筑波大学図書館情報メディア研究科FD研修会「最新データに見る筑波大学の教育研究水準:情報学教育の新たな方向」(土屋俊先生/大学評価・学位授与機構)
気づくとめっきりブログの更新をサボってしまっていましたが・・・驚くべきことに2012年初更新!
皆さんあけましておめでとうございます(大汗)
更新をサボっている間に2007年2月にはじめた当ブログも5周年を迎えてしまいました。
最初は日記風だった当ブログも気付けばすっかりイベント記録ブログと化していますが・・・6年目もこの方針はそのままで行きます!
ということで、今回は大学評価・学位授与機構の土屋俊先生が当研究科(今は教員組織は図書館情報メディア系?)のFD研修会で行われた講演の記録です。
土屋先生は現在のご所属が大学評価・学位授与機構であることはもちろん、平成22年度の筑波大学の機関別認証評価で大学機関別認証評価委員会評価部会の委員もされていたとのことで、筑波大学/図書館情報メディア研究科・系(当時はなかったけど)についての示唆も盛りだくさんでした。
ちなみに筑波大学の大学機関別認証評価については下記のサイトから閲覧可能です:
以下、当日のメモ書きです。
例によってmin2-flyの聴き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモであり、ご利用の際にはその点ご理解いただきますようお願いします(公開OK、との許可は土屋先生からいだたきましたが、内容のチェック等はいただいておりませんので、正確性を欠く記述等がおおいにあるかと思います)。
お気付きの点等ありましたら、コメント欄等でお知らせいただければ幸いです。
- 今のようなタイトルでやってほしい、とメールがあった
- 「がんばります」と返信はしたが無理だったのでタイトルを全面変更する!
自己紹介
- 大学評価・学位授与機構・・・東京大学の定年が60歳だった頃、残り5年間の人の入れ替えの仕組みとして出来た
- 東大の定年が伸びるに従いその構造は崩壊
- (土屋先生は)60歳以前にここに移ることにした。自宅の側にあるので満足
- やること・・・学位授与には全くタッチしない/いわゆる評価事業の手伝いをするところ + 国際連携事業の手伝い
- 「日本の大学がこうなっています」、というのを一元的に海外に紹介する場所が日本にはない。役所として紹介する仕組みがない。文科省はばらばらに対応しているのが実態
- 手伝いだけではなく研究もしている。(土屋先生の場合)応用認識論をつくろうとしている
- 大学について考えることは知識について考えることとオーバーラップするので本業にしていいだろう、と考えた。今までの仕事とつなげられそう
-
- これまでの経歴・・・1970年代は院生、言語哲学等
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- 哲学の立場・・・哲学者がやることは哲学だ、という結論に
- 情報関係との付き合いは長いが、学問としては学んでいない?
- 1980年代の情報学はあるんだかなんなんだか
- コンピュータサイエンス⇒釈然としないうちに情報学へ
- 図書館情報学に対しては不満の塊
- 1998年に図書館長になって、1冊本を読みかけたところで「全く役に立たない」と感じる
- 以降全然、読まないで不満は抱き続ける/調べてみても基本的に何の役にも立たず困った
- 「役に立たないものはいらない」
- 1998年に図書館長になって、1冊本を読みかけたところで「全く役に立たない」と感じる
日本の大学評価システムの混乱
- 皆さん何度も聞いているはずだが聞いても忘れてしまうと思うので申し上げる
- なぜ忘れるのか?:日本の大学評価システムが混乱しているから
- 法律によるものとそうでないもの:
- JABEE・・・工学系では盛んに行われているが法律には拠らない
- 機関別認証評価・・・さらに2種類:
- 機関別評価(単位は大学)・・・1法人2大学なら大学を評価
- 専門職大学院に対するもの
- 国立大学法人評価・・・ここの一部(教育研究の状況について)で大学評価・学位授与機構が関わる
- 国立大学法人法の「通則法に準拠する」のところの脇に長く書いてある
- 認証評価機関はたくさんある(11機関?)
- 日本高等教育評価機構
- 大学基準協会
- 大学評価・学位授与機構
- 「認証評価」は本当はない? 「認証を受けた機関」による評価
- 7年間に1回受けろ、とは決まっているが受けなかったらどうなるかは書いていない/評価が悪いときどうなるかも書かれていない
- とにかくややこしい!
諸外国は整理可能
- こういう時には「アメリカとそれ以外」と考えると理解しやすい
- どっちでもキーワードになっていることは重要
- アメリカ
- ヨーロッパ
- 外国を見ると自然な感じ(中にいないせい?)
- アメリカより複雑な感じがする、というのは相当複雑だろう
- 大学評価の重要性は年を追うごとに増してくる
- オーストラリア・・・今学年度から大きな大学改革を実施
- オーストラリアでは留学生収入が国の輸出に大きな役割を占める
- 学生数を増やしたいが質の保証がいる/保証の仕組みがいる/従来より効率的な仕掛けを作る途上
- オーストラリア・・・今学年度から大きな大学改革を実施
-
- イギリス・・・来年秋から、9,000ポンド上限学費が始まる
- 基本的に学費はローン。大学を出て何年以内にどれだけ稼げるかの数字を大学が出せないといけない/公表しないといけない
- それに対する評価をどうするか・・・20年近い伝統を持つ評価制度すべてを書き換える作業中
- イギリス・・・来年秋から、9,000ポンド上限学費が始まる
- 高等教育を強化する、学生を増やすことが世界的な動向
- 増やせば質が問題になる
- そうなれば評価が重要になる
これからどうなる?
- 全然わからないが・・・国立大学の場合:筑波大学なら次は平成29年度、平成29年6月に自己評価書提出
- 平成28年の5月に現況分析のための資料を出すことになる(中期計画終了直後)
- ここの時間差をどう扱うか?
- より重要な点・・・平成29年度の認証評価では内部質保証が重視される
- 評価機関の評価に対応しているだけだとバレる。日頃からちゃんとやっているか?
- 米欧ともに最近ではlearning outcomesがブーム。やっておかないとまずい
- 直前には「やれ」と言われるはずだが、直前になったのでは遅い
重要なのは差分。去年はどうだった?
- 筑波大学は11の基準をすべて満たしている
- 1つでも満たしていない国立大学はない・・・国の資金でできている大学で設置の基準を満たさないとは考えにくい
- ましてや筑波大は新構想大+若干僻地にあるので基準に対して余裕もある
- 大きい大学は1〜2日で見きれない/案内されるところを見る+案内されるところが悪いわけがない
- しかし印象として・・・
- あまりに複雑な組織構造の問題。「世界最大の研究科」を誇られても困る
- 「筑波スタンダード」の部局レベルの徹底は?
- 平成24年度からの第2サイクルの基準・・・11⇒10に基準をまとめる
-
- 「透明性、内部統制、教員中心から学生中心へ」
- 大学基準協会の方の基準でも内部質保証について追加されている
- 内部質保証システムの有無は今後重要になる。すぐ言われる/言われなくても後で言われるはずなので慌てないように
- 「透明性、内部統制、教員中心から学生中心へ」
法人評価について・・・図書館情報メディア研究科の場合:
- 教育すべて「期待される水準にある」
- 質の向上度:「相応に改善、向上している」
- 研究すべて「期待される水準にある」
- 「期待される水準にある」・・・けっしてよくない/普通の点数の中では一番悪い評価
- 日本の評価制度ではプログラム評価が一切おこなわれていない
- 総合大学も短期大学も同じ評価になってしまう/プログラム評価ができないのは痛い
- アメリカではプログラム評価を職能団体がおこなって質保証を行なっている
- 図書館関係についてはもはや同業他者は存在しない・・・ように見えるところまで来てしまっている
- 同業間での評価はもうできない
- 職能団体による評価も・・・
- 普通の意味でのプログラム評価はできない状態になってしまっている
- 教育面の評価は日本の大学全体で模索中
- 平成28-29年度をターゲットに・・・けっこう大変そう?
- 前回より良くなっていないと・・・同じくらいでは・・・
- 教育に関しての項目が2項目くらいの大ぐくりになるので結果の点数も目立つ
- 平成27年度までに何か達成できればいい/4年あるじゃないか、と考えれば・・・
他方、大学ランキング:
- 文部科学省は非常に神経質
- 一面的/画一的な評価はよくない、と言いつつ大学関係者も見てしまっている
- アクレディテーション・・・「大丈夫」ということだけの保証/「どっちがいいか」はわからない・・・ジャーナリズムがランキングをはじめる
- アクレディテーションは大学同士、仲間の間での評価。「あいつら信用出来ない」と思われたらすべてダメになる綱渡り
- ランキング・・・素点をつけて重み付けをしている
- 筑波・旧図書館情報は類似のところがないのでランキングは・・・
個人的意見:お手盛り評価のすすめ
- 自分で基準を決めて自分で点をつける=内部質保証をするしかない状態に置かれている?
- やり方は色々、うんざりするほどある
- アメリカのlearning outcomesに関するリンク集・・・便利そうなので印刷したら100ページ(!)
- 資料はものすごいたくさんある。欧米に数日の長があり、やり方が色いろある
- 学会の資格認定制度との関連
- SS / Sをとれる人を呼ぶ? 手っ取り早い・・・外国の人を呼ぶのが早い
- 誰がいいかはElsevierのSciValで出せる! そういう手もある
- 「全部冗談ですから!」
重要なのは?
- 学習成果の定義
- 資格系の分野はふつう、学習成果の定義が楽
- 例:看護士・・・外部試験で評価される
- 司書資格・・・意味をなしていない
- 年1万人程度が資格をとるが数十人しか就職していない/使えない資格?
- 資格系だからと言って看護学部のようには学習成果を定義できない
- 資格系の分野はふつう、学習成果の定義が楽
- 研究面:「期待される水準にある」=S, SSが足りないから
- peer reviewでS, SSが出てくるか数える単純作業
- とりあえず傑出した業績という主張ができるもの=受賞したものがいる
- 賞を作る必要がある
- 社会貢献の項目はあるが評価が困難なのでpeer reviewerは躊躇する
- そうなると論文業績は残りそうだが、5年後には世界の論文の50%がOAになるといわれるようなどうなるかわからない時代
- なんとかしていただきたい
- 「傑出した業績がある」ことを主張し、それを客観的に示す仕組みが必要
- 本来学問がそうあるべきと思っているわけではない、とも主張しておきたい
- そうなると論文業績は残りそうだが、5年後には世界の論文の50%がOAになるといわれるようなどうなるかわからない時代
「情報学」顧客としてのお願い
- 使える研究成果が欲しい
ここでいったん、電話がかかってきたため会場を抜けていました・・・ごめんなさい
- 学生は十分、優秀にみえる
- 変に図書館のことを教えないで欲しい? 大学図書館はいずれなくなってしまいそう
- 賢いユーザがほしい。まともなパソコンオタク、以上の人が欲しい
- その上で常識がほしい・・・知らないことがたくさんある人が多い=図書館以外のことをできるだけたくさん教育して欲しい
Q&A
- Q: 内部質保証って何をしたら保証になる? わかりにくかった
- A: 認証評価では機関単位でしか事例を集めていない。大学評価室は認証評価等の対応部隊で、その時期以外は解散しているところもある。それはもうちょっと使いようがあるのではないか? 質管理のためには現状の把握が必要である。定量化出来るものは定量化し、そうでないものは質的な表現を定義して、チェックポイントを決めて毎年チェックする。それ実際の改善に活かすという、PDCAをやっていただくことが機関レベルの質保証。それに対しプログラムレベルはもうちょっと違う。プログラムレベルの根幹は卒業して出ていく学生の保証。ちゃんとした学生が出ていくことの保証が要る。どういう能力を持っているかを定義し、それをつけて出ていったかをチェックしていく、つけて出ていくためにはどのようなカリキュラムと事業計画が要るか、どういう実施体制・人が要るかのチェックポイントが出てくる。それによって卒業する学生が十分に満足し、より良く生活できるような方向を実現するため、不断のチェック体制を作る。多くの場合はお題目で終わってしまうが、実際にやればいい。今まではFDというとこういう風に人を呼んで話をさせることだったが、実際には今のような作業が重要で、それが真のFD。修了時にみにつけているべき知識と能力を定義してそれを身につける方策を考えないといけない。僕はこのタイミングで教員をやめられて良かったと思っている。言いたいことを言うだけでは納得してもらえない、努力していることを大学ごとにみせないといけない社会環境。
- やり方は分野によって変わってくると思う。看護士や医師は外部的に決まっているが、図書館は・・・司書課程は新課程でも30単位にみたない。残る90数単位で何をしているかを見せる必要がある。単位制は次の認証評価では変わっていないので、単位レベルでなにをやっているか。1単位15時間+自己学習をどうするか。今、中教審大学分科会では設置基準の変更まで話が及んでいるらしいがそれは後出し。どうやって自己学習を確保するか。そこを相当細かくやらざるを得ない。それが内部質保証の最初。それがチェックする、というところで研究科長だけでやるには大変なので、制度として作るのをどうするか。大雑把ですが。
- Q. 関連して。イギリスかアメリカで卒業生の収入まで話が及んでいたが、調べるというのは非常に大変。しかしいずれは日本もそういう方向性になる?
- A. 所属先と関係ない個人的な印象。イギリスの場合にはもともと学費は国持ちだったのが、返済しないといけなくなった。国はローン元にお金をわたし、学生は卒業後、ローン会社に返す。返せるかが重要な問題になる。日本は私立大学の学生が多くて、学生の納付金2兆円弱に2-3千億円の私学助成なので、もう民間払いになっている。親/本人が個別にはお金を借りているかも知れないが、民間の金融システムに組み込まれている。イギリスで動いたようには動きにくい。国立大学の場合は学費をどこまで上げられるか。今は1兆数千億の運営費交付金と学生納付金でやっている。学生納付金を倍にすればなんとか・・・(会場:ならない、ならない。全部ではなっても・・・)そう、理系は潰れる。文学部や法学部はちょっと納付金増やせば回りうる。私立はもう民間の流れがある。イギリスのようにはならない。
- Q. PDCAのCの1つというわけではない?
- A. ない
キーワードは「内部質保証」でしょうか?
何が質にあたるか、ということを内部で定めた上で日常的にPDCAサイクルを回す体制ができていることが重要、というのは図書館評価の文脈で聞く機会は多かったですが、そういえば大学全体あるいは研究科単位での話として(論/研究としてではなく身近な・自分が実践するものとして)考えることはあまりなかった、ような?
しかしそこが定まっていないとそれに貢献しようとする/できているかどうか検証することもできないわけで・・・どうなんでしょう、自分が知らないだけで先生方の間では固まっているのでしょうか・・・。
以前のFD研修会*2では学生も多く参加していましたが、今回は内容が内容だけに先生方が中心、かつ皆さん真剣に聞かれている印象を受けました。
自分も今は非常勤しか受け持っていませんが、この先なんとか定職を確保することができたら、次はこういう話についても考えながら教育活動に参加していくことになるんだよなあ・・・とか考えたり。
さて、先回りして次回更新の予告をしておくと。
来週は、こちらも土屋先生がモデレータとして参加されるSPARC Japanセミナー「OAメガジャーナルの興隆」に行ってくる予定です。
2003年,ブダペストオープンアクセスイニシャチブ(BOAI)はオープンアクセス実現のためのふたつの方策を提案しました。ひとつは,研究者が執筆論文をみずからインターネット公開する「セルフ・アーカイビング」です。 大学・研究機関が設置する機関リポジトリや,PubMedCentral 等の政府系アーカイブなどの形で発展してきています。もうひとつは,無料で利用できる電子ジャーナルを創刊し,そこに論文発表を行うというものです。そうした電子ジャーナルは「オープンアクセスジャーナル」と呼ばれ,現在世界で7300誌を数えます(スウェーデン・ルンド大学調べ)。
オープンアクセスジャーナルの出版には,商業出版社も参入し,近年では「オープンアクセスメガジャーナル」と呼ばれる従来の学術雑誌とは異質のメディアを生み出しました。こうした電子学術情報流通環境の急速な展開の下で,今後,学術コミュニケーションの姿はどう変わっていくのでしょうか。
今回の SPARC Japan セミナーでは,オープンアクセスジャーナルの代表的な出版団体のひとつである PUBLIC LIBRARY of SCIENCE (PLoS) から,PLoS ONE 誌出版代表の Peter Binfield 氏をお招きします。PLoS ONE は,2006年12月に創刊された自然科学全域を対象とするオープンアクセスジャーナルです。独特の査読・編集工程により,従来誌よりも素早く大量の研究論文を掲載することを特徴とし, 2011年には約14,000報の研究論文を1年間に出版しました。PLoS ONE の発展は学術出版界の注目を集め,2009年に "ALPSP Award for Publishing Innovation",2011年には "SPARC Innovator Award" を受賞しました。現在では,他の出版社,学協会からも PLoS ONE と似た特徴をもつジャーナルが創刊されはじめています。
本セミナーでは,こうした「オープンアクセスメガジャーナル」を中心テーマとして,オープンアクセス出版の現在と未来について議論を深めます。多くのみなさまのご来場をお待ちします。(当日は通訳がつきます)
PLoS ONEについては最近、トマトと中性脂肪の論文がニュースになって話題も集めていましたが、自分も日本の著者動向についての分析等を発表してきます。
自分が喋ってる時は記録のとりようがないのですが、他の皆さんのお話やパネルディスカッションについてはできたらメモをとってきたいと思います。
これから先はちょっと更新ペースを上げていくぞ、と決意表明したところで以下、次週!
*1:min2-flyコメント:講演中でオフレコ、とされていた部分は記述を抜いている場合があります