かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

私立図書館?

私立の学校はたくさんあり、学校教育の一躍を担っているのに、私立の図書館は、社会教育の一躍を担っているのだろうか....なぜ私立図書館は成長してこなかったのだろうか...と。


一応の確認だけど、数が少ないのは「私立の公共図書館」ね。
学校図書館大学図書館専門図書館の中には私立の図書館もいっぱいあるというか、大学図書館に至っては図書館の70%近くは私立だよ。

第1章「総括事項」によれば、分館および部局図書館・室も含めた図書館数は国立293、公立120、私立948で私立が約70%を占める。
中央図書館に限れば、国立87、公立73、私立556(ちなみにこの数字はそのまま国大/公大/私大の数に一致する)で約78%が私立。
なので、設置主体が国・自治体ではない図書館自体は国内にはけっこうな数があるということになる。
まあ、公立公共図書館の数は2005年段階で2,953あるし*1学校図書館についても2005年段階で小・中・高あわせて公立学校37,776に対して私立学校2,236なので*2、国内にある図書館全体を見ると圧倒的に自治体または国の予算からなる図書館の方が多いことに変わりはないだろうけれど。
ちなみに数字が全部2005年なのは学術情報基盤実態調査がまだ平成17年版までしか出てないからです。


で、ではなぜ「私立の公共図書館」が少ないのか、という点だけれど・・・そりゃ、別に「冷遇」したわけじゃなくて、単純に国内で入館料とったり資料提供の代金を求めたりする形での公共図書館経営モデルが成り立ちにくかったからでは?
このブログでは再三言ってるけど、基本的に図書館って親組織(設置主体)の目的達成のためにある「従」の存在なので、独立した組織として(どこからも予算措置を受けず単体で成立するものとして)やっていくのはなかなか難しいわけで*3
図書館で直接稼ごうっていうよりは図書館によって親組織の収益上げて、その分で図書館にさらに金回して貰おう、ってのが今のところの図書館が運営費を得る基本モデルになる。


だから設置主体としてパブリックセクターではなくプライベートセクターが入りうる分野(学校・研究機関・企業等)では普通に私立の図書館も存在するわけだが・・・
公共図書館の設置主体って自治体だし。


今のところ、自治体行政にプライベートセクターが参加している例は(それこそ指定管理者制度とか)けっこう色々あるが、「自治体自体がプライベートセクター」という例は・・・あったら面白いが・・・
希望の国のエグゾダス』みたいな感じになるのか、その場合??
まあとりあえずまだ国内に例はないので、必然的に公共図書館的なこと(地域住民を対象としたサービス)をプライベートな資本によって、しかも独立した組織として行おうとした場合には多くの図書館の運営モデルとは外れたモデルになり、それは数も少なくなるだろうさ、と。
実際には補助金と寄付金で賄う自治体立ではない公共図書館の例もあるが(有名どころはニューヨーク公共図書館とか)、あれはあれで利用者から料金徴収してるわけじゃないしなあ。
そういう意味ではまだしも利用者から直接金をとる公共図書館よりは寄付金を募る形での私立公共図書館モデルが国内でも上手く回せるように税制改革したりした方がよさそうな気もするが、さてはて・・・


・・・いや、やっぱ一番面白いのは私立自治体を作って全部プライベートセクターに運営を任せてみることではあるんだが。
ある意味究極の市場化テスト
「本当に企業やNPOに任せた方がうまく行くなら全部任せちゃえばいいじゃない!」という・・・・・・・・・それでうまく行ったら最終的には国家が私立になるのか?
その場合国立大学は国立なんだけど私立でもあって、日本の図書館はすべて私立でありつつ私立自治体立と本当の私立に分類されることに・・・どこのショート・ショート小説だ・・・*4

*1:404

*2:平成17年度学校基本調査 調査結果の概要(初等中等教育機関、専修学校・各種学校):文部科学省。もちろんこの差が生じる原因は小・中学校の大多数が公立だから。2005年段階で、国内の私立小学校は194校で、小学校全体の約0.8%。私立中学校は721校で、約7%。高校は28%くらいが私立。大学は70%が私立・・・なので、学年が上がるほど私立の割合が増えていくということになる

*3:だからこそ六本木ライブラリーとか大宅壮一文庫とかが凄い、って話になるわけだが、そういやここら辺は日本図書館協会私立図書館のリンク集に入ってないね

*4:・・・あ、でもGoogleの野望の最終到達地点ってけっこうそれに近いのか? Libraryプロジェクトもやっていることだし、「Google国家」なんてジョークだか本気だかわからんことも以前のたまっていたし・・・してみるとGoogle Book SearchやOpen Content Allianceなど企業+図書館系、Universal Library Projectなど図書館+財団系、あるいはついに参戦表明した国立国会図書館など単独図書館系が今後入り乱れるであろう電子図書館の世界(ジャーナルを加えるとさらに大混戦だ)では私立図書館がリアル図書館より相当でかい顔をしている、とも考えられるか・・・そもそも金の出所が複雑すぎて何が私立で何が公立だとか言えるような状況ではないが。