先週のエントリでも紹介した、SPARC Japanセミナー:「OAメガジャーナルの興隆」に行ってきました!
2003年,ブダペストオープンアクセスイニシャチブ(BOAI)はオープンアクセス実現のためのふたつの方策を提案しました。ひとつは,研究者が執筆論文をみずからインターネット公開する「セルフ・アーカイビング」です。 大学・研究機関が設置する機関リポジトリや,PubMedCentral 等の政府系アーカイブなどの形で発展してきています。もうひとつは,無料で利用できる電子ジャーナルを創刊し,そこに論文発表を行うというものです。そうした電子ジャーナルは「オープンアクセスジャーナル」と呼ばれ,現在世界で7300誌を数えます(スウェーデン・ルンド大学調べ)。
オープンアクセスジャーナルの出版には,商業出版社も参入し,近年では「オープンアクセスメガジャーナル」と呼ばれる従来の学術雑誌とは異質のメディアを生み出しました。こうした電子学術情報流通環境の急速な展開の下で,今後,学術コミュニケーションの姿はどう変わっていくのでしょうか。
今回の SPARC Japan セミナーでは,オープンアクセスジャーナルの代表的な出版団体のひとつである PUBLIC LIBRARY of SCIENCE (PLoS) から,PLoS ONE 誌出版代表の Peter Binfield 氏をお招きします。PLoS ONE は,2006年12月に創刊された自然科学全域を対象とするオープンアクセスジャーナルです。独特の査読・編集工程により,従来誌よりも素早く大量の研究論文を掲載することを特徴とし, 2011年には約14,000報の研究論文を1年間に出版しました。PLoS ONE の発展は学術出版界の注目を集め,2009年に "ALPSP Award for Publishing Innovation",2011年には "SPARC Innovator Award" を受賞しました。現在では,他の出版社,学協会からも PLoS ONE と似た特徴をもつジャーナルが創刊されはじめています。
本セミナーでは,こうした「オープンアクセスメガジャーナル」を中心テーマとして,オープンアクセス出版の現在と未来について議論を深めます。多くのみなさまのご来場をお待ちします。(当日は通訳がつきます)
「行ってきました」も何も発表者の一人である、っていう。
他の講演者のご略歴については上記リンク先をご覧頂きたいのですが、目玉は飛ぶ鳥を落とす勢いのOAメガジャーナル、PLoS ONEからお招きしたPeter Binfieldさんによるご講演と、パネルディスカッションでの激論でしょう。
ディスカッションではBinfieldさんの他に、最近PLoS ONEと同様の編集方針を打ち出した"Scientific Reports"を創刊したNature Publishing Group、PLoSと並ぶOAブランドであるBioMed Centralを抱えると共に同じくOAメガジャーナルSpringer Plus創刊を発表したSpringer、それに図書館・研究者の代表を交えて、エントリタイトルにも入れた"2020年には世界の論文の90%はOpen Accessになり、そのほとんどはPLoS ONEのようなOAメガジャーナルに掲載される?"かどうか等、大激論をかわされていました。
今回のセミナーは会場も大入りでしたが、より多くの方に知っていただきたい内容がもりだくさんでした。
PLoS ONEについてはこのブログでもしばしばエントリで触れていますが、それらの記事は長く閲覧され続けていまして、ここ最近ずっとこのブログに最もアクセスのある検索キーワードは「PLoS ONE」です。
それだけ注目されている/PLoS ONEについて知りたいという方が多いということでしょう。
というわけで例によって以下、当日のメモです。
例のごとくmin2-flyの聴き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモであり、ご利用の際にはその点ご理解いただきますようお願いします。
誤字脱字、事実誤認等、お気づきの点があれば、コメント等でご指摘いただければ幸いです。
それでは以下、まずはBinfieldさんをご招待するきっかけを作ったという杉田茂樹さんのご挨拶、ついで鹿児島大学附属図書館の西園さんによるオープンアクセスジャーナルの説明からです!
開会挨拶(杉田茂樹さん、DRF/小樽商科大学附属図書館)
- 今日のお題はOAメガジャーナルの興隆
- 私がこの言葉を初めて知ったのは去年の夏、インターネット上でPLoS ONEの資料を見て知った
- 年間10,000を超える論文を発行する見込みであるという。毎日何十本も査読して回している。どうしてそんなことが可能なのか?
- 図書館からはOAジャーナルは購読契約がない分、見えにくい。サービスメニューにも持ってこられなかった
- ここでOAメガジャーナルについて詳しく知りたいと思い企画
- 講演者について
- 最初に私がOAメガジャーナルについて知る機会になったPLoS ONEのBinfieldさんに加え・・・
- 類似の特徴を持つ雑誌を出したばかりのNPG、Springerの方も招いた。
オープンアクセスジャーナルとは(西園由依さん、DRF/鹿児島大学附属図書館)
- OAジャーナルの出版コスト負担について主に話す
- 2009年の完全OA論文の割合は7.7%であったという*1
- OA誌のコスト負担・・・
- APC:
- OA雑誌に投稿・掲載を認められた場合に支払う
- APCの比較・・・平均906ドルとの報告(Solomonほか(in press):http://www.openaccesspublishing.org/apc2/)
- APCの算定:
- 概念的には制作費用を算定して積み重ねる
- OAメガジャーナル
- 掲載論文が多い
- 広い領域をカバー
- 重要性・影響力は見ず科学的に妥当なら出版に足るとする
- 速い/効率的な査読
- 軽度の査読を補完する、出版後の論文評価システム
- PLoS ONE以降、色々な雑誌が出てくる
- カスケード査読に支えられる
- カスケード査読:
- OAメガジャーナル/カスケード査読の影響とは?
- 既存誌をすべて代替することはないだろう・・・すべてのモデルがすべてに適合するわけではない
- Natureのようなトップジャーナルは購読モデルがふさわしい?:費用分担
- 購読量の少ない雑誌はOAモデルが適している?
- 既存誌へはhybrid OAを導入、完全OAについては新雑誌を立てる傾向
- 研究者を引き込む出版社間の競争の激化?
- 既存誌をすべて代替することはないだろう・・・すべてのモデルがすべてに適合するわけではない
- OA誌の今後:
- 研究者の関心はどこにある?
- 投稿先の決定には・・・内容の適合度、査読の速さ、質・・・
- 雑誌の評価・・・Impact Factorが従来は重視されてきたが・・・
- ある分野における影響度の指標であってOAメガジャーナルにはふさわしくない?
- しかし研究評価や助成要件に使われることも
- APCとIF等の間には一定の関連?
- 一方で論文評価の変化・・・雑誌<論文、出版後の評価、評価者の変化・・・大学等は気にとめる必要がある?
- 持続可能性は?
- 研究者の関心はどこにある?
PLoS ONEにおける日本著者論文: 発表数、国際共著、助成金獲得数(佐藤翔、筑波大学図書館情報メディア研究科)
さすがに自分の発表はメモを取れないので(苦笑)、読み原稿つきでSlideshareにアップロードしたものを貼り付けます(リポジトリには明日、登録申請します!)
タイトルの通りの発表なのですが、日本の機関所属者を著者に含むPLoS ONE論文について、発表数や国際共著の状況、助成金獲得状況等を調べた、という内容です。
結論から言うと、発表数はだいたい世界における日本の論文の割合と同程度を占めていて、著者の所属や国際共著状況も同分野の他誌と大差なし。
一方で1論文あたりの助成金提供機関数は、PLoS ONEは明確に同分野の他誌より多かった・・・という内容です。
やはりAPCがかかることが影響しているのか、それとも「助成金もらったし成果なにか出さないと⇒査読速いしPLoS ONEだ!」ということなのか、は不明。今後の調査を要するところ、とお茶を濁すなど。
ちなみにご質問もいただいたのですが、助成金提供機関数はWeb of ScienceのFunding Agencyを調べる機能を使って分析しています。
「助成金数」でなく「提供機関数」なのはそのためです(どの機関からもらったか、は書いていてもグラント名まで書いていない論文の影響か、厳密な本数がわからないことがしばしばあるため。特に科研費)。
PLoS ONE and the Rise of the Open Access Mega Journal(Peter Binfieldさん、PLoS)
- PLoS(Public Library of Scienceについて:
- 2000年に設立、2003年の10月から出版活動を開始
- 非営利のOA出版社としては最大規模。Hindawi、BioMed Centralと並ぶ三大OA出版社で、唯一の米国に本拠を置くOA出版社
- 拠点はSan Francisco。他にイギリス・Cambridgeにも。全体で120の職員、うち100名は米国勤務
- 2010年から独自に採算を合わせられるように。主にPLoS ONEのおかげで若干の黒字経営
- OA雑誌を7誌刊行。ブログサイトもある。他にPLoS Currents、PLoS Hubs
- PLoS Biology、PLoS Medicine・・・生物分野。審査も最も厳格な雑誌
- Community Journals・・・平均的な雑誌と同程度の掲載基準
- PLoS ONE・・・今日の中心。2006.12に創刊。OAメガジャーナルの時代の先駆け
- PLoS ONEの編集プロセス
- PLoS ONEで一番興味深いところ
- すべての論文は査読を行う。ただし・・・
- 科学的な健全性のみ審査
- 極めて客観的なチェック。科学的に厳格か/倫理上の問題がないか/適切なレポートとなっているか/データに基づき結論が導かれているか
- 科学論文としての基準を満たすか/文献として使えるかだけ査読。領域における影響力やどれだけ進歩につながるか、といった審査はしない
- 影響力/科学の進展への寄与は主観的な判断が伴う
- それは出版後の評価で行えばいい
- 出版社としては科学論文としての最低基準を満たすかで審査
- 読み手、ユーザーが科学的な価値をスコアリングで評価できる仕組みを作った
- オンライン評価ツールを提供。読み手はそれを使って評価できる。「出版後評価」
- カスケード査読モデルについて
- PLoS ONEはカスケードを採用していない!
- 他のジャーナルで振られてきたものもあるが、それは全体の掲載数の5%にも見たない
- 独自調査によれば、「最初にPLoS ONEを選ぶ」著者は40%を超えている。
- 第一、あるいは第ニが全体の73%。最初にPLoS ONEと、トップでリジェクト⇒PLoS ONEを合わせると全体の70%に及ぶということである
- 最初に申請してrejectされた先はNature、Scienceなど極めて審査の厳しい雑誌。
- 掲載プロセスは非常に満足・おおむね満足があわせて89%で、おおむね満足して貰っている
- PLoS ONEはカスケードを採用していない!
- PLoS ONE論文掲載数の変化:4半期ごとに
- 2010年には論文数6,700。世界最大のジャーナルに
- 2011年には約14,000の論文。PubMed全体で年間100万論文くらいなので、うちPLoS ONEが1.5%を占めるということに
- 特に急激に伸びたのは2010年以降。Impact Factorがついたので急激に伸びた
- Impact Factorは尺度としてふさわしくないと主張してきたのだが、はからずもIFがついたのをきっかけに投稿してきた人が多かった
- OAメガジャーナルの特徴とは?
- OAメガジャーナルの利点:
- 1つの大きな雑誌に論文が集まるので、200の異なった雑誌がある場合等に比べてIndexingの手間がない
- 著者にとって・・・reviewは1回で済む/勘弁
- 規模が大きい=注目される/利用・引用度も高まる
- すべての領域をカバー/領域ごとに別の雑誌を選ばなくて良い
- 出版社にとって・・・すべての活動を一本化できる/マーケティングやTwitter利用等、すべて「PLoS ONE向け」としてできる
- 規模の経済:効率良い運営
- 論文数の上限がない/必要なだけ大きくできる
- 従前のような、フィルタをかけて掲載を限定的に選ぶモデルはリソースがない時のもの。不必要にしぼめる必要がなくなった
- 著者にとっても論文掲載の手間が少なくて済む
- 規模が大きいジャーナルなので、査読や出版のあり方の「標準」を提示する役割を担いうる
- PLoS ONEの成功を受け・・・多くの"clones"の誕生
- APC比較。PLoS ONEは1,350ドルだが、その近辺に集中
- 中でも4つの興味深い雑誌:
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- Scientific Reports・・・Natureが出しているから(笑)
- 名前にNatureが入っていないが、NPGのブランドは明らかに影響している
- Scientific Reports・・・Natureが出しているから(笑)
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- Springer Plus・・・組織の規模の大きさがポイント
- Springerは2,000のジャーナルを持つ。不受理となった論文を回せる規模
- 価格がPLoS ONEよりやすいことも注目
- Springer Plus・・・組織の規模の大きさがポイント
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- TheScientificWorldJournal:Hindawiの雑誌
- 従前は購読誌だったが、Hindawiが2011.9に買収。OAメガジャーナルとした
- Impact Factorがついていた雑誌である。PLoS ONEの論文数推移からも明らかなように、IFのある/なしは非常に影響する。他の新規OAメガジャーナルにはまだついていない
- TheScientificWorldJournal:Hindawiの雑誌
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- SAGE Open:社会科学分野の雑誌である
- 社会科学分野でOA雑誌は少ない
- APCも約700ドルと非常に低く設定されている
- SAGE Open:社会科学分野の雑誌である
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- PLoS創設者:Harold Varmus曰く:
- 「PLoS ONEは非常に多くの論文を集めたものだ。それらの論文は学術的な質から吟味されたものであるが、どれくらい重要か、ということで集めたものではない」
- PLoS ONE clonesでも同じことが言えるだろう
- PLoS創設者:Harold Varmus曰く:
- 掲載論文の重要性はどう図るのか?
- 色々ありえる
- 学術論文での引用回数
- 利用回数
- ソーシャルブックマーキング
- コミュニティ・レーティング・・・5つ星での評価機能
- メディア/ブログでの言及状況
- 色々ありえる
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- それらを踏まえて論文単位での指標を用意
- すべての論文に「metrics」タブがあり、個別に指標が見られる
- 利用状況:月単位での利用回数(PubMed Centralでの状況も見られる)
- 被引用数:4つの引用回数カウントサービスの数字が出てくる
- ソーシャルネットワーク:CiteUlkike、Facebook、Mendeleyの言及回数。ここにTweet回数も近日中に追加予定
- ブログからのトラックバック機能
- 星による評価機能/コメント・ディスカッション機能
- 正直、この2つの機能はあまり使われていない
- それらを踏まえて論文単位での指標を用意
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- これらのデータはディスカバリツールに利用している
- 「もっとも読まれている論文」や「引用の多い論文」に対して詳細検索ができる
- これらのデータはディスカバリツールに利用している
- OAメガジャーナルへの(答えのない)質問:
- Impact計測の可能なより良いツールは開発できるのか?
- PLoS ONE掲載論文が全学術論文の3, 5, 10%と増えて言ったら、それは1つのジャーナルと言って良いのか?
- 所属組織全体より多くの論文を出すようになると、母体である組織とどうやっていくのか?
- PLoSにとってはPLoS ONEが将来のあり方、と考えているが、各clonesは同じように考えてやっているのか?
- これまでと同じ勢いでPLoS ONEもclonesも成功していくと、100を切るような大型のジャーナルが学術論文の全体を扱うようになるのか?
- 25,000を超えるジャーナルのエコシステムはどうなるのか?
- C&RL掲載のLewis, Davidの論文・・・2017年までに全論文の50%、2020年までに90%はOAジャーナルで出るようになる?*2
- 将来予測:限られた数のOAメガジャーナルが多くのOA論文を提供するが、影響度ははからない
- まとめ:
- Impactの要素と技術的な評価を別にして査読することはできる
- 出版後に使えるメカニズムを使うことで、各コンテンツを強化することの重要性
- まだ実証されていないのはそれらのmetricsが実世界でどれくらい使えるのか
- Clonesも出てきて、PLoS ONEも成功していて、OAメガジャーナルはすぐにはなくなりそうにない
- この成功が今後も続き、clonesも成功していくなら・・・出版界の状況は劇的に変わる
- 25,000の雑誌のうち、本当に要るのは100誌くらいになるのかも?
- 多くの関係者にとっては恐ろしい未来図かも知れないが、研究内容のcommunicationや研究それ自体はより促進されると考えている
質疑応答
- Q1. NPGの方。まず質問。IF付与後、掲載率は減少している。その前は3分の2の論文が掲載されていたのに、IFがついてからは50%に落ちている。これは科学領域全般のジャーナルとしての傾向?
- A. 正確には、IF付与前は71-72%の掲載率だったが、付与後は4%前後落ちて67-68%になっている。投稿数と掲載数の差だが、ジャーナルが大きくなって査読に期間がかかることの影響もある。とは言っても、掲載率が下がっているのも確か。特に中国の論文の申請を受け付けだしており、その掲載率が従来と異なることが全体での差に。
- いつもこの質問を受けるのでスライドも用意してある。単に出版できない、という理由での却下率は30%前後。出版にふさわしくないものを排除した結果として3割リジェクト、ということになった。
- A. 正確には、IF付与前は71-72%の掲載率だったが、付与後は4%前後落ちて67-68%になっている。投稿数と掲載数の差だが、ジャーナルが大きくなって査読に期間がかかることの影響もある。とは言っても、掲載率が下がっているのも確か。特に中国の論文の申請を受け付けだしており、その掲載率が従来と異なることが全体での差に。
- Q1. 引き続きNPGの方。出版後に影響を評価するとのことだが、出版後のレビューが査読に替わることはありうる? ご見解があれば。
- A. PLoS ONEとしては当初、こういった尺度を査読に使うといった誤解を与えてしまった。ALMは査読には使わない。あくまで現時点においては、出版後の評価に使うもの。将来的な方向としては、科学的な基準で掲載受理を判断するのではなく、さらにゆるい基準で受け入れて、出版後の評価を重視できるか、ということも実験的に検討中。ただしどうなるかは今後の状況次第
- Q2. フォルテサイエンスの方。非営利のOAであるPLoSだが、他の出版社から出てきたclonesは収入源確保の点から脅威と捉えているのか、それとも歓迎しているのか。
- A. PLoSとしては歓迎している。NatureがOA版を立ち上げたというときには、このモデルが受け入れられたと歓喜した。OAが全体として広がることにはずみがついた。当然、OAの中での健全な競争も大歓迎。PLoS ONEだけでは不健全である。競争し磨き合うことが健全。他の出版社のOAについても支援していて、他の出版社でOAをうまくまわすための講演をしているくらい。
- Q3. 学会出版の方。ONE以外の各PLoSジャーナルとの関係についてはどう考えられている?
- A. まずcommunityジャーナルはOA雑誌のモデルが自律的に運営できるかを試すために立ち上げられた。4誌、どれも独立採算がとれていて、月に50本ほどの論文を出している。小〜中規模でじゅうぶんやっていけるモデルであった。ただ、そのモデルが世界を変える影響力を持つには、それが25,000に増えないといけない。BioMed Centralはそれを300-400にするアプローチをとったが、PLoSはPLoS ONEをとった。Communityジャーナルはもう立ち上げ予定はない。
- Q4. 研究機関の図書館の方。APCは雑誌の掲載論文数に影響しないとのことだったが、人件費やインフレの影響等、制作費以外の部分は上がるはず。それに従ってAPCは上げるのか? 伴って研究費全体も増えていないと賄えなくなるが・・・
- Q5. 大学の方。最初の質問に戻るが、PLoS ONEは創刊当時は査読にチャレンジするポリシーだった。今は査読を採用して、今後も査読は正しく機能すると仮定して規模を大きくする予定?
- A. いい指摘。査読の形として、影響力を見ない以外は、PLoS ONEも従前の形をほとんど踏襲している。査読に挑戦するというお題目を掲げた割に、トーンダウンしたことは否めない。ただ、編集の組織としては3,000名ほどのacademic reviewerがいて、その意向や、世の中での受け入れの状況も見ながら進める必要がある。すべてに挑戦して逆風の中で進まない、というのではなく、受け入れられるところは受け入れてやろう、ということ。そういった意味では当初の過激な目的はPLoS Currentで実現されているとご理解いただきたい。
- Q6. Oxford大学出版局の方。2020年には90%の論文がOAMJとなると、お金の有無で発表の可否が決まらないか? 著者料金はどう決めている? ディスカウントプログラム等はある?
- PLoSは非営利。ミッションを持ってやっている。相手がどういうところであれ、なんらの事情で料金免除を願うなら理由を問わず受け入れている。すなわち、PLoSの信念は支払い能力≠出版能力。ただ、現実には90%以上の著者が正規料金を払っている。しかしより広い意味でご質問について考えると、すべてこのモデルでいくかは・・・他の方の指摘にもあったが、APCと言っても色々レンジがある。様々な選択肢が可能といえよう。
- ディスカウントについては払えない/免除の申し入れがあれば認めている分、採用していない。
- Q7. 著作権団体で働いている。OAの場合、インターネット上で論文が見られるわけだが、著作権にかかわらず無断でコピーされやすいイメージがある。OA雑誌の場合、著作権収入はどう考えている?
- A. PLoSはクリエイティブ・コモンズのCC-BYライセンスを採用している。商用目的を含んで自由に複製ができる。著者はこの条件のもとで著作権を持っているが、誰でも自由に再利用ができることになっている。論文について再利用する人は、著者が誰かさえ出せばいい。そのため著作権由来の収入は殆ど無い。コンテンツ自体が無料で入手できるモデルなので、そういった利益はあがらない。
- Q7. 米国の場合は著作権処理団体があるが、そことの関係も一切ない?
- A. ない。
- Q8. 図書館の立場から。今日は出版社系の方の食いつきが凄いが、図書館はOAメガジャーナルにおいて何か役割があるのか焦っている。ディスカウントの話があったが、機関で契約してディスカウントするビジネスモデルはない? 機関が所属者のauthor payをまとめ払いする代わりにディスカウントするとか。それから、promotionをする必要は感じている? あるとすれば誰に対して?
- Q9. フォルテサイエンスの方。カスケードモデルについて。雑誌でもっと多くの論文を集めようとする動きに見えるが、それがジャーナルのreputation(評判)に影響するようなことにならないか。
- A. 「私のやっている雑誌は他で不受理の雑誌を集めている雑誌です」とするのは危険。カスケードの一番下には誰も出したいと思わない。それによってブランドの毀損にも至る可能性もある。だからこそNatureはNatureの名を関せずScientific Reportsを出した。少なくともPLoS ONEの関心はそうならないこと、他で受理されなかった論文を集めて出す場にならないよう、最初に選ばれる雑誌になろうとしている。同種のジャーナルを出す方にも同様にすることを進めたい、カスケードモデルはおすすめしない。
休憩
パネルディスカッション
- モデレータ:土屋俊先生(大学評価・学位授与機構)
- パネリスト:
- Peter Binfieldさん
- Antoine E. Bocquetさん(NPG Nature Asia-Pacific)
- 山下幸侍さん(シュプリンガー・ジャパン)
- 大澤類里佐さん(DRF、筑波大学附属図書館)
- 安達淳先生(国立情報学研究所)
- モデレータ・土屋先生から:ディスカッションの流れについて
- Binfieldさんのお話だけでもディスカッションになっているが・・・。OAメガジャーナルについては色んな角度から議論しうる。そこで最初は、本人たちはそう呼ばれるのは嫌かも知れないが、PLoS ONE "clones"を出された皆さんのお話を伺う。次に、この状況は図書館にとって面白いチャレンジとのことだったので、筑波大学の大澤さんに図書館を一身に代表して答えていただきたい。その後、この一連のOAに関する動きの中心にいる、NIIの安達先生から、特にプレゼンテーションはないとのことだったが質問をいただく。
「Open Access Publishing at Nature Publishing Group」(Antoine E. Bocquetさん)
- NPGのOAに関する動きについて
- Peterさんのお話は興味深く聞いた。Natureは古株、参入障壁の下、IFにこだわり変化を拒む140年来の存在と捉えられていたわけだが、そのあたりについてお話したい
- しかしNPGはOAについてはリーダーとして活動してきた面もある
- 2005年にNPGはOAアーカイブ版をNIHのPubMed Centralに入れる取り組みをしたし、author versionもできるようにしている
- 同時期に最初のOA雑誌であるMolecular Systems Biologyを出しているし、HybridモデルのEMBO Journalも出した
- 2007年にはクリエイティブ・コモンズライセンスもHybridジャーナルに導入
- 2010年現在、ソサイエティジャーナルはほとんどHybridモデルを導入
- Nature Communications:Natureの名前を冠した初のHybridジャーナル
- そして2011.7にScientific Reports
- Nature Communicationsについて:
- Peterさんの定義だとメガジャーナルの資格はない・・・厳格な査読/セレクションプロセス。精査している
- Impact等影響も考えて査読している。Nat. Com.にはプロフェッショナルなEditorもいて、高品質なものを受理する。科学的健全性だけではない
- 質は中の上。IFが10〜20を目指したもの。現在の掲載率は20〜25%
- 実際には他のNature雑誌からカスケードするモデルをとっている。社内用語でPSing。却下のレターを出すときに「PS...」と追記している(会場で笑)
- ただしPSingしたからってNat. Com.に載るわけではない。掲載率は却下された雑誌と同程度
- 編集プロセスも査読方針も他のNatureシリーズと同じだが・・・
- 特徴:幅広い学術領域から論文を受付ける。Nature本誌以外では唯一。月に400の投稿
- うち多くは生物/Biology領域で、著者の約半数はOAモデルを選択。BiologyではOA選択率55%。化学は34%、物理学43%
- 特にアジアで特に広く受け入れられている。投稿数はアメリカの次には日本、3位が中国。受理数も多い。投稿数は年々増える
- 特徴:幅広い学術領域から論文を受付ける。Nature本誌以外では唯一。月に400の投稿
- Scientific Reportsについて:
- なぜ"Nature"を冠さないのか。必ずしもScientific Reportsは"Nature"に関わるものではなく、幅広い分野を扱うから。そちらを強調したい。社会系も含め、影響力も多岐に渡るものが欲しく、"Nature"はあえて外した
- まさしく「メガジャーナル」。簡便・迅速に出版ができる媒体で、特徴もかなりPLoS ONEに似ている
- Editorial Advisory BoardやEditorial Boardがあり、そこが中心に査読を行う
- Nat. Com. とは違い、プロフェッショナルなEditorはいないし、Impactの評価も行わない
- そうすると、他のメガジャーナルとどう差別化するのか?
- 一番大きな点はnature.comのプラットフォームの上に成り立っていること。nature.comは優れた、評価の高い研究者コミュニティ
- 国別の投稿数・受理数
- ごく初期段階だが、日本・中国は米国に次いで高い件数
- Peterさんのグラフと比較すると面白い。どの地域で強いか、ローカルごとに競争するのもメガジャーナルのやり方の一つ
- 最後に:NPGはOA出版について様々なオプションを用意している
- 2012年には12の完全OA誌、44のHybridオプションを提供する
- Natureが140年の歴史を誇るのは、いろいろ新しいことに取り組んで何がうまくいくか試す姿勢を示してきたからと思う
- OAの世界ではNat. Com.が非常に厳しく、Scientific Reportsがメガジャーナル。間にも幾つもの雑誌がある
- 特に2009年以降はOAのみのタイトルを出していて、パートナーとの熱心な取り組みもある。日本やアジアでもOAのみの雑誌が多数ある
- one-fits-allではなく、メガジャーナルが選択肢の一つに加わった。学会や研究者グループごとに嗜好があるだろう。OA誌は選択の幅を広げる
- その中でNatureやNature Geneticsがどうなるか?
- 「答えはありません」、以上です
「Springer Plus:a Springer Open Journal」(山下幸侍さん)
- Springerグループ・・・2,000の雑誌を持つ、三大出版社の一役。180近い雑誌があり、Nature同様進化してきた
- 1つのモデルが絶対、ということはない
- 2,000の中には280のOAジャーナルがあるし、2,000全部いわゆるHybrid
- Springer Japanでは70の学会誌を出している。その70すべてが5年後にメガになるとも考えにくい。それぞれにそれぞれの目的がある
- SpringerにおけるOAの比率:
- PLoS ONEの予想とは違う。新しい領域ができると新たらしい学会ができ新しい雑誌を出す。それは終わるまい
- 年々、OA比率は増加。2012年は20%くらいを予想。まずますの数字?
- メガジャーナルが全てになるとはSpringerは考えていない
- Springerは著者が求めるものを出す。Springer PlusはClone? いいじゃないか、いいものは真似する
- PLoS ONEの予想とは違う。新しい領域ができると新たらしい学会ができ新しい雑誌を出す。それは終わるまい
- BMCの場合:
- Plusはまだ出ていないので参考に
- BMCへの日本からの投稿・・・確実に伸びる。Rejection rateは50%以下
- Springer Plus:
- 本当にアナウンスしたばかりで何も情報が集まっていない(笑)
- メガジャーナルなのでPLoS ONEとほとんど変わらないが・・・
- カスケードの先になるとは思っていない。年間13万件の論文をrejectしているが、Springerの雑誌の多くは学会誌。各学会の了解がないとカスケードはできない
- カスケードをしないわけではないが、単独で1つの新しいジャーナルとして育てていきたい
- まだ始まったばかりだが来年の今頃には何か話せるのではないかと思う
- 現在はwebページ公開中。興味があれば中をごらんいただければ
出版社からのプレゼンについてディスカッション
- Binfieldさん:非常に健全な競争精神の発露と見ているし、新規参入は歓迎する。ちょうどそういう動きが始まったところで、他の出版社でも実験ということで出てくるだろう。PLoSは将来はこちらの方向にあると思っている。
- メガジャーナル台頭について終末論的な話もしたが、世の中に25,000ジャーナルがあり、中には非常に良い仕事をしているところも多い。マーケットにおけるしかるべき位置があることは我々も認めている。ただ、それらのシェアとしては20%くらい、というように限られた規模になると見ている。
- 土屋先生:そのBinfieldさんの預言、2017年に50%、2020年に90%がOAになり、それはほとんどメガジャーナルによって実現するという。かなりすぐわかる預言だが、それに賛成/反対か、皆さんに聞きたい。理由も添えて。
- Bocquetさん:大変面白い質問。この意見はNature関係者ではなく研究者の意見だが、研究者に必要なものとして、
Natureでメガジャーナルを2-3出してくれればいいとも言うNature、Science、Cellの3誌だけあれば、あとはメガジャーナルだけでいい、とも言う*3。Peterさんによるとメガジャーナル以外はマーケットの10%くらいになるとのことだが、それはNPGにとってちょうどいい。Natureが狙っているのはトップ2-3%だけで、あとはうちのメガジャーナルで担えばいい。しかしそれは終末論の後の世界。当面は学術研究が進むに連れニッチが出てきて、その需要をどう埋めるかということになる。それに応えるフィルタリングが現在、学術出版会がやっていること。IFは各論文の質よりはpopularityを見ており、価値を見ているわけではない。数が絞られるというのは2020年よりもっと後のことではないか。そうなると少数のジャーナルで占めるのかも知れないが、そうなると新たなコミュニティがプラットフォーム上にできることになるのではないか。研究者とはそういう風に動く。ただ1つ明確に言えるのは、OAという情報のあり方は今後、確実にある位置を占める。すべての出版社が生き残るためになんらかの形でOAを手がけざるを得なくなる。
- 山下さん:社内で同様のディベートが良くある。BioMed Centralの社員はPeterさんと同じようにいうし、Springerの大多数、学会パートナーは「ありえない」という。どちらに転んでも良い用意はできている。社内リクルーティングもしながら。
- 土屋先生:細かいが1つ伺いたい。学会の存在はこれからも重要であろう、というのはNPGとSpringer共通。学会との関係はメガジャーナルではどうするのか? 学会の出版機能を駆逐してしまうのか?
- Binfieldさん:学会誌にも選択肢は幾つかある。学会自体大規模なら、米国物理学会級の規模があれば、自らメガジャーナルを立ち上げることもできる。実際、物理学会もそういう動きに出たし、アメリカ遺伝学会等も同等の規模がある。クリティカル・マスとしての規模があるなら自らメガに取り組む選択肢がある。また、コミュニティとして、純粋に付加価値を提供するという点では、存在意義は残り続ける。ただ、正直に言って、学会の多くは会員との関連性を強く持たず出版をしている。会員への付加価値として評価されていない。そういう学会誌には将来性はないと考えている。
- 土屋先生:せっかくなので預言について大澤さん、安達先生からも。客観的な立場で。
- 大澤さん:預言について何かは言えないが・・・研究者、先生方を見ていると、ジャーナルではなくアーティクルを読んでいる。大きなブランドはジャーナルではなく会社になりうるし、その中にたくさん論文がある未来はありうる。あってる・間違っているはわからないが・・・学会の存続については色んなあり方があると思うので。玉虫色の答えになってすみません。
- 安達先生:今日のお話は考えさせること。正直なところ、何を話すか困っているが、はっきり言えることから。私はComputer Scienceの研究者なので、Society Journalしか見ていない。IEEEやACMの出版活動の中で極めてハッピーに生活していて、page chargeを出すのも当然と思っていた。全部ただで済むSpringerに違和感を感じた。最近、ACMのメンバーと話したら、学会活動もほとんど出版活動になっていたという。何を言いたいかというと、PeterさんのPLoS ONEの著者のSurveyは面白いが、これはどういう雑誌と比較したのか? 研究者は深いことを考えないので良い雑誌について研究者としてのトレーニングの中で身につける。カスケードモデルについては非常にショックを受けた。昔はトライアルな結果をまず下に、上がってきたら上に・・・という話だったが、カスケードは上から下に降りていく。機能的で生産性の高いモデル。競争の激しいところでは喜ばれるだろうが、年配者には驚きだった。で、元に戻って、今日のお話で問題の本質かと思ったが、雑誌出版の確信は研究者・研究の評価に近付いて来た。CSではOAかどうかに関係はなく、図書館ががんばってくれたおかげで大学の中で普通に論文が読めて幸せに暮らしてきたが、評価メカニズムの中でメガジャーナルに研究者はどう反応するのか。これから一番、おもしろいところ。今日のお話は大変、意義深く聞いていた。
- 土屋先生:最後の挨拶には1時間はやい(笑)
- 安達先生:もう一度質問部分について。PLoS ONEのcompetitiveな雑誌とは?
- Binfieldさん:あのSurveyは著者に「まずPLoS ONEにした? 2番目?」と聞いた。「2番目」などとした著者にどこに出したか聞いた。通常、PLoS ONEが二番目以降であった場合、最初はNature、Scienceや各分野のトップ誌を選んでいた。そうした著者は、ベストのジャーナルにまずトライし、半年くらいかけて不受理になったら、あとはとにかくはやく、ということでPLoS ONEに来るのだろう。PLoS ONEなら受理してくれるしはやいだろう、と考えられている。安達さんが年配の研究者には・・・とおっしゃっていたが、PLoS ONEの著者中での年齢分布の調査もしている。例えばPLoS Medicine、PLoS Biologyに比べるとPLoS ONEの方が6-10歳、年が「上」。これを解釈すると、若い研究者・ポスドクは名を売りたいのでhigh impactな雑誌に出したい、Nature等を狙う。一方、もう名声を確立した著者はどこに出しても読んでもらえるのであまりこだわらない。ノーベル賞をもらったような研究者ならナプキンの裏に論文書いたって読んでもらえる。
- 安達先生:NIIの中には量子コンピューティングをやっている研究者がいて、彼らは投稿行動が僕とは全く違う。彼らはNatureがあり、Phys. Rev.もあり、arXivもあり、New Journal of Physics(OA雑誌)もある。その中で、論文の内容によって「これはまずarXiv」とか、「これはNature。落ちたら・・・」と狭い世界でやっている。OA雑誌やarXivの存在は戦略上、取りうる手段が増えたということを意味している。分野ごとに特性がずいぶん違って、一律に議論できないのではないか。それを横断して扱ってきた図書館、そういう構造があることを雑誌のビジネスでも考えないといけないのではないか。メガジャーナルは他の分野で一律に成り立つモデルではないのではないか?
- Bocquetさん:今のお話に関連して。どんな雑誌であれ、メガジャーナルでも学会誌でも、研究者のニーズに応えることが必要。そうでなければ誰も投稿してくれない。学会誌はその学会の会員のニーズがある。「ここにいけばこういう情報がある」ということを会員みんなが知っているフォーラム、「ここで発表すれば認められる」プラットフォームを提供する。そうであるからそういうジャーナルは成功する。このような学会誌は実際に運営する、あるいはpromoteするのは個々人と研究者であり、情熱を持って取り組んでいる。創刊者だったりその後もエネルギーを持って活動を継続している人だったりする。
- メガジャーナルの存在の影響は2つくらいあるだろう。1つは、論文を書いたがどのコミュニティに持っていけばいいか困った著者がいた場合。メガジャーナルは特に分野の区別が無いのでそういう論文が出る。実際、Nat. Com.の中にはNatureの他誌に出せる価値があるが、どのscopeにも当てはまらないのでNat. Com.に出た、というのもある。
- 今のはポジティブな面。ネガティブな面もある。メガジャーナルの考え方は「書かれたものは間違っていない限り出版すべし」というもの。とにかく出版しろ、というプレッシャーがさらに増強されるのも、「ここなら出せる」というところがあるからでは? 特に中国・インドから大量にそういうものが出てくる。必ずしも重要ではないが大量に出てくる、ということがある。
- 土屋先生:中国・インドのような大量に論文の出てくる国の存在はビジネスモデルにも影響しよう。Bocquetさんのスライドでも、地域ごとの投稿数と受理数は創刊していない。acceptされない分はされた分のAPCで補填しないといけないし、論文が増えている国は経済的に厳しいところでもあり、その投稿が増えると今のPLoS ONEのように払えない者は免除、というモデルはどのくらい持続可能なのか?
- Binfieldさん:免除を与えているわけだが、「払えるが払いたくない」場合でも今は認めている。ただ、支払い率は中国もほぼ平均値で他国と状況は変わらない。こういったシステムにコストがかかることの認識はされているらしい。購読モデルへの代替と考えて予算を確保しているようだ。また、現在はSubscriptionからOAへの過渡期と考えている。全体の市場規模は約100億ドルなので、かなり予算はある。それが購読からOAモデルに代わる中で、より安価なAPCモデルに変わってくるんじゃないか。ElsevierやSpringerの一部がPLoS ONEに回ったら全てカバーできる予算規模なので、十分OA出版を支える予算はどこかから捻出できるんじゃないだろうか。もちろん収益を追求するビジネスモデルに反対しているわけではないが、論文の広範な流通のためによりしかるべきモデルがあるべきだ、ということ。
- 山下さん:Springerの利益を流すとしたらBMC(笑) 商業出版なのである程度、利益を出すべきとは考えているが、我々はそれほど法外な利益を出しているとは思っていない。Elsevierさんはどうかわからないが・・・(笑) APCが伸びて出版コストを包括できるならそれはそれでいい。中国についても、政府が非常に強い後押しをして、国をあげて取り組んでいる。Springerも政府と包括契約を結んでいる。内容については日本だって発展途上のときには同じようなレベルだったわけで、質も今のペースなら長い目で見れば上がってくるだろう。
- 安達先生:マクロに見ると多くの研究は国民の税金で行われている。それゆえのOAでもある。しかし今日のお話からすると、OAはパイオニアの努力があったにせよ、商業として成り立つモデルになっている。図書館が電子ジャーナルを買っていればその金額がコストであるわけだが、仮に100%OA雑誌になってしまえば、そのコストは研究者の経費の中に消えて見えなくなる。統計的にはAPCに何億円使われているか把握することすら困難になるはずだ。従来、購読料の高騰については大学図書館が把握していたが、今後はそれが見えない形になるのではないか。研究者は自身の成果を最大にする最大限の努力をするので、出版にコストがかかっても予算を取っていれば出すだろう。OAが始まった際に問題になった、出版の合理化がどう行われているか見えづらくなってしまうのではないか。PLoSは非営利を銘打っているし、多くの学会出版も非営利。しかしIEEEは営利目的と言っている、エンジニアの利益のために、としている。その中で適切に研究が行われそれが市民に還元されているかという、Public Accessの面については、今日のお話を伺うとよくわからなくなってしまうのではないか? この辺・・・もう少し合理的に学術コミュニケーションに寄与する、というのがOAの当初の意図だと思うが、そういうのはもう吹っ飛んだ?
- Binfieldさん:質問の意図が・・・
- 安達先生:コメントとして捉えてもらえれば。OA出版に加わっていくのは明らかな方向と思うが、ビジネスのメカニズムもわからない研究者に対し、誰が新しい学術コミュニケーションを提示するのかがよくわからなくなった。
- 土屋先生:強欲な出版社が研究者を搾取するのは変わらない、ということ?
- 安達先生:そういう、非常にわかりやすい構図だったのが、巧妙にわかりづらくなるのではないか。
- Binfieldさん:1つそれに関して言えるのは、PLoS ONEへの投稿者・著者にとってOAであるかどうかは重要ではない。とにかく速いところ、もっとも効率良いところとしてとられている。受理してくれるところではやく出したい。OAであることはリストの下。一番重視するのはインパクトファクターで、次いでスピード、ブランドの質。投稿者はそのように見ている。いい仕事・サービスを提供するところが重視され、OAはそんなに重視されない。
- Bocquetさん:営利・非営利問わず、どんな出版社でもコストはカバーしなければいけない。より広い対象に発信する上で基本的なコストは紙でもwebでもカバーしなければいけない。オンラインビジネスモデルに移行するとなると、著者はより直接的な「お客様」になる。従来はユーザーだったがこれからは「お客様」になる。研究者がしばしば忘れがちなのは、「お客様は王様です」ということ。お客様はお金を払っているんだから選択肢を行使できる。コストに見合ったものを要求できる。答えは脚で決める、すなわち出版社を選ぶ際に求めるサービスをくれるような出版社に著者は向かう、と。
- 大澤さん:機関リポジトリをやっていてよかったのか、という思いに駆られてきた。雑誌の購読料が値上がり際の美しい理念としてOAは出てきたが、今やOAを意識せず事実上のOAになっている。しかも大学の中で投稿料を払う部門は、少なくとも日本では図書館ではない。リポジトリ活動は図書館の学内での地位を低下させることになってしまったのではないかと・・・
- 安達先生:しばらく前に考えいたのはNPGの方のお考えと一緒で、OAで著者が適正に負担をして出版することがいいこと、購読モデルは悪いこと、と仮にきっちりと研究者にやったとすると、雑誌のブランドの他に研究者は自分の持っているお金とAPCを見て投稿先を決めるので、論文投稿において経済合理性が働き、商業出版社の法外な利益を吐き出す方向に動くのでは・・・と期待していたのだが、商業出版社がくらいついたということはOAは儲かるビジネスであるので、国民の税金を別の形でいただこう、ということになったのだろう。そっちの方が正しいのかはこれから、2017年とか2020年に明らかになるだろう。
フロアディスカッション
- 土屋先生:ここからフロアに質問を募る。5人のパネリストにYES / NOのボードを渡したので、Y/Nクエスチョンならどっちかを出してもらえる。効率的に議論ができる。例えば、GreenとGold OAならGreenの方がいい、とずっと言っている人がイギリスあたりにも1人いる。PLoS ONE1つの成功から2020年には90%というのは過度の一般化な気がするが、GreenよりGoldの方が楽だ、という方向に考えが変わる可能性はある? 10年ほどGreen > Goldだったが、これがGreen < Goldになると思う方はYes、そうでない方はNoで。
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- パネリスト:全員「Yes」。
購読モデルは消えるのか?
- フロア:最初に挨拶もした杉田茂樹さん:Binfieldさんの将来予測は、メガジャーナルによって単純に論文の絶対数が増えるせいで2020年にはOAが90%になるということか、それとも購読モデルが食い荒らされてということなのか? 購読モデルがあるかぎりはGreenを支持したいのだが、購読モデルは食い荒らされる? つまり、購読モデルはメガジャーナルの成功で消える?
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- パネリスト:Binfieldさんだけ「Yes」、他は全員「No」。
- 土屋先生:出版社の方のY/Nは講演の通り。図書館・研究者は?
- 大澤さん:単純に、すべての研究者がOA雑誌に出すとは思えない。OA雑誌のAPCを払えないからGreenモデルを支持してもいたのだろう。すべての雑誌がOAになるとはそのために考えにくい。
- 安達先生:極めて単純なエンジニアリング的発想。OAがいいこととしてずっとビジネスが広がると、おそらく色々な機能不全を起こして、「購読モデルの方が良かった」という運動が起こって、それを繰り返す。多様性のみが進歩を促す。両方を試みる、という。真面目に考えると、研究者の数が増えて研究投資が増えれば論文数は増える。研究者には困った状況で、読むべきものだけ読みたいと思っている。くだらない/関係ない論文は消えて欲しい。IFを使うのは、あれは非常にだらっとした評価だから。「この論文」、「この先生」とやるとピーキー過ぎて生きていけない。研究者は少数の非常に優れた研究者となにしているんだかわからない人たちのロングテール。その中で効率的にやるには、価値を自力で探すよりもっと加工して自分に適切に出してくれるものが要る。それに金をつけて出版社は売るだろう。
査読モデルは残るのか?
- フロア:SPARC Japan運営委員でもある逸村裕先生:査読自体は現在の形のまま、OAメガジャーナルが普及しても変わらない?
- 土屋先生:PLoS ONEも結局、査読をやっている、基準が科学的妥当性だけかどうかは違うが、査読はやって出版可否を決めていると。それは未来永劫維持されるか、ということ? なくなると思ったらYes、残るならNoで。
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- パネリスト:全員「No」。
- 逸村先生:そうなると、どちらにしても査読の負担がどんどん重くなる。それに学術の世界はどこまで耐えられる?
- 土屋先生:つまり100万本の論文掲載は今の中で回っているが、これが増えてきたらコミュニティは査読の負担に耐えられるか? 耐えられるなら「Yes」
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- パネリスト:BinfieldさんとNPGのBocquetさんはYes、他はNo
- Binfieldさん:論文の数は劇的に拡大するというよりは、年3%程度のペースで増加している。PLoS ONE以外の査読システムは複数回、複数人でやっている。まず2人で査読、リジェクト、次また2人、リジェクト、次また2人、受理・・・という、非常にreviewに負担がかかる。これがPLoS ONEならreviewは1回だし、基準もシンプルなので耐えられる。
- Bocquetさん:査読は残るだろう。ただ、効率化や、新技術を使用することは要ると考えている。同時に、投稿者数・著者の分布と査読者の地域分布を見ると、明らかに査読者は西洋に偏っている。アジア地域も査読者としてやっていける方がいるのに、十分に活かせていない。そこを活用すれば十分対応可能。同時に、post review、出版後評価の重要性も高まるだろう。長期的に評価・再評価が行われる。SNSも使われ、その中で評価が高まってくることもあるだろう。
- 山下さん:数の伸びよりは質のチャレンジが多い。中国や途上国の論文は内容以前に読めないことがある、と聞く。英語として理解できるものになっていない。そこら辺、今はクリティカル・ポイントにきていて、かなり大掛かりに変えないと査読者の負担が多すぎる。また、査読者を増やすには、査読をしたことがない人が多い中で、どう訓練するのか、どう選んでいいのかが困難になってきている。その中で査読の見直しが必要かと思って「No」にした。
- 安達先生:CSは非常にたこつぼ型になっていて、1つの関心分野を世界で20人でやっていたり。もう「peer」と言えるのか? 査読は自分に近い分野ほど厳しくなり、遠い分野は「いい研究しているね」としか言えなくなる。とても細かくできない。そうした機能不全は感じる
OAメガジャーナルは学術研究の質を向上させるか?
- フロア:学術出版社の方:将来、9割の論文がOAになったというとき、PLoS式の査読が将来も続くとすると、学術・研究の質を向上させることはできるのか?
- 土屋先生:メガジャーナルが一般化すると研究の質は向上するか? 向上するなら「Yes」で。
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- パネリスト:Binfieldさんだけ「Yes」で他は「No」。
- Binfieldさん:今日も研究成果はなんでも出版、というのはあまり好ましくないとの指摘もあった。今の現状はどうかというと、いわゆるいいところどりになっている。研究者は一番いい結果だけ出して、よくないところは無視し、Impactのある論文を出そうとしている。そうなるといわゆる袋小路になる。多くの研究者が他の研究者が研究したが発表しなかったようなところをたどっている。Impactのためにあえて発表しなかった結果を誰かがまたやっている。しかし今後は研究の成果はすべて報告する方向に持っていく、そうすれば平均的な論文のImpactは下がるかも知れないが、社会にとってはより便益になる。他の研究者が同じことを繰り返したり、間違いを繰り返すことがなくなるから。Impactのないような研究成果を出すことは社会にも学術的にもいいことだろう。
- Bocquetさん:「No」としたが、質を上げることも下げることもないと考えている。メガジャーナルはその判断をしないから。Impactはそもそも判断しない。ただ、安達先生のご指摘はそのとおりと思う。研究者は膨大な情報を乗り越えてやっと答えに到達する。その現状はなんとかしたい。大変な情報が出版されていることにどう対処するか。
- 安達先生(「No」):Peterさんのお話は病気の症例みたいなものには該当しそうに思う。T.S.エリオットの詩とも近い。dataやinformationからknowledgeやwisdomを作り上げる。メガジャーナルは横に大量にinformationを並べることはできても、その上のknowledgeやwisdomにはならないのではないか。
Scientific communicationのコントロールは研究者が自分でやるようになるのか
- フロア:フォルテサイエンスの方:出版社は歴史的に学術的な知識のgate keeperの役割をしていたが、OA雑誌の時代に研究者がこれをコントロールできる時代になった、ということ? Scientific communicationのコントロールを研究者がするのか?
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- パネリスト:BinfieldさんはY/Nどっちも出し、Bocquetさんは出さず、大澤さんと山下さんはYes、安達先生はNo
- Binfieldさん:状況による。ニュアンスがある。出版社にgatekeeperの役割はあるが・・・[聞き取れず、ごめんなさい!]
- Bocquetさん:gatekeeperとはeditorであり査読者であり読者である。商業出版社は何を出せば売上につながるかを考える。Natureでもそうだが、そもそも自分で論文を書いているのではなく、誰かの書いたものが回ってくる。gatekeeperは研究者自身。
- 山下さん(YES):出版社は今までもgatekeeperではない、良し悪しを決めるのは査読者で、方針を決めるのはboard。Springerはコミュニケーションをコントロールしているつもりはない。
- 大澤さん:Editorial Boardの扱いが軽くなって、科学者が自分の論文のコントロールをしないといけなくなるか、ということかと捉えた。それはYesと思う。自分の論文の中身や、クリエイティブ・コモンズで発表したらどうなるかを考えて投稿しないといけない。
- 安達先生:gatekeeperの意味を誤解しているかもしれないが、学術出版の中にいい加減なものを書かれていないことをこれまで維持してきていて、それを科学者のコントロールのもとにより適切な形になるか、ということかと捉え、「No」と答えた。去年の3.11以降、エンジニアリングやロボティクスの研究者は何をしてきたか、厳しく問われる現在において、研究としてやってきただけでよしとされることはない。Openにして一般市民がチェックすることがよしとされる方向になると、日本の研究者は思ったのではないか。研究者コミュニティで自立するような評価システムはもうありえない。
APCについて
- フロア:金沢大学・内島さん:最後にシンプルに。APCは将来、必ず値上がりする?
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- パネリスト:BinfieldさんはNo。安達先生以外の他の方はYes、安達先生のカードは見逃しました(汗)
- Binfieldさん:競争原理が働きAPCは下がる。
- Bocquetさん:APCは人件費・制作費の流れの中、コストに相対的・比例的に上がるとは思う。ただ競争原理も働くので、APCの幅ができると思う。高いAPCでも納得できるところは高く、同じようなところは価格競争へ。十分、さまざまなAPCでのOAが出てくる余地はある
- 山下さん:長期的に見れば上がる、物価を反映して。ただ、今は適正価格がわかっていないのでこれから下がることもある。SpringerがHybridを導入して3,000ドルにしたらみんな3,000ドル、PLoS ONEが1,350ドルなのでみんなそうする。なんの根拠もな・・・根拠はあるんですが(会場爆笑)
- 大澤さん:コストが上がっていくのでAPCも上がっていくだろうとの予測
- 安達先生:この間まで、日本の研究者のAPC総額は競争で下がるのでgold OAはいいことと思っていたが、そう単純なロジックは使えないなあと思った
- 土屋先生:大変中途半端になってしまったが、新しいことが始まる予感を感じていただけたと思う。様々な可能性があることは最後の質問でもわかったとおり。いろいろありうる。
閉会挨拶(安達先生)
- 日本のOAにおいて、今は非常に重要な時期。OAのmandateについての議論も進んでいるし、今のところ日本政府はOAはいいことと考えている
- 3/26には数学分野、EUCLIDのセミナーもある
- 今日のような生々しい話のない、非常に古い形でのコミュニケーションを数学は維持している
- 非常に安心するお話が聞けるのではないか。優れた能力のある人同士が国際的に仲良くする議論
- 今日はどうもありがとうございました!
・・・いやあ、面白かった!
ディスカッション非常に盛り上がっていましたね、ってそれはこれは盛り上がるに決まっていますね。
Binfieldさんは文献を参照しつつ「2020年には論文の90%はOA、それもほとんどOAメガジャーナルから出る」という大胆な予測を出し、そこからブレない。
査読は科学的妥当性の判断のみになり、主観的なImpactの評価は出版後に。
一方で科学的妥当性の判断のみ査読は残り続けるし、PLoS ONEのようなモデルならリジェクト⇒別雑誌へ投稿、再査読、というぐるぐるがなくなるので、査読は効率化され、回り続ける、と。
基本的にブレずにPLoS ONEのモデルを「今後のあり方」と位置づけられている。
それに対し各パネリストは三者三様に反対したり賛成したり・・・と。
学会出版の方からあまりリアクションがなかったのは意外でしたが(と終了後に話したら、レセプションでその点についても議論が)、そこはパートナー誌の多いSpringerの山下さんや研究者としての安達先生からのお話もあり。
大澤さんがGreenモデル<Goldかも、となったのは会場がどよめきつつもでもリポジトリには役割はある・・・との指示意見もあったり。
いや、うまくまとめられませんが、やはり肝はタイトルに入れた問い、「2020年にPLoS ONEのような雑誌がほとんどの論文を出すようになるか」でしょう。なにせ年代も近い。
個人的にはこれは「No」を支持するところなのですが(分野によってはのってこないんじゃないかと思うので)、ただ、PubMedに論文が入っているような分野に限定する、ってことならありえそうな気もします。
絶対載ってこないのは人文系だと思いますがそもそも90%予測の中にそもそも入っていない気も。あとで元ネタの論文も読みましょう。
そしてそのあたりで機関リポジトリ等は非常に生きてくるとも思ったり。
また、査読の負担については、すべてがPLoS ONE一誌で回るならそのとおりなのですが、"clones"が誕生した以上は「他のOAメガジャーナルで落とされたから別のOAメガジャーナルへ」という行動もあり得るわけで、となると現状のペースで増加することはやはりあり得るのかとも思ったり。
と、まあ、考えだすときりがないのですが、今どうも大きな変革期にあることは間違いないようで、このあたりはぜひ注目し続けていきたいと思います。
さしあたりは新創刊各誌がどうなるかと、そのPLoS ONEへの影響、それに年1万本の大台にのったPLoS ONE自身の今後、ですかね。
Web of Scienceで調べる限り、はからずも投稿の誘引になったらしいインパクトファクターは、今年は去年より下がりそうな気配ですが・・・。
そのあたりも出たら、またエントリを書いていきたいと思いますっ。
*1:Laaksoほか(2011):http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0020961
*2:http://crl.acrl.org/content/early/2011/09/21/crl-299.full.pdf+html
*3:2012-03-02 1:32a.m. 「通訳前のニュアンスはこうだったはず」とのご指摘をいただき修正しました。