かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

トークセッション『自律進化するデータベースはつくれるか』(長尾真 × 池上高志)を聞いてきました


昨日の話ですが、以前にうちのブログでも紹介した国立国会図書館の長尾館長のトークセッションイベントの第1回目に行って来ました。
毎回長尾館長がゲストを迎えて対談するという形式を取るそうで、今回のお相手は複雑系研究者で東大教授の池上高志先生。

国立国会図書館長を務める情報工学者の長尾真と複雑系研究者の池上高志による予測不能トークセッション!

「生命にとって知るとは/わかるとは」「AI(人工知能)とAL(人工生命)と」「自律進化するデータベースはつくれるか」など、生命を捉えることから、これからの知のアーカイブについて迫ります。


ここ最近やたら細かいイベントレビュー(というか下手な議事録みたいなもの)をアップすることが多かった当ブログですが、今回は会場が超満員だったため今の自分のノートPCを広げる気になれず*1記録は全然とってません。
なので記憶が頼りなのですが・・・記憶力に関してはなあ、自分の書いた論文タイトルすら覚えた試しがない程度の能力なので・・・
まあ長く書いたからって読まれるとも限らないのでかえって良かったのかも知れませんが(苦笑)


だいたいトークセッションは前半が人工生命・人口知能に関するセッションで、質疑を挟んだ後半はアーカイブ・図書館よりの話⇒自律進化できるDBは作れるかという話になっていく、という展開でした。
イベント終了後に会場にいらしていたお知り合いの方々と飲んだのですが、その場では3:1で「前半が面白かった!」と言う人の方が多かったですね・・・
かくいう自分も前半に票を投じましたが。
っていうかその場にいた4人中図書館勤めもしくは図書館情報学研究者3人が全員前半に票を投じると言う(笑)
いやでも、人口知能/生命に関する話は色々面白かったですよ。


個人的に一番面白いと思ったのは「環境」に関する部分。
「Goolge翻訳が全然使い物にならないけどどうにか出来るのか」という池上先生の問いに対する長尾館長の「機械翻訳をするときに辞書的なものを用意するだけではなくて大きな用例翻訳DBを用意する=(「ルール」と言えるほど簡潔なものではないけど)事例そのものをもってルールとすればいい」、という話とか。
「忘れていた要件を〆切直前にふっと思い出す」と言う現象についてと何か目的を持って動いているとき以外に脳が何をしているかとか、どんな化学物質が出ているかとか、そういうところも考えてみないといけないんじゃないか、とか。
コンピュータ上で人工生命を実現する際にどこまでの環境を入れて動かしてやればいいのかとか、その手の話がかなり興味深かったです。
人口知能/人工生命については全くの素人なのでどのあたりまでが皆にとって既知の話題でどこからがお2人のセッションで出てきた新しい考えなのか、ってあたりがよくわからないところが悔やまれますが・・・


後半、図書館よりの話だとものを探しやす過ぎることの問題と言うか、欲しいものがない(わかっていない)人に欲しいものを見つけさせるとか、欲しいものにたどり着けなくて探す過程がいいんじゃないか、ってなことを池上先生が言われているのが気になった、と言えば気になったというか。
「欲しいものはなかなか手に入らない」、「(コスモクリーナーは)イスカンダルまで取りに行かないといけない」、って言う表現は説得力がありますね*2
「はっきりしない欲しいもの」がある人についてはここ最近の次世代OPACの話で出てくるファセット分類とか、履歴を利用したリコメンデーションみたいなものは割と応えられるんじゃないかと思いますし、もっとはっきりしなくて検索語が入れられないような欲求についても感性語で本を探せないかとか、全くランダムに資料を表示し続けてなんか気になるものがあったら見られるシステムとか、図書館系の分野でもいろいろ検討されている人たちがいるのですが・・・システムの中だと色々あると思いますが、物理的な場だとやっぱ「探せるようにする」ってところはなかなか抜け出せないでしょうか。
一度置いちゃったもんはなかなか動かしにくいってこともありますしね・・・RFIDで全ての資料がどこにあるか常時把握できる、ってんなら分類法とかを無視して好みで置いても「ある資料を」探すことへの問題はなくなるので、そうなれば書店のように色々な配置を試してみる、ってこともしやすくはなるかも知れませんが。


セッションの最後では会場のd-laboを運営しているスルガ銀行の方から、講演者のお二人の「夢」についての質問があったのですが。
お二人ともロマンティシズム、って話を挙げられていたのが印象的でした。
理想の実現とか、面白さの追求とか。
かなり唐突に感じられる質問でしたが(苦笑)、結果オーライ。


とてつもなくとりとめのない感じになってしまいましたが、要約すると「なんかわかったんだかわかんなかったんだかわかんないけど面白かった」って感じで。
異分野の研究者の話なんて毎回そんなもんだよ!*3
超面白いけど後から思うとやっぱよくわかってない、でもなんかは残ってる、みたいな。


ちなみにこのトークセッションシリーズ、次回の詳細は未確定と言うことですが今後も情報工学者としての長尾先生のキャラクターを引き出す方向で展開されていくそうですので、興味のある方はぜひd-laboのページ等で情報をチェックされることをお勧めします(もちろん自分も情報が入ったらここでお伝えしたいと思います)。
なんか会場見まわした感じそんなに図書館系の人はいらっしゃらない感じでしたが・・・図書館系同士の集まりも面白いけど、外と接点増やしていくのもまた別に得るものがあると思いますしー*4

*1:ちなみに現在使っているのはThinkPad X301。軽量でそこまでスペースは取らないので普段はイベント等でも違和感なく広げていましたが、さすがに今回は無理でした。後ろの席の方が広げていたEee PCのサイズが限界でしょうね

*2:もっとも「ヤマト乗員だからイスカンダルまで行けるんだよ」とも思ったりしましたが。そういう意味では本当に欲しいものを手に入れられる人間なんてごく一握りで、その一握りのための機構ってのはコストパフォーマンス悪いかも知れませんね

*3:長尾先生も国会図書館長としてと言うよりは情報工学者としての立場でお話しされていたので

*4:もっとも人工知能とか人工生命って工学じゃない方の情報学にも深くかかわってくるし図書館系にとっては近縁領域って気もしますが。「『攻殻機動隊』読んでない図書館系はモグリです!」