かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

ていうかWikipediaも引用するだろ。実際。


ネタ元:「ウィキペディアを引用するな」 | Okumura's Blog

図書館情報学方面の人はそもそもWebの引用に懐疑的で,どうしてもURLを参考文献として挙げるなら必ず「何年何月何日閲覧」と書き加えるようによく言われる。機械的に適用すると,「ウィキペディアhttp://ja.wikipedia.org/,2007年7月25日閲覧)を引用すべきではない」のような変なことになる。


いやいやいやいや。
webは引用するだろ。図書館情報学者でも。びっくりするなあ、もう(あ、ちなみにネタ元の人も「引用するな」と言っているのではなく、「引用するな」と言っている人への反論が書いてあります)。
だいたい図書館情報学者がWebの引用に懐疑的だったら最近のSIST02(日本の図書館情報学でよく使われる・・・かはわからんが、最初に習う参照文献フォーマット)の大改訂(電子情報資源の記述が補遺から本編入り)の意味がわかんないことになっちゃうし。
Current Awareness-EやCA-Rみたいにwebにしか載ってない重要な情報もある昨今、Webの引用自体に懐疑的なんてナンセンスなことはないですヨ?


webについては閲覧日を記述させるのは、別にwebの情報をいじめたいからではなく、webはいつ書き換えられるかがわかったもんじゃないから、書き換えられた場合に引用者が嘘付き呼ばわりされないために見た日付をちゃんと明示させておけ、というだけのこと。
「資料を同定できること」は図書館情報学的な至上命題の一つなので、不安定なwebについてはそういう記述がいるってだけの話。
まあ確かに文中で引用元明記するとおかしな感じにはなるが、脚注にすれば別に不自然ってこともないしさ。
新聞記事の場合は・・・どうしたらいいか難しいが。
そこはうまく考えてくれ >記者。


で、話題をwebではなくWikipediaに限定すると・・・その場合は逆に、そもそも図書館情報学的には「一つの典拠しか示さずに事実を同定する」こと自体に対する拒否感がるので、そういう意味ではWikipediaのみを見て引用することは批判するかも知れないが。
ただ、それは別にWikipediaに限ったことじゃない。
「一つしかみないとその一つが間違ってたらまずい」っていう考えが根底にあるので、(皆がそれをちゃんとやっているかは別として)、一つのテーマについてなるべくたくさんの資料を見て、その中でどれを採用するか選ぶ。それが図書館情報学クオリティ。
実際、ブリタニカ国際大百科事典に限らず、冊子媒体のレファレンスツールに信用ならない記述がいくらでもあることなどきちんとレファレンスサービス演習を受けた司書課程履修者ならばすでに通った道であるはずなのですよ。
俺ですら日常生活で「麻雀における立直(リーチ)の定義」を間違っている辞書を発見したことあったくらいなんだから、いわんや専門知識をや*1
Wikipediaを引用するのが問題なのではなく、「一つの資料だけ見て事実と思いこむ」ことの方が図書館情報学的には問題なのです*2


まあそんな感じでネタ元に対して(図書館情報学やってる立場から)反論もあるんだが、一方で提案されている内容自体については至極賛成です。

ただ,今ではBritannicaよりWikipediaのほうが影響力が大きいので,間違いを見つけたら「だからWikipediaは駄目なんだ」と言うだけではなく,ぜひ訂正してほしい。研究者は次世代の若者のためにブルーバックスの類を書くべきだと言ったことがあるが,今ならWikipediaも含めたい。

そうそう、ちゃんと専門家が直してくれればこんな心強いことはない。
さらに言えば、研究者には修正するばかりでなくぜひ自分で記事を書いていただきたい。
既存の辞書・事典ツールにはないような最新トピックでも掲載できるのがWikipediaの強みなんだし。
実際、事典類にないような最新トピックで辞書的知識を引きたかったらWikipedia見ることになるだろうしね。


・・・Wikipediaの記事書いても功績にはカウントされないだろうからあれだが・・・。




・・・しかし、本論から外れるが、どっちかって言えばwebを引用することよりも引用した記事がなくなることがある方が図書館情報学的には大問題なわけですよ・・・
Wikipediaはまだ編集履歴残るからいいが、多くのwebサイトだと本当に過去ログがなくなったりサイト自体消えたりしちゃうし・・・
一番はArchiveを充実させることとして、現実的な対応としては、webを引用するときは必ずweb魚拓とっておけ、みたいなことを徹底すれば良いのだろうか?
便利なのはいいがこういうところはいろいろ面倒だな、web・・・。

*1:ただしその事実の典拠を忘れる痛恨のミス。論文なら即アウトですね

*2:それとは別に学生によるWikipediaのコピペが批判されることはあるが、それはむしろ著作権とか論文盗用に対する配慮のなさが問題視される。引用部分が自分の論の部分より多いのはダメ。典拠書かないのは最悪