かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

Project Next-L キックオフミーティング

慶應義塾大学の原田先生が中心になってやっている、オープンソースの図書館システムを構築する試みのミーティングに参加してきた。

Project Next-L キックオフミーティング@慶應義塾大学三田キャンパス

Project Next-Lのwebサイトはこちら⇒http://next-l.slis.keio.ac.jp/wiki/wiki.cgi
本当はhttp://www.next-l.jpってドメイン取得できてるそうなんだが、そっちに行ってもいちいちhttp://next-l.slis.keio.ac.jp/wiki/wiki.cgiに飛ばなきゃいけないから面倒。


既存の(企業による)図書館システムは進歩が遅い、余計な機能までパッケージ化されていて邪魔、高いなどの問題がある。また、ソースに手が加えられないからちょっとしたカスタマイズも企業を通さざるを得ず、それにもえらい金がかかる(筑波大の学務システム「TWINS」はソース一行書き換えるのに何百万も金を取られるらしい。図書館システムも似たようなもんか?)


ならいっそ図書館界で協力してシステムに関する仕様書を作って、それをもとにオープンソースでシステム作ってくれる企業に実装をお願いしたらいいんじゃないか、というのがProject Next-Lの試み*1


海外ではオープンソースの図書館システムもすでに公開されていたりするが、試しに某有名オープンソースシステム(海外ではけっこう導入実績もある)のソースコードを日本人のプログラマに見せたところ、「こんなものはプロの仕事ではない」っと一蹴されたとのこと*2。当初は海外のシステムを日本語にすることで対応しようとしたらしいが、結局自分たちでつくった方が早い、という話に落ち着いたのはそんなわけ。


プロジェクトの進め方としては、まずプロジェクトに参加した図書館員や研究者、その他の人々の意見を集めながらシステムの仕様書を作成する。
意見を集める段階ではテキストで作っていって、最後にUML(業務の流れとかを図で示した奴。プログラムを書く前に作る(ように勧められる)フローチャートみたいなの)にまとめる。
で、まとまったものをもとにオープンソース開発の企業に実装を依頼する、とのこと*3


6月には仕様書のVer0.1を、8月にはver1.0を公開して、07年度内には実装したシステムの発表にまでこぎつけたい、というのが原田先生のプラン。
8月のver1.0公開には本人も懐疑的だったが、早期に成果を出さないとプロジェクト自体が失敗に終わるだろうということで、遅くても08年には成果物を出す、と意気込んでいた。


まずは中小規模の図書館を対象に、基本的な機能を充足したシステムの構築を目指す、とのこと。
いきなり大きな図書館がオープンソースのシステムに乗り換えるのは考えにくいし、逆にいえば今まで金がなくてシステム入れられなかったような中小館がこれを機にシステム導入できるとよいな、ってことみたい。
とはいえ、「こんなこともできたらいいな」とか「うちの図書館はこういうことができないと困る」みたいな意見も積極的に聞いては行く様子。
web2.0に対応した図書館」っていうプランを進めることも目的の一つみたいだし(岡本さんが参加してるんだから当たり前と言えば当たり前だが)。


そんなこんなで素晴らしいプロジェクトのようなのだが、今のところwikiで行っている仕様書作成になかなか図書館やその他の人々からの意見が集まらないらしい。
「どうやったらみんな書いてくれるか」ってことについて1時間くらい会場全体でトーク
・・・どうだろう? 会場の意見で多かったのは、

  • 何もないところから発言していくのは難しい。運営サイドで叩き台としての仕様書を用意して欲しい
  • 書き込む側にUMLについての知識を求めるのは無理があるし、誰も書きこまなくなる。仕様書作成段階ではテキストによる箇条書きみたいなやり方にした方がいい

の2点だろうか。


あとは、自分も発言したことだが参加者を図書館員とかに限らず、利用者を含め誰でも参加できるような体制にしたらどうか。
筑波大学施設部長の澤本さんが学内のプロジェクトについて(宿舎改善とか)「なるべくたくさんに人を巻き込んで、大学全体で盛り上げていきましょう」ってことをよくおっしゃっているが、まったくもってそのとおりだと思う。
この手のプロジェクトは収拾がつかなくなることを恐れて対象を区切るより、巻き込める人は片っぱしから巻き込んで、全員で意識を共有することが大事なんじゃないだろうか。
特にweb2.0への対応ってことを言うなら、図書館員や図書館を介さずに利用者が直接図書館システムを利用することが増えるわけだから、利用者として図書館になにが欲しいかも聴いていくことは重要じゃないかと思う。


あと、今思いついたのは、学校図書館をなるべく多く巻き込みたいよね。
高校は割とシステム化されてるところも多いけど、小・中学校は半分以上のところがまだ紙の目録カードと貸出帳・カードなんかを使っていたりするっていうし。
そういうところを今回のプロジェクトを機に一気にシステム化できると、学校図書館の抱えるいろいろな問題(システム化されてないから公共図書館との連携がいまいちうまくいかなかったりする)も少しは解決できて一挙両得?
そうなると専任の学校司書も司書教諭もいない、うちの地元の小・中学校みたいな学校をどう巻きこんだらいいのかがポイントなわけだが・・・学校に直接呼びかけるしかないか?


いずれにせよ、図書館界全体を巻き込むのはもちろんのこと、それにとどまらずできるだけ広い範囲を巻き込みたいよね。
そのためには広報、広報なわけだが・・・

*1:ちなみにプロジェクトの命名http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/index.htmlの岡本さん。あの人も色々なところに顔を出すなあ。

*2:ここら辺の話も筑波大の「TWINS」に通じる。工学システム学類所属の全代会議長がソースを見たところ、「HTMLの初歩すら守れてない、ひどい出来」とのこと

*3:すでにオファー自体はいくつかの企業から来ているらしい。オープンソースで儲けるビジネスモデルはそれぞれに異なるらしく、その話を聞いているだけでも面白い。min2-flyは「絶対に働きたくない」を合言葉に生きているけど、お金儲けの話は大好きです