かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

学者学はどうかと思うが研究者研究は割とまともな学問


ネタ元:「学者学」という奇妙な領域 - 猫を償うに猫をもってせよ


記事タイトルだけ見て「それは科学社会学や学術情報流通のことかぁー!」とか思って喜々として読みに行ったら全然違いましたorz


記事中で言われてるような「学者学」は確かにどうかと思う。
社会学者が昔の社会学者の方法を踏襲するばかりで、そこから新しいなにかを生み出そうとしないのであればまあ批判されても仕方ないかな、と(min2-flyはプロ論もその周辺の文献も全然読んでないので、あくまで一般論です。折原先生が実際にどんな方かとかは知らないよ!)。


ただ、それとは別に「学者」あるいは「研究者」を研究対象とする社会学はそこそこ市民権を得た学問として存在する。
科学社会学とか呼ばれるような分野。
「研究者ってどんな連中で、どんな風に研究を進めてて、どんな特徴があるのか」とか、そういうところに興味を持った学問で、その中では昔の学者が研究対象となることも当然ありうる。
そこでは学説そのものがどうこうというよりはその研究をしているときにどんな奴らとつるんでどういうやりとりをしていたとか、発表時にどんな問題があったとか、そういうところに焦点があたるので、小谷野さんが批判されているような学者学とは全然風体が違うわけだが。
学者個人に焦点をあてた研究よりは学者相互のつながりや総体としての研究者コミュニティを対象とすることの方が多いような気もするし(あくまで気の問題。調べてないよ!)。
「見えざる大学」(研究者の所属機関とは別に、論文の共著関係など協力関係にある研究者集団が科学研究においては重要な役割を果たしている)とか「ゲートキーパー」(領域外ともコネクションがあり、領域内でも研究の中心となっている研究者)の話とか、ハマるとしばらくそんなことばっかり考えているくらいには面白い*1
一番笑ったのは比較的高温で超電導起こす物質についての研究論文を査読の過程で盗用されるのを恐れたある研究者が、物質名をわざと適当な別のものにして提出したところ案の上盗用が発生。しかし適当に書いたはずの物質でも偶然高温での超電導が起こってしまったためにわけがわからなくなったというエピソード。どんだけよ。
あとアインシュタインが論文にけちつけてきた査読者に逆ギレしたら査読の方が正しかったことが判明して「ごめんなさい」したとか。こちらは聞きかじりなので定かではないが。
もちろんそんな下世話なエピソードばかりなわけではないが、まあ面白いことは確か。


あと論文の共著-引用関係に焦点をあてた計量書誌学とかも研究者を対象とする学説研究ではない研究ってことでは似た面があるかも*2
どちらかというと自然科学分野に焦点を当てることが多いので社会学者を対象とした科学社会学ってどれくらい進んでいるのかはわからないけど、この手の研究者研究なら批判を浴びることもなく(図書館情報学的にはむしろ多いに役立つので大助かり)進められるんだが。
・・・市民権、それなりに得ているはずなんだけど、知名度は低いんだよね・・・
実証的だし面白いと思うんだけどなー。

*1:興味のある筑波大生は「学術情報流通論」とかの授業で詳しく出てくるよ

*2:最近だと昨年度の図書館情報専門学群卒業論文で、青色発光ダイオードの実現に至るまでの共著-引用関係から研究グループ同士のつながりとかを考察した奴はかなりわくわくした。