Code4Lib JAPANスペシャル・パネル「システムライブラリアンの要請と養成」(第40回ディジタル図書館ワークショップ 参加記録その2)
前半*1に引き続き第40回ディジタル図書館ワークショップの参加記録。
後半は既にこのブログでもおなじみ、Code4Lib Japanの2010年の活動報告と、スペシャルパネル「システムライブラリアンの要請と要請」です。
- Code4Lib JapanのWebサイト
- Tweetの様子のまとめ(Togetter)
以下、例によって記録・・・なのですが、会場質疑については自分が白熱してしまったため記録がありません(汗)
また、聞きながらしばしば考え込んでしまったのでいつも以上に不備の多い記録となっていると思います。
ご利用の際はいつもの注意(min2-flyの聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲での内容)に加えて上記についてもご注意いただければ幸いです。
お気づきの点はご指摘くださると助かります。
では、まずはCode4Lib Japanの2010年の活動報告から!
「Code4Lib JAPAN - 2010年度活動を振り返って」(Code4Lib JAPAN代表/山中湖情報創造館、NPO法人地域資料デジタル化研究会、丸山高弘さん)
- Code4Lib Japan
- 具体的な事業:
- 運営事業:法人化とネットワーク
- 研修事業:技能向上、人材育成
- 派遣事業:本家Code4Libへの人の派遣
- 選定事業:インセンティブづくり
- 低減事業:共通PAI、政策提言
Code4Lib Japan:2010年の活動
- 2010.8以来のイベントのべ参加者数・・・285名
- ここまで6回のイベントを開催+今日のWS
- 3月中にさらに2回WS
- 個人サポータ:35名/スポンサー企業:3社
- 派遣事業:
- Code4Lib Conference 2011に行ってきた
- いずれ日本でも実現したい。全国から人の集まるキャンプを
- 提言事業:
- ミーティングを何度も開催
2011年の事業予定
- 法人化をどうする?
- WS参加者向けのMLを心の支えになるような組織に
- WSはなんどもやりたい
- 派遣事業:次回はシアトルなのでそれに参加を
- インセンティブづくり:「Good site」を決めるなどのインセンティブを提供したい
- 日本全国にICTに明るい図書館員を/ネットワークによりひとりじゃないんだ、という環境を
- 最後に:「Code」はコンピュータのプログラミングであるが・・・
- 機能だけでなく見た目・使いやすさをデザインしていける能力も
- ICTとデザインを日本の図書館人に伝えたい
質疑
- Q. Code4Lib Japanの、本家との関係って? あるいは本家との違いは? 名前の使用許可は貰ったそうだが、名前だけ? 本家の一部? 向こうの特徴とJapanの特徴は? その理由は?
- A. 本家Code4Libはアメリカで誕生したConference. 年に1度のイベントのために集っている。名称にライセンシングがいるわけではないという。すでにアメリカでも地区単位、他にオランダやハンガリーでも名前を使った自発的な団体がある。Japanもその1つ。
- A. 本家との違い・・・Geekな人の集まりが本家。web技術の専門的な話の方がconferenceでは多い。それに対して日本では、そういったプログラミングに長けた人の養成もする一方で、図書館の中でTwitterやFacebook、YouTube、Flickrを取り込む、という程度の活動ができれば。米国の図書館ではそれほど規模が大きくなくてもそれらを活用しているが、日本はそこまでいっていない。日本のライブラリアンの中でも技術的には使えても図書館サービスに反映出来ていないところがあるので、少し裾野を広くして活動していきたい。
- Q. じゃあ本家はプログラミングを知っているマニアの集まりで、Japanは知らなくても参加できるコミュニティ? 参加するとGeekに近づける、という位置づけ?
- Q. 次のパネルディスカッションの前振りに。パネリストの中には研修事業や技術的サポートをやっている図書館員の団体はいくつかある。Code4Lib Japanがそういう他のコミュニティと違う特徴があれば。
- A. ひとつの特徴は、Code4Libのコミュニティの一貫・・・というのは正しくないが、つながりのある団体である。国内にはとどまらない、海外との技術交流も含めて、他の国との活動ともネットワークを作っていきたい。日本にとどまらない視野がある。
- A. 司会(パネリストの1人、林さん)から補足。Code4Libにはもとからスカラシップ制度があったのだが、そこに日本から来たい人はJapanに派遣事業がある、との案内を貼ってもらった。また、日本もいつかCode4Libカンファレンスの会場に参加表明すれば、との冗談も。
- Code4Lib Japanに関する参考文献:CiNiiで「Code4Lib Japan」と検索すると出てくるよ!
休憩タイム
パネルディスカッション:「システムライブラリアンの要請と養成」
パネリスト
コーディネータ
- 宇陀則彦先生 (筑波大学図書館情報メディア研究科)
宇陀先生:
-
- 図書館員にITスキル、技術をよくしっている人が必要、という話はそろそろ飽きた
- 技術を知っている=システムライブラリアン、なんていうのは古い。知っていればシステムライブラリアン、なんてことはない
- サービス全体を把握し、適切にイノベーションを実行出来るのがシステムライブラリアン
- 現代の図書館で技術を知っていなければサービスなんてできない
- 技術がわからないものは現代においてライブラリアンではない。・・・ちょっと言い過ぎた? でもそこまで言ってもいいんじゃないか?
- 図書館員にITスキル、技術をよくしっている人が必要、という話はそろそろ飽きた
-
- システムライブラリアンの養成
- 昔から「勉強しないと」とかいっているが、身につけることが目的であるうちはサービスは向上しない。技術付けてどうするの? 身につけるのが目的なら駄目
- 技術を身につけないとダメ、という観念ではモチベーションが上がらない。勉強が進むのはやりたくない、やりたいことがあって始めて。義務的な勉強は進まない
- 技術を身につける云々以前に、何をしたいのか、身につけた先にあることを明らかにするのが重要
- システムライブラリアンの養成
-
- 技術を身につけるのは当たり前、その先に何をするのか?
- 本家Code4Libのコミュニティは楽しそう。参加している人も楽しそう
- やっぱりCode4Libを名乗るからには面白い、楽しいコミュニティになればいい
- どんなシステムを作りたいか、新しい・面白そうなものをイメージするのが大事
- 技術を身につけるのは当たり前、その先に何をするのか?
- これから順にパネリストに5-10分話してもらう
- どういうシステムをイメージするか・今なにをしているか
- それぞれ活動している、そのグループの活動も紹介して欲しい
清田先生:マイニング探検会の知見
- 岡本真さん([twitter:@arg])と「マイニング探検会」を主催している
マイニング探検会(マイタン) - 図書館の未来を探る勉強会 -
- 主なトピック:複数の班に分かれて活動している
- システムライブラリアンに求められる考え方?
- 組織の壁にとらわれない
- 勉強会参加中は個人としてできることを
- 本来のミッションに立ち返ってみる
- コンピュータを活用する目的を意識する
- 組織の壁にとらわれない
林さん
- 農林水産研究情報総合センター
- ではこれからのシステムライブラリアンは?
- SFXとMetaLibのカスタマイズの事例:
- 従来・・・ユーザインタフェースを変えたくてもベンダに「それは仕様」と突っぱねられる。システムに縛られて生きる
- システムライブラリアンなら・・・「俺がっ! 作るっ! インタフェースをっ!」
- APIの導入で表示・検索インタフェースは自由に作れるように
- しかしcodingはできないし、できたとしても自分が作ってしまうと他人にいじれない・・・そこでオープンソースのソフトウェアを見つけてベンダに導入を依頼
- それを見つけてくる、ありものを見つけてその技術・手法をsurveyするのがシステムライブラリアンの仕事?
- できたシステムはけっこう使われている
- アメリカでもAPIを活用した開発は盛ん
田辺さん
- Project Next-L
-
- 日本の図書館システムを図書館関係者の手で作るプロジェクト
- 2006年開始
- オープンソースのソフトウェアを開発、公開
- 昔、新設の大学図書館(サテライト)で図書館員をしていた
- 教室くらいのサイズの図書館、空の本棚しかないところから
- 「図書館システムは?」「ない! OPACしかない! 早くても5年はシステムは入れない!」
- 小さい図書館、学生も数十人しかいないところにシステムを入れるよりは紙、という常識的判断?
- 若い自分は逆上・・・「じゃあ自分で作ってしまえ!」
- ちょっとずつ作っていたところでNext-Lの提案、飛びついた
- 開発したシステム・・・Next-L Enju
- Ruby on Railsで書いている
- 書誌管理システム、図書館業務システム、資料検索システムの3系統
- なぜ作った?
- 振り返ってみて
- 作るのに集中しすぎた、という反省
- 図書館員の意見を聞くのが題目だったのに、意見が集まらないし、じゃあ合意形成より先に作っちゃえ・・・と進めてきた
- 職場もひとり、下宿でもひとり。気持ちが内側へ?
- 作るだけならなんとかなる。プログラムを書けるだけじゃなくサービスに起こすには、不十分。職場・他機関との関係構築とサービスへの反映がなかった
- 作るのに集中しすぎた、という反省
原田先生
- 今は慶応義塾大学文学部所属だが、3/31で退職。4月からは社会人兼大学院生になる。
- 今日はNext-Lの話はしない。別の立場から話す
- Code4Lib Japanに名前が入っていそうで入っていない人の一人でもある、参加していない。そこまでの余裕が無い
- 自分たちのやっているプロジェクトにいっぱいで、全体を俯瞰して活性化させるところまでの余裕が無い
- やっているプロジェクトの関係者の集合はCode4Lib Japanが呼びかけてくれるだろう。それに参加していきたい。そういう風なものができたら行きたい
- 昨年9月までやっていたデジタル・ライブラリアン研究会*2。10年間、講習会をやり、300人の人に対して話をしてきた
- 言い出したのは慶應・糸賀先生。そのときにはシステムに関わる人の養成で重要なのは技術の話ではない、という
- 「いかに自分たちが楽をするか」「いかにアピールができるのか」という経営・マネジメントに結び付けられなければ役に立たない
- マネジメントの話からはじめて技術の話へ行く。その段階でも楽をするには、という話を展開してきた
- システムライブラリアンで重要なこと:
- 個人でシステムを導入できるのはもちろんだが、個人から発信してオフィシャルにできる人が必要
- 自分のためのシステムを作っていても何も変わらない、飽きたら終わり。続くシステムをいかに作るか、環境が重要
- システムを作る人が必要なのは当然、それをマネジメントする・応援する人もすべてシステムに関わる人
- 林さんの調整の話は重要。それだけではなく作ってみたら面白かった、というシステムもいっぱいある
- 全国の条例横断検索システムを作ったら100万人くらい使われた、など。利用者の意見は上がってこないが公開したら使われた、というもの
- つまり調整と提案、さらに提案だけでは不十分で許可とお金を取ってくること=説得材料を出して「コストも下がるし評価が上がる、なぜ入れないの?」と直接言わなくてもわかる資料を作ること
- さらに作る方をなんとか支援する仕組みもいる。調整、提案、説得、応援。それができる人材を育てないといけない
- さらに・・・マニュアル作り:とても大変
- システムがわからないとマニュアルは作れない
- プログラマはマニュアル作りは大嫌い
- そこでマニュアルを作ることも技術に関わる重要なトピック
- 技術の話の外側にある部分の方が遥かに大きい
- 現在はやっと作るところに焦点
- その外に広がっていくのはこれから
- Code4LibやInternet Archiveは作ったのも凄いが続けているのが凄い
- そういう様々なプロジェクトが花開いているアメリカに負けないように面白い道が日本でも開けば
自己紹介+α終わり
宇陀先生
- 大学図書館⇒公共図書館⇒専門図書館⇒OSSの活動、とそれぞれ立ち位置が違うが、共通していることもある
- やりたいことがはっきりしている。色々な活動の第一歩である
- 館種の違いはそれほど感じなかったはず。web環境における話は共通している
- 図書館システムの三側面:
- 図書館業務システム・効率化・・・仕事を楽にする
- ディスカバリサービス・深化・・・図書館資料にいかに辿り着かせるか/検索・リンキング技術。まだ出たばかり、チューニングして最適化するのがこれからの方向
- コミュニティ・拡張・・・SNS、リコメンド、書評など。一方でいらない、という意見も
- 図書館システムの特性:どこに向かうべきなのか?
- 第一に「つなぐこと」
- 第二に「多様であること」
- 第三に「創造的であること」
ディスカッション
- これからパネリストに質問を投げかける、その後フロアから質問を受けたい
- 宇陀先生:凄い数のアプリケーションをマイニング探検会では開発しているが、どういうものをどうして開発しようと思った?
- 清田先生:ミッションとしては自分たちが何をプロデュースしたいかをスタートに置いている。私自身は自然言語処理研究者だが、博士論文でマイクロソフトと共同研究でヘルプシステムを使っていた。そこで検索とは一方向ではなくインタラクションであり、サイエンスだけでは解決しなかった。人間の潜在的な能力をどうやったらコンピュータで拡張できるかに興味がある。
- その中で、技術・知識・情報資源を使って人間のリテラシーを高めるサービスをどうやってできるか。あとは参加者の方に自主的にやっていただいている。
- 宇陀先生:業界関係者ではなかったところが図書館に関わるようになって、図書館システムはどういう方向にいくとおもう?
- 清田先生:多様性が重要と思う。サーチエンジンは世の中の人に使われるようになって10〜15年経ってもうお馴染みだが、webサービスとの違いはそこだろう。世の中には様々な情報資源がある、その価値をどう伝えるか。
- 宇陀先生:開発したアプリケーションは今の図書館システムの中に組み込み可能?
- 清田先生:一部は組み込み可能。ブラウザに組み込む形で使える。ただ、それはユーザにある種の手間を要求する。自分たちが提供するサービスに組み込んでいきたいが、そこにハードルはある。自分たちのサイトなのだがそこにタグを入れられるかといえば、業者任せのところもある。そこをどうやって突破するかが多くの方の課題。
- 宇陀先生:次に大園さんへ。機関リポジトリが前提だが、やっていることはぶっちゃけDSpaceのインストール補助? 他の情報資源にリポジトリをつなぐことまで考えている? 今の大学図書館業界で機関リポジトリが普及したのに図書館システムやOPAC、電子ジャーナルとの統合は考えている?
- 大園さん:国内がDSpace多数派なので技術サポートもDSpaceのサポートがメインにはなっている。もう1つの目的は先進技術の取り入れなので、そこで学内システムとの連携を試みている・・・までは行かなくても検討はしている。
- 大園さん:実は今、システム担当ではないので詳細は把握していないが、知る限りではSCPJ連携したとは聞いていない。CiNiiやWebcat、学内研究者データベースとの連携はできる状態。
- 宇陀先生:どうして機関リポジトリと図書館システムは一緒にならない?
- 大園さん:できるならしたいが、技術的な問題がある。
- 宇陀先生:筑波はやった。
- 宇陀先生:川嶋さんへ。どうしてベンダではなく自らやってやろうと思った?
- 川嶋さん:ベンダに頼むと時間がかかる。ベンダは2ヶ月に1回しか図書館に来ない。そこで打ち合わせをして持って帰って・・・とやってもどうしようもない。それくらいなら自分たちで書き換えてやった方がいいんじゃないか、と考えた。6月くらいには県立図書館の蔵書を検索できるようにしようとしてベンダに頼んだが、未だにあちこちエラーが出る始末。こっちで頼むのは限界なのでは?
- 宇陀先生:やってやろう、と思ってからは自ら勉強した?
- 川嶋さん:自分たちの勉強会はwebもなく話し合いの内容も外に出さないようにしているのだが。ゆうき図書館が雑誌記事の新着速報をjava scriptでやっていて、これならなんとかなるかと思った。
- 宇陀先生:川嶋さんにもう1つ。公共図書館ならでは、というのはある?
- 川嶋さん:一番の特徴は利用者への説明機会がないこと。見て分かってもらう、直感的に分かってもらうようなものを置いておかないと使ってもらえない。大学図書館なら学生向けに説明の機会を持つだろうが、公共図書館はそうではない。まずわかりやすい必要が要る。それから扱う資料が多様。大学図書館なら専門データベースにリンクするのだろうが、公共図書館なので広い範囲をカバーする仕組みにリンクしている。
- 宇陀先生:説明機会がない、というのはシステムの説明機会?
- 川嶋さん:利用者登録時の5分もないような説明+説明のレジュメ1枚、で終わり。聞いてもらえれば対応できるが普通はそうではない。使えるか否かは見て判断する。
- 宇陀先生:説明の必要のないインタフェースってどんなもの? Googleにいってしまう?
- 川嶋さん:検索に迷わないのはいい形。それ以外だと、Web OPACならアイコンを使うなど、タイトルだけでてもわからないのは直したい。そうガッ、とは出てこない。
- 宇陀先生:林さんへ。インタフェースの工夫の難しさはどこにある? 色々システムをやって、その反省を踏まえて次にいったと思うが、なかなかうまくいかないと思う。うまくいったならそれでもいいが。
- 林さん:どうだろう? 職場での評価は悪くはないが、だいたい3年早い。常に先に行き過ぎてしまっているところは多少ある。新しければいいってものではない。あとは、一般ユーザの利用が追いついていないのに新しいことをどんどんしてしまって・・・というのもある。今取り組んでいるのは、今まで作ったものをどう定着するか。実際に使ってもらうためのセミナーを開くとか。開発と利用がうまくつながっていない、というのがひとつの反省。
- 宇陀先生:それはよくわかる。筑波のシステムをリプレースしても、利用者のメンタルモデルとこちらの想定するモデルが食い違う。農林の人を見ても、大学よりもシビアでダイレクトにシステムを見ている。羨ましくもあり、大変そうでもあるが、利用者の考えるものより一歩先を行ってしまったことが反省であるとすると、サービスし続ければ利用者は適応するのでは? 適応しないまま?
- 林さん:ものによる。<・・・ものによることの説明・・・>。ユーザに対して長期のサーベイをやることが必要ではないかな、と思う。僕もせっかちな人間なので結果を求めたがるが、運用してみて結果を求める、そういった視点も必要だな、と思う。
- 宇陀先生:さらに2つ。利用者からのレスポンスが農林はシビアだが、それをうまく利用してシステムの改修はできている?
- 林さん:<未記録>
- 宇陀先生:なんで自分たちでシステムを作らない?
- 林さん:現状でcodingができる人間を雇用しているわけではないし、サービスを広げすぎたので絞っていくべき時期にあり、一からの自力開発はできない。<未記録>
- 宇陀先生:田辺さんへ。口だけ野郎になりたくない、というのは感銘を受けた。そこまで熱くなると自力開発をするのだろう。スーパープログラマとしてどんどん作る、それを原田先生が営業することで回っているんだと思う。この先、予算が削られていったときに、オープンソースでいける?
- 田辺さん:それを僕が食べていけるか?
- 田辺さん:自力では相当難しいと思う。よっぽどきっちり整備されたマニュアルやサポート業者がいれば可能だろうが・・・でもそれはDSpaceだってOSSなのに業者がついているわけで、サポートがついている状態なら現実的なモデル。OSS自前は難しくてもOSSの運用にはなんの障害もない。
- 宇陀先生:業務システムや利用者に見えるサービスをOSSでやることにどんな障害がある?
- 田辺さん:そんなに難しいかな? OSSだから何? OSSだから簡単、難しいなんてことはない。フリーなものでも商用でもいいものはいいし、駄目なものは駄目。むしろ今のEnju、に限ったことではないが、小さいところから理解すれば全体が理解できるシステムになっている。
- 宇陀先生:では原田先生に。プロジェクトマネージメントの話があった。あれもよくわかる話だが、NDLサーチの苦労もお伺いしたが、その重要性を技術と絡めて5分で話して欲しい。
- 原田先生:まず補足。今は慶應ではWeb APIも扱っている。で、今の話の補足。OSSやマネジメントはお金と力のかけかたのコントロール。OSSだからどうこうではなく、意思決定をどうするかと、お金をかける段階のコントロールが決まった形になっているものが使いにくい。プロジェクト管理がちゃんとなされていればOSSと商用に差はない、管理だとOSSの方が手間がかかる。OSSは公開して、かつリプレースしないほうがいいと思わせるためには管理コストは他よりかかる。そういう意味ではOSSがコンセプトの段階でどれだけ要求を取り込めているかが重要。OSSが安くならない、というのはあるが、そこの部分は広報・評価で。図書館はPDCAのC(評価)をしていない。そのCをOSSにすると外から入ってくるのでコストが低くなるし、OSSだからしゃべりやすくて集約コストも下がる。そういうところではコストが下がる。OSSが将来的に力を持つかはわからないが、短期的には力を発揮しうる。日本と世界の状況も違うかも。
- 田辺さん:OSSには教育目的で使って欲しい、という意図もある。司書課程でOSSを使って貰う、とか。大学以外でも、勉強会等で使ってくれれば・・・ということを夢見ている。私が勤務していたのは小規模館、CAT端末もないしリポジトリもない、ついて行きたくても話に入れない。そこでどうやって仕事のモチベーションを保つか、と考えてEnjuを作って他のコミュニティに見て欲しいと思った。・・・なかなか誰も見てくれない・・・
- 宇陀先生:フロアの方も言いたいことはたくさんあると思う。
以下、自分が参加してしまい未記録
というわけで最後は自分が参加していたので記録が取れなかったのですが(汗)
発言内容としては、最初に宇陀先生のお話で「サービス全体を把握し、適切にイノベーションを実行出来るのがシステムライブラリアン」とあって感銘を受けたのだけどその後のパネルであまりサービス全体を把握しているように見受けられない、そのあたりはどうなのか。
「利用者にたくさん使って貰えるシステム」を作ることは目的じゃないはず、そのシステムを開発したことで、開発しない(よそのシステムを使ったりシステムを使わない)よりも利用者がハッピーになる、大学なら教育効果が高まるとか研究生産性が上がるとか、自治体なら市民が幸せになってひいては税収も増え・・・とか、図書館がやりたいアウトカムにつながる、というところまで見てやっているのか・・・ということを皆さんあて(広い(苦笑))にお聞きしました。
で、あとから「アウトカム」って語の選び方は適切じゃなかったかな、と少し反省。
今日の議論の中の流れを汲むなら、宇陀先生がディスカッションに入っていく前に言及されていた「ミッション」というのが正しいかな、と(やる前にアウトカム予測なんかできるか、やってからだって測定するのに四苦八苦しているのに、ってのは自分も常々思うので)。
図書館として、あるいは一段階あげて大学・自治体・研究所として「なにがしたいのか」というところからシステムがスタートしているか、そこに結びつくものになっているのか・・・という。
コーディネータの宇陀先生からは(Twitterで実況していた[twitter:@kunimiya]くんのtweetから引用すると)
とご回答いただきまさに前半部分のようなことが聞きたかった(そこからどうシステムにつなげるか)+後半については納得し。
また、その前に林さんからは農水の場合について詳細にご回答いただき、清田先生・原田先生とはディスカッション中および終了後にも、国立国会図書館のサービスを例に挙げながらかなり熱く議論させていただきました。
で、個人的には大変面白かったのですが・・・「システムライブラリアンの要請と養成」、どこ行った(汗)
「要請」についてはディスカッションの中で様々出ていたのですが、「養成」は触れられませんでしたねー・・・うーん。
しまった、事前の図書館情報学チャンネル*3の流れを考えれば、そここそまさにDRF、大園さんにお聞きしたいところだったのに。
DRF-Techの中にはもとはシステム系でもなんでもなかったのに業務でシステムを担当することになってからめきめき知識・技術を得てサポートする側に回っている、という方もいらっしゃって、実は大学図書館業界リポジトリ関係以外にもそういう方も相当数いるんじゃないかとも思うのですが、それがDRFというコミュニティがあることで可視化されている気がするのですよ。
宇陀先生からなぜリポジトリを図書館システムに統合しない、というお話がありましたが、その延長で言えば機関リポジトリに関わる方の中には図書館システム担当部署にいらっしゃる、リポジトリだけじゃなく他の図書館システムに関わる方もいらっしゃるわけで、リポジトリから踏み込んでそこまで範囲を広げていくと・・・という流れもありかと思うのですが、どうなのか、とか。
他にも色々と気になるというか議論したいことがいくつも出てくるテーマで、そういう点では会の終了後にAcademic Resource Guideの岡本真さんがされていた
というのは本当にそうだな、と思います。
すっきりしちゃうと後で自分で考えるってことはあまりしなくなるので。
「刺激になりました」って書くことないときとりあえず言っとけばいいか的にこのブログ上ではやたら連発しているフレーズなのですが(「近年」を数える次に数えてみたいワード候補)、今回のパネルはそういう言葉に困ったとかでなく刺激的でした。
だから反応して熱くなったわけですし。
その熱を、自分の場合はさあ、じゃあ何にどう活かそうか、ということになるわけですが・・・口先野郎になりたくないって田辺さんの発言はなかなか効いたなあ・・・