お茶の水女子大学のラーニング・コモンズを見学してきたよ!
既に先週の話になってしまいましたが、お茶の水女子大学のラーニング・コモンズを見学してきました!
- お茶の水女子大学のラーニング・コモンズ&キャリアカフェ関連
- 関連エントリ
国内で「ラーニング・コモンズと言えばまずここ!」と挙がるであろうお茶の水女子大学。*2
大図研オープンカレッジの際にご講演された茂出木さんにお願いしたことをきっかけに、7/9にゼミの先生と一緒にお伺いして来ました*3。
お忙しい中、お時間を割いて丁寧にご説明・ご案内いただいた茂出木さん、羽入先生、本当にありがとうございましたm(_ _)m
以下、簡単に見学してきた感想を。
お茶の水女子大学・お茶の水女子大学附属図書館について
見学に先立って、図書・情報チームリーダーの茂出木理子さんと、附属図書館長の羽入佐和子先生にお話を伺う機会をいただいたので、そこでお聞きした話。
(と、書くとさも自分がインタビューしたみたいですが実際は自分は基本的に横でお聞きするばかりで、ゼミの先生が主だってやり取りされていたのですが(爆))
以下、
- 見出し
- 説明のメモ
- 自分のコメント
- 説明のメモ
という形式でお送りします(強調等も全てmin2-flyによるものです。また、メモし忘れ/筆記ミス/誤解等も多々あると思うので、その点はご注意願います)
- 授業形態
- 少人数授業が多く、いわゆる大教室講義がない。多くても40-50人。語学や情報処理の授業等が一番人数の多い授業になる
- うらやましい! 筑波大全体の科目である総合科目は言わずもがな、図書館情報の専門基礎科目でも100人くらいいる授業けっこうあったしなあ・・・
- 授業コマ数も多く、教室も大きなものよりは小さな教室がたくさん必要
- 少人数授業が多く、いわゆる大教室講義がない。多くても40-50人。語学や情報処理の授業等が一番人数の多い授業になる
- 学生の行動、学内のスペースなど
で、そのような状況の中で2005年に現在の羽入館長が就任されてまず図書館の理念をつくり、2006年に茂出木さんが附属図書館に来られてそれまで壁が多くて狭かった附属図書館1階スペースを、取っ払えるだけの壁を取っ払って広いスペースにし、ITセンターとのコラボ等で端末を充実させていき、現代GPのキャリアカフェの試みがスペースに困っていると聞いて誘致し・・・とやっていって、現在のラウンジ、キャリアカフェ、ラーニング・コモンズから成る附属図書館1階が出来上がっていった話については大図研オープンカレッジでのご講演にもあった通り。
1階にはその他に事務室のスペースもあるのだけれど、ここはラーニング・コモンズ等との境の壁がガラス張りになっていて、外からも中からもお互いが見えるようになっている。
これについては、
- 事務を「閉じない」
- カウンターしか見せていないから図書館は尊敬されにくい
- 大変なところを見せる=中を見せる
- 中らも外が見える(気になる学生の入り等が仕事をしながらでも見える)
- (従来は事務室に行くには裏口みたいなところから入るのが一般的だったのが、改装で図書館入口から入る方が増えたことで)教員が図書館員に用事があって来る時も、図書館内を見る=「人いるじゃん」ということになる
とのことで、非常に面白い取り組みであると思ったり。
確かに、カウンターだけ見てると人が寄ってかない時は暇そうに見えるもんなぁ・・・最近だとアルバイトの人のこととかもあるし。
では以下はスペースごとに見てきた感想を。
本当はいっぱい写真撮ったのですが・・・ううう、腕が悪いせいもあり、個人を特定出来なさそうな、掲載できるような写真が全然ない・・・(涙)
ので、キャリアカフェやラーニング・コモンズの実際の写真については上記リンク先をご確認いただけると幸いですm(_ _)m
・・・いい加減、カメラと相性悪いのはどうにかせんといかんよな・・・
1階
ラーニング・コモンズ
お茶の水女子大学附属図書館の詳しい館内図については、附属図書館webサイト*4の、利用案内ページにある「詳しい説明」(PDFファイル)参照。
ただしそちらの地図でカード目録が置かれていることになっている場所が、現在のキャリアカフェになっています。
さて。
お茶の水女子大の附属図書館は2階建てで、1階が最近何かと話題のラーニング・コモンズやキャリアカフェのあるスペースです。
ラーニング・コモンズは利用者が利用できるスペースとしては長方形の入口から見た一番奥のあたりですが、某筑波大学図書館みたいにだだっ広いわけではないので奥だからって使いづらかったりは全然なさそう。
水曜日は一番混む日(授業コマ数が少ないけど学生が前述の通り帰らないので)とのことであり、またこの日はラーニング・コモンズの一部をしきって利用講習をやっていた、ってこともあるんでしょうが・・・
それにしても、人がいっぱい(汗)
筑波の中央図書館のテスト前くらいの人数・・・以前、慶應の三田メディアセンターに伺ったときも人が多くてびっくりしたことがあったけど、密度で言えばあれに勝るとも劣らないやも。
決してうるさいわけではないんだけど「活気」がある感じと言うか・・・なんか不思議な感覚だな・・・
PCが置いてあって作業している、って点では普通の端末室とかと変わらないはずなのに、空気がもっと軽い感じ。
スペースの広さ・明るさとか、キャリアカフェとつながっていることとかとも起因しているのかも知れないけど・・・やっぱそれか。
開かれている感じが重要なのかもしれない。
ちなみに端末はMac。
ここだけ特別というわけではなく、事務方等も含め学内の端末は(Windowsじゃないとだめな場合はもちろん別として)MacのThin Client方式で動かしている奴が多いとのこと。
情報系とかだと筑波でもMac動いているところあるけど、学内全域ってのは珍しいんじゃないかな? そうでもない?
座って使う端末の他に、柱にそって備え付けられたスタンディング用の端末もあり。
OPAC用とかなら筑波にも立って使用する端末もありますが、作業用で・・・? と思ったものの、実際けっこう使われている様子でした。
プリンタへの出力とか短い情報探索とかなら、確かにいちいち座って作業するよりはこっちの方が使いやすいのかも・・・
プリンタの横にはラーニング・アドバイザー(院生)の方が待機していて、端末やソフトウェアの使い方に関する質問を受け付けていました。
一応、基本的なソフトウェアの使い方に関する参考書(Office製品やLaTeXなど)も備え付けてあるんだけど、ラーニング・アドバイザーの方に聞いてくる人の方が多いとか。
やっぱ人に聞く方がわかりやすいし、先輩だと相談しやすい、ってのも大きいのかと。
・・・でも参考書も便利そうだった・・・Access2007の参考書とか、うちにも入らないかなー(完全に私欲)。
ラーニング・コモンズ全体として、従来の図書館のような「静かにしなきゃいけない」圧力は働いていないし、実際静かというわけではないんだけど、「うるさい!」という感じでもない不思議な活気がありました。
これはなんだろう・・・女子大だから騒ぐ人がいない、ってだけではないんだろうけど、でもそれも一部にはあるのかも知れない・・・
キャリアカフェ
ラーニング・コモンズのすぐ脇、もとはカード目録があったという場所。
これもリンク先の写真を見てもらうと雰囲気掴めるかと思いますが、「カフェ」と言っても飲み物等は自販機で売っているだけで、イメージとしては「ARGカフェ」と言う場合の「カフェ」に近い感じです。
人々が集まって、情報や意見を交わしたりする場所・・・と言った感じで、実際普段はグループで課題をやったりしている人が多いとか。
ただそれだけじゃなくて、特にキャリア関連の授業をここで開催することも多いとのこと。
実際、見学に行った日もグループで何か話し合う授業(メロンパンの企画開発、とかだったような?)をやっていました。
これは、ヤバいくらいに面白い。
キャリアカフェのページの写真だけではわかりにくいかも知れないけど、別にこの「キャリアカフェ」って閉じたスペースがあるわけではなくて、普通に図書館の1階の、ラウンジとラーニング・コモンズの間にあるオープンなスペースを、それと分かるように色を変えたり家具を変えたりちょっと区切ってあるだけなんですよ。
だから当然、授業をやってようが人通りはあるし、実際自分たちが行った日も普通に受講者以外の人が通り抜けていく。
それどころかカフェスペースの中には机だけじゃなくてソファとかも置いてあって、そっちでは(おそらく)受講者以外の人が普通に座って本を読んだりしてたりする。
ストリート・ライブを見るかのようにちょっと「お、なんかやってる」と思って通り過ぎることもできるし、「面白そうだな」って思えば関係ないのに見ていくこともできる。
もともとオープンな場所だから何かやってても通りづらかったりとか言うことはないし、実際気にしないで通る人は普通に通っている。
こういう風景が日常化しているってのは、これは凄いことなんじゃないかと思ったり。
この日はキャリアの授業をやっていたけど、今週の昼休みには院生による自主発表もキャリアカフェを使って行われるとか。
院生や学生が自主的に集まって互いに発表したり、って言うのはそんなに珍しいことではないし、筑波でもやっている話を聞くけど、それをこのキャリアカフェで開催、ってのはこれはもうなんか学問の根本に立ち返るような、とんでもなく面白いことなんじゃないだろうか。
告知して、それに応じて集まった人だけを対象にするんじゃなくて、公共のスペースで発表して、興味がある人が立ち止まって聞いてくれたりそこから何かが生まれたり・・・てのはまるでアテネの広場のよう。
それを、機材や場所の面で図書館がサポートして出来る・・・って言うんだから、ああもう、なんかこれはとんでもなく羨ましい!
これでもしキャリアカフェが、例えば学内のどっか一室を借りてとか、あるいは喫茶店みたいなのを作って・・・ということになっていれば話は全然変わっていたんだろうな、と思います。
もともとスペースが確保できなくて困っていた現代GPの企画に対して図書館側から働きかけて今のキャリアカフェになった、って話だけど、これは双方にとって本当にいい出会いだったんだ、と現場を見て確信・・・いやもう本当、筑波もこういう場所できないかなあ・・・
ちなみにラーニング・コモンズにソフトウェアの参考書があるのと同様、キャリアカフェにはキャリアについて考える参考になりそうな本とかが備え付けてありました。
これらの資料はいわゆる「ゲートの外側」にある本なのだけど、今のところ特に紛失等はない、とのこと。
そういうところもお茶の水女子大のマナーの良さの表れなのかも。
ラウンジ
図書館入口を入ってすぐ右わきにある、新聞や一般誌等を読んだり休憩したり出来るスペース。
残念ながら時間の関係で座ってみることはできなかったが、置いてあるソファはそのための班まで職員内に作って、他大学を見たり家具屋さんに実際に行ったりしながら安くて良いものを選んだそうです。
家具の選定については大図研オープンカレッジの中でICUでもかなり気を使われていたことが話されていたが、些細なようでひっじょーに重要だと使っていて思います。
・・・なかなか学内に良いソファがなくて、夜ごとキャンパス内をうろうろ回っている身としては特に・・・
また、ラウンジには一般誌(新聞・雑誌類)や学内関係資料とかも置いてあって、自由に手に取って読めるようになっています。
筑波でも中央図書館は以前はゲート外で新聞読めましたし、春日キャンパスとかは今でもそうですが、この手の日常的に使うような資料はやっぱラウンジにあった方が便利そう・・・コーヒー買って、新聞取って、ソファにどかっと座って読んでー、とか(いや、ここの学生さんだときっと「どかっ」とは座らないだろうけど)。
ちなみにこのラウンジの近くにキャリアカフェの「カフェ」たる由縁である自動販売機も置いてあります。
カップドリンク1杯100円。
ここだけは春日キャンパス勝てた!(Mサイズ1杯60円)
ただ、マイカップを持ってくると1杯10円安くなるというシステムがあるそうで、エコに対する配慮では完敗・・・
2階
クワイエット・スタディスペース
お茶の水女子大学附属図書館は1階にはゲート等はなくて、2階にいわゆるゲートのある、書架の並んだ「図書館」っぽいスペースがあるんだけど、その手前にあるのがクワイエット・スタディスペース。
下のソーシャルな空間に対して2階は静かに、という意味でゾーニングになっています。
先日読んだJournal of Academic Librarianship掲載の論文の中で「静かな場所とソーシャルな場所のゾーニングなんて無理だ!」って言う話が書かれたものがありましたが、お茶の水女子大の場合は普通にゾーニング出来ているように感じたり。
2階は全体に静か。
ただ、某大学図書館のように「キーボードの音も煩いからノートPC使っちゃダメ!」なゾーンがあったりはしない、とのこと。
ノートPCと言えばお茶の水女子大では1年生に大学から1年間、ノートPCを貸与する制度も始めたとのことで、ただ中身はOS以外ほとんど空っぽ、必要なソフトウェアは全部自分でインストールしなければいけないようにしているそうです。
それもまた現在、お茶の水女子大が売り出している「リベラルアーツ」の一環ということで、学生は自分でOpenOffice製品を入れたりして使うとのこと。
で、図書館内に置いてあるリベラルアーツ図書のコーナーにもそういう本も置いてあったり。
・・・図書館員の選ぶリベラルアーツ図書の中に『正規表現』って本を見た時は一瞬びっくりしたけれど・・・リベラルアーツってハードル高いな・・・(汗)
書架
ゲートをくぐって、書架の並んだいわゆる「図書館」っぽいスペースについては割と普通の大学図書館でした。
と言っても、1階が凄いからそう感じるだけで、例えば入ってすぐのところに書店のようなポップ付きの本の紹介があったり、ゲート手前には利用者からの要望に対する受け答えの紙が綺麗なフォーマットで張り出してあったりと、いろいろ面白い試みもされています。
もちろん、書架の間にも閲覧机などがあって、こちらも学生はいっぱいで、各々図書館資料を使うような学習をしている様子。
ちなみに書架間の感覚はかなりぎゅうぎゅうなところもあり、本を置くスペースは(改装前より広げているとはいえなお)かなり余裕がない感じでした。
現在、集密書庫も作って資料の移動等も行われていましたが・・・根本的なスペース不足、ってのはどこの図書館も抱えている頭の痛い問題だよなあ・・・
大学院性向けの研究スペース
2階の一番奥まったところ、3月まで、記念文庫が置いてあったというところが現在は院生向けのスペースになっているとのこと。
スペースが足りないながらも学生・院生向けのスペースはきっちり確保していく、って姿勢が表れている感じです。
こちらは常に満杯というわけではないけれど、常連さんがいらっしゃるそうで人がいないこともない、とか。
特に学内にスペースが足りないお茶の水女子大だと、予算を獲得して新たに教員を雇った場合、その教員のスペースを確保するために院生のスペースが犠牲になることもあるそうで・・・
うちも必ずしも院生用のスペースが足りているわけではない(むしろ足りない)ので、ここら辺は他人事じゃないなあ、とかなんとか。
その他、全般
サイン
各スペースの入口には、そのスペースの名称と何をして良いかを示すサインがありました。
例えば飲食については「ペットボトルとカップ自販機の飲料はOK」とか、「全部ダメ」とか。
携帯電話なら「メールはOKだけど通話はダメ」とか、割と細かくスペースによって決められていて、さらにそれが守られているが故にゾーニングがかなりうまくっている感じ。
これは単に利用者のマナーがとりわけよいから、で片づけてしまってよいことなのか、それとも一緒くたに「ダメ!」とせずスペースによって出来ることを区切ることによって、利用者側でもそれを守ることにとりわけ不快感を感じないのか・・・(ソファのあるくつろぎスペースまで飲料一切厳禁なのと、書架近辺で厳禁なのでは違うだろう、と。でも今の筑波だとゲートをいったんくぐればソファスペースだろうがなんだろうが全部飲食は厳禁)
LiSA
最後に、施設じゃないけど上でリンクも貼っているお茶大LiSA(Library Student Assitant)について。
学内インターンシップも兼ねた学生スタッフで、お手伝いということで謝金は1時間あたり500円なものの希望者は多い、とのこと。
ただ、学生に業務を伝えるにはそうとううまく説明しないといけない・・・とのことで、若手職員の訓練にもなっているとか。
ここら辺は某ラーニング・コモンズ(仮)の学生スタッフとしては、ぜひ頼むから誰か自分たちに業務を伝えるパーマネントなスタッフがいてくれれば・・・とか思ったり*5。
全体的な感想
とにかく、話に聞いているだけと行って見るのとでは(先日のARGカフェで江上さんも言われてましたが)行ってみないとわからないことがたくさんありました。
特にラーニング・コモンズやキャリアカフェの雰囲気、キャリアカフェの凄さは行かない限りわからなかったな、と・・・
ああいう空間があることで何が生まれるのか、どんな効果があるのか、ってのは今後どんどん明らかになっていくんでしょうが・・・キャリアカフェでの院生の自主発表、みたいなことも常態化するとすれば、教育・学習の場としては素晴らしいというか凄まじいというか。
以前、自分とid:ceekzさんとProject Shizukuの面々で話していた、「こんなことがラーニング・コモンズが出来ればいい」と言っていたまさにそのもののようで、もうなんか自分が女子で高校2年生とかだったら本気で志望校の中にお茶の水女子大入れそうですよいやマジで。
ただ、何度か出てきたようにお茶大ならではの事情(学生が帰らない/スペースの問題/女子大の雰囲気≒行儀のよさ)もあるかと思うので、ただ真似すればどこでも上手くいく、というわけではもちろんないだろうけど。
それは別に「うちじゃ無理」って話ではなく、あるいは「うちもああしなければ」って言う話でもなく、「うちでも面白くて効果のありそうなことを実現するにはどんな手があるかな」って考えたり、あるいは学内で起きつつある面白いこと(お茶の水女子大の場合は現代GPでのキャリアカフェの取り組み)に何か提供できるものはないか、一緒に何かできないか、ってことを考えたりしよう、ってことなのかな・・・とか、なんとか。
最後にもう一度、快く見学をお引き受け下さった茂出木さん、羽入先生、本当にありがとうございましたm(_ _)m*6
ああでも、キャリアカフェで院生による自主発表、ってのは本当に羨ましいなあ・・・!
筑波だとどっかできるとこあるかな・・・石の広場じゃ夏暑いしなぁ・・・