かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

h指数雑感


下の記事にも書いたけど、「情報の科学と技術」の最新号を読んできました。*1

お目当ては宇陀則彦先生の記事と、NIIの孫媛先生の記事。
宇陀先生の方は図書館webサイトに関する話など電子図書館関係だったので。
孫媛先生の方はビブリオメトリックス絡みで。


孫媛先生の「ビブリオメトリックスとは」の中ではこれまでビブリオメトリックスで用いられてきた指標や最近新たに出てきた指標の話が概観してあって興味深かった。
ただ一点、どうしても気になったのはh指数(h-index)に関する部分で、

100回引用される論文を1編発表した研究者と、1回しか引用されない論文を100編発表した研究者はいずれも被引用数100であり

と例をあげて、「(総)被引用数では生産性は高いが質の低い論文を粗製乱造する人と質の高い論文を書くが生産性の低い人を区別できない(から、そこにh指数の意義が・・・)」っていう風に続いていくんだが。
「100回引用される論文が1本の人」も、「1回引用される論文が100本の人」も、h指数は1なので、この2人はh指数を使っても区別できない気がする・・・
実際にはそのちょっと上の部分で「10回引用される論文を10編書いた人のh指数は10」みたいな感じでh指数についての説明がなされていたので、この人とあとの2人を区別できる、って意味なのかも知れないが。


しかし、今のは例が極端かも知れないが、h指数はh指数で弱点も多い指標だよなー。
最大の難点は「高質な論文を書くがまだ論文数自体が多くない人」の評価が不適切になってしまうこと。
「被引用回数5回の論文を5本書いた人」と、「被引用回数が100回の論文を4本、3回の論文を1本書いた人」では前者の方がh指数は高くなるのだが、実際のところ前者と後者でどちらかが高く評価されるべきかって言ったら後者な気がしてならない。
結局、十分な母数が存在しないと使いものにならない指標なんだよね。
「若手研究者が不利」という指摘は以前からあるのだが、じゃあ若手に揃えるべく単年度でのh指数とかを使うようにすればよいか・・・と言われると、まあ上のような理由から論文の母数が足りなくなって適切な評価が出来なくなりそうでもあり。
「何にでも使えるパーフェクトな指標など存在しない」は、ここにも当てはまるのであった。
やっぱり平均被引用回数とか被引用総数とか、ほかの指標ともあわせて使わないといけないのであるなー、と再確認。
他人に売り込むときは自分が一番有利になる指標で売り込みましょう、と。

*1:本当は「現代の図書館」の45(2)も読みたかったんだけど、なぜか筑波大の附属図書館はまだ44(4)くらいまでしかなく・・・