図書館総合展参加記録シリーズ2日目。
2日目最初はデジタルリポジトリ連合(DRF)の全国ワークショップに参加してきました!
DRFの活動についてはこのブログでもしばしば紹介しているのでご存知の方はご存知のとおり。
機関リポジトリに取り組む方々の全国団体ですね。
DRFは1日まるまるフォーラムを開催しているのですが、午前の部では8つの大学の取組についての事例報告と、それに対するDRFの皆さんのコメント、という形式で進みました。
どの事例も興味深く、ついつい自分も質問してしまったり・・・
以下、例によって当日の記録です。
例のごとく、min2-flyが聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲のメモとなっております。
ご利用の際はその点、ご理解願います。
誤字脱字・事実誤認などお気づきの点があれば、ご指摘いただければ幸いですm(_ _)m
DRF運営委員長挨拶(新田孝彦先生、北海道大学附属図書館長)
- 全国WSも今回で8回目
- 次は各リポジトリの質の保証・連携が課題になる
- 各機関で蓄積された情報の連携については・・・
- JAIRO: http://jairo.nii.ac.jp/
- GeNii: http://ge.nii.ac.jp/
- でもJAIROへのリンクはHUSCAPの端っこにちょっとあるくらい。GeNiiにいたってはそれすらない
- 不親切/宝の持ち腐れ?
- 連携の理念が利用者に見えにくい状況
- DRFのモットーは「hita-hita」
- ひたひたと広げる
- でもできるところはスピードアップもいる
- 今日の話・・・
- 事例報告
- 図書館連携の最前線
- 将来像のパネルディスカッション
- 討論への積極的な参加を!
事例報告1:「図書館みんなでリポジトリ」(田山恭司さん、聖学院大学)
- 聖学院情報発信システム SERVE:http://serve.seigakuin-univ.ac.jp/
- 紹介したい活動:聖学院大学でリポジトリ(SERVE)は職員全員が意識している
- その1つに著作権許諾活動がある
- カウンターで個別教員に説明・許諾依頼をしている
- 事前に先生の論文をリスト化しておいて、見かけたときに声をかけて許諾のお願いをする
- リストに○☓をつけて、サインをしたら許諾できる紙を用意している
- 全職員(10名)がカウンターで先生を見かけては声をかけて説明する
- 小規模大で職員・教員の距離が近いこと、多くの業務にもともと教員が参加
- 結果・・・大成功!
- 許諾に登録が追いつかない
- 先生の反応:大きく4パターン
- 「ぜひお願いします」
- 「これ私の? まあ・・・いいか」(自分の論文覚えてない)
- この2つは公開に前向き
- 「勘弁して」(古い/恥ずかしい/やだ、など。現在の研究と違う・仕方ないから書いたけど見せたくない、とか)
- それでも学外公開しないから/保存だけして学内でも公開しないから、などと言って登録させてもらっている
- 「誤字がある、論文もっとある」(自分の論文をしっかり覚えている/業績を意識している)
- 自分の業績が大切な人なので気を悪くすると許諾してくれないかも・・・? ひやひや
- 誤字訂正に夢中でサインもらい忘れることも
- 変化とまとめ:
- 図書館内外で広報になっていう
- 先生もSERVEを意識
- 今後は攻めの活動を展開していきたい
- 図書館内外で広報になっていう
質疑
- Q. 同じく小さい大学から。NIIやDRFの研修に参加できる職員は少ないと思うが、10人全員で意識・理解を共有・高める工夫がある?
- A. 図書館の課長である菊池が一番の推進者なので上の方の理解がまずある。10人の中で朝の打ち合わせや緊急時等、情報共有の機会も多い。全員がきちんと理解しているかはわからないが、「こういうことなので何かあったら・・・」ということはできていると思う。
- Q. 今のところ、一年間に聖学院で出している論文はどれくらいで、そのうちの何%が今補足できている? 補足の目標値はある?
- A. 聖学院では紀要が2冊、それと別にキリスト教学会の論集を出している。他に学部ごとの雑誌もあるがそちらも一括許諾がないので個別登録。年間の目標は、論文単独では立ててないが、資料等も含めて300件を目指している。%は計算していないので・・・
コメント:鈴木さん
聖学院の考え方を聞いたとき、学内各所のコンテンツを電子的に保存したいというモチベーションが強かったという。公開がダメならせめて保存、という粘り腰の収集姿勢は見習いたい。リポジトリの理念からは議論もあるかも知れないが、それぞれががそれぞれの理念に応じてやればいい。
事例報告2:「機関リポジトリ「GINMU」の現状と展望」(大瀬戸貴己さん、奈良県立医科大学)
- GINMUの現状:
- もう一つの目標・・・学内研究者情報データベースとの連携
- 研究者情報データベースは研究推進課や総務課で進んでいる
- そこに図書館もつなげたい
- 研究業績をGINMUにリンクしたら本文も見れる、としたい・・・WGに参加
- 研究者の基本情報収集から始まるので、そこでGINMUに載せるという許諾も取って、一括収集できないかと考えている
- 紀要中心だったが、学術雑誌コンテンツも集められそう
- 研究者情報データベースは研究推進課や総務課で進んでいる
質疑
- Q. 医療機関とのリポジトリ検討中とのことだったが、県内医療機関との組織的な連絡会等がある?
- A. 今は地盤はないが、医師から直接、論文公開の問合せが何件かある。そういう先生を通じてお願いしようと思う。また、医師は異動も多いので、奈良医大にいた先生をたどっては、と考えている。
- Q. 去年のDRF7では紀要登録にしても看護の先生が研究対象から個人のプライベートな情報が流れるのを躊躇する、という話だったが、どんな反応だった? 症例研究だと個人が特定されるのでは、という慎重論があったので。
- A. 個人情報がわかってしまいそうなもの、写真等は確認して今のところは載せていない。やはりまだ議論がある。慎重派の方もいるので。まだ登録するものはいっぱいあるので、問題ないものからしていく。チェックしながらやっている。
事例報告3:「特異な立場から生じるリポジトリの特色・問題点:筑波技術大学の事例」(高橋雅一さん、筑波技術大学)
- 筑波技術大学リポジトリの特色:
- 視覚障害のある学生もいる。読み上げソフトを意識した作りにしているのが他にない売り
- レイアウトはシンプル。読み上げソフトを考えるとあまり見た目は凝れない
- PDFには可能な限りテキストデータを埋め込む
- 画像PDFは文章が読めない
- PDFにタグ付作業を行う
- 全体の構成から段落付や文書の流れを指定する作業
- それがないと読み上げソフトは文章をきちんと読めない/段落設定がないので聴き直そうとすると冒頭に戻ったりする
- 透明テキストのほかに代替テキストも入れている
- 図・グラフにコメントをつけたり固有名詞を読んだり
- PDF作成の流れ:
- 作業時の問題:
- 非常に効率が悪い。手間と時間がかかる
- 改変不可のPDFしか使えない学会・出版社の場合には読み上げ対応できない
- 完璧なPDF文書は作れない。作業量的に無理
- 大学としての問題点:
- 原稿提供に消極的な先生が多い。先生は研究にあまり熱心ではない
- 「多くの人に読まれる」等がアピールにならない
- 職員が出向組なので、大学のことがよくわからない人が多い/ノウハウが蓄積できない
- システム的な問題
- 予算、大学側の理解、etc…
- 原稿提供に消極的な先生が多い。先生は研究にあまり熱心ではない
- でも喜んでくれる人もいる:
質疑
- Q. 1論文あたり、ファイル作成にどれくらい時間がかかる?
- A. 元の論文によって時間のかかり方は違うが、単純な文章ならば比較的短時間。ただ文章を聞いたりする作業はあるので、早いといっても1〜2時間はかかる。図や写真が入ったりグラフが入ると、それをどういう順番で読ませるか・・・単に写真が入っているだけでもそのまま読ませると地の文をぶった切って読んでしまったりする。その直しやチェックに時間がかかり、1論文5〜6時間かかることもある。効率がいいとは全然言えないが・・・。また、全論文をチェックすると聞くだけで時間もかかるので、要点だけピックアップして対応している。
事例報告4:「効果的なコンテンツ収集の取り組み」(若生政江さん、城西大学)
- 学内連携
- 学術雑誌論文の収集例・・・説明
質疑
- Q. 学内他部署との連携について。本学では図書館の立場が低い+私の立場が低いので連携がうまくいかない。研究関係も事務室も「なんじゃそりゃ」って言われる。一から説明しようとしても耳をふさがれる。どのようにIRの意義や電子化の協力を取り付けた?
- A. うちの場合は上から、というのが得意。今は名前が変わったが、執行部会議というのがあって、学長・副学長・各学部長が集まる場がある。他に新任教員の集まりでリポジトリの説明をしたら、それを耳にとめた学長が執行部会議で説明の機会を設けた。各学部長も賛同して、先生方のOKがとれれば事務は各学部の分はOK、とやってくれることに。
- Q. 雑誌論文の補足に投稿料申請で把握、ということだったが、投稿料のかからない雑誌は? 全部把握できる枠組みがある?
- A. 投稿料が発生するものについては別刷りを大学に渡すことになっていた。それは図書館に来ていた。そのデジタル化が第一であった。投稿料のかからないものは見えないが、業績データベースから・・・というのもある。他に登録するものがあったときに先生に声かけすることも。
- Q. 抜き刷りを図書館で集めて提供していた、ということ?
- A. やっていて、それをデジタルに広げた。
コメント:鈴木さん
- こういう体制を作ってしまえば効率よく収集できる見本。これは大学全体で事業として収集する、いい例。見習いたい。
事例報告5:「外部競争的資金応募に対しての提案について」(高橋欣瑛さん、小樽商科大学)
- 小樽商科大学学術成果コレクション Barrel: http://barrel.ih.otaru-uc.ac.jp/
- 科研費等の応募に際して、図書館から紹介していることの説明
- 成果:昨年度・・・37の申請中、10件がBarrelに言及、うち3件が採択された!
- 今年度の結果はまたrliaisonメーリングリストでお知らせします
- 参加希望の方はご連絡を!
質疑
- Q. 科研費申請の記述について。昨年度の場合で、37件のうち、記述追加が10件、で採択の3件というのはそのうちの3件?
- A. そう
- Q. ほかの27件の採択率は? 実際、効果あった?
- A. (課長から)実際は効果なかった。採択率変わらなかった。でもどんどん書いていくと、世の中も変わってきてくれるかな、と思う。
- Q. では今年に期待しましょう
コメント:尾崎さん
- 科研費の記述について、要項が変わったのが2年くらい前で、光明がさしたかと思ったがさして音沙汰がなくて忘れかけていた。よいところでアピールしていると思う。10分の7の落ちた先生とは何かお話しした?
- 課長(杉田さん)から:特にケアもフォローもしていないが、翌年の説明でまた説明を聞いて書いてくれるんじゃないかな。
- 大事にしてあげて欲しい。rliaison ML入っているので楽しみにしたい。
事例報告6:「一橋大学機関リポジトリHERMES-IR」(尾城友視さん、一橋大学)
- タイトルはざっくりしているが、主にシステム連携についての報告をしたい
- HERMES-IRの公開とコンテンツ数
- 運用開始から4.5年で5,000件コンテンツが増えた
- 紀要論文がコンテンツの8割。一橋は人社系に特化している+長い歴史があるから
- HERMES-IRの外部連携:
- HERMES-IRの課題
- コンテンツ数アップ・・・紀要論文以外の比率を挙げたい
- 業績把握・広報活動の推進
- アクセス数アップ
- さらなるシステム連携の模索
- 学内研究者DBとの連携強化
- コンテンツ数アップ・・・紀要論文以外の比率を挙げたい
事例報告7:「リポジトリでE-bookサービスはじめます」(廣田未来さん、お茶の水女子大学)
- お茶の水女子大学教育・研究成果コレクション TeaPot: http://teapot.lib.ocha.ac.jp/ocha/
- 2010年からの新たな取組・・・E-bookサービス
- 当初予定より時間がかかった:
- 著者に版下作成をお願いしたのが負担
- ルビ・返り点、特殊漢字等が多かったため
- 部分的に業者の力を借りることに
- 教員からはページ数を気にせず本を書ける/業績獲得/成果公開等、喜びの声
- 丁寧に内容を吟味している姿から喜びを感じた
- 年内に公開できるようにがんばる!
質疑
- Q. (佐藤本人)版下作成って、先生にDTPやってもらうの?
- A. 無理でした。Word等で貰って業者に委託。
- Q. 今後は?
- A. ケースに応じて業者に委託したり、先生にお願いしたり。
事例報告8:「ちょっと始めたら、色々やりたくなってきた」(近藤喜和さん、奈良先端科学技術大学院大学)
- プレスリリース論文の収集開始:2011.7
- 学内広報からプレスリリース情報を得て、エンバーゴがなければ公開する
- 注目度が高い+件数が少ないのでとっかかりとしてちょうどいい
- 広報から事前に情報をもらって進めるので、広報担当とのつながりができた
- プレスリリース論文収集のために依頼メールを送った
- 5 / 7からOKの返事
- やる気アップ!
- そこでOpen Access Weekでも何かしよう、と思った
- プレスリリース論文がきっかけで色々広がった。今後も続くと思う。
コメント:関川さん
- プレスリリース論文は大学として毎月なり、やっている?
- 先生が論文を出した際に先生から広報に連絡が行き、記者さんを集めてやる。その情報を事前にいただいた。
- OA講演会を授業として開催したとのことだが、先生の参加率は?
- 見た感じ、7-8人はいらしていた
- 筑波はプレスリリース論文がないのだが、あると面白い。面白いやりかただと思う
僕が初めてDRFの全国ワークショップに参加したのはかれこれ4年前、2007年のフォーラムでした。
そのときはまだ自分は学部4年生(!)で、機関リポジトリの研究を後にするとは思ってもないころでした(当時のテーマは大学図書館の外部委託)。
以来、DRFはじめ機関リポジトリのイベントに来るときにはいつも自分が最若手のつもりでいたのですが、今回のフォーラムでは自分の大学の同期だったり自分より年下で今年就職されたという方だったりが登壇されていたり、運営サイドにも若手の方がたくさんいらっしゃったりで・・・DRF/機関リポジトリも着々と若い世代に受け継がれていくのだなあ、と感慨深く思ったり(何歳だ自分)。
最初の業務がリポジトリ、という方もいっぱいいらっしゃって、こうして図書館業務の中に確実に根付いていくんだろうなあ、とかなんとか。
その後、昼休みにはランチミーティング、ということで皆さんとお話ししながらお昼をご一緒したりも。
皆さんありがとうございましたm(_ _)m