なんか6月は毎週国立情報学研究所(NII)@神保町に行っている気がしますが。
今日も今日とてNIIで掲載されたSPARC Japanのセミナー:「ジャーナルの発展をもとめて:プラットフォーム移築を中心に」に行って来ました!
電子ジャーナルの普及やデジタル技術の急速な発展により,ジャーナルの公開ならびに学術情報を発信するプラットフォームも大きく変化しています。
これまではとりあえずWeb上での情報発信を最優先に考えてきましたが,今日の技術革新により,様々な機能やデザインがうまれ,付加価値の創出をも可能にしました。
学術マーケットを取り巻く環境も急速に変わりつつある今,将来的な展望を踏まえたプラットフォームの移築を改めて検討する段階にきているのではないでしょうか。
今回のセミナーでは移築におけるメリット・デメリット,考慮すべき点などを明確にし,検討してみたいと考えています。
多くのみなさまのご来場をお待ちします。
ディスカッションでは図書館との関係についてもかなり白熱しましたが、今回メインとなるは電子ジャーナルのプラットフォーム、それも「移行」の可能性について。
学会にとってその学会誌のプラットフォームとはどういった意味を持つか、どういうときに移行を決意するのか、移る先の決め手は、ビジネスモデルはどうする、移行時の困難は・・・と言った話題について、実際に移行を経験した学会関係者(一方は複数学会の雑誌をまとめるNPOですが)、プラットフォーム提供側それぞれの視点からご発表がありました。
BioMed Centralの方からは、PLoS ONEが採用するOAメガジャーナルのモデルとは異なる形でのOA出版のあり方についてのお話も満載です!
以下、当日のメモです。
例によってmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲の内容、かつ逐次通訳部分についてはたまにフライングしてメモった関係で会場でのお話と記述/表現の違いも多いかとおもいます、ご利用の際はその点ご理解願います。
誤字脱字・事実誤認等、お気づきの点があれば、コメント欄等にてお知らせいただければ幸いですー。
「開会挨拶とセミナー要旨について」(高橋菜奈子さん、国立情報学研究所 学術基盤推進部 コンテンツ課 専門員)
- 最初に簡単に本日の概要と主旨を紹介したい
-
- 初期段階:紙⇒電子
- とりあえずwebで情報発信する/「電子化」
- 初期段階:紙⇒電子
-
- 第2段階:プラットフォームが複数現れる
- 選択肢の増加/ビジネスモデルの多様化
- 購読/OA(著者支払い)
- 運営主体・・・出版社/アグリゲータ/公的機関
- サービス内容/機能/搭載可能データの形式/サポート
- その中で今日は・・・
- BioMed Central
- J-STAGEについてショートプレゼン
- 第2段階:プラットフォームが複数現れる
-
- 第3段階:移行を検討する学会が出てくる
- そのときの選択基準/評価ポイントは?
- コストは?
- コストをかけて移築することに効果はある?
- 著者、編集者、査読者、読者、購読契約主体=図書館への影響は?
- 第3段階:移行を検討する学会が出てくる
- お互いに最大限のメリットを得られるプラットフォームとは?
- 最近、移築を経験した学会からも話を
以下、司会:日本化学工学会・山下和子さん
「UniBio Press:情報の拡大を求めて」(永井裕子さん、UniBio Press代表)
- はじめに:
- 移動の歴史を考える・・・
- プラットフォーム/標準が変わる中をジプシーのように動いてきた
- プラットフォーム移行とは良いところに移る、というだけではない。大事なのは自分たちのジャーナルをどうしたいか
UniBio Pressとは
- 平成18年に東京都に認可された法人
- 定款に記載された目的:
- この法人は広く一般市民に対し、生物科学分野に関する研究成果について、より広範な利用を促すために・・・
- 参加学会は6+2(今年から)
- BioOneとの連携協調
- BioOne:米ARLの支援による非営利団体
- 129の学会、171タイトルを収録する電子ジャーナルプラットフォーム
- BioOne.1(ARLは購読義務)とBioOne.2(購読義務はない)
- OAタイトルは12.BMC等とは違う
- 米国以外のジャーナルは35のみ。基本、米国のプラットフォーム
なぜプラットフォームを移動したか
- UniBio Press設立の意味
- 電子ジャーナルパッケージでの図書館購読を目指す/電子ジャーナル購読料を獲得する
- ジャーナルの認知度をあげてインパクトファクターを得る(当初はZoological Science誌のみ)
- 生物学協会の連携協調
- 海外には出版系の団体があるが、日本にはまだない。そういうことをやりたい
- J-STAGEのフリーアクセス⇒BioOneに参加して購読料モデルへ
- フリーアクセスとオープンアクセス?
- オープンアクセス=ビジネスモデル
- 現状、すでにモデルとして定着している
- フリーアクセスは違う
- J-STAGE当時・・・プラットフォーム周りの人材が雇用できない
- 電子化=PDF作成
- web公開=電子ジャーナル化
- 使用料無料
- 「ビジネスモデルはない」=お金を稼げていない
- オープンアクセス=ビジネスモデル
- UniBio Pressの場合:
- フリーアクセスから購読料モデルへまず移行
- 購読料モデルから購読料モデルへ移行
- フリー⇒オープンは簡単か?
- 購読料モデルからオープンアクセスは?
- これはなかなか厳しい。計算してみても厳しい
- Webに載っていれば良いのか?
- ジャーナルにはふさわしい場所とビジネスモデルがあるはず
- それを踏まえてプラットフォームを考えることが必要
- BMCのサイトはすばらしい・・・OAであるだけにプラットフォームは洗練されていないと困難
- そういうことを考えなければいけないのでは??
- BioOneと連携したことで・・・
- 海外図書館へ販路拡大を求めるが、様々な困難
- BioOne.1に行くつもりが、.2に行くことに・・・予想外の困難
- .1が大きすくなりすぎて購読料が上がったせい?
- J-STAGEからのデータ移行:
- 教訓1:
- 電子ジャーナル作成時に必要なスペックをどう作成するか
- 使用するプラットフォームの要求スペックを知る
プラットフォーム移築の際の困難について
- 次の困難:BioOneでは「UniBio」という独自パッケージを日本国内のみに向けて用意してもらった
- 3年間の期限付き(2007-2010)
- UniBioとしてのプラットフォームをその後、別に構築することに
- そこではじめてデータ移築の仕組みを知る
- データ移築の困難・・・XMLは手強い
- 移築先:Pier on line
- 教訓2:
- WEKOに避難
- 電子ジャーナル購読の困難
- 購読してもらうにも困難がある
- 様々な規約/複雑
- 一方でOA出版もモデルの一つになりつつはある
- それが必ずいいわけでもない
- 自分たちのジャーナルはOA出版にしたことでよくなるのか?
- より多くの読者に知られてより多くの論文が投稿されるようになるのか?
さいごに:目指したものは獲得できたか?
- 新規にWeb of Scienceに収録された雑誌多数(インパクトファクターが付与される)
- あと2誌で全雑誌につく。やりたい!
- 購読料
- 今年は8万ドルくらい。参加学会で分配する。ドルが安いので残念だが・・・
- 今までゼロだったのがこの金額、というのは意味がある
- 総被引用数
- BioOne移行直後に総被引用数がジャンプアップ。競合他誌にはない傾向
- より多くの読者に届いている
- たくさんの貴重な経験ができたのはSPARCのおかげ
- 土屋俊先生(大学評価・学位授与機構)にも多くのサジェスチョンをいただき助けられた
- 仕事というのは一人ではできない。小さなことでも意味がある
- 今後も問題は多い。アジア圏で販路を拡大したいがPier on lineには英語版がないとか
- 今後も経験談をお話できるような仕事を続けていきたい
「オープンアクセス出版モデルへの移行がもたらすもの:ジャーナル発展におけるケーススタディ」(Deborah Kahnさん、Publishing Director, BioMed Central)
- 今日はプラットフォームのOAへの移築について話す
- BMCはOAなので、特にOA移築時に、学会として考えなければいけないことを中心に話す
- http://www.biomedcentral.com/
"regional journals"(日本ベースの雑誌)の将来を考えるときに必要なこと
- 最先端/効率的/信頼のおけるプラットフォームか?
- しかしそれ以上に重要なのは国際的なジャーナルの位置づけを高められるか
- 円滑な投稿以上に、ジャーナルがより多くの人に読まれ/情報発信でき/全体として成功しているかどうか
- PubMedやPMCへのインデキシングを実現する、インパクトファクターを獲得/上昇させ、ひいてはより多くの質の高い購読を得ること
- 永井さんの話にもあったとおり
- プラットフォームに求めるべき点1:投稿システム
- どこにいても/どんなファイルでも投稿が容易なシステム
- データセット/3次元イメージ/動画等も包括的に対応できる投稿システム
- その他の情報をあわせて投稿できること・・・査読者の推薦/排除希望、キーワード付与、ライセンス、コストへの同意確認などへの対応
- プラットフォームに求めるべき点2:オンライン査読システム
- プラットフォームに求めるべき点3:Webサイト(コンテンツ提示のインタフェース)
- プラットフォームに求めるべき点4:流通・アクセシビリティ
- 学術出版に関する重要なイニシアティブ:これらもフォローできているサービス提供者か?
- システムを継続的に改善できているのか? きちんと対応できているか
- たとえば・・・
- CrossRef / DOI.org
- ORCID
- Open data
- ICEDIS
- mathJAX
- 自分のジャーナルが遅れたものとならないように
- BioMed Centralでは上記の点は考慮できている!
- パブリッシングモデルについて:
- Open accessモデル:
- アクセスには障壁はない。誰でも無料で、PCとネットワークさえあればアクセス可能
- 著作権は著者に留保される/ライセンスはOpenなものを採用=引用を明記すれば誰でも再利用して良い
- コストは多くの場合、論文処理料として著者から回収する(常に、というわけではない)
- Open accessモデル:
-
- 購読モデル
- コストは購読料で賄われる
- 購読料を払った者のみアクセス可能
- 著作権は出版社側が持つ/論文処理料は発生しない(min2-fly注:いずれも"ことが多い")
- 購読モデル
-
- 学会としてモデルを選ぶ場合・・・
- より幅広いアクセスを提供したい/認知度を高めたい場合、OAは有望な選択肢
- 学会としてモデルを選ぶ場合・・・
OAの現状
- 2012年現在のOAの現状
- オープンアクセス誌のディレクトリ、DOAJには7,800以上のOA雑誌が収録されている
- トムソン・ロイターにインデックスされている(=インパクトファクターがついているもしくは近々つく)ものは1,200以上
- 来週、IF更新されるので、さらに増えるかも
- ここ最近はOAに関しての議論が盛ん。話題にのぼることも多い
- この数週間のOAにに関する動き:
- OAについて:
- OA雑誌出版でも購読出版モデルとビジネスモデルが違うだけ。他は一緒
- 時にはOA雑誌の方が安くつくことも。購読モデルだとページ数や多色刷り等の追加料金も起こりうるが、OA雑誌は投稿料を払えば色やページ数に関係なく料金一定(min2-fly注:それはOAか否かというより印刷版を作るかどうかによる差という気も・・・購読モデルで冊子がない/OAモデルで冊子がある場合は?)
- OA雑誌であっても印刷版を作成しているところもある。印刷だけのOAというのはありえないが、電子+ハードコピーという学会は多い
- OAの成長:
- 主なOA出版社の掲載論文数は急速に伸びている
- BMC、PLoS、Hindawiはいずれも伸びが順調。2012年も同一のペースを保っている
- 主なOA出版社の掲載論文数は急速に伸びている
-
- 日本からの投稿数:日本でも同様に伸びている
- 大手OA三社いずれも掲載数増加
- BMCがずっと1位。2010年まではぶっちぎりだったが2011年にPLoS急増で追いつかれてきている。抜かれないよう頑張りたい
- BMCへの投稿数と出版数の推移。2010⇒2011で投稿数がジャンプアップしたものの、査読に時間がかかって出版数にはまだ反映されていない
- 日本からの投稿数:日本でも同様に伸びている
今後、学会として移築先を検討する際に考えるべきこと
- 国際的な位置づけを高める
- ビジビリティについて:
- もっともアクセスされているBioMed Central論文トップ5:
- 第1位は3週間で12,601件のアクセス
- 3-4日で6,000件以上のアクセスを得ている場合も
- BMCの1ヶ月あたりのPVは2,900万、500万のユーザセッション
- 登録ユーザは140万+多くの未登録ユーザ
- 2週間に1回、40万人にニュースレター
- 月間15,000の新規ユーザ登録
- その一因にはOAなのでGoogleからインデックスされているされている、Googleのpage rankは8
- (min2-flyコメント:page rankが8位?・・・あー、10点満点でpage rankを計測した場合の値が8、ってことか。他社がわからないとなんとも)
- もっともアクセスされているBioMed Central論文トップ5:
- インデキシング:主要な学術データベース/サービスに採録されているか
- 被引用件数:OA誌は多い
- OA誌の被引用数上位10位・・・1位はOUPのNucleic Acids Research
- IFも高い雑誌が多い
- (min2-flyコメント:これも購読誌との比較がなー)
- Web of ScienceにおけるOA論文のシェア:
- 2010年現在では収録論文数の8%。2002年には2%だったので大幅に増えている
クオリティの高いコンテンツの確保:いくつかの事例とあわせて紹介
- BMCへ移築した最初の学会出版:"Acta Veterinaria Scandinavica"
- 創刊50年の歴史ある雑誌/2006にBMC移行
- 移行後、投稿数は右肩上がりで伸びている
- インパクトファクターも上昇。BMC移行当初は0.375⇒翌年には0.717に急上昇。2010年現在には1.196に。来週にはさらに上がるだろう
- 編集長のコメント:ビジビリティが改善されて投稿数が伸びた。過去、投稿を検討しなかったような国からの投稿が増えている。雑誌側でも何を出版するか、より多くの選択肢から選べるようになり、それがクオリティの向上につながった。より多くの人が読め、投稿するようになったことが、クオリティにつながった。
- "Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance"
- もともと購読誌
- 2008年に移行。当時のIFは2.152⇒2010年には4.328に
- 残念ながら日本の事例はないが・・・来年からはぜひ日本動物学会の事例を含められたら!(永井さん笑)
結論
- 多くの学会誌が現在、OAに移行
- BMCではポートフォリオの4分の1が学会誌。移行、もしくは新規創刊
- BMCに移築される雑誌は多くの人に読んで欲しい/認知度を国際的に高めたい/投稿の質を高めたい/引用を増やしたい/IFを高めたい、など理由は様々
- 信頼でき、プロフェッショナルな対応ができ、確立されたプラットフォームがある点で、BMCはサポートがしっかりしたところとして選ばれている
休憩タイム
「ジャーナルの発展を目指したプラットフォーム移築について」(安河内朗さん、日本生理人類学会/九州大学 大学院 芸術工学研究院)
- 実際にBMCに移行した例の話
- "Journal of Physiological Anthropology":
- http://www.jphysiolanthropol.com/
- 日本生理人類学会発行
- 会員数880名程度、それほどの規模ではない学会
生理人類学とは?
- 生理人類学の研究対象:
- 現在(科学技術文明下で)生きている人類
- 人類史・・・約500万年とすると・・・
- うち499万年は狩猟採集の時代/農業の開始=近代的環境はごく最近
- 生物は環境に適応したものが生き延びる=基本的に我々の身体はそのような環境に適応している
- しかし人類は現在、都会で生活・・・必ずしもこのような環境に適応していないのでは??
-
- 生物学的に見るとネアンデルタール人と現代人は大差ない
- 現代環境に必ずしも適応しているとは限らない、という背景
- 環境と身体のバランスをどう評価するか?
- 心身に余分な緊張状態を作らないためには?
- 意識せずできている
- 生物学的に見るとネアンデルタール人と現代人は大差ない
- 具体例:光のメラトニンへの影響
- 過去、人類は朝日とともに起床、日が沈むと寝ることに適応
- 現在:夜はいつまでも明るい・・・そのことの影響は?
-
- 明るいほどメラトニンの分泌は抑制される
- メラトニンには生体リズムを整える等の重要な役割
- サーカディアンリズムの位相を夜の光はずらす/その睡眠への影響は?
- 照明メーカーとの共同研究・・・メラトニン抑制の小さい照明開発などで成果を社会に還元
- 明るいほどメラトニンの分泌は抑制される
-
- 光以外にも:適応対象のズレ=歪み
- 従来、人間は直立歩行のために下半身を強化⇔すわる文化と上半身の使用増加の影響
- 食糧に対する嗜好性・・・飢餓状態にあった嗜好性が残ったままなので生活習慣病に
- 光以外にも:適応対象のズレ=歪み
日本生理人類学会の歴史
- 日本人類学会からの派生学会
- 人類学・・・1859年にパリ人類学会、日本人類学会の原型は1884年設立
- 世界に25年しか遅れていないものの研究者数は少数
- 1939年、東大に生理人類学コース開設
- そこで講義を受けた学生が後に日本生理人類学会を設立
- 1978年、発起人50人で「生理人類学懇話会」結成
- 1983年に生理人類学研究会に発展。"Annals of Physiological Anthropology"創刊。和英混在誌、年4回
- ISIへの採択を模索するもうまくいかず
- 1995年から完全英文誌化/1996年に和文誌も
- 多分野からの参加・・・そのため雑誌名は揺れる
- 2006年に現在の雑誌名に
データベース収録と電子プラットフォーム
- データベースへの収録にこだわり・・・徐々に収録DBは増えてきている
- J-STAGEに2000年に参加。1995年の創刊に遡って電子化/継続前誌もJournal@rchiveで電子化
- 年間のPDFアクセス数は順調に増加
- 海外からも比較的多くのアクセス/しかし被引用数には結びつかなかったのが現状
- Web of Science収録への取り組み
- 海外の類似学会の他誌との比較:
- 研究内容:
- JPA:物理的環境要因への適応能についてが多い/会員に企業が多く共同研究が多い
- 海外の類似誌:human biologyはfield研究が多い。自然・文化的環境要因への適応能。途上国の健康/病気の研究が多い
- それぞれにずいぶん違いがある
- 研究内容:
- JPAは「生理人類学のコアである」と言い切ってしまおう!
- 色んな分野から投稿があるのが特徴/その著者らが他の雑誌に投稿した時にはJPAを引用
- 特定分野に引用が集中することはない
- 他雑誌への引用は75%/自雑誌25%(うち著者自身の引用は少ない)
- 以上の背景の下、2008年に申請・・・ついにWeb of Scienceに採録!
- 今後はいかにvisibilityが拡大していくかが重要に
- IFを仮計算してみると・・・2011年のIFは0.629で、近年落ちてきている?
- どうするか??
編集体制・投稿システムの見直し
- 2010年・・・学術出版社への委託を検討
- コスト的に見合わせる
- オンライン投稿システムへの移行を検討
- 投稿数・・・年間60-70で少ないが、将来のために
- BMCと2011.8から意見交換会開始
- 2011.9の委員会・理事会で移行を決定
- 翌年1月からの移行のためにはこのあたりで決めないと・・・
- 経費が重要な問題に
- 2011.9の委員会・理事会で移行を決定
- BMC移行による経費の変化:
- 著者負担金との差し引き+冊子体の廃止による郵送費削減
- オンライン査読、掲載料の学会による一部負担等を計算
- だいたい同額になりそう、という結論に(年間30編の論文掲載を見込んだ結果)
- 60-70投稿はあるがscopeにあわないrejectがあるため
- OAに切り替える、との強い意志で実現
- ちょっと心配なのは為替レート
- 今後、OAがうまくいったら・・・
- 掲載料を全学著者負担⇒さらに値上げして学会歳入に?
- そこまでいけるかは成功例になれるかどうか次第
- BMC移行の利点:
- Visibilityの飛躍的増大
- BMCでは各雑誌に広報・プロモーション担当エディターを置いている
- 独自のマーケティングも行なっている/それを基盤とした広報活動
- 様々な媒体によるvisibilityの効率的/グローバルな拡大
- Visibilityの飛躍的増大
-
- 投稿者のメリット
- 掲載料は同じ/ページ数・カラーの負担がなくなる
- 受付⇒掲載の時間の短縮?・・・作業次第
- 投稿論文が広く人の目に触れる⇒引用が増えるチャンス
- 投稿者のメリット
-
- 編集サイドのメリット
- プラットフォームが一本化された中で作業できるように
- 編集サイドのメリット
- 具体的には2月末から論文掲載開始/現時点で16編なので順調
ここで・・・プログラムにはなかったが、J-STAGE3について、新プラットフォームの紹介をJST・久保田さんから
「J-STAGE2⇒3への移行の紹介」(久保田さん、JST)
- 5/1に新プラットフォームへ移行したのでその紹介
- J-STAGEとは:
- https://www.jstage.jst.go.jp/
- JST(科学技術振興機構)が運営するジャーナルプラットフォーム
- 日本の学会が主な対象
- プラットフォームを同一インタフェースで
- データは学会が作る
- システム運用はJST/利用費用は無料
- H.11開始⇒H.16にJ-STAGE2に⇒H.24にJ-STGAE3
- J-STAGE2がこんなに長くなるとは・・・
- 新プラットフォームの変更点:
- 機能拡張は繰り返している・・・
- COUNTER対応/SNSサービス連携/CrossCheckサービス連携
- 移行による苦労/問題点
- データフォーマット・・・JSTが前のバージョンから作っていたのでデータの中身はわかっているべきなのだが・・・
- 長期間の運営の中で個別の改修・要望対応してしまったせいで自システムの仕様がよくわかっていなかった
- 移行が予定より1ヶ月余計にかかった原因
- まだトラブルも残っている・・・引き続き対応したい
パネルディスカッション
司会
- 山下和子さん(化学工学会)
パネリスト
- 永井裕子さん(UniBio Press代表)
- Deborah Kahnさん(BioMed Central)
- 安河内朗さん(日本生理人類学会)
各発表への質疑
図書館のことは??
- Q. 全員向け
ジャーナルを発展させる、というのがテーマなのでそのことに特化したい。いずれの講演でも移築による図書館とのコミュニケーションについて触れられていなかった。図書館からすれば発展するのはけっこうだが、プラットフォームを移るとCOUNTERの集計を途中で変えるために負荷がかかるとか、それなりにお金を投資してやっている。機械的に解決するにしても手作業でやるにしても。OA化した場合でもOAであることを知らせる等、やることはある。そういうことについて含まれる事柄を教えていただきたい。
- Kahnさん:
私は専門ではないので、間違ったことをいったら同僚が訂正してくれるだろう。
BMCとしても、ジャーナルが図書館を通してアクセスできるように、ということはやっている。目録、リンクリゾルバ対応、タギングなど。図書館は重要なパートナー。OAになったので図書館を介在する必要はないが、重要なパートナーではあるので、そこを介してコンテンツを利用者に伝えるために、標準対応等は行なっている。
実はTransfer codeという標準がある。出版社が変わった場合にすべきことをまとめた概要。それを実施すれば、引き続き図書館からアクセスできるという規格で、BMCはこれを作っているグループの一員でもある。
- 永井さん:
これは大事な質問。確かに、出版社と学会の会ということでビジビリティを上げるための移行に終始したが、最後は質問にあったとおりのことを出版社は考えなければいけない。
UniBio Pressは過去、SPARCのパートナー誌だったので、図書館からサジェスチョンを受けられたのは良かった。WEKOに一時避難したのもそういうこと。
また、購読モデルをとってはいるものの国内の購読者がまだ少ないので、話し合いは十分にできた。
ただ、リンクリゾルバの件は非常に厳しい。みんな持っていると思ったのだが、高いということを最近知った。
学会出版は図書館のプロの仕事をあまり知らない。少なくとも日本の学会は。そこはKahnさんのおっしゃるとおり、大事なパートナーのことを相当、勉強しなければいけないと思っている。
- Q.
ジャーナル移行の一要件として、せめてCOUNTERに則ったデータをモニタリングできることを日本の学会にも、J-STAGEにも期待したい。
毎月、Excelで送ってくるなんて前世紀のやり方ではなくて。
SUSHIに対応せよ、というのは困難かも知れないが・・・アクセス数をとれることは重視している。ぜひそのような取り組みを含めて欲しい。
なぜOA? なぜ購読?
- Q. 永井さんと安河内先生に
電子プラットフォーム移行に際して、永井さんは購読モデル、安河内先生はOAモデルを選んだ。そのプロセスの中で、最終的に現在の決断に至ったきっかけは?
- 安河内先生:
我々は研究者人口が少ない+認知が低い。国際連携も、シンポジウム等をやったりしているものの効果があがらない。データベースにも収録されたし、一層ビジビリティを高めることが重要なのだが・・・小規模学会でできることは試したかな、と思っていた。
もう1つは、時代の流れもあるのでOAを試したい、ということもあった。
そういったときにたまたまBMCが昨年、日本にオフィスを構えたので、これはいいだろう、BMCはOA最大手でもあるし経験をいかしたアドバイスをいただけるのでは、と考えた。
- 永井さん:
日本動物学会に特化した話。J-STAGE⇒BioOneへの移行で混乱はあった。従来、見ていた人たち、それが研究者かはわからないが、そこに混乱が生じた。これだけビジビリティが大事といい、さらに最後は移行したわけだが、すぐには移行できない、と思っている。
BioOneに移ってからの動きは刻々と見ているのだが・・・ここは複雑なのだが、UniBio Pressとしてのパッケージはあくまで国内向け。海外向けはBioOneのまま。で、そこで何が起きているか。今までは2004年以前のものはオープンにしていた。そのためmost accessはオープンになっているものだった。それが、どういうわけか、最近では最新号にアクセスが集中するようになった。そこは購読していないと読めない部分。なぜか。
Kahnさんに後で質問もしたいが、どこからアクセスされているか、それはどこか、ということは見ないといけない。今、アクセストップ4が購読部分になっている、ということはそれは購読機関の、研究者や学生が読んでいるとわかる。そういうところは捨てたくなかった。
それから、OAが強いのは確か。私たちはPLoS ONEやBMCに著者を取られている。一方で、購読料モデルが、そうとう簡単になくなるとは思えない。関心を持たなければいけないし、どこかで変えないといけないのかも知れないが。BioOneで論文の動きを見つつ考えてきたのは、そういうこと。
アクセスレポートについて
- 山下さん:
COUNTER準拠データがBMCから出るのはわかるが、BMCのジャーナルのアクセスレポートはどういうものが、どうった頻度で出る?
- Kahnさん:
オンラインでいつでもアクセス可能、常時アップデートされる。
- 山下さん:
項目は?
- BMC Commercial Director・Bev Acremanさん:
BMCはCOUNTER2にも3にも対応している。フルテキスト・抄録のダウンロード。重複アクセスは除外している。
- 山下さん:
国別アクセス数等はわかる?
- BMC・Acremanさん
Google Analyticsと連携しているので・・・
- min2-fly質問:
え、Google AnalyticsとCOUNTERだとデータのとり方違わない?
- BMC・Acremanさん
今、調べます。
- 永井さん:
今の件に関して。BioOneではアクセスログデータを見せてくれないのだが、それは出版社としては一般的?
- Kahnさん:
BMCとしては統計データは全て提供している。詳細データを提供しないのが通常のことなのかは・・・。
- 山下さん:
お調べいただいている間に、他にどなたかあれば。
プラットフォーム移行と編集体制
- 山下さん:安河内先生へ。
BMCへ行かれる前と後で、編集体制は変わっている?
- 安河内先生
今のところは変えていない。将来的には変えていきたい。
- 山下さん
例えば?
- 安河内先生
まだ私だけの個人的な考えで議論はしていないが。海外投稿を増やす上で、ひとつはscopeにあった特集を組んで、BMCの強い広報力でそれを訴えたい。
それから、編集体制の中で、アメリカに1人、編集委員長を置くとかできて、それぞれがその地域で論文収集できるといい。
そのあたりは国際情報発信強化の助成が得られれば、旅費も出せるしそういうことができそうと考えている。
- Kahnさん
海外からの投稿は増えるだろう。IFがついた、となれば一夜にして投稿は倍になったりするし、今までなかった国からも来る。そういうことに備えてeditorial boardの体制も整えて欲しい。効率的な作業体制への準備のお手伝いも私どもではしていきたい。
- 山下さん
BMCのIn-house Journal Development Editorってどんな役割?
- 安河内先生
もう既に編集委員会にも参加していただいて議論している。発信力強化の助成申請に向けても共同作業ができるのではないかと考えている。
- Kahnさん
私どもとしては日本の学会に十分なサポートを提供したいということで、東京オフィスの社員も増やしていきたい。日本の学会へのサポートは日本語で行うし、ロンドンからも間接的にサポートする。
こういった体制がとれるのは、BMCはSpringerの中に置かれて3年、Springerには東京オフィスがあってそこでサポートを引き受けてもくれているし、Springer openという、BMCが対象としない分野を対象とするパッケージも出ている。
J-STAGEからの移動
- 永井さん:安河内先生へ。
J-STAGE3の登場はわかっていたはず。それでも、短期間の間にBMCに動かれた。一番の決め手は? J-STAGEもオープン。
- 安河内先生
BMCは独自のマーケティング体勢を持っていて、我々の雑誌のサポートをポジティブにやってくれる。
色々なところに送ったりするだけでなくマーケティングにそって、効果的に行なっている。非常に能動的。
J-STAGEさんの方もアクセスはあったのだが、そこから次のステップ、というときにどこまで能動的にアプローチできるか・・・というのが判断の決め手になった。
- 永井さん
OAになったものは一般の人が使う、というのが既知のところだが、J-STAGEでは例えば学会がターゲットとするような利用者なのかどうか、ということは見られる? 先生方はJ-STAGEの時代にアクセスログ解析はしていた?
- 安河内先生
どういう国からのアクセスか、というようなことは編集員会のたびに解析結果を見ていた。どういう分野から、というのも調べていた。
- 永井さん
現段階で変わったことは?
- 安河内先生
まだ始まったばかりだが、一つ期待できるのは、企業共同研究について、企業の方がどういう論文を書いているか調べてくれている。彼らもよりアクセスしやすくなるのかと思う。目に見えない部分だが、後になってそういうところが出てくると思う。
COUNTERについてさらに質問
- Q
購読モデルの商業出版社の者です。COUNTERのcode of practice 4では著者支払いOA論文の統計モデルを出さないといけなくなったが、BMCの場合は完全オープンだが、お客さんが欲しいと言ったらお客さんごとに提供できている?
- Kahnさん
どなたであれ/いかなる場所であれ提供できる。
- Q
物材研のデータが欲しいといったら出してくれる?
- Kahnさん
オンラインでいつでも出せるはず。
- Q(最初の方とは別の方)
図書館認証はどうやってやる?
- BMC・Acremanさん
IPアドレスでやっている。UsernameとPasswordによる認証もしているが、機関における利用レポートのリクエストがあった場合は、IPアドレスによって認証する。
- Q(最初の方の方)
OA出版社にIPレンジは渡していないはず。それは例えばSpringerが持っているものを使っている?
- BMC・Acremanさん
BMCのIDというのがSpringer openのIDで、これはメンバー対象のもの。メンバーでない機関もIPアドレスを提供してもらえればデータは提供できる。それ以外はSpringerベースで提供できるようにプロジェクト進行中。
複数プラットフォームを1ジャーナルで持つことについて
- Q.
学会の方。私どもはプラットフォームを2つ持っている。J-STAGEのアップデートに伴って今後について考えている。1つに統合するのではなく、2つ、あるいは3つのプラットフォームを1ジャーナルで持つことは・・・、戦略的に複数プラットフォームを持つことは一般的?
- 永井さん
J-STAGE⇒BioOneでも既存の読者は迷う。研究者は例えば機関リポジトリ版を引用して欲しいわけではなくて、リンクをたどって汎用プラットフォームから見て欲しいと思っていると思う。複数持つのはあまりいいことではないのではないか、いくつもあるとわかりにくいと思うし、研究者が迷う。「なんなんだろう」と思ってしまうのではないか。
- Kahnさん
OAということなので、コンテンツを発表する場所は1つであっても、使っていただく、見ていただく場所は色々あってもいい。
そもそも「プラットフォーム」とは、ということになる。私は投稿・査読をする場所も含んでいる。ジャーナルを作る場所、そこにまつわるプロセスは色々あるが、それはある一箇所でやる。一箇所、あるいは一組織以上が関わることもあるだろうが・・・査読は1組織、投稿は別とか。
ただ、届ける方法はいろいろあってもいいと思う。
1プラットフォームか、複数プラットフォームか。それぞれのメリットについて考えると、1つの統合プラットフォームを持つメリットは、1つのシステム内で投稿原稿から最後まで完結する。査読から支払いまで、発表・発信まで。学会が複数システムを使わなくていいところがメリット。
ただ、そのそれぞれの段階において1つのサプライヤーとやりとりをするということもありえるだろう。コンテンツを複数の出口で出す、というのはどちらでもありうる。
- 安河内先生
学会個々に事情があると思うが、我々としてはBMC、Kahnさんと同じで、統一プラットフォームで全てやる。それからBMCのブランドを印象づけることもひとつのやり方かと思う。
著作権の帰属
- Q.
別の学会の方。基本的な質問で申し訳ないが、著作権について。通常、学会誌は著作権を学会に譲渡すると思うが、OAにした場合は? それから、閲覧者が自由に利用できるのか?
- Kahnさん
OA雑誌においては、著者に著作権は帰属したまま。出版社や学会に帰属するのはタイトルのみ。ただ、そのタイトルに学会が権利を持つのか否か等は取り決めでできる。ただ、ジャーナルタイトルのみ。
OAにおいて論文は使い手が自由に印刷したり色々な形でダウンロードできる、ということになっている。
- Q
では学会がOAを導入した場合、自由度も了承した上で、ということになる?
- Kahnさん
Yes.
OA化の編集方針への影響
- Q
少し目先は違うが。OAにしたことによる、学会誌・研究者の学術的な変化は生じうる? 例えば採択率は上がる? 下がる? 査読の現場は混乱しない? 査読者を増やしたり範囲を広げたりする必要がない? さらに、逆に専門性が狭まったりしない?
- Kahnさん
OAに移行するとなるとより多くの地域から投稿があったりする。今までにない国や地域からも投稿があったり。ただ、何を受理し何を拒絶するかはエディトリアル・ポリシー次第。そこはビジネスモデル次第。投稿数は3倍になったが受理・不受理の比率はそのまま、ということもできるし、変えることもできる。
ただ、OAに移行することで、柔軟性は高まる。エディトリアル・ポリシーの設定により、限定的な数少ない論文のみ受理するか、幅広く受理するか、ということを自由に決められる。購読モデル=冊子体刊行時にはページ数の制約があるわけだが、それがOAの場合(webのみの場合)にはなくなる。
- Q. 最初の質問者とは別の方
OAによって投稿数を増やしてジャーナルの質を上げる、という話だが、例えば非ネイティブの投稿が増えた場合に英語の質の担保はどうする? なんらかのサポートは行なっている?
- Kahnさん
出版社としては、著者がそのようなサービスを求めているのであれば、編集会社を紹介している。
一方、学会のBoardとしては、投稿数が増える分、それに対応した編集体制を組んでいただくよう求めており、協力している。
- 安河内先生
実際に投稿システムを見ていると、編集委員長に来る前にロンドンのオフィスと投稿者の間で何度もやり取りがあるのが見える。
それは英語ができていないとか、執筆規程にあっていない場合に先にチェックをしている。
査読プロセスに入ってくるのは最低限のクオリティを確保したもの。
また、雑誌のscopeにあったものを載せることが重要なので、scopeに合わないものは質が高くても不採録にしたり、他誌を紹介したりしている。
購読モデル⇒OAモデルへの移行について
- 山下さん:Kahnさんへ
購読モデル⇒OAモデルへの移行はすごく大変と思う。ビジネスがどう成功しているのか? 収支に関して、BMCとしてはどうサポート/コンサルティングしている?
- Kahnさん
学会によって色々なモデルを提案している。
もう発行にかなり経費をかけていてこれ以上かけたくない、という場合、こちらで発刊コストを引き受ける代わりに著者は掲載料を負担する方式を提案している。
2つめに、学会がメンバーの掲載料を一部あるいは全部負担する、という場合もある。そういうときは、学会非所属者の投稿分は収益として得て、それを学会員分にあてる、ということもある。
さらにビジビリティを上げるために非学会員まで含めてすべて負担する、という場合もある。
学会が何を求めているかによって選択するモデルは変わる。
例えば新規に雑誌を立ち上げたある学会の場合。最初の1年間は掲載料を全額、学会が負担して、ある程度たって投稿数や質が上がってきて十分に軌道に載ったとき、あるいはWOSに入ってIFがついたときに、掲載料収入を得始める、ということもありうる。色々フレキシブルにありうる。
機関単位のメンバーシップについて
- Q.
図書館員の方。今日、ここに来る前に教員から、大学がBMCのサポータメンバーか問い合わせが来た。
その教員が投稿したい学会誌が、機関がメンバーなら15%割引ということだった。
慌てて調べたがうちはサポータメンバーではなかった。
その制度について詳細を教えていただければ。
- Kahnさん
メンバーシップの種類は色いろある。サポータメンバーは少額の前金を払っていただく。その金額は研究者、教員数による。メンバーになればその大学の研究者の投稿はディスカウントする。
より主要なメンバーシップとしてはプリペイドメンバーシップがある。事前にある口座に一定の金額を振り込んでおいて、それを使って全ての出版コストを賄う。プリペイド機関の教員にはより大きなディスカウントが効く。全部なくなったら金額を追加してもらう。逆にあまり論文が載らなかったので使わなかった場合、かつメンバーを辞める場合には払い戻す。
さらにShared supportというのもある。掲載料を著者と研究組織で案分する。
- 山下さん
メンバーシップ、というのはBMCの? 特定の雑誌の?
- Kahnさん
両方ある。図書館の場合はBMCのメンバーになるし、学会は学会メンバーのためのメンバーシップがある。いずれもBMCのメンバーということにはなる。
著者支払い料金への研究者の反応は?
- Q.
図書館員。掲載料への研究者の反応は? 高いと不満? 学会が出せと思っている? 研究費で出すから別にいい?
- 永井さん
日本の状況から。聞く限り、BMCの著者支払い金額は高くない、という反応。そこそこの資金を持っている研究室がBMCに出すので、結果的に高いクオリティをBMCは保つ。一方で、研究費を持っていない研究室には高いだろうとは思う。
ただ、聞く限りでは、研究室で料金を払ってもBMCに出すか、日本の学会に出すかとなると、受理されるならBMCに出したいという人が、特に若手には多い。
- Kahnさん
日本からの投稿数が増えているという話をしたと思う。現在、日本のメンバーはまだ多くはないのでこれから増やしていきたいが、通常、研究資金を持っている研究室にとっては、著者支払いは大きな問題ではない。欧州委員会の研究プロジェクトで世界の研究者40,000人に調査をしていたのだが、日本の研究者は著者支払いを問題と思っていなかった。韓国、中国、日本の順で問題ではないと考える割合が多い。資金を獲得できているからではないか。
- Q. 最初の質問者とは別の方。
研究所の図書館員。著者支払い料金の議論もしたが、物理分野の人は理論に近いほど著者支払いに理解があるが、物性は払いたがらないし、化学は圧倒的に払わない、と思っている。機関で発行しているOA雑誌についての編集方針を話し合ったときも、化学の人は「そんなことをするならもう絶対出さない」と言う。
私の理解によれば、それは非常に分野に依存するし、日本の学会誌に出す人はもともと投稿料を払う文化もあったので、従来から払っていたものが著者支払いという名前に変わっただけ、と受け取る。
一方、E社のような投稿料を払わない雑誌に慣れた人は払いたがらないし、若い人で論文をたくさん書かないといけない人も嫌がる。
それは対象としている人の年代、求められる実績の数、分野、学会を中心に活動しているか、ということに依存するだろうと思う。
また、図書館の立場から、アメリカのある化学系の購読誌がもう当図書館では買えない。OAにするには化学系なので忌避感がある。会員になるのも嫌だ、と先生方は言う。著者支払いに対する研究者心理は複雑。自分の研究の将来を考えたとき、自分が払うのか、図書館等、自分が見えないところで払われたものを無料のように享受するのか。複雑だし、単純な議論ではない。
その後、BMCのAcremanさんからはこのエントリをアップするまでに、BMC発行誌の利用データをユーザにどう提供しているか、メールでご説明いただいた上に匿名化したサンプルまでいただきました(汗)
なるほど、IPレンジさえわかればその機関からの利用のレポート自体は、通常のCOUNTER形式で渡せるわけですね・・・。
ログを渡すわけではなく当該IPアドレス群からのアクセス数を、月別/ファイル形式別等にまとめた上でCSVファイル等で渡す形式です。
ディスカッションの途中で永井さんが「学会にログを見せてくれないのは一般的なのか」という主旨の質問をされていますが、こちらはいわゆる生ログ(Apache等のログそのもの)のことなので、学会側にそれが渡されているのかは・・・どうなのでしょう?(少なくとも図書館側にデフォルトで渡す仕組みはないはず
それにしてもあっという間にご対応いただいた、この速さはさすがBMC・・・っ。
いくつか発表中でも触れられていましたが、UniBio PressとJPAについては新プラットフォーム移行後の今後の動向が気になるところです。
UniBio Pressについては少なくともBioOne移行については確実に効果が出ているようなので、あとはPier on line・・・移行はどうかなあ、影響するかなあ・・・
ただ、新着論文にアクセスが集中するように動きが変わってきた、というのは注視したい動向です。
JPAについては、BMC移行+WOS採録でガンと投稿が跳ね上がるかどうかが第一の注目ポイントですね。
近々、Journal Citation Reports(各雑誌のインパクトファクターのソース)の2011年度版も公開されますし、学会/出版関係の皆さんにとっては体感気温以上にアツい時期が続きそうです。