かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

図書館情報学系ブロガーの(そこはかとなく)憂鬱-ジレンマっつー程でもないけど-


下のエントリで三田図書館・情報学会の「面白かった発表」の5番目に挙げた種市淳子さんの発表を聞いていた時に考えた話。


種市さんの研究自体は短期大学の学生に、レポート作成を前提とした情報収集の課題を出して、どういう行動を取るかを記録しておいて分析する、と言う利用者行動に関するもの。
事前に検索に使うキーワードや用いる情報源を考えさえると行動にどう影響するかな、と言うことを観察していくもので、本筋は本筋で非常に面白い。


ただ、本筋とはちょっと離れて気になったのが、学生がどんなwebページを情報源として収集したか、と言う点。
被験者の学生にはレポートに使えそうなページはブックマークを付与するよう言われているのだけれど、そのブックマークされたwebページの中に、
Web Credibility Project(2002)の「webの信頼性のためのガイドライン」による評定で低い得点しかとれない(≒信頼の低い)webページが増えているのだと言う。
同様の実験を2005年に行った際には収集されたページの60%以上がガイドラインの10項目中7項を満たしていたのに、今回の実験ではその割合が20.5%まで落ちている。
一方、学生が検索エンジンで上位に上がってくるページしか見ない傾向にあるのは2005年も2007年も変わってないので、どういうことかと言えば検索エンジンで上位になるwebページの信頼性がこの2年で落ちている、と言うことになる。


さらにどういうことか・・・と言えば、(これはレジュメに記載されていないけど発表中で言われていたが)、被験者が良く使うエンジンであるYahoo! Japanの検索上位にブログが上がってくる率が増えたのではないか、と言うこと。
試しにレジュメ中で示されていたキーワードでYahoo!検索してみた結果が以下のとおり。

検索語:英語 早期教育 検索日時:2007.11.13. 17:45

私が英語の早期教育に反対な理由。 英語を覚える前に、母国語をしっかり身につけるべきである。 ... だから、英語をきちんと身につけるには、早期教育よりも、今の英語教育のシステムを根本的に見直したほうがいいと思うのです。 ...
blogs.yahoo.co.jp/chococoa/462640.html -キャッシュ

... この他に、小学校やそれ以前の段階における早期教育としての英語(児童英語)、高校受験・大学受験などを対象とする受験英語、英検・TOEICTOEFLなどの英語検定対策、さらには年代を問わず趣味から各種専門分野にまで及ぶ英会話、 ...
ja.wikipedia.org/wiki/英語教育 -キャッシュ

  • 3.早期英語教育 - 真剣に英語勉強しなくちゃ

英語の早期教育って、あんまり良い印象が持てないな。 ... 小さい子供に教材を買い与えたり英語教室に通わせている親は、それでOKと思っているのだろうか。 ... 家庭内や学校は徹底して英語、といった環境に放り込まないと駄目でしょうね。 ...
d.hatena.ne.jp/fanny/20050827/p1 -キャッシュ

私はもともと早期教育とか、小さいうちから習い事をさせるという事 ... 長々と書いてきましたが、結局の所、早期教育って程の事してないし、英語育児も言語なので、早期教育にはならないなーと思いつつ、今自分ができる範囲で颯汰にいろいろさせてます。 ...
csx.jp/~happy-m/torikumi/soukitoeigo.htm -キャッシュ

5 早期教育に対する批判. 5.1 有効性に対する科学的な観点からの批判 ... これからの時代を生き残るために不可欠なスキル(例えば 英語の第二公用語化に見られるような英語力)を身につけるために必要な訓練である。 ...
ja.wikipedia.org/wiki/早期教育 -ブックマーク:1人が登録-キャッシュ

英語の早期教育Q&A ... Q.先生にとっての英語の早期教育. A.私の幼なじみは、日本人とアメリカ人の間のハーフでした。 ... 幼稚園に入る前から英語を習っていたのですが、それがとても自然な事で、早期教育とか. バイリンガル ...
www.pp.iij4u.or.jp/~annjun/soukikyouiku.htm -キャッシュ

日本はまだ暢気なもんだが、韓国は早期教育英語圏に子供を送り出すのがブームになっている。 ... 早期教育で意味があるとすれば、語学の修得というより、英語(外国語)に対する関心を持たせるという点にある。 ...
blog.goo.ne.jp/kanime_korea/e/450c1fcf11de0352fcf22ebb1a404da5 -キャッシュ

  • 8.国内外の英語教育事情:海外の英語教育事情

... 「語学教育は早ければ早いほうがよい」と考える保護者が多数を占め、多くの保護者が、小学校4年生(一部小学1年生)からの英語学習開始をまたず、子どもを語学学校に通わせたりバイリンガル教育を行う幼稚園に通わせたりと早期教育を行っています。 ...
edvec.co.jp/research-institute/educative-info/overseas-info/11.html -ブックマーク:2人が登録-キャッシュ

  • 9.英語早期教育義務化が50年後の日本の隆盛の礎 - マスコミでは言えない ...

さて、本日は「英語の早期教育」について。 以前にも触れたように ... そして早期教育推進派の「グローバル」や、先進国での英語力 ... それでは「英語早期教育反対派」の主張に目をやると 「学ぶ気になればいつでも学べる」 「それ ...
plaza.rakuten.co.jp/asmode/diary/200703190000 -キャッシュ

幼稚園での英会話の授業は詰め込み式のようではないですし、日本語以外の言葉を話す人がいる、ということを体感してもらうにはちょうどいいかと思いますが、私は英語の早期教育にはちょっぴり疑問を持っている一人です。 ...
futagonikki.web.infoseek.co.jp/blog/archives/000155.html -キャッシュ

検索10件中、実に5件がブログ。
まあ中には匿名・個人でないブログ*1もあるかも知れない(そこまでは未確認)なので必ずしもここに挙げたブログが全て信頼性ガイドラインの項目をあまり満たしていないものである、とは断言できないが・・・うーん、それでもやっぱ多いなあ・・・
Googleでも試してみたがそこまで上位にブログばっか、ってことはなかったので、Yahoo!がとみにブログが上位にくる傾向があるのかも知れないが・・・さてはて、さてはて。
2005年から現在にかけて、ブログが検索上位にあがってきた理由はなんだ?
リンクされやすい特性のためか?
それともブログ自体の数が相当増えたからか?
あるいはその両方か、それともそれ以外の要素か?
なんにせよ、「多くの学生は検索上位ページしか見ない」+「検索上位にはブログが多い」=「学生がブログをレポート課題の参照元にしようとする」と言うのは、式としては当然っちゃあ当然なのだが・・・
なんだかなあ。


web情報源の信頼性を外形的に考えると、確かに匿名ブログの信頼性は低いものになるだろう。
ブログだから、ってんではなく、匿名の個人では信頼性を担保する要件を満たせないから。
ゆえにレポートの参照情報源として匿名・個人運営のブログを多く用いる、と言うのはやっぱ問題なんだろうな、と思う。
ブログ上でしかまだ情報のやりとりがなされていないようなよほどのホットトピック、と言うならともかく、実験で使われたのは「英語の早期教育」という課題であって、それにブログを情報源として用いる、と言うのは・・・人々の反応を見る上では有効かも知れないが、もっと別の一次情報源を探すべきだろう、やはり・・・


ただ、なんとなく歯切れが悪くなってしまうのは・・・自分もブログ書いているし、他人のブログも頻繁に見る身としては、匿名・個人のブログであっても有益な情報が掲載されているケースが多いことを知っているから。
信頼性の担保、と言う意味で、確かにレポートに直接引用するのは控えるべきだと思うが、一方でレポートを書く時の示唆だとか、その他の情報行動の上では有益な情報が得られるのも確かで・・・検索上位がブログに占められる、と言う状況が、問題であるとは言いたくないんだよなあ・・・
なんかの役には立つんじゃないか、って思っているからブログ書いてるわけだし。


・・・でもやっぱり、ブログばかり見てレポート書かれるのは図書館情報学的にもおそらくは他の学問領域的にも困るわけで・・・
ベストは自分で情報の質を見極めてどう使うかを決めろ、って言うことなんだけど、そのリテラシー水準をいきなり要求して良いもんかどうかもわからないし、となるととりあえず「ブログは使うな」と言っておいた方がわかりやすいだろうわけで、ああでもそもそも今どきの学生って匿名・個人のブログやwebサイトとCiNii掲載論文みたいなある程度の保証がなされた情報源*2の違いとかどの程度まで見極められるのか、と言うところから・・・(汗)


まあ、ジレンマというほど真剣に悩んでるわけではないんだが。
たまにうちのブログもよくわかんない検索ワードで上位に入ってて、それを見ていく人もいたりするわけで。
「頼むからそのままレポートに使ったりするなよー、せめて参照リンク貼ってあるときはそっちも見て欲しいし、出来れば文献紹介してるときはそっちを見てくれよー」と思いつつ、今日も今日とて記事を書く・・・。


・・・まあ、良く考えりゃ「新明解図書館情報学用語辞典」なんてトラップを仕込んでいる方もいるわけだし、実際のところ全然気にしないで好きにやっちゃえばいい気もするんだけど。
なんかすっかり図書館情報学的な要所にはサイトばれしている様子なので、逆を言えばここを参照してレポート書こうもんなら一発でバレるわけだしー。
ん?
それってこのブログ自体、一種のトラップってことか・・・?

*1:id:dankogaiみたいに本名晒している場合や、Open Access Japan | オープンアクセスジャパンみたいに機関運営のブログなど

*2:こっちも今どきはGoogleで検索できる