かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

始まりの機関リポジトリ(事例報告)<DRF-Ookayama part.1>

DRF-Ookayama、2日目最初は機関リポジトリについての事例報告×4.
しかしこの事例報告、どこもかなり興味深いトピックが・・・

以下、参加メモです。



手抜きのすすめ:私立大学における機関リポジトリ運用(関東学院大学図書館・外崎みゆきさん)

    • 私立大学のリポジトリ運用:片手間「も」かけられない状況
      • いかに手を抜くか、に情熱
    • 2002年に電子図書館システム導入
      • コンテンツ収集は早くから
      • 2005.3にOAI-PMH提供機能、その後Junii、Junii+対応
    • 少ない専任数でいかに運用するか?
      • 図書館外の労力を利用
        • 紀要論文の一括登録:印刷業者にPDFファイル・目次書誌を納入してもらう⇒論文メタデータ自動生成
        • 投稿規定にwebでの公開を明記
        • リポジトリOPACの両方で検索可能
        • 図書館で手を動かさないといけないのは一部のみ
        • 簡易登録システムの提供:研究者、担当部署等をターゲット
          • 登録権限は図書館の共通認証
          • 共著者の追加登録・教員でも簡単にできるインタフェース
      • コンテンツ収集:トップダウン
      • システム連携
        • OPACからの参照、OPACから原文へ
        • NIIの間口も利用
        • GoogleだけはOAI-PMHではなくロボットで持って行っている
    • 共同リポジトリへの展開
      • システム担当不在でリポジトリ運用は難しい
      • 私大は研究より教育メイン
        • 論文数がない
        • 特色あるコンテンツはある
      • デジタルコンテンツ数に見合う運用コストでやっていけない
    • ASPサービスの利用??
      • 各大学がASPサーバに登録・・・共同リポジトリとしての運用が可能では?
    • アクセスのほとんどはCiNii、OAISter、Google
      • リポジトリ内部を検索する人はいない
      • 私学がいくつか集まっていれば内部利用も出てくる?
        • (min2-fly)別に内部利用はなくてもよい気も・・・リポジトリの存在意義を主張する際には目立たないと困るところもあるが・・・
    • 大学間で協力してスキルアップを図る
    • min2-fly感想
      • 簡易登録は出来ると便利かも。図書館の人にすべて任せきりにしないでメタデータいじれると楽。
      • OPACからの利用と他からの利用ってどれくらい? 実際のところOPACからの利用ってどんくらいあるのかな?



人文・社会系コンテンツ収集の現状:学位論文とDP/WPを中心に(一橋大学附属図書館・高橋菜奈子さん)

    • DP=Discussion paper, WP=Working paper
    • HERMES-IR:電子図書館(HAD)を継承したもの
      • 公開時から1万を超える紀要論文データ。現在14,000を超えるコンテンツ。
      • 新しく増えたのはDiscussion paper, Working paper
    • 人社系の学位論文の特徴
      • 1991年以降、課程博士論文が増加
      • 従来は論文博士の方が重くみられる:研究を積み重ねて高齢になった人が出版した図書でもって学位を請求する
      • 「博士課程単位取得論文」:著名な研究者の若いころの成果
    • 課程博士論文
      • 研究科ごとによってばらばらな学位申請・授与体制
      • 個別交渉⇒フローを集約⇒許諾体制構築
      • 許諾の意思確認は出来るようになったが、登録OKの率は12-16%で増えていない。
    • 論文博士
      • 著者は可って言ってくれることが多いが出版済みのものが多く、出版社がダメっていうことが多い
        • 出版済み⇒論文、だとOKしてくれるのは5/35
        • 論文提出⇒出版、だったものは4/5でOKしてくれる出版社が多い
    • なぜ不可?
      • 「出版したいから隠しておきたい」
      • 「未熟だから隠しておきたい」
    • WP/DP
      • 雑誌論文掲載までの間の中間生産物
      • 論文の形式をとる/読んでもらってコメントを貰って手直しする⇒どこかに提出する
        • 研究者としては多くのコメントが欲しいはず!
      • 公開後に差し替え/取り下げもある
      • 研究科・プロジェクトの助手と交渉
      • 包括許諾または個別許諾
      • 多くのWP/DPはすでに別のwebにファイルが上がっている・・・どういう関係に?
      • RePEcデータ提供可:7件
        • (min2-fly)RePEc連携は実にいい。特にWP/DPであれば大いに効果が望めるのではないかと思う。・・・もちろん英語なんだよね??
    • RePEcデータ提供
      • コンテンツ集めるだけじゃ面白くない⇒データ提供
      • よく見られているDBにデータ提供⇒より多くの人が探しているのでは。
      • 経済・商学ならばRePEcだろう。
    • 質疑
      • RePEcは日本語受け付けないよね? 日本語のはどうすんの?
        • 日本語は受け付けないわけじゃなく、データとしては入るが検索できないだけ。なので何も考えないで送り込む。表示はされるはず。検索は出来ないのでそこは苦しいが、基本的にWP/DPのother titleに英語は入っているのでひっかかるのではないかと思う。
      • 昔は英語以外受け付けないってことだったが・・・ローマ字を入れればとか思ったが。
        • 学内ですでにRePEcに登録しているものはあって、そこはわざわざローマ字読みを手で入力していた。ただリポジトリにそのフィールドはないのでとりあえず今はother titleに英語があれば。
      • 北大は?
        • 先週くらいにRePEcと連携して、今は英文シリーズだけ送っている。送れば見れるなら和文も考えようかな。
    • min2-fly感想
      • うち(筑波)もそうだけど電子図書館継承しているリポジトリ多いよね。
      • 学位論文はこれからキますよ。なんでなのか要因がいまだにつかめないけど妙に利用の多い論文多いし。
      • RePEcデータ提供は実にいい案だよ。そりゃ先生も登録しろって言うよ。あそこ超使われてるもん。
      • そういや日本の図書館情報学系だとarXivの名を聞く頻度に比べるとRePEcやSSRNの事情って入ってこないよな・・・なんでだべ?
      • ところでRePEcに搭載したものって差し替え効くの?
      • 和文をRePEcに登録して見られるのか?? ログ超気になるなそれ・・・



コンテンツ色々集めて発信中(聖路加看護大学図書館・佐藤晋巨さん)

    • 教職員・学生・院生全部集めても600人に満たない小さな大学。図書館職員も4人。
    • 4人しかいない図書館だが98年ころから電子図書館があった。聖路加の看護学会誌や紀要を電子化していた。
      • NIIの講習でDspaceの存在を知る・・・「発行時に査読とかもリポジトリ内で出来る?」と夢を抱いて乗り換え
      • フルテキストが入っているのは700くらい。まだまだこれから。
    • 大学の学術情報の倉庫としての位置づけ
      • リポジトリは前面に出ない/他のサービスを支える倉庫
      • リポジトリはシンプルな画面で、他の前面に出ているサービスのコンテンツをしまっておく倉庫に
      • そうはいってもGoogleで直接飛んでくる人も多いので、見栄えも今後は考える
    • 目録情報を積極的に収集
      • 学内の学術情報の目録を集めている・・・本文はなくてもとりあえず目録を
      • 業績データをリポジトリに集めている・・・経年蓄積されるので見やすい?
      • 目録さえあれば、図書館員が見てフルテキストが欲しいのがあったらあとからお願いできる
      • データは他で活用可能
      • フルテキストがない部分はメタデータでカバー
      • 学位論文・・・書いてすぐはみんな公開したがらない
        • 同窓会などで呼びかけていたら卒業後十何年も経ってから公開してみようという人も
        • 「自分の研究テーマでググってもリポジトリに入っている自分の学位論文のメタデータくらいしかヒットしないから、せっかくだし公表しようかな」
    • 公開しやすさ
      • リンクリゾルバ経由で投稿可能
        • 余所のDBからメタデータ取ってこれる
        • 「3ステップで投稿できる」!
      • 公開範囲を設定できる:「とりあえず学内にだけ」とか
        • OAの精神には反するかもしれないが、心理的壁を下げるために
    • これから取り組むこと
      • 修士論文・事例研究などの登録
        • 研究計画書は研究倫理委員会の審査を経ることに最近はなっている
        • 昔のものは公開していいのか(倫理にかなっているのか?)の判断が難しい
        • 個人が特定できてしまう事例研究の問題
      • 研究成果として作られたwebをどう登録・公開するか
      • 歴史的資料の登録
        • 聖路加を卒業した人からどうデータを貰うか?
    • 質疑
      • ゾルバについてやり取り。
    • min2-fly感想
      • 運用スタイルによっては実は小規模なところの方が登録コンテンツ対アクセス数は多いんでないかとか個人的には思っている。
      • 昔はリポジトリって言ったらフルテキスト以外はあるべきじゃないとか考えていたんだが、最近はどうせみんなGoogleで来るんだし、フルがなけりゃ見ないって人にとっても別にノイズになるわけじゃないんだから、メタデータだけでも集めるって方針もありなのかな・・・と言う気もする。もっとも、本文にたどりつけることが最大の目的って人からすると嫌かも知らんが。



発信と活用と:T2R2システムについて(東京工業大学附属図書館・渋谷真理子さん)

    • T2R2=Tokyo Tech Research Repositoryシステム
    • T2R2の特徴
      • 研究者自身に登録を依頼・・・入力コスト軽減・登録データ活用が重要
    • コンテンツ収集
      • 研究者情報システムからデータ移行/メタデータのみの登録を認めている
    • 入力コストの軽減
      • 入力代理人の設定
      • PDFファイルから書誌情報取り込み可能
      • 一括インポート機能
      • 学会著作権処理の確認(研究者は「公開OK」とだけ言えばOK/チェックは図書館で)
    • 学内他システムとの連携
      • 特許データ
      • 学位論文
    • データの登録
      • 共著者リンク、重複チェック、マージ等の機能
      • PDFファイルからのメタデータ取得(!)
        • 100%ではない
        • (min2-fly)100%じゃなくてもそれは凄いだろう! ・・・まあ、そもそも本文がXML生成でメタデータ内包していればという気もするが・・・
    • 多彩なデータ活用
      • 業績一覧の作成に使える
      • 公開可否設定もできる
      • 業績一覧webページ自動作成機能(T2R2と連携して自動更新される)
        • PHP, Perlのテンプレートも提供。好みのページが作れる(技術があれば)。
      • 科研費申請書作成機能(!!!)
        • 代表者、分担者を選ぶと科研費申請書の「研究業績」書式で出力してくれる
        • (min2-fly)何そのチート?! 俺がたまにお手伝いで数時間以上もかけてやっていることが自動生成されるとな?! のどから手が出るほど欲しいっすその機能!
    • 質疑
      • 学内向けの業績DBとして凄い意識されているようだが、一般へのデータ公開は? GoogleとかOAI-PMHとか。
        • Google等からの検索については、「Googleで検索した時に自分の業績が一番最初に来ることが望み」と研究者も言っているが、具体的にどうしたらいいのかがわからないのと、望みが高くて歩みが遅いところでもあるので具体的にはなにも。
      • OAIsterとかは?
        • 「本文がないから駄目だ」と。OAI-PMHに従ってはいる。
      • PDFからの抽出はオープンソースで公開してくれれば・・・
    • min2-fly感想
      • DspaceやE-printsが多い中で独自開発システムでいくってなかなかの勇気がいると思うんだが、そこら辺どうなんだろう。Dspaceはろくでもないシステムだが国内デファクトスタンダードの強み(ノウハウの蓄積・共有とか)はあるわけで・・・まあノウハウがいらない良いシステムであればそんなもん関係ないか(爆)
      • 科研費申請自動生成機能やPDF本文からのメタデータ取得機能とかはヤバ過ぎるだろう。Tokyo Techの技術力があればそりゃあ既存システム使わんで独自路線取るのもわかるとは思っていたが、こんなに便利機能盛り込んでいたのか・・・単独のリポジトリを超えて研究活動のためのプラットフォームの一部になっているんだな、完全に。羨ましい。とてもとても羨ましい。
  • 全体質疑
    • RePEcについて、7個許可があったとのことだが希望しなかったところに理由はある?
      • 返事がない。そこにアクションは全然できていないので詳しい理由はわからない。断られたわけではない(まだ返事がない)。
    • リンクリゾルバからの抽出は非常に面白いのでぜひ作りたいと思うのだが、リンクリゾルバの段階で先生を認証していないとコミュニティに入らない?
      • 認証画面でIDを入れると個人を認証できる形式。説明を端折ってごめんなさい。
    • 東工大へ。ReaDへのデータ送付について。
      • ReaDへ研究者情報を送る。そこで業績部分をT2R2から引き出して合体させて送っている。
    • ReaDへ送るのを図書館でやっている?
      • 研究者情報システムの管理が平成16年の法人化以降図書館に移っている。今年の1月から研究情報部で研究支援管理室ができたので、しばらくは共同してやっていくところ。
    • 研究者は一本の流れで出来る?
      • そう。登録はひとつ、出口はたくさん。
    • ReaDが先行していたわけだが、そっちに対応したシステムは捨ててこっちへ?
      • 研究者情報システムはReaDに必要な項目はすべて抜かれる、そこの業績を入れるところを塞いでT2R2にしているので、確かに高い金かけて作ったシステムを一部封じてT2R2で新たにお金をかけている。
    • 東工大へ。科研費の申請書作成はどれくらい使われている?
      • 調査しなくてはいけないと思っているところ。説明会への参加は3桁。科研費以外の申請書への質問もあるので、使う人は使っているっぽい。ただ、著者名リンクがちゃんと形成されていないと人が抜けてしまうとか、トラップもある。
    • 関東学院へ、ASPサービスの話って何か具体的なことはされている?
      • 12月に私立大学の図書館システムの研究会で同じような発表をしている。そちらに参加している数大学が興味を示してくれているところ。ただバックアップ/業者連携がいると思うのでそれを模索しているところ。
    • リポジトリをひとつにして、一個にして管理すればいいという話は総合展の質疑でも受けた。国で一つは無理にしてもいくつかの大学で共同でやるのはありかなと思う。
      • 今まで作ってきたツール込みでそれができないかと考えている。私大の場合はどこかが主導権を持って、というのは出来ないし、公立大学でも別の事情はあるようである。地域でリポジトリをまとめる必要も別にないので、条件にあうところが参加すればいいのでは。呼びかけながらこの先の動きを作っていきたい。



・・・なんだこの長さは・・・(苦笑)
えーっと、そんだけ力入ってメモってた、ってことでご了解いただければ幸いです。
自分の琴線に触れるような話が多かったもので・・・RePEcがどうとか便利な機能がどうとか。

とりあえずすべてのリポジトリについて気になるのは実際にアクセスがどうなっているか、ですね。
特色のある取組をしていればしているほど(OPAC連携、RePEc連携とか)それらの取組がどの程度ユーザに実際に利用されているのか、って点は気になります。
「結局Googleにクロールさえされればいいんでしょ?」って言われるとそれまでなわけですが、実はそうではなくてGoogle以上に強力なアクセス元足りうるものもあるんではないか・・・ということもあり(それこそRePEcとか)、是非ともログ分析の結果を! 教えてほしいと!


一方で聖路加や東工大のように、研究者/著者にとって便利なシステムを提供している場合にはダウンロードのログを見るというよりその機関の研究者ら、アップロードする側の行動の変化について是非フォローして合わせて発表していただければ、とも思ったり。
「こんな面白い取り組みをしているよ!/するよ!」と言うときには、実際にその取組がどんな効果を発揮したかを合わせて教えて貰えると魅力倍増ですし。
逆に効果がいま一つであるならば何を改善すればいいのか、ってところの発見にもつながるわけで・・・あああ、考えただけで興奮してきますね?!(ぇ)


さて、事例報告に続いてはDRFからの提案と話題提供、ということでちょっとかためのお話が。
では、続きをどうぞ。