「区立中学でWiki体験:校内専用Wikiを授業で」「文化教育施設の被災・救援・関連情報まとめサイト:saveMLAKウィキへの引き込み大作戦」「ウィキペディアの間違いを直すための情報探索」(Wikimedia Conference Japan 2013参加記録その3)
- 承前:
さらに続いてWCJ2013に参加中ですよ!
Wikimedia Conference Japan 2013 (WCJ2013) では、各種催しを企画しています。基調講演にはウィキメディア財団のJay Walsh(ジェイ・ウォルシュ/Head of Communications, Wikimedia Foundation)、知の構造化センターの吉見俊哉(知の構造化センター副センター長/東京大学大学院情報学環 教授)両氏をお迎えします。
このほかの講演などについては講演概要とタイムテーブルを参照ください。ウィキペディア執筆への様々な取り組み、ウィキペディア研究、執筆ワークショップ、写真教室などを検討中です。
前エントリでも書きましたが、午後の自分の発表前後いくつかのセッションについては、さすがにドタバタしていて記録できず。
id:next49さんのお話を記録しのがしたりは痛恨ですが・・・ぐぬぬ。
その後、休憩を挟んだA会場最後の時間については、落ち着いてきたこともあり記録作成を再会出来ました。
以下、当日の記録です。
例によって例のごとくあくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での内容であり、ご利用の際はその点、ご理解いただければ幸いです。
またも原田先生のお話が入り、再び取りこぼしも多いかと思いますが、請う御容赦(汗)
誤字脱字・事実誤認等お気づきの点があれば、コメント等でご指摘いただければ助かりますm(_ _)m
「区立中学でWiki体験:校内専用Wikiを授業で」(河村奨さん、下北沢オープンソースカフェ)
- 下北沢オープンソースCafeで活動
- プログラマーが集まるカフェ
- 子供向けのプログラミングイベントをそこで開催/Wikimedianと一緒に、Wikipediaの記法をレクチャーしたり
- 「リブライズ」(http://librize.com/)もやってます!
- Wikiを授業で:
- 基本、どの学校も使っている。中学生も高校
性生*1も、おそらく小学生も - 引用するだけではなく自分で記事を書いてほしい/他の人の記事を編集する・他の人に記事を編集される経験を味わってほしい
- 基本、どの学校も使っている。中学生も高校
- Webのリテラシー・・・
- 校内専用Wiki:
- 授業の流れ:
- 具体例の紹介など:
- こういうことをやると・・・学年を越えて蓄積ができる
- 学内で、自分たちのクラスだけでなく下級生に見られる。外部に見られるのと同じくらいの緊張感に
- 下の代が上の代の記述に足したり
- Wikiを体験して:
- Wikipediaが人の手で書かれている、そのコストの実感
- 他人(先生ではない)に読んでもらうための文章を書くことの大変さ
- 記事をつなぐ=リンクをつけられることの面白さ([[]]を書くだけでもりあがる)
- 授業のTips:
- パスワードのメモは作った方がいい
- 10分毎に保存/プレビューを促す(セッション切れ対応)
- 一斉に保存させるとパンクするので保存のタイミングをずらす
「文化教育施設の被災・救援・関連情報まとめサイト:saveMLAKウィキへの引き込み大作戦」(江草由佳さん、国立教育政策研究所/saveMLAK)
- saveMLAKとは?(http://savemlak.jp/)
- 当初はMLAK、個々に情報サイトを作っていた
- 2011.4にそれらを投稿
- ID数は351・・・SPAMを考慮しても300くらいは実在?
- 収集・発信している情報:
- 施設情報・・・9割、25,000ページ以上がこれ
- 被災者、避難・疎開者向け情報
- ボランティア・支援者むけ
- 全国の施設関係者
- saveMLAKウィキ編集者
- saveMLAKプロジェクトのための情報
- 施設情報:
- 1施設1ページ
- 分館があれば所在地ごとに1ページ。所在地が重要なので。地図に出すにもいい
- 複合施設・・・施設種別ごとに作成が原則だが、一緒に書いてもいい
- 基本情報と自由記入情報を書く欄がある
- 色々な情報を入れることができる
- 1施設1ページ
- 困ったこと:
- 全国の施設情報を一覧できるものはなかったし、少なくとも簡単には使えない
- 情報は増えるが刻々と消されもする
- 1人で100回編集するんでなく100人で1回編集、という方針を立てたがなかなかうまくいかず・・・
- 入力・更新が進まない3つの恐怖症:
- ウィキシステム恐怖症:入力仕方がわからない。サインアップで躓く。新ページの作成やページ名変更方法がわからない。etc・・・
- 「ヘルプ見ろ」とか言わないので、わからなかったらすぐ誰かに聞いて、という方針
- 書式は誰でもできるが中身は入れられる人しか入れられない
- ルール恐怖症(書式ではなく)
- 例えば公民館・・・同じ名前の公民館は多い(中央公民館)ので市町村名つけましょう、とかあるが、守らなくたっていい
- ガイドラインも色々あるが、「新ルールがあると困るから書けない」ということも。それも気にしなくていい
- 「あとで人間が見たら直せるようになっていればなんでもいい」=記録がないと直せもしない。ルール破りは絶対批判しない+追加の記述は推奨する
- 共同編集恐怖症:誰かの書いたものを編集する/自分が編集することに抵抗感がある人が多い
- 「怒られるかも・・・」とかいうが、「いいから書いて!」と。追加する情報がどんどん増える方向にエンカレッジ
- ウィキシステム恐怖症:入力仕方がわからない。サインアップで躓く。新ページの作成やページ名変更方法がわからない。etc・・・
- 具体的にはどんな促進策を?
- TwitterやMLで呼びかけ
- 初心者用編集候補の作成・・・よみ入力や住所入力など
- うきういきウィキ祭・・・講習会
- 編集用FAQ作成
- 要更新が減り、更新済みが増えていく、といった楽しさの提供
- さいごに:
- 編集人募集!
- 寄付やグッズの購入も!
「ウィキペディアの間違いを直すための情報探索」(原田隆史先生、同志社大学/国会図書館)
- Wikipediaは良いツール・・・
- 間違っている箇所を直す様子も授業で見せる
- それだけでは実際にやってくれないので、5年くらい前から、実際に取り組んでもらう授業を作っている
- 2007年度:単純にWikipediaの誤りを探して修正せよ・・・できない人は他の問題を解いて、とした
- 142名(受講者の約半数)が修正した
- ほとんどはてにをは、単位、誤字脱字等の誤り
- ほかには教員が授業中で「間違っている」としたことや、最近変わったばかりで反映されていないことを出してくる
- 最初から探すのを諦めて友人・知人に聞いていて、そのせいで重複、ということも
-
- 誤りが全然見つからないから意欲減退するらしいが・・・
- あっていることを間違って修正してくる人はいない? よくはなってるのでいいか
- 誤りが全然見つからないから意欲減退するらしいが・・・
- 2008年度:「正しかったよ」もOK、としたら、今度は誤りの指摘が少なくなった
- 5-6個は意欲が持つ。「正しいものを探せ」だと
- 「見つけたものを修正せよ」と言ったら。4/38しかやらなかった
- 2009年度:「投稿することを前提に記事を書け。もしくは誤りを直せ」と課題
- 18名、記事を作成したが、全員アップロードは「いや」と答える。内容以上に文章の適切さが不安、とのこと
- 108名が記事の修正を選択。これもうち22名だけが実際に記事を修正、ほかはWikipediaを直すのは嫌だ、という
- 作成も誤り発見も嫌だ:41%
- 2010年度:「情報編集とコンテンツ」というテーマでテクニカルライターに喋ってもらった上で「書いてくれ」と言った
- 134名の受講者のうち、このレポートを選んだのは9名のみ。8名が記事を作成。それなりに楽しく書けたらしい
- 5人が「実際に掲載する!」と言ってくれたが、実際には載せてくれなかった
- テクニカルライターの講義は役に立つ、が、難しくも感じる、との感想
- 134名の受講者のうち、このレポートを選んだのは9名のみ。8名が記事を作成。それなりに楽しく書けたらしい
- 翌年から別の大学に移って、別の授業をやることに・・・しかしテクニカルライティングが出しにくいものなので:
- 情報探索の授業・・・新島八重の葬儀は「同志社の母葬」として行われたとWikipediaにあるが、そういうものはない。大量に「同志社の母」というポスターが貼られただけで、式次第には「同志社社葬」と書かれている、それで間違いない。「同志社葬」も誤りのよう
- 314名中、「同志社の母葬」を選択:3分の1(GoogleやWikipediaで上位だから選んだ)、「同志社葬」:56%(同志社のサイトだから選んだ)で、正解(同志社社葬)0名
- web上の情報源以外を探したものはごく少数
- 提出後、探し方を説明すると、まったく同じ内容を前の授業でも話しているのに、興味深そうに聞いていた
- 授業後、Wikipediaの記事が実際に編集された
- 単純に「間違いを探せ!」と言ってもあまり面白がってくれないし間違いを直さない
- 間違ったものを題材として使うと興味が換気できる+効果も出ている様子
- 次は・・・Wikipediaの内容を修正することができそうな授業を担当するので、2010年度までの話の続きをやりたい
- 2011年度からの探す方ももっとやりたい
質疑
- Q. なんでWikipediaを授業に?
- A. 学生がよく使っている+興味を持ってくれそうだった。
- Q. 江草さんと原田先生、どっちにも、という形になるが。Wikipediaのプラットフォームとしての敷居の高さもあると思う。モチベーションを上げる、インセンティブを上げる上で他のソーシャルメディアを使ったりして、もっとうまく成功できないか。Twitterでの文書翻訳の成功事例等もあるが、それをWikipediaに転用したりはできないか?
- Q. 今日のお話を伺うと、私自身、学術出版もやっていたので・・・書く人と読む人の差がよくわかる。学術出版は読む人=書く人だが、一般の出版は読む人>>>書く人。江草さんは書く人を盛り上げようとしているが、実際に書く人はやはり限られるのか? 原田先生には、少しでも書く人を増やすにはどういうアプローチが有効?
- A. 江草さん:限られていく方向にはなっている。今回その話しはしなかったが、Wikiに書く以前に書く内容を調べることが難しいことに起因しているらしい。よみを入れる場合も、よみを調べるのは案外難しいし、所在地の入力も、すぐに難しくて地元の人しかわからなくなる。調べるスキルがある人が少ない。同じ図書館員の中でも得意・不得意や、調べるコストをかけられるかどうか、ということがあるのでは、と思う。お答えとしては、書く人は限られていったが、ちょっと単純なことに人手がいるときにニューカマーになる人が出て、でも燃え尽きて・・・ってなる。基本的には減っていく方向。
- A. 原田さん:ある一定の数は書く人はいるらしい。問題はそれを発表したくない、というモチベーション。公開するものは完璧でなければいけない、という思い込みが強くおもしになっている様子。「あとで直してくれるよ」と言ってもダメだ、という。「ものすごい調べたし先生に読んでもらうのはいいが、Wikipediaには上げたくない」と。書くことと発表するところに違いがあるらしい。河村さんの後輩に対して公開、というように、公開相手をかぎるというのはあるかも知れない。
編集者を増やす大変さ/Wikipediaあるいは類似Wikiの編集に対する抵抗感をいかになくすか、みたいな課題とその克服手法のお話は今回どこでも共通の話題でした。
このあと、実際に編集するワークショップもあったりして、自分は割りと嬉々として某学会の項目を作ってみたりしてもいたんですが・・・うーん、でもこれ、他の学会で何書いているか見て書き換えればいいだけだからすぐできるけど、もっと難しい項目いちからだったら確かに辛いなあ・・・。
まあでも、アップしてれば誰か直してくれるだろ、という気軽さも大事な気もする。
あとはこの次くらいで、自分の発表の解説エントリをあげれば終わりかなー、と思います・・・が、さて、今回ははやかったがその次はあらためていつになるか・・・。
*1:2013-02-07修正(もう一箇所も同日修正)。欲求不満とかではないです。