かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

大学生・院生にとってのブログによる学術コミュニケーションの可能性 pt.2 実践報告編(第7回ARGカフェライトニングトーク)


下のエントリでも書きましたが、第7回ARGカフェでライトニングトークをしてきました。


さすがに自分のプレゼンテーションはメモを取れなかったので、使用したスライドを前回に続きMy Open Archiveにアップしました。


というわけで本文はMyOAを見ていただければいいのですが、それだけだと不親切だとも思うので発表の概要をいつものメモ風にまとめると以下の通りです。




  • 第1回ARGカフェのライトニングトーク*1で、ブログを書いているとインフォーマルなコミュニケーションが活発化するといったけど
    • それが業績につなげられるのかは当時はわかってなかった
    • それから1年半で業績につながった例が出てきたのでその報告
  • アイゲンファクターとかについて書いたエントリ*2がきっかけで
    • カレントアウェアネス-Eに取り上げられ*3
    • 『薬学図書館』から論文執筆の依頼が来たよ!*4
  • 日本図書館情報学会研究大会についてのエントリ*5がきっかけで
    • 発表者の先生に名前を覚えてもらえるようになり
    • その先生が日経メディカル・オンラインの取材を受けた際に自分を紹介され、自分まで取材を受けたよ*6
    • 『薬学図書館』の論文も紹介されて、アクセス数も増えました!!
  • ってことでブログは業績につなげられる
    • 必要なのは・・・実名と連絡先の明記、リアルでも名乗ること等
  • 誰か学生・院生で他にやってみたい人はいませんか?
    • イベントレポートがお勧め。手間がかからない割に読んでもらえることが多い
    • 需要もある。「他にやる人はいないの?」と聞かれることも多い
    • Twitterは(ハッシュタグを使っても)後から読み返しにくいし、Ustreamは実時間と同じ時間が視聴にかかる。今だからブログの特徴も際立つ
    • ここで(予定通り)タイムアップ・・・!



その後、ショートQ&Aでこっちの話が盛り上がって李さんに「それはいましても楽しくない」とのツッコミが入るきっかけにもなってしまったのですが(苦笑)
いや、まったくその通りで、なんで今「ブログやろうぜ!」という話をせんといかんのか、と言われると返答に窮するところでもあるのですが。
でも図書館系学生・院生のブログってむしろ自分が始めたころより減少した感じがあり(汗)
もう1回煽っておくかあ、っていうかマジ同業者減って荒野になるとか寂しすぎるんですがー、ってことでやったLTでした。


もちろんコミュニケーションツールとしてはTwitter等すでに優れたものは多くあり、そっちで活躍している図書館系の院生・学生はたくさんいます。
ネット上で活動しているそれらの人々とつながりたい、ディスカッションしたりしたいというのであればTwitterで十分で、わざわざブログをやる意義なんて・・・ということにもなるわけですが。


ただ、これは第1回ARGカフェでも言ったのですが、実際は図書館関係の世界(に限らないかもしれませんが)でネット上で活動している人はまだまだ少数派です。
でも自分は書かなくても読んではいる、という人は多いです。
いわゆるROM専。
そして何かを動かせるポジションにいる方はそっち側の方が多くもあり(今回の例でいえば、『薬学図書館』も自分を紹介して下さった先生もそうです)。
そういう人にとって、Twitter上での断片的なやり取りでどこまで見せられるかということはまだ今はけっこう問題があって(Twitterは有名人をフォローする人が多かったりすることからも、名が売れてからならそういう使い方も出来るかと思いますが、名を売るツールにはなりにくいと思います)。


若手とか元気な人同士でやり取りしているだけでも面白いのですが、(スライドにも書きましたが)今の僕らはそれだけでは生きていけないわけで。
ROMな方まで広がりうる可能性という意味で、使い方を考えてもいいんじゃないかな、と思っています。
もともと生き残れる目自体が少ないんだし、やれること全部やっておいて損はないはず。
ただし労力とのバランスを考える必要はあり、その点で今は無名の状態からtsudaるなら後でまとめてブログにも書いておけ、とかなんとか。


で、ディスカッション時には研究者の情報発信や図書館員の発信、という点にまで広がったわけですが・・・そこまで行くと、また話は別かもな、とも思います。
自分があえて「学生・院生」をプッシュしているのは、それも研究者を狙う人に限定しているのは、そういう人は「名を売る」ことが重要だと思うからであり。
もっと言えばこの先の生死と名が売れているかどうかが直結するわけで(まあ悪名が売れるとまずいわけですが)、一方で名を売るための媒体はかなり限られている身分でもあり、そこでブログを使おう、という話。
なので、必ずしも「自分の名前」を売り込む必要がない人については、書くにしても匿名であった方がいいことがある、というのはその通りではないかと思います。
もっと言えば名指しで講演依頼が欲しい人は実名じゃないと意味がないけど、それが来ると職場的にまずいという人は匿名で発信しても当然では、とかなんとか。
研究者を目指す場合だって、先生方がそういうのにあまりいい顔をしない分野で、かえってマイナスになると言うのであれば匿名でやった方がいいに決まってますし。


そういう意味では、ディスカッション中に「職場のこともあり実名は・・・」という話になってしまったのは自分の言葉が5分間しかないとは言え足りなすぎたな、とかなんとか。
誰でも実名でやるべきなんて全く思ってないです。
実名を売りたい人、実名が売れていることがご飯の種になる人がやればいいと思います。


あと、「ブログに書いてしまうと先取権が・・・」というお話も出てきましたが、これももちろんと思います。
こんだけブログをプッシュしていて、かつ自分の研究分野に近いところでエントリを立ててもいますが、実は自分はその時々に自分が中心的に取り組んでいる研究の中身について、未公表の状態でブログに書くことはほとんどしていません。
というかしません。
下手に書いて「これは新規性がない」って言われてリジェクトされるのも、未査読の状態で流通しちゃって査読論文にできないのも嫌だし。


たまに新しい調査をやった結果をアップしていることもありますが、あれはその段階でそのテーマを本業にしていないからで、本業にするつもりになるとしばらくはそのネタを書かなくなっています。
一方で本業のテーマでも、発表を行ったりする等、業績として固定化した後であればガンガン書きます。


先取権はじめ各分野のしきたりというか、情報の扱い方にはかなりセンシティブなところが多く、「いまやっていることを全てオープンに」というのは少なくとも図書館情報学の学生・院生には自分は積極的には薦めません。
それで業績乗っ取られても、文句言えるか微妙なところもありますし*7


「それじゃ書くことがない」という時に便利なのがイベントレポートなので、LTではそれをプッシュしました。
「大変そう」と思われることもありますが、実際のところイベントレポートは主観を控えて詳細にメモをとればとるほど考える手間がなくなるので楽です。
長くなりすぎたときにどこを削るかとか考えるのが面倒になったら全部アップしちゃえばいい、という・・・読み手に親切かどうかは大いに疑問なところもありますが(苦笑)
実際、自分が1本のエントリにかける時間はイベントレポートが詳細化してから確実に減ってます。
そうでないと書いている暇もないので(汗)


どうせイベントに行くのであればメモをある程度取るのはそう苦じゃないし自分にとっても後で見返すときに役に立つ、しかもそれを公開しておくとたまに人から感謝されることもあり名前も覚えられるなら一石三鳥!・・・ということでプッシュしたいのですが、あんまり広がらないよなー、とかなんとか。
むしろ最近、図書館現職者の方の方が実名で詳細にレポート書く人が増えているようにも*8
図書館員の働き方が従来と変わってくるのかも、と考えるとそれはそれで非常に興味深いです。


そんなこんなで色々書きましたが、実際のところ自分がじゃあ業績のためだけにブログをやっているのかってそんなわけはなく。
一番は発信したいことがあったから始めたのであって(mixi日記で真面目な研究ネタ書いても誰も反応してくれなかったので移った)。
なんだかんだでもう3年を過ぎたわけですが、これからもこうして続けていけるといいなあ、とかなんとか。

*1:myopenarchive.org - このウェブサイトは販売用です! -&nbspmyopenarchive リソースおよび情報

*2:あなたのお気に入りの雑誌の順位は上がる? 下がる?:JCRに新導入された指標を見比べてみた:図書館情報学編 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか

*3:E889 - 研究評価を意識した新しい学術雑誌評価指標の模索 | カレントアウェアネス・ポータル

*4:http://hdl.handle.net/2241/103230

*5:第56回日本図書館情報学会研究大会・「半分」レビュー:1日目 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか

*6:5人に1人が「どの論文評価指標も有効ではない」:日経メディカル

*7:微妙というのは文句が言えないということではなく、確実に文句はいえるはずなんだけど今の段階では間違いなくややこしいことになる、という意味です。図書館情報学分野の研究者でブログやっている人は海外にもたくさんいますが、割と皆さんその時々に本業の研究でやっている内容は巧妙に隠しつつ、どこかにアップした瞬間にその話を積極的に始める印象があります

*8:もっとも、図書館員で実名で発信されている方は昔からたくさんいらっしゃいました