貸出履歴の利用についての疑問(一歩間違うと絶望)
ちょっとピークを過ぎた感がありますが、練馬区立図書館の「貸出履歴保存」期間延長報道をきっかけに、はてな界隈(含はてブ)で図書館の貸出履歴を巡る議論が盛り上がってますね。
- 「練馬区立図書館貸し出し履歴保存」報道に関して: 東京の図書館をもっとよくする会(旧ページ)
- 2008-01-16(Wed): 図書館での貸出記録の保存をめぐって−行政は説明責任を果たし、市民は慎重で冷静な議論を - ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版
- http://kamata.lib.teu.ac.jp/~tanabe/diary/20080117.html
- 図書館利用者として思うこと - novtan別館
- http://dora-hikarilibrary.air-nifty.com/doralog/2008/01/post_42eb.html
まず伝統的な公共図書館系らしく「貸出履歴の保存なんて・・・!」という声が上がり、その後「でも履歴保存できて、Amazonみたいなサービス出来るとやっぱり便利だよ・・・」的な意見と「じゃあどうやったら利用者の個人情報を守りながらそういうサービス展開できるかな?」という提案へとメインの流れが移っていった感じ。
さらにタイミングよく(いや本当タイミングいいな。受理日の段階で今を予想していたわけでもあるまいに)今日手元に届いた「Library and Information Science」の最新号(no. 58)に、「知的自由の陥穽:利用情報保護思想が公立図書館に及ぼす影響の分析」と題した短報も掲載されていました*1。
ここでは公立図書館の利用情報保護思想に一定の評価を行った上で、それでも
しかし、利用情報を保護しないことは、個々の利用者のニーズに即したカスタムメイドのサービスの実現を困難にしており、民間企業等が顧客情報を駆使したサービスを積極的に推進する中、公立図書館サービスの総体的な陳腐化の一因となっている*2。
と評し、さらにはそのようにして自ら「サービスの価値、ひいて自らの社会的評価を向上させるための選択肢を自ら狭めてきた」ことは、「図書館員という職業の社会的威信の向上」に図書館員自らの手でブレーキをかける行為であり、
利用情報保護に関するこれまでの取組は、「図書館員の専門職化」という図書館関係者の永年の目標と非整合的な形で進められてきたということになる*3
と指摘している。
ある意味どのブログ上のエントリよりも公立図書館の利用情報保護について(評価すると同時に)辛辣な見方をしていると言えるかも知れない。
さて、以上のような一連の議論を見ていて*4感じたことなのだけれども・・・
いや、なんだかんだ言ってmin2-flyは一学生、それもアルバイトとしてすら公立図書館に勤めたことのない*5公立の現場についてはほとんど無知な人間だから、実際どうなっているのかが全然わからないのだけれど・・・
属性データは?
貸出利用者の属性データは、保持されているの?
完全に一個人を特定できないまでも、貸出利用者の住所とかはいわゆる「ゲート」のないところが多い公共図書館にとっては来館者調査に変わるものである(登録者は見ればわかる)わけだし。
また、あるタイプの資料群をどんな属性を持つ人(たとえば年齢、性別など。職業はさすがに難しいかも知れないが、せめて学生か否かくらいは)が利用するのか、そもそも自分のところを「実際に」(ここポイント。登録者と実際の利用者には開きがある)利用しているのはどんな人間なのかとか、その手のことをきちんと調査・分析して資料購入計画とか建てようと思ったら、属性データの保持って絶対必要だと思うんだけれど・・・
思うんだけれど・・・されて、いないのか、まさか(滝汗)??
思い起こしてみれば授業においてもなんにおいても、貸出履歴から利用者を分析してサービスに活かそう、なんて話はほとんど聞いていないような気がするが・・・・・・・・・・・・
もしされていないとすると、図書館って「どの資料を誰が借りているのか」とかは何で判断しているの??
あるいは自分のところを利用している人たちの実態とかは??
勘??
「現場での経験」??
どちらにせよ、そいつはもっとも基礎となるマーケティングすらまともに成立しえない環境ってことなんじゃ・・・
来館者調査に対する質問紙調査なんかより遙かに正確な数字取れるはずと思うんだが、とりあえず質的なことを問わない(数字で出せる)指標については。
どなたかここら辺の事情に詳しい方がいたら教えてください。
(自分でも時間が出来たら調べてみようとは思いますが)