かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

第32回ディジタル図書館ワークショップ

昨日は午前、午後、夜と1日で3つのワークショップ(正確には2つのワークショップと1つの研究成果報告会)に参加。
・・・まあ、どれも筑波大関係のワークショップだから当然といえば当然なんだが・・・春休みに入った途端にイベント祭りかよ・・・

第32回ディジタル図書館ワークショップ@筑波大学東京キャンパス(秋葉原地区)秋葉原ダイビル14F

筑波大・図書館情報メディア研究科の杉本先生・阪口先生・宇陀先生・永森先生が編集している「ディジタル図書館」のワークショップ。
メタデータ関連の話が多いが、ほかにも電子図書館関係の話が盛りだくさん。
最近そっち系の話に興味津々だったので、楽しく聞けた。
午後から別のイベントがあって参加できなかったのが残念。


以下、特に気になったプレゼン。

AIRwayプロジェクト:機関リポジトリ活用のためのリンキングサービスの構築

発表:嶋田晋(筑波大学附属図書館情報サービス課)


リンクリゾルバ(S・F・Xとか)を介して、機関リポジトリ*1の中におさめられたレコードの全文閲覧を可能にしよう、という取り組み。


今までのリンクリゾルバだと、たとえば筑波大だったら筑波大が契約した電子ジャーナルは全文へのリンクが貼られるんだけど、そうじゃない電子ジャーナルについては見ることができなかった。
ところがAIRwayが実現すると、契約してない電子ジャーナルに掲載された論文でも、著者の所属機関の機関リポジトリに収録されていれば見ることができるようになる、というもの。
すでに筑波大と北大では実装済み。


聞いてて興奮した。いや、マジこういう便利なもの考えて、作ってくれる人は大好きです。
今のところは機関リポジトリに収録されている雑誌掲載論文が少ないとか、参加機関が少ないとかでそこまで有効性は発揮できていないんだが・・・そこら辺はシステムの問題ではなく運用の問題だから、今後の取り組み次第でなんとかはできるだろうし。
しかも海外の大学にこの話を持ちかけたら乗り気だったそうで、世界レベルでこいつが実現したら海外の論文も使い放題じゃないですか! 世の中便利になる一方だ!


あと、これはちょっと気になったので質疑でも発言したんだが、紀要論文とかもリンクリゾルバから飛べるようにしてもらえるとなお良いよね。
今のところAIRwayは電子ジャーナル掲載論文が使えない際の代替として考えられてるから紀要などは対象にしてないそうなんだけど・・・
CiNiiでS・F・Xが使えるようになって、今後は紀要への要求もこれまで以上に高まることが予想されるんだが、いちいち機関リポジトリに入って探すことなく一発で使えたら超便利なのではないだろうか。
あと、せっかくwebで公開しても気づいてもらえない、という問題にも対処できる。実際、そのあと行ったREFORM成果報告会によれば、「筑波心理学研究(タイトルは忘れたので適当)」っていう紀要はwebで公開されているのに、複写依頼が年500件とかあるらしい。電子版に気づいてくれよ、と。そういうのもリンクリゾルバから飛べるようになったらみんなそっちを使うようになるのではないかと。


そういう具体的な提案がしたくなるような、夢が広がるプロジェクトだった。
(ちなみに、プロジェクトのホームページはこちらAIRwayプロジェクト - はじめに



メタデータスキーマの再利用を指向したスキーマ設計支援システム

発表:庄山和男(筑波大学図書館情報専門学群

うちの大学の4年生の方の発表。
学群性とは思えない落ち着きっぷりで格好良かった。自分がプレゼンする際の参考にしたい。あと、声が低くて渋かったのも参考にしたい(それは無理)。


メタデータに関しては専門ではないのであまり詳しいことは言えないんだが、要は既存のメタデータスキーマから利用者の需要にあったメタデータの要素を検索・抜き出して、選んできた要素を組み合わせて利用者が新しいメタデータスキーマを定義することができるプログラムを開発した、という話らしい。


これを使うと利用者は既存のメタデータスキーマを調査する手間が省けるうえに、専門的な知識がなくても直観的に自分が求めるメタデータスキーマを作ることができる。


・・・いや本当、世の中便利になる一方だ。
聞いてて超わくわくした。
しかもそういうのを学群生(ふつうの大学だと学部生に相当)が考えて作っちゃうんだもんなあ。
格好良いったらありゃしない。


そんなこんなで午前の部は終了ー。
午後の部もぜひ出たかったんだが、残念ながらより自分の専攻に近いテーマの発表会があったのでそっちに行くことに。
でもディジタル図書館ワークショップはとても楽しいのでまた機会があったら参加しようと思う次第。

*1:大学などの研究機関が、所属する研究者の研究成果(雑誌掲載論文など)を収集・保存して、webなどで公開する取り組み。オープンアクセス運動の一環として注目されるだけでなく、大学の説明責任を果たしたり、広報の一環になることなどももくろまれる。日本でも最近は国立情報学研究所(NII)から補助金が出されて、多くの機関リポジトリが作られている。ただし、学術雑誌に掲載された論文は著作権処理の問題があるので、まだそんなに収録はされていない(紀要掲載論文や学位論文みたいな、著作権処理の容易な文献の収録が主)。AIRwayプロジェクトで中心を担っている北海道大学は、雑誌掲載論文も積極的に公開している非常に先進的な大学。筑波大は、レコード数はトップクラスだけど学位論文が多すぎるだけではないかという説あり。