なんかNHKの番組で「地頭力」なるものが取り上げられてたそうですな。
テレビもなければそもそも就職活動を一切していない(一般的な意味での就活はたぶん一生しないでござる!)自分にとっては最近流行ってるらしいこの言葉自体かなりの謎だったのだけれど・・・
っていうかそもそもたまにwebで見かけてもなんて読むのかすらわからなかったし。
「じあたまりょく? じとうりょく?」みたいな。
まあ、たぶん「じあたまりょく」って読んで、そうなるといわゆる「地」の頭の力なんだろうな、と推測はしていたが・・・実際に調べてみるまでは、割と「じとうりょく」と読む可能性もあるのではないかと考えていた。
もし後者であればこれは当然「泣く子と地頭には勝てぬ」と言われるあの「地頭」の力であると考えられるわけで、そんな慣用句にまでなるくらいだからきっととんでもない力なのであろう、とかどんどん勝手に考えていたり。
ちなみにみんな大好きWikipediaによれば*1、地頭とは
地頭(じとう)は、鎌倉幕府・室町幕府が荘園・国衙領(公領)を管理支配するために設置した職。地頭職という。守護とともに設置された。平氏政権期以前から存在したが、源頼朝が朝廷から認められ正式に全国に設置した。在地御家人の中から選ばれ、荘園・公領の軍事・警察・徴税・行政をみて、直接、土地や百姓などを管理した。
(中略)
地頭の在地管理のあり方を見ると、荘園領主と異なる点が見られる。地頭は武士なので、紛争などを暴力的に解決しようとする傾向があった。著名な紀伊国阿弖河荘(あてがわのしょう)百姓訴状は、百姓が地頭の非法のせいで年貢(材木)納入が遅れたことを荘園領主に釈明した文書であるが、地頭が百姓を強引に徴発した様子、抵抗すると「耳を切り、鼻を削ぎ、髪を切って、尼にしてしまうぞ」と脅した様子などがよく記されている。また、「泣く子と地頭には勝てぬ」という言葉もある。
出典:地頭 - Wikipedia(2008-4-4参照)
こええぇぇぇっ!
地頭、こええぇぇぇっ!
「耳を切り、鼻を削ぎ、髪を切って、尼にしてしまうぞ」って!
何が怖いってその順番が怖い。
人体切断とか凄惨なことやっておいて、最終的には尼さんにするだけかい!
「売り飛ばしてやるぞ」とか言わないんだな地頭。
っていうかそれなら単に髪切って尼さんにしてやればいいじゃないか。
なんで耳やら鼻やら削ぐんだよ。
こんな恐ろしい地頭なので、当然そんな地頭に求められるところの力である「地頭力(じとうりょく)」も恐ろしい力であるに違いないわけですよ。
問題解決のためなら武力の投入も恐れず、泣かれようが喚かれようが「そ、それは来年の種籾! それを持ってかれたらおらたちは・・・」とか言われようが「えーい黙れ黙れ、自力救済のこの世の中で貴様らの事情など知ったことではない! よこすものを寄こさんか!」と言えるだけの精神的なタフネスさ、弱者に対する容赦なさ、それこそが正に彼らの地頭力(ジャスティス)!
自己責任・自力救済のそのあり方は正に鎌倉の世に現れたマッチョ。
他にも当時の社会制度をうまく利用して己の支配力を伸ばすところ*2、リスクを負ってでも大きな利益を得ようとするところ*3なんかもマッチョっぽさが漂ってきます。
まあ「ぽい」もなんもガチで武力で物事を解決している上に割と頻繁に紛争が起こっていた時代に生きていることを考えればまごう事なきマッチョ軍団なわけですが、地頭。
つまるところ「地頭力(じとうりょく)」とは「マッチョパワー」のことだったんだね!
そう言われてみれば怖い脅しをかけておいて最後は「尼にしてしまうぞ!」とか意外とやさしいラインでとどまっているところとか、「泣く子と地頭には勝てない」とか言って地頭自身も若干子供には弱いんじゃないか、っていうニュアンスを漂わせているあたりに完全には弱者を攻め切らないマッチョの心意気的なものも見え隠れ。
でもきっと同じ武士やら成人男性には容赦ないんだろうな、きっと。
この現代社会の荒波の中、企業に求められる人材として「地頭力(じとうりょく)」が必要と言うのも実にうなずける話。
地頭力(じとうりょく)のある人材との間では多少、緊張感のある関係を企業は強いられる(気を抜くと自己の利益を追求し出すから)わけだけれど、それにも増して強い問題解決能力を有する人材が欲しい、と。
いやいや、ちょっと見ぬ間に随分と日本企業もマッチョナイズされたのであるなー。
・・・なんてことを考えながら、英語文献をぽちぽち読んでいる春の夜。
え、地頭力(じあたまりょく)?
そんなもん知らん、こっちは「巨人の方の上に立つ」世界の住人じゃい。*4
*1:さっきShizukuの面々(kunimiya・yhwh)と「図書館情報系で『Wikipediaに拠れば』はねえだろwww」って話をしてきたばかりなのだけど、済まない、すぐ手に入る事典類(日本大百科全書とかブリタニカ国際大百科事典日本版とか)ではあんまりおもしろい地頭に関する記述ないや
*2:「地頭の補任権・解任権は幕府だけが有しており、荘園領主・国司にはその権限がなかった。そのため、地頭はその地位を背景に、勧農の実施などをとおして荘園・公領の管理支配権を徐々に奪っていった。」(出典:Wikipedia)
*3:「地頭請は、不作の年でも約束額を領主・国司へ納入するといったリスクを負ってはいたが、一定額の年貢の他は自由収入とすることができたため、地頭にとって多大な利益をもたらすことが多かった。」(出典:Wikipedia)
*4:ちなみに自分は高校は世界史選択(一応、日本史も1年だけやったけど)だったのであしからず。