【2009年図書館総合展フォーラムレポートその2】研究者、ILL担当図書館員が語る機関リポジトリ:「リポジトリがより活用されるために」(第5回DRFワークショップ 2009年、いま改めてリポジトリ)
明けて昨日の話になってしまいましたが、図書館総合展2日目、最初のフォーラムはデジタルリポジトリ連合(DRF)によるワークショップ、「2009年、いま改めてリポジトリ」に参加してきました。
ぎっりぎりまでCiNIi WebAPIコンテストとどちらに参加するか悩んでいたのですが(なにせ自分でコンテストについての詳細が公開されたイベントのレポートもやっていたので!)、DRF5の最初のセッションには北海道大学観光学高等研究センターの山村高淑先生がいらっしゃると聞きDRF5に参加を決意した次第。
先日、共同発表をさせていただいたからというのもありますが、それ以上に山村先生がリポジトリについて語られることをぜひお聞きしたかったというのが一番であり。
結果・・・会場で若干目をうるうるさせながら必死にメモを取る電子かたつむりの姿がそこにはあったわけで、参加して良かったです本当。
ということで以下、いつもの通りメモです。
あくまでmin2-flyが聞き取れた/理解できた/書き取れた範囲でのメモですので、その点ご了解のうえお読みいただければ幸い。
誤り等のご指摘がありましたらコメント欄等にてお願い致します。
なお、最初のセッションの司会は千葉大学附属図書館の武内八重子さんです。
「ILL担当者から見たIR」(岩澤尚子さん 香川大学図書館)
- 日頃私はILLの担当者。その立場から機関リポジトリ(IR)について感じたことをお話したい。
- 最初に香川大学の概要とILLの状況について
- IRについてILL利用者の反応
- 多くの大学でIRが設置されて、IRで公開されているものにあたる機会が増えた
- 学生にCiNiiを紹介するとき、「機関リポジトリってボタンがあったら押してごらん」と説明している。みんな「すげぇ!」と言って喜ぶ。私が凄いわけではないが「そうでしょ」と思ったりする。
- そこですかさず本学でもやっていると説明するが、そちらの反応は薄い。
- 学生に限らず、これまでIRで公開しているので複写依頼をお断りした先生にもお話を伺ってみた。リポジトリは早くて無料で便利でいい、という反応がほとんど。しかし著者のためのものという意識はない。ILLを頼んできた人に聞いた結果なので当然の結果かも知れないが、リポジトリは「皆さんのためのもの」と説明して回ったことを考えると少し残念。
- 図書館界で盛り上がっているほど自分たちのものという意識は少ないと思う。これは図書館のPR不足もあるが、「図書館の人はすぐ自分たちを責めるが、いくら安売りのちらしがあったっていらないものは買わない」。使って貰えるものを作る取組が必要。
- 利用者として便利さを感じて貰うことも第一歩。ILL担当者は利用者にそれを伝えることが役割なのかも知れない。
- 利用者が申し込みの前に検索するのは、OPACと電子ジャーナルとCiNii。しかし「どう探していいかわからない」という人もたくさんいる。
- いろいろな情報収集手段があって混乱している/自分のやり方があるので新しいことに馴染めない。図書館員だって担当を少し離れたらびっくりすることもよくある。
- 図書館の業界用語とかデータベースの名称もわかりにくさを感じさせている原因の一つかも?
- 国内・国外、有料・無料でも一度にまとめて簡単に探せるものがあれば使って貰える?
- ILL担当者は複写依頼前に公開状況をチェックしている。ILL=コピー取るところというイメージもあったが、最近はそれだけではない。
- IRで公開されていたが・・・
- CiNiiでリポジトリにリンクがあるのは使いやすいし助かるが、リンクをたどると要旨だけということもある。
- IRDBコンテンツ分析を辿ると、本文がないものが3割近くある。また、「本文あり」となっていても要旨へのリンクであるとか、「なし」なのに本文ありということもある。
- 大学の出版物もメタデータのみのものによくいきあたる。がっかりする。リポジトリは全文公開するものと思っていたが、その認識が正しくないのか、もっと機械的な理由があるのか。
- 公開されているのが著者版の場合、たいていの利用者は雑誌の本文を取り寄せてほしいという。申し込み前に著者版を見ている可能性もあり、ILL的には残念だがIR的には正しい流れなのかも。
- ILLを依頼する際、紀要については目次的なページがあるとありがたい。CiNii本文収録刊行物ディレクトリとリンクしているとますます使いやすい。
- ILLにおける紀要(香川大学の場合)
- 昨年度、香川大学で受け付けたうち紀要等の出版物と余所の大学の紀要をあわせて2割近くあった。依頼も1割は紀要。人社系メインの図書館だからかもだが、意外に多い。
- 大きい大学以外はいつも注目される成果を発表されるわけではない。紀要や本学特有のものをまずは集めたい。ILLで依頼の多い紀要についてリポジトリでの公開を呼びかけて、公開にこぎつけたこともある。例:10年で200件の依頼のあった『香川生物』など。冷静に考えると年20件なのだが、先生は喜んで検討してくれた。
- ILLの受付担当に、許諾はあるが処理中のものは優先的に公開することもしている。ILL担当者としては受付を増やして黒字にしたい気もするが、よく考えると同じような文献を何度もコピーして・・・という作業よりも一度スキャンすることで大勢の方に見ていただけるのならそちらの方がよほど生産的・建設的。
- 紀要等の生産物をあちこちで公開してくれたら、書庫のかなりを占めている紀要類を廃棄して、書庫の狭隘化解消にも貢献できるかも。
- ILLとIR
- NACSIS-ILLにしてもCATにしても、すでに図書館に長くあったサービスを形を変えて便利にしたもの。苦労もなく浸透したのではないかと思っていたが、当時も現場から反対の声があったという。今当たり前にそこにあるILLやCATですらそうなのなら、IRのような新しいサービスが浸透しないことは当然かもしれない。
- 情報の収集から発信という新しい取り組み。しかし共通点もあり、ILL担当の喜びとしては早く文献を利用者や依頼館に渡せたり、見つかりにくいものを見つけて入手できたときの「役に立ったのかな」という幸せな気持ちを感じたりする。IR担当はそういうものを目にする機会はないかも知れないが、登録・公開で喜んでいる人がいるかも知れないし、それも世界中に、さらい今だけじゃなくてこの先にも増えていく。本来、リポジトリの恩恵を受けるべき発信側にも喜んでもらえるサービス。
- ILLとIRは遠いようで近い、どこかでつながっているものではないか。
- IRcuresILLプロジェクトの活動を見ていると仲間の活動が身近に感じられて元気になる。チームI'LLなどの取り組みも。
- 使われるIRのためにILL担当者にできること
- ILL担当者はキーマンかも知れない。利用者が必要なものがなんとなく見えている。
- 複写申し込みが多いと思ったら「おかげで論文ができました!」と報告されたり、こちらから「論文ができたらリポジトリへ」と声をかけることもできる。
- IRの意義や存在を言葉にして利用者に伝えられる。それをきっかけに利用する側がいいものとして認識して、発信する側にも回ればいい。
- 図書館員の意識については、どこかがた担当する際にシステム系やコンテンツ系、管理系の人が中心になっているところが多いが、その場合サービス系の職員は「なんかやってるな」とひとごとになりがち。しかしILL担当者も積極的にかかわることで、IRが図書館にとって身近な、そこにある業務になるし、利用者と喜びを分かち合える素敵な仕事になるのかも。
- 今まで別々だったILLの利用者と、IRの発信者が一つになって、発信も利用もするという風になるよう、図書館の一員として関わっていきたい。
質疑
- 鹿児島大学・北山さん:岩澤さんのお話で、ILLの担当だけどリポジトリの担当もされているとあったが、リポジトリの仕事にもいろいろあると思うが岩澤さんの仕事はどれくらい? ILLの担当がリポジトリまで引き受けたいきさつは? 以前に比べて何が良くなった?
- 岩澤さん:どのくらいの業務をしているかということ?
- 北山さん:鹿児島大で自分はシステム面だけ見ている。リポジトリでも広報とか先生との交渉とかあると思うが・・・
- 岩澤さん:ILL担当ではシステム以外の面を担当。広報や収集。ILL部署でIRを担当している理由は当時の上司の気まぐれか、私が暇そうあるいはやりたそうにしていたせいか。この10月から一人増員になった。良かったこと・変わったことは・・・正式公開が4月なので、それまではチームで対応していた。責任の所在がはっきりしなかったが、主担当ができて自分たちのこととして関わるようになったのが一番大きいかと思う。
「リポジトリっておもしろいかも? 〜看護教員の視点〜」(岡田淳子さん 日本赤十字広島看護大学 准教授)
- 看護の業界からなのでこういう機会は初めて。総合展もはじめて知った。私の話がどれだけ役に立つかはわからないが、看護の業界のことも含めて図書館をどう利用しているかのご説明ができたらいいかも。
- 日本赤十字広島看護大学の紹介
- 2000年4月開学の単科大学。約600名の学生と教職員約70名。
- 看護の大学の状況
- 看護の世界での研究は今
- 看護の文献入手状況
- 大学にいるものは文献が入手できるが、看護職は勤務も不規則でなかなか図書館に行けない。
- 病院にはILLの制度もない。インターネットで探したものや大学の図書館から引っ張ってくるのが限界。
- 「看護研究をやれ」と言われてもお金は一切出ない。文献を取るのも全て自腹。研究はしたくでもできる現状がない。
- 機関リポジトリって何?
- 電子書庫で、お金をかけずにみんなに見ていただける場があるのなら、現場のナースも文献にあたりやすいことが理解できた。
- 広島では・・・HARP(共同リポジトリ)
- 昨年4月からスタート。本学も参加して1年半。1年半いろいろ言われてきたがなんのことかよくわかっていなかった。説明会も「ふーん、へー」みたいな感じ。
- しかし紀要を図書館員がアップしていたことなどから、この1年の間に余所の先生から「うちの修士が先生の論文を参照させて貰った」という声をいただくようにもなった。
- 図書館員の方も「うちのような小さな大学でもこれだけのアクセスがあって」という話をしてくれる。それもなんのことかわかっていなかった。
- 図書館の方は「コンテンツを提出してください」という。なんか自分で作らないといけないのかと思って面倒くさかったが、よく聞くと論文(別刷り)を持っていけば図書館が処理してくれるという。「本当にいいの?」って聞いたら「いいんです」という話。
- 自分で書いたものが皆さんに見ていただける機会が増えて、講習会をする際にインターネットでアクセスしてみておいて下さいということも可能に。手で資料を抱えていく必要がなくなる。
- 看護職の声
- 医学中央雑誌webで看護文献の全文があるものを見ると・・・
- 「老人」で検索すると、看護は全体に比べ全文があるものが少ない。増えてはいるがまだまだ増えていただいた方がいい
- リポジトリを使ってみたら
- 教員と図書館の協働
- 教員も生産者なんだからもっと努力しないと。機関リポジトリを使って現場の看護に「ここを読んでみて」というようなことをするのが広報マンとしての教員の役割かも
- 図書館とも協働でもっともっと努力していきたい
「地域と研究者を結ぶプラットフォームとしてのリポジトリの可能性」(山村高淑さん 北海道大学観光学高等研究センター 准教授)
- (竹内さんより:HUSCAPの今年度アクセス数1位の論文の著者です、とのご紹介)
- 私の体験談をもとにタイトルのテーマについてお話したい。
- 一研究者として、この場を借りて皆さんにお礼申し上げたい。機関リポジトリの存在で本当に助かり、メリットを得ている。
- 観光学は社会科学。主な手法はフィールドワーク、地元の方と一緒に何かする。町おこしをしたい地元の人と一緒に研究したりする。そのとき研究者はどうやって地域に情報を還元したらいいか?
- リポジトリ整備の3つの現在的意義
- 情報バリアの解消
- 地理的な壁
- 学会という壁
- 学会では専門家による専門家のための情報独占の仕組みがある。学会に機関リポジトリへの論文アップを依頼してもダメとしか言われない。それは研究者として失格。研究成果は常に社会に還元する努力をしなければ、本当に求めている人に情報が行かなければだめ。学会で「ふーん」と評価されることだけが評価ではない
- 情報バリアの解消
- HUSCAPを用いた地域との共同研究成果公開の試み
- 3つのプラットフォームを利用した
- 相互リンクの構築
- 研究の開始から最終成果までできるだけ公開した。そのことによりフィードバックが常に来る。
- 地域の人はインターネットを凄く見ている。
- 外部からの問い合わせもある。情報公開の仕組みを商工会や商店街からも「便利だ」と好評。
- マスコミ・アニメ業界からも注目が集まり、商工会にも毎日問い合わせが来る。一つ一つ答えてられない。HUSCAPのアドレスを教えて「見ておいて」とこたえられているとのこと。
- 年間利用ランキング・・・ランク1位に研究論文がランク。今年既に5,600件を超えるダウンロード。2年前に書いた本は初版1,500部でまだ売れ残っている。HUSCAPを見ると1年弱の間に5,000人以上の方に見られている。研究者として、社会への情報発信という意味ではリポジトリの使い方を真剣に考えなければいけない。
- このデータのおかげで観光学高等研究センター内での発言権もあがった。図書館のおかげ。
- 最終成果物としての叢書刊行
- 成果を最終的には紙媒体に。図書館に入れていただいたり、地元の町立図書館に置いていただいたり。インターネットが使えない人でも見ていただけるように。その際、アニメの画像を使わせていただくことも角川さんに了承いただいた。
- リポジトリ活用の工夫とメリット
- メリット
- アクセス数が上がった。検索・認知度の飛躍的向上。
- 論文の引用数が上がった。これまでIFが評価の軸だったが、自分の論文の引用数をあげるというポイントがある。研究者として重要なテーマ。
- CiNiiやGoogleでひっかからない論文は「なかった」と考える学生は増えている。これは現場で危機感を覚えるが、時代が変わったとも感じる。
- 情報の信頼度とデータ保存の安全性が向上した
- 大学のリポジトリにあがっていることのauthorizeの効果は大きい
- URLにリンクをすることで、営業ツールとして実績表をすぐ作れる。学生にも進めている。
- 研究プライオリティの確保
- 研究者間でいち早く研究報告をリポジトリですることで、先取権を確保できる。学会で論文誌に掲載するには半年〜1年かかる。
- アクセス数が上がった。検索・認知度の飛躍的向上。
- メリット
- リポジトリがより活用されるための今後の課題
- ツールとしてのリポジトリ
- 地域、住民、納税者、欲しい人の所に情報がいくツールとして使えないか
- 研究社会の閉塞環境に風穴をあける、一般社会との壁を解消するツールとして使えないか
- 情報アクセスの利便性の向上=公益性
- ロイヤルティの確保・・・市販本で実績を書いている先生には死活問題
- 無償公開すべき公益性の高い論文・報告書/印税収入を期待できる著作に分けて対応できないか?
- 「ある先生の著作物を調べたい」ときに先生の名前を入れると全著作が見られるものあれば、研究のレビューとしても質が飛躍的に上がるのでは
- ツールとしてのリポジトリ
質疑
- 関西学院大学・井上さん:お話の中で認知率と引用が飛躍的に向上したというお話があったが、1年で5,000件のDLがある一方1,500冊の本は残る、その状況を他の先生はどう受け止められているのか。なんで「私もリポジトリ」とならない?
- 山村先生:興味を示されている手ごたえはある。若い先生は「やってみよう」となるが、えらい先生は最初に「面倒くさい」となる。リポジトリって言葉がよく周知されていない、横文字への嫌悪感もある。掲載にかかるプロセスがうまく周知されていない。先生方は興味がないので手間がかかるもので仕事が増えると思っている。私も布教活動はしているので、どんどんアップしていただければと思う。
- 井上さん:地域の方と密なコミュニケーションがあると思うが、電子媒体で交流ができるほどwetな交流も重要と思う。その点の努力は?
- 山村先生:おっしゃるとおり。電子が発達すると同時にwetもディープになる。情報化はコミュニケーションの情報量が増えるということ。情報が共有されているので地元に行くと仲良くなる。商店街のおばちゃんが「見たよ、お礼」と言って林檎を送ってくれたり。コミュニケーションのツールとしても機関リポジトリが有効。
- 九州大学・(お名前聞き取れずごめんなさい!);5,000件を超えるアクセスの分析、どういう方からのアクセスというのを分析されたことは?
- 教員の方にリポジトリにアップするインセンティブを伝えるのは難しいと思うが、アクセス分析をすることで評価されていることをアピールするといいかと思う
- 佐藤:JSLISでの発表内容等について補足。もっと今後も分析するよ!
もともとの目当てである山村先生のお話はもちろんのこと、岩澤さん、岡田先生のお話も大変興味深く聞かせていただきました。
というか利用サイドからの言葉の説得力って半端ない。
いくら理念的なことを説明するよりも、「学生が『すげぇ!』って言ってくれる」、「『先生の論文をうちの修士が使わせていただきました』と言われた」、「商店街のおばちゃんが『(論文やWeb)見たよ、お礼』と言って林檎を送ってくれた」と語られる体験談の説得力のなんたることか。
実際、(自分がオープンアクセスという特殊な領域を研究していることはあるにしても)研究しているときに購読してない電子ジャーナルに載った論文を、ググってみたら機関リポジトリに載ってたのでそれを利用したなんてことはこの1年だけで自分も数えきれないくらいあるわけで。
ILLが、いくら早くて正確で安いったってインターネットでフルテキスト見られる便利さにはかなわない。
学生の卒業論文は、分野によっては紀要でも一般誌でもとにかく関連し得る文献はすべて目を通すことが求められたり、先進的なテーマならジャーナルに載ってなくてソースが紀要だけなんてこともよくあり、そう言うときにリポジトリに載ってる紀要の存在は有難い・・・逆に載ってないと「まあ、いいかな」と思ったりもしてしまったりとかなんとか・・・
岡田先生のお話にある看護学のような若い分野、それも実践に近い分野では特にソースが分散しがちでしょうし、であればリポジトリで見られる便利さは半端ないでしょう。
そしてそれは市民にとっても凄い直接的に利益になる。
だって看護師さんなんて誰でもいつでもお世話になりうるわけですし*4。
アクセスログを見ていても医療系は利用がやはり多いのですが、その分野の方からもこのように証言があると納得です。
そして山村先生からの
学会では専門家による専門家のための情報独占の仕組みがある。
学会に機関リポジトリへの論文アップを依頼してもダメとしか言われない。
それは研究者として失格。
研究成果は常に社会に還元する努力をしなければ、本当に求めている人に情報が行かなければだめ。
学会で「ふーん」と評価されることだけが評価ではない。
(ボールドはmin2-fly)
という言葉とともに語られる、成果をいかに地域に還元したか、そして同時に研究者にとってもどのようなメリットがあったか・・・というお話は(それも熱い語り口の!)、感動に震えつつメモを取っていました。
最初に山村先生ご本人もおっしゃられているように、フィールドワークとして町おこしを地元の方と一緒にやられている観光学ならではの部分ももちろんあるのかとは思いますが。
「成果を常に社会に還元する努力をしなければいけない」というのは、あらゆる分野に通じることであろうと。
一方で今回、お三方の話に共通してできた問題としては「リポジトリ」という言葉や図書館系の業界用語の浸透度の低さ、研究者に対する馴染まなさという問題があったかと思います。
「リポジトリにコンテンツをご提供ください」ということが「図書館に別刷りを持ってきてくださったら図書館で処理して、インターネットで公開できるものは公開します」という意味であることが伝わっていない。
このあたりの壁はどうすればいいのか・・・いっそ「リポジトリ」って言葉を(コンテンツ集めの際には)使わない方がいいんでしょうか?
先日のSPARC-Japanセミナーでご講演された北海道大学の栃内先生、物質・材料研究機構の轟先生、東北大学の長神さん、そして今回お話いただいた岡田先生、山村先生、岩澤さん(は、もうリポジトリ担当も兼ねられていますが)のように機関リポジトリ(あるいはオープンアクセス一般)を構築・運営したり推薦する側ではない、利用し活用する立場の方からのお話というのはこれからももっとたくさん表に出てきてくれると良いと思います。
読む人と読まれる人あってこそのOAでありリポジトリであるわけで・・・その方々からのお話は、リポジトリを運営する側にとって参考になるだけではなく、リポジトリとか特に興味ない研究者にとっても「へえ、そんなのもあるのか・・・」と知り、興味を持つきっかけとして重要なのではないか、とかなんとか。
ちなみにさんざん「オープンにして社会に還元せねば」といった手前自分のものを公開していないとかなりまずいわけですが(汗)、自分のこれまでの研究成果については以下のページで公開できるものは公開しています。
- 佐藤翔 - 研究者 - researchmap
- http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?Zoological%20Science%20meets%20Institutional%20Repositories
この中に質疑の中で山村先生からご紹介のあった、山村先生の論文の利用元に関する分析の予稿もあります("機関リポジトリコンテンツの受容と他メディアからの影響:高頻度利用文献を中心に"というのが該当)。
容量が大き過ぎたらしく発表のスライドは上記サイトにはアップされていないのですが・・・現在機関リポジトリにて登録申請中ですので今しばしのお待ちをー。
閑話休題。
大興奮のうちに午前の部は終わり、午後からは「これから始める機関のための隣のリポジトリ事情」と題して最近リポジトリを始めた機関の方々からのご発表でした。
以下、次エントリへ!