かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

「この本はわしが選んだ」


けっこう前にアップされていた記事なのだけど、よくよく考えて見ると非常に面白いのではないかということに気がついたので紹介。

ですが、残念ながら(?)書架に並んだ本には誰が選んだか!の印はついていません。
OPACにもそんな情報は出てません。
で、ここまで書いて思ったんですが、そういやなんで出ないんでしょうね?なんか出てもいいような気がしてきた・・・

国内外問わず、そういうOPACがあったら、ぜひ情報ください。


これ、やってみたらどんな効用があるか、ってのを考えると色々と面白い。
図書館員のみでも面白いが、教員による選書分も(まあ同意した人の分だけとか限定の要があると思うが)「誰が選んだか」を表示するとなお面白い。
いわゆる「教員推薦図書」みたいなのをコーナー設けている図書館はけっこうあると思うが、あれは教員が学生に読んでもらいたい本を置いてあるんであって、必ずしもその教員が選書した本が置いてあるわけではないし。
「え、これA教授が選んだの? 直接関係なさそうな分野だけれど、選んだからにはなんか理由があるんだよね・・・?」みたいな興味・関心からそれまで手出ししてなかった資料に手が伸びる(そこから新しい発見がある)可能性が増えそうだ。
サブジェクト・ライブラリアン*1が望みにくいのであれば、いっそ同じ分野の研究者間で情報行動を共有してしまえばいいじゃないか、と。
もちろん直接コミュニケーションできるところはすりゃあいいのだが、教員-学生間など必ずしも1on1のコミュニケーションを頻繁に持ちにくい関係の場合にはこういうやり方で資料をリコメンドする、ってのもありな気がする。


図書館員による選書の場合は、教員による選書に比べて図書館員個人の情報が受け手側に少ない(っつーか余程の有名人を除けば受け手に図書館員個人のバックグラウンドに関する情報なんてない)ので、情報行動のフィルターとしては相当数の選書を経ないと使いづらいところが難点か・・・
卒業した学部とか、専門領域・過去の執筆文献とかもあわせて公開してくれるなら・・・ってそれはつまりサブジェクト・ライブラリアンじゃないか・・・。
サブジェクト・ライブラリアン的な要素を除くとすると、本当に「店長のオススメ」とかと変わらないわけだが、それだと大学図書館としてはちょっと魅力に欠ける気も・・・や、でも「生協の白石さん」的なコミュニケーションツールとして考えれば面白いことは面白いか?


逆に「誰が選書したか」をさらすことのネックとしては、教員選書分については「その教員が次に取り組もうとしている/興味を持っている」ことが学内外にバレバレになる可能性があること(苦笑)
司馬遼太郎が新たなテーマに取り組むときは関連する古書がごそっと神田古書店街から買われて行った、っていうような逸話があるけれど、あれと同じような現象がそこかしこで見られるようになるわけで・・・まあ学内というか組織内部で知られる分にはそう大きな問題ではない(建前上は)かも知れないが、外に知れるのは・・・どうなんだろうね?
アイディアが盗まれたりする心配をされると、教員は乗ってくれなさそうな。
そう考えると、図書館員選書分から始めるのが吉かなあ・・・


図書館員分をさらすことのネックは、いやこれはネックとは呼ぶべきじゃないと思うが、いい加減な選書をすると叩かれること(笑)
「こんなん誰が使うんだよ!」とかね(教員分は少なくともその教員が使う)。
貸出利用統計とあわせて見ると、誰が選んだ資料がよく使われて、誰が選んだ資料は使われにくいのかが一目瞭然に。
分野ごとに利用動向に差があると思うし、入門書なのか専門書なのかとかの違いもあるので一概に貸出数だけで評価することはもちろん出来ないが、逆を言えば分野による重みづけと入門/専門程度での重みづけを上手いことやれば担当者の選書力(「良書」を選ぶ能力ではなく、「自分の図書館の利用者が必要としている資料」を選ぶ能力)がかなりの程度明らかに!*2
単に貸出冊数だけ見られる場合(つまり多くの図書館評価指標としての貸出冊数による統計)は「よく使われそうな軽めの本だけ選ぼう」とかいうこともできるわけだが、「誰がどれを選んだか」がわかる仕組みであれば、選書方針に合わない本だとか明らかに貸出増加狙いの本を選んだ人もすぐにばれるわけで、それはそれで速効叩かれるだろうし。
なんとも緊張感のある選書になりそうですな。
でも「専門職」っつーならそんくらいの緊張感に耐えるのは当り前のような気もするな。
医師・弁護士の緊張感(マジで人命背負っちゃってる緊張感)に比べれば・・・とかなんとか。
それに良い選書をしていれば高評価を得られるかも知れないわけだしね。


どっかで実際に既にやっているところとかあるのかなあ・・・

*1:「特定主題や学問分野の専門的知識を持つ図書館員で、その主題領域の資料選択と評価に責任を持つ」(図書館情報学用語辞典第3版"主題資料専門家"より.)

*2:図書館員による選書担当分って基本、学生向けってことになるんだろうから入門/専門の重みづけもいらないのか? その場合、計算式はより簡単になるが。