かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

腕一本で生きていけるかどうか、とか


最近専門職とかプロフェッショナルの話づいてるなあ、と思いつつ・・・

プロフェッショナルだって言うなら、そもそもある図書館から別の図書館へ転職したとしても、その技能、精神性が有効でなければ嘘だろう。「通底するモノ」が存在し得ないところにプロフェッショナリズムは成立しないんではなかろうか。

レファレンスのスキルやカタロギングのスキルを持っていて、急に別の大学の図書館なり県立市立の図書館なりに赴任することになったとしても、よしんば遠く太平洋を渡った大陸の東端の地で古典籍資料のカタロギングを任されることになったとしても、何もゼロから教えてもらう必要なく、ある程度のローカル・ルールさえ教われば、司書としての仕事を開始することが可能、というのはその限りで言えば立派な専門性じゃないかと思うのですよ。


という話を受けて。


最近、研究のからみでアメリカの図書館員の中途採用情報を色々見ている。
以前、「アメリカですら図書館員は専門職になろうと努力している段階=準専門職」と言う話をしたが、逆を言えばアメリカでは図書館員は法律家や医者の次くらいの位置につけている準専門職ではあるわけで。
専門職というものは上述のお二人も言っているとおり、ある程度「どこに行ってもすぐにプロとしてやっていける」(医者は雇われ先が変わっても仕事できるし、弁護士だって事務所によらず仕事できる)存在であるわけだが、図書館員がある程度専門職として確立されているというアメリカでは、それを象徴するかのように専門職の中途採用がけっこう多い*1
単に中途採用が多いだけでなく、それこそ「即戦力となるプロフェッショナル」を求めていて、採用段階で担当すべき業務の詳細と必要な適正が細かく列挙されている*2
例えばとある図書館のカタロガーの採用だと、

必須資格・適正

  • ALA認可のプログラムで修得した図書館情報学修士号
  • 1年以上の専門職として、または5年以上の準専門職としての学術図書館で目録業務に従事した経験
  • AACR2、LCRI、LCSH、MARC21、CONSER guidelinesについて最新の知識を有すること
  • Dublin Coreおよび他のメタデータ標準に精通していること
  • OCLC Connexion及びILSの使用経験
  • webベースの図書館資源に精通していること
  • 文書・対話コミュニケーション能力に優れていること
  • 指揮・監督経験を有すること

みたいに必要なスキルが明示されている。
要は「教えられなくても最初から率先的に働けること」が大前提としてあって、また資格をとってはいおしまい、ではなく、常に自分のスキルはどこでも通じるように最新の状態に保っておかないといけない、ってことなんだが。
逆を言うと、こういう経験を有する人がぽんぽん他に移る可能性があるってことでもあるのかな、と。
ちなみに上記の経験を有する人が従事する業務は

  • あらゆるフォーマットでの電子情報資源/雑誌のオリジナル及び高度なコピーカタロギング
  • 電子情報資源/雑誌の目録部門のマネージメント
  • 他部門と協力してプロジェクト等に参加すること

など(ほかにも書いてあるけど抜粋めどいのでパス。あ、もちろん全部英語ね)で、いきなり一部門の指揮権を任されることになる様子。
やっぱ扱いが事務職ではなくfaculty(教員待遇)なことによる差とかもあるんであろうか。
それにしてもまさに即戦力。


もっと凄かったのが別の大学のシステム担当のライブラリアンの採用要件で、MARCや書誌レコードに関する知識を有することや図書館情報学修士号を有することが要件なのは一緒なのだが、そのあとに

webやその他のテクノロジー/ソフトウェアのスキルに優れていること。具体的には

の、スキルを有すること

とかさらっと書いてある。
「使えない奴お断り」感全開。
っていうかS・F・XやDSpaceももはや必須要件かよ。
そりゃ、そんな奴はどこに行っても即戦力だよっていうか図書館じゃなくても間違いなく生きてけるだろ、きっと*3


結局、精神性の問題はさておき、スキルや能力の面で言えば「今いる図書館じゃなくてもどこでも働ける」、いやいっそ「べ、別に図書館じゃなくても、勤め先なんかいくらでもあるんだからね!」っていうような状態(己の腕だけで食っていける状態)になってはじめて「プロフェッショナル」とか名乗れるのやも知れないなー、とか*4


・・・それにしてもカタロガー重宝されてるな、欧米・・・
日本だと「花はどこへ?」とか言われたりしてるのに・・・この差はなに?

*1:日本でそういう話はあんまり聞かないな・・・採用情報見ても新卒かパート/非常勤の中途採用が多くて、正規雇用になりうるチャンスがあるのかわからん

*2:まあjob description文化のあるなしの関係もあるだろうが

*3:ちなみにこの枠で採用されると年収は最低5万数千ドル支払われるそうです。日本円だと600万円ちょい? それって高いの、安いの?

*4:それは別に「専門職」でなくても、ビジネスマンでもなんでもアメリカでは優秀とされる人材は皆そうである気がするが。あ、でもそういう人は「プロフェッショナル」ではあるんだな、間違いなく/対して日本は「○○っていう企業の部長は○○っていう企業の部長しかできないからリストラされたら雇用先がない」とか揶揄されるよね。最近は変わってきたのかも知れないが