ライブラリアンのためのWeb of Scienceアップデート: Get the Most from Your Investment
標記の通り、トムソン・ロイター主催のイベント「ライブラリアンのためのWeb of Scienceアップデート」に参加してきました!
タイトルにあるとおり「ライブラリアンのための」ということで、そもそもWeb of Scienceとはどういうデータベースか、というお話から最近追加された新機能や新製品について、さらには活用事例や同様のサービスとの比較についてなど盛り沢山な内容でした!
日頃うちのブログでさらっと「JCRで被引用数を調べて・・・」とか書いてることがありますが、「そもそもJCRってなんじゃい?」と言う方には大変参考になる内容だったのではないかと思います。
逆に各ツールを使いこなせているように思いこんでいた自分のような人間にとっても、「そうか、ここはそういうのに使えたのか・・・」とか、「え、こんな機能あったの!?」(例えばFunding Acknowledgementの部分など)というような新発見もあって大変勉強になるイベントでした。
以下、例によってmin2-flyによるメモ書きです。
自分の聞き取れた範囲かつ手の動いた範囲、理解できた範囲での内容ですので誤りなどを含む場合があります、お気づきの点などありましたらコメント欄等でご指摘いただければ幸いです。
また、記述中でWeb of ScienceとSCOPUSの比較について触れている部分がありますが、自分自身はWoSとSCOPUS、どちらか一方を特別ひいきしているわけでもなければどちらかの味方でどちらかの敵というわけでもないです。
SCOPUSの方は筑波大で現在契約していないので使えていませんが、当たり前の話としてそれぞれがそれぞれの特徴と長所、限界を有するものであり、どちらがより適しているかはその目的としているところあるいは各々の研究分野/テーマ/主に利用する雑誌次第なのではないか・・・というのが自分の考えです。
ちなみに本音としてはどっちも買えばいいじゃんと思いますがみんなそんなにお金余ってないですよね・・・。
SCOPUSも日常的にひけるとより試せることの幅が広がるのですがー。
では、以下メモ書きです。
Web of Scienceの基本要件:もっとも重要な3つのコンセプト(セールスマネージャー・広瀬容子さん)
- WOSは誰でも知ってると思ってしまいがち
- そうではないことは知っている
- ベーシックな話をする
- WOSの3つのコンセプト
- 選択的、中立的、網羅的
- 選択的なのに網羅的?
- WOSとは?
- 論文、会議録を探すためのデータベース
- 他のツールとの違い・・・引用索引。論文の最後の引用文献情報を100%、せっせと入力している
- 論文が何を引用しているか/どこから引用されているかをナビゲーション
- 似たような文献を引用している別の論文も表示
- 引用情報だけなら最近のDBはどこもある
- WOSの違いは?
- コンセプト1.選択的である
- 質の高い国際誌を厳選
- ガーフィールドの集中則
- 学問分野は相互に密接に関連
- ある分野の中心文献は、その関連分野からも参照されている
- 各分野のコアジャーナルを集めれば効果的で質の高い情報が得られるはず
- コンセプト2.中立的である
- WOSは出版社に中立的な立場で選定
- 選定基準に基づき、本社の専門家が隅々までジャーナルを見て日々選定
- 申請は年間2,000誌、収録対象はうち10%以下
- コンセプト3.網羅的である
- いったん、WOSに採用すると決めたらすべての引用文献を100%採録する
- すべての掲載アイテム(訃報とか追悼、訂正まで)入力する
- すべての著者名、所属機関名を収録
- 300〜400人の著者がいる場合でも全部入れる
- 正確な分析につながる
- "Science"という名前だけど社会科学、人文科学も全部カバー
Journal Citation Reportの基本概要
- WOS収録論文を、雑誌単位で被引用数・論文数等を集計。雑誌評価のツール。
- 学術雑誌の比較のためのデータベース
- コレクション管理(図書館員)
- 投稿先決定(研究者)
- 編集方針決定(雑誌編集者)
- JCRで一番有名なのはインパクトファクター
- でもみんな計算式は知らなかったりする
- ある雑誌の平均被引用数
- ex) ある雑誌の2007年のIF・・・2005、2006年の掲載論文が2007年中に引用された回数/2005、2006年の掲載論文数
Librarian's mission and Web of Science(グローバルセールスサポートマネージャー・Paul Torpeyさん)
- 大学の使命:知識の創造と普及
- 図書館員は重要なパートナー
- 図書館員の生命
- 所有する学術情報を研究戦略に生かす
- 図書館員と研究者のスキルと専門知識の共有
- 研究成果の評価およびプロモート
- SCOPUSとWOSの違い*1
- Elsevierは出版社だがトムソン・ロイターは違う。
- WOSは雑誌は個別に選択、選んだら全部。SCOPUSはデータベースのコレクションとして出来た。雑誌のすべての記事を入れているわけではないし、元になったDBによりSCOPUSの中で一貫性がない。WOSとの一番の違いはそこ。
- 収録雑誌数はSCOPUSの方が多い。そこは異論はない。WOSは厳しい選択を行っている。
- 雑誌数は少ないがWOSの方がレコード数は(期間を揃えても)多い。一つはWOSは会議録が多いから。
- SCOPUSの引用数はアルゴリズム的。WOSは手作業でやっている。
- WOSは1900年まで遡って収録。SCOPUSは1996年まで。引用のナビゲーションで十分に遡れないし、h-indexが1996年以前から活動している人についてはSCOPUSだと正確に出ない。
- h-indexの説明はここら辺参照:(Hatena-Index - かたつむりは電子図書館の夢をみるか)
- Hirschの最初の論文ではWOSでh-indexを調べている
- WOSはアドレス情報、著者所属国情報が85%のデータに入っている。SCOPUSは38%。SCOPUSでは国レベルの評価は慎重にしないといけない。
- JCRはコレクション構築担当の図書館員にどう役に立つか?
- Material Scienceを例に説明
- 5年IFについて・・・ここら辺の説明は自エントリ参照:(あなたのお気に入りの雑誌の順位は上がる? 下がる?:JCRに新導入された指標を見比べてみた:図書館情報学編 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか)
- Rank in Category:ある雑誌が複数の主題に属する場合、それぞれの主題での位置を見ることが出来る。
- Category Box Plot:選んだ雑誌のIFが複数の分野の中の中央値、平均値、25パーセンタイル、75パーセンタイルとどういう関係にあるかを図示できる。外れ値ならそれもわかる。
- MIT(マサチューセッツ工科大学)の図書館員はこれが大好きらしい。同じIFで3位、とかでもそれが外れ値になるようなくらい高いジャーナルなのか外れ値にならないようなものなのかを見られると面白い。
- Eigenfactor:詳しくはやはりここら辺を参照:(あなたのお気に入りの雑誌の順位は上がる? 下がる?:JCRに新導入された指標を見比べてみた:図書館情報学編 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか)
- 質疑(1)
休憩
- 図書館員と研究者のスキルと専門知識の共有
- 研究者や学生の情報検索支援
- 研究者たちは自分の必要な文献にアクセスできているのか
- 会議録の重要性について
- 研究者や学生の情報検索支援
- 実際の検索例のデモンストレーション
- 検索語のh-indexとかも出せるらしい
- 分野のトレンドを見る時などには使える?
- (min2-fly)h-indexは完全に規模に依存するからなあ・・・既に相当論文が出ている分野は特定できるかな。
- WOSの分析力は相変わらずとんでもないな。キーワードで文献探したり被引用数みたりにとどまっていると勿体ないよな。
- 検索語のh-indexとかも出せるらしい
- 会議録について
- Computer ScienceとかEngineeringでは重要、とは常々言われているし経験的にも知っているところ(min2-fly補足)
- 各検索レコードのTimes Citedリンクをクリックするとciting paperのdocument typeで何から引用されているか特定可能
- 2008.8以来、Funding Acknowledgementsも登録している
- どういうテーマにどういう団体が助成金を出しているかを探せる。
- 研究成果の評価およびプロモート
- WOSのデータを使い、名寄せやベースラインの提示、情報の正規化によって付加価値をつけていく
- 正規化によって異なる分野の研究者を比較することも可能
- ウェブ・サービス
- WOSのデータを使ってWOSのインタフェースを使わずサービス
- アメリカでの活用例について紹介
- 質疑(2)
- 会議録の引用数もJCRに含まれているの? 会議録も品質管理・選別は行われている?
- 会議録の引用数は会議録が雑誌として出されている場合にはずっとJCRに入っていた。今新しくやったのは別のコレクションを追加したということ。
- 品質管理はWOSと同様にやっている。引用による重要度や専門家によるチェックなど。また、新しい分野であればまだ雑誌がなくても会議があるときには他で手に入らない情報なので入れる。たとえばコンピュータ科学は雑誌がなかったが会議情報はあった。だから最初は会議録を調べていた。単純に言うと品質管理はやっている。
- Impact Factorの計算にはジャーナルとして出たものは含むが、会議後に発行された会議録に入ったものは含んでいない。
- 会議録の引用数もJCRに含まれているの? 会議録も品質管理・選別は行われている?
-
- Eigenfactorでよくわからなかったのだが・・・EFとAIの意味をもう一度説明してほしい。
- Eigenfactor Scoreはあるジャーナルの重要性を知るもの。どこから引用されているのかを見ている。
- (min2-fly補足)いやこれ口頭で説明するのかなり難しいよ。
- Article Influence ScoreはEigenfactorを個々の論文の影響力に落とし込んだもの。またself-citationは省く。
- (min2-fly補足)Self-citationはEigenfactorの段階で省かれている。
- Eigenfactor Scoreはあるジャーナルの重要性を知るもの。どこから引用されているのかを見ている。
- Eigenfactorでよくわからなかったのだが・・・EFとAIの意味をもう一度説明してほしい。
ISI Web of Knowledgeアップデート(セールスマネージャー・甲斐眞佐美さん)
- 最近と今後の予定等の紹介
- 2008年度中にやったこと
- 2002⇒2008で収録対象は20%, レコード数は40%増加
- レコード数増は既存ジャーナルのレコード増加が主要因
- Chinese Science Citation Database
- Web of Knowledge(WOK)上で使える
- WOS上での被引用数とかも見られる
- Century of Social Science
- 2009.9よりスタート
- 自然科学・社会科学両方で1900年から文献が検索できるようになる(従来プラス1900-1955)
- WOK全般の今後のバージョンアップ予定
- BIOSIS Citation Index
- BIOSIS Previews収録誌については2006年以降の被引用情報はWOK上で検索できるようになる
- Score Cardというのが表示されて、DBごとの被引用数が見られる
- WOK上でもデータベースごとのcitation reportが作れるようになる
- BIOSIS Citation Index
- ResearcherIDの強化
- 研究者向けwebサービス
- 登録すると個別のIDとURLが得られる
- 被引用数等は自動でアップデートされていく
- (min2-fly)これいいな。・・・これ、いいなあ。あとで登録しよ。
- ISI Web of Knowledge5追加予定機能
- お、10万件以上の検索結果が表示できるようになるとな!
- WOK日本語化(インタフェース)・・・とっつきやすさアップ
- インターネット講習会の紹介
- 質疑
- 地域誌って特定出来るの?
- WOS上ではできない。
- リスト化した別のページがあるのでそちらを参照いただきたい。
- ResearcherIDの活用について
- キャンッペーンについて
- 地域誌って特定出来るの?
とりあえずResearcherIDは時間があるときに登録して見てResearchmap.jp*2との比較記事をアップしたいなどと言う話はさておき・・・。
あらためて、自分が使いこなせていないWOSやWOKの機能が多いことをこういう場でお話を聞くと実感します。
Citation report機能とか・・・Funding Acknowledgementの表示とか・・・
色々できることを知らずにごく基礎的な部分の利用でとどまっているままだと、せっかく契約しているのに図書館としても大学としてもトムソン・ロイターとしても勿体ないことであると思うので、今回のセミナーのようなお話が図書館の方経由で研究界隈の人々にもっと広まっていくと良いですね*3。
さしあたって地域誌のEigenfactor/Article Influence Scoreがどうなるのかとか、そこら辺は今後見ていく機会があれば自分でも見てみたいところです。
本当はもっといろいろ書きたいと思うことはあるのですが、その後の情報交換会でのビールとつくばに戻ってからのゼミの打ち上げ*4のお酒で頭がきちんと回らないので、そこら辺はまた後日ー。
とりあえずは今年1年もずっとWOSからもWOKからも目が離せないな、ということで。
・・・目が離せるときがあったのかはさておき・・・。
会場でお世話になった皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m
*1:ここでのお話はすべてJISCによるレポート(http://www.jisc-adat.com/adat/home.pl)に基づいての数字であるとのことです
*3:もちろん直で研究者へ、というルートもありだと思いますが