かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「図書館・博物館・文書館の連携をめぐる現状と課題」(第58回日本図書館情報学会研究大会シンポジウム参加メモ)


先日のエントリ*1の最後でも予告していましたが、日本図書館情報学会研究大会に参加してきました!


自分も2日目・第3部会で発表したのですが、そちらは後ほど資料をリポジトリにアップしてから紹介エントリをアップしたいと思います。
他の方のご発表については今回は記録なしです!
部会間の移動が頻繁だったのでノートPC開いたまま移動するのが億劫だったからなのですが・・・刺激的だったり勉強になったりする発表が今回はとても多かったので、自分のためにも記録取っておいた方が良かったかも知れないと今になって少し思ったり・・・
また、学会前日には国立大学図書館協会北海道地区協会セミナー*2にも参加してきたのですが、そちらの記録もまた後ほど。
今回は、学会2日目午後に開催された公開シンポジウム「図書館・博物館・文書館の連携をめぐる現状と課題」の参加記録をアップしたいと思います。

図書館・博物館・文書館の連携、いわゆる「MLA連携」(M=博物館、L=図書館、A=文書館)に関する話題が多く見られるようになってきました。一見まったく別の組織のようですが実はもともとは深いつながりのあるこれらの「館」がどのような連携を模索しているのか、3人のパネリストと「MLA」のそれぞれの立場、あるいはそれらをつなぐ立場から研究・実践に携わっている方々を交えて意見交換、討論を行い、学問的視座から「MLA連携」の意義と課題を探ろうとするものです。是非、北海道のみなさんが議論の輪に加わって下さることを願っております。

パネリスト(敬称略)
コーディネータ・司会(敬称略)


最近とみに良く聞くMLA連携。
Lの一角を担う日本図書館情報学会でもイベント開催とのことで、北海道での公開シンポジウムでしたが多くの参加者の方がいらしていたようです。


以下、いつもの通りイベント記録です。
例によってmin2-flyの聞きとれた/理解できた/書きとれた範囲のメモですので、その点ご理解のうえお読み下さい。
誤字・脱字・事実誤認など、お気づきの点がおありの方は、コメント欄等を通じてご指摘いただければ幸いです。


それでは、まずは古賀先生の趣旨説明から*3



本日の趣旨(コーディネータ・古賀崇さん、京都大学

  • 今回のテーマは図書館・博物館・文書館の連携
    • これらはなんらかの資料を集積し利用者にサービスする場
      • 3館の間で連携を意識するところまではいってなかったのでは?
      • 図書館にとっては他の2つは類縁機関、との意識はあったが連携までは行ってなかった
  • しかしこの数年で・・・国内外でMLA連携が意識されるように
    • 昨年12月にはアートドキュメンテーション学会がMLAについてフォーラム開催
    • 高山先生、田窪さんも参加されていう
    • 『MLA連携の現状、課題、将来』という本にもなっている

MLA連携の現状・課題・将来

MLA連携の現状・課題・将来

    • 出版物も出て議論もされている
  • なぜMLA連携の順番?
    • 図書館、博物館、文書館、という順番もどうか?
    • 議論はあるがさしあたりはMLA、という言葉で議論する

図書館・博物館・文書館の連携 (図書館情報学のフロンティア10)

図書館・博物館・文書館の連携 (図書館情報学のフロンティア10)

      • 古賀先生が編集担当
    • MLAには2つの流れ・・・
      • 政策面:MLA連携を視野に入れた制度構築など
      • 技術・規格面:資料のデータ・資料の提供についてMLA共通の標準技術や規格を適用する試み
    • このような話題を上記教科書では扱っている
  • 今日のシンポジウムでは同書の話も踏まえ・・・
    • パネリスト、フロアを交えて実りある議論を
  • パネリスト紹介
    • 高山正也さん:日本図書館情報学会理事/慶應義塾大学名誉教授/国立公文書館長理事・・・第7代館長
      • 蓄積・検索別の情報サービス機関としてのMLA
    • 田窪直規さん:近畿大学教員/元奈良国立博物館
      • MLA関係の業績多数
      • ICT、連携の基盤からMLA連携をとりまく論点について話
    • 持田誠さん:植生学の専攻・・・北海道大学総合博物館の研究員
      • 博物館における資料保存・博物館図書室について論考
      • 博物館における蔵書ほか、博物館における立場からMLA連携について論じる

「図書館・博物館・文書館の連携をめぐる現状と課題」(高山正也さん、国立公文書館

  • アートドキュメンテーション学会の鼎談から『将来動向』を抜いただけのタイトル
    • MLAの問題について理論的に深める意識はない。現象的問題の紹介にとどめる
    • 今後の話しはすべて個人の意見。国立公文書館とは関係ない。
最初に
  • なぜMLA連携なのか?
    • デジタル化技術の浸透の中で強く意識されるようになってきた
      • 本質的には連携をせずに考えるのは不自然な状況だったのでは?
      • 博物館も図書館も文書館も蓄積検索型の情報サービス。似通った状況にある
    • MLAの順番は設立された時間軸に従っている。
      • 日本で過去150年を考えると、1872-73年に博物館ができ、その中に図書館ができ、ほぼ100年たって国立公文書館が設置される
  • 博物館、図書館、アーカイブズが分化してくるこれまでの歴史から・・・
    • 統合化、あるいは相互に影響力を強めあう、補完し合い、影響することでそれぞれの文化の質を変革する状況になっている
  • デジタル化・・・記録媒体の変化
    • 紙と言う優れた媒体は2000年近くにわたって、特段の地位を占め、今後もしばらくは占めるだろう
      • 他にも媒体がある
    • これらの媒体の利用と保存対策が、紙のみの時代に比べ新しいことを考える必要がある
    • さらには・・・今までは媒体さえ保存して利用に供すれば良かった
      • 今は媒体だけではなく、再生装置も付けて保存する必要がある
      • 記録装置を常に保存し、稼働できるメンテナンスが必要。それが情報サービス機関の要素になる
        • これに最も近いことをしてきたのは博物館。博物館の経験を学ばなければいけない
  • MLAの連携:連携させてどうなるのか?
    • それぞれがなくなっていくわけではない。今後も個々に残るのかもしれない
    • ただし相互に連携することで・・・自分の隣が何をやっているか、どういう文化があるかが刺激になる
      • コラボレーションが起こって、それぞれの館種ごとの、過去の延長ではできない新たな文化の創造ができる
なぜ記録をアーカイビングしないといけないのか?
  • セキュリティの問題
    • 軍事的なセキュリティ。日本では・・・意図的にか・・・意識から外されているが、守らなければいけない
      • 攻撃を受けた際に記録をどう守るのか。失われたら日本の文化はなくなる。文化をなくしたら国は存在しえない
      • 国際的なアーカイブズ学会では必ず出てくる話。「日本はどういう対策を?」。地震対策の話をするが、不満げな顔をする
        • 「ミサイルにどう対応する? テロには?」。海外には対策がある。韓国なら立地条件を一方しか入れない場所にして、その一方には対戦車バリケードを仕込んでいる。入口も階段、戦車が入れないため
        • 地震対策についても、阪神・淡路にどう対応したか。大阪ガスは図面を出して対応できた。あるいは柏崎原発は。対応できなかった。即座に記録が出てこないといけない。アーカイブズには即応性が必要。図書館にも必要になるかも知れない、その時にはアーカイブズの対応が参考になる
        • 記録管理学会での話題。放射性廃棄物の地中処理をした際、危険物を埋めた場所の将来への管理をどうするか。「国立公文書館に預けてよ」と言いたかったが、「現在ある組織には渡せない」という。放射性廃棄物半減期を迎えるのは5,000-10,000年後。紙に書いた文字が読める? 言語体系が残っている? 人類が滅亡した後の社会だったら、言語なんて通用する?
          • 夢物語のようであるが、繁栄した恐竜が滅んで人類がでてきた。そこでかつてアメリカはボイジャーにロケットを飛ばして、そこに人類のメッセージを埋め込んだ。あれが参考になる
          • 表音文字は意味をなさない。象形がいいが、言語をベースにしていると駄目、ということ。そういうことを考えている人もいる
  • 少し現実的な話。これからは資料を使うときに博物館、図書館、文書館の枠だけでは専門研究が完結しないのではないか?
    • 現代の課題の解決には幅広い層が必要
    • 図書館情報学アーカイブズの世界から参考になる。一番大きいのは、記録のための記録、メタデータをどうするか。ここを期待したい
      • その中で出てくるのが・・・図書館は複製物、出版物を対象とするが、公文書の世界ではその文書はどのようなプロセスを経て完成するのか。どういう構造と分担の中で、どういうことで発生した記録である、というのを表記することになる。
      • アーカイブズ学の中に原則はあるが、今はそれに加えて、その公文書の効果・影響などのアウトカムを把握してメタデータに反映する必要がある、との問題提起がなされている
  • メタデータによる記録のコントロールが将来、考えられる?
    • 図書館は知識のコントロール。知識はコントロールした方がいい
    • アーカイブズのコントロール=歴史のコントロール。これはするべき、しないべき? 議論がありうる
    • じゃあ、記録は全部残すべき? しかしそんなことしたら町中が紙くずの山になる
      • 出版物は法廷納本制度によって、理想通りにはなっていないものの100%残すことになっている。しかし文書は100%残したらえらいことになる
    • 国立公文書館に移行される文書は・・・省庁のわずか0.7%。研究者に「あてにならない」と言われる。アメリカのNARAへ行けばなんでもある、と言う。
      • しかしNARAも3%しか入っていないし、「5%は欲しい」との考えとのこと。国立公文書館はとりあえず5%を目指そうか、というところ。
    • なにが移管されて、残されるべき文書なのか?
      • プロフェッショナルのアーキビストが評価・選別すべき
      • ここがMLAで変わりつつある・・・
        • 従来:ミクロ評価選別。一点ずつ残すか否か決める
        • 今:文書の構造を背景にして、どういう関係のものは全部残す、どういうものは無視する、という「マクロ評価選別」へ動いている
  • アーカイブズから図書館情報学への期待
    • 図書館情報学の方が規模が大きいし一歩進んでいる
    • 学びたいことも多いが、あえて言えば、我々からみて放ったらかしの問題もある
      • 図書館サービスの基本的な理論形成がなおざりなのではないか。
      • 公文書管理法では「日本国民は公文書の閲覧利用の権利を持っている。公文書館側はその利用請求に対し請求された資料を提供する義務を負う」
      • 公文書館のサービスは今や行政処分の対象。従来は行政サービス。「おかみのお慈悲で見せてあげます」。憲法で知る自由が、とか迂遠なことを言ってもらちが明かない
      • 図書館側は大人の風格を持ったままでいるが・・・
今日のまとめ
  • MLA連携を通じて、それぞれの分野が他分野でどう対応しているかを知り、新たな文化の創造にそれを利用していただきたい
  • 今後、ますます推進して行くことが必要

「MLA連携の見取り図」(田窪直規さん、近畿大学

  • 今日の内容は『図書館情報学のフロンティア』のつまみ食い+新情報
  • 「見取り図」とあるとおり、MLA連携の多角的な話をする
1. MLA連携ブーム
  • 欧米では数えきれない連携事例
    • 日本は事例は多くはないが注目されている
    • 2010年に限ってのシンポジウムを考えても、ぎょっとするくらいある
    • 2008年がエポックメーキング?
      • IFLA、OCLCが相次いで報告書刊行
      • 専門誌が連携してそれぞれ特集号を刊行
2. MLA連携進展の理由
  • ICT技術の影響
    • デジタル技術の進展・・・資料を容易にデジタル化、統合利用可能、ネットで使える
      • 仮想空間では連携が容易
      • 実空間は難しいが仮想は楽
    • 連携の中心はネット上のMLA連携
  • Webへの対抗戦略
    • 情報空間としてのwebが出現してから・・・MLA使わなくてもwebで終わり、と考える
    • その対抗・・・webでデジタル情報を発信する. webを逆手に取る
      • ネット上に良質のコンテンツを出す. 信頼できるwebサイトの発信
    • ばらばらの発信だとインパクトが弱い・・・連携によってポータルを構築、プレゼンスをアップしよう
      • webは玉石混淆、ごみも多い、deep web見られない
      • MLAはそれに対抗しうる
  • 利用者の利便性
    • MLAに別れているのは利用者ではなく各館の都合
      • 利用者はワンストップの方がいい
3. MLA連携のタイプ
  • アグリゲータ型:ポータルを作るような大規模プロジェクト
    • アグリゲータが間に入る間接連携
    • ex) World Digital Library, Europeana
  • 目的型:小規模プロジェクト
    • 2館連携もある
    • 目的のためにMLAが直接連携する
    • ex) 米国ウスター市の大学図書館と美術館連携。美術館のデジタル化資料のMARCレコードを図書館が作る
4. 連携基盤
  • 元ALA会長でAACR2の大立者、ゴーマンの指摘・・・
    • 「技術ばかり注目されるが、政策、標準、共通基盤等の連携基盤の方が本当に大事」
    • 各側面で連携基盤作りはすすんでいる
  • FRBR:書誌レコードの機能要件関連・・・
    • FRBRとICOM-CIDOCのCRM調和プロジェクト
    • FRBRの名称典拠は個人と団体を想定. これを進める必要がある・・・個人、団体に「家」をFRADでは加えている。文書館への配慮
      • 「〜家文書」などへの対応
      • 図書館とMAの交通整理
5. MLAの位相
  • MLAの差異
    • 各館の主目的・・・保存か利用か
      • 図書館:資料の保存もするが、利用をしてもらってなんぼ。主目的は利用
      • 博物館:保存して後世に伝える。保存が中心、利用もするが保存の範囲内
      • 文書館:両方。保存して、使ってもらって歴史を解明してもらう。
    • 各館の専門職:サービスor研究職
      • 図書館:サービス職
      • 博物館:研究職
      • 文書館:研究職性もサービス職性もいる。資料がわからないと話にはならないが、利用に供するサービス性も
    • 各官のメディア:メッセージ(記号列)かキャリアー(固定されたもの)か
      • ex: 新聞を新聞記事と新聞紙に分ける
      • 図書館:メッセージ中心。雑誌記事を並行でコピーするのは、キャリアが雑誌だろうがコピー紙だろうが平気
      • 博物館:キャリアー中心。キャリアー=メッセージ。ものの存在が大事、もの自体がメッセージを発信。ものが変わるコピーには価値がない。ピカソの絵は数億円するがコピーは安く買える
      • 文書館:両者が重要。紙もメッセージも見る、みたいな
  • MLAの位置関係
    • 図書館、博物館が対極。文書館が間
      • 位置関係はMALまたはLAM.
    • 図書館と文書館、博物館と文書館は連携・融合しやすい
      • カナダは国立図書館と文書館が融合
      • 奈良県立図書情報館、福岡市の総合図書館は文書館+博物館
      • 茨城県などには文書館+博物館の例もある。ただし文書館が弱い結果、であるのは問題
    • 3館の連携を考えると文書館が接着剤に?
6. MLA連携を見据えた図書館情報学教育
  • 図書館情報教育と研究のための欧州委員会(EUCLD)
    • MLAの専門職を情報専門職とみなす
      • 情報媒介者として抽象化・一般化して議論できるのはでないか、と試みる
  • 日本が先進:駿河台大学文化情報学部
    • MLAを統一的に扱って、メディエーターの育成を目指す
    • 今も文化情報学部時代のコンセプトを受け継いでいる
      • しかし日本ではあまり広がらない。日本の図書館情報学の視野が狭い?
7. 日本の問題点
  • 日本のグルーピングはMLK. Kは公民館
    • 社会教育機関、というグルーピング
    • MLのグルーピングも社会教育、というくくりが多い
    • アーカイブズが別世界扱いされる?
      • MLA連携が難しい
    • 外国はMLA、というグルーピング
      • 日本でもMLAをグルーピング? もしくはAも社会教育に入れる?
  • コンテンツのデジタル化政策が弱い・・・ハード好き
    • 韓国では例えば「知識情報資源管理法」で良質なデジタルコンテンツを作成している
      • 歴史研究資料のデジタル化・横断検索を実現
      • 中央博物館でもデジタル化. どこも知識情報資源管理法でデジタル化.
    • 日本でもデジタル化促進の政策・法律を考えないと難しいのでは?

「MLA連携 博物館の立場から」(持田誠さん、北海道大学総合博物館)

博物館って何だろう?
  • 博物館は博物館法で規定.
    • 登録博物館が本当の博物館
    • 申請すると「博物館相当施設」になる.
    • 博物館類似施設:博物館法の範囲に全く入らない博物館
      • 北大総合博物館もそうだし、身近な博物館の大半はこれ
  • 館種類は非常に多様
    • いずれも専門的職員は「学芸員
      • 博物館法の博物館では学芸員が仕事をすることになっているが、圧倒的にいない博物館が多い
    • 文化財保護法の担当者が不在で学芸員だったりする
学芸員の役割
  • 展示普及業務が主体
  • 資料の保管・・・
    • とにかくただ資料を保存する、という博物館も多い
  • 研究博物館・・・大学の教員、研究者が運営する
    • 社会教育・資料提供に関心がない
    • 館によって性格が異なり、学芸員の専門職性は問われ続ける
  • そこで忘れられつつあるのがMLAで話題になる・・・コレクションマネジメント
博物館の役割
  • 収集・保存
  • 調査・研究
  • 普及・教育
  • 博物館の特殊性:
    • 図書館・・・資料は図書、映像、デジタル情報. 情報主体、様式の規格化・統一フォーマット作成が容易. うらやましい
      • 不特定多数の人に資料を開放することが重視される
    • 博物館・・・資料は不特定多数. 管理は種別によってばらばら. 博物館内での統一管理が不可能. 種別ごとでなんとか可能.
      • 利用・・・学習アクセスと研究アクセスを分ける. 一般の方がアクセスする、ガラスケースの向こうの展示を見るのが主体. 直接アクセスは研究者だけ.
    • 文書館は中間?
  • 研究アクセス・・・「使いたかったら自分で探せ」が原則、という現状
MLAを考える
  • できるのか?
    • 資料を持ってコレクションマネジメントができる専門的職員がいてはじめて可能
      • ほとんど落ちる
    • 研究アクセスも含め、利用希望者が誰でもアクセスできる
      • 研究博物館はほとんど不可能
    • デジタル化が現実的に可能な資料が主な対象
      • モノではなくデジタル情報を提供することで利用して貰う、という発想で連携が進む
データベースの例
  • 北大総合博物館の例:タイプ標本データベース
    • ある生物の学名の根拠・・・タイプ標本
      • 指定された標本は世界に1つしかない. 万一、失われたら再度かわるようなものを探して、再指定しないといけない
      • 第2次大戦で失われたドイツの魚類の標本は多くはタイプ標本. そのためタイプ標本のない魚が多数いる
      • 分類学で活用されるもの. 生き物を採集、膨大なコレクションを作って全て集め、新種か否か、どの仲間かを特定して行く
      • タイプ標本と発発表文献を対応付けするデータベースがいる
        • タイプ標本がある場所を探すデータベースがあるが、検索手段は統一されていない.
      • 研究者は文献渉猟を色々しないといけないが・・・
        • 現在、統合的に検索できるデータベースも作成している
        • 初発表文の所在・・・最近まで、印刷物ならどこに発表しても、新種になる。小さな村の広報物でも新種になる。
        • 図書館・文書館の協力が必要。そういうデータベースを昆虫については作成中
    • 理想・・・標本画像、標本情報、論文本文、図版が一体となったデータベース
      • できることから
博物館と図書館
  • 博物館はネットを使うこと、デジタル化は不得意
    • 現実的な連携・・・博物館に眠っている資料の有効活用
    • 博物館は灰色文献の宝庫・・・いろんな出版物が入り、作るが、図書館資料の対象になっていない
      • 出版物の図書館納本をはかっている
  • 博物館が持っている本の透明化
    • 博物館出版物の大半は博物館にいかないといけない
      • 博物館ならではの蔵書。公開すれば潜在需要も明らかに?
    • 認知度が高まれば出版物がさらに集まる
      • その管理が博物館は苦手。北大総合博物館出版物のうち国会図書館等に納本されているものはわずか・・・現在は納本するように
        • きちんと登録してwebからアクセス可能にするだけで利用が増加
  • 博物館の出版物は眠っていて、このままでは死蔵になる
    • 公開すれば利用率があがっていく
  • こうした活動を進めるにあたり、北大では北大図書館の協力を得ている
    • 博物館員では無理。図書館にお願いしてやっている
    • 本来であれば博物館の特性を発揮した収集・発信を自身ですべきだが、難しいのでMLA連携と言うには小さいが図書館とやっている
    • 学芸員は蔵書管理は非常に苦手。研究職性が強いため。誰かのための提供は苦手
  • そのほかに・・・
    • 道内の博物館出版物の蔵書登録の推進
    • 自然史博物館資料のweb公開
    • 自然史博物館の学芸員有志による、地方博物館の出版物のデジタル化の推進
  • 北大にはMLAがすべてある
    • 総合博物館、図書館、文書館、植物園博物館
    • 連携して資料保存にあたるのが理想
    • ものの保存は実際には大学ではうまくいっていない
      • 学芸員のいない分野は目録も何もなく朽ち果てていく
      • 文書・雑誌も廃棄の前に資料選別がいるはずだが、北大は365日どこかで工事していて、移転するとなると標本だけでなく文献・文書も廃棄される
      • 北大内で資料保存に関わる人で連携して細々とやっていく
博物館資料の利活用
  • 学内だけでなく、市民や学外研究者にも使われていくべきもの
    • そのためには・・・「博物館資料は博物館のものではない」という考え
      • 「国民のためのものをお預かりしているだけ」というのが本来の使命
      • 博物館資料は研究者的なものだけではなく、だれしもが利用可能なように保存しなければ本来はいけない
      • 自分のためではなく誰かのために行う、という発想に転換しないといけない
  • 学芸員が今のような立場である限り、それは研究者の役割か?
    • 研究職の役割は真理の探究と発信
    • 学芸員は単なる研究職ではない. 研究者的側面もあるが教育者・技術者の役割もある。
    • そこで一番弱いのがアクセスのための発信をする、奉仕的な役割。学芸員の意識改革、自身の研究だけでなく研究される博物館への発想転換がないと、MLA連携は進まないだろう



休憩タイム


パネリスト間でのコメント等

  • 高山さん:田窪先生へ。田窪先生のハンドアウト2ページめ、「連携基盤」として標準化が大事と言われている。その通りだと思うが、情報サービス系ということではISOの中でTC46が関わっていて・・・きわどい話でもあるが・・・オブラートにくるんで申し上げるが。関係の方はいらいらしているだろうが、規格協会、経産省総務省はうまく動いてくれない。岸田先生も苦労しているようだが。TC46をうまく動かすにはどうすればいい? しびれを切らして業界団体が突っ込んでいるが、放っておくと図書館情報学公文書館、博物館にとっていい結果が出てこないかもしれない。その辺どのように考えてらっしゃるか?
    • 田窪さん:手があるわけではない。TC46では図書館関係の標準も文書館も、博物館もやっているが。確かに遅いが、私に手があるわけではない。
  • 高山さん:お2人へ。図書館、博物館、文書館の相対的な位置関係で、MLAよりは文書館がMとLの中間とおっしゃっているが。そうなるためにはそうとう前提条件がいるのではないか? 歴史的にも、あるいは実際に集まっている情報資源の側面から見ると、必ずしも中間に位置するとも思えない。どういう前提を置いたときにAが中間に位置する? Aを中間・媒介に位置することである種の効果を狙っているならどういう効果を狙っていて、そのときに期待される機能は?
    • 田窪さん:今回は3つの点から眺めると、どの点からもLとMが対極、ということでその3つの点が前提。「媒介」という話については単純に考えていて、MとA、AとLの連携はしやすいので、3館連携にならないか。ただし、3館が入っている施設をある自治体が2008年に作っている。そこのA担当の方の話によると、中に入って、一体化していても戸惑いは否めない、との話があった。色々あるが難しい。今ので回答になっているかはわからないが・・・
    • 持田さん:文書館に期待されること、文書館が中間的な役割を果たすには、ということだが、前提について考えたことはあるが、特に考えがない。図書館と博物館がかなり相対した位置にある、というお話があったが、文書館がその中間にいるというのは、文書館に媒介になって欲しいと言うよりは、資料の性質と資料管理の役割を考えるとAとMはMとLより近い位置、という話。実は、冒頭でも名前があがっていたが、アートドキュメンテーション学会の議論の中で、美術館資料室の話ではあまり文書館の話は出なかったのが、最近徐々に高まってきている。そこで出てくるのは、博物館と文書館の歴史資料に関する、情報ではなくモノの保存で根本的な発想が共有できる部分が多い。図書館との場合は、田窪先生の話にもあったが、情報を取り出して有効活用する発想で、モノを飛び出してしまう。文書館界、博物館界ではこういう情報化に危惧を抱いている面もある。そういう面から位置関係はこうなるのかな、と。
  • 田窪さん:連携とは他分野から刺激を受ける、というのは提案していなかった。高山先生の話のポイントだが。
  • 田窪さん:持田さんの話は色んな前提が含まれていた。国立近代美術館のある方は「内なるMLA」、「外なるMLA」という。それぞれ中に他館のような資料もある、内なるMLA。先ほどの話では、タイプ標本についての論文は本来、図書館が活躍すべき話。内なるMLA。残念ながら中の図書館が機能していないので北大図書館、というのは内なるMLAと外なるMLAの話が両方された感じ。地域の話については、地域機関リポジトリという話で、例えば福井県は大学、県立図書館、文書館、博物館でやっている。地域機関リポジトリのMLAという話を思い出した。最後に、博物館が一番連携に向かない、と言う話はよくあるところ。OCLCの報告書でもあるし、イギリスでも「連携政策を進めても博物館の人が批判する」という。博物館協会の会長が批判しているのでこれは駄目だ、と思ったがそういう側面もある。

会場からの質問(質問用紙を配布・回収して古賀先生が取りまとめながら紹介)

個別質問
  • Q. 高山さんへ。 公文書のアウトカムのメタデータの話があったが、具体的に。
    • A. 単に先月、カナダのアーカイブズ学の研究者の講演の中で話があったので紹介しただけ。具体的なところのイメージは固まっていない。公文書館の中、あるいはアーカイブズ関係者の中で方向性が固まっているわけでもない。公文書を移管、保存しているのはあくまで利用のため。そのときに、国立公文書館では利用の約半数は行政利用。行政府の政策担当感が新たな政策や立法を考える際に過去の類縁な例を集めて参考にしている。そういうことであるならば、従来の類縁の政策を展開した、という公文書のメタデータの中に、それをやったときにどういう結果になったか、少なくともどういう部署に伝達されて、結果として新たにどういう文書が起案されたのか、というコンテクストを把握しておく必要があるのではないか。と言う話を聞いてなるほどな、と思った。
  • Q. 田窪さんへ。 MLA連携による成果が学校教育に影響する可能性はある?
    • A. 日本の例は知らないが、アメリカン・メモリープロジェクトでは、議会図書館だけなく博物館、文書館も参加してMLA連携プロジェクトになっていくが、アメリカの歴史の先生はアメリカン・メモリーを教材として使う、という有効利用の方向に動いた話がある。
  • Q. 田窪さんへ。図書館はサービス性が強いというが、世間一般にサービス職は研究・技術職に比べ評価が低いのでは。司書の評価が低く代替可能で専門職が低い、ということ? あるいは目ディエータの育成で司書職がステップアップする、ということはある?
    • A. そのような文脈で申したわけではなく、基本的な機能を、MLAで比較した場合にサービス職としての性格が強い、ということ。上下ではない。司書的な技能を持ってサービスを展開できる力は、上下ではなく誇れる実力と思う。メディエータの育成については、この場合は文化情報資源を扱うMLAを統合的に捉えて、情報資源をメディエートする人材、という発想。新たな視点で、それが上下の文脈につながるとは思ってない。そういった議論がヨーロッパにはあるが、90年代に既に日本でも議論があった、ということ。
    • 持田さん:私もサービス職の上下の話はしていない。むしろ、研究職はレファレンスや情報提供についてはむしろ能力は・・・劣っているとは言わないが専門性は低い。学芸員養成や立場・雇用の問題もからむので一概には言えないが、図書館の情報提供の専門性はかなり高い。博物館はむしろその情報発信の技術ノウハウを積極的に学ばなければいけない。博物館法の改正で学芸員養成課程で「博物館情報」という科目が入る、それもこうした危機感によるもの。その点については誤解ないように。
  • Q. 持田さんへ。博物館側からの連携の必然性についてどう考えている?
  • Q. 持田さんへ。他の研究博物館、大学博物館において現状や共同連携の必要性は理解されている?
    • A. 博物館がもっと図書館かすべき、というのが私の端的な考え。モノを集めるだけで活用を考えてこなかったのが今の日本の博物館、学芸員。もう一つはレファレンス機能。図書館はそこを高い位置付で行われているが、博物館はかなり軽視している。この辺については情報をコントロールする意味に長けた図書館情報学の力を、連携によって強化していく必要があるように思う。
  • Q. 持田さんへ。博物館学芸員は研究職の意識が強いというが、質の高い研究のためには他の博物館も利用するはず。それが目録整備のインセンティブにならない?
    • A. おっしゃる通り。博物館同士の連携は強化されなければいけないし、所蔵についてのネットワークも整備しないといけないと考えている。博物館の世界は西高東低と言われて、西日本はこのあたりが積極的に取り組んでいる。ネットワークを中心に収蔵品の共通フォーマットのデータベース化を進めている。東日本、特に東北以北は遅れている。博物館自身が資料を把握できていない館がたくさんある。北大の総合博物館もただ資料があるだけ、目録がない。博物館の世界で足並みがそろっていないが、博物館の世界は逆に個別の学問分野の中で連携して、それを職場に反映するルートは盛ん。考古学や昆虫学はまず個別の分野で所蔵データベースを作って、それを館に反映している。そうしてお互いの館の中身を知る。
    • 田窪さん:少なくとも20年くらい前の学芸員は、「私が対象としている分野の資料であれば、目録がなければどこに何があるか知っている」という意識。目録については、博物館で整備しているのは半数にいっているか否か。西日本で共通フォーマットで・・・という動きがあるのは恥ずかしながら知らなかったが、それを聞いてかえってびっくりしているくらい。
  • Q. 持田さんへ。田窪先生へのご質問にも関係するが、学芸員にもデジタル化の知識が求められると思うが、教育の在り方についてはどう考えられるか。
  • Q. 学芸員資格を取る際の。先ほどもお話にあったが、その教育はどうなっていく?
    • A. ご指摘どおり。学芸員養成課程の中身は少し変わって、2011年度から新課程がスタートし、デジタル化に関する科目も整備される。表面的には整備されるが、学芸員の養成と雇用の格差が非常に大きい。図書館に勤めるには司書資格がいるのだろうが、博物館に勤めるにはいらない。ある規模以上の博物館であれば、個別科学の研究者能力の方が求められて、実際には勤めてから資格を取る人間が多い。それが利用者教育の意識が低いことの一つの原因。養成課程と日本の博物館への配置方法を総合的に考えて変えないと、解決できない問題。いくつか今、東京の私大で高度学芸員の研究プロジェクトもあるのだが、今、巷に山とある養成課程の卒業生が博物館に入るのは現実的には低い。養成と現場がつながらない現実がある。
    • 高山さん:余計なことを付け加えるが、それは図書館の司書、公文書館にも言える。司書を養成して資格を取った人を図書館が雇用しなくちゃ困る、というがそれはほとんど採用されない。現実にある旧帝大では来年の4月からLibrary Scienceコースを開設する際に、文科省から言われた話。Library Scienceと言いながら実態はレコードマネジメントをするというので名称と実態がずれているのだが、中身は関係なく名称がLibrary Scienceなので今さら司書の採用はない、レコードマネジメントで養成したアーキビストなんか、採用されるはずがない、ということを言われて新コース設置をあきらめるよう指導があったという。相談を受けたので説明を変えろ、といった。「実態はオフィスにおける文書管理。日本の官民の文書管理には膨大なマーケットがある」と。そう考えると、実態に即してマーケットを考えるべきではないか。ついつい、陥りがちな落とし穴だと思うのだが。
共通質問
  • Q. アーキビスト養成について、アメリカの図書館情報学プログラムではその枠の中でアーカイブズやレコードマネジメントのプログラムを提供している。MLA連携を踏まえたプログラムの事例や見解があれば。
    • 高山さん:ご指摘の通り。北米ではlibrary schoolが教育している。そのときに見落としてはいけないのは、アメリカのlibrary schoolはprofessional school、大学院課程。professionalとして絶対教えないといけないことは教えられるが、周辺領域はundergraduateで教えられたり、それは実務で覚えている人が入ってくる。なので時間を取らなくても養成が可能。全体の制度を考えないと、単に図書館、学芸員アーキビスト養成を日本の学部レベルのプログラムを前提に考えると、間違っているとは言わないが考えが逸れてしまう
    • 田窪さん:アーキビスト図書館情報学の場合もあるし、歴史系が教育していることもある。MLA共通プログラムは先ほどお話したようにヨーロッパでは図書館情報学サイドで検討が始まっている。あとは日本では駿河台大学が既に文化情報資源の切り口でMLAを統一的に扱った教育をやっている。
    • 持田さん:単純に学芸員養成を考えた場合の弊害は色々あるし、同じようなことは図書館、公文書館でもある。そもそも日本の大学・大学院教育がどうなっているかを考えて、踏まえた上でやっていかなければいけない話。
  • Q. 日本のMLA連携の障壁となっている所管官庁、自治体の縦割りの壁を乗り越える方策、成功事例があれば。
  • Q. MLAは根拠法が異なるが、どうそれを乗り越える?
    • 田窪さん:先ほども言ったが、MとLは社会教育と言う意味で近い。法律的にも。問題はA。これも先にも云ったが、色々あるが文化機関、文化遺産機関としてグルーピングするか、Aを開き直って社会教育機関としてMLAKで連携するしかないのでは?
    • 高山さん:縦割りの弊害についてだが、これはおっしゃる通りで、日夜悩んでいる。どういう面で悩むかと言うと、Aという省で移管を取り付けたものでもBは駄目と言い、AはOKと言ったといっても「隣は隣」という。縦割があるなら、乗り越えるにはもう一段上にあげるしかない。移管の例なら、廃棄を決定したものは内閣総理大臣の承認がいる、ということになった。従来は公文書の所管は担当機関長の決定によったが、新法では総理大臣の決定。そういうこと、権力機構を活用するしかないのではないか。根拠法のしがらみについては、私どもは社会教育法の下にはない。公文書館の関連法も多く、それを守らなくてはいけない。社会教育法の枠の中にあればそれ以上、法律はいらなかったかもしれないが、それが図書館サービスを行政処分ではなく行政サービスとする考えにいった。しかし公文書館は大きな法の枠がないので、権利・義務の関係で、国民の要求を果たす義務として求められる形にせざるを得なかった。結局、その辺のことは、たったひとつ、社会教育系、教育委員会系から飛び出しているかわりに、行政母体と一体化している。公文書館系は行政部門と表裏一体にならざるを得ないし、行政部門はなにかあればすぐ法律を作るのが仕事。それに則るのが実態。それが果たしていいのかはご意見を伺いたい。
    • 持田さん:博物館の世界だけ見ると、それぞればらばら。私の博物館も博物館法の範囲ではないし、都道府県立には登録博物館もあれば相当施設もある。博物館の世界では最近、社会教育法の範囲になりたくない、あえて教育委員会の所管に入らない館が増えてきている。MLAという連携でどう支障をきたすかはわからない。根拠法令の影響による具体事例はないが、博物館同士、博物館と自治体の図書館や文書館の連携では、現実的な支障はあまり感じていない。むしろ同じ書簡でも壁が大きい、というのが実感。
  • Q. 日本においてMLA連携を総体的に推進する場合、誰が中心的に調整・仲介役になるべき?
    • 高山さん:仲介役がいるのか、というのが1つ。MLA連携は誰かが旗を振ってやらざるを得ない話ではない。おのずから連携した方がいい、と担当者が思って連携するのではないか、とも考える。しかし仲介役があった方がいいのかもしれない。その時は文科省、コンソーシアム、NPO、NDL、NII、どれもなりうる。せっかくやっているのだから忘れてもらっては困るのは、日本図書館情報学会もその旗振り役になれること。
    • 田窪さん:事実関係で説明すると、石川県は県が主導。岡山デジタル大百科は図書館主導。アメリカだと、フロリダ州では州内の大学図書館へのサービス機関が、ミネソタでも図書館とサービス機関が中心。場合によって違うが、アメリカではLが中核なのは確か。
    • 持田さん:特にどこが適しているかというのはない。必要に応じて生まれるもの。どこかをあえて仲介役として掲げることは今の段階では頭にない。ただ、技術的な面では図書館情報学に学ぶことは大きい。そういう意味で図書館情報学会が関与することが、必然的に仲介役として発展するのではないか。特に上部組織がどうこう、というのは考えはない。
  • Q. 納本制度の実施状況による調査では政府や自治体の出版物の納本状況は悪い、という。博物館や教育委員会納本制度の理解がない? ないとすれば何故?
    • 持田さん:博物館サイドはあまりはっきりしていないのは、納本・公開されると利用されるから。博物館は中にこもっているので、資料を公開して利用されるとういうのは現実としてやってこなかった。あとは自治体としての納本制度が欠けていることの理由は、埋蔵文化財を扱う際の法的・権利的なこともあって、納本があまり発達していないのではないか。
    • 高山さん:白書類やなんかが納本されていないことはあるが、白書ってのはいったいなんだという話になると、あれは出版物ではある、複製はいっぱいある。その段階では国会図書館に納本されるべきと思うが、元の白表紙は公文書、ということで移管の対象に挙げている。ところが最近、NDLでは自動収集システムの対象にもされていて、こちらは国会図書館が集めて下さるから移管から外していいかと言っている・・・のだが、そうも言ってられないかな、と思ってきた。今までどおり一生懸命やっていかないと、と思った。もう1つは、国会図書館が白書類をどれほど納本されているかと、NDLにいってないものが公文書館にどれほど入っているかの調査も火急的すみやかにしないといけない。
    • 田窪さん:博物館出版物がNDLに行かないのは、司書すらいないのが多いので、単純に知らないのでは。文化財の調査報告書も、そこの部門の人があまり知らないのではないかと思う。
最後に、パネリストから一言
  • 持田さん:いろいろ勝手なことを申したが、やっぱり文書館・図書館も外から見るだけではわからない。連携を通じて理解することが必要なんだろうし、その段階で無理なことや必要なこともはっきりしてくる。今日得られた情報を今後、自館だけではなく博物館として活用したい。
  • 田窪さん:MLAという用語は国の審議会にも「いわゆるMLA」と定着しているが、米国や北欧など、世界中でばらばら。また、日本でも京都府立総合資料館は1963年で非常に古い。ネット上でも、徳島県の取組みは1995年で、インターネットが普及していない頃にパソコン通信を利用してやっている。教育では駿河台大学の例もある。古くからあるが、活性化していないのが日本のMLA。
  • 高山さん:勉強になった。私の知識のなさ、あるいは図書館情報学についての理解不足もあるのかも知れないが、どんなに十分に勉強していてもやはり、隣接領域、図書館にとってのMやAで何をやっているかから、非常に多くのヒントが得られるのではないか。海外で何をやっているか、昔何をやったかと並んで、隣接分野で何をやっているかは常に目配りしていただきたい。それから、日本は着想は古いがその後のフォローが不十分。これは本当に、私も駿河台のメディエータの片棒を担いだので実感としてある。この点をどうするか。リテラシや広報活動をどうするかを、かなり真剣に取り組まないといけない。LもMもAも使える人のみ使うのではもはや成り立たない。
  • 古賀さん:MLA連携は非常に多くの切り口がある。日本図書館情報学会もなんらかの役割ができるのではないかとの提言もあった。今後も引き続き取り組んでいただきたい、あるいはそれぞれの立場で考えていただければ幸い。



高山先生、田窪先生のご講演はもちろんですが、個人的には持田さんのお話がとても刺激的でした。
タイプ標本ってそんな大切なものだったのか・・・言葉は知っていたのに重要性を全然認識していませんでしたよ。
博物館資料が全然未整理で公開もされていない、というのも*4、それを公開していく部分で北大図書館の方が協力されている、というのもとても興味深く。
高山先生がおっしゃっていた「隣接領域、図書館にとってのMやAで何をやっているかから、非常に多くのヒントが得られるのではないか」という言葉を実感しました。
北大総合図書館も色々問題があるのですね・・・学会初日の午前中にも見学に行って楽しく見ていたのですが、表だけからはわからないことがあるんだなあ、とかなんとか。


『図書館・博物館・文書館の連携』、自分はまだ読めていないのですが、これから是非読みたいと思いますっ。