かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

私的録音録画小委員会中間整理に関するパブリックコメント


MiAUなんかで知っている人も多いかと思いますが、現在文化庁私的録音録画小委員会著作権法について検討している(違法コンテンツのダウンロード違法化とか、補償金制度についてとか)、その中間までの整理結果に関するパブリックコメントが募集されています。


参照


で、自分もまあダウンロード違法化とかには色々物申したいこともあったので、パブリックコメントを提出することに。
人生初パブコメですよ初パブコメ
略して初パブコ。
MiAUのテンプレートを利用しようかな、とも思ったのですが・・・まあ、せっかくの初体験なので自分でちゃんと「中間整理」読んでコメントしたいところにコメントつけてみることに。

160ページ以上もありやがクソ長い大部の報告書でちょっとめげかけましたが、読んでみたらまあそこそこ読みやすかったので一安心。


せっかく書いたのでパブコメ全文を以下に転載しておきます。

1.個人/団体の別
 個人
2.氏名/団体名(団体の場合は、代表者の氏名も御記入下さい。)
 ***
3.住所
 *****
4.連絡先(電話番号、電子メールアドレスなど)
 *****
5.該当ページおよび項目名
 以下、小見出しに表記。全3件。 
6.意見
 5に準ずる。
 私が意見を述べるのは、以下の3件です。

 1.105ページの「第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目
 2.138ページの「4 補償金額の決定方法 (1)現行制度の問題点」の項目
 3.71ページの「違法な携帯電話向け音楽配信からの私的録音の現状について」の項目


 ■105ページの「第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目

 *この項目について私は反対意見を提出します。理由は下記の通りです。

 ○適法サイトと違法サイトを識別できるようにすることは困難である

 「私的録音録画小委員会中間整理」(以下、「中間整理」)中では「利用者が明確に違法サイトと適法サイトを識別できるよう、適法サイトに関する情報の提供方法について運用上の工夫が必要と考えられる」としているが、現状ではアップロードされているコンテンツが全て適法であることが明確なサイトとは、権利者自らがサイト運営している場合で、かつ権利者が他者の権利侵害を行っていないことが明確である場合(つまりレコード会社等メーカーが自ら所有するコンテンツを配信している場合)等に限られる。「YouTube」、「ニコニコ動画」といった投稿サイトのようにアップロードを行うものが限定されない場合はもちろん、個人運営のサイトにおいても運営者が自らが権利を保有するコンテンツである、と称して他者が権利を保有する音楽・動画コンテンツを配信する可能性はある。
 仮に適法サイトをなんらかの方法で識別する手法(「適法マーク」等)を用いたとしても、上記のような現状を踏まえれば、「完全に適法であり、今後も違法コンテンツをアップロードしない保障」をサイトに与えられる場合はごく限られ(レコード会社等によるコンテンツ配信程度しか考えられないが、それすら「違法コンテンツをアップロードしない可能性が高いと思われる」だけであり著作権侵害の訴訟等の実態を踏まえれば権利侵害を行わないとは限らない)ることとなり、実際には適法であるコンテンツを配信しながら適法サイトであることを証明できない場合、逆に適法サイトであることを証明されたサイトにアップロードされた違法コンテンツへの対処の問題など、ユーザーの混乱を招くケースが多数生じ得ると思われる。
 以上のような状況を考えれば違法サイトと適法サイトの区別とは(現在の技術では)「工夫」でなんとか出来るレベルを越えたものであり、「適法サイトに関する情報の提供方法についての運用上の工夫」とは実行可能性が伴わないか、非常に甘い目測に基づく文言であると思われる。技術あるいは制度的にこの問題を解決する方法を明示しない状態での法改正は不適切であると思われる。



 ■138ページの「4 補償金額の決定方法 (1)現行制度の問題点」の項目

 *この項目について私は反対意見を提出します。理由は下記の通りです。 
 ○補償金の対象機器の範囲を見直すのであれば、金額の決定手続きもあわせて見直す必要がある 
 「中間整理」中では「現行制度における補償金の決定続きに大きな問題点はないと思われる」とあるが、その前項までにあるような対象機器の範囲の見直しが行われるのであれば、当然補償金額の決定手続きについても見直す必要がある。
 特に(現在ではまだ対象機器に含まれるかの合意形成に至っていないとされている)PCなどの録音・録画を主たる目的とするわけではないが録音・録画機能も有する製品を補償金の対象に含む場合、録音・録画を主たる目的とする機器と一律に補償金を課すことは不公平である。
 PC等の多機能製品は文書作成をはじめ録音・録画以外の多目的に使用できる故に単一目的にしか使えない製品よりも価格設定が高くなっており、現行の価格に対し一定割合の補償金を課す制度では録音・録画を主目的とする機器に対し高額の保証金を課せられることとなる。これは録音・録画以外の機能に対してまで補償金を課しているのと同義であり、補償金額の決定手続きとしては著しく不適切である。
 よって、補償金の対象となる機器の範囲を見直す場合には、その機器が録音・録画を主目的とするのか、録音・録画は多機能のうちの一つにすぎないのかなど、場合に応じて補償金額の算定方法についても変化するよう制度を見直さなければいけないと思われる。



 ■71ページの「違法な携帯電話向け音楽配信からの私的録音の現状について」の項目

 *この項目について私は反対します。理由は下記の通りです。

 ○アンケートの実施方法が不適切である

 「中間整理」によれば該当項目で扱われているアンケートは「モバイルアンケートによって行われた」とのことであるが、そもそも携帯電話を利用したモバイルアンケートに回答するのは携帯電話利用者の中でも特に携帯電話を良く利用するグループであることが想定され、携帯電話を電話としてしか使わない利用者、メールや初期設定で登録されているサイトは利用するが自らURLを打ち込む・検索エンジンを用いるなどしてサイトを探すことのない利用者など、多くのライトユーザー層についてはアンケート回答者のグループ内に含まれていないものと思われる(おそらく審議会構成員の多くもそのようなモバイルアンケートに回答したことがないか、存在自体知らないのではないだろうか?)。
 それにも関わらず同項目では違法音楽ファイルの推定ダウンロード数算出時に同調査での違法サイト利用率を計算に用いるなど、モバイルアンケートの回答結果を携帯電話保有者の行動を代表する数値として捉えている面があり、これは調査の実施方法とその結果の利用の面から言って著しく不適切である。
 より正確な数字を算出するにはランダムサンプリングによる質問紙あるいは電話・面接での調査が必要であり、また法改正にあたってそのような調査による正確な数値をデータとして用いることは政府機関としての義務でもある。
 以上の観点から、私は本項目における調査結果を審議会における参考資料として用いることに反対の意見を述べる。

(見りゃわかると思うけど、報告書本文見ないとなに言ってるんだかわけわからないから要注意)


しかし・・・コメントつけたいところにコメントしてったら、MiAUと似ているような似て非なるような不思議なパブコメになったなあ・・・
意見提出と言うより、「無理に決まってるだろ、常考」とか「それじゃおかしいだろ、常(ry」とか、そんな感じのパブコメに(汗)
まあ、もともと「きちんと調査した結果に基づいて、実行可能な制度を組み立てろ」ってのが自分の意見で、違法コンテンツのダウンロード違法化とか自体については中立だしな、自分・・・


まあ、なんだ。
性急にやらないで5年くらいゆっきり考えながら法制化してくれよ、ってのが本音だね。
補償金制度*1導入したときには10年くらい時間かけて審議してたって話*2だし、焦ることもないだろ、とかなんとか。


11/8 0:50追記

コメント欄で「このエントリだけではmin2-flyの(私的録音・録画と著作権問題に関する)立ち位置がわからない」と言う指摘があったので、以前その点について書いたエントリへのリンク貼っておきます。

該当部分は以下のとおり(元エントリは私的録音・録画以外の部分についても触れているけど・・・延長問題の方も書かんとな、そう言えば・・・)。

とにかく、「感覚や根拠になってない根拠に基づいてものを進めんなや、会議でいくら話し合ったってわかりゃしないからちゃんと予算つけてきちんとした調査や技術的な検証を行った上で科学的に話をせんかい」、って言うのが俺の考え。

そこまできちんと調査・研究を行った上で「違法サイトからのダウンロード違法化によりどれだけの効果が望まれ、それに対してユーザの委縮などによる損益がどの程度にのぼり、全体としてはどれだけの経済効果が見込めます」っていうような感じで実証的な話をしようぜ、っていう感じ。

そんな感じなので、技術的な検証とか統計的な正しさの欠けていると思われる部分にパブコメでは突っ込んでます*3
ちなみに技術的な話、ってところだと

のような開発も進んでいるそうなので(これだとプロの著作権放棄は目視で確認しないとわからないし、アマの著作権侵害はスルーされる問題も残るとは言え)、現在流通しているコンテンツに占める著作権を侵害されたプロ製作コンテンツの割合なんかから技術の応用可能性とかを検討して行くのであれば(そして結論が出るまでいたずらに法制化を急ぐことがないのであれば)違法コンテンツが区別できるようにする、って話もより現実味を帯びてくるかも、とは思ったり。

*1:デジタル録音機器や録音媒体のうち政令で指定されたものについては、購入者は価格に上乗せしていくらか権利者への補償金を購入時に支払っている。その制度。

*2:「中間整理」によれば

*3:補償金額の決定方法の話は若干別だけど