図書館総合展が終わってすでに丸一日経ちますが、総合展レポートはもうしばらく続きますw
ってことでレポートもいよいよ大詰め第4段、昨年に引き続き図書館の貸出履歴の活用に関するフォーラム、「『貸出履歴を利用した新しい利用者支援の展開』リターンズ」ですっ!
ちなみに当日のやり取りについてはid:myrmecoleonさんもtsudaってらしたので、より臨場感を感じたい方は以下のmyrmecoleonさんのポストも参考に。
貸出履歴の活用についてはこの1年、国内では何も進んでいないのではないかという懸念と、一方で海外では色々進んでいるらしいと言うニュース(詳しくは本文参照)があるわけですが。
そこら辺の事情の整理と、国内でも地道に進めている人がおり、来年の2/13にはさらに進むかも・・・?! という希望(と、そこで駄目ならいよいよ駄目かもわからんねという緊張感)が伝わってくるフォーラムでした。
ますますプレゼンテーションに磨きがかかっていくid:milkyaのプレゼンにも大注目!!
ってことで以下、フォーラムのメモです。
耳に(ディスプレイごしなら目に?)タコかも知れませんが、min2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲でのメモですので、その点ご理解のうえご活用いただければ幸いです。
- 司会は筑波大学図書館情報メディア研究科・逸村裕先生
「貸出履歴を巡る失われた歳月を超えて:議論と実行、そして決断」(岡本真さん ACADEMIC RESOURCE GUIDE*1)
- 今日は煽り役としてお話する。
- 貸出履歴問題を巡る近年の略史
- 正確なものではなく記憶の範囲の話
- 2006年、INFOSTAの講演で図書館システムにおける貸出履歴の活用を提案
- 2007年、Project ShizukuがIPA未踏に。情報科学の世界で言えば、Computer Scienceの研究者になろうと思えば未踏取ってないとダメ扱い。特に作り手はそう言う世界。図書館システムでIPA未踏というのは実に歴史的なこと。CSの世界に図書館の名前を広げたということで表彰してほしいようなこと。
- 同年、Project Next-L開始。オープンソースで図書館システムを作る。そこでは貸出履歴も意識。
- 2008年、全国図書館大会で「Web2.0時代における図書館の自由」を議論した。下らなかった。ライブラリアンが馬鹿すぎる、図書館の中の理論に終始している。本当に腹が立った。図書館員は答えを最初に持っていて、考え方を変える気がない。そんなディスカッションはただの自己満足。
- しかし昨年、図書館総合展での貸出履歴の話。後退しかけたのがググッと戻ってきた。
- 私は貸出履歴問題に飽きている。もういまさらという気もするが、この3年を振り返ると喪失感と焦燥感がある
- 否定・無関心な姿勢の数々
- 教条的な思考停止派。図書館の自由を免罪符にする思考停止
- 理解する努力欠如派。「システム周りはわかりません」という人。一番許せない。私はプログラミングはわからないが、わかっていなくてもわかるようになろうとすればわかるようになる。3年間、CSの研究発表聞き続けていればわかる。それを、わかることを支援すべき図書館員が「わからないんですけど」とか言いながら思想的質問をするのは悲しむべきこと。
- 使命を忘れた理論派。守るべき規範はあるが、最終的にどういう社会を作りたいのか、どういう未来を作りたいのかがあってはじめて理論は意味を持つ。それを忘れて「理論的にはこうですね」というのはアホ。研究者になるならば実務家とは違うブレイクスルーをできるはずなのに。
- 役割放棄の輸入依存派。次世代OPACとか最近言われるようになったが、基本はまた海外ベンダのものを持ってくる話をしている。それっていいのか? すぐ外のものでなんとかしようとする。大学図書館なんて国民の税金でやっているのにそれを海外に資本移転するとか。旧帝大のような大学が考えずに輸入することだけを考えている、残念。
- 私としては残念な気持ちでいっぱいで貸出履歴に付き合ってきた。
- 否定・無関心な姿勢の数々
- システムにいちゃもんをつける前に・・・
- なんのための図書館でなんのためのライブラリアンか見失わないでほしい。「図書館って必要?」って外から問われることになれているのは異常。「検索エンジンいるの?」なんて言われたら私ならブチ切れる。怒る。ライブラリアンはなんで平静に受け止められるのか、なんのために自分がライブラリアンをやっているか考えられていないからではないか?
- ディスカッションすることは重要。なんでも実行することが常に正しいとは限らない、とりあえずやってみるってことは通用しないところもある。しかし図書館員はディスカッションのどこかで決断して実行することが必要。その後またディスカッションして、というサイクルを作る
- 今年はいい年
- 原田先生により貸出履歴を用いた推薦システム研究の発表
- 6月には成田市立図書館が「おすすめリスト」。小野さんのShizukuも法人化した。2009年は完全に失われた3年間を過ごしてきたことを思うと重要な年になるのではないかと思う。
- 本日への期待と希望
- 図書館とライブラリアンは建前論はもういいので、本来的なこと・本質的なことを。建前論は一切しないでほしい
- テクニカルな議論はいくらでも出てくるが、図書館政策とか図書館経営とか図書館法って、図書館専門から入った人の議論は底が浅い。そんなのはいいので自分たちはどういう世界を作りたいのか、そこにどう貢献したいのか。「〜法がある」って言うなら法改正すればいい。国立国会図書館はやるべきことを実現するために国立国会図書館法と著作権法を改正した。それが普通。
- 否定系から入っちゃいけない。今さんざん入ってきたが。皆さん否定されたら嫌な気持ちになるだろう。それが私がライブラリアンから3年間、受けてきたこと。しかしそれじゃディスカッションは始まらない。できない理由を考えるよりできたらどうなるを考えた方がいい。最後はこんなものはバランス、得られる成果とやらないことで守られる部分をどう判断するか。リスク管理の問題でもある。リスクなんて何かやれば当然ある。そこでリスクを言い立てるより、得られる果実をはっきりさせることから入ればいい。あらゆる図書館サービスについてこういう形でディスカッションが進めば今日は歴史的な日になる。
「図書館のレコメンド機能「おすすめリスト」の発想」(米田渉さん 成田市立図書館)
- おすすめリストとは?
- 借りた本、予約している本、今度読みたい本のデータから興味をひきそうな資料を提案するサービス
- 「今度読みたい本」というのは、コメントを付けてカートに突っ込んでおくようなシステム。予約ではなくいつか読みたいものを入れておく
- 図書館webサービス
- システム更新に対応して進んでいる。リースの更新ごとに変えなければならず、後は5年間変えられないというのは辛い。2007.3の時にはやりたいことを可能な限りいれて作った。
- 2009.5に「今度読みたい本」、6月に「おすすめリスト」公開
- 「おすすめリスト」の発想
- 図書館職員が持っているナレッジ(暗黙知)を住民とも共有できるようにしたい。職員がしっている「こういうのがあるよね」というのをシステムの中に入れ込んで、横断的に検索できるようにしたい
- レファレンスをしているとき、図書館員は件名や分類からも検索する。書誌情報よりもっと幅広い資料を紹介できることが多い。
- 書誌単位で持っている貸出や予約のデータを資料紹介に使いたい
- 貸出等の著者や件名・分類を抽出・再検索して図書館独自のものをソートして提示するシステムを考える
- 今はやりのレコメンド機能とは発想は異なる。「他の人の」という発想はない
- 実装方法
- 履歴保存を選択すると・・・
- 貸出履歴/予約している書誌/今度読みたい本/現時点のおすすめリストがデータに。
- 保存しないと履歴ではなく「今借りている本」になる
- 著者名、件名、分類を抽出してOR検索。重みづけを加えた貸出総回数等を合算した点数を与えて点数順にソート・表示
- 図書館・利用者による評価(資料に点数をつける)も反映する
- 重みづけの仕組み・・・貸出類型×3、総予約件数×20、・・・
- 履歴保存があると元データ数が増えるので幅が増える。過去に借りた本が候補から消える。
- 個人ごとに設定可能、途中でもやめられる、個人が完全に制御できる
- 利用者はMyページで利用の可否を選択。貸出履歴を保存するか否か。保存しなくてもリストは出来る
- 履歴保存を選択すると・・・
- 実際の画面を用いたデモ
- 課題と将来
- 9/15開始で、2週間で296人が登録。履歴なしは36人。11/4では452人登録。履歴なし74人。
- 導入当初はリストが更新されるたびに、リストがある分野だけになりがちだった。596(料理)とか、分類が荒くて本が多いところはそれだけのリストになるとか。
- 現時点のおすすめリストはいったん偏るとどんどん偏ってしまうので外している。
- 興味がないものの調整が効かない。リスト自体も、貸出がどれが多いか等も出したいと思って出したが、いわゆるレコメンドより優れているのか劣っているのか、お客さんが満足しているのかもわからない
- 個人の履歴を残している人については、見えないがDBには履歴がある。新着データも個人の嗜好をDBに残している。パーソナライズされたプッシュ型のサービスをやるというのはこの点の課題は持っている。
質疑
- 早稲田大学・高橋さん:一番気になるのは図書館評価点が×100になっている。全蔵書に点数つけたの?
- 全部につけるつもりは毛頭ない。今は未施行。市立図書館で定番の児童書が出版年順だと古いせいで下になるというのをなんとかしたいとか、蔵書構成グループで一部だけ点をつければ上に出せる。
- どのくらいのものにつける? どれくらい差をつける?
- 1・5・10くらいでやるつもり。
「Web読書履歴サービスの動向から見るProject Shizukuの未来」(小野永貴さん Project Shizuku*3)
- (min2-flyコメント:発表直前にリポビタンD飲んでいるww)
- 実はほとんどweb読書履歴については語っていない。レジュメ見ないでスライドに集中して。
- 去年の図書館総合展のアンケートで、「提供してほしい」とかいい評価をたくさんいただいた。
- 今年の総合展で何を話すのか・・・名古屋の友人*4に「去年と同じテーマで絶望した!」と言われた。僕もそう。なので全部刷新した。
- 去年の復習:3枚でわかるShizuku
- 名前の起源は「耳をすませば」。主人公の雫の名前を取っている。
- ストーリー超要約:貸出カードで自分と同じ本を借りている男の子を発見⇒結婚する
- 昔は本を介したつながりがあったが、今はない、どころか昨今は過剰な個人情報保護で出来るサービスもできない。今こそ楽しく便利なサービスを!
- H19に未踏を取った。半年間でシステム試作。
- Shizukuのシステムの説明
- (min2-flyコメント:こんなの文字で説明できるか! 自分のエントリとか参照:「L-1グランプリ2008 未来のスーパーライブラリアンは君だ」観戦記(遅ればせながら第34回ディジタル図書館ワークショップ感想) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか)
- 名前の起源は「耳をすませば」。主人公の雫の名前を取っている。
- 現状:貸出履歴に関する動向と事柄
- 現実的にどうサービスすればいけるのか?
- 海外の事例・・・ハダーズフィールド大学図書館が300万件の履歴データを一般公開。レコメンドデータも含めてクリエイティブコモンズで提供。「使って新しいサービスを作ってくれ」
- それを受けてJISCが履歴を活用したプログラミングコンテスト実施*5。10/21に結果発表、優勝は「Book Galaxy」*6。JISCは履歴の活用法を分類していて、出された作品を知ることができる。
- 分類の中身・・・資料の発見を促す(履歴の共有など)/学習選択を支援する(教育課程の推薦)/(図書館の)意思決定を支援する(コレクションの品質を測る)
- 日本の事例・・・IT業界全体、情報大航海プロジェクトで次世代パーソナルサービス推進コンソーシアム設立告知*7。昨日設立総会。
- パーソナル情報:購買情報、行動情報、位置情報、閲覧履歴、検索履歴。個人が特定されるかどうかは問わない
- 「そのような情報を活用することで新規市場の創出の可能性が高まっている。プライバシーの配慮がいるが、扱いが定まっていないので決めていこう」
- 制度、技術、サービスへの適用、実証、国際対応
- 日本でもパーソナル情報の利活用は進みつつある
- パーソナル情報:購買情報、行動情報、位置情報、閲覧履歴、検索履歴。個人が特定されるかどうかは問わない
- Web上のユーザの事例
- 現状のまとめ・・・個人の利用情報を有効活用するアプローチは普通。活用方法を考えるフェーズに図書館も入っている
- 未来:貸出履歴活用によるサービス展開の未来へ
- 具体的に履歴で何ができる?
- 活用形態(データ/サービス)と活用ターゲット(利用者/図書館)から4分類
- データ・利用者:過去の履歴の参照
- サービス・利用者:ブックリストやブックレシピの作成と公開。本によって生活のレシピが作られていく。図書館のアウトカム評価にも活用できる。利用者自身に何をやっているか発信して貰うことで図書館も使える
- データ・図書館:利用統計の把握、運営戦略の素材
- サービス・図書館:書籍の推薦、関連情報の推薦
- 活用形態(データ/サービス)と活用ターゲット(利用者/図書館)から4分類
- どうすればその未来が来る?
- 図書館自身が保存・管理し、利用者のコンセンサスがあり、データ交換のマッシュアップ、機能・サービスの充実・・・しかし非現実的
- 「前例がない」こと、活用した際のサービスの想像が出来ないこと。実感がわかないから面白みとメリットがわからない。使ってみないとわからないものを「入れてみる」ということにはならないが、それは悪循環。次の議論に進めない
- これでは来年も同じ話になってしまう。次のステップに行くべき
- 具体的に履歴で何ができる?
- 提案:今できることで、履歴活用機能を体験してみませんか?
- 完全なサービスを作るわけではない
- 今できることで、ある程度の利用者のでーたを収集し、活用してメリットを見てみる
- すぐに推薦などの機能を試してみることができる
- そんなシステムはできないか?
- 問題点1:図書館は履歴を保存できない
- 疑似的に履歴の一部が蓄積される仕組みを作れば?
- 「本棚サービス」とその本を入手した場所を登録できるような仕組みを用いれば、あたかも貸出履歴のようなものを作れるのではないか?
- 問題点2:履歴データを活用する機能を作れない
- 本棚サービスの中にあらかじめ履歴活用機能を組み込んでおく
- 履歴データが蓄積されると自動的に活用したサービスが
- 利用モデルの例
- 利用者は図書館で本を借りた後、家に帰ったら本棚に登録。最近の携帯電話は普通の本のバーコードも読めるので登録も簡単。その後、どの場所で借りたか登録。
- 図書館はサービスの図書館別ページを見ると状況を把握できる。何もしなくても自動的にプログラムが実行されて統計・推薦機能を試せる
- 完全なサービスを作るわけではない
- 2010.2.13にこれをShizuku 2.0として公開する!(2/13は小野君の誕生日)
- アドレスはhttp://www.shizuku.ne.jp。今日の資料もあげる
- ぜひこの試みを体験してみて!
- アカウント予約のフォームもあるので、興味がある人はやっておいて
- 最後に
- これは最終目的ではない。最終目的は体系だった議論の後に、業界全体が履歴活用の流れになりちゃんとガイドラインを作ってやること
- 体験することでメリットを把握した上で次の議論に進む
「貸出履歴をもとにした図書館の推薦実験」(原田隆史先生 慶応義塾大学)
- 最近、いろんなサービスが始まっていて、どんどん変わっているというお話だった。もうLibrary 3.0の話も出ている。サービスはものすごい速さで動いている。
- 履歴を用いたサービスについて何かやってみる。図書館の貸出履歴を用いて追跡サービスをやっている
- 推薦サービスそのものの意見
- 「推薦される本の質が違う」。推薦された本は、「他の利用者の状況がわかって非常に面白い」。他の人が読んでいる本には安心感がある。推薦理由も想像できるので満足の深さが違う
- 図書を重みづけしてやってみた
- わかったこと・・・一人の人の履歴をずっと使うよりも、1〜3年生の本はそれぞれ分けた方がよっぽど評価が高い。単純に履歴を使うのではなく工夫して使う。半年ごとに分けて推薦するとかなりの満足度、73%は興味のある本になる
- 単純に推薦するだけじゃなくてやってみるといろいろ面白い
- 他にも使えないか?・・・関連図書の提示システム
- 利用者データを残していいのか?
- 4〜5人まとめて、マスにして推薦しても大して差はなかった。個のデータを特定できなくしても推薦は出来る
- 推薦はデータ数がたくさんあった方がいい。今のデータをもっと増やせばよりいい結果が得られるかも知れない
- 協力して下さる方をたくさん募集する。履歴でも検索結果でもいい、APIを公開する。小野君にあわせて来年の2010.2.13に公開する!
ディスカッション
- 関西学院・井上さん:原田先生に。タイトルデータが欲しいとのことだが、こういうシステムの前提に複数大学でシェアすることは考えている? 公共や他の館主との共用は?
- 原田先生:データは多数ないと難しいので協力したい。それから図書館間の差は余りないので問題ない。公共はぜひやりたい、たぶん違う結果が出る。相互乗り入れはわからないがそれぞれの間ではできるのではないか?
- 大阪大・久保山さん:米田さんに。他の公共図書館に広げることは考えている? 米田さんががんばっていることが波及すればいい。それから大学図書館は遅れているので参考にさせていただきたい。
- 米田さん:パッケージ化されているので、そのシステムを入れるともれなくついてくる。
- お茶の水女子大・茂出木さん:原田先生に、何をあげればいいの? 小野さんに、個人的に参加したいが図書館で本を借りないと役に立たない?
- 原田先生:推薦する本のデータをいただける場合には、利用者が特定できなくていいから「ある人が借りている本は何、というデータ」。誰かはわからなくていいから区別がしたい。学部等のデータもあると最高だがそこまではなくてもいい。使って貰う側のデータは、ISBNを打ち込むと推薦するようなシステムを作るので、ISBNのリストを作ってもらえればそれでOK。
- 小野くん:図書館で借りない人のデータは役立つ。どこで入手したかにAmazonとかを入れていただいていい。選書に役立てたいときに、図書館で何かを借りる人が別のところでどう行動しているかのデータのインタラクションを取ることで図書館が買うべき本の情報として活用できる。ぜひご協力いただきたい
- 東北大・長神さん:履歴そのものなんてやっているだけじゃ図書館の人が中に閉じこもるだけ。どの講義を取っているかとか、どのサークルに入っているかまで含めたサービスに挑まなければいけないし、小野さんの話なら借りる本と買う本のわけかた等も考えないと。図書館の中だけに閉じこもっていると無理。
- 原田先生:できるところからやる。できればできるだけやるが、足場がなさすぎる。貸出履歴の分析さえない、失われた10年。そこを速いスピードで固めてそこにプラスαしないと。今、まとめてやってしまうことで、元のデータと次のデータ、どっちが間違っているか分からない。基礎データを集めるところ。
- 小野くん:同じ意見。技術的にはクリア可能。業界内のコンセンサスの問題。できることからやる
- 米田さん:公共も本当は買っている本の違いとかもあるとは思うが、図書館間を超えると所蔵していない本が出てきて、それが上位に出てきたりすると面白い。ただ足場を固めるとなると、成田はまずはここまでやりましたという感じ
- 岡本さん:長神さんのおっしゃる通り。こうやってトロトロしていると見はなされていく。私も待てるのはあと3か月くらい、2/13までに。そこまでに皆さんがどれほどコミットするか。Googleが図書館の本をスキャニングしたいのは図書館を評価しているから。図書館がその価値に気付かないで死蔵させるのはライブラリアンが本当にしていいことか? 今日は雰囲気いいし、あと一歩勇気を持って踏み出していこう。「うちでできる、うちではできないが類縁機関で出来る」という風にデータをお2人のところに集めてくれれば、小野くんからバレンタインのプレゼントがあるかも。
- 逸村先生:ランガナータンの「図書館は成長する有機体である」という言葉に対して「図書館は成長する墓地である」という言葉がある。そうならないために。
最初に思いっきり煽る(自らそういう役割を受けたことを宣言してもいる)岡本さんのプレゼンで入り、最後に長神さんから「履歴そのものだけなんてやってるんじゃ駄目!」という追加があり、とどめに逸村先生から「『図書館は成長する墓地である』という言葉がある。そうならないために」と〆られる、という・・・
Project Shizuku & 原田先生の履歴活用APIの同時公開である2010.2.13に何も起こせなければいよいよもってこの話はもう先がない(あわせていえば図書館界が変われる未来もない?)感じを印象付けるイベントでした。
換言すれば「要は勇気がないんでしょ?」というはてな的バズフレーズに至るのかも知れませんが。
「自分の履歴を使う」と言うことでは既に実践した成田市立の例があり*10、大学図書館での実験としてはすでに原田先生の例があり、技術的には小野くん自身開発し、また宣言もしているように既に履歴活用にとどまらず属性データと結びつけて扱うことだってクリア可能なテーマであり。
実際に自分の図書館の利用者の間でどれくらい需要があるか、逆に拒絶感はどれくらいあるか*11などなど、利用者の方向を向いた調査や検討、ディスカッションは今後もあっていいかも知れません(本当はそれすら、webに溢れるパーソナルな情報を用いたサービスの需要を見ていると不要なのかも知れませんが・・・Googleが検索履歴を活用していることに対してキレている利用者は何人いる? 逆に喜んでいる人は?)。
しかし図書館員の方を向いて、説得し、受け入れてもらうためのものならばもう不要でしょう。
図書館以外の状況と佐浦さんによる調査結果を見る限り、履歴活用サービスは運用を間違わなければ*12利用者に受け入れられて成功する公算はかなり高い。
もう材料はほとんど出揃っている。
もう議論するフェーズじゃない。
「業界内のコンセンサスの問題」と小野くんは表現しましたが・・・個人的には、もっと言ってしまえば、ことはすでに「誰がルビコンを渡るのか」、岡本さんの言葉を借りれば「決断して実行する」フェーズに入っていると思います。
誰かが動き、そしてそれが社会に好意的に受け入れられるのであれば、図書館業界のコンセンサスなんて待ってなくとも後続者が続々あらわれることは・・・そして動いたものが先導者として以後、界隈をリードすることになることはここ最近の業界を見ていれば予想に難くないです。
館界からいくら叩かれようが社会的に評価されりゃ大成功であるってことは最近の例(あえて名前はあげませんが)を見れば明らか。
では誰がその果実をつかむのか?
現在の最有力は成田市立、そして原田先生の実験参加館として、まだ今出てくれば先導グループにいられる、否むしろ次に出てきたものが今後の流れを決定づけるかも知れない。
そのポジションに入るのは誰か?
「もう付き合ってられない」とか「成長する墓地」とかどちらかと言えば危機感が感じられるような言葉もありますが、いやいや字面では伝わらないかも知れませんがここにあるのはいくらかの焦燥感と、むしろ圧倒的な高揚感であり。
今ならまだ、今やれば、今すぐにでも、新しい図書館界、否むしろ新しい社会/世界に向けての一歩を、あなたの図書館が踏み出せるかも知れない。
そんなテンションにさせてくれる、実に面白いフォーラムでした。
こう書くと図書館関係者しか関われないのかって感じですが、もちろん小野君の取り組みに興味を持ち、「図書館の履歴とかも使えた方が便利でいいかもなあ」と思われる方はぜひ(本文中にもある)以下のリンク先でアカウントをゲットして、2010.2.13に備えて下さいっ。
*1:ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版
*3:http://www.szk.co.jp/index.html
*4:この写真の右端の方ですね⇒図書館情報専門学群ニュース 小野永貴さん 未踏ユースに採択
*5:JISC、図書館利用者行動のデータを活用するプログラムのコンテストを実施(英国) | カレントアウェアネス・ポータル
*6:図書館の利用データを活用するプログラムコンテスト、優勝は「本の銀河」(英国) | カレントアウェアネス・ポータル
*7:http://www.igvpj.jp/index/report/post-61.html
*8:HugeDomains.com - Shop for over 300,000 Premium Domains
*10:そういう意味では、成田市立はすでに「ルビコンを渡った」状態にあるわけですね。やば、かっけぇ!
*11:このあたりは筑波大学図書館情報メディア研究科の佐浦さんが、web調査の結果を昨年の全国図書館大会で発表されています(404)。また、webではない利用者調査の結果も今年の日本図書館情報学会で発表されていましたた(こちらはwebにソースなし)。今後の成果のまとめに期待大です
*12:「資料汚損対策です」って言うとか、残したくない人の履歴まで残るシステムにしてしまうとか、システム自体がしょぼくて使えないとかセキュリティ甘々で情報ダダ漏れにするとか。最後が一番怖い、情報が漏れるとしたらシステム面ではなくソーシャルハックによるものでしょうしその点で運用が超重要