3月以来、初のイベントレポートは千葉大学アカデミック・リンク・センターのセミナー第1回です!*1
- アカデミック・リンク・センター ウェブサイト
アカデミック・リンク,はじまる
- キーワード は… 「デジタルコースパック」,「レガシーコンテンツ」,「著作権処理」,「学習空間」,「(本当の)ラーニングコモンズ」,「スチューデント・アシスタント(SA)」
2011年4月1日。「アカデミック・リンク」がスタートしました。アカデミック・リンクは,千葉大学において「生涯学び続ける基礎的な能力」「知識活用能力」を持つ『考える学生』を育成するために,附属図書館,総合メディア基盤センター,普遍教育センターが協力して立ち上げる,教育・学習のための新しいコンセプトです。これは,平成20年12月の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」において提示された,知識基盤社会,学習社会における市民の育成,高等教育のグローバル化の中での質の維持・向上,職業人としての基礎能力、創造的人材の育成といった,大学に向けられた社会的要請に対する大学からの一つの回答でもあります。今回のセミナーは,連続するセミナーの第1回として,アカデミック・リンクのコンセプトの中で,具体的に何をしようとしているのかをセンター教員からお話しするとともに,広く参加者の皆さんからアカデミック・リンクへのご意見やご要望を伺う機会としたいと思います。
千葉大学のアカデミック・リンク構想については今年2月に開催されたプレ・イベントでもかなり詳しく紹介されていましたが*2、今回はアカデミック・リンクで取り組む7つのプロジェクトの詳細についても述べられており、ディスカッションも盛り上がって、プレ・イベントに参加した自分にとっても新鮮なセミナーでした。
ということで以下、いつものように当日のメモです。
例によって例のごとく(と、書くのもずいぶん久しぶりですが)、min2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲でのメモとなっており、加えて今回は久々のイベント記録ということもあって至らない点も多数あるかと思います。ご利用の際はその点、ご理解願います。
また、問題点・間違い等お気づきの方は、コメント欄などでご指摘いただければ幸いです。
では、まずはアカデミック・リンク・センター長の竹内先生のお話からです!
竹内比呂也先生(千葉大学アカデミック・リンク センター長)
- 今日は学内者メインで企画
- 建物について
-
- 完成後イメージの紹介
- 建物を支える構造のまわりに非常に大きな書架を作り、「ブックツリー」と名付ける
- 「見せる」書架
- 完成後イメージの紹介
- アカデミック・リンク構想について
- 2つのポイント:
- コンテンツ活用の重視
- 授業との関連の重視
- 電子資料の提供の試みはあちこちである
- それを使うインセンティブを学習者にどう与えるか、の議論はない
- 授業で必要なものとは? ということをベースに・・・
- 使いやすさの向上/それを使って学生の自由な活躍を促す・・・「考える学生の創造」へ
- 生涯学ぶための基礎的な力を身につけるには?・・・コンテンツをうまく活用する能力が最も大きな力になるのではないか?
- その基礎的な力をアカデミック・リンクで身につけて欲しい
- 2つのポイント:
- 学生を中心にみたアカデミック・リンクのイメージ
- 従来・・・授業の受講中は図書館を使わなくてよく、学期末に初めて図書館で資料を使う、ということもある
- 「卒業2ヶ月前に初めて図書館に来た学生」という冗談・・・コンテンツを全く使わなくても卒業できてしまった
- それで生涯学ぶ基礎的な能力が身についた、とは言えない
- 従来・・・授業の受講中は図書館を使わなくてよく、学期末に初めて図書館で資料を使う、ということもある
-
- 多様なコンテンツを使う:
- 電子的なコンテンツの提供
- 学生はGoogle偏重・・・そこにのっているコンテンツは当然提供する
- 電子的なコンテンツの提供
- 多様なコンテンツを使う:
-
- 利用のサポート:
- 重要なものを見落としているケースもある。そのサポートの仕組が要る
- 教員に質問しようにも、「先生が忙しい」「怖い」
- 教員がアカデミック・リンクに出ていってサポートする/個別の学生のスキルに合わせた相談
- 学生-学生の学習支援
- 利用のサポート:
-
- 「ここに来ればほしい形でコンテンツが入手し、ほしい形で人的サポートが得られる」ということが一つの場所に重なっている
- それが学生から見たアカデミック・リンク
- 「ここに来ればほしい形でコンテンツが入手し、ほしい形で人的サポートが得られる」ということが一つの場所に重なっている
- アカデミック・リンクを実現するには?
-
- さらに外側には大学提供の様々な機能
- 高大連携、情報基盤、国際連携・・・密接な連携が必要
- DNPと協定を結んで提供コンテンツについて相談
- さらに外側には大学提供の様々な機能
- 機能をうまく果たすための組織:アカデミック・リンク・センター
- 研究開発部門/アクティブラーニング推進部門の2部門
- そこで必要な機能を実現するための7つのプロジェクトを発足
- それについてはセンター兼務教員からも詳しく説明してもらう
川本一彦先生(センター兼務教員)
- 3つのプロジェクトについて説明する
- デジタルコースパック構築プロジェクト
- レガシー・コンテンツ再生プロジェクト
- オンライン・クラスルームプロジェクト
- 資料が電子化された環境、というのが前提にある
- それを高等教育にどう活かすのか?
- 電子化といってもターゲットは広い。それだけではどこをどう狙うかわかりにくい
- あくまで授業を中心に置いて、その中でコンテンツをどう活かすか、ということで枠を設定している
- 3つのプロジェクトはそれぞれ電子化に関わるもの。どこが違うかといえば・・・
- レガシー・コンテンツ再生プロジェクト
- デジタルコースパック構築プロジェクト
- 授業の電子化、もう少しラフなもの。教員の自作授業資料/本の一部、授業に使う部分のみの電子化等の需要への対応
- 点在する資料を1つのパッケージにして授業で活用できるようにする/教員が自分で好きな資料に基づいて教科書を作る、イメージ
- オンライン・クラスルームプロジェクト
- 授業そのものの配信
- 生もの自体を電子化して予習/復習に活かす
- しかしいろいろなものを電子化すると・・・フォーマットの問題(電子書籍/映像...)
- インタフェースが煩雑化すると使い勝手が悪くなる
- なるべくオールインワンでコンテンツを提供したい/授業のパッケージ化
- コンテンツ間の相互リンクもできたほうが好ましい
- プラットフォームは?
- 近年の流れ・・・インターネットは誰でも使えることが売りだったのに、コンテンツの囲い込み戦略が取られるようになってきている
- あるプラットフォームを使うには専用端末が要る、など
- 教育用コンテンツは囲い込みにはマッチしないのではないか?
- 目指すところ・・・プラットフォームに特化するのはイヤ
- 自前で用意できるものには限度もあるが・・・プラットフォームに依存しない環境構築
- 授業ごとのカスタマイズも検討が必要
- コンテンツはセットで提供。個々の製作環境等は気にならないようにしたい
- 近年の流れ・・・インターネットは誰でも使えることが売りだったのに、コンテンツの囲い込み戦略が取られるようになってきている
- 具体例:授業資料ナビをベースにしたコンテンツ作成
- 1〜2年生向けの普遍教育(一般教養)科目について、教員が授業に先立って資料を用意/学生にそれをナビゲーション
- ここで協力している教員等を中心に、コンテンツの電子化と授業への活用を促していくプラン
- 具体例2:LMS(Moodle)との連携
- Learning Management Systemとの連携
- ただしすべての教員が使っているわけではない
- 利用している教員をターゲットとしてプロジェクトを進めていく、というのがプラン
- Learning Management Systemとの連携
白川優治先生(センター兼務教員)
- 4つのプロジェクトについて説明する
- デジタルコースパック構築プロジェクト
- 情報利用行動定点観測プロジェクト
- 「参加する学習」プロジェクト
- 「教育力」「学習力」向上プロジェクト
- デジタルコースパック構築プロジェクト
-
- 具体的な広がり:
- 普遍教育・・・2011年度には1,282の科目。その中で指定教科書がある科目は36.35%
- 残りは1冊の教科書ではなく様々な教材を使っている
- その電子化は大きな広がりを持っている
- 具体的な広がり:
- 情報利用行動定点観測プロジェクト
- アカデミック・リンクの活動の中で、教育・学習の成果を検証するプロジェクト
- 学生がアカデミック・リンクをどう利用して学習しているのか?
- その結果、どのような学習成果を挙げているのか?
- 情報利用行動/学習・生活空間の利用状況の観点から調査・検証
-
- 具体的には・・・2つのデータ分析
- 学習/生活空間・時間利用状況データ
- 自己申告型・ウェブアンケート調査
- 授業への参加・出席、自習室(アクティブ・ラーニング・スペース+それ以外)の利用状況、自宅学習の状況
- 情報利用行動分析
- アカデミック・リンクに設置したデジタル端末の利用状況
- 各種モバイル端末や図書の選択・利用
- 利用記録・アクセス記録の分析から把握
- 学習/生活空間・時間利用状況データ
- 具体的には・・・2つのデータ分析
-
- さらに学籍番号をキーに、学生の履修・成績などの学務情報を結びつけて分析(min2-flyコメント:キター! それやらなきゃ嘘だよね!)
- アカデミック・リンクという空間の意味の検証
- 電子化の効果・成果の検証
- 「定点観測」・・・年に1回の調査・分析を継続。学習行動の変化も含めて把握する
- 「横断的」・・・関心のある他大学に、比較可能な形での参加を呼びかける
- さらに学籍番号をキーに、学生の履修・成績などの学務情報を結びつけて分析(min2-flyコメント:キター! それやらなきゃ嘘だよね!)
- 「参加する学習」プロジェクト
- アクティブ・ラーニング・スペースで学生による学習相談を実施する
- いわゆるSA:Student Assistant
- センターとしては・・・SAへの体系的研修を提供
-
- 具体的な活動・・・学生同士の「コンテンツを利用した」学習相談
- SA候補:学部学生/大学院生双方を考えている
- 教育支援活動への参加機会の提供(SA)
- 「教員には聞きにくくても先生には聞きやすい」・・・学習への主体的参加(相談者)
- 自分で学ぶ/わからないことを聞く/人に教える・・・「自律的に学べる学生」へ
- 具体的な活動・・・学生同士の「コンテンツを利用した」学習相談
- 「教育力」「学習力」向上プロジェクト
- FD/SD + 学生の学習する力、を含めて考える
- 教員:教育が職務
- 学生:学ぶ
- 大学職員:学習の支援を担う
- それぞれの能力向上にアカデミック・リンクが貢献したい
- FD/SD + 学生の学習する力、を含めて考える
-
- 具体的には・・・セミナー開催/シンポジウム開催がメイン
- 学習支援・教育支援等について学ぶ機会の提供
- センターだけではなく、普遍教育センターや全学FD企画室、各部局のFDへの貢献等を通じて全学的に展開したい
- 具体的には・・・セミナー開催/シンポジウム開催がメイン
再び竹内先生
- 最後に残ったもの:「新しい図書館員」プロジェクト
- 図書館/図書館員の役割は変わっている
- 図書館/図書館員は学生サービスとしてなにを考えるのか?
- 従来・・・情報リテラシー教育への参加などの教育支援
- 新アカデミック・リンクでは教員自身も参加、そこに図書館員も参加
- 空間があるだけではなく、コンテンツがあり、ツール類もある
- それをうまく活用して学習をサポートする図書館員の役割とは? どのようなモデルが考えられるか?
- 色々試みてみよう
- 正直にいって、具体的な最終的イメージはまだない
- 図書館/図書館員の役割は変わっている
- 学内外関連組織との連携
- 7つのプロジェクトはアカデミック・リンク内だけで完結するわけではない
- LMS, 認証, ・・・
- 7つのプロジェクトはアカデミック・リンク内だけで完結するわけではない
- アカデミック・リンクの中心は学生
- いかに自由闊達に学習してくれるか/いかにその環境を整備するのか
- 学習環境・コンテンツ提供環境の融合を基本に、学習支援を提供
- コンテンツを使用したアクティブ・ラーニング環境の構築
- コンテンツを十分に活用しながら生涯学び続ける人材を輩出する
質疑応答
- Q:図書館員。白川先生に質問。当館でも学習サポートを計画している。「コンテンツを利用した学習相談」とおっしゃっていたが、コンテンツ活用の意味と、より具体的な場面を教えていただきたい。例えば大学1年生がドイツ語の格変化を覚えられない、と言ってきたら、図書館のレファレンスのように文献を紹介する? それとも自身が1年生のときの経験等を伝える? あるいは人的な学生の交流を期待している?
- 白川先生:やってみないとわからないところは当然あるが、今お話いただいた例をすべて取り込みたい。学習相談はどの大学でも行われているが、個々が別々にされている。図書館であれば参考になる図書を紹介する、だけ。個別の先生対策のような話や自身の体験は切り離される。学生同士の相談は逆にコンテンツと切り離されて、経験や個別対応にとどまる。そこがつながることを想定している。
- Q:そうするとコンテンツ利用については研修を施した上で、試行錯誤していく、ということ。
- 竹内先生:それにコンテンツそのものも従来型のレファレンス教育だけにはとどまらないと考えている。紙の資料やブラウザで見られるものだけにとどまらない、全く新しいタイプの資料が同時に出てくることを考えている。
- 元千葉大学・土屋先生:でも動詞の活用の話にコンテンツなんかいらないんじゃない? そこまで図書館に拘る必要はないんじゃないか? 先生の教え方が悪いから帰れ、と言えば?
- 竹内先生:なんでもかんでもコンテンツという気はないが、コンテンツを自発的に使うことが将来学ぶことを考えた場合の基盤である、と考えている。そこは強調したい。
- 土屋先生:その話だと図書館の今までの役割を・・・日本における電子化・情報化の悪弊を踏襲していないか。役割分担や仕事の流れを変えないで、できそうなところだけ自動化する。結局変わらず、既得権益だけ残る。教員は決まった時間に授業に行けばよく、図書館員は図書館で待っていればいい。仕事をする側のライフスタイルは変わらない。それでやれる間は幸せだろうが、やれなくなったら? 竹内先生くらいは大丈夫そうだけど白川先生の年代だと・・・
- 白川先生:難しいが・・・新しいライフスタイル/役割がまだ具体的にイメージ出来ていない。今のままで大丈夫かと言われて、新しいものが見えていないのに答えられない。土屋先生がイメージされる新しいものって?
- 土屋先生:もちろん僕だってわからないが、理想的には理念が実現すれば千葉大学の学生はちゃんと勉強するようになる。少なくとも白川さんが企図するような勉強はしないことになる。例えばオンラインコンテンツですべて済む時代がいずれくるので、図書館に来て聞くのはナンセンスになる。教員に聞くのと図書館に聞くのはわからない。どういうわけか千葉大の学生だけ色々な人に聞くようになるとすると、質問に答える際に教員と図書館員で差はないんじゃないか? そうすれば教室と図書館員の差もなくなる。それがりそうだとするならばそれをどうやって実現するのか、教員は図書館員とどこが違うと言い張れるのか?
- 竹内先生:役割分担を考えるとそうなるだろうが、ひょっとすると分担はなくなるのかも知れない。ある種の教員や図書館員はだんだん淘汰され、限りなくお互いに近づくかもしれない。それが極めて短い時間に実現するとは考えられないが。土屋先生が日頃使う言をあえて使うなら、大学/教室が消えてもアカデミック・リンクが残る、というのがものすごく理想的に実現した場合の形。そこに至るには物凄いプロセスがあると思う、そのためのある種の実験でもある。
- その意味では千葉大学だけで完結するものとも考えていない。さまざまなコンテンツを学生に提供する。中身も媒体も多様になる。その多様性の中で使い手がなにをどう好み使うのかを、ある種の実験としていろいろな方に見てもらうことも目的。うまくいったことは取り入れてもらう、いかなかったことは真似したい、という形でいろいろな方に取り入れてもらえば、多様な形で実現していく。
- Q:図書館員。この手のプロジェクトは少しでも多くの教員が関心を持ち参加しないとうまくいかない。学内教員に参加してもらう企画を作るのは重要だろう。しかし教員としてはやって手間がかかるのではなく、授業や研究が進むものでないと産科は難しいのではないか。そこでパスファインダーの浸透率を聞きたい。それが高いのであれば先生方にすっと入っていくのだろうし、そうでなければ難しいのではないか。
- 竹内先生:今の参加科目数は70科目。図書館が勝手につくるのではない、というのがポリシー。教員と図書館員がコミュニケーションしながら作る。その内容も、「〜について」というのではなく、ある授業のためのものとして作る。それが他大学との最大の違い。プロジェクトとしてはアカデミック・リンクのプロジェクトとしてやるが、実態としてはリエゾン・ライブラリアンの枠の中でこれまでやってきた。図書館の誰かが特定の科目の先生の担当になる、という割付をしている。その成果として、教員が自分の図書館利用時には必ず特定の図書館員に聞きに行く、というような例も出てきた。
- Q:RefWorksは千葉大にも入っているようだが、その活用を学生にどうやって促すのか。使わせるには授業で追い込んでいくのが重要だと思うが、今はどういう常態か?
- 竹内先生:現在登録ユーザは千数百名。アカウントを持っている人がそれくらいいる。図書館で講習会を実施したり、授業の枠の中で使い方を組み込んでいる。例えば私の情報検索演習の中では結果をRefWorksの中に保存するやり方について図書館員に頼んでいる。しかし他に体系的に使う科目は・・・
- 土屋先生:RefWorksはもう古いんだよ。ナンセンス。
- 竹内先生:お金を出せって言ったのは土屋先生でしょ。
- 土屋先生:常に新しいものを!
- Q:著作権処理について。国費でやる話なのだから、少なくとも国立大全部、理想を言えば私学も使えるような権利処理をお願いしたい。
- 竹内先生:もちろん可能なかぎり、日本の高等教育に貢献できるように、という意志はある。ただ、相手があってのことなので、相手の考えにも依存する。
- 土屋先生:国費でやるとおっしゃるが、国費でやるわけではない。著作権処理を特定のコンテンツについて国費でやって、大学ならどこでも使えるようにするのは難しい。一番重要なのは大学教育のために著作権をどう動かすかのシステムがないことが問題。十何年も言い続けているが、奈良先端科学技術大学院大学で作った、東京大学出版会の出版物の電子化ファイルはローカルでしか使えない契約を結んでいる。さらにプリントアウトについては別に払う契約になっている。そういうことをやってしまうとまずくて、特定の大学・コンソーシアムが権利処理するだけではなく、枠組みを作ってそこに参加できる仕組みを作ることが重要。それなら国費を投じる意味がある。作ったコンテンツはどうせ5年もすれば誰も使わなくなる、そうではなく枠組みを作ってほしい。
- 竹内先生:例えばアメリカならばCCCというのがあって、ある資料をコースワークで使いたい、となると受講者数等を選んでいけば支払うべき金額が提示され、払えば使えるようになる。日本にはそういう仕組が全くない。そういった諸外国の例やニーズについて権利者に理解してもらうための情報を出す、その実例をアカデミック・リンクの実践の中で積み上げることも大きな役割と考えている。
- Q:組織と権限が気になる。そこがはっきりしないと仕事ができない。図書館は図書館として残るようだが、事務体制はこの中ではどう考えられている?
- 竹内先生:主になるのは情報部だが、学生部も入ってくる予定。
- Q:千葉大学のサイエンス・カフェプロジェクト関係の方。新棟の使い方をぜひ教えていただきたい。
- 竹内先生:学生は自由に使えるようにする。一般市民の方も巻き込むようなプロジェクトを行うことはなんら問題がない。
- Q:「アカデミック・リンク」という名前についてだが、コンテンツに出会いにいく話が多い。僕はコンテンツよりは「リンク」なのだから人やアイディアに出会うことが重要ではないかと思う。教員・図書館員・学生だけ? 一般の方は考えない?
- 竹内先生:市民を巻き込む重要性はわかるが、それをアカデミック・リンクで組織化することは考えていない。しかし学生がそれをすることを妨げることも考えていない。学生の自発的な利用を意識しているので、どんどん提案して欲しい。
- Q:Springerの方。川本先生に質問。レガシーコンテンツ再生プロジェクトについて、どこのコンテンツ、どういった内容を対象にしている?
- Q:千葉大の学生さん。アカデミック・リンクによって凄く変わるんだな、と驚くと同時に、主体であるはずの学生にまだあまり認知されていない。まわりに聞いても図書館の工事はただの耐震工事だと思っている人が多い。今回も学生の参加数が少ない。プロジェクトを進める中で学生の意見も多く取り入れる必要があると思うが、どうやっていくのか、ご意見があれば。
- Q:筑波大の学生。学生が学生に学習支援するとのことだが、場合によっては専門外のデータベースの話など、体系的な研修が重要になってくるのではないかと思う。そこについてどう考えているのか。また、授業に焦点があたった質問については特定の授業に特定の質問が続出するといったこともあると思うが、それをどう教員にフィードバックするか。
- 白川先生:後者から。今のアイディアをいただきたい、ありがとうございます。特定の授業の質問がくる、というのは学習相談に役立っているということだし、それを教員にフィードバックすれば教員にとっても重要な情報になる。そこまでは考えていなかったので参考になった、ありがとうございます。
- 前者、研修についてはこの前期中に考えていく予定だが、大きく3つあると思う。1つは「学習相談」というものについての研修。そのモラルや相談者との関係構築について。もう1つは分野ごとの学習相談。すべてのものに答えるのはSAが適切にできないことがありうる。特定の時間は語学、数学、というような分野ごとの対応も考えている。そこで分野ごとに対応に必要な知識を考える必要がある。最後はレファレンスの能力、コンテンツに関わるもの。この3つの内容を身につけて、学習相談に参加して欲しい。具体的な中身はこれからだが、領域としてはこういったものを体系化していきたい。
- 白川先生:後者から。今のアイディアをいただきたい、ありがとうございます。特定の授業の質問がくる、というのは学習相談に役立っているということだし、それを教員にフィードバックすれば教員にとっても重要な情報になる。そこまでは考えていなかったので参考になった、ありがとうございます。
- Q:他大学の教育開発センター事務室職員。SAは希望者を募る? それとも教員等からの推薦による選抜? また、ライティングセンター機能もSAによって実現するのか?
- 白川先生:SAの募り方も、具体的にどう運用するかのルールづくりをしている段階。ここではお答え出来ない。
- 竹内先生:ライティングセンターについても具体的なことは、個人的な考えのレベルでしかないが、何種類かのタイプがあっていいのではないか。一般募集と推薦が二種類併存するのがいいのでは、と思う。制度自体がまだ固まっていないが、できれば奨学制度と結びついた形でSA制度を活かしたい。こうした仕事を図書館で担うことで授業料が半額免除されるなどするといいが、具体的には決まっていない。
- 土屋先生:素朴な疑問だが、学生を巻き込むときに、運営について学生に渡す可能性はないのか? また、研修というのはする側がわかっているからできるもの。将来、どうなるかわからないものについて研修することは可能なのか? どうやることを考えているのか?
- 白川先生:2つまとめて答える意味でビジョンをお伝えする。学習相談の部分は、最初は体系的な研修の仕組みづくりにセンターで取り組む。ただ、1年〜半年くらい、時間が経過したところで学生に委ねようと考えている。学習相談を経験した学生が教えあう形で回す。仮にSAリーダーと呼んでいるが、学生同士で学び合う仕組みに移行していきたい。学生に委ねてしまうという話や、ビジョンに関するお答えとして。
- 土屋先生:で、そもそも可能なの?
- 白川先生:それはやってみないと。
- 竹内先生:可能と思うことだけやっても大したことは出来ない。ひょっとしたら不可能かも知れない、と思うことにもチャレンジしていくのがアカデミック・リンクの姿勢。
結びに:竹内先生
- 今回は第1回。第2回は・・・
- テーマ:「電子書籍の展開と大学での活用」
外国出版社の方をおまねきして、電子書籍展開戦略、ビジネスモデルなどについてお話いただき、それをもとに、大学での学習における活用について参加者のみなさんと意見交換したいと考えています
- 次回のテーマは極めてざっくりしているが、書籍電子化は海外の方が進んでいるので、そこで行われている展開やビジネスモデルの講演と、それを踏まえた議論をしたい。
ディスカッション等で注目が集まっているのは、「コンテンツ」を強調するアカデミック・リンクの柱ともなるであろう「デジタルコースパック構築プロジェクト」等の電子化/権利処理関連プロジェクトと、スチューデントアシスタントを大胆に取り入れる「参加する学習」プロジェクトでしたが。
個人的には、本文中にコメントも書き込みましたが「情報利用行動定点観測プロジェクト」が最高に興味深いです。
昨年のアメリカ大学・研究図書館協会(ACRL)の大学図書館の価値に関するレポートの中でも明言されていましたが、大学において学生の成績・履修等の学籍情報や、ひいては進路・将来の自身に対する満足度などこそが(高等教育機関としての)「成果」であって、そこと結び付けない成果/効果の観測はどうやったって満足の行くものにはならないわけです。
でも従来の図書館の効果測定ではなかなかそこを結び付けられなかったわけで、そこにきてアカデミック・リンク・センターについては学籍番号等の情報をもとにきちんと検証すると、それも国大であるところの千葉大学のプロジェクト中で明言されたことにはかなり興奮しました。
頭の中で「聞いたかんね! もう聞いたかんね!」と2度繰り返すくらい。
会場には千葉大学の学生さんもいらしていたのでその感想も聞いてみたいところですが、もしアカデミック・リンクで実現できたのであればそのまま他の大学等にも広げていく流れに持って行きたいところです・・・竹内先生も実験場としての役割について触れられていましたが、7つのプロジェクトはどれもが実験として重要な役割を担っているということがよく伝わってくるセミナーでした。
元から注目していましたが(何かと千葉大学とは縁も深いので)、あらためて今後もアカデミック・リンクからは目が離せないなあ、と思った次第です。
*1:ちなみに地震後、イベントレポートが減ったのはイベント開催自体が減っただけでなく、この4月から妙に忙しくなったってのもあります。妙にも何も授業担当ができたからという原因ははっきりしているわけですが
*2:「出版が変わる、学びが変わる:大学教育改革と電子出版のクロスロードに立つ図書館」千葉大学・大日本印刷株式会社主催シンポジウム参加記録 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*3:前述のこちらのこと:「出版が変わる、学びが変わる:大学教育改革と電子出版のクロスロードに立つ図書館」千葉大学・大日本印刷株式会社主催シンポジウム参加記録 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
*4:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1217067.htm
*5:授業担当者と図書館員が特定の授業について作成する、いわゆるパス・ファインダー。詳細は・・・千葉大学附属図書館>Under Construction
*6:詳しくは2月のシンポジウム記録も参照