かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「真夜中の図書館/図書館を作る―市民・企業・行政」


真夜中の図書館/図書館を作る―市民・企業・行政

真夜中の図書館/図書館を作る―市民・企業・行政



以前話題に挙げた「真夜中の図書館」ブログ版と「図書館を作る」の両A面みたいな構成になっている不思議な本。
「真夜中の図書館」は「今日、図書館に行った」で始まるショートストーリーの集合体みたいな感じで、詩的なエピソード集は別に図書館に興味がない人でも面白く読めるんじゃないかな、と思う。


「真夜中の図書館」パートも「図書館を作る」パートも、個々の提案については頷くところが多い。
以前ここでも言ってた公共図書館―書店連携についても、もっと積極的な感じで提案されてたし。
また、それらが集まった総体としての「真夜中の図書館」もこんな図書館があったら素敵だな、と思う。


気になったところとしては、民営化とサービスの低下が直結した問題であるかのように語られているところ。
そりゃあ業者を選ばずそんな能力ないところに任せていればそうなることもあるだろうし、実際そういう公共図書館も多いんだろうとは思うが。
委託先をきちんと選ぶことさえできれば、むしろコストの割にはいいサービスが提供できることもあるんじゃないかね?


もうひとつは金の問題。
市民参加の図書館ファンドにするにしても、(本文中にもあるが)図書館に必要なのは「継続的な」財源なわけで。
特にこの本の中で提言されているような高い能力と専門性を持つ司書を雇おうと思うと、人件費が割ととんでもないことになるんじゃないかと思ったり。
さらに職員は基本司書だけでかためたい、みたいなことも言われているが・・・そんだけの財源を確保し続けることってできるんだろうか?
資料費と違って金がないからはい切ろう、ってできるもんでもないんだし、人件費。


もちろん、図書館で働きたいっていう意識の高い人なら金に拘らずやる、って人もいるんだろうが・・・
個人の善意だよりのシステムと言うのも、ぜい弱性の面で恐ろしいものがあるしなあ・・・
もっとも、「真夜中の図書館」全体を通してそのぜい弱な個人の意識みたいなものを信頼している面が大きいから、これはこれで良いのかもしれない。