かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

CiNiiがちょっと盛り上がっている件


国立情報学研究所の論文情報ナビゲータ、CiNiiがなんか今日は色々なところで盛り上がっていますね。


一つはCiNiiから機関リポジトリへの論文にリンクする実験について。

本実験では、CiNiiから一部の機関リポジトリの論文系のデータ(junii2の資源タイプが"Journal Article"、"Departmental Bulletin Paper"、"Article")へのリンクを行っています。

どういうことかと言うと、要はCiNiiで論文を検索した時に。



赤枠で囲んだように、「機関リポジトリ」と書いたアイコンが出てくる論文については、CiNiiに本文が搭載されていない場合でも各大学の機関リポジトリ*1に論文が掲載されている場合、ここをクリックすると誰でも無料で読めるということ。
実際、ここで検索した雑誌『大学図書館研究』は無料公開どころかそもそも電子化されていないので通常はCiNiiから読むことは出来ないのですが、「機関リポジトリ」のアイコンが出ている10件目の文献については北大の機関リポジトリで公開されていて、クリックをたどっていくと本文までたどり着けます。
これについては早速オープンアクセスジャパンで取り上げられたほか*2DRF*3メーリングリストでも話にのぼるなど、大学図書館や機関リポジトリ関係者の間で話題になっています。


大学図書館関係者がそんな話題で盛り上がっている一方で、今日ははてなブックマークのホットエントリでもCiNii掲載レコードが異様な盛り上がりを見せています。

落ちもの系パズルゲームの一大勢力である「ぷよぷよ」について数学的に扱った論文という意外性が注目を集めたのか、2008-08-07 21:10現在で114ブクマを集め、『ci.nii.ac.jp』 の人気エントリー - はてなブックマークの中で執筆現在被ブックマーク数2位、単独の文献としてはぶっちぎりの1位の座に輝いています。
ちなみに一応、本文にも目を通してみようとしましたが、証明に入る前に自分は挫折しました・・・すごく、数学です・・・*4


しかしこれを見て気づくのは、意外にもCiNiiのレコードってはてブでブックマークされているものが多いんだな、ということ。
ちなみに単独の文献として被ブクマ数2位は去年、ちょっとした話題になった「CiNii 論文 -  現代表象文化論(1)『ハリー・ポッター』の秘密の部屋 : オタク文化とハーマイオニの受容」で23ブクマ(2008-08-07 21:15現在)。
オタク文化においてハーマイオニがどう受容されたかということで、ふたばちゃんねるでの二次創作絵が図として挿入されるなどなかなかにファンキー。
人前で読めない論文とか、某研究室の卒論のレジュメ以外では初めて見たよ本当に。


こちらの論文の著者である森有礼さんについては他にもCiNiiに結構多くの論文が登録されており、中には本文がCiNiiに掲載されているものもあれば、早速「機関リポジトリ」リンクがあるものもあります。

これを見ると別にいつもオタ絵が挿入されるような論文を書いているわけではなく、今回とりあげた論文のような例の方がむしろ珍しいようです*5
それにしてもこうしてみると、あらためて機関リポジトリへのリンクが挿入されたことはかなり便利ですな・・・今はまだ機関リポジトリに搭載されている論文の中でも、雑誌掲載論文や紀要論文など一部しかリンク解決はしていないとのことですが、これが今後会議報告や学位論文の類まで拡大して行って、さらに機関リポジトリへの論文搭載自体も進めばかなり面白いことになるのではないか、とか・・・
「CiNiiから読める面白い論文まとめブログ」とか、「2ちゃんねるCiNii板」とか出来たりして。
Googleストリートビュー的な盛り上がりを見せたりするととても面白い。


最近いわゆるオープン・アクセスとパブリック・アクセスの違いについて整理した論文等も発表されていますが*6、パブリック・アクセスよりさらにくだけた感じで、直接役に立つというわけではなくても学術研究に関わっているわけではない人たちと研究の間の垣根を低くするような役割を機関リポジトリ等の無料でフリーなアクセス提供が果たせると良いな、とかなんとか。
実際、ウィキペディアの出典として機関リポジトリへのリンクが貼ってある例なども出てきているし、今回みたいに「面白い論文があるぞ!」って話題になったときに機関リポジトリからもその論文が見れたりすると研究者同士の情報提供にとどまらない広がりを機関リポジトリが見せうるわけで。
そして今や日本語文献を探す際の第一のツールとなったCiNiiが、機関リポジトリと人々の仲介役として果たせる役割もなかなか大きそうです(現状はGoogleがぶっちぎりで仲介者ですが)。


・・・まあ、自分はCiNiiにも機関リポジトリにもまだ1件も文献登録されていないんだけどさ(爆)

*1:大雑把に言うと各大学で生み出された研究成果(雑誌論文とか紀要とか)などを無料で広く公開しようというシステム。

*2:CiNii meets IR - Open Access Japan | オープンアクセスジャパン

*3:デジタルリポジトリ連合。「国内における機関リポジトリの発展とオープンアクセス思潮の興隆につとめ」ることを目的とする団体。参照:http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php

*4:ちなみに著者名や引用関係からリンクをたどると他にもけっこうぷよぷよ論文は見つかります。数学とか計算機の分野ではそんなに特殊な存在ってわけでもないのかも知れません

*5:ちなみに著者の森さんは中京大学の准教授とのこと

*6:Nelson, Kristopher A. The Impact of Government-Mandated Public Access to Biomedical Research: An Analysis of the New NIH Depository Requirements. http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1147427(参照 2008-08-07).