北海道出張から戻ってきた翌日、家でごろごろしていたところクロネコヤマトが実家からの救援物資を届けに来ました。
で、その際一緒にメール便で『Library and Information Science』の最新号(61号)も持ってきたのですが・・・
お、重!
ってか分厚っ!
それもそのはず、なんか今回は原著論文6本、短報1本掲載とのことで年2号発行体制になってから最多掲載論文数らしいです。
ふだん電子ジャーナルを論文単位で印刷したぺらぺらの紙しか持ってない人間には手に持って読むにも重みを感じる厚さですよ*1。
内容もかなり興味のある論文が載っていたので楽しく読んでいました。
で。
最近どうも論文を読むときに受付日(論文が編集部に投稿された日)と受理日(収録・発行が決まった日。採録日・採択日とも)をチェックしてしまう癖がついてしまっています。
もともとはArticle in PressやEarly Viewなど、冊子版より前に電子版が発行されている雑誌か否かを確認するために主に英文誌で見ていたのですが、最近ではつい和文誌でもそこを最初に確認してしまう始末。
見てみるとけっこう受付から受理までの日数って論文によって違うんですよね・・・今回の『Library and Information Science』61号掲載の6本で言うと、最短で受付から受理まで85日、最長で403日と5倍近い差が。
査読で一発で採録になるか、条件付き採録になるか、照会が間に挟まるかとかでもだいぶ違うんでしょうが・・・実際にはさらに受理されてから出版されるまでにも間がある(受理が早くても掲載号の出るタイミングによっては発行までは時間かかる)わけで、博士論文執筆の関係なんかで急いで論文を出版したいとか、研究費の関係で年度末までに論文をどこかで受理されたいなんてときにはここらの数字はけっこう気になるんじゃないでしょうか。
もちろん一番大事なのは自分の論文を読んで欲しい人に届けること、それもより多くの人に届けることなので、専門領域・主題や読者層を考慮することが一番大事なわけですが。
領域・主題や読者層の点で投稿先に挙がる雑誌が複数ある場合には、投稿から受理まで(=査読)が早いことや発行にかかる時間が短いとかなり嬉しいかも、とかなんとか。
しかしそこら辺の投稿から受理、発行までにかかる時間の話って感覚的には「あそこは長くかかる」とか「こっちはけっこうすぐに出せそうだ」ってのはわかっているような気がするんですが、あくまで感覚どまり。
実際のところ現在の図書館情報学分野だとどんな感じなんでしょうね、というのがいまいちわからない。
わからないなら、じゃあ調べてみようか・・・ということでいつものようにちまちまデータ打ち込んで調べて来ました。
今回の調査対象は以下の4誌。
4誌の選定基準ですが、
- 査読誌であること(それが明示されていること)」
- 受付日・受理日・出版日に相当する日付が公開されていること(ここで『図書館界』が調査対象から外れました)
- 図書館情報学の中では比較的複数主題を扱いうる雑誌であること
と言った感じ。
この4誌の、2001-2009年の出版論文について、受付から受理、発行までにかかった日数をそれぞれ計算し、全体の傾向を確認していきます。
なおここでは対象を原著論文に限定(短報や研究ノート、文献展望等は含まない)、さらに特集論文など一般論文とは出版にかかる日数が変化しそうな論文も除いて集計しています。
出版年は冊子媒体の奥付に準拠していますが、オンラインで早期公開されている場合にはそちらの日付を出版年として取りました。
以上の方法に基づき、4誌の受付⇒受理⇒発行に至るまでの日数について調べた結果が以下の通り。
表1.2001-2009の図書館情報学4誌の論文受付から受理・発行までの日数
日本図書館情報学会誌 | Library and Information Science | 情報知識学会誌 | 情報メディア研究 | ||
---|---|---|---|---|---|
掲載論文数 | 68 | 37 | 34 | 21 | |
受付-受理日数(平均) | 247.2 | 188.9 | 152.5 | 145.4 | |
受付-発行日数(平均) | 357.0 | 317.6 | 222.2 | 238.8 | |
受付-発行日数(中央値) | 343.5 | 255.0 | 195.0 | 190.0 | |
受付-発行日数(標準偏差) | 147.7 | 159.1 | 106.0 | 106.2 | |
受付-発行日数(最短) | 74 | 134 | 92 | 132 | |
受付-発行日数(最長) | 882 | 781 | 452 | 515 |
あー・・・なんとなく、『日本図書館情報学会誌』って査読に時間かかるイメージあったんですが、その通りの結果ですね・・・平均でLIS誌より2か月、『情報メディア研究』よりは3か月くらい査読に時間がかかる、と。
まあ掲載論文数も多い一方で投稿論文も多そうですし、却下率がどうなっているかも見て見ないといけないのであれですが、「通るのに時間かかりそう」的なイメージは間違いではなさそう。
ただし受付から発行までの日数が最短だった論文があるのも、実は『日本図書館情報学会誌』(最長もだけど)。
年4号発行なので、受理時のタイミングによってはかなり短い期間で出せることもあるようです・・・一発採録が必須条件ですが(汗)
LIS誌や『情報メディア研究』は前者が年2号、後者は専ら年1号出版体制(ただしオンライン版の早期出版あり)なので、受付から最短で出せる日数には限りがあり、それが如実に反映された様子。
『情報知識学会誌』は発行号数は多いのですが、研究大会の予稿集になっている号や特集号がけっこう多いので、発行までのタイミングを最短にするのが難しいのかも?
そんなわけで、平均的に見ると『日本図書館情報学会誌』は一番受付⇒発行までの時間が長いわけですが(1年は待つ)、「この論文は査読を無問題でパス出来る!」という絶対の自信があり、かつ掲載しないといけない論文がたまっていない状態であればかなり早く出せる目があるところでもあるのかも、と。
さらに2001-2009年の出版年ごとの受付-発行までの日数を見てみたのが下のグラフ(ついでに各年の掲載論文数はその下の表)。
図1.図書館情報学4誌の受付から発行までの平均日数(出版年別)
表2.2001-2009の図書館情報学4誌の発行論文数(原著論文のみ)
日本図書館情報学会誌 | Library and Information Science | 情報知識学会誌 | 情報メディア研究 | |
---|---|---|---|---|
2001 | 6 | 2 | 1 | 0 |
2002 | 9 | 3 | 0 | 0 |
2003 | 4 | 4 | 5 | 0 |
2004 | 10 | 3 | 7 | 3 |
2005 | 9 | 4 | 6 | 3 |
2006 | 8 | 4 | 4 | 5 |
2007 | 9 | 5 | 5 | 5 |
2008 | 10 | 6 | 5 | 4 |
2009 | 3 | 6 | 1 | 1 |
こうしてみると、『情報知識学会誌』の2001年は掲載論文の少なさゆえ、『情報メディア研究』2004年は研究論文が載る号としては事実上の創刊号なので例外として、それ以外の年でも割と受付-発行の平均日数の順位は上下動がある様子。
上記例外を除くと『情報知識学会誌』と『情報メディア研究』は『日本図書館情報学会誌』より平均日数が長くなったことはないですが、両誌同士は入れ替わりもあるし、『Library and Information Science』ともいずれも順位の入れ替わりを経験しています。
『Library and Information Science』と『日本図書館情報学会誌』は割と接戦で、2008年までは平均日数最長はそれぞれ4回ずつ取っているという形。
今年はまだ前者は1号、後者は2号しか出ていませんが・・・さてさて、これはなかなか面白い感じですね。
2008年はLISがこの9年で受付-発行平均日数が最短、『日本図書館情報学会誌』は最長となっていたわけですが、今年は早くも近づく様子を見せておりこの後逆転はあるのかないのか!
・・・っていうか2008年のLISはいつになく発行までの日数が早いですね。
手元のデータを見ると受理までの平均日数も21世紀中で最短の約121日で、理由としては100日未満で受理された論文が2本ある一方で200日以上かかった論文がない、というのが主な様子。
なお21世紀中、LISに掲載された原著論文で受理されるまでにかかった最短日数は33日で、これは今回の4誌中でも『日本図書館情報学会誌』の56日を20日以上離して最短です。
平均的な受理までの日数・発行までの日数なら『情報知識学会誌』または『情報メディア研究』が短めですが、最短記録狙いならLISと『日本図書館情報学会誌』が狙い目ということでしょうか・・・
最短だから何が貰えるってわけでもないわけですが。
なんか気分的に嬉しいよね?
次は暇があったら海外雑誌で試してみたいところです・・・むしろそっちの方が切実な気もするし。
*1:ふだん『Physical Review』シリーズとかを冊子そのままで読んでいる人がいたら怒られるかもですが・・・いや、そりゃないか。辞書だしあの厚さは