かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

図書館情報学栄えて図書館も栄えさせるには?


すぐに続きを書くつもりだったのに1週間以上も放置してしまいましたが・・・
一応、前回のエントリの続きです。


前回の主旨は、

 今の司書課程は専門職制度として問題がある(資格がインフレ起こしてる)
 ⇒もうちょっと取りにくい資格制度にする必要があるとよく言われる
 ⇔司書課程や資格取得希望者数が減ると図書館情報学教員への需要が減る
  ⇒図書館情報学教員の働き口が減ることになる
   ⇒それだと困るから教員から今の司書課程を撤廃するような改革案は出ない
    むしろ司書課程や資格取得希望者が多いほど図書館情報学的には嬉しい
   ⇔しかしそうやって大量生産しても需要があるわけではない
    ⇒司書資格の価値のインフレが止まらず現場は疲弊

と言う感じ。
で、最終的に現場が疲弊し切ったところで図書館情報学へのニーズも消えてみんなご破算になるのでは、と。
ちなみに前回エントリについては「http://d.hatena.ne.jp/DIEtrich/20071127/p1」で的確な突っ込みも。
確かに図書館情報学の博士課程修了者はまだ少ないし、ポスドク問題や高学歴ワーキングプア問題との絡め方は穴だらけだったな、と。
勢いに任せたところもあったからなあ・・・と反省*1



で、ここからが今回の本題。
実は前回は端から続きを書くつもりで言及すべきところに言及していないところがあった。
前回のエントリでは

よって図書館情報学教員の間からも、現在の司書職制度に問題があることは認識しつつも、なかなかスパッと今の制度をやめよう、と言う話は出てこない、と。

という書き方をしているんだけど、これは「スパッとやめよう」という話が出ないのであって、今の制度に対する改革案が出ていないわけではない。
と言うか、図書館情報学研究者/教員からの改革案ということになると「今の制度に上乗せしてなにかつける」とか、「今の制度の枠組みのままで中身をもっと充実させる」という方向から話が進められることになる。
その代表例がLIPER調査あたり、ということになるんだろう。


これなんか完全に報告書中で「現時点でラジカルな変革の必要性を確認することができず」と宣言していて、「(司書制度を)スパッとやめる」という方向に話を持っていかないことを明言した上で、コア領域の充実とか情報専門職の設定、といった「今にプラスして制度を充実させる方向」で話を進めている。
この方向性なら今司書課程を開設しているところが開設できなくなるほどラジカルなわけではないし、大学院修士課程の必要性なんかも挙げているので教員も削減され得ない方向で話を進めている上に、某大学のように図書館情報学(図書館・情報学)に力を入れている大学で学んだものについては差別化も図れるということで、一見するとwin-win-winなように見えないこともない。
もちろん実際には「(今の司書資格の)インフレーションが止まらない状況で内容充実しても、さらに専門性の高い人が同じくこき使われるだけなんじゃないのか」とか、逆に修士課程相当をとった情報専門職の比重を高めるのだとすれば今の司書課程相当の人はどうなるのかとか、運用してみないとなんともわからないところも多いように思うけれど・・・
まあ、なんとか図書館情報学も図書館も栄える道を研究者サイドも模索しているんだよ、と言うことで。


・・・現場の疲弊、って問題がすぐに解決できるか否かは別にして。
id:myrmecoleonさんがブックマークコメントの中で

ぶっちゃけ図書館の学も図書館も滅びていいんだと思う。それでも図書館の目的たる情報の効率的な公有や保存が確保されるなら。ナンセンスだけど

と言われていて、これについては先に挙げたエントリのid:DIEtrichさんも同意されているし、自分も全くもって同意するところではあるのだけれど。
つくづく、「それでも〜」以降が問題というか・・・今、「館」や「館についての学」が滅びると「情報の効率的な公有や保存」に関わる人間やそのための学まで巻き添え食ってダメージ受けるんじゃないのか、と言うのが自分が危惧するところ。
特に人的資源。
自分は博愛主義者ではないしあまり人道主義的な方でもないので図書館で働いている人や働きたい人の人生について思い悩んだりはしないのだけれど。
「図書館」というものに引き寄せられて高いスキルを有しつつも正規職員でありながら比較的安い賃金で、あるいは非正規職員としてえらい低賃金で働いている人が、疲弊しきって別の分野に流出していった場合、流出先が「情報の効率的な公有や保存」に関わる分野である保証はない。
むしろそうじゃない分野に流出することの方が多いのではないか・・・と考えると、やはり「図書館の目的」たる部分を達成しようと考えるなら、館は滅びてもいいから人だけは死守しないといけない。
いけない・・・はずなんだけど・・・実態は、「アウトソーシング」って言っても自治体や大学の正規職員でやるより賃金下げるのが前提だし、「コンビニバイトより時給安い」とか言われる始末だし・・・・・・「あっれー??????」みたいな。
そこら辺深追いするとまた別の話になるので今回は深追いしないけど。


ま、最終的には図書館が滅びようが図書館情報学が滅びようが、世の中が栄えてるなら別に構わないし、逆もまた真なんだけれどね。
それでも自分は図書館情報学的な理想状況を実現した方が世の中が栄えるだろうと思うからどっちも滅びない道を考えたいと思うけど。

*1:勢い任せに書くのはいつものことなのだけど