かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

博士後期課程に進んでも人並みの人生も幸福も手に入る そう、図書館情報学ならね


実に約2年半にわたってブログの更新を停止してしまっていましたが・・・お久しぶりです、id:min2-flyです。
あまりにも久々すぎてはてな記法を完全に忘れています。
あと自分のブログ文体もだいぶ忘れました。
世間的にはもうはてなブログが全盛ですが当方は今後もはてなダイアリーでやっていきます。


なんで2年半もブログを放置していたかと言えば、一言でいえば大学教員になったからです。
なんで大学教員になるとブログの更新が止まりがちになるかというと、その理由はこちらに!

ライブラリー・リソース・ガイド(LRG) 第18号/2017年 冬号

ISBN 978-4-9085-1517-0
ISSN 2187-4115
発行日 2017年03月28日

◆巻頭言 「意思を持って雑誌をつくる」ということ[岡本真] p.002

◆特別寄稿 壮大なバイオグラフィーとしての大統領図書館[大原ケイ] p.005

◆特集 総理大臣資料はどこにある?[岡本真] p.041
◇「総理大臣資料」全調査 [岡本真] p.083

福田康夫内閣総理大臣 特別インタビュー 公文書の扱いとその国のかたち [インタビュアー:松岡資明] p.113

◆図書館エスノグラフィ 東京学芸大学学校図書館 運営専門委員会[猪谷千香] p.122

◆連載 かたつむりは電子図書館の夢をみるか LRG編 人並の人生も幸福も期待していなかった図書館情報学徒、10年後の実態[佐藤翔] p.130

アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績 定期報告 p.142
スタッフボイス p.147
次号予告 p.151
定期購読・バックナンバーのご案内 p.156


ということで株式会社アカデミック・リソース・ガイドの雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』で新たに連載「かたつむりは電子図書館の夢をみるか LRG編」を持たせてもらうことになりました!(つまりこの記事はLRGのダイレクトにマーケティングです)
第1回では図書館情報学分野の教員の実態を赤裸々に紹介しつつ、ブログ更新が止まった理由にもっともらしい言い訳をしています。
連載記事を書いている当時は他にどんな記事が載るのか知らずにいたので、まさか福田元総理インタビューが載っている雑誌に紙ブログみたいな中身を掲載することになるとは思いもよりませんでした。
福田元総理インタビュー目当てで買った人にとっては完全に「なんだこいつ」じゃないのか。大丈夫か。


まあそんなわけで、更新停止の言い訳についてはLRGを買うか、お近くの図書館で(ない場合はリクエストして)読んでいただければ幸いです。
このLRG連載では今後も昔、ブログでやっていたような話を書いていくつもりでして、そして当ブログではそのLRGの告知をしたり書かなかった話をしたりすることでブログの更新もできるという一石二鳥を狙っていきたいと思います。


ところでその連載記事を書いている際に気付いたのですが、実はこのブログ、2007年の2月に開始したので、気づけば開設から10年が経過していました(最後の2年半は止まっていましたが)。
書き始めた学部3年生の頃から好き勝手に書いてきて、そのことは特に後悔も反省もしていないのですが、一つだけこれはいずれフォロー入れないとまずいな、と思っていた記事があり。
それがこいつです。


今読むとかなり辛いパワーワード連発なのであえて引用することはしませんが、「俺は研究者という夢を追ってドクターに進む以上、人並みの人生なんてはなから期待してないぜ!」的なことが書かれています。
当時、若手研究者の苦難というか、博士号取得者の就職難問題が世に知られ始めたおかげもあってか、このブログにしては珍しく100ブクマ以上していただいて、自分でも印象に残っていた記事でした。
これをなんとか成仏させんといかん、というのがLRG連載初回のもう一つのテーマです。


結論から言うと、博士後期課程に進んでも、人並みの人生も幸福も手に入ります。
ただし、図書館情報学分野に限れば、ですが。


まず自分自身について言えば、2013年に博士号を取得して、即、大学教員(テニュア)になり、ブログの更新停止している間に結婚もしたりしていて、その他詳細は連載初回に譲りますが、現状限りなく人並みに人生を過ごしています。
それじゃn=1なのでどうしようもない話ではありますが、(きちんとした数字はないものの)自分の在籍していた筑波大学図書館情報メディア研究科について言えば、博士(図書館情報学)取得者の5年後就職率は100%であると聞いたことがありますし、実際ドクターとった人はだいたいどっかに就職決めています(もちろん、最初は任期つきということも多いですが)。
どころか、博士号取得前でも先に教員職の就職が決まっていく、という話もしばしばです。
結婚している人も(相手がいれば)多いですし、任期の問題があるので完全に安定しているとは言い難いですが、機関/土地を選ばなければ、「俺、音楽で食っていくよ」とかいうのとは次元が違う状況ではあるのは間違いないです。
図書館情報学関連で博士課程を持っているところ自体少ないですが、他の大学出身の方もだいたい同様の状況です。


他分野に比べて博士号取得者が割りと安定している要因は、なんといっても全国の大学に司書課程が存在することです。
全国800弱の大学のうち、300-400150前後+短期大学50前後の合計200前後*1には司書課程があると目され(最新の統計が手元にないので正確な値はわかりませんが)、建前としては少なくとも2人の担当教員がそれぞれに置かれる必要があります。
それに対して、図書館情報学分野で博士号を出している大学はほぼ片手に収まる程度です。
そこから出てくる博士号取得者自体も本気で数えられる程度の人数で、結果、この分野は世にも稀な求人に対し博士号持ちの方が少ない、というような状況にあります。
一昔前なら、現職(図書館員)出身の方が学士号までで教員に、ということも少なくなかったようですが、現状だと最低でも修士、できれば博士号を求められる傾向が存在し、その結果、一部では「図書館員になるより図書館情報学の教員になるほうがなりやすいのでは」なんて囁く声もあるとかなんとか(さすがにそれは言いすぎだ、と思いますが。求められる資質が違う)。


「元より「博士後期に進む」って決めた時点で〜」エントリはそんな状況を知らずに書いたものであり、安定のない道に進む自分にちょっと酔っちゃってる状態でもあったので「結婚して、子ども作って、家を建てて幸福な家庭を築いて・・・っていうような、人並の人生とか人並の幸福を得たい人は博士後期には進むべきではない。」とか血迷ったことを書いてしまっているのですが、全然そんなことないので、図書館情報学研究の道に興味がある方は、そんなエントリに惑わされずに、ぜひ研究の道も検討してみていただければと思います*2
図書館情報学分野は常に人不足みたいなところがあるので本当お願いします。
あ、そういえば、博士後期課程はありませんが、修士号までなら最近、同志社大学にも図書館情報学コースが出来て、修了生も出始めているそうですよ!(ダイレクトにマーケティングその2)


そんなわけでひっさびさに書いた記事が専ら宣伝でしたが、今後もだいたい、LRG新号刊行のタイミングでちょくちょく更新していければと思います。
10年の節目は若干過ぎてしまいましたが、引き続き次の10年も、どうぞよろしくお願い致します。

*1:ブコメを受けて修正、id:shigak19さん、ご指摘ありがとうございますm(_ _)m

*2:もちろんそれで実際にちゃんと就職できるのかとかについては個人差とかタイミングとか運もあるところですので、逆にこのエントリに影響されて進んでみたが就職できなかった、どうしてくれる、みたいな話には責任取れないのでそこはあしからず