平成20年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系)〜機関リポジトリの更なる普及と新たな価値創出に向けて〜 部分レポート(2)
(1)はこちら:平成20年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系)〜機関リポジトリの更なる普及と新たな価値創出に向けて〜 部分レポート(1) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
CSI報告交流会、2日目は九州大・池田先生によるOR2009の参加レポートからスタート。
リポジトリを極める
OR2009報告:世界の最新動向(九州大学・池田大輔先生)
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- どっちかと言うと技術よりの会議。みんなマックでメモ取ってる
- (min2-flyコメント:ThinkPad使い的には嫌な空間だな)
- どっちかと言うと技術よりの会議。みんなマックでメモ取ってる
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- 特徴的な発表技術の紹介
- リポジトリ間でのデータのやり取り。年間100TBのデータやり取りを出来る。
- 研究者のワークフローを蓄積・シェアしようというサービス。SNSみたいにワークフローを投稿・コメントしたりシェアしたりできる。
- クラウドコンピューティングでアーカイブ
- マイクロサービス
- SWORD
- ワークフローとか自動化関連でよく使われるようになっている
- 日常的に使われるように?
- OAI-ORE
- 文学作品とかにOREの枠組みを使ってデータをまとめるなど
- 特徴的な発表技術の紹介
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- 図書館員の負荷軽減、研究者のワークフローに寄り添う
遺跡資料リポジトリの構築:中国5県域から広域連携へ(島根大学・加本純夫さん)
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- 電子化・・・報告書は本並に分厚いのが多いので工夫が必要
- Google Mapsで(発掘場所を)表示して一括検索可能
- 横断検索機能もある
- 本文もOCRかかってて全文検索可能。遺跡名はタイトルに出てないことも多いので。
機関リポジトリコミュニティの活性化-持続性のある活動のために-(大阪大学・土出郁子さん)
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- H21の活動予定
- 12/3-4 DRFIC2009(国際会議)
- 口頭発表、ポスターセッションを公募予定
- 公式サイト:http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/DRFIC2009/
- 11/11、図書館総合点でWS
- 地域WSもちょくちょくやる
- 12/3-4 DRFIC2009(国際会議)
- H21の活動予定
インターネット情報の収集制度化と蔵書のデジタル化について(国立国会図書館・川西昌大さん)
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- 蔵書のデジタル化
- H12からデジタル化を進めている。15万冊はネットで提供。
- H21.3に保存のための媒介変換をマイクロ⇒デジタルに移行すると決定。資料保存のためのデジタル化も権利制限対象に。
- H21の補正予算で約127億円がNDL所蔵資料のデジタル化についた*1。H12-21のデジタル化予算の9倍。NDL全体の年間予算の約半分の金額。
- 古典籍、1968年(NDLの書庫の区切り。NDCで分類してた頃のもの)までの図書、児童図書、戦前期の雑誌、学位論文、官報等。
- 学位論文は新しいところ・・・1990-2000の学位論文をデジタル化してはどうかと考えている。12-13万件くらい。
- 目的は原資料の保存と電子図書館サービス
- 戦前期図書、学位論文、古典籍はインターネットで提供予定
- 学位論文の著作権者の許諾取得は各大学にご協力いただくかも?
- 蔵書のデジタル化
質疑応答
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- ??:NDLへ。web情報の収集は古いバージョンも保存するということ? うちのwebサーバで「所長のメッセージ」が「所長のマッサージ」になっていたことがあったんだが、こういうのも残ってしまうの?
- 川西さん:普通の図書館資料も誤植は誤植のまま提供する。深刻なものはともかく、マッサージとメッセージくらいならそのまま提供する。
- ??:NDLへ。web情報の収集は古いバージョンも保存するということ? うちのwebサーバで「所長のメッセージ」が「所長のマッサージ」になっていたことがあったんだが、こういうのも残ってしまうの?
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- 一橋大・高橋さん:NDLへ。学位論文の著作権処理で各大学に協力を要請するかも知れないという話だが、人文系の学位論文の場合は出版物そのものが学位論文になっている場合もあり、著者だけじゃなく出版者にも確認する必要がある場合もある。どういう作業を大学がすればいいと考えている?
- 川西さん:今検討中。人文系で出版物として出ているものが学位論文になることは承知している。原則論で言えば出版契約しているものは著者が公開できないはずだが、著者がそう認識してない場合もあるだろうしチェックの工程はいるかと思う。どちらがどうやるかは今後の課題。
- 一橋大・高橋さん:NDLへ。学位論文の著作権処理で各大学に協力を要請するかも知れないという話だが、人文系の学位論文の場合は出版物そのものが学位論文になっている場合もあり、著者だけじゃなく出版者にも確認する必要がある場合もある。どういう作業を大学がすればいいと考えている?
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- 一橋大・高橋さん:ボーンデジタルな資料も最終的にNDLが保存するかしないかは気になるところ。機関リポジトリでボーンデジタルなものを預かっていて、ファイルが壊れたときの保険としてNDLが使えると有難い。紙の方は逆に言うと紙があるからもう1回作れる。ボーンデジタルなものもNDLに担保になって貰えると嬉しい。
- 随時バックアップを定期的にとるのが良いのか、何もしないで最後に預かるのが良いのかはそれぞれの大学によっても意見があるかと思う。今後協議をさせていただきたい。
- 一橋大・高橋さん:ボーンデジタルな資料も最終的にNDLが保存するかしないかは気になるところ。機関リポジトリでボーンデジタルなものを預かっていて、ファイルが壊れたときの保険としてNDLが使えると有難い。紙の方は逆に言うと紙があるからもう1回作れる。ボーンデジタルなものもNDLに担保になって貰えると嬉しい。
パネルディスカッション
コーディネーター
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- 逸村裕先生(筑波大学・大学院図書館情報メディア研究科教授)
パネリスト
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- 加藤さん:リポジトリの持続性確保と、経営陣へのアドヴォカシーを一緒にしたような話を。リポジトリを創る/育てる/知る/極めるとのテーマで機能から発表があったわけだが、持続性確保という点では・・・たとえば東北大でもリポジトリのサーバ保証期間が切れたが、今年度から教育情報基盤センターにリポジトリのシステムをやってもらうことになった。東北大の機関リポジトリは教育成果に力を入れたリポジトリとのことで、各研究科の博士論文の収集を始めている。教育情報基盤センターができる際に教育情報化のシステムを統合的に管理するという話があったので、機関リポジトリもそこに位置づけられた。
- 加藤さん:もう一つ安定的な維持ということだと、国立大学の第二期中期計画のところで東北大学機関リポジトリの整備充実が書き込まれている。学長のプランでも機関リポジトリの活用について書かれていて、それが中期計画につながった。制度面では(リポジトリは)大学から認知されている。ただ研究者からの理解はまだまだなので、そのあたりを中心にしてリポジトリの持続性確保とアドヴォカシーに努めたい。
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- 関川さん:非常に困っている。担当の者に出ろ出ろと言ってたのだがこんなことに。普段難しい話をメーリングリストでしている人ばかりだし、どうやって5分もたせたものか。
- 関川さん:図書館員って熱意を感じない静かな人種が多いが、機関リポジトリには熱意を感じる。しかし機関リポジトリは息の長い事業で、これからずっと続けていくもの。熱意は必ずいつか冷めるが、リポジトリは続けていかないといけない。大学教員の理解、執行部の理解、お金、いろいろな資源を投じていかなければいけない。これだけの熱意がある若い人たちの夢と希望と誇りを失わせないようなことを整えるのが管理職の端くれとして、具体的にはわからないが対外的な折衝も含めて環境を整えないといけないんだな、と。
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- 内島さん:アドヴォカシーと持続性の話をします。ここにいるメンバーのうち3人は国立大学図書館協会の総会で同じようなセッションをやってきた。そのとき何人かの先生から「リポジトリを先生に浸透させるには」という質問を受けた。OAの話とかしても理屈では分かってもらえても・・・となる。ただ、リポジトリのダウンロード実績等がだんだんわかってきて、利用実態を先生にお知らせすることが重要なのかと思う。えてして図書館職員は目録を作っておしまい、カウンターでおしまい、図書館は専門的であるという話でおしまいだったのが、リポジトリや電子ジャーナルの話で図書館職員は初めて研究者に図書館やオープンアクセスの話を説明するようになった。これはとても重要なこと。図書館は大学の中で、研究者との関係を強化して図書館やリポジトリの重要性を理解してもらうことが重要。これがリポジトリや図書館自体を持続する上で重要なんじゃないかと思う。持続性の具体例としてはログ分析の結果を先生に還元することが重要。金沢大でも論文の実績を送信するサービスをやりたいなと考えている。これはこれから5〜10〜20年、やめてはいけないこと。これがちゃんとできれば大学の管理者も図書館とリポジトリを理解してもらえると思う。去年アメリカに行った時にやっていることを聞いたが日本と同じことをやっている。国際的な話。2000年以降の図書館は研究者とどう対峙するかというフェーズになっていると思う。DRFをはじめ横のコミュニティは出来ているので、次を目指して、図書館の外に出るということで行政に働きかけることがあってもいい。学術振興会に科研について働きかけるとか。図書館職員の自立的なところにとどまらず出て行くことがこれから必要。
- 内島さん:リポジトリは楽しい事業。図書館でこれだけ楽しめるWSや報告会を年に何回も持てることは楽しく興味深いこと。それもコミュニティの役割かも。
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- 逸村先生:学位論文の収集についてとか誰かご発言は?
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- 郷原さん:小規模大は技術もないし技術者もいない。広島がやっているような共同のサーバでもかなり困難。NIIでPDFだけ用意すればいいようなシステムを作ってくれるとか。あるいなNDLで保存機能をしっかりしていただいて、潰れてもデータが保持できるようになるといい。
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- 関川さん:筑波大は比較的大きい大学だが、学位論文の許諾を取るのは大変。筑波でも大変なのに中小規模の大学に「許諾やれよ」って言われたって「知らねえよ、困るよ」って言われる気がする。そうとう工夫しないとなかなかうまくはいかないのでは?
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- 逸村先生:ではフロアで何かある方。
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- 川西さん:電子化はするが処理もしないし提供しないオプションもあるし、処理をして提供するのがいいというのもあるだろう。リポジトリの今後の維持発展にどうするのが望ましいのかも考えながらやっていきたい。
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- NII・安達先生:博士論文を10年分電子化するのはそれだけ見れば誰も反対できないいいことだが、サステイナビリティをどうする? 今後NDLに100億円もつくことは2度とないだろう。10年分だけやって「あとは大学で・・・」とかってんじゃあんまり。そこの展望を示すか、そこまで考えてコミュニティを作るかしないといけないのでは。また話を聞いてると違和感を覚えるのだが、電子化に使うのは税金。説明責任が重要で、NIIも相当気をつけてきたが、(NDLは)その点について能天気。国会図書館のような権威あるところがそうなのは本当に不思議。
最後の最後で一波乱ですが(笑)
あくまで自分が聞き取れた/理解できた/書きとれた範囲なのでニュアンス違うところもあるかも知れません、その点はご了承下さい。
これからもしばらくNDLの電子化関連は騒ぎが続きそうですが・・・「2度とないだろう」とまで言われるチャンス、なんとかうまく活かしたいってのは業界関係者の共通見解ではないかと思うのですが、さてはてどうなるやら。
交流会中、幾度か話題にもなっていましたがCSI委託事業(コンテンツ系)は引き続き第3期も行われるとのこと。
自分のエントリは発表の方のレポだけなのでいまいち雰囲気伝わらないと思いますが、米澤さんがすでに書かれているように*2日本中から機関リポジトリ関係者が集まる大変盛況なイベントであり・・・今後の継続にもぜひ期待したいところです。