC:論文加工料)
- 資金提供者は、どの雑誌へのAPCなら資金を出してくれるのか? 制限を設けるのか?
- ISIやScopusに載っているような雑誌ならAPC支払いも認められるだろうが・・・実際、Indexに入っている雑誌ならAPCの支出も問題としているところもあるが・・・
- しかしそもそも、APCの資金を申請する先がない/大学はAPCを大学側が払うことをそもそも認めていない
- Indexに入っていないような雑誌は? 東南アジアにはそんな雑誌がいっぱいあるが??
- そこに掲載される論文のAPCを申請できるのか??
- 強奪的/略奪的なジャーナルの問題・・・いわゆる「ハゲタカ出版者」問題
- 意思決定者はその分野の専門家ではない場合が多い/そうなると、トムソン・ロイターのリストに入っているか等を判断基準にしがち
- そして・・・起こらなければいいんだが・・・特定雑誌の政治的傾向を理由にAPCを払ってもらえない、という可能性もある
- 学術研究の所有権
- OA義務化と人文社会系
- そこで一つの提案として・・・1年間のエンバーゴを設ける、というのではどうか?
- そうすれば既存の出版者・出版の仕組みがそのまま維持できないか??
- 1年間あれば、図書館でアクセスする人は雑誌の購読を続けるだろうし、その後は無料で使えるようになるし
- しかし人社系では・・・引用半減期が5-10年と言われている。私自身、ある論文を読むのに30ドル払うんだったら1年待つと思う。図書館も1年待てばいいなら購読もしないと思う
結論にかえて:東南アジアにおけるOAのSWOT分析・・・かなり飛ばされた!
- 強み/弱み・・・話すまでもないと思う
- 機会:多くの人が文献にアクセスできることの研究上のメリットとは?
- 現状・・・アジアで論文が書かれると?
- 現状、NUS Pressは・・・各国のUniv. Pressと個別に協力関係にある
- 他の国がどう考えているかの域内協力があまりない
- それをやっていけば流通範囲を広げられる?
- 他の国がどう考えているかの域内協力があまりない
「アジア」のOAの将来(土屋俊先生、大学評価・学位授与機構)
- 今日のテーマ:「吹き抜ける」を英訳するとどうなる??
- "Through"だと通り過ぎてしまう・・・ひどいタイトルだ! あとで主催者に説明してもらいたい
- 引き受けたときには気にならなかったのだが昨日、急に気になった
- Kratoskaさんのお話で僕の言いたいことはほとんどなくなったのだが・・・規定通りにディスカッションに入れるようにしたい
- 当たり前と思ってスライドに書かなかったこと3つ:
- 結論:Kratoskaさんと同じ
- アジアの科学技術生産力は増えている。増えているから、出版される論文も増える
- 従来・・・出版は購読で維持されていた、図書館が払ってきた/一方、日本以外のアジアは大して金を払っていない。あ、シンガポール、香港は払っているけれど、ほかはほとんど払っていないようなもの
- 要するに・・・図書館予算は先進国にしかなかったし、今後もそのまま続くのだろう。今後、東南アジアで図書館予算がどんどん増えることを考えるのは難しい。今よりは増えない
- しかしアジアは成長しているので論文は増える・・・その出版を誰がどう賄うのか?? それが我々の置かれた問題
- それに対する答えは・・・OAで、やるしかない、というのが重要。購読で賄うための図書館のお金はない、払えないけど出版したい、なら自分で払うしかない、終わり
- それ以上の結論は出てこないんじゃないかな?
- アジアの科学技術生産力は増えている。増えているから、出版される論文も増える
- それだけではなんなので・・・いろんなところからのコピーしたものをご覧いただきたい
- 今後の予想として・・・2020年には中国がアメリカを研究予算で圧倒しているとかいう予想も
- ACSへの投稿数ではアジアが40%以上で最大/publishされたものは欧米に負けているが質は上がるだろう/DL数もアジア最多。人口最多だから当然
- 増えた分/これから増える分をどうするか??
- 一方で、アジアにおける出版事情・・・
- 研究者は自分でやらないといけないが・・・これもけっこう面倒くさい
- 研究者にとって、研究は自らの欲求に基づいてやるのではないような環境に置かれている
- しかし・・・もしもこれから何か出そうというなら、購読にできない以上はOAしかないという、強制的な状況
- 選択の問題ではない。どういう風に域内でOAモデルを立てるか、という状況
- そういう意味で、Kratoskaさんが提案するようなモデルをどう立てるかという話
- しかしながら・・・そんなことは研究者や大学が考えればいい
- 図書館はクビ突っ込んだら絶対損する。やめた方がいい
- どうすればいいか?
- ハゲタカでもなんでもいいから、海外のOA雑誌にどんどん出せばいい。出せないならしょうがない、それはそれでいい質の管理
- 「それじゃ海外にお金が出て行く」と思うかも知れないが、サービスをお金で買っているので、「輸入」と同じこと。輸入は得意なんだからこのままやればいい。皮肉に感じるかも知れないが、もちろん皮肉である
- 我が国にはJ-STAGEというわけのわからないプラットフォームもある。OAにできるプラットフォーム。ここに、アジアの方に来ていただいて載っけていただくというのも手
- いつまでJSTの体力があるかはわからないが・・・
- 図書館の人に唯一できることは、今まで育ててきた機関リポジトリを、「出版プラットフォーム」と読み替える、再定義すること
- 再定義したら、あとはそれは出版者の仕事なので、大学出版等に渡せばいい。定義を変えるだけ変えて、あとは手を離すことが大事、ということを結論にしたい
- 〜司会の北村さんから、主催側は今回のタイトルを気に入っているし、英訳は全然違いますと注が入る〜
パネルディスカッション
- モデレータ:
- 加藤信哉さん(筑波大学附属図書館)
- パネリスト:
- Choi Honamさん
- David Palmerさん
- Paul Kratoskaさん
- 土屋俊先生
- 尾城孝一さん(国立情報学研究所)
冒頭:尾城孝一さんによるご発表:「日本の機関リポジトリ これからの10年を考える」
- これまで10年、機関リポジトリに関わってきた経験を踏まえて、今後の10年を考えた話題提供をする
- 日本の機関リポジトリ・・・この10年で急速に増えている
- 日本の機関リポジトリの反省点
- 「図書館」リポジトリにとどまった・・・当初は学内合意等を得ようと活動していたが、作ったあとは「図書館のもの」という壁を越えられなかった
- Green OAが進まなかった・・・日本の査読論文の5.2%しかリポジトリでは補足できていない
- ポリシーが弱い・・・日本では北大、学位論文に関する文科省方針くらい(min2-fly注:あとは岡山大とか)。Hita-hitaは、担当者がかわるうちにだんだん「ひた・・・・・・・・・ひた・・・・・・・・」くらいになっていって、いずれ消える。草の根だけでなくトップダウンもほしい
- 文献リポジトリの壁を越えられなかった・・・紀要論文リポジトリの壁を越えられない。論文が生まれるまでにある膨大な量のコンテンツ、実験データ等をうまく組織化・共有・再利用できるようにしたいといけないと言われているが、今の機関リポジトリはその域に至っていない
- CSI委託事業の成果の展開ができなかった・・・NIIが8年間やってきた事業で、27の研究開発・コミュニティ支援プロジェクトにお金を出してきた。いくら出したかは今日は言いたくないが、個々のプロジェクトとして成果を挙げたものも、全国的に展開できなかった。例えばSCPJという日本の学協会著作権ポリシーDBとか、ROATという機関リポジトリコンテンツ評価とか、一部の図書館の取り組みで終わってなかなか普及しなかった
- Lynchによる古典的定義の確認
- 図書館にとっての機関リポジトリを持つことの古典的意義
- 紙の時代・・・外部から買ってきてコレクションを作って学内に提供するのが図書館
- 外部情報源が電子化されると利用者は図書館を経由しなくなる/図書館のコレクションは空洞化するし存在感も薄れる
- その中で図書館もあらためて自らの役割を考えざるを得ない・・・学内で生み出された教育・研究成果を集めて組織化して外に発信する。それが新時代の図書館と図書館コレクションであり、機関リポジトリ
- こういった定義・意義も念頭に置きつつ新委員会でちょうどいま、来年度以降の枠組みを考えている
- 戦略的重点課題:
- ポリシー
- システム基盤
- コンテンツ
- 人
- いずれにしても、今後10年を考える上での重要なポイント・・・機関リポジトリをもっと教員の近くに置くこと
- そして・・・これまでの経緯や知見や技術を(上から目線でいやなんだけど)アジアの新興国に広めていくことが日本の責務(ではないか?)
- 書いてて自分でもピンと来ないけど・・・
- 例えば・・・マレーシアの大学、Open University的な機関に、NIIの開発したWEKOを使って、教育コンテンツの発信システムを作るプロジェクトが始まりつつある
- こういった活動を積み重ねて、機関リポジトリを通じた学術情報のOAをもっとアジアに広められればいいと思う
パネリストからのコメント
- 加藤さん:
尾城さんから短いプレゼンテーションがあった。これを土台にして、アジアのOAをどうするかを大きなテーマとしつつ、日本の機関リポジトリに関する提言でもあったので、まずパネリストのコメントを得たい
- Palmerさん:
非常に素晴らしいことだと思う。多くのことを成し遂げられている。数もそうだし、多くの人たちをOAのグループに巻き込んでこられた。
今や日本にはOAについて知っている人が多い。これはとてもポジティブなことだと思う。
- Kratoskaさん:
良いゲストと思われないリスクをおかして問題提起したい。言語に関して。
OAとはいうが、オープンになるのは資料が書かれた言語を読み書きできてはじめてできる。これは日本に限らず、東南アジアでも、各国でOAについてどう対応されるにしろ、その国の言語で行われる。私がお聞きしたいのは、OAといった場合に、言語による違いを埋めるための橋渡しはどうするのか、ということ。
- 加藤さん:
おそらくOA以前に、言語障壁や文化障壁がある、ということと思う。どなたかコメントあれば。
- 土屋先生:
言葉の違いは、勉強してもらえばいい。
- Palmerさん:
確かに言語は大きな問題、今でも大きな問題ではあるが、少しは問題の程度は改善されていると思う。Google翻訳で。早いけれど正確ではないというが、ほとんどみんな使っている。
一方で、Google翻訳や類似の機械翻訳を使う以外に、多くの国は研究者に英語での出版を求めている。英語で出版した方がインパクトが大きいので。
- Kratoskaさん:
日本語は学ぶのが難しい言語とおもっていたので、すぐに学べそうな印象が得られたのはいいことだった。
英語で出版することを強要することは二層化を進めてしまうのではないか。英語で教育された人は出版しやすい状態になる。シンガポール、香港、マレーシア、フィリピンの研究者が論文出版が容易になる一方で、他地域の人では出版できる人が少数になる。東南アジアの研究者の多くは英語でインパクトのある論文を書けるだけの能力は持ち合わせていないのではないか。
- Choiさん:
言語の壁について、所属機関で行っているプロジェクトを紹介したい。韓国語のできる中国人を雇用して、彼らに中国語の書誌DBを韓国語に翻訳してもらった。そして、その中で特定の文献を韓国の人が誰か読みたい、ということになれば、我々のシステムにリクエストを出してもらうと、韓国語のできる中国人のところにリクエストが届いて、オンデマンドで翻訳してもらえる。
2年前にはじめて、今も続いている。実用化されていくと思う。
- 加藤さん:
言語の壁についてコメントいただいたが、議論の時間もないので、パネリストからの補足よりも、今日は多様なお話を多様な観点からいただいたので、フロアから発表者に対して質問があればお願いしたい。
フロアから質問出ず
- 加藤さん:
ではパネリストから、補足などあれば。
- Kratoskaさん:
コメントと質問を。
まず、OAに関して、前提の一つに図書館は今後、支払わなければいけない金額は少なくなるだろうといわれている。Duke大学の調査では、教授が1年に出版した論文の件数を数えて、APCが1本1500ドルとして総額いくらか計算したら、ジャーナル購読料よりも高かったという。可能性として、図書館そのものが支払う金額は減っても、大学全体として支払うコストは今までよりも増えてしまうといえる。
次に、これは皆さんに質問。機関リポジトリを使ったことがある方、論文を書く立場であれば、所属大学の機関リポジトリにどれだけ論文を登録したことがある?
会場で挙手をとる・・・論文書いた事がある人はだいたいリポジトリに登録している、会場の殆どの人はリポジトリ登録論文を読んだことがある。さすがSPJセミナー!
- 加藤さん:
リポジトリやOAをもっと進めていくための推進力、力とは?
- Palmerさん:
成功例としてNIHのPMCがあげられると思う。deposit率は80%を超えているという。同じようなものを各国でやって、関係者/政府が勢いを高めていけばいい。
PMC成功の秘訣は、登録しないと助成金が与えられない、という仕組みにしたこと。何か研究者にとって重要なもの、助成金や評価の対象にすることが効果を持つのでは。
- 土屋先生:
アメリカで実際にグラントを拒否された人はいるの? それから、Elsevierからの指摘として、PMCに入っているものの多くは出版者が入れている分で、研究者はself-archiveしていない。ということで、研究者を信じてはいけない
- Kratoskaさん:
2つのアプローチがある。一つは研究者にセルフアーカイブするよう、説得する。これは、不可能だと思っておいた方がいい(笑)
もう1つは、大学の管理者、adminが、セルフアーカイブしなければならない、ということだと思う。私の経験でもそうだし、書かれたものを読んだこともある。そのためには、大学当局あるいは助成機関が、要件としてセルフアーカイブを求めると入れることに尽きると思う。
- 土屋先生:
ただ、研究者としてはその意見には反対。研究をそういう強制の下に行うことは、健全な研究の推進とは言えないのではないか?
- Choiさん:
韓国の現状として、リポジトリの利用は初歩的な段階で、コンテンツも利用もpoor。ただ、面白い話がある。KAISTという研究機関で、機関リポジトリを大学内の研究者の業績評価とリンクさせた。研究者あるいは教授が成果をdepositしない場合、成果が評価されない。業績評価に響く、とした。これはKAIST総長の意思でそうなった。トップに機関リポジトリ推進の意思がないとうまくいかないのではないか。
- 土屋先生:
やはりそれは本末転倒ではないか。研究の進行が重要なんであって、日頃の研究ぶりや生活ぶりを見ていればいい、ということであれば、publishingで評価する必要もない。全く一般の人に知られなくても研究そのものが進めばいいじゃないか、ということの、どこがいけないんですか?
- Kratoskaさん:
最近、ノーベル賞をとったある研究者が、「もし今、私が若い研究者であったなら、私が挙げたような成果は出せなかっただろう」。今の研究には一生がかかったが、若手は出版することに追われていて私のやったような研究はできないだろう、と
- 加藤さん:
北風と太陽というか、トップダウン VS 研究はそんなものではない、という主張の繰り返しのようである
- 加藤さん:
最後に、せっかくアジア各国から皆さん集まったので、協力関係について具体的にこんなことができればいいんじゃないか、ということがあればご提案いただきたい
- Choiさん:
私の考えとしては、まずはコンセンサスが必要であり、そしてやっていこうという意思も必要と思う。
ただ、最初は政府が法律なりなんらかの仕組みで強制的に、ある程度のレベル、クリティカル・マスに達するまで強く推進することが必要ではないか。
いったん一定レベルに達すれば自律的に動いていくと思うが、そうなるまでは政府の強い後押しなり法律が必要と思う。
- Kratoskaさん:
先ほどのプレゼンでも触れたが、大学出版局が他の出版局と協力していけないかという交渉を、私自身、他の出版者を訪ねて話を持ちかけている。
最初に行った時はお茶を飲んで帰ってくる。2回、3回と訪ねるうちに、よく知り合って、はじめて何か一緒にやりましょう、という話になる。
私の観点からすると、相手を説得しようと思ったらまずお互いによく知り合うことが大事。出版であれば、リポジトリであれ、大きな方針ができたからやろうというのではなく、小さなことの積み重ねではじめてできることと思う。出版であれば出版の立場で、OAリポジトリであればリポジトリの立場で。小さなことの積み重ねで初めて動くと思う。
そのような小さなステップの一つが、今日ここで開いているような、このようなセッションではないかと思う。発表の機会をいただき、フィードバックもいただけたことを大変感謝している。こういったことがプロセスの一つであり、その機会をいただけたことを大変感謝している。
- 加藤さん:
まとめの挨拶を取られたような形になりましたが(笑)
ちょうど時間なので、これでパネルディスカッションを終えたいと思います。
各国の、それぞれにかなり異なる事情をまずは知るところから始まったセミナーであるので、パネルディスカッションはかなりまとめづらいところもあったのかもしれませんが。
最後に加藤さんが「締めをとられた」と評していらっしゃるKratoskaさんのコメントが、実にそのとおりというか、まずは互いに頻繁に会ったりするプロセスを踏んでいきましょう、と。
その中で連携とかもできるところから出てくるといいんじゃないですかね。
とか書くとまるで「お互いの事情が知れて良かったねー」とか思っているかのようですが、実際のところはいまいち掴みきれていなかった韓国の事情を詳しく知れたり。
CIRSの背景にあるKnowledge Exchangeってどんな理念なんだかが知れた+あれイタリア企業が開発してイタリアで普及していきそうなの?! っていう事態を知れたのは、面白かったですし。
休憩後、Kratoskaさん⇒土屋先生あたりはコトの核心をついているというか、「これから増えるのはアジアの論文だけど」「増えた分の購買力はアジアにはない」というところをどうカバーするかに踏み込んでいて、さらにその解決策としてOAをとるしかなく、もしOA出版自力でやる方向に流れれば「コンテンツはすべていったん欧米に流す」現状の流れが変化しうるし、まあそうならなくても再輸入にお金がいる事態ではなくなるかも知れない、って方向につながってきたのは「おおーっ」って感じでした。
HINARIとか色々あるとはいえ、そもそも通貨の価値自体が大きく違う国々は、日本や欧米に比べてだいぶ安い価格で今でもジャーナル買ってるんだと思うんですよ(でないと買えないはず・・・それとも、本当に買ってない??)。
でも査読関係の編集作業は先進国で行っているとすると、コストがまかないきれないはずで、そこはお金払える国々にひっかぶせている面が今でもあるんだと思うんですが。
それですら成り立たないくらいにコンテンツが増えてきたときにさあどうなるか、というところは一つにはOAなのかなあ、と思います。
(もう一つはそもそも学術成果の発表方法自体を論文ではなくするとかそっちの方向)
まあ逆に言えば現状、アジアは自分たちの研究成果の選別/加工作業をすっかり欧米に乗っかってしまっているとも言えるので、それを自力でなんとかできるようにならにゃいかん、ってことでもあるんですが。
この論文出版の欧米依存とか、あるいはディスカッション中で話題になった言語の二重性についてとか、日本で機関リポジトリやOA考えているときとまるで共通した話題がアジア各国でも出ていることがわかったのは本当に大きな収穫でした。
記録しそこねましたが閉会の挨拶で尾城さんが「次はまたトピックを絞ってやりましょう」とおっしゃっていましたが、ぜひ定期的に情報交換する形になるといいですね!
人文社会系×オープンアクセスを考える:第2回 SPARC Japan セミナー2013 「人社系オープンアクセスの現在」参加記録
気がつけば8月も終わり、世の中は新学期ムードですね。
しかして我らが大学人の夏休みはまだまだ終わりませんぜ! ビバ夏休み!
・・・学生さんは夏休み・・・だというのに、どうも教員の方は学期期間中より忙しい気がしているのですが気のせいでしょうか(汗)
学期中はせめて土日は休んでいたんだけどなあ。
それでいて、これで新学期になったら忙しくなくなるビジョンもまるで見えてこないので厄介な話です。
そんなわけで色々立てこんでおり、夏休み中にあったSPARC Japanセミナーのイベント記録もアップが大変遅れてしまいました。
出張報告等へのご利用を目論んでいた方の中には期待が外れてしまった、という方もいらっしゃるかも知れません、ごめんなさい(汗)
すでにカレントアウェアネス-E*1や月刊DRF*2でも取り上げられていて、そちらの方が短くまとまっているのでもういいのでは、とも思いますが。
せっかく記録も取りましたし、かなりの内容量だったのを凝縮されている分「詳しく知りたい」といった意見も目にしますので、今回も記録をアップロードしたいと思います。
昨今,多くの研究者,図書館員の関心を集めているオープンアクセスですが,人文・社会科学分野においては,オープンアクセス化されている学術雑誌論文の比率が低いなど,自然科学分野との「温度差」が浮き彫りになりつつあります。 そこで今回のSPARC Japan セミナーでは,人文・社会科学系のオープンアクセスの最前線として「Open Library of Humanities (OLH)」の活動について,Martin Paul Eve氏からご報告をいただきます。また自然科学分野の研究者,大学図書館員等も交え多角的な視点からこの分野におけるオープンアクセスや日本からの学術情報発信の課題にもアプローチしたいと思います。貴重な機会ですので,是非多くの皆様のご参加をお待ちしております。
人社系については学術雑誌の動向については過去にもSPARC Japanセミナーで取り上げられたことがありましたが*3、人社系研究者とOAを中心に取り上げるのはSPARC Japanセミナーでは今回が初、ということのようです!
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のものであり、特に今回、前日まで北海道に出張⇒そのまま東京出張を敢行した結果、中盤のメモがかなりgdgdになっています(汗)
ご利用の際はその点、ご理解・ご容赦いただければ幸いです。
誤字脱字、事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等へお知らせ下さい。
ではまずは、経済学者にとってのOAのお話から!
「経済学と経済学者にとってのオープンアクセス」(青木玲子先生、一橋大学経済研究所)
- 最初におことわり・・・私はOAの専門家ではない
経済学者の行動
- 経済学者は誤解されている!
- まずは経済学研究について説明しながら、情報流通について説明したい
- 日本における経済学・・・経済学科/経営学科にいることが多い
- 北米では・・・humanities and sciences、arts and sciences、social sciences、business school、finance、engineering (OR)、Applied mathematics(ゲーム理論)・・・
- ヨーロッパ、オーストラリア等も北米化の傾向
- 経済学研究のやり方
- 研究の最終成果の発表:
- 日本では元来は大学紀要で発表したものを最後に図書にまとめていた
- 北米・・・査読付き専門誌に昔から投稿
- 研究の最終成果の発表:
-
- 研究途上の情報流通・・・
- 研究会、学部単位のワークショップ・セミナー、狭い専門のワークショップ等で書記のアイディアを発信・フィードバックを受ける
- 研究途上の情報流通・・・
-
- オープンアクセス・・・最終成果発信/研究途上の流通の双方に貢献/影響
OAと経済学の話
- 経済学におけるOA誌
- DOAJにおける数字やeconlit(経済文献データベース)での数字の紹介・・・聞いたことない雑誌も多いが、数は多い
- OAリポジトリ
- OA雑誌の例:いろいろ紹介
- 経済学者から見たOAのあり方:
- 情報は排他性がない/消耗しない・・・経済効率から言えば無料提供がよい
- 自分の研究にフィードバックを得るための提供、という点ではOAは理にかなっている
- 商業的に見返りがなくても情報を作ってくれる人はいる
- それに資源を投じてOA雑誌を作って、経済的に正しい価格=ゼロで提供するのは、OAの経済的意味では在る
-
- two-sided market:売り手と買い手の二つの間に立ってマッチングサービスで利益を得る
- dating service(お見合いサービス)/credit card
- どちらからお金を貰ってもいいし、両方から貰ってもいい
- 学術誌=発信者と受信者のtwo-sided market。発信者から得てもいいし、受信者に費用負担を求めてもいい
- 今までは購読=受信メインで、中には両方とってくるところも出てきた、発信者だけから得るのがOA雑誌とも言える
- 片方からだけ費用を得るtwo-sidedはいくらでもある。お見合いサービスだってそう
- 正しい費用負担を課せばOA雑誌は成り立つはずである、というのが経済学者から見たOA雑誌
- two-sided market:売り手と買い手の二つの間に立ってマッチングサービスで利益を得る
質疑応答
- Q. 図書館情報学の研究者の方。そもそも経済学の雑誌で、商業出版者が出しているものってどれくらいある? あるいは、OA誌の中で商業出版がやっているものはある?
- A. わからない。Econlitに出てくるようなのは、BlackwellやElsevierが出しているが・・・
- Q. デジタル・ヒューマニティーズ/人文学研究者の方。Two-sided marketというのは、OAと言っても結局どこかはお金を出さないといけなくて、それを読者が出さなくて良くなったのがOAにすぎないということ?
- A. 「すぎない」の意味はわからないが、ビジネスモデルとしてOAというのを・・・ビジネスモデルとしてどんなものがあるか考えたときに、ひとつはtwo-sidedと考える、もう1つは、情報流通は研究者にとって大事なことなので、そのサービスを今は学会がやっているが、公共財なのでお金集めは難しいものの、その費用をなんとかする方法を考えて、例えば学会がバックアップすれば成り立つ。一方、two-sidedという考えに基づけば、公共財の理論を出さなくても成り立つということ。
「歴史学の研究手法・環境とオープンアクセス:日本近現代史研究の現場から」(石居人也先生、一橋大学大学院)
歴史学の研究手法
- 大きく2つに分かれる
- 手法A:史料(歴史資料)発掘型
- 史料の調査を行なうところから研究がはじまる
- 目的意識を持って対象を決めることもあれば、依頼を受けて主体的意思と別に調査がはじまることも
- 現地にいって、史料を持っているおうち/機関あるいは受け入れた側で、史料整理をする
- 中身を確認していつの、どういった内容のどういうものかを調べる
- 数万〜数十万点になることもあり、かなりの時間がかかる
- 最終的には目録を作成して終着・・・それによって初めて研究史を把握して、史料に関する解題をつけて公開する
- 時間、分量、出版事情の問題から、最終的に公開されない場合もしばしば
- その先に・・・研究者の問題関心に照らして論文を書く
- 史料群の全体像把握・提示が優先/調査的側面を重視
- 史料の調査を行なうところから研究がはじまる
- 手法B:課題設定型
- あらかじめ問題関心が所与のものとしてある・・・それに基づいて課題・論点整理
- その後はじめて史料収集・内容分析・執筆へ
- あらかじめ問題関心が所与のものとしてある・・・それに基づいて課題・論点整理
- 手法Aの方が歴史学に特異?
- Aの方はものすごい時間をかけて整理しても、それだけでは論文にならないこともある
- 費やした時間に対して研究成果が出にくい
- Bのパターンは目的意識が優先する/研究的側面が重視される
- 近年はBパターンの方が多い・・・研究成果を出すことがより求められる状況を反映して
- Aの方はものすごい時間をかけて整理しても、それだけでは論文にならないこともある
歴史学の研究環境とオープンアクセス
- 歴史学がOAと縁遠い理由・・・ナマの「史料」に触れねば研究ははじまらないという、頑なに信じられている「神話」
- 史料にふれないで研究することは不可能なのは確かだが、古文書に触れることに「偏重」といえるほど偏ってきたのが歴史学
- 史料調査・発掘が研究に不可欠と考えられる
- 結果、精緻な史料分析に基づいた研究が多い
- 同じものを見ていただけでは覆せない
- 自分も新たな史料発掘をして乗り越えるんだ、という方向に行きがち
- その結果・・・いわゆる二次史料・文献(活字)だけでは不十分、という認識の広まり
- 歴史学研究者の「生態」とオープンアクセス
- 顕著な傾向・・・「史料」=モノへの執着心
- すべてが「史料」、どんなに不必要そうでも「史料」
- 過去もそうだし身の回りのものも「史料」かもしれないと思う・・・捨てられない、研究室は「ごみ」だらけ
- 顕著な傾向・・・「史料」=モノへの執着心
-
- 形ある出版物への親近感・・・紙媒体への執着心
- デジタル化済みのものもプリントアウトしなければ読めない/紙でなければ・・・
- 早さよりも確実性/数よりも確実性を重視する傾向
- 自らも、「モノ」を残すことへの意識
- 形ある出版物への親近感・・・紙媒体への執着心
- 歴史学研究手法の変化とオープンアクセス
-
- 環境の変化とOA
- 史料の多様化・・・活字媒体・図像/史料画像そのもののウェブ公開
- 調査⇒公開サイクルの加速・・・手法Aの場合でも、史料すべてを見終わってからではなく、途中までの整理段階を目録としてワーキングペーパーで公開するなど/段階を踏んだ公開
- ある人間が手を付けた史料について、すべてが終わるまで第三者が触れられなかった状態が改善される?
- 「不断の更新可能性」への自覚
- 環境の変化とOA
質疑
- Q. NIIの方。あえて聞きたい。歴史学は史料の調査が重要なミッションであるとするなら、OAによって史料をもっと残さないといけない気がするのだが、矛盾しないの?
- A. 残す=OAの方が数を残せるかもとも思うのだが、一方で作法の厳格さや、残すにしてもちゃんとしたものを越したい。時間をかけて完成度を高めたものを、形あるものとして残したい。もちろん、数をたくさん残している方もいるので葛藤もあるのだが、まだまだ意識としては紙媒体で、完成度の高いものを残したい。
- Q. そもそもデータとしてオープンに、というのは? 目録をオープンにしたりとか?
- A. 多くはない。実際にわたしはやったりもしているが、目録を・・・データベースみたいなものを含めてOAと考えるのであれば、そういったあり方は、目録に関しては増えてきている。
- Q. 学術系ソフトウェア会社の方。OAの推進にはメディア、学術誌の側、DBの側からの動きが必要と思うが、歴史学についてメディア側の状況は?
- A. 日本史を中心に言えば、学会誌のOA化にはほとんど着手されていないし、出版に関しても、比較的厳しい出版事情であるにしても、論集や共著は紙で出版する機会が多い方。研究者の嗜好もそうだし、出版業界の事情もあるかも知れない。業界との関わりで言っても、OA化は進んでいない。
「海外の動向:人社系OA誌の最前線」(Martin Paul Eve 先生、Open Library of Humanities)
min2-fly注:逐次通訳はタイムラグで意識がとびがちなので、ここの記録はあまり信じないでいただければ(汗)
- リンカーン大学で英文学担当
- 英国政府のOAに関する委員会にも参加
- 人社系のモノグラフ/OAということで、特にOpen Library of Humanities(OLH)の現状と活動について紹介したい
- 今日の話:
- 1. OAの背景/克服しようとしている問題
- 2. 社会的問題
- 3. 技術的問題
- 4. 財政的問題
- 特にどういった社会的問題があるかを話したい
- OLHの活動について・・・社会/技術/財務的問題の全体にどう対応するかの具体例を話す
- OA全体の氷山の一角について話す
OA/OLHの背景
- シリアルズ・クライシス・・・よく出てくる雑誌価格と消費者物価指数の折れ線グラフ・英国版
- 雑誌価格は消費者物価指数の3倍以上のペースで値上がり(1986〜2010)
- 持続可能なものになっていない、という問題
- 雑誌価格は消費者物価指数の3倍以上のペースで値上がり(1986〜2010)
- 購読モデル・・・経済的に持続不可能なのは確か
- 研究者が十分に情報を得られない/納税者の経済負担もつじつまが合わない
- 代替案として:Research Councils UK(RCUK)・・・Gold=Article Publishing Chargeを研究者が支払うのが望ましいと結論
- 実際のやり方・・・機関単位で負担を依頼/小さな大学は研究費も限定的なのに対して、オクスフォードやケンブリッジは多くの資金がある。各々の実力に応じた貢献により出版を可能に
- 当然、研究者はなるべくprestigeの高い雑誌に投稿したいと考える/著者あるは機関・大学が負担するモデルだと、十分にコストをカバーできない
- 特に人社系では・・・一部の研究者の成果を掲載できない、排他的なものになってしまうことが懸念されている
- 他方、英国には利益を重視する多くの出版者がある
- 膨大な利益をあげながら研究者が十分にアクセス出来ない雑誌がある・・・問題
- prestigeの罠・・・高評価を盾にした雑誌の罠
- 過去、著名な雑誌は購読モデルであった・・・評価が高まり投稿が集まりさらに評価を高める、雑誌レベルでの評価を盾にとって様々なことが実現されている
- 個々の著者ではなくジャーナルのレベルによって評価が・・・
- この罠になぜハマってしまうのか? 不可解ではあるが、論文投稿⇒査読⇒編集⇒雑誌掲載
- 従来の学術雑誌と同じような形でprestigeを取り入れていく必要
- 過去、著名な雑誌は購読モデルであった・・・評価が高まり投稿が集まりさらに評価を高める、雑誌レベルでの評価を盾にとって様々なことが実現されている
- 雑誌レベルでの評価の使われ方の例:
- 1つのポストに350名の応募があったとき、どの雑誌に出版していたかを見てまず人をふるいにかけたという話がある
- OAに移行したからといって従来型の査読をやめるわけではない、が・・・査読のあり方を考える契機にはなる
社会的ソリューション
- OLHはここまで紹介してきた問題にどう対応したか?
- prestige=高い名声と評価について:
- Strong media presence
- これだけの人を揃えて厳密に査読をやるよ、といえば良い文献がくるかといえば、そんなことはない
- 研究者から始めた小さな試みなので、マーケティング/情報提供にも限界がある
- いかに草の根レベルでメディアにとりあげてもらえるか
- さまざまなメディア・マスコミにカバーしてもらおうと試みている
- プロジェクト開始以来の成果:
- 開設当時・・・2時間で100本のメール
- そこでOLHの説明
- 自ら投稿すると名乗りでた人間・・・若手/デジタル世代が多いことは否めない
- リーダーと呼ばれるような研究者には依頼して載せたいと思う
- 開設当時・・・2時間で100本のメール
- 革新性の段階的導入
- 最初の段階では今までと同じように見えることを重視
- 今後の予定/予測図:
- 評価のフェーズに入っていく・・・エビデンスを集めて、不安や不確実性・疑いから離れ実証的に問題を検証したい
- 保守的なやり方を重んじる人向けには今まで質を担保するために行なっていたことは変わっていないことを示せる
- 急進的な変化を求める人にはやっていることを見せられる
- 最終的には中道に落ち着く?
- モノグラフ:人文系では重要
- OLHでは雑誌論文がメインではあるが、本も無視するわけにはいかないし、本にするための編集作業は雑誌の場合とは労力が異なることも認識している
- 研究者からよく聞く話・・・本を出版するための編集者のインプットは価値あるもの/編集者から得られる知見、インプットから魅力ある本ができる
- 論文出版のための編集の労力とはかなり違う
- 本の出版もOLHでしたいが、難しいことはわかっている・・・そこで4つの出版者と協力模索中
- 出版者・・・自分たちで財政的コストを負担せずOA実験ができる/営利モデルから離れて学者手動のプロジェクトに関わっているイメージを打ち出せる
- OLH・・・出版者と一緒にやることでprestige/ブランドを梃子にする、大きなメリットを享受する/論文投稿の働きかけにも使える
- 現在の合意条件・・・オープンライセンスの利用/CC-BYに限らないが、なんらかのライセンスを/基本的には無料で/XML、HTML、PDFを使う/出版者側はハードコピー・デジタルコピーの出版権を得られる契約に
- これでコストが成り立つかの研究でもある・・・5年やってエビデンスを集める/スケールアップさせたときに出版協会等がその仕事をそのまま続けられるのか、エコシステムとして自由に使える環境を提供できるのかの研究をしている
技術面でのソリューション
- XMLファーストのワークフローへ
- 引用・・・書誌情報がどの論文を指しているのかコンピュータでは判断不能/構成単位ごとに分ける必要
- 著者、論文名、ジャーナル名などがどこなのか機械的に分かるようにする必要性
- 細かいところは省くが・・・引用情報を細かく分けていくことが重要/ジャーナルレベルで判断するところから離れていくには重要
- ジャーナルのレベルではなく、著者・論文単位での評価測定をするには誰がどの論文を引用しているかを評価する必要がある
- オーバーレイジャーナル:ここが大事な話
- PLOSのようなメガジャーナルは様々な領域を扱う/特定の基準に合致したものは論文として掲載する・・・内容の革新性ではなく、研究の妥当性で評価される
- これは人社系では問題。prestigeの高いニッチなジャーナルが存在するため
- そこで・・・オーバーレイジャーナルの仕組みを使う
- Orbitというオーバーレイジャーナルを出している・・・トマス・ピンチョンについての雑誌。自分がある程度の権威と認知されているので、キュレーターとしてなにが良いかを提示することが可能
- 編集がキュレーションの一部と考えると、従来のジャーナルは名声・評判を勝ち得た教員が出していたものであるわけだが、それを元にしてover layが出せないわけがない。メガジャーナルの上にオーバーレイの仕組みを載せる
- 基本的な刊行のハードルはメガジャーナルでは低い。その上にオーバーレイの仕組みを載せる
- Orbit・・・3ヶ月に一度、過去の10の最良の論文を出している、ということ
- 検索し、選んだものをoverlayとしてまとめることを提案している
- 急進的すぎるかな、と思ったが、このようなやり方を導入したいというジャーナルが出始めている
- キュレーション=すでに刊行されているものの中から選ぶ、というのはプライバシー設定を変えれば他の目的にも使える
- 学生のcourse packとしてまとめて、リンクを学生に送る+print on demandで印刷されたものを手に入れたり、それが嫌ならオンラインで必要な文献を読んだりできる
- 特定の人しか読めない設定にしておいて、研究プロジェクトに関連する人間だけ参加するようにする、ということも
- PLOSのようなメガジャーナルは様々な領域を扱う/特定の基準に合致したものは論文として掲載する・・・内容の革新性ではなく、研究の妥当性で評価される
- 検索:Q&Aで聞いて!
- デジタル保存:
- デジタルは一過性? 保存できない?
- そんなことはない!と説得し、納得してもらう必要がある
- デジタル保存に関わる色々なシステム・・・人文系には著作物が消えることへの不安感があるので、その払拭のため
- 例えば私がバスで轢かれて死んでしまったら、と心配する人にも安心してもらえるように
- LOCKSSやCLOCKSSの導入、オフサイトのバックアップに加え、BitTorrentでP2Pでの保存も実施
- デジタルは一過性? 保存できない?
財政面と持続可能性
- どのようにして実現していくのか? かけた労力に見合う報酬がないといけない。研究成果を商品化できなくても、成果を出すための労力への対価はどのような形であれいる
- 2つのフェーズ:
- 1.啓蒙的/アメリカの現在の資金提供者と話し合い、5年間は寄付を主体に運営
- 2.本格的な持続可能・自らの脚で立つ運営
- プロジェクトのコスト・・・5年間で260万ドルかかる?
- なににどのくらい使うか等は後述
- 実現可能性を示すことが重要/図書館からお金をもらう以外の実現可能性の証拠を出すこと
- 実現可能かつ安全と示せれば投資者は増える
- スタッフ:
- 社会的な問題の方が技術的な問題より解決が難しい
- OLHでは・・・技術面は他者と協力してやっている/既に必要な技術はほぼ開発済み
- 今後、1論文あたりにかかるコストは徐々に下がる
- OLHは社会的問題に対応する
- モデル:
- 従来・・・図書館はprivateにコンテンツを貸し出してきた⇒それが問題を生み出している?
- 今までの購読モデルを逆にとる/多くの図書館が個別に支払ってきたものを、共同で調達できないか。多くが少額ずつ支払うことでOAのメリットを全てで享受
- この方法の場合、図書館はインフラと労力のコストを負担すれば良い。APCのようなやり方にしない。サービスそのものを支えて、論文1点ずつには支払わない
- オープンな仕組みを継続的に続けられる/そのメリットを受けられる?
- この方法の場合、図書館はインフラと労力のコストを負担すれば良い。APCのようなやり方にしない。サービスそのものを支えて、論文1点ずつには支払わない
- 実際に資金を得られるようになったら、5年間の中でどこからこのモデルをはじめるか?
- 4年目から図書館に拠出を求める。その頃にはこのモデルの時速可能性をわかってもらえると思う
- 現在、世界中で1,000の図書館に資金拠出を募ろうと考えている。楽観的な見込みとは認識しているが、平均で1,000館から平均600ドルくらいいただきたい。伝統的な雑誌の購読料と変わらないくらい。払えない額ではないし、そのようなやり方をとれば、購読料モデルと変わらないじゃないかと思われることを避けられると思う
質疑
- Q. committeeの国際化についてお聞きしたい。現在はかなりアングロサクソンよりに見えるが?
- A. 国際化委員会というのがあり、UNESCOや中国からも参加者がいるが、日本には対応しきれていない。アイディアがあればメールを送ってほしい。言い訳にはなるが、なにせ馴染みがないので十分にできていないところがある。
- Q. NDLの方*4。質問は2つある。
-
- A1. 分野については全分野を対象にすることを考えている。投稿時には、ある程度自身の分野を選んでいただいて、どういう分野に収まるかを整理したい。
- A2. 国際化について。メンバーのみならず、論文の多言語での扱いも含めて考えている。英語が支配言語である必要はない。著者が望めば英語・別言語同時出版もできるようにしたいと思うし、他言語で書いたものの翻訳も受け付けたい。他言語対応を考えている。
- A3. いつ出版できるのかは、日付を言ってしまうと、それが実現できないと「失敗した」と言われるので日付は言いたくない。ただ、来年には投稿受付や依頼も開始したい。ただ、それは論文の話。出版については財政的に可能になった段階で、可及的速やかに。
- Q. NISTEPの方*6。プレゼンテーションの中に「publisher」や「journal」という表現がなかった。そのかわりに「open library」という語を使っているのだと思うが、Martinさんはpublisherやjournalになりたいのではなく、humanitiesのための新たなメディアを作りたい、という考えがあるのか? また、もしそうだとしても、出てくる物体はやはりjournalのような逐次的にPDF等が出てくるものになるのか?
- A. 良いご質問と思う。名前は、私達がやろうとしていることはpublisherがやろうとしていることと思う。先に2番めについて言えば、毎月とか週単位での刊行はせず、準備ができたものから刊行していきたい。名前に関しては、「library」と入れたのは、今世紀、図書館の役割が変わってきているから。図書館はコレクションを持っているところではなく、デジタルのファシリテーターになる。これは、双方向である、ということ。学者・研究者の成果を出す部分の手助けも重要になっている。探しものを一緒にやるだけではない。ネーミングについてはかなり考えたが、私達がやろうとしている「双方向性」を捉えていると思ったので「library」という語を使おうと思った。
休憩
「「学術情報」と「体系的な知」のはざまで:大学出版の模索」(鈴木哲也さん、京都大学学術出版会)
- 人文社会系のOA化ということだったので、京大図書館に話を聞いてみた:
- 人社系のOAは遅れていないのではないか? 京大の機関リポジトリの構成比でいえば、人文系の紀要類が多い
- 全国で見ても紀要論文が多いのは同じ
- 人文系が遅れているなんてことはない??
- 人文系というよりも、学問全体として考えてみたい
- 人社系のOAは遅れていないのではないか? 京大の機関リポジトリの構成比でいえば、人文系の紀要類が多い
- 5年前から、京大出版会では、出版している本を年間2冊、リポジトリに無償掲載
- 人社系の先生からは否定的な意見が多い・・・
- 1. 一番反対したのは日本文学の先生。人社系で最もはやくインターネットやDBで資料集積しようとした国文の先生が、「検索・抽出は容易になったが、院生の論文がめちゃめちゃになった」という
- 一つの資料だけ見てもなにも論じれない。全体を俯瞰して、その作品を凝視することがいる。自分の対象とする資料の周りをしっかりサーチし、俯瞰するのが人文系の仕事
- 資料が簡単に手に入るのでそれだけ見るようになって、書かれる論文の質が低下した
- 自己批判から反対に。自分の研究対象が全体の中で持つ意味について
- 2. ネットカルチャーとアカデミックカルチャー
- 批判/再批判の方法論がなく、容易に絶対化/相対化される
- 紀要に載るような個別論文は個々に意味があるのではなくて、10〜20年の問題関心の一部として研究しているもの・・・全体の構想がわからないと意味がわからないのに、しっかりとしたトレーニングのなされていない人に一部だけ出てしまうことの危うさ
- 3. オンライン化前後でcitationの範囲がどう変わるか?(Science 掲載記事から)
- オンライン化すると、同じ問題関心のある人間にしか引用されなくなる??
- 学術コミュニケーションの狭隘化/細分化がますます進む?
- 1. 一番反対したのは日本文学の先生。人社系で最もはやくインターネットやDBで資料集積しようとした国文の先生が、「検索・抽出は容易になったが、院生の論文がめちゃめちゃになった」という
- 人社系の先生からは否定的な意見が多い・・・
- 出版の立場から・・・上記3点、教員・研究者の懸念を無視はできない
- 一方で学術出版には・・・そのような自覚はない/学術コミュニケーションの変化と教員の悩みを自覚しないまま、増大する成果公開、デポジットの受け入れ先として機能してきた
- ビジネスとしての出版の劣化/本が売れないのは参照するに足りない本がいっぱい出ているから
- APCの話・・・日本の場合、人社系の教員は個人では支払いはしないが、学部等が出版にかかる費用を支出するように。若手研究者に年間数千万円のお金をつけて、若手に本を出させる
- それを狙った商売も。「印刷を請け負いますよ」とか、あるいは大手国際誌が「ジャーナル作りましょう」と言い出すことも。予算を食いものにするビジネスモデル
- もっと原理的に考える/咀嚼することが必要?
- それぞれのコミュニケーション手段はどういう性格であればよい?
- やろうとしていること・・・
- 「本」に限定して、出版点数を減らすにしても、パラダイム志向的な、学説全体を批判するような本を出していきたい
- 大型のcomprehensiveなものも出す
- 本とデジタルをつなげる・・・本の中の図版にスマホを掲げると、京大DBの資料が重なって見られる、みたいなもの
- 高校性向けに京大の理学研究を紹介するアプリの開発
- お金集めもしながら、この時代、OAを視野に置きつつ、それでは満たされないものを本の側から埋めていく
- OAの側も、「これはOA向け、これは向いていない」みたいなものを考える
- 史料には出しにくいものもあるし、美術資料はデジタルだと質感がわからなかったり
- 逆に美術資料・歴史史料は個人が所蔵した瞬間にどこにあるかすらわからない。それはどこにあるか、メタデータとして明らかになればいい
- 資料によっては「ここまではOA、あとは現物に触って」みたいなことを考えられれば良い
パネルディスカッション
モデレータ
- 蛯名邦禎先生(神戸大学大学院)
パネリスト
- 蛯名先生:最初に松本さんから、人文系図書館のOAについて話題提供をいただきたい。
「人文社会系図書館とOA」(松木和子さん、慶應義塾大学理工学メディアセンター)
- 今は理工系だけど、以前は三田=人文社会系の図書館に長く勤務
- その経験を共有できれば
- 人社系図書館の状況:
- 理工医学=STM系は雑誌が買えなくて大変と話題だが・・・
- 人社系は本もしっかり買う。医学等は90%を雑誌に使うが、三田は半分は図書に使う
- 予算は下がる一方の中、研究者は紙も欲しがるがお金がないので電子のみになったりしている
- 経済的な状況が悪化する+出版者の値上げを受けて・・・
- レファレンスやILLの件数は減った。図書館に来ない、来るのは紙しかないものや図書だけ。「これはどこ?」というのは聞かれなくなった
- 高いお金をかけて買っている電子ジャーナル・電子ブックへのナビゲートをどうするか。さらにそこにOAのものを入れるには? そのノウハウが不足している
-
- 図書を買い続けてスペースがなくなると・・・雑誌が「電子があるからいらないよね」と遠くの保存書庫に行ったり除籍されたりする
- 人社系のOAは進んでいない?
- 人社系学会誌と研究者
- 2011年のSCREAL調査*7・・・人文系は電子があっても紙で読みたがる
- そして日本の場合は和雑誌をよく使う/洋雑誌も読むが、人社系の研究者の投稿数は少ない?
- 言語の問題+査読者が日本の事情を解さないから?
- 研究業績・・・人社系にとっては単著の図書を出すのが最終成果
- OAと図書の関わりについて先生方に聞いたことはないが、本=業績という考えは強い
- 一方、若手研究者は業績をどんどん出すために、大学紀要や小さい学会誌にも出して、webで見られるようにして業績をアピールしようとしている
- 図書館員もよくないが、人社系には「OA」と言っても「それなに?」となる
- 2011年のSCREAL調査*7・・・人文系は電子があっても紙で読みたがる
- 図書館がOAをサポートするには?
- OAとはなにか? 流通コストは誰が持つのか? それを図書館から研究者に伝えることがまず大事?
- コスト分析。購読⇒APCにしたり参加費にすることがいいのか
- 慶應は総合大学なので、医学のような人の命に関わるものを阻害してはいけない、という理論が堂々とまかり通る。「医学部の雑誌が買えない? じゃあ人文系の本を削れ」という意見が出たり。必死に止めているけど
- コスト感覚を人社系でも磨くことは重要
- リポジトリへの掲載を進める・・・図書館だけでなく情報発信として機関リポジトリを進める必要がある?
- 著作権問題/権利処理・・・TPPによって著作権侵害が親告罪じゃなくなると怖い
- SCPJが今年の3月で終わってしまってその後、続いていない。OAに関わるのならば、人文社会系なら原著作との関わりがある。史料の引用や漫画の転載などもあって、そのオンライン化の許諾処理がいる
- 科研費・・・図書も含めて、その成果はOAにする政策が必要・・・それに図書館としてコミットしたい
以下、ディスカッションへ!
- 蛯名先生:
人社系の現状がどうなっているのか。人社系のOA化は遅れているのかどうか、研究の仕方が違うのだ、など。現状についての補足があれば足していただいて、議論に入りたい。
論点はいくつか考えられて、OAの目的を考えれば学術の推進自身をどうやるのか。鈴木さんから根源的な問題提起もあったが、どう推進するのか。
それから、例えばいろんなレベルがあって、データ収集、整理、論文としての公表、体系化、人の育成、コミュニケーションをどう捉えるか・・・最後についてはいろんな側面がある。同業者に伝える、研究者集団に伝える、一般に広く伝える、助成機関に証拠として示す、など。
そういう問題と、最後に、技術的な問題や財政的な部分をどうするかなどが色いろある。
そういうことがあるということを認識いただいた上で、それぞれの講演者の方から補足やコメントをまずいただいて・・・それに対して、フロアの方からご意見・質問をいただいて、その後でまた講演者討論としたい。
- 青木先生:
他の報告者の話を聞いていて、頭の中を整理しないといけないと思った。OAというのは、情報を発信する方法が重要で、アクセスの問題なのか。それともPrestige、研究活動の中での成果の評価を雑誌を使ってやっているのか。高い雑誌はprestigeを持っていて、そのために価格が上がっても買う、それを解決しようというのがOLHのようにも思った。皆さんのいうOAへの期待はどういうものなのか? それによって誰がお金を出すかにも関係してきて・・・評価のために雑誌がいるのは研究者のコミュニティで価値があるので、それには国や学会がお金を出してもいい。学会として、評価方法として学会誌を維持するなら、学会としてお金を集めてできるようにはなる気がする。評価のためのジャーナル、というのも大事な価値では?
- 蛯名先生:
OAへの期待がどういう面かはっきりしないと議論ができない、と。
- 石居先生:
現状に関わって。鈴木さんが出してくださったことについて、国文学会の自己批判や出版/OAの適合判断について答えると。
わたしの方で若干の活用事例として目録の公開についてお話したが、あれ自体も、公開したのは目録と若干の史料公開であって、史料の全貌や個々の画像は出していない。そんなのは不可能だし、目録や調査報告は次に研究する人の入り口。すべてがそこで完結するのは望ましくないのではと考えている。どう活用するのか、どういう狙いがあるのか。研究者の側も考えないと。
出版計画が溢れている点については、ある面ではありがたいかもしれないが、とにかく出版者から来る出版計画が多い。私が一冊まるごとではなく分担執筆だが、私はここ何年も自分で主体的に書いて投稿していない。いただいた出版計画との間で出している、アウトプット中心の生活になっている。それは私自身が選別をしないといけないということでもある。そういった状況はある。
松本さんからいただいた点についていうと、科研費の成果をOAに、というのは仕組みとしても大事だし、助成を受けて研究する以上は速報性や区切った中での成果を出すことも必要になる。先ほどのワーキングペーパーの活用事例も、科研費の成果を出している。そういう点でも、OAは・・・今の研究者はほとんど助成を受けないと研究できないし、OAと親和性が高いように思う。
- 蛯名先生:
OAといってもいろんなレベルがあるというのと、出版計画の持ち込みの多さがある面で研究を歪めている、と。それから助成研究の速報性にはOAとの親和性がある、と。
- Eve先生
学術情報の流通、コミュニケーションの根源的目的とはなにか。それが評価なら、研究者がやっているのはゲームのようなもの、ということになる。もちろん評価の果たす役割がないとは思わないが、理想的には学術情報流通が果たすべき役割は、同業者に伝えること、最先端の研究動向を幅広く、人々・教育を受けた人全体に伝えていくことでは。
ぜひ思い起こしていただきたいのは、現在の出版システムは歴史の偶然の産物であるということ。今までの文脈があるからこういう形なだけで、今から新しく始めようとすれば今、OAと呼ばれているものが「publish」と呼ばれていたかもしれない。
最後に、理想論的なことを言うと。先程からいかに特定の研究成果を幅広い文脈の中に置いて考えなければいけないのか、という話が出ている。このような議論については注意がいる。こういう考えにとらわれると、エリート主義的、一般社会からかけ離れてしまうかもしれない。大学を卒業した学生が一般社会に入っていく。その中で、大学が一般社会から隔離された、かけ離れた場所であってはいけない。入学した学生に教育を施し一般社会に放り出すのが大学、なのではなく、究極的には教育を受けた社会を作る、社会全般として教育水準を上げることが、学術研究の果たす役割であると思う。
もう少しだけコメント。「市場」という話があったが、学術情報流通の中に真の市場はあるのか、それは市場と呼べるものか。研究の中で特定の論文が必要なとき、選択の余地はないことがある。必須のものなので、ある出版者のジャーナル論文が必要な時、他に選択肢はない。それはフェアな仕組みか? 出版を市場経済になぞらえてしまっていいのか。
- 鈴木さん
教育的な側面をMartinさんが重視しているのには賛成。そこでオーバーレイジャーナルが面白い。
本が電子メディアに優っているのは発見可能性。電子メディアは目当てのものしか出てこないが、紙や雑誌で見ていれば目当て以外のものも目に入る。たとえばたまたま医学分野の筋肉と骨格についての論文を読んだゲームメーカーが、それをゲームに取り入れたりする。電子メディアは自分の関心のあるものだけになってしまう。OAに「こんなものもあるよ」という機能を付け加えるといい。その点でMartinさんのいうオーバーレイジャーナルのようなものは非常に面白いのではないかと思う。
もう1つ、松本さんがいくつか役割を整理されていたが、一つ大事なのはひとづくりと思う。教育。その点で10月から、私どもと京大図書館で一緒になって、リポジトリに掲載されているオープンな情報や発表機会をどう使って研究を促進するのか、さらに同業者以外にインパクトのある論文を書くにはどうするのか、というワークショップを開催しようと考えている。そういったひとづくりが大事なのではないか。いずれにしても、有効に利用するためには、目的に応じた利用・公開の仕方を作り上げていかないといけないのではないか。
- 松本さん
鈴木さんの人材育成の話を、図書館はどんどん委託化が進んでいる中でどうできるかなあと考えると、OAだけではなく大きな課題であると思う。
会場討議
- Q. 人文系研究者。ピンポイントで石居先生に。私どもの学会は、紙で作ったものをNIIでスキャンしてもらって公開している。手間はかかるが、それをどこかで持ってくれるとしたら、OAにするでしょうか?
- Q. 図書館情報学者。紙の発見可能性について、紙で読んだものを電子でなら安く買えるとか言うことはできない?
- A. 鈴木さん:考えている手法は、再検索性というよりはアクセシビリティ、見えない人に本を読めるように、というのが強くある。本を買っていただいた場合、特別な紙をつけて送ってもらったら電子媒体を、というのは考えている。中身が障害者と大学の本なのでさっそくやろうと思っている。その手法なら、紙で買っていただいた方に直接的な検索可能性を提供できる、便利だということはある。目的は違うけれども考えています。それによって、コピーされてどうなるとかは次の段階で考えればいい。技術的にはいくらでも可能。小さな出版で紀要の電子化は難しいとかいう話もあったが、大学出版部のものはたいがいDTPでできているので、新刊はそうする。既刊書については図書館にやっていただくことになるかと。
具体的事例として、私どもがリポジトリに上げている本では「こんなアクセスあるなら増刷しようかな」というものがいくつもある。リポジトリにあげたことで利用されなかったものが再利用されることもある。電子と紙は相反することはないのではないか。双方向的ではないかと思っている。
-
- A. Eve先生:英国においても調査・研究が行なわれていて、電子媒体での提供の印刷媒体での販売への影響を調査していたが、影響はないという結果が出ている。もちろん、電子媒体のデバイスのよみにくさ等の機能の限界の影響もあるかもしれないが、鈴木さんからもあったように、デジタルと紙は違った機能として扱われている可能性もある。紙は最初から最後まで読むが、デジタルなら途中を検索するなど。使い方を変えれば併存もありうる。
-
- A. 青木先生:経済では「補完的」という。実証分析で、PDFがある方が紙の本の価値が高くなる、という実証分析も行なわれている。
-
- A. 松本さん:慶應では学生に教科書の電子版と紙を双方渡すと、書き込むなら紙、試験勉強するならまっさらでもいいし電車内なら電子がいい、みたいに使い分けをしている。このプロジェクトで教科書のビジネスモデルが提供できればいいのだが、例えば「教科書全部、半期一万円なら電子で買う。紙で欲しいのは別に買う」など。出版者には電子と紙で出して欲しい。
- Q. NDLの方。コメントというか感想でもあるが。
- 1. お話うかがっていて、最後の松本さんの一言あったが、人社系の研究者にとっての本の価値が極めて重要。私は歴史学の出身で、論文をまとめて本にすることの重要性をずっと言われてきた。今回、OAを論文について使うのか、本について使うのか、曖昧なままで議論が進んでいるように感じた。
- 2. キープレイヤー、研究者と図書館、国、出版者といった議論がされていたが、学会や雑誌を発行する団体というような研究者集団が重要なのかと思う。つい先日、論文のOAについて、「誰も買ってくれないから結果的に雑誌を出す学協会がつぶれるんじゃないか」と懸念を述べられていた。そういうのが人文系、人社系のOAの議論のポイントになるのではないか?
-
- A. Eve先生:OAの定義についてというなら。その語源はPeter Suberの言い出した、価格や権利障壁の排除からはじまったと思う。21世紀の3つのBから来ている。要するに、オンラインで自由に利用可能にすることと、色々なものを再利用可能にすることがOAの根本定義だと思う。
もう1つ手短にコメントを。学会、学協会がそれぞれ出す資料、刊行物の販売で資金を得るやり方には問題がある。そもそも学協会の役割は知識を幅広く伝え促進するところにある。支払わないと公開しないというのであれば、その役割を果たしたことにならない。その財政的なジレンマに対する解決策は持ち合わせていないが、資金を得るために情報を独占するのは本来のやり方ではないのではないか。
- 蛯名先生:財政的なモデルについて、なにかある?
- Q. 人文系研究者。数年前からOUPで雑誌を出している会計の仕事をしている。その中ではじめて知ったのだが、日本の大学が電子ジャーナル会社に支払っているお金が、雑誌を出している学会の運営費にまわっている。大学図書館が学会誌を買ってくれるのと同じようなことが大規模に行なわれている。もちろん、一括購入の中の数%ずつが学会に回っているということで、学会によって出版からもらっているお金が違うようなのだが・・・そういう構造があったとして、日本のドメスティックな人文系の学会はその循環から完全に離れてしまっている。その輪から離れていて、国際学会でOAについて議論するときには、各大学が電子ジャーナルに払っているお金を諦めるかどうかが問題になる。ドメスティックな方だと、学会費が払ってもらえなくなるかもという議論になる。大きな違いがある。背景に、置かれている資金のサイクルが違うということがあるのと、理工系の電子ジャーナルに詳しい方は多いと思うので教えていただきたいのだが、Elsevier等でも雑誌を出している学会にキックバックがあったりはするのか?
-
- フロア:その話はあとで個人的に・・・。
- Q. 大学図書館の方。人文系のOAというが、そもそも人文系のデジタル化をどうするかに論点があるように思う。既存のものの電子化、デジタル化という意味では、あるにこしたことはない。紙があるのに電子があるのは便利で間違いない。問題は、OAにした時、オープンにしたときの問題は、いわゆるリテラシーのことなのかなと思う。リテラシーがない人たちにオープンにされることなのかな、と。それについてコメントいただきたい。
-
- A. 鈴木さん:定義の問題とも関連して、私も自覚している。私ども、本をリポジトリにあげていますが、OAにしようとは考えていない。その一つに、本はなんのためにあるのか、デジタルデータをオープンにするのはなんのためかというのは仕分けしたらいい。そこでリテラシーが大事なのもそうだが・・・例えば博士論文は全てオープンに、という考えがあるが、それでいいのか。博士論文なんて主査と副査に向けて書いたもの。それをオープンにして意味があるのか。それを誰に読んで欲しい、と思ったときに本にするとか選択がある。リテラシーというのは使う側の問題だが、むしろ出す側の使い分けのようなもの、そのためのしっかりした区分けがない、コンセプトがしっかりしていないことが問題。リテラシーは悪いに決まっている。全国民に教育なんてできないんだから、出す方の使い分けが重要では。
-
- A. Eve先生:読むものを提供しなければ、リテラシーも上がらない。
-
- A. 石居先生:自分もそれに関わって悩みながら試行錯誤しているところ。従来であれば、OAを前提としない形であればどこまでのことを書くかの線引きは、学術出版なのか一般向けなのかで出し方をこれまでは変えていた。OAが前提になるとどこまで出すかが・・・特に被差別部落の問題は、一般的にもどこが被差別部落だったのかを特定したいという人達がいる。学術的なものではある程度、地域も特定できるようにしないと研究として、ということがあったが、それをオープンにするとなると、そうすることへの合意がとれているかどうかが問題になるし、それをクリアできたとして、OAの中に出すことに・・・触れてもらってリテラシーを鍛えてもらうんだ、というところまで覚悟を決められれば出すことにも意味はあると思うが、今までの書き方についての前提をあらためないといけない。
-
- A. Eve先生:先ほどの発言に付け加えると。アカデミックに高度な内容を一般に公開する形で行なうことが、必ずしも従来の論文に匹敵するものではないにしても、様々な異なったレベルで出すことはできる。21世紀のリテラシーモデルとして、ある程度レベルを分けて出すことはできると思う。
岐阜出張につき移動中のアップロードなので感想は簡潔に。
人文系の先生とか人文系出身の図書館の方のお話聞いて思うのは、読み手のことをすごく考えてるよなー、ということでしょうか。
自分の感覚としては論文をOAにする際には「専門以外の人が読んでどう受け取るかとかどうでもいい、受け取れる人は受け取ればいいし、ネット人口は億単位でいるんだから100万人に1人が読めりゃ読者は100人、同業の研究者よりも多い」って考え方なのですが。
人文系だと、より人の営みに近かったり、(一見。あくまで一見)理解しやすそうでもあることから、リテラシーのない人たちの間で思わぬ形で使われる、みたいなことにはより敏感な例もあるのかな、とかなんとか。
そういう差異も意識しながら話をしないとうまく咬み合わないところもあり、逆に意識して話せばその違いが面白くもあり、なんてことを考えつつ、やや、そろそろ到着地の駅が・・・
「国立国会図書館出向報告:カレントアウェアネス-Eの編集経験を中心に」(京都情報図書館学学習会 #207 参加報告)
皆さん、カレントアウェアネス・ポータル読んでますか。
毎日最新の図書館、図書館情報学関係情報を更新するカレントアウェアネス-R。
隔週で適度なボリュームに図書館関係の動向をまとめて配信されるカレントアウェアネス-E。
季刊で図書館の動向を伝えるレビュー誌『カレントアウェアネス』。
年1回、様々なトピックを取り上げる調査研究。
四位一体で最強に見えるこのサイト、知らなければ業界のもぐりと言われても仕方ない感じですが。
さんざん煽りましたが、実はこの春から自分もこのカレントアウェアネス・ポータルの更新等を一手に担う国立国会図書館関西館、図書館協力課 調査情報係の非常勤調査員をやっていたりします。
たまに自分が更新したRも混じってるよ!
その調査情報係に昨年度まで出向され、大活躍されていた先輩、林豊さんがカレントアウェアネス・ポータル(その中でもメールマガジン カレントアウェアネス-E)の裏側と経験について語る京都情報図書館学学習会が、先週木曜日に開催されました!
- 京都情報図書館学学習会(案内・記録等もあり)
偉大なる、そして乗り越えるべき先輩のお話ということで、これはいかねば嘘だろうと、授業の狭間をぬって参加してきたのでした!
以下、例のごとく当日の記録です。
いつもどおりmin2flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での話であり、ご利用の際はその点ご理解いただければ幸いです。
事実誤認等、お気づきの点があればコメント等でご指摘いただけると助かりますm(_ _)m
「国立国会図書館出向報告:カレントアウェアネス-Eの編集経験を中心に」(林豊さん[twitter:@hayashiyutaka]、京都大学)
- 2011.4-2013.3まで国立国会図書館関西館に出向
はじめに
- 自己紹介:
- 就職7年目。最初は京大図書館中央館。目録⇒ILL
- その後、NDL関西館
- 4月から人環・総人図書館
- 人環・総人図書館の紹介
- 目新しいところ・・・[tiwitter:@jinkansoujinlib]
- 2013.2〜:黒板が目玉(林さんは書いてない):
-
- ゆるゆるわいわいやっている図書館
- 2年前の学習会で・・・ブログ・CA-Rについて紹介した
- その回の記録:京都・図書館情報学学習会記録
- 情報収集の仕方について:
"カレントアウェアネス"とは
- カレントアウェアネスサービス:
- 「最新情報を定期的に提供するサービス」
- NDLのサービス・・・「図書館関係の」最新情報を提供
- NDL:「私たちの使命・目標2012-2016」
- 目標の一つに協力・連携
- その中に・・・「図書館に関する情報発信」がある
- NDLのミッションとしてカレントアウェアネスが位置づけられている
- 目標の一つに協力・連携
- NDLの組織図:
- 全体/関西館内部の説明
- 図書館協力課(通称:ときょう)の説明
- その中に調査情報係
- 調査情報係の仕事:図書館情報学に関する調査研究・情報収集、その成果の提供
- ここからしばし画面を出して説明
- 利用者アンケート結果:
- CA・ポータルのようなサイトに相当するものは意外に海外にはない?
- LCもLCの取り組みは集めているが図書館ニュースは集めていない
- 意外に世界的には珍しい?
- アメリカにいる日本人の図書館員も読んでいるらしい>CAP
- CA・ポータルの旧画面・・・(会場から「懐かしいの声」・・・)
- さらに遡ると・・・外部のブログで勝手的にやっていた「CABlog」というものも・・・今はInternet Archiveでしか見られない
- このあたりをやっていたのが京大から出稿していた筑木さん
- 前史:図書館研究所
- 冊子の編集元・・・当初は総務部⇒参考書誌部⇒図書館協力部図書館研究所⇒後に現在に至る
- 図書館研究所の歴史の詳細はブログを参照:図書館研究所あるいは「図書館の頭脳を持ちたいという夢」について - ささくれ
- 立ち消えになった国立図書館研究所
- 関西館に持ってくることは能わず・・・図書館協力課に
- カレントアウェアネス・ポータルのチーム(2013.3まで/林さんがいたとき):
- 編集長=課長:現在は南亮一さん
- 調査情報係:3人
- 館内外執筆者:
- 館内の他部署:
- 館外・・・加藤信哉さん、江上敏哲さん、id:min2-flyなど・・・
- カレントアウェアネス編集企画員
- 館内職員/館外図書館員/館外研究者
- 林さんも今年からは編集企画員
- プラス、読者+フォロワーの皆さん
メールマガジン「カレントアウェアネス-E」の舞台裏
- CA-Eの概要:
- 過去の特徴的な記事:
- 過去のはてなブックマーク数ベスト10:
- アクセスランキング
- CA-E林さんセレクション:
- 10年間の歩みとCA-Eの変化
- 変化1:長くなった!
- 第1号・・・500文字くらい⇒現在・・・2,000文字弱
- 昔はメルマガしかなかったので短くても意味がある⇒CA-Rができて、500文字くらい書くので、差別化が必要に
- CA-Eが伸びたことでCA本誌との境界が・・・
- 複数メディアの差別化/ポートフォリオが悩み
- 変化2:トピックの広がり・やわらかいものも増えた
- ほっとしてもらえる記事も増やす
- 変化3:執筆者の広がり
- 館外執筆者の増加・・・2012年度には39%が係外、林さん担当の最後の記事は執筆者全員係外!
- 変化4:執筆者の署名が入るように
- 当初は係内の執筆者名なし⇒2012年度分からは切り替え。当該年度分は遡及して署名追加
- 変化1:長くなった!
- CA-E編集のタイムテーブル:はやしさんの1日
- 6:30気象⇒7:30出発⇒着くまでRSS・メールチェック⇒午前中はメールチェックとR⇒午後はRとCA-E等⇒夜:残業⇒22時過ぎに職場を出て23:30に自宅へ
- CA-Eは2週間サイクル・・・カレンダーを表示しつつスケジュール紹介。休みのない2週間インターバル
- 詰め過ぎ・おかしいが今更なおせない?
- CA-Eができるまで:
- 1. 企画・・・主担当は常になにが面白いか考える
- CA-R書く際に、CA-Eにしたいものは短めに抑えて後はEに
- 外部原稿ははやめの依頼
- 企画会議・隔週金曜日・・・係+非常勤調査員で30〜1時間で5〜7本選ぶ
- 基本的にCA-Rから選ぶ・・・書きたいもの/面白そうなものを抜く
- 多いパターン・・・報告書/文書解説、論文紹介、イベント報告、インタby−
- 企画段階で苦しむことが多い/面白そうなネタはあっても自分が書けるかは別問題
- 意見ではなく事実を書くには証拠が要る⇒情報がない段階では書けない。待つしかない
- 中には読みやすいもの、楽しんで読めるもの、ゆるい感じのものも入れる。そういうものは最初に入れて、徐々に難しめにしていく
- ネタを選ぶ眼・・・笠間書院へのインタビューから:「マニュアル化できない部分」
- カレントの仕事はある程度誰でもできると吹いているが、面白いものに反応できるかは、自分にできても人にできるかわからない/後任にもうまく伝えられない
- 1. 企画・・・主担当は常になにが面白いか考える
-
- 2. 執筆・・・
- 形式規定がいろいろある
- 基本の型:リード文+トリガー+本題5〜6段落+〆
- これに沿って書けば凄い楽
- 「〜である」と言い切るか、「〜されている」と報告調
- 最後には参考文献
- 気をつけていること:
- 読みやすさと正確さのバランス/メッセージの明確化
- 1本の記事に10〜20時間・・・土日に読んで月火水で書く
- 2. 執筆・・・
-
- (執筆依頼(外部の場合))
- 館内・・・本人に内諾
- 館外・・・書類を出している+著作権譲渡を決済付きで
- (執筆依頼(外部の場合))
-
- 3. 校正:ドS査読またはサド査読
- 徹底的な原文との対照・・・「書いてあるか」をチェック
- 館外は特に。CA-Eがそういうメディアとの理解がないことがあるので
- 原文の持つ魅力は失わないように。伝えたいメッセージは崩さないように。執筆者のキャラを壊さないように。
- 校正にコストを書ける理由・・・「NDL」の名前で出る。脇は締めておかないと
- 校正スケジュール・・・届いたらなるべく早く目を通し、1回でも多く赤を入れる
- 3. 校正:ドS査読またはサド査読
2年間の経験を超えて
- やってきたこと:
- CA-R:2,399本
- 自薦1:佐賀県武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が〜・・・*11
- 「これ見りゃこの時点の武雄の情報はわかる」を目指す
- 政治的な薫りのする記事はカレントは避けがちだったが、それは嫌なので気合を入れて書いた。2〜3時間かかった
- 自薦2:神奈川県立図書館および県立川崎図書館の機能集約・廃止等についての検討*12
- 議会資料等をみて書いてあったことを含めて書いた
- その時点では一番詳しい、信頼のおける記事になっていたと思う
- 書いて1日半で5,000〜6,000アクセス
- 自薦3:2012年10月の著作権法改正:国立国会図書館による絶版資料の図書館等への自動公衆送信等を含んだ・・・*13
- 世間は違法ダウンロード刑罰化の話ばかりだったので、バランスをとろうとこっちをタイトルにして記事に
- 「こんだけ違法ダウンロードの話があるのにNDLは自分の話ばかりか!」と言われ帰りのバスは悔し泣き
- 自薦1:佐賀県武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が〜・・・*11
- CA-R:2,399本
- 情報発信とは?
- 「想いを込めた」と似たようなことを江上敏哲さんも述べる・・・「情報を伝えるだけじゃなくどう変化・影響したいのか」「なにかが変わる、うまれる」「変えたい、うまれてほしい」*20
- 情報発信(情報環境のデザイン)=ライブラリアンの仕事
- 出向で得たもの:いろいろあるが・・・
- 大学図書館以外の館種についても広く関心を持たざるを得なかったこと
- 広がる関心/有り難い2年間だった
- 自分はこれからどうしていきたいのか:
- 正直、出向元へのフィードバックは特に考えていなかった(汗
- 出向元=京大に何かを持ち帰ろうと思わず仕事。働くことが日本全体の役に立つと考えていた
- いつも願っていること
- 自分の強み(≒システム)を活かしたい
- 大きな仕事、影響力のある仕事をしたい
- 今職場にいる「チーム」じゃなきゃできないことをしたい
- 「ファン」を作れるサービスができたらいい
- 今いちばんあるのは「焦り」
- NDL2年間の経験がどんどん抜けている気がする
- 経験を忘れないうちに次に活かしたいがうまくいかず苦しんでいる
- その苦しみについて・依田さんから「現場は現場の人の力でしか買えられない。現場を変えられないのなら、今までお前が身につけたことはなんだったのかと、エールとして」
- 正直、出向元へのフィードバックは特に考えていなかった(汗
このあと2010から授業なので質疑はとれませんでした、ごめんなさい!!
CAの皆さんの日々の忙しさは週1で目にはしていますが、あらためてCA-Eのスケジュール感はえらいことですね・・・(汗)
そして見ればみるほど、CAポータルの4つのコンテンツを組み合わせたモデルは完成度高いなーと思ったり。
これは色々なことに応用可能なんじゃないか・・・とかそんなことを最近ちょくちょく考えています。
林さんの思いについては既にご本人もブログをあげているのでそちらも参照。
考えることは色々あるのですがそろそろ仕事なのでとりあえず今日はこのあたりまでということで。
*2:カレントアウェアネス-R | カレントアウェアネス・ポータル
*3:カレントアウェアネス-E | カレントアウェアネス・ポータル
*4:カレントアウェアネス | カレントアウェアネス・ポータル
*6:2013-07-24 ブコメを受け修正。ご指摘ありがとうございましたm(_ _)m
*7:E967 - 福井県立図書館「覚え違いタイトル集」ができるまで | カレントアウェアネス・ポータル
*8:E1127 - 「ぬいぐるみの図書館おとまり会」現場の様子と舞台裏(日本) | カレントアウェアネス・ポータル
*9:E1088 - 子どものお気に入りのぬいぐるみが図書館でお泊まり会(米国) | カレントアウェアネス・ポータル
*10:E574 - 図書館ネコ「デューイ」,その生涯を終える(米国) | カレントアウェアネス・ポータル
*11:佐賀県武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が同市図書館・歴史資料館の企画・運営に関して基本合意を締結 | カレントアウェアネス・ポータル
*12:神奈川県立図書館および県立川崎図書館の機能集約・廃止等についての検討 | カレントアウェアネス・ポータル
*13:国立国会図書館による絶版資料の図書館等への自動公衆送信等を含んだ改正著作権法が成立 | カレントアウェアネス・ポータル
*14:国際学術情報流通基盤整備事業 │ イベント情報 │ H24 │ 2012年度第6回「オープンアクセスによって図書館業務はどう変わるのか~図書館のためのオープンアクセス講座~」
*15:E1341 - オープンアクセスの未来に大学図書館の役割として残るものは | カレントアウェアネス・ポータル
*16:E1364 - 米国図書館に関するファクトデータ集2012年版を公表 | カレントアウェアネス・ポータル
*17:E1371 - “図書館で電子書籍を借りる人はよく買う人でもある” | カレントアウェアネス・ポータル
*18:E1252 - マンガ『夜明けの図書館』の作者・埜納タオさんインタビュー | カレントアウェアネス・ポータル
*19:
*20:
*21:最新はこちら:カレントアウェアネス-E No.240感想 - ささくれ
2016年、京都から知的生産インフラの世界を変えていく!(総合資料館会館開館50周年記念トークセッション「新資料館に期待する」参加記録)
就職して以来、すっかりイベント記録のアップが遅くなった当サイトですが。
7/14(日)は京都府総合資料館で開催されたイベント、総合資料館会館開館50周年記念トークセッション「新資料館に期待する」に行って来ました!
50周年ロゴ京都府立総合資料館は、昭和38(1963)年11月15日に北山の現在地に開館して以来、今年で開館50周年を迎えました。
本年度は開館50周年記念事業としてさまざまなイベントを計画しています。
その第1弾として、7月14日(日曜日)にトークセッション「新資料館に期待する」を開催します。
このトークセッションでは、新資料館について、関西で活躍する若手の博物館員、図書館員、文書館員の方に、期待する機能や役割について自由に話し合ってもらいます。
みなさまふるってご参加下さい。
自分は今回のトークセッションがあるまで総合資料館には行ったことがなく、そもそも「総合資料館ってなんなの? 公文書館?」って思ってたような輩なのですが。
イベントに参加したことでどうもそうとう面白そうな施設が昔からあり、それがさらに府立大学と合築されることでさらに面白いことになりそうであるという事実を知った次第。
先日来の暑さといい突然の土砂降りといいそしてこの総合資料館といい、いやはや、えらいところにやってきたものだと。さすが都。
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモであり、特に今回は自分の普段の専門と馴染みのない単語も多かったり、トークセッションという性格上、人の名前の記録が難しかったり刷るする*1部分もあります。
ご利用の際はその旨、ご理解の上、お気づきの点などあればご指摘いただければ幸いですー。
では、最初は我らが「偉大なるアーキビスト」こと、福島さんによる趣旨説明から!
趣旨説明(福島幸宏さん、京都府立総合資料館)
- 本日の構成:
- まず江上さん、兼清さん、松岡さんの順番で発話をいただく。皆さんにネタを振りまく
- その後、いったんアイスブレーク
- セッション1:関西のMLA機関・文化資源の状況
- セッション2:総合資料館に望むこと
- まず江上さん、兼清さん、松岡さんの順番で発話をいただく。皆さんにネタを振りまく
- 本日のねらい:
- 新館についてのいろいろな要望を聞きたい
- いろんなバックボーンを持った方々が集結
- 主には関西のMLA勤務者
- 思った以上に関東からも! 全国の動向も踏まえて
- 今の段階でいうのはただ! どんどん発言を!
- せっかくの機会。アイスブレーク等を使って交流の場にしていただきたい
- まだあと数回、イベントはあります
- 9/29 地域史シンポジウム
- 10/14 東寺百合文書シンポジウム
- 11/16 開館50周年記念シンポジウム
- 1/11 国際京都学シンポジウム
- ほかに10月半ばから展示もいろいろ
- 10月:東寺百合文書関連
- 11月:50周年記念展示
- 本日はまずはアットホームな場で、膝と膝を付きあわせて、当館への質問をいただきたい
- ぜひ本日をきっかけに50周年、新施設にご意見をいただきたい
「新資料館に期待する:"図書館"の立場から・発話」(江上敏哲さん、国際日本文化研究センター司書)
- 今日は図書館の立場から一言
- まず国際日本文化研究センター:日文研から
- 世界(海外)の日本研究をサポートする
- 海外で日本を研究する人たちに日本の資料・日本関係資料を提供する立場
- 最近は『本棚の中のニッポン』という本も書いたり
- そういう立場で・・・「図書館の現状と課題」を考えてみると?
- それらのトレンドをミックスすると・・・
- エンターテイメント・アミューズメント/公共性・文教施設
- 後者がファストフード的・エンターテイメント的な場所で何が悪いのか??
- 1.消費への偏重?
- 文化消費が悪いとはもちろん言わないが、消費だけを提供する場では良くない。次の知の揺籃・人間・社会の成長につながらないと良くないのでは?
- 2.地域性・多様性の軽視
- それらが欠けているところに成熟した文化・学術は生まれないのではないか?
- 1.消費への偏重?
- しかしそれ(消費偏重/地域性・多様性軽視)は・・・従来の図書館だって全うできていない問題ではないか?
- 従来の図書館が全うしていないもう一つのこと・・・ユーザ像を限っていたのではないか?
- そこで・・・公共性を持つ文教機関が文化資源・学術資源をもって"支援"するにあたり、ユーザ像を限定すべきか?
- 以上を踏まえて新資料館に期待すること:
- 公共と大学・研究とをつなぎ、越境する存在であって欲しい
- 公共と大学をつなぐ=府民・市民と専門知とをつなぐ知的生産インフラとして機能して欲しい
- なんでそんなに知的生産インフラを強く推す?
- 人類が今後、何かしらの社会・未来を築く上で、直感・盲信ではなく文化資源・学術資源に基づき理性的・科学的に思考・判断する上で必要と思うから
- そういうものに新資料館にはなっていただきたい
江上さんのお話については本人のブログも参照!
「多様な資料の公開と博物館をめぐる関係」(兼清順子さん、立命館大学国際平和ミュージアム学芸員)
- なぜそのような公共性を持っているか?
- 近現代史資料について:
- 1. 数が多く種類も多いのが特徴。集める側にもとにかくたくさんのものがくる
- 2. まつわる情報も重要なものに。個人の体験と深く関わった資料も多いので、1930年代の衣服、というだけではなく、どのような人が着てどんな体験と結びつくかも重要
- これは歴史学等でも注目が高まっている
- それらの資料を受け入れたときに、新資料館はどう対応していくのか、期待したい
- 実際の現場では・・・受け入れた資料はまず整理する必要がある
- 立命館大学国際平和ミュージアムの場合、大学は大きいが館の規模は小さい。資料の整理は学部学生のアルバイトのレベルでやっている
- 日本史専攻ではない、どころか受験でも日本史を取っていない学生でも受け入れて、学びの機会と捉えてやっている
- 大学の側の学生への教育提供の文脈では意義がある。そのおかげで学生に整理をしてもらえるというところも
- 近現代のもの・・・一つの分類だけではなくさまざまな文脈が重要。どこまでつなげる?
- 例えば戦時中の資料なら・・・植民地から銃後の家族に送られたものは、文面には植民地の状況が反映され、持っていた人の体験としては銃後の人々の生活の資料でもある。それをどう関連付けていくか?
- 展示・普及時・・・保存とのジレンマ
- 図書館でも貴重書はそうだろうが、立体資料はよりジレンマ
- パッケージ化の要望・・・「全部見せられてもわからない」
- 公立市役所からものを貸す際に「選んで」と言われたり、教材利用時のパッケージ化要望など
- どれだけのものを公開するか/データベース上にのせるか/つなげるかが今のMLAでポイントだろうが、逆にあまりにたくさんあるとどうしたらいいかわからないので、パッケージ化したほうがかえって活用はされるという話もある
- とにかく網羅するという考え方は専門家・研究者には有効でも、実際に専門知のない人の活用の場面ではパッケージ化がいるのでは?
- 立命館大学国際平和ミュージアムの場合、大学は大きいが館の規模は小さい。資料の整理は学部学生のアルバイトのレベルでやっている
- しかしそうすると・・・資料収集/パッケージ化時に、誰の記憶を伝えるのかというところに戻ってくる
- 近現代史資料の活用の上では大きな課題
「新資料館に期待する:アーカイブズの立場から」(松岡弘之さん、大阪市史料調査会)
- アーキビスト=つなぐ仕事
- ただし兼清さんのような3Dの史料に比べるとじわじわっとくるもの
- 自己紹介([twitter:@hiroyuki_1412]):
- 大阪市の状況:
- 市史はあくまで上澄み・・・
- 地域に入っていって、「おじいちゃんがなんかやっとったらしいわ」みたいなものを、地域のかけがえのない記録として、歴史研究・地域研究の宝の山に変える仕事をしていると思う
- 一方で大阪市は・・・
- 都市間競争/上海や東京に勝つには?
- 昼間人口と夜間人口の差が全国有数に激しい・・・都市内部でも競争が激化
- グランフロントで北区に人口が移ったり、それで人口が取られたところも色々仕掛けたり
- それによって地域内でも、新しい地域住民のつながり方が模索されている
- 例えば北区長:個性的なまちづくりをぶち上げる一方、地域のまちづくり協議会のようなものは北区では他の区にはるかに遅れたり
- 地域資料を支える余力は減衰している・・・もうすでに資料がなくなりつつある
- その中で紙⇒デジタルへ
- 市民の中にも古文書の読める人はすごいいる。その力を取り込みながらやっていきたいというのも今の課題
- 新資料館への期待:
福島さんからまとめ(?)
- 江上さんからは知的インフラ
- 兼清さんからは多様膨大な近現代資料にどう立ち向かうか
- 松岡さんからは変化する地域にどう対応するかという課題が出された
- このあとはしばしアイスブレークとしたい
アイスブレーク
セッション1:関西のMLA機関・文化資源の状況
- 福島さん:
これからトークセッションの1としてお話していきたい。
そんなにがっつり準備してきたわけではないので、発話代わりに3分だけ簡単なお話をして、それをネタ元に先を進めたい。
関西の一つの特徴は、どこもそうだと言われるかも知れないが、資料の大きさや歴史の長さに比べて行政セクターの比重が大きくないこと。
大阪には府単位の歴史博物館はない。
京都府も国立の博物館はたくさんあるが、府や市の単位の博物館はない。行政セクターではないところが担ってきた。
現状では施設の維持が課題になることは実感されていると思う。行動成長期・バブル期に拡大したMLA機関をどう整理するか、という状況になっている。
例えば民間資本の余剰を文化的なことに使うとか、個々人の資産によって支えられてきたところが関西にはあるが、それがかなり厳しい状況の中で変化してきた。個人レベルでも団体レベルでも内部留保をどう使うかが変わってきた。
もう一つは、僕達が学生の時に比べて、大学のプレゼンスがここ20年で積極的になった。
図書館を外の人が使えるというのが土台、新しい状況だし、大学の博物館も整備され、公開講座も広がってきた。
一方、関西の文化資源の状況は、古代から現代まで圧倒的な量がある。人口比に比べても多い。
ただ、多くの場合の関心は中世、江戸時代の段階で終わる。
近代史の本の売れ方は考古学とは桁が2つ違ってしまっている。一般的な関心がない。
最近はそうではありながらも、新たな価値を発見することが・・・きっちりお仕事をされて、文化庁のお仕事を見ていただいても、残すべき価値や文化的景観、街並みに手を付けられている。
指定文化財についても映画フィルムや写真、京都府行政文書のような公文書を指定文化財にすることをしている。
今までは残ってきたものを中心に語ってきたが、これからはどう残すか。
「残」から「遺」へ。意図的に残す段階にしていくべきでは。
発話者からもそれ以外の方からも、自発的にもこっちから降ったりもしつつ、トークセッションして行きたい。
では・・・江上さんあたりに、文化資源やMLAの話を。
- 江上さん:
そうなんです、今、福島さんからお話あった中で気になるのは・・・中世までが人気、という話があったが、「歴史資料=文化資源」という考えがある。
図書館の人間、歴史屋ではない人間の目では、歴史資料は文化資源のごく一部と思う。
文化資源・学術資源という言葉も使ったが、何かしらのものに基づいて科学的・客観的な判断をするならば、「文化」よりも「学術」という言葉を使いたい。
そこから考える。図書館なら図書館が持つべき、博物館が持つべき、文書館が持つべきものを住み分けしながら遺していくのではないか。
もう一つは、遺していくだけではなくて、勘弁であるけれどもオープンな目録を松岡さんが公開されているように、遺したければ目録をとるべき。
メタデータのないものは遺らない事が多い。
それを目に見えるところに置く、可視化することが大事と思う。
- 福島さん:
たぶん、松岡さんのお話にもあったが、メタデータを勘弁でもいいからとって、というのは兼清さんのお話とどまんなかと思う。
- 兼清さん:
私どもは歴史系施設なので、持っているものは歴史資料という認識。文化資源というよりは。
ただ、実際にはそのへんの、近現代史になるとまだ枠を設定する必要がないのかも、というのも日々、意識している。
歴史になってから、判断は歴史が下す、みたいな言い方もあるが、今はまだ現在進行形。
私どもは1931〜の出来事を中心に扱っているが、当時の記録で最近出版されたものも入ってくる。
特定の大学の、特定のミッションを持った館なので、そこから見て大事なら入れていく、という考え方。
- 福島さん:
他にもやっている博物館もあるだろうが、業界的にはかなりユニークなことなので、そこが平和ミュージアムさんで大事なところと思う。
ものを遺していくならばメタデータを作って公開せよ、というメッセージ。
松岡さんのところでやられていることもそう。
情報を内部化せず公開していくことで遺す。
このあたり、フロアからご意見お持ちの方は。
古賀さんとか?
- 天理大学・古賀先生:
文化資源という話だが・・・どちらかと言えば歴史資料は遺っているものを考えることになるが、今あるものをどう遺すか、少し前。バブル前後をどう対処し、それで正負双方の遺産をどうするか、遺していくのかは考えておくべき。
特に近畿地区には国立国会図書館関西館があるメリットは大きい。電子的な情報について、関西でこういうことをやっているとか、webサイトには「関西でしらべる」というコーナーまで設けている。
現在進行形で、あるいは少し時代を下ったところをどう遺していくかを考える必要がある。
- 福島さん:
関西館にキラーパスが飛んでいるw
この話は電子情報も含めての話と思う。歴史資料だけではないはずで・・・ただちょっと言い訳をすると、一般の方の関心はそこになる。
ただ別の文脈で、電子情報も含めて遺すべきものをどうするか。
これは関西館の関係者で誰にふるのか? ふってもいい?
- 国立国会図書館関西館・電子図書館課・渡辺さん:
振られたので逆に京都府に振りかえしたいが。
ちょっと話の流れと違うことを考えていたのでそっちに流れて申し訳ないが。
総合資料館さんは京都府の施設なので府の課題にどうサポートしていくかが重要と思う。
総合資料館は京都府の課題にどうリソースを使っていくのか。
総合資料館目線でいろいろやっているのはわかるが、府民として、京都府全体にどう活用していくのかが見えない。
どのようなレベルでどのような議論がなされている?
おそらく今、古賀先生が言われた「関西」という視点もそれとセットになるべき。
府全域での施策にどう総合資料館を位置づけていくのか?
- 福島さん:
ちょっと正面からお答えせずに・・・それはセッション2のネタと思うので。
そこの最初でお話することと思う。府全体の中で新館をどう位置づけるかはセッション2に持ち越したい。
もう一人、では若い人へ。考えているはずのw
- 国立国会図書館関西館・電子図書館課・水野さん:
完全に油断していたのだが・・・どういうことをお答えしたらいい? (福島さん:学術資源の保存と流通について、古典的な文化資源からどうはみ出すか)
授業中にあてられた生徒みたいで恐縮だが・・・電子情報にからめて?
文脈あっているかはわからないが、インターネット情報で出回っているものをリアルタイムでためることはしているし・・・
- 福島さん:
もう1回、振り直すと。
ちょっとずつしゃべっているので自分のことと気付いてほしいが。
大規模館でないとできない話に振り替えそうになったが、おいでいただいている方の中には、本当に地域に入り込んで、文化資源をどう遺すかという課題に取り組んでいる方もいる。
京丹後市の小山さんい。
文化資源と歴史資料、=に「?」がついているが、ニアイコールくらいで今は考えている。
教育委員会部局にいるのでふだんは文化財に関連して仕事をしている。
「文化資源」ということであれば、今後の文化の向上に資する燃料のようなものということか。
ふだん、仕事をする中では私の浅はかな判断で意義付けせず、とにかく引っ張りこんで、専門の先生に上手くマッチングすることを考えている。
私はあくまでどこまでも地域の専門家。京丹後の専門家。
それぞれの専門家とのマッチングをするのが私の役割で、そこさえ間違わなければ資源をどんどん取り込んでいくことが仕事と思う。
- 福島さん:
資料の意義付けを考えずに、それぞれの専門の人にマッチングさせる。
そのあたり、松岡さんは近いところと思うが、どうお考え?
- 松岡さん:
大阪市の場合も、歴史博物館に学芸員もいるし、編纂部局にも人はいる。
一方で、司令塔をどう作るかというところにスケールメリットがいきていない。
文化財保護課は発掘業務の処理に手をとられていて、なかなか・・・市内の真宗寺院の未指定文化財などを少しずつ進められているところ。
発掘調査の専門家はどの自治体にもいるし、ネットワークは形成されている。
そういう方、例えば発掘系の方にまず出てきたところで、考古学をやられている方にどうアプローチしネットワークするかは・・・もうちょっとうまいやりかたががないかは日々考えている。
- 福島さん:
出てくる課題はどこでの組み合わせでも似たような話になってくる。
そうは言っても3人の話者、この場の皆さんなりの角度でお話はあると思うのだが、もう少しだけ、現状やお気づきのところについて、関西のMLAや文化資源について、会場の方からお話があれば。
もう少し事例が欲しい。
田中さんあたりは?
- 立命館大学・田中先生:
京都学専攻の教員。
この流れで何を? 事例?
例えば小山さんみたいな方にお世話になっているのは、京都府の北部の教職員組合の資料を発見したときに、どうしたらいいかということで、地元で何とか保存したいと考えたが、京都府は教育行政と組合の関係がよくなかったせいで、資料はほとんど関係者の方しか興味を持たないようなものだった。
でもその資料はもっと色々な方に興味を持ってもらえそうなもので、なんとか地域に置きたいというときに、京丹後市史の編纂室で受け入れてもらって、今は目録を作る仕事をしている。
個人研究費を使うながら目録を作ってデータをのせて広く知ってもらおうとしている。
京都府は目に見えない形で放置されている資料が多く、それについて語れる方の年齢層も上がっていて聞き取りが必要なんだけど、若い研究者も含めて余力がなくてできない。
それに気づいた人がどこにつなげればいいかが見えにくい。
こういった場で話すことで、ネットワークをつなぐ価値があるのではないかと思う。
- 福島さん:
出てくる課題を、どこへつないだらいいかは、何十年単位でずっと出ている話。
だいたいの認識としては、30分の短い時間でも、現状を共有しつつあると思う。
そのつながり、あるいはMLAの連携、あるいは情報のネットワーク化を阻害している要因があるとすれば、なんでしょう?
- 江上さん:
MLAが連携をしないと文化資源が救えないんだったら何が連携を阻害しているか、と。
私は福島さん個人に会うまではアーキビストにお会いしたことがなかった。
というより、正直、府立総合資料館がなにをしているかも知らなかった。
今は問題まで考えることができるようになったわけで、互いにもっと知りあって、小さいノウハウでいいから共有するのがいいんじゃないか。
どうもMLA連携の話をこういう場ですると話が大きくなりがち。
日頃の事務レベルでお互いのノウハウを共有しないと、日々の業務の片手間でいいのでノウハウが共有できるネットワークがあればいいんじゃないか。
相手の領域をちょっと教えてもらうだけでもぐっと良くなる。
そういうことからやったらいいのでは。
- 兼清さん:
大学博物館で働いていると、大学のどの研究機関とも連動していないので、学内でどんな研究があってどんな研究者がいるかもわからない。
シラバスを見てアプローチしている段階。
試行錯誤の中でやっているが、連携がうまくいかない理由としては顔が見えないことが大きい。
ノウハウを共有するためにはどこでどんな人が働いているかを知ること、とにかく目録化がいるというのと同じように、いる人間と資料の顔が見えるといい。
それができていない中で、博物館は残念ながら、倉庫・納屋・ゴミ捨て場のようなところと見られている。
「研究が終わったから置いておいて」と言われてしまって、成果と資料が有機的に連動しない。
それをどう乗り越えるかというと、一緒に働く、協働することが重要。
連携のためのプロジェクトでも、一緒に働くということがひとつの、と思う。
- 松岡さん:
小さいノウハウの積み重ねも、顔の見える関係もそのとおりだが。
例えば僕達、図書館の中で仕事をしているが、関係者とは月一でごくごく簡単な情報共有をしている。
そういうことから始めるとか、お手元のケータイに相手の連絡先が入っているかということと思う。
あるいは、市史は大阪市の公文書館といい関係を築けているが、担当者の雑談レベルでもいろいろやったり・・・
面白話からはじめればいい。つかまえて「どうなんすか?」というようなことをちょっとずつやっている。
- 福島さん:
小さいノウハウの共有/人、資料の顔が見えることと協働/面白い話から協働へつなげる。
発話者3人からお話がありましたが、この話はだんだん振りにくくなっていきますが・・・実際にこういうのできてるよ、という話でも、こんなところで苦労しているよ、という話でも。
会場においでの方で、「ぜひこういう話しておきたい」という方があれば。
- 東京工業大学博物館・阿児さん:
顔が見えないというのは大きなところ。
見えるように無理くりしたのは、職員として非常勤の方が多いのだが、図書館の人を「博物館で働いて、図書館のノウハウを教えて」というようなことをやっている。
図書館の資料部門のトップまでいった人を再雇用して、資料の山を見ていただいている。
各事務局の方から、「前の課長のこの法人文書を・・・」とか、「先生から預かったノートどうしよう・・・」とかいうところを、顔が見えるということで、どうにかしようとしている。
大学でポイントになるのは卒業生というすごく大きなネットワーク。
資料にあたりたくてもあたれないときに、人としてではなくネットワークを頼るときに手がかりをどう持っているのか。
地域とも職場とも違う人のつながりは、つながりをどう把握するのかが最初は難しかった。
それが見えてくれば人とモノはどんどん見えてくる。
- 福島さん:
「いっそ雇用してしまえ、どうせなら一緒に働こう」という話かと思う。
今のは大学というのを中心としての人のつなぎ方のアイディアと思う。
ちょっとだけ今の話を聞いて振りたい方がいて・・・資料を収集するという意味ではなく、情報を収集して政策に役立てていくお仕事をされている方がいる。
まちづくりセンターの・・・
- 京都市景観・まちづくりセンター・杉崎さん
わたしたちの大きな仕事は地域のまちづくりの支援。
そうすると、手がかりとしてまちの歴史から入るのが常道。
まちを歩いたり歴史的なものにふれたりをよくする。
そうすると、今はけっこうヤバイな、という議論がある。
語れる人がだいぶいなくなっている。今までは存命の、「この人に聞けばわかる」という人がいたのだが、昭和〜戦後を語れる人はいなくなってきている。
うちは資料を集める組織ではないが、ここは積極的にアプローチしていかないといけない、という話になっている。
明治くらいまでの・・・天皇が東京に行ってしまってからはかなり取り上げられているが、その後、戦後ちょっとまでは資料もない。
それで語れる人もいなくなると・・・という状態。歴史を遺すというだけではなく、現場ではまちづくりをどうするかというところでも出てきている。
門外漢としての話題提供。
- 福島さん:
どこの時期を考えるかは、京都市の特殊事情ではなく、どこでも重要。
今も生きている方がいる戦後の時代も、遺す必要がある。
国会図書館にふったのもそこらへんの話につながる。時間軸をちょっとだけ過去にふったところ、本当に大事なのはそこ。
資料はあるが可視化・共有されていない。公文書含めてそうだろうと思う。
次のセッションでは新資料館への集中砲火を、と思うが、もう1人、2人くらう振ってから・・・松岡さん、少し。文化資源の話も。
- 日本経済新聞・松岡さん
アーカイブズの取材をずっとやっている。
危ないな、と思うのは、現在の記録が残っていないということ。
電子化で量は増えているのになにを遺すかも見えていないのは、やばい。今現在が一番やばいのではないか。
もう一つは、一般の理解はほとんどないと思ったらいい。
一歩、外に出れば誰も理解していない。担当デスクはわかっても、部長はすぐ「なんでこんなもの遺すんや」となる。
それが世間の常識。なんでもいいから目に見える成果をのこしていかないと、一般の理解は得られない。
ちょっとでもいい、なんでもいいから成果を遺す必要が絶対的にある。
- 福島さん:
今のお話、さすが記者さん、と思うが、「現在が一番やばい」というのは本当にそうと思う。
「意図的に遺す」事が大事、といったのはそのあたり。
もう一つ、誰も理解していない。そこを打破するための目に見える成果、ということ。
今までのMLA連携や文化資源を遺す行為で取り残されていたのは、目に見える成果。
「遺す」ことの分担に話が集中していて、どう利用していくのか。
松岡さんは「相手が何を体現するか」と言っていたが、そこらへんのキーワードにつながってくる。
少しまとめになりつつあるが・・・発話者、行けます?
- 松岡さん(大阪市):
いろんな事例を伺いながら勉強させていただいたというか。
図書館の方は司書さんが多いので、その中の雇用も問題も大変なんだろうと思いますが、顔付きあわせてこういう場を作るハブをやっていただいている。
僕もどうしても大阪の目先の書類ばかりやっているところがあるので、こういう場をいただいたのは嬉しかった。
最後に申し上げたいのは、何を出すか、どう体験するかというのは、精神医療の本の中で印象的だった言葉でもある。
「Mならこれを、Lならこれを、Aならこれを」という議論はあるが、それがそれぞれにどう受け止められているのか。
案件分析という単純な話ではなく、受け手側の生活体験・生活世界にMLAの体験をどう入れていくのか。
相互関係がすごく必要になっていると思う。
そのことを言いそびれていたので・・・どうしても、MLA連携というと連携しなければいけないことが前提のようにあるが、それぞれに文脈も強みも弱点もあると思う。
自分の仕事を振り返り、直すところを直しいいところを伸ばす、その中でこういう皆さんとのお付き合いをしていくことが必要なのでは。
- 兼清さん:
京都大学ミュージアム連携、というのがある。
京都工芸繊維大学を中心とする、京都の大学博物館の連携事業。
2011年に最初にシンポジウムをやったあと、2012年は京都大学の総合博物館で合同展覧会をやった。
参加博物館は京都市内の国公私立の博物館で、仏教系の大学が多いので、そのお宝や芸術系の大学の美術品、京大・同志社大の資料も大事で・・・正直、私どもが一番地味だった。
古いもの・美術品・文書を組み合わせるとなると、それまで顔を合わせることもなかった関係者同士がはじめてお互いなにをやっているかわかるようになった。
それから、これは助成プロジェクトでもあるので、いかに大学の文化資源を京都のまちの活性化に役立てていくかが大きな事業。
大学博物館としてはそれを学生の学びの場としてどう役立てていくかということも。
今年も事業は続いていて、九州産業大の美術館に巡回展も行く。それから大学博物館のスタンプラリーもしている。
あと一言。
新しい体験として、MLA連携をおこなった際に新しい体験としてどう提示できるかがいまうまくいかないのを乗り越えるための課題ではないか。
学際的な取り組みが各分野では盛んになっている。枠組みを越えた専攻は大学の中でたくさんできているわけで、知的体系自体が変わる時代。
そこで遺そうとしている資料への向き合い方も、連携することで新しい向き合い方が見えてくるのではないか。
そこから新しい体験の提示が見えてくるのではないかと・・・具体的な答えは長い時間をかけて探して行きたい。
- 江上さん:
日経新聞の松岡さんのいうとおり、世間の人に認知されていない、成果をアウトプットしないと、というのはそのとおりと思う。
われわれが・・・私は元は京都大学の図書館に勤めていて、自己紹介は簡単だった。
それが日文研に行ってから、なにをやっているか一生懸命、説明しないといけなくなった。
それくらい、何をやっているかは伝えづらい。
どういう風にしてアウトプットしたら皆さんに知ってもらえるかを考えるためには、我々がまずユーザのことをじっくり向き合って知るべきと思う。
目の前のユーザということではなく、社会一般にどれだけ真摯に向き合っていけるか。
例えば『本棚の中のニッポン』の中では、海外で日本研究をしているユーザがいて、知らないとサポートできない、ということを書いている。
自分たちのユーザが何を思っていて何を求めているのか、こっちから出向いて行って、どこに自分たちの情報を投げるのが効果的なのかを考えてピンポイントに投げることが必要なんだと思う。
- 福島さん:
要するに、松岡さんは受け手との相互関係、という点。
兼清さんも新しい体験の提示の話と思う。
江上さんのお話は、我々が社会に向き合うことを具体的にどう作っていくかと思う。
たぶん、このお話は先程の積み残しのお話と一緒で、第2部、新資料館への期待にダイレクトにつながっていく。
2部は発話者のお三人+フロアの方からも資料館へのご注文を出していただきたい。
アイスブレークその2
セッション2:総合資料館に望むこと
- 福島さん:
京都府立総合資料館の説明から。
1963年、最初からMLA複合館として建てられた。
もともと、British Museumをイメージしていて、現物資料の展示や古書資料の公開をやっていて、開館10年後から行政文書の整理・収集・公開もしだしている。
1988年に博物資料の公開を京都文化博物館に譲っているが、収蔵はいまもうちで、収蔵スペースのかなりの部分は博物。
統計データは省略
特徴・・・資料の貸出はやっていない。来て、調査研究していただく場所。
ただ、独特の作り方をしたので、組織的には各ネットワークにがっつり噛めているわけではない。
また、データベース化は遅れている。
ただ、京都の記憶を体系的に読み解ける研究拠点はここと思う。
各都道府県の郷土資料室の超巨大版、といったイメージ。
2016年には新施設へ移る予定。
平成20年に基本構想を策定していて、4つのポイントを立てている。
-
- 京都に関する資料の収集・保存と積極的活用
- 公文書館機能の充実
- 研究・学習・教育支援とネットワーク機能の強化
- 北山地域のなかの総合資料館
特徴的なのは、府立大学との関係を他の施設に比べて強化していること。
新館では府立大学附属図書館と、府立大学文学部研究棟と合築することがすでに決まっている。
また、国際京都学センターの設置も決定している。
京都学の構築・研究のコーディネーター、京都研究の啓発・普及・支援活動の拠点。
府立総合資料館への要望
- 兼清さん:
博物館としてはまず、資料を貸してください(笑)
それから、博物館同士、博物館と文書館の連携のハードルを下げるときにどうするかというのは、博物館ではモノの貸し借りでどうしてもハードルがあって、力のある館じゃないと展示ができない。
それほどでもないような館も含めて、色々な館の持っている資料を、府立の資料をどんな形で外に出せるかというのを検討していただけると大変嬉しい。
あとは、関連する所であれば、誰の記憶を遺すのか。
これは私達全員が考えるべきことかも知れませんが、棲み分けについて、具体的に出していただけると、それぞれがどうするか、見えやすくて連携もしやすくなると思う。
具体的な出し方を期待している。
- 江上さん:
期待としては、スライドにも書きましたが、一般の市民・府民にオープンになりきれない大学等の研究書・図書館との橋渡し役。
府立大学の図書館と合築するというのはいい利点。日本ではなかなかない。ヨーロッパではよくあるが。
ぜひ、一般の市民が大学・研究所の専門知・専門資料に触れられる、越境するものとしてがんばっていただきたい。
もう一つは、海外から、京都に興味のある/学びたい利用者が、商売敵になるかもしれないが、一番に思い出す施設になってほしい。
京都の学の拠点になってほしい。
- 福島さん:
え、日文研さんのしごととっちゃっていいの?
- 江上さん:
かまわへんw
- 松岡さん:
基礎自治体さんのサポートをして欲しい。
アーカイブズとして凄いのはわかるが、その上で、基礎自治体の、公文書館機能自体整備が立ち遅れているところを、広域行政としてサポートして欲しい。
また、関西広域連合のようなところでもきちんとした発信をしてほしい。
そのための人の手当、スタッフさんにどういうプロフェッションが必要かはこれから議論になるでしょうが、利用者のレファレンスにさらされ磨かれながらスキルを磨くには現場経験もいるし、そういうスタッフを育てるにな何年かかかる。
大学との関係もあるでしょうが、スタッフさんの充実もぜひ期待したい。
- 福島さん:
かなりいろんな課題を最初からばしばしと。
うちの持っている資料はまだ伝わりきっていないと思うので、それをきっちり伝えてどう借りていただくかが問題になるし、アドバンテージを使って、専門知と一般、海外との窓口というのも。
それから松岡さんからは基礎自治体のサポートを、という話も、レファレンサーとしての強み、みたいな話も出た。
最初から色々言っていただいたので、みなさんのハードル下がったと思う。
色々ご注文をいただきたい。
昨年10月にできた組織で、ほぼ10年がかりのしごとでできあがった。
一般市民の理解がないのと同じように、学内でもこういう組織を作ろうとしてもなかなか理解は得られない。
新資料館は府立大学との合築とのことだが、府立大学にはLはあってもAとMはないと思う。
そこを府立大がメインになるのか資料館がメインになるかはわからないが、ケアして欲しい。
- 福島さん:ありがとうございます。
- ?・キタウラさん:
菅さんのお話とも関連して。アーカイブズに勤めた経験から、親機関の理解はアーカイブズの成否に関係する。
今回のイベント、「総合資料館に期待する」の主語はなんなのか。
親機関として、利用者としての京都府がおそらくあると思うが、そのへんはどう考えられているのか? これはどこの機関でも悩ましいところだと思うが。
- 福島さん:
答えていいのかわかりませんが・・・答えられる範囲で。
府立大資料の話とも関連するが、いま、利用していただく方のかなりの割合は、府庁関係者。
全体の数で言えばもっと増やしたい。古い資料を、土木部門を中心に使っていただいているが、それをもっと近いところに・・・なかなかできていなくて、意識的にやらないといけないが、「知的生産インフラ」の一貫になるという議論はあって。
複合館であるうちはそれを図書資料と一緒にできるのが強み。もっとやらないと。
- 天理大学・古賀先生:
ひとつひっかかるのは京都学。どの範囲まで広げるのか?
かつての首都としての京都? 京都府?
主題は? 文化としての京都? 産業? どの程度、「学」というところで捉えているのか?
- 京都府立総合資料館・井口さん:
京都学を作れと責め立てられて8年。
もちろん、京都市内、旧平安京の範囲に絞る気はまったくない。府立なんだから府内はもちろん、関連地域全部視野の中には入れるべきと思う。
時代も現在までと考えている。
そんな学はあるのかと言われれば、定義はできていないし、定義を論争しても生産的にならないと思う。
一番大事なのは、現代の京都をどういう風に遺すか、記録していくか。
それを課題にしていきたいが、日経のマツオカさんのいうとおり、ここの皆さんはわかってくれても外では誰もわかってくれない。
それが切実に困っているところ、言葉の足りなさもあるだろうが、説明が下手くそで、上の方の理解はなかなか無いのが現状、
寺院資料のアーカイブと寺史の編纂という専門職をやっている。
ただそれとは関係ない話。
以前は農村資料をやっていて、総合資料館を使っていた。
ただ、非常に利用がしにくい。辛辣に言ってとの話にいうが、利用料が高すぎる。
利用したいと思うと、マイクロがないので複写しようとすると、複写料金の高い業者さんに、出張料金を払って・・・と、1コマ百何十円の価格。
そんなのは在野の研究者、科研費とかとれない人間には利用できない。
とても利用なんかできないし、本務もあるから通えないし、価格が利用を阻害している。
価格が行政の価格設定なので、調査によってコストが発生したからとかじゃなくて、開館当時のコストで決めた料金体制を今もやっているはずと思う。
それを今だったらデジカメで無料で撮影できるところ、撮影させてくれないところが利用を阻害していると思う。
MLA連携とか京都学の議論の前に、研究する側に利用しやすく資料を出して欲しい。
- 福島さん:
公文書はちょっと手続きとお金がいるが、撮影は自分でできるようにした。
ちょっとずつ広げていかないといけないと思うし、今のようなお話は当然、出てくると思う。
デジタル化を進めることが次は大事だろうし、作ったデータを使いやすく公開することも大事と思う。
今のお話はすごく大事で、うちに入ったために資料が利用しにくくなってはいけない。
- 京都女子大・桂先生:
新しい資料館のwebサイトはどうなるのか。
先々の話ではあるが、今回、インターネットで見て申し込みもしたが、現在の資料館のページは府のサイトの一部で、コンテンツが多く充実しているのに、見た目が・・・
府民の皆さんへのきっかけが持てない一つの理由はインターネットのサイトにあるんではないか。
県立図書館の郷土資料室の拡大版とおっしゃっていたが、それだけで終わってはいけない。
間口を広く、敷居を低くということでは、私達もそうですし、資料館のコンテンツを、自分たちの資料館なんだと、自覚を持って・・・仕掛けをどんどんしないといけない、その一つはwebであったりアーカイブであったりの関わり方があるんではないか。
北摂アーカイブのようなものがあれば楽しいし・・・。
<ごめんなさい、自分の調べ物のためにちょっと記録中断しています>
- 大阪自然史博物館・佐久間さん
理科系の自然史博物館として。
今日の総合資料館の議論、文系の議論が中心、というのを切実に思う。
文化財の議論はなかなか自然史資料に広がらない。化石や標本に広がらない。
そういった過去の自然環境を知る、現在の自然環境を遺すというのは凄い重要。
いわゆる理科系の分野は、今の文化庁行政からスポーンと抜ける。
その体に従ってはいけない。環境みたいなことを考えるんだったら、ウィングを広げてほしい。
博物館屋としていうと、よその博物館の資料は自分が扱うか、誰かが解題してくれないと、見えない。
それを読み解くためのものは分野外の人間には全然わからないし、それをゼロから探すのはそうとうきつい。
他分野の参入は共同研究の枠組みがないとなかなかはかれないし、それがあれば他分野やアマチュアの参入にもつながるのではないか。
もうひとつ。自然系の博物館は友の会が大きくて、市民参加が進んでいるが。
そういうことをやろうというんであれば、いわゆるプロフェッショナルの連携が主題だと思うが、教育普及セクションはどうやっていくのか。
それが研究に基づいて、研究分野の魅力をどう発信するのか。
本体業務の中でそれをどうやっていくのか。
webはその一つの変化球かも。
- 福島さん:
ダイレクトに自然史資料を持つことはないが、資料の情報レベルでは、よその情報を入れられるようにDBは作る。
あとは、うちの親の部は文化環境部だし、となりには植物園もある。
そのあたりがウィングの広げ方になるかな、と。
3点目は手段を考えようとしている所。
教育普及というところが・・・うちはセクションとして、あるいはそれを専門にする職員は持っていなかった。
新館機能の中で、第一セッションのときにも話になっていた、成果・・・魅力の発信に、つながっていくだろうと思う。
重い課題を2点、いただいたと思う。
このあと・・・min2-flyが京都でMLAつなぐハブになってや、と言いつつ関西館にも延焼を図る⇒みずりんさんができることはあると思うと回答⇒渡辺さんが連携すべきは地域全体であろうとセッション1の議論に戻す⇒福島さんから「最後の専門性は職員が常に地域に出ていることだと思う」とし、それが重要だろうとの回答+京都力の話
-
- min2-flyコメント:ねー、MLAとかUIとかでなく京都関係でかかわりうるものはなんでもここがハブになったら面白いよなあ的な。
まとめ
- 松岡さん:
市民参加について、教育普及セクションについて、市史部門にいて、どうやったらいいかはいつも考えている。
市民が思う資料と自分たちが考える資料のギャップを埋めるとか、被災資料の復旧とか、いろんな関わりがある。
資料の泥除け作業をしているうちに「なんて書いてあるんですかね?」と市民が興味を持つとか。
それは思わぬ形ではあるけれど、そういう意味では資料ネットのWSはどこでもお呼びいただければやりますので、
尼崎さんなんかはふすまの剥がし取りなんかもボランティアベースでやられていて。
資料との出会いをどうやるか、切り口は色々あると思う。
「これがあんなものとつながっている」というダイナミズムがまちづくりの中でも求められている。
そういう場になってもらいたい。
- 兼清さん:
最後の方で教育普及、市民参加の話が出てきたが、参加の先は参画になる。
色々なところで参画を名目に空間をなんとかしたり。
私どものところでは常設展の一部は市民団体が情報発信の場として使っていただいている。
ただ、そこで問題になるのは貸ホール化だったり、小さな当初に怯えること。
誰の声を反映していくのかが、市民との関係を踏まえた上での新しい資料館のあり方を考える上で。
どうバランスを作っていくのか。
逆に、ダイナミズムという言葉も出たが、有機的なものを見れば日本の中でも新しいモデルになると思う。
- 江上さん:
新資料館への期待というよりは、我々自身への期待・注文を述べたい。
第2部でのフロアの皆さんへの饒舌さは1部のあれが嘘のよう。
他者への注文はいいやすい、言葉も出やすいんだと思う。
今日、我々、新資料館に期待するといったことって、自身のできてなさの裏返しだろう。
他人に言いやすいなら、お互いに無責任でも言い合う場を作って言い合って、出たものを互いに持ち帰って自分のところの成長の糧にできたらいいんじゃないか。
とりあえず私はweb発信について、自分のあかんところを見直したい。
- 福島さん:
あとで館内で反省会をするw
ただ、第一部あってこそ、発話あってこその第二部のお話と思っている。
たぶん、うちが大事なのは、自覚しないといけないのは、小さい京都府ではあるが、日本のモデル、日本だけではないかもしれないが、複合、大学・公共、MLAとの複合だったり、2013年から議論していって2016年に建つ大きなモデルに、うちはならないといけないし、それを自覚しないといけない。
資料との出会いということもおっしゃっていただいたが、そういう場を、情報もそうだし、物理的にも、いろんなレベルで、資料や文化情報を・・・言葉の議論もあったが、そういうものといろんな出会いを作ることだと思う。
僕も個人レベルでやるときには思うことで、この場の方、中継を聞いた方、事後的に見た方にも、今日の投げかけは共有して行きたい。
今日、ここに来た方は応援団と思っているので、いろんな情報発信をしていくので、今日にまさるご注文をいただきたい。
その後は皆さん連れ立って情報交換会⇒さらに二次会、と夜は更けていき・・・。
図書館系とはまたぜんぜん違う方も多くいらっしゃるわけで、そうとう面白がった結果、よった勢いで大先生にえらい口をきいた記憶が・・・(大汗)
そ、それくらい(自分にしては珍しく)興奮する会だったということで、ひとつ。なんとか。
記事本文も大概な長さなので感想はそこそこに(苦笑)
今後もイベントは続きますし、なにより新総合資料館については今後も動きがあり続けるわけで、引き続き注目ですな!
情報交換会の場ではここから日本、いや世界を変えていくという話にまでなっていましたが、実際そうできるだろうしそうなるだろうってことで、注目とか言ってないで応援団に入っちゃった以上は参加していかないといけないですな。
*1:2013-07-17 メールでの指摘を受け修正
*2:
*3:
*4:CA1790 - 若手研究者問題と大学図書館界―問題提起のために― / 菊池信彦 | カレントアウェアネス・ポータル
*6:2013-07-17 メールでの指摘を受け修正
【再掲】第1回 SPARC Japan セミナー2013「SPARCとSPARC Japanのこれから」(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その3)
どうやら昨日書いたエントリが、1日にアップできる量を超えていたようで途中で切れてしまっていました(汗)
ご指摘くださった方、ありがとうございましたm(_ _)m
あらためて、6/7のSPARC Japanセミナー記録をアップしたいと思います。
(以下、途中までは前回エントリと全く同じ内容です)
前々エントリ*1、前エントリ*2に引き続き、OAサミット2013参加記録その3です。
2日目・午後の時間は第4期に入ったSPARC Japanセミナーですよ!
今回は第4期SPARC Japanの活動をスタートさせるにふさわしくSPARCのExecutive DirectorであるHeather Joseph氏をお招きし、米国におけるSPARCの活動状況についてお話をいただきます。また第4期のSPARC Japan活動方針をご説明させていただき、日本版SPARCの方向性について模索してみたいと思います。SPARC活動の拠点である米国での最新動向を担当者から直接伺える貴重な機会ですので、是非ご参加いただけますようお願いいたします。
SPARC Japanセミナーはこのブログコンテンツのいったい何割を収めているんだという、ほぼメインコンテンツですが(苦笑)
さすがに関西に就職してもうそう頻繁には行けないかなー、と思っていたところ、今回はOAサミットの一環として開催されたおかげで参加することができました!!
それも米国・本家SPARCのHeather Josephさんがいらしている回ということで、記録もいつも以上のボリュームになってしまったような・・・
以下、例によって当日の記録です。
例のごとくmin2-flyが聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモですので、ご利用の際はその点ご理解いただければ幸いです。誤字脱字・事実誤認等、お気づきの点があればコメント欄等でご指摘ください。
では、さっそく米SPARCのJosephさんのお話から!
「Open Access: Delivering on the Promise」(Heather Josephさん、Executive Director, SPARC)
- 通訳を通して話すのは久しぶりなのでなるべくゆっくり話すが、問題があったらうでを大きく回して欲しい
- そうしたらゆっくり話すようにする
はじめに:どのようなプレッシャーが学術情報流通にあって、そこからどんな新しいソリューションが求められるようになったか
- 学術情報流通システムには何が起こっているのか?
- 1. 新しい技術
- インターネット
- 学術成果を共有するためのさまざまな方法
- 2. デジタル情報の氾濫
- デジタル情報がいかに急速に増大しているか
- ヒトゲノムプロジェクトの場合・・・ 指数的なのびを見せる/これはどの学術領域でも起こる
- 情報がどんどん出てくるようになると、人や機械のネットワークを活用して理解できる形で情報を活用する必要がある
- 3. 研究論文へのアクセスに関する、図書館における財政負担
- 今のままのシステムで理にかなった方法で研究をするのは難しくなっている・・・それが意味することとは?
- あるトピックについて検索してみて、読みたい論文がならんだリストを得たとする
- 研究者はこれにどう対応する??
- 学術情報を共有するもっといい方法があると思う
- 立ち止まって、学術情報の共有の方法、最善の方法を考え、作りなおす必要がある
- そこで出てきたアイディアが・・・オープンアクセス
オープンアクセスとは、それを今までどう実現してきたか
- オープンアクセスとは? Budapest Open Access Initiative*3から・・・
- シンプル/パワフルなこの定義に基づいて色々活動してきた
- オープンアクセスの現状は?
- 1. オープンアクセス雑誌
- 9,000以上のOA雑誌が既に存在。いろいろな分野/世界中で存在
- OA雑誌に論文を載せる著者も増えている
- 当初はゆっくりだった伸びが、次第にハイペースになってきている
- 今後、OA雑誌掲載論文の数が、購読雑誌に掲載されるものを追い越すタイミングも予想されるように
- 遅くとも2021年にはそうなりそう/早ければ2017年にはそうなるとも言われている
-
- OA雑誌は当初、懐疑的な意見が多かった・・・持続可能なモデルなのか??
- しかし2013年までにOA雑誌は持続可能なばかりか、収益もあがるものと証明された
- 出版業界の中で現在もっともハイペースで成長しているのがOA雑誌。2011⇒2012の年間34%の成長率
- 金額はまだまだかもだが、これだけ成長がはやいことには注目しておかなければいけない
- OA雑誌は当初、懐疑的な意見が多かった・・・持続可能なモデルなのか??
- 2. オープンアクセスリポジトリ
- 3. アクセスインフラの充実
- アクセスそのもののインフラ+再利用のためのインフラ
-
- 再利用を促す上で重要なのが・・・オープンライセンスの利用
- その中でもOAにおいてもっとも重要でよく使われるのがCreative Commons
- CCBYは中でも最も使われている。デジタル情報を最初に作った人にクレジットしていれば、あとは何をしてもいい、というライセンス
- CCBYはOAにおけるgold standard。CCBYを使う著者の数も増えている。OA雑誌に投稿する著者の伸びと同じような傾向
- 再利用を促す上で重要なのが・・・オープンライセンスの利用
- 4. オープンアクセスポリシー
- オープンアクセスに関する重要な要素の最後はポリシー
- 2つの種類:大学のポリシーと国・助成団体のポリシー
- オープンアクセスに関する重要な要素の最後はポリシー
-
- 大学のポリシー
- 最も有名なのはハーバード大学のポリシー
- 大学のポリシー
- これらのことは研究者や学者にとってどんな意味を持つのか??
- メリットが目に見える形で見え始めた・・・自分の成果をより幅広く届け/より多くの読者に届けられる
- 研究成果へのアクセスが増えるのびならず、それを使って何かをすることも今までよりもできるように
オープンアクセスのコンセプトを実現するためのシステムの中にある課題と機会
- いろいろなことが実現したが、まだまだ課題はあるし、機会もある
- 再利用可能性について:
- その実現のために、SPARCはさまざまなコミュニティと協同している
- そのOAがどの程度、再利用可能としているかの枠組みを定めたり(HowOpenIsIt)
- 研究者・学術コミュニティの文化の変容を起こせるか:
- 「なぜ自分の研究成果をOAにする必要があるのか?」という質問を投げかける研究者に対してよりよい答えを提供する必要がある
- 最大の障害は研究者の不安感・恐れ。購読出版と同じようにOA雑誌にのっても見返りは得られるか
- それに応えるには今までと違う方法で出版活動の質を評価することが必要
-
- 従来の研究者にとっての指標・・・インパクトファクター(引用の数に基づく)
- しかし他にもいろいろな方法を使うことが、デジタルな環境ではできる。引用だけではなくても良いはず
- 従来の研究者にとっての指標・・・インパクトファクター(引用の数に基づく)
- Article Level MetricsやAltmetrics
- 何人が論文を読んでいるか/どこから引用したか
- 引用の数を見るだけではなく、誰がどこで引用しているかがわかる
- ソーシャルメディアからどんなことを呟いたり言及されているかを調べることも。Twitter、FacebookやConnotea、Mendeleyのような専門的なものも。廊下の立ち聞きを覗き見するように論文の評判をオンライン上で見られる
- Article Level MetricsはOA雑誌の世界で広く使われるように・・・これを見れば論文1本ずつの情報や数字的な/統計的な情報を簡単に得られる
- 例えば出たばかりの論文なら被引用数は少なくなるが、FacebookやMendeleyではどんなコメントがついているか、ディスカッションが行なわれているかを見たりできる
- 誰がどのように研究成果を使っているかが見られる、というのは単なる論文の引用数とは違う切り口で使われ方を見ることができるもの
- これを成功に導いていくには・・・Article Level Metricsがいろいろな雑誌で使われる必要がある
- 数カ月前にサンフランシスコで行なわれた会議に基づき「サンフランシスコ研究評価宣言」が出された*5
- 学術分野における雑誌出版関係者/研究者によるイニシアティブ
- 従来のようなインパクトファクターだけに頼るのではない、インパクトファクターを越えた新たなツールを使うような方法を探る
- Article Level Metricsには従来とは違うカルチャーへと変革していく刺激となる、大きなポテンシャルを持っている
まとめ
- これまでに指標・数字で見たように、過去10年のOAの取り組みが大きな進歩を遂げているのは明らか
- これから対策をとっていくべき課題も明らか
- SPARCではいつも最後はtodoリストを掲げて終わりにしている・・・今回はこんな感じ
質疑応答
- Q. NIIの技術者兼天文学者。研究者としてArticle Level Metricsは重要だと思う。研究者に広めていく必要があると思うがどうプロモートしていく?
- Q. 同僚にもすすめて行きたい。
- Q. Article Level Metricsは素晴らしいと思うが、研究活動の評価に反映されないと広がらないのではないか? アメリカでもどこでもいいが、研究機関や研究費の採択で、ALMsを考慮に入れているところはあるのか? あるいは検討している例はあるのか?
- A. 確かに普及のためには研究機関や助成団体でこういう手法が受け入れられる必要があると思う。実際、新しい手法としての検討がまさにはじめられた段階。研究助成団体等でそういう動きが始まっている段階。どの程度、関心が高まっているかというと、北米SPARCに昨年来た問い合わせのうちかなりの部分はALMs関係。OAに関する質問と同じくらいの数が来た。ALMsの活用の検討例の一つとして、研究評価手法として、Wellcome Trustでも検討が始まっていたり、さまざまなところで使われるようになってきている。ぜひ参照して欲しい。
- Q. SPARCの取り組みは非常に大事と思うが、OAの成功には研究者の意識が一番大事と思う。研究者はNature等の著名な雑誌に自分の論文が載ることに熱心だが、OA等の別のルートに論文が載ることへの意識の改革を実現するために図書館員は何ができる?
- A. 確かに研究者の意識改革は重要。それは図書館職員ができることの一つでもあると思う。OA雑誌の中にはScienceやNatureに匹敵するようなものがあることを知ってもらうことが必要。そこまで質の高いものは多くはないが増えてはいる、例えばeLifeとか。研究者に対してこういうOA雑誌もあること、そこで論文を発表することもできることを知ってもらうことが必要。インパクトファクターへの依存を進めるわけではないが、中にはインパクトファクターの高いものもある。まずは知ってもらうことが最初のステップと思う。また、大学当局にもそういう点を話して、理解を広めることが重要。大学内での研究成果をより幅威ひろいオーディエンスに届けること、そこから視認性を高めていくことの重要性を訴える事が必要。OAにすることは視認性向上にもつながる。
- 要するに、図書館スタッフは研究者に話しをするときはOAの側面の中でも個人的なメリットを伝えられれば、その人個人も興味を示してくれるはず。大学当局に話をするときは、大学の研究活動のビジビリティを上げ、ブランドの価値を高めることにつながる、と話をしていくと説得力もあるし、理解も進むのではないか。
休憩タイム
「SPARC Japan 〜来し方行く末〜」(尾城孝一さん、国立情報学研究所)
- 今日の話:
- 国際学術情報流通基盤事業:通称 SPARC Japanは10年前、2003年から活動開始
- 最初の経緯
- これまでの成果・課題
- 今後の展開
- 国際学術情報流通基盤事業:通称 SPARC Japanは10年前、2003年から活動開始
- SPARC Japan開始の経緯:
- 2000年当時の日本の英語学術論文出版状況・・・日本の論文の割合は世界全体の12%に達する/日本の英文雑誌の占める割合は4%未満
- 日本人研究者の英語論文の79%以上は海外の英文誌に掲載・・・海外流出?
- 当時の日本の学術情報流通の問題点:
- 研究成果は海外に流出
- 国内学会誌の電子ジャーナル化が遅れている
- 数少ない電子ジャーナルも海外商業出版社に流れてしまっている
- 日本発のものもほとんどは無料発信。オープンに利用できるのはいいことだが、ビジネスモデルは存在しないので安定性には不安
- 文科省の審議会の中でも問題点は認識される・・・NIIが国際発信の方策をとる、という提言が出される
- そこで日本発の学術論文誌を電子的に発信する事業へ・・・SPARC Japanの開始
- 2000年当時の日本の英語学術論文出版状況・・・日本の論文の割合は世界全体の12%に達する/日本の英文雑誌の占める割合は4%未満
-
- 商業出版社による市場独占・雑誌の価格高騰に対する危機意識は日米で共通
- 日本には国内のジャーナルの国際競争力を高めないといけないという固有の問題も存在
- 日本はとりあえず固有の問題の解決に力を注ぐ必要があった・・・SPARC Japan
- 商業出版社による市場独占・雑誌の価格高騰に対する危機意識は日米で共通
- SPARC Japan 3期10年の成果と課題
-
- ジャーナルについて
- 45誌はすべて電子ジャーナルか完了
- 電子オンリーの雑誌も新創刊
- UniBio Press・・・生物系プラットフォーム
- 数学系・・・Project Euclidに参加
- 新たに5誌がIFを獲得
- ジャーナルについて
- 第4期の活動・・・
- 基本方針:大学図書館と研究者の連携を促進しつつ、OAに関する問題に取り組みながらOAを推進する
- 国際的なOAイニシアティブの支援/課題への対応/基礎的な情報・データの把握
-
- 具体的なプロジェクト:いくつかあるが、中でも力を入れたいもの・・・オープンアクセス支援のパイロットプロジェクトの検討
「SPARCへの期待」(戸瀬信之先生、日本数学会)
- 最初にNII、特にSPARC Japanに深い感謝を:
- 今日の講演は数学会を中心に、日本の数学者がどのように研究発表を進めているかを考え、どのようなことが今後必要とされるか、何をお願いしたいかを考えてみた話
- 日本数学会の雑誌の電子化事業:
- 数学者の研究成果発表:
- これらの多様な形態に対応するために、日本数学会は・・・
- 大会の講演アブストラクト(論文要旨)について過去30年分のデータベース化と過去分のアーカイブ化を進める
- 講演ビデオ・・・国際的な数学者を招いたレクチャー(年2回)と、夏休みに2週間、世界から人を集めてやっている企画のビデオは公開している。無償公開
- http://mathsoc.jp/videos/
- 大会の企画特別講演もビデオ公開
- 東京大学数理科学研究科では外国人を招いたシンポジウムを多数実施・・・その講演ビデオもある。共通データベースが必要?
- 英語の講演は大韓数学会とも話し合い、アジアで講演ビデオの情報を交換するという動きも
- 大会分科会の総合シンポジウムなど・・・講演記録(1人10ページ程度)も毎年、頒布
- 分科会によって温度差はあるが、徐々に電子化しはじめている
- 過去の重要な国際シンポジウム・・・たとえば50年前、日本初の国際シンポジウムの記録などにも重要な論文がある・・・Proceedingsの公開
- 今後さらに進めるとするとデータベースがいる: Digital Mathematical Library
- SPARCへの期待
- 現金なようだが・・・DML-JP拡張版の構築を援助して欲しい
- こういう試みは数学に限らずいろんな分野で日本国内の研究成果を作って、また統合していくことにもなるかも。なっていくと思う
- 不定期刊行物について、最初の20巻は出版権が他にあり、なかなか交渉もできていない・・・今後、日本で行なわれた出版物を電子化・公開するとライセンスの調整が必須になる。その交渉チャンネルをどこかが持っておくのがいい。各学会がそれぞれ欧米の出版社とチャンネルを持つのはまず不可能で、SPARCがやってくれるとありがたい
- 特に不定期刊行物について、電子化したとして図書館のデータベースにも統合して欲しいのだが、そういうことを推進する仕組みを作っていったらどうか?
- OPACに統合するような動きがあってもいい
- 最後に・・・モノグラフの電子化の推進
- 現金なようだが・・・DML-JP拡張版の構築を援助して欲しい
パネルディスカッション
安達先生
モデレータの特権として少しお話したい。
Josephさんのお話は大変印象的な講演だった。いいタイミングでいい人に話を聞けた。私もオバマ大統領がオープンアクセス出版へのレターを出したとか、サンフランシスコの会議の件とかのニュースはしっているが、それを大きな流れの中で見る、というのは大事なこと。非常にインスパイアしてくれた。
一つは、OA= access + reuse、といってくれた。reuse、ということで、さまざまな課題が出てきた。
もう一つはmetricsのこと。日本では同じ問題を大学の評価や研究者の評価でストレートに捉えて議論してしまうが、もっと別の観点、研究者の立場から使い方の話をされたのは私どもの議論で抜けていたこと。
尾城さんのお話にあったように、私ども日本は少しリポジトリに注力しすぎた。おかげさまで成果は出ているが、おおもとのOAについてもう一度考えてみるいいチャンスと思う。
Josephさんのお話のポイントは、別の言い方をすれば、"game change"の話だろう。従来からの出版/インパクトファクターに対し新しいものを持ち込んで、学術コミュニケーションを全く変える可能性を示してくれた。
午前中の博士論文の話も、日本におけるgame change。OAの問題と思ってお聞きかもしれないが、「大学が学位を与える」という制度を変えてしまうところにインパクトが有る。午前中はそういうところを避けて話をしていたが、Josephさんの話も、博士論文の話もゲームを変える話。その中で何を目指すのかが、今日一日、私が学んだこと。
前振りはこれくらいにして。まずプレゼンテーションをしなかったお二人に意見をいただきたい。
まずは関川さん、スライドを用意いただいているのでそこから。
関川さん
私は基本的にはOAはとてもいいことだと思っている。その大前提を踏まえて、スライドを作ってきた。
一つは、リポジトリに関して。もし雑誌が完全にOA化されたら機関リポジトリはいったいどうなるのか?
機関リポジトリに今、論文を登録している場合、著者最終版とか色々バージョンが有る。もし完全にOAなら版を分けなくていいのではないか、出版社版を登録すればいいしエンバーゴもない。出版社版を登録できる。
でも、そうなると、機関リポジトリの役割はなんなんだろう?
二つ目は、APCについて。一般に著者が投稿するときに払うモデルが普通だが、今後、図書館でAPCをとりまとめて出版社に払うようなことも起こるだろう。
私の図書館現場からの関心は、APCの総額は、今、購読料として負担している金額と、同じになるのか? それ以上取るつもりはないだろうか? もっとお金をとるとか、まさか言い出さないよね?
とはいえ過渡的には、購読料を変えないままAPCを上乗せして回収している、そういうのが続くのかな、と思う。
三点目は、これがどんどん進展したとき、図書館はAPCにどのようなスタンスでどのような対応をとればいいのか。
図書館現場の人間としてはこれは大きな問題なのではないかなと考えている。
安達先生
ゴールド、グリーン、APCの話が重要な論点ということで承った。
続いて林さん、お願いします。
林さん
前職の日本化学会の頃からお話したい。
2003年のSPARC準備室の頃からかかわってきて、SPARC Japanが紆余曲折なことも肌身で知っている。
オープンアクセスについても、日本の出版社としては初めてOAに関する支援を明示的に示して、ハイブリッドオプションを導入したり、OA dayで日本でもイベントをやったり、Science分野のCreative Commonsの翻訳プロジェクトの立ち上げもやったりしている。
OAに関してはそれなりに貢献し、SPARCでもセミナー等通じてどうエンハンスできるかやってきた。
感慨深いのは10年くらいやってやっと、研究者が向き合ってくれるようになってきた。ここに来て急に変わってきているので、ここで何か起こすことで次の飛躍につながると思う。
日本の特殊な事情として、今年度から始まる科研費の成果公開促進費でのOA特別枠の支援があることと、他のパターンの中でもOA実現を推奨している。そうなると、学会の先生方がOAを考えだして、認識も上がっている。
その上で、昨日、安達先生もおっしゃっていた、研究者が研究者のイニシアティブで、どうやってOA化すべきという、mandateを決めればいいのか。OAをなんのためにするかといえば、研究者が研究者の成果のビジビリティを上げ、貢献し、その世界をボトムアップすること。そのことを研究者自身に考えてもらう仕掛けを考えて行かないといけない。
安達先生
今日のご講演とお二人の問題提起をまとめて3つにしてみた。
- 1. Gold、Green、APC、Diversity
- 2. 研究者との緊張関係をどう考えていくか・・・日本では政府も義務化で動き出し、アメリカではオバマ大統領がレターも出した。その中で図書館はどう機能していくのか
- 3. 従来型の論文からそれ以外のコンテンツに広がっていく。オープンデータ等も言われる。カバーしなければいけない領域が広がることについて
この3つについてまず議論をして行きたい。
APC、Gold、Green、リポジトリの役割
- 安達先生:Josephさん、アメリカの状況等についてコメントがあれば。
- Josephさん:
アメリカでは大学・図書館がAPCに資金を拠出することは受け入れられている。全ての大学で行なわれているわけではないが、従来より多くの機関がOAのためのfundを用意している。
資金源はいろいろ。一つは図書館が購読料の一部をOAのために、さまざまな費用のために割り当てている。
二つ目は大学当局が新しい資金を用意する。今までそういうことに使っていなかったお金をfundのために用意している。
SPARCの役割としては、このような問題についての情報・データを提供すること。過去5年間のOA fundの情報を伝えるプロジェクトを実施している。金額や資金源、APCのリクエスト数やその領域、対象は院生/ポスドク/新任研究者なのかといった情報をまとめている。SPARCのwebサイトに情報は載せているので、そちらを参照いただければ。
- 安達先生:アメリカの大学では色々という話だが、日本は?>関川さん
- 関川さん:
昨年12月のセミナーでも触れたが、日本ではAPCに関して学内合意・・・研究者や執行部がAPCをどこが扱うかについて、まったく固めていない状態とお話したと思う。
学術情報流通、その流通という面では、APCを図書館が扱うのはごく自然と思う。
でも、科研費や外部資金という見方をすると、それに図書館が直接関与する習慣・文化はあまりない。科研費をどうとるかとかは研究推進や助成部署がやっている。APCが学術情報流通の視点ではなく、研究推進の視点からは、図書館の出る幕ではないという考え方もある。
結論から言えば図書館が関与するのが一番リーズナブルと思うが、そのことを先生方や執行部、学内関係者に説明して、了解を求めることをしていかなければいけないと思う。
- 戸瀬先生:
数学の場合はAPCへの理解は進んでいない。ただし、アメリカ数学会がAPCジャーナルを創刊するということがあり、注目は集まっている。
いずれにしても数学者は世の中の流れに・・・っ・・・こだわらないので、なかなか乗ってこないと思う。学内調整をするにあたって、分野間の温度差がかなり激しいのではと思う。
- 安達先生:
日本の数学者はギスギスした感じがなくていい分野と思うが、Josephさん、アメリカの大学では図書館がAPCを扱うとみなされている? それ以外のところ?
- Josephさん:
全く同じ状況。やはり図書館はこれまで購読料の対応をしていたので自然とAPCも自分たちと認識する。
一方で、研究者は自分たちの研究成果を流通させるコストと考え、研究の枠組みの中にあるものと考えがち。そこから両者の間に緊張感のようなものが生まれている。
- Q. フロア・大学図書館の方:
すべてOA雑誌になったらAPCは購読費のトータルと同じなのか、という話があったが、APCは雑誌を賄うコストなんだし読者が増えても儲けようとしないのではと思う・・・が、出版社はどう考えるだろう?
パネリストの中だと林さんの立場が近い?
- 林さん:
APCでも稼げちゃうので、怪しい雑誌がいっぱいある。まずあれには気をつけて、と先生方にadvocacyする必要がある。
とはいえ、すべての雑誌がOAにはならないだろう。NatureやACSのトップジャーナルは購読モデルのままだと思う。
トップジャーナルはほとんどの研究機関で買えているので、実質的に研究者にとってOAと変わらない。
それに価値のある情報は有料、という認識も広がっている。
ハイブランドの雑誌は購読モデルのままだと思うし、それはそれでいいんじゃないか。図書館の役割もそこで残る。
難しいのはミドルクラス。トップレベルじゃないから、購読費はトップジャーナルにとられる。
どう対応するか困っているところがあるので、そこは出版社と図書館が手を組むチャンスかも知れない。
直接の答えにはならないかもだが・・・
- Q. 同じ方:
多様性の問題にもつながると思う。いろいろなモデルのものがあって良くて、だからこそ図書館がその辺の事情をわかる努力をした上で、大学内でそういう機能を担う必要はあると思う。
- 林さん:
APCも、「いくらが適当か」と「その雑誌にそのAPCを払うべきか」の目利きもいる。先生の論文をどのジャーナルに載せるかを限られた予算の中で判断する必要があるわけで、それもAPCの課題になってくると思う。
- 安達先生:
そうすると図書館は確実に仕事が増える。マネジメントする人には頭がいたいかも。
奇しくも研究者との距離の話にもなってきた。研究者との距離を近くしてその行動に関与することになりそう。
従来、図書館はとにかくきちっと資料を集めることに専念すれば良かった。今の林さんの話は、どこに投稿するかという、従来は研究者が決める、図書館が口を出してはいけなかったところにも関与することになるかも。
日本は従来、OAやリポジトリはがんばってきたが、まだ研究者自身や助成機関によるmandateが弱い。アメリカは日本から見ると急にオバマ大統領のレターを契機にそっちに行こうとしているように見える。
NSFの成果をOAにすることなどは近々、制度化される?
- Josephさん:
オバマ大統領のレターの件は、それを出してもらうには4年間という長い期間、図書館コミュニティから政府に対し日々、働きかけてきた、努力を払ってきてようやく実現したもの。
外から見ると突然の実現のようにも見えるだろうが、図書館コミュニティの働きかけの結果、ようやく実現したもの。
図書館が果たした役割は非常に大きい。政府に働きかけただけではなく、各大学でも図書館員がきっかけになって教員を動き出した。
ハーバード大学などでも、アイディアは図書館員が出し、それに教員が納得して、政府を動かすまでに至ったのは、図書館員が大きく人々を動かした、ということ。
その結果としてこのように実を結んだ。
- 安達先生:
冒頭で機関リポジトリの役割に関するご心配を関川さんが表明されていましたが、今朝のセッションはこの会場が全部うまる稀なセッションで、機関リポジトリに博士論文を、今年から入れなければいけないということで、それだけで図書館の人もずいぶん、集中的に作業したり学内調整をしたりが目の前に控えている。
関川さんは大学でそれをマネジメントする立場だが、どう考えている?
まだどんどん、なくてはならないものになっていくのでは?
- 関川さん:
最初のスライドの中で「どうなるの?」としていたが、心の中では「でも必要だよね、少なくとも会場にいる人が生きている期間くらいのスパンでは」と考えていた。
全ての学術情報、講演や会議録などが商業誌等には載り切らない。確実に学術情報を世界にオープンにする流れの中で、機関リポジトリの働きはずっとあるだろう。
少なくとも日本ではかなり時間がかかるはず。学位論文の電子化ですら、図書館の会議などで説明すると、「そんなこと言ったってね・・・」と言い出して、当分は学位論文の100%搭載はまだ先。
機関リポジトリに携わる人は、当分飯の種に困らない。
もう1つは、前の大学のときにすごく感じたのは、大学という単位に対する評価の目が非常に厳しい。
完全OA誌があったとして、そこを見れば成果が見られるとしても、「A大学がどういう成果を出しているか」というものは、それを外部に公表する機能として機関リポジトリの役割はあるだろうと思う。
そういった意味で、OAという面と同時に大学の活動評価ツールとして見た時に機関リポジトリはそれなりの意味を持つだろうと思う。
- 安達先生:
補足すると、従来の日本政府のやり方なら、博士論文を電子化しようというなら集中的に、単一リポジトリを作ってやろうということが多かった。
それが各大学の機関リポジトリで、となったのは、日本の機関リポジトリが普通のものになってきた、図書館員の努力の成果に加えて、個々の大学の活動評価を意識しているから。
政府はとにかくお金を減らそうとしているので、厳しくなっていくことも予想されるが、主として国立大学には当てはまることの余波として私立大学にも博士論文のmandateが来た。
しかしそれをネガティブにではなく、ポジティブに、外にアピールするためのアプローチとして発展させることが必要。
そういう形で大学図書館から学内にうまくアピールしてくれればありがたい。
私も機関リポジトリのプロジェクトに携わって、研究者へのアクセスがなかなか難しいと思っている。
今回の博士論文のmandateは大きな意義を持つ。このチャンスを捉えて、研究者とより近くなって、今までのOAに関する活動を強化して欲しい。
このようなことについて、図書館の方はそうはいっても苦労していると思うが、もしご質問・ご意見等あれば・・・
- フロア:別の方:
機関リポジトリは今後も必要だろうと思う。
一つは紀要のようなもの、従来distributeされていないものを載せる機能。
もう一つはジャーナルに入れる際に削っていたバックデータ等も含んだドキュメントもリポジトリで公開することになるのではないか。
そういう点で、出版に近いような形でリポジトリは、OA雑誌が増えても重要性はあるのではないか。
- 安達先生:
リポジトリにはますます要求も増えて仕事をきっちりしないといけない状況に思う。
Josephさんに質問したいのだが、評価・大学評価が日本のパネリストの議論の中で焦点になっている。日本の国立大学はかなり税金を投入されてもいるので。
アメリカの大学は私立大学も多くて、大学の評価という観点は日本ほどではない、主として研究資金獲得という視点が強いのではと思うが、アメリカの状況についてコメントいただきたい。
- Josephさん:
確かにアメリカの状況は若干違う。私立大学と州立・公立大学の場合で、評価の仕方がかなり違うから。
ただ、この2者は同じようなことについて競争しているのも事実。質の高い学生の確保、研究資金の確保などで公私立問わず競争している。
そこで重要になってくるのが大学のブランドを高めることで、そこで研究出版活動や使われるデータセットの存在は大きく、機関リポジトリはそこに生きてくる。
機関リポジトリを使って大学のブランドを高めること、研究成果を幅広く発信する上で機関リポジトリはますます重要になってくるのではないかと思う。
- 安達先生:
コンテンツの多様化について。出版形態の多様化とも関係するが、機関リポジトリも変わっていく必要があると思うし、出版社の活動も変わってきている。
大学だとオープンデータに今後どう対応するかというのもひとつの論点になってくると思う。
例えば東京大学では図書館がそういうことにコミットメントする、オープンデータに対応しようとか言う動きはある? それは研究者サイドの活動?
- 関川さん:
東京大学に移って日は浅いのでよくはわからないが・・・図書館とオープンデータの関わりの話はあまり聞いていない。
先生方、研究者レベルでそういう動きはあって、いずれそれが図書館なり学内のセンターにコンタクトがあるかも知れないが、現時点では図書館へのコンタクトはない。
前の大学(=筑波大学)では従来の図書館の守備範囲からずれたものについての働きかけはあった。オープンデータではないが。
- Josephさん:
興味深い点として、オバマ政権はオープンアクセスに積極的でレターを出したが、刊行物だけでなくデータもオープンにせよと強く言ってきている。
政府から大学図書館のコミュニティに対して、データアーカイブの解決策がないので、大学図書館と一緒に考えたい、と話があった。
現在、アメリカの図書館コミュニティは大きなチャンスを迎えていて、これから図書館が果たす役割は広がると思う。
アメリカでは明示的に図書館への働きかけがある。
- 安達先生:
日本ではそこまでの動きがない。
オープンデータと聞くと例えばメタデータをどうつけてコミュニケーションできるようにするかは大きなチャレンジと思う。
そういう点で、化学は従来から化合物のレジストリと論文を結びつけるとかいう動きは有り、他方でアメリカの化学会はOAについて極めて独自のスタンスをとっているが、林さん、その点について。
- 林さん:
化学はごく早い時期から化合物データを貯め始めたり結晶データを集めていたりする。
今、結晶学の研究者は、投稿時点でケンブリッジにあるデータセンターに自分のデータを登録して、IDをもらってから投稿して、出版するとケンブリッジのセンターにリンクもしている。
1990年代に構想が出て、2000年代前半には実現している。大変、美しい解決。
一方、Chemical Abstractsは集めた化合物データをSciFinderとして商売している。ケンブリッジのセンターは、企業等にはまとめて売って商売しているが、研究者の利用は無料。
どちらの場合もメタデータの目利きが要る。図書館員がその役割をやろうとすると、サブジェクト・ライブラリアンの話にもつながってくる。
そこがうまく機能すれば、専門のデータセットにメタデータを付け広く流通させるライブラリアンのミッションにもつながってくる。
- 安達先生:
遺伝分野の活動を横から見ていても、共有・登録して別々のものをつなげて新しい価値を出そうとしても、専門家がいなくて苦労している。
オープンデータとなると本当に生きていく価値のあるデータをオープンにするには相当の努力とお金がかかると思う。
図書館がどう関与するかは大きな問題。人材がいないのでどの分野も大変と思う。
人材がいないので・・・アメリカでは図書館にそういうコーディネイトの依頼が来ているというのは、今までの活動を見てもうなずける気がする。
今後、日本の図書館はどうするか? ぜひ考えていただきたい。
戸瀬先生はずいぶん、いろいろなデータを公開したいとのことだったが、図書館に期待している?
それとも数学者に、学会としてやることを期待している?
- 戸瀬先生:
文章/文献は数学会独自でできると思う。
ただし、数学会のサイトにおいておいてもビジビリティが低いので・・・実は英文のものはProject Euclid等に置くことも考えている。
たとえば歴史的なproceedingsの公開はEuclidだし、モノグラフの公開もそちらを利用しようと思う。
ところが、何が問題かと言えば、ビデオ。
ビデオは数学会のビデオ、200本くらいあるが、すべて東大の数理科学研究科にホストしてもらっている。
無償でやってもらっているが、どこの学会もそれを独自でやるほどの力は・・・物理学会や化学会ならあるかもだが、会員数5,000人の数学会では辛い。
公的な、集中的なサービスがあればいいと思っている。
- 安達先生:
勝手に課題を設定して自分の聞きたい質問ばかりしてきたが、フロアからこういうことを聞きたい、などあれば。
- フロア3:
APCモデルに関連して。今はまだ考えなくていいのかも知れないが、利益相反は問題になる?
製薬会社の話題が最近、ニュースにもなっているが、論文には「〜から資金を受けた」は書かれる。
例えば今後、製薬会社がAPCを払うから載せてね、ということもあると思う。
そうなるとAPCの支払いを誰がしたかを書く必要があるのではと思うが・・・
- 安達先生:
ご指摘の点は重要な問題のような気がする。
林さんでしたっけ? OA雑誌で詐欺のようなことをするところも出てきているが、逆にいうと、投稿者の自己責任・・・ということにもなるのかもだが、関連して何かあれば。
- 林さん:
図書館の役割なんだと思う。出す側だけじゃなくて入りの目利きがいる。
例えば製薬会社の資金を受けたときに何処に出すかをマネージしたり、あるいはそもそももらわないというようなことを判断することを図書館が担う、というのはあるかも。
- 安達先生:
従来は個々の研究者に責任を局在化させていたが、図書館が絡むと自体は複雑化するかも知れない。
具体的にどう対処するかは今後、OAを進めるコミュニティがきちっと発言して行かないといけないと思うし、研究者の啓蒙も重要と思う。
最後に:パネリストから一言ずつ
林さん
出版に関する質問に関連して、機関リポジトリ担当の方に提案したいのは、人社系の紀要を中心に機関リポジトリから出版されている。
それはぜひ進めて欲しいが、「出版していこう」と思うのならば、もう少しattractiveなインタフェースや、CrossRefのようなリンク、長期的にはさらにALMsのようなものも実現して欲しい。
特に日本の人社系の研究成果は被引用数では測れない。それ以外の方法でどうやるのかを考える、一番近い存在が機関リポジトリ+図書館になりつつある。
そこをぜひ進めて欲しい。
関川さん
OAとか図書館の役割とか高邁な部分ではないのだが。
OAは、あるいはOAの動きは、お金がかかる。ただではできない。だから、なんらかの金が絶対必要、ということを感じている。
それと派生して、金儲けは悪いことではない。金儲けを悪いような雰囲気があったが、日本では金儲けは悪いことではない。
ただ、適切でない利潤を出す金儲けは、もしするようなところがあるなら、目を光らせなければいけない。
コンソーシアムなんかの活動では出版社側の人間のようにも言われるが、お金は大切です。
戸瀬先生
出版側の人間でもあるんですが、数学会も出版しているので。
関川さんの指摘は重要。日本のジャーナルが脆弱なのは、日本に海外商業出版にあたるような出版社がないから。
数学会は不定期刊行物については、海外の出版社を使っているが、メインの雑誌は取次会社2つくらいあって、そのプロモーション能力は・・・あまり意味が無い、なきに等しいもの。
そういうところがかなり難しいのだな、と常に思っている。
数学会自身が国際的にプロモーションせざるを得ないと思いつめている。
Josephさん
他のパネリストの方々のコメントにさらに付け加えたい。
OA出版市場は新興市場で、その最もよくわかっている専門家は図書館員と研究者。
今こそこの市場を健全なものにすべく、協働していくべきと思う。
そうすれば、より学協会にとっても、研究者にも利益になる市場を形作っていくべき。
協力しあって市場について、何が起こっているか啓蒙し、健全な市場を形作っていくべき。
安達先生
予定時刻も過ぎているのでパネルを終えたい。
OAサミット全体の閉会の言葉:安達先生
壇上でも申したとおり、OAの動きの潮目が変わってきた、変わったと思っている。
そういうタイミングにSPARCからJosephさんをお呼びし、刺激的なお話を聞けたことは良かった。
お話が始まる前に、まずタイトルがずいぶん意義深いものだなあ、と思った。
「Delivering on the Promise」・・・「どのように期待に応えるか」。
今までの活動を具体的に社会に位置づけて機能していく時期になった、ということだと思う。
彼女はアメリカ・世界のOA Advocateの1人として、大変元気な方。
僕などはペシミスティックに考えがちだが、彼女は常に前向きなことを見てエンカレッジする、稀有な方。
快くお話いただいたことに感謝しています。ありがとうございました。
私どもの活動はさらに強力に進めていく。
博士論文について、いろいろな課題を的確かつエレガントに解決出来れば、このコミュニティの実力を社会に知らしめられる。
私どもNIIとしてもぜひ協力していければと考えている。
今後とも、このSPARC Japanのセミナーはコミュニティにいる人はもちろん、いない人も巻き込んでいきたいと思っている。
待っていますのでぜひ、よろしくお願いします。
この2日間の会議にご参加いただき、ありがとうございました。
以上で2日間にわたったOAサミットの記録、自分の手元にある分は全てです。
その後、慌ただしく京都に帰還⇒翌日・翌々日とあわあわ過ごしていたのでまだ十分に内容を咀嚼できた気はしないのですが。
全体を通じて(あるいはOAサミット以外の場でも)感じるのは、現在の「図書館」って枠組みはそろそろ見なおす必要があるんだろうなあ、というあたり。
・・・という書きだして続けて何か書こうと思ったんですが十分には咀嚼できていないので案の定、うまくまとまりませんでした(苦笑)
今期はSPARC Japanセミナーも最後にご紹介があったとおり、研究者、図書館、学術出版のそれぞれから人が参加し協働していく体制だそうで、まさにそういうことが重要であるとかあるいはその垣根が消えていくかもとかいうことをいずれ整理して書けたらいいなあ、とかなんとか。
さあて、次の更新はいつになることか・・・*6。
*1:機関リポジトリの今とこれから…350機関/100万超コンテンツの現在とその先(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その1) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*2:博士論文は「やむを得ない事由」がない限り機関リポジトリで公開される時代(オープンアクセス・サミット2013 学術情報のオープン化に向けて〜現在の到達点と未来の展望〜 参加記録その2) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*3:Budapest Open Access Initiative | Read the Budapest Open Access Initiative
*6:このときはまさか、翌日再アップすることになろうなんて思ってもいなかったのでした・・・