「ラーニングコモンズを起点として、大学と図書館の未来を考える」〜ラーニングコモンズラボラトリ準備会キックオフ
このブログでも再三取り上げてきていますが、昨今の大学図書館業界・・・に限らず高等教育界の中でのホットトピックの1つに「ラーニングコモンズ」があります。
ぱっと目立つものを見ただけでも当ブログだけで以下の7本のエントリがありました。
- 「ラーニング・コモンズ : 学びの場の新しいカタチ」-第17回 大図研オープンカレッジ - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
- ラーニング・コモンズ始めました - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
- お茶の水女子大学のラーニング・コモンズを見学してきたよ! - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
- 「ラーニング・コモンズの本質:ICT時代における情報リテラシー/オープン教育を実現する基盤施設としての図書館」(名古屋大学附属図書館研究開発室 第35回オープンレクチャー) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
- 『ラーニング・コモンズ』フォーラム:図書館における学習教育支援の新展開(主催:東海北陸地区国立大学図書館協会) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
- 「学習支援:2020年これが図書館の生きる道」(平成22年度関東甲信越地区大学図書館シンポジウム@つくば 参加記録) - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
- 「学生協働サポート」の生の声が盛りだくさん!:東京女子大学「マイライフ・マイライブラリー」公開実績報告会参加記録 - かたつむりは電子図書館の夢をみるか
おそらくちゃんと探せばまだまだ出てくるものと思います。
このように注目を集めるラーニングコモンズですが、注目され、国内でも導入事例が次々出てくると同時に、単に場所を用意してそこに人がたくさんいればそれでいいのか・・・という指摘もたびたびなされるようになってきました。
直近の2エントリもまさにそうで、場所の話にとどまらず、図書館の役割の変化や高等教育自体の変化にも言及されるようになっています*1。
そうした状況を受け、図書館の人に限らず、教育・研究者、他の大学職員、関連する企業の方々、そして最大の当事者の1人でもある学生を含む、幅広い人々が集まって考える場が必要ではないか・・・ということで発足したのが今回、自分が参加してきた研究会、「ラーニングコモンズラボラトリ」です。
呼びかけ人はAcademic Resource Guideの岡本真さん、ラーニングコモンズについて日本で初期に紹介された米澤誠さん、1/18のエントリでも冒頭で紹介した『学びの空間が大学を変える』の著者で、新たな学びの空間の例として紹介されることも多い福武ラーニングホールの建築担当者でもある東大の山内祐平先生、その山内先生をお招きしてのフォーラムを先の図書館総合展で開催するなど*2、ラーニングコモンズに力を入れて取り組んでいる丸善の水越壮次さんの4人で。
呼びかけ人の皆さんが声をかけられた人々を初期メンバーとして集め、2/4の午後から、東大福武ラーニングスタジオで設立準備会が開催されました。
自分も当然興味があるテーマであり、岡本さんに声をかけていただいて参加してきたのですが・・・やあ、面白かった!
というわけで以下、例によって例のごとくmin2-flyによる当日のメモです。
いつもどおり、あくまでmin2-flyの聞き取れた/理解できた/書きとれた範囲のものですので、ご利用の際はその点、ご了解をお願いします(強調部はmin2-flyによるものですので、その点も合わせてご了解下さい)。
誤字脱字、事実誤認等、お気づきの点がありましたらコメント欄等を通じてお教えいただければ幸いです。
また、途中自己紹介の部分は全部メモを取り切るのが困難なため、グループワークの成果発表部分は自分が発表担当者だったために記録の手を止めています。
後者については後日、同じく参加していたid:humotty-21さんが記録を取って下さったので、そちらがブログにアップされ次第、ご紹介しようかとー。そちらにリンクを貼らせていただきました。
では以下、まずは山内先生による開会の挨拶から!
開会と挨拶(山内祐平先生、東京大学)
- ラーニングコモンズを起点として、大学と図書館の未来を考える
- このラーニングコモンズラボラトリで呼びかけ人がしたいことについて説明する
- ラーニングコモンズ(LC)の説明はいらないだろう
- 多くの図書館でこの数年、急速に普及
- 授業後に学生がいる場所、学ぶためのスペースができた。これは大きな一歩
- 一方で関係者が危惧していること:
- スペースができて人が集まったらいいのか?
- 図書館の生き残りとしてはいい・・・日本に限らず海外でも進んでいる
- 我々が置かれている状況は? LCを作れば図書館も大学も万々歳なのか?
- 今年になって図書館の電子化の話は急に進んでいる。大学では就職状況が凍りつくよう
- 大学で地殻変動が起こっている? 各セクションにいるとばらばらに見えるが・・・
- 図書館・来館者減少
- 大学・受験者減少/就職難
- これは一連の問題である・・・情報化社会において大学というシステムが体制の変換を求められている
- 図書館にとっては電子図書館やLC、大学においては研究・教育のあり方や就職活動
- 似たような状況は200-300年前、中世型の大学から近代型の大学に変わる1800年代にも起こっている
- そのときはそれに対応するために図書館が作られた
- 同時に、大学を出ても就職できない状況も起こっていた
- 今起こっているのは300年に1回の大変革の第一歩?
- LC、図書館というミクロな視点では対応できないのではないか?
- LCを起点として・・・
- そもそも大学はどうあるべきなのか?
- 教育はどうあるべき?
- 研究はどうあるべき?
- 図書館の未来
- 切っても切り離せない!
- そもそも大学はどうあるべきなのか?
- そもそもLCについてのD. Beagleの定義:図書館が図書館を越境して全学の中でサービスを提供する
- 輸入時にどうしても空間が目についた。空間は素晴らしい第一歩だが、これからは図書館を越境して考える時期では?
- それを考えるには図書館の人だけでも、学習・教育の人だけでも、大学職員だけでもダメ。みんなが越境して語る場が必要
- そこでこういう場所を設定した
- みなさんは我々の人脈の中でこういうことを語るのにふさわしいだろう、と思って選んだ
- こういうことを考えることで素晴らしい、研究会の道筋ができるだろう
自己紹介タイム
- ここはメモ省略
- 図書館員、企業、学生、大学職員、教員・研究者、建築・設計事務所、エンジニアなど多様な方が参加されていました
アイデアブレーンストーミング(グループごと)
- 岡本真さん:
-
- これから約30分でアイディアブレインストーミングをする
- LCの意義とラボラトリの役割について
- それぞれが考えるLCの意義と課題について、意見を出しあってほしい
- 決着をつける議論は要らない。NGは出さずどんどんアイディアを出す
- 「それは違う」を言わずに、他の方の発言に追補するような形で
- これから約30分でアイディアブレインストーミングをする
-
- ひとつめのトピックがLCの意義と課題
- その解決策としてラボラトリが役に立てばいい。それを2番目の論点にしてほしい
- 最終的に、各グループ毎に1チーム5分程度で話し合いの内容をお話しいただきたい
- 明確な結論はいらない。他のグループの議論を知ることで×5の知識を得られる
グループ別発表
-後日、id:humotty-21さんがこの部分の記録はブログにアップされる予定です。アップされ次第、リンクします。
- グループ別発表については以下のid:humotty-21さんの記録を参照:
ラーニングコモンズラボラトリの活動計画紹介・事務局案(岡本真さん、Academic Resource Guide)
- 今日はあくまで準備会
- なるべく多くの人に声をかけたいが、シンポジウムがしたいわけではない
- シンポジウムだと図書館の人だけになるかもしれない。そこでスモールスタートした
- 2011.4をめどに正式に研究会を発足させる。それまでに・・・
- 4月以降:
- お願い:運営へのご協力を!
- あくまで「とりあえず」の形
- 岡本さん、水越さんの活動の守備範囲からすればこれくらいが限界
- 自分も運営サイドで頑張りたい、という人が増えれば出来る範囲も広がる。ご提案・ご参画を
閉会(山内先生)
- 活動計画に今日のディスカッションが視点として入る
- ディスカッション時の視点を活かして見学先を決めるとか、講演者を決めるときに種にするとか
- ぜひ種をまいた責任をとって、水を継続してください
ブログアップ時点ではグループワークの記録がないので熱気が伝わらないかも知れませんが・・・(汗)
当日の様子はTogetter、Ustream等でも確認できるので、あわせてご覧いただければ幸いです。
どのグループもかなり、熱いですw
- Togetterまとめ
僕自身としては自己紹介でも言いましたし常々口にもしているんですが、本業は電子図書館的なことを扱う人間なので、「いかに図書館に出向くことなく自分の研究を遂行するか」ということを日々考えているわけです。
学習や研究に使う資料が電子化されるにつれ、図書館と言う場所に出向かなければいけない必然性は減ります。
別にどこにいたっていい。
実際、最近は直接の専門領域外の資料もちゃんと読もう、と心がけるようになったので大学図書館をまた良く使うようになったのですが、僕がメインでやっているテーマに限れば論文はほとんど電子化されていますし、資料の入手に図書館を来館する必要はほとんどありません。
その方が、いちいち資料を取りに行かなければいけないよりはずっとストレスがなく、便利で、まあ素晴らしい。ビバ電子化。
しかしじゃあもう建物や場所のことは考えなくていいのか・・・と言えば、そうではないだろう、と考えています。
むしろ電子化によって資料の利用法がより自由になったからこそ、空間的な制約(書架とか、紙媒体の利用という前提)がより少なくなった状態で、学習したり勉強したり友達に会ったり人生に悩んだりする場所について考える余地が生まれるのではないでしょうか。
言いかえれば、「(資料を使うためには)行かなければ行けない」場所から、「行きたいから行く」「行った方がいいから行く」空間作りが考えられるようになったんだろう、と思っています。
では、僕たちはどういう場所に行きたいと思うのか、どういう場所がいいのか・・・ということを熱くグループワークでは議論したわけですが、そのあたりの詳細はUstreamやid:humotty-21さんのエントリで(笑)
ただ、やはり学生だけ・図書館員や関係者だけでなく、様々な人が入っていることで話に多様性が生まれる、というのは今日のグループワークで改めて実感しました。
さらに、実際には学生ごとや大学ごとに置かれた環境もニーズも違う、というのもたびたび指摘されていて、それを知り、単に真似をするのではなく深く情報を得て共有して何が自分たちにも使えそうなのかわかるようにする、ということの重要性も感じます。
ということで、メーリングリスト・メールマガジン・実際の見学会、というこれからの活動をそういう方向で活用していければこの研究会は素晴らしいものになるのではないか、と。
興味がおありのかたは、早速ラーニングコモンズラボラトリのメーリングリストが立ちあがった、とさきほどアナウンスがありました(「URL」と書かれた部分のリンクをクリックすると、メーリングリストの登録ページにジャンプします)。
ご覧の通りまだ投稿は出来ないとのことですが、こちらに登録して、議論に参加されるとあなた自身はもちろん、他の参加者の方にとっても得るものがあるのではないか、と思います。
これは発表時にもちょこっと言ったのですが、大学の教育の変化とは社会に輩出する人材の変化であり、優秀な人材をいっぱい世に送り出して、彼らが高い生産性をあげてお金を稼いで納税してくれれば、国益になり日本人みんなにとって良いことである(さらに言えばその財源から海外への支援も・・・)、と。
そこまでうまく歯車が回るかは難しいこともあると思いますが、それくらい、学生・教員・図書館・大学・ひいては社会にとって有益な研究会になれる可能性があるんじゃないかなあ、という部分はけっこう本気で考えています。
大学と図書館(と、いう名かはさておき、学習の場)の未来とは、学生の未来でもあり、それはすなわち国の未来であり世界の未来なのですよ。
それをみんなで考える、というのは実に刺激的で楽しそうだな、とあらためて思ったイベントでした。
2011-02-05 08:07 グループ別発表について、id:humotty-21さんの記録にリンクを貼りました
*1:もっとも、その点の議論は当初からあったじゃないか、という指摘もあるかと思います。ただ、場所すらない状態からそれらしき場所ができ、利用もされるようになったことで、一歩踏み込んだ議論ができる環境が整ってきたのでは・・・というのが自分の感想です